説明

無線端末装置及び通信制御方法

【課題】処理負荷の増大を抑制し、かつ、GPS測位の精度を向上させる無線端末装置及び通信制御方法を提供すること。
【解決手段】GPS測位サービスが提供されるLTE通信システム及びCDMA通信システムを、選択的に切り替えて通信する携帯電話機1は、測位処理を実行する測位部31と、LTE通信システムを選択した状態で測位部31により測位処理が実行される際、所定条件を満たす場合には、CDMA通信システムを選択し直してから測位部31に測位処理を実行させる通信切替部32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信システムのそれぞれでGPS測位が可能な無線端末装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線端末装置の現在位置情報を取得するために、GPS(Global Positioning System)による測位サービスが提供されている。このサービスでは、無線端末装置は、GPS衛星の電波を捕捉するための補助情報を、基地局を介して所定の測位サーバ(例えば、PDE;Position Determination Entity)から受信することが多い。
【0003】
補助情報を測位サーバから取得する測位方式には、Assisted方式と、Based方式がある(例えば、特許文献1参照)。Assisted方式では、無線端末装置は、測位サーバから衛星捕捉補助情報(Acquisition Assistanceデータ)を受信し、GPS衛星をサーチする。サーチ結果は測位サーバに戻され、測位サーバにて位置計算が行われる。無線端末装置は、位置計算の結果を受信し、測位結果として出力する。また、Based方式では、無線端末装置は、基地局から衛星情報(Ephemerisデータ及びAlmanacデータ)を受信する。無線端末装置は、受信した衛星情報に基づいて衛星捕捉補助情報を作成した後、衛星をサーチし、さらに、サーチ結果を測位サーバに送信することなく、自ら位置計算を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−130249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、無線端末装置が利用する通信システムとして、音声及びデータ通信に用いられる回線交換(CS:Circuit Switched)方式(例えば、CDMA2000_1x又はW−CDMA)のCDMA通信システムに加えて、主に高速データ通信に用いられるLTE(Long Term Evolution)方式のLTE通信システムが登場している。
【0006】
このLTE通信システムの普及に伴って、LTE通信システム用の基地局を用いたGPS測位のサービスが提供されることが期待される。しかしながら、衛星捕捉補助情報を生成するためには、基地局情報に基づいて無線端末装置の概算位置を取得する必要があるが、基地局の敷設数が十分でない場合、この概算位置の精度が低くなり、衛星捕捉補助情報の精度が十分に得られない。その結果、GPS測位に失敗したり、測位結果に大きな誤差が生じたりするおそれがある。
【0007】
また、測位精度を向上させるため、GPS測位の度に、LTE通信システムに比べて基地局の数が多いCDMA通信システムに切り替えた場合、無線端末装置及びネットワーク側の処理負荷が増大する。
【0008】
本発明は、処理負荷の増大を抑制し、かつ、GPS測位の精度を向上させる無線端末装置及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線端末装置は、GPS測位サービスが提供される第1の通信システム及び第2の通信システムを、選択的に切り替えて通信する無線端末装置であって、測位処理を実行する測位部と、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行される際、所定条件を満たす場合には、前記第2の通信システムを選択し直してから前記測位部に測位処理を実行させる通信切替部と、を備える。
【0010】
また、前記所定条件は、前記第1の通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合であることが好ましい。
【0011】
また、前記所定条件は、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行され、かつ、前記測位部により捕捉されたGPS衛星の数が所定未満の場合であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る無線端末装置は、前記第1の通信システムにおける通信中の基地局から、当該基地局の正常通信エリアを示すエリア情報を受信するエリア情報受信部を備え、前記所定条件は、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行され、かつ、前記測位部により測位された位置が前記エリア情報により示される正常通信エリアの外となる場合であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る無線端末装置は、前記第1の通信システムが選択され、かつ、前記測位部によりGPS衛星のサーチが開始された後、前記第2の通信システムが選択された場合、前記第1の通信システムにおける前記サーチの結果又はタイミング情報を含むサーチ情報を記憶する記憶部を備え、前記測位部は、前記第2の通信システムにて測位処理を実行する際に、前記記憶部に記憶されている前記サーチ情報に基づいて、GPS衛星のサーチを行うことが好ましい。
【0014】
また、前記記憶部は、前記第1の通信システムが選択され、かつ、前記測位部により第1の測位結果が得られた後、前記第2の通信システムが選択される場合に、当該第1の測位結果を記憶し、無線端末装置は、前記第2の通信システムで測位処理を行って得られた第2の測位結果と、前記第1の測位結果との差異情報を出力する情報出力部を備えることが好ましい。
【0015】
また、前記測位部は、前記第2の通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合、前記第1の通信システムにおける基地局情報と、前記第2の通信システムにおける基地局情報とを統合して、GPS衛星をサーチすることが好ましい。
【0016】
本発明に係る通信制御方法は、GPS測位サービスが提供される第1の通信システム及び第2の通信システムを、選択的に切り替えて通信する無線端末装置の通信制御方法であって、測位処理が実行される際、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位処理が実行される際、所定条件を満たす場合には、前記第2の通信システムを選択し直してから、測位処理を実行させる通信切替ステップを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線端末装置及びネットワークの処理負荷の増大が抑制され、かつ、GPS測位の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るGPS測位処理を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係る携帯電話機において位置情報を確定するまでの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線端末装置の一例として携帯電話機1を説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)、あるいは操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0021】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時あるいは音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能、電話帳機能、SMS(ショートメッセージサービス)機能、あるいはメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字又はメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定及びスクロール等を行う決定操作ボタン15と、を含んで構成されている。
【0022】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0023】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(閉状態)にしたりできる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、GPS受信部50と、記憶部60と、音声制御部70とを備える。
【0025】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21、通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11あるいは通信部40等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部60を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0026】
通信部40は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯あるいは800MHz帯等)で外部装置(LTE通信システムの基地局100又はCDMA通信システムの基地局200)と通信を行う。そして、通信部40は、メインアンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ41から外部装置に送信する。
【0027】
ここで、通信部40は、本実施形態においては、音声及びデータ通信用の通信プロトコルであるW−CDMAあるいはCDMA2000_1x(以下、CDMAという)と、主に高速データ通信に用いられる通信プロトコルであるLTEとの双方に対応しており、いずれのプロトコルの通信システムでも通信可能である。通信部40は、制御部30からの指令に基づいて、互いに重畳して通信エリアが敷設される複数の通信システムを選択的に切り替えて、いずれかのプロトコルにより基地局と通信を行う。なお、携帯電話機1は、データ通信時にはLTE方式によるLTE通信システム(第1の通信システム)での通信を優先し、音声通話あるいはSMSの送受信時には、CDMA方式によるCDMA通信システム(第2の通信システム)での通信へ切り替えるものとする。
【0028】
なお、SMSは、通信相手との間で、短いメッセージ(数十文字程度)の送受信を行う機能である。このSMSは、音声通信と部分的に共通する発信・着信シーケンスを利用しており、CDMA通信システムにおいて電話番号により送信相手が特定される。
【0029】
GPS受信部50は、GPSアンテナ51により受信したGPS衛星からの所定周波数帯の電波信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給する。なお、GPS受信部50及びGPSアンテナ51の機能は、それぞれ、通信部40及びメインアンテナ41が担ってもよい。
【0030】
記憶部60は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、記憶部60は、本実施形態に係る各種プログラムの他、後述のGPS衛星のサーチ情報及び位置計算結果等を記憶する。
【0031】
音声制御部70は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部70から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。また、音声制御部70は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部70から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ41より出力する。
【0032】
次に制御部30の機能を詳述する。
制御部30は、測位部31と、通信切替部32と、エリア情報受信部33と、差異情報出力部34とを備える。
【0033】
測位部31は、GPS測位処理を実行する。以下、測位部31は、Assisted方式による測位を優先することとする。
【0034】
図3は、本実施形態に係るGPS測位処理を示すシーケンス図である。本測位処理は、LTE通信システム又はCDMA通信システムのいずれにおいても共通である。
【0035】
ステップS1において、携帯電話機1は、基地局の電波信号から、基地局情報(BSID、SID、NID、基地局の緯度・経度情報、時刻情報等)及び信号強度を取得する。
【0036】
ステップS2において、携帯電話機1は、測位サーバへ衛星捕捉補助情報の要求メッセージを送信する。また、携帯電話機1は、要求する測位モードの情報、携帯電話機1の固有情報、アプリケーションの種別情報の他、衛星捕捉補助情報の作成に使用する各種情報(時刻情報、基地局情報、信号強度情報等)を送信する。
【0037】
ステップS3において、測位サーバは、端末認証を行った後、携帯電話機1の概算位置に基づいて衛星捕捉補助情報を作成する。
【0038】
ステップS4において、携帯電話機1は、測位サーバから、作成された衛星捕捉補助情報を受信する。
【0039】
ステップS5において、携帯電話機1は、取得した衛星捕捉補助情報を用いて、GPS衛星のサーチを行う。
【0040】
ステップS6において、携帯電話機1は、捕捉したGPS衛星の情報(時刻情報、位置情報等)と、携帯電話機1にて保持している時刻情報とを、測位サーバへ送信する。
【0041】
ステップS7において、測位サーバは、各GPS衛星と携帯電話機1との間の擬似距離を算出し、この擬似距離から携帯電話機1の現在の位置を計算する。
【0042】
ステップS8において、携帯電話機1は、測位サーバによる計算結果を位置情報として取得する。
【0043】
通信切替部32は、測位部31により測位処理が実行される際、LTE通信システムをCDMA通信システムよりも優先して選択し、LTE通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合、CDMA通信システムを選択後、測位部31により測位処理を実行させる。
【0044】
すなわち、通信切替部32は、信号を受信した各基地局の信号強度及び基地局情報等から、リファレンス基地局として使用できる基地局の数を判断する。通信切替部32は、使用できる基地局の数が十分ある場合には、LTE通信システムに接続したまま測位を継続させる。一方、使用できる基地局の数が十分にない場合は、通信切替部32は、基地局情報を基に作成される衛星捕捉補助情報の精度が低くなるのを回避するため、CDMA通信システムへ切り替える。
【0045】
また、通信切替部32は、LTE通信システムを選択し、かつ、測位部31により捕捉されたGPS衛星の数が所定未満の場合、CDMA通信システムを選択後、再度、測位部31により測位処理を実行させる。
【0046】
すなわち、通信切替部32は、GPS衛星のサーチに時間が掛かり、十分な数のGPS衛星を捕捉できない場合、衛星捕捉補助情報の精度が不十分であると判断し、位置測位の精度低下を回避するため、CDMA通信システムへ切り替える。一方、十分な数のGPS衛星を捕捉できている場合には、LTE通信システムに接続したまま測位を継続させる。
【0047】
エリア情報受信部33は、LTE通信システムにおける通信中の基地局から、この基地局の正常通信エリアを示すエリア情報(MAR:Maximum Antenna Range)を受信する。このMAR情報は、通信切替部32に提供され、通信システムの切り替え条件として使用される。
【0048】
具体的には、通信切替部32は、LTE通信システムを選択し、かつ、測位部31により測位された位置がMAR情報により示される正常通信エリアの外部である場合、CDMA通信システムを選択後、再度、測位部31により測位処理を実行させる。
【0049】
すなわち、位置計算の結果がMARの内部に位置している場合には、この計算結果の信頼性が高いので、GPS測位の結果として出力される。一方、位置計算の結果がMARの外部に位置している場合には、この計算結果の信頼性が低いので、通信切替部32は、より高精度の測位を行うためにCDMA通信システムへ切り替える。
【0050】
通信切替部32によりCDMA通信システムへ切り替えられた後、測位部31が測位処理を行う場合、測位部31は、LTE通信システムにおいて実行された測位処理により得られたサーチ情報に基づいて、GPS衛星のサーチを行う。
記憶部60は、LTE通信システムが選択され、かつ、測位部31によりGPS衛星のサーチが開始された後、CDMA通信システムが選択された場合、サーチの結果又はタイミング情報を含むサーチ情報を記憶する。
【0051】
差異情報出力部34は、LTE通信システムで得られた第1の測位結果と、CDMA通信システムで得られた第2の測位結果との差異情報を出力する。
ここで、記憶部60は、LTE通信システムが選択され、かつ、測位部31により第1の測位結果が得られた後、CDMA通信システムが選択された場合、この第1の測位結果を記憶する。
【0052】
また、通信切替部32によりCDMA通信システムへ切り替えられた後、測位部31は、CDMA通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合、LTE通信システムにおける基地局情報と、CDMA通信システムにおける基地局情報とを統合して、GPS衛星をサーチする。具体的には、例えば、両通信システムの基地局の信号強度を用いて概算位置が算出されることにより、高精度の衛星捕捉補助情報が生成される。
【0053】
図4は、本実施形態に係る携帯電話機1において位置情報を確定するまでの処理を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS11において、測位部31は、LTE通信システムの基地局情報を取得する。このとき、エリア情報受信部33は、通信に使用しているサービング基地局からMAR情報を受信する。
【0055】
ステップS12において、通信切替部32は、LTE通信システムで使用できる基地局の数が十分にあるか(所定数以上か)否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS13に移り、判定がNOの場合、処理はステップS20に移る。
【0056】
ステップS13において、測位部31は、測位サーバから、LTE通信システムの基地局情報に基づく衛星捕捉補助情報を取得する。
【0057】
ステップS14において、測位部31は、ステップS13で取得した衛星捕捉補助情報を用いて、GPS衛星をサーチする。
【0058】
ステップS15において、通信切替部32は、GPS衛星が十分に(所定数以上)捕捉できたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS16に移り、判定がNOの場合、処理はステップS18に移る。
【0059】
ステップS16において、測位部31は、GPS衛星のサーチ結果を測位サーバへ送信し、測位サーバによる位置情報の計算結果を取得する。
【0060】
ステップS17において、通信切替部32は、ステップS16で取得した計算結果がMARの内部か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS24に移り、判定がNOの場合、処理はステップS19に移る。
【0061】
ステップS18において、測位部31は、GPS衛星のサーチ情報、例えば、捕捉できたGPS衛星及びサーチタイミングを、記憶部60に記憶する。
【0062】
ステップS19において、測位部31は、GPS衛星のサーチ情報及び位置計算結果を、記憶部60に記憶する。
【0063】
ステップS20において、通信切替部32は、LTE通信システムからCDMA通信システムへネットワークを切り替える。
【0064】
ステップS21において、測位部31は、CDMA通信システムで使用できる基地局の数が十分にあるか(所定数以上か)否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS22に移り、判定がNOの場合、処理はステップS23に移る。
【0065】
ステップS22において、測位部31は、CDMA通信システムで測位処理を実行する。このとき、測位部31は、ステップS18又はステップS19で記憶されたサーチ情報を利用して、サーチ範囲を限定することにより効率的にGPS衛星をサーチする。
【0066】
ステップS23において、測位部31は、CDMA通信システムの基地局のみでは不十分であるため、LTE通信システムの基地局情報を統合して測位処理を行う。
【0067】
ステップS24において、測位部31は、ステップS16、ステップS22又はステップS23で得られた位置情報を、測位結果として確定する。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、LTE通信システムにおいて、基地局の数が所定未満の場合、捕捉されたGPS衛星の数が所定未満の場合、又は位置計算の結果がMARの外部である場合に、CDMA通信システムに切り替えて測位処理を行う。したがって、携帯電話機1は、LTE通信システムでの測位を優先して、無線端末装置及びネットワークの処理負荷の増大を抑制しつつも、測位精度が低下する状況では、CDMA通信システムへ切り替えることにより、GPS測位の精度を向上させる。
【0069】
また、携帯電話機1は、LTE通信システムでのGPS衛星のサーチ結果又はタイミング情報を記憶し、CDMA通信システムへ切り替えた後の測位処理にも利用する。したがって、携帯電話機1は、CDMA通信システムで改めて測位処理を行う際に、GPS衛星のサーチ範囲を限定でき、処理が効率化される。
【0070】
また、携帯電話機1は、LTE通信システムで測位結果が得られていた場合には、CDMA通信システムでの測位結果との差異情報を出力する。例えば、LTE通信システムで基地局の電波がオーバーリーチしている場合、測位精度が高くても測位結果がMARの外部となる。このとき、CDMA通信システムの測位結果との差異情報が出力されることにより、携帯電話機1の位置を確定できるだけでなく、基地局のオーバーリーチを判断し、所定の対策をとることができる。
【0071】
さらに、携帯電話機1は、CDMA通信システムへ切り替えても、GPS測位に使用できる基地局が十分にない場合、LTE通信システムの基地局情報とCDMA通信システムの基地局情報とを統合することにより情報を補完する。したがって、携帯電話機1は、GPS測位の精度を向上できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0073】
前述の実施形態において、MAR情報を取得するタイミングは一例であり、ステップS17において使用する前であれば、任意のタイミングで取得してよい。例えば、測位サーバから計算結果を取得する際に、併せて受信してもよい。
【0074】
また、MARによる測位結果の精度判定(ステップS17)は、CDMA通信システムにおいても同様に実施してもよい。この場合、携帯電話機1は、さらに通信システムを切り替えることはできないが、GPS衛星のサーチ時間を延長したり、他の測位方式に切り替えたりすることにより、測位精度の向上を図る。
【0075】
前述の実施形態では、LTE通信システム及びCDMA通信システムを例に説明したが、第1の通信システム及び第2の通信システムはこれらには限られない。
【0076】
また、本発明に係る無線端末装置は、携帯電話機1には限られない。本発明は、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、通信機能に特化した通信専用モジュール等、様々な装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯電話機(無線端末装置)
30 制御部
31 測位部
32 通信切替部
33 エリア情報受信部
34 差異情報出力部
60 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS測位サービスが提供される第1の通信システム及び第2の通信システムを、選択的に切り替えて通信する無線端末装置であって、
測位処理を実行する測位部と、
前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行される際、所定条件を満たす場合には、前記第2の通信システムを選択し直してから前記測位部に測位処理を実行させる通信切替部と、を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記所定条件は、前記第1の通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合であることを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行され、かつ、前記測位部により捕捉されたGPS衛星の数が所定未満の場合であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記第1の通信システムにおける通信中の基地局から、当該基地局の正常通信エリアを示すエリア情報を受信するエリア情報受信部を備え、
前記所定条件は、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位部により測位処理が実行され、かつ、前記測位部により測位された位置が前記エリア情報により示される正常通信エリアの外となる場合であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記第1の通信システムが選択され、かつ、前記測位部によりGPS衛星のサーチが開始された後、前記第2の通信システムが選択された場合、前記第1の通信システムにおける前記サーチの結果又はタイミング情報を含むサーチ情報を記憶する記憶部を備え、
前記測位部は、前記第2の通信システムにて測位処理を実行する際に、前記記憶部に記憶されている前記サーチ情報に基づいて、GPS衛星のサーチを行う請求項3又は請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記第1の通信システムが選択され、かつ、前記測位部により第1の測位結果が得られた後、前記第2の通信システムが選択される場合に、当該第1の測位結果を記憶し、
前記第2の通信システムで測位処理を行って得られた第2の測位結果と、前記第1の測位結果との差異情報を出力する情報出力部を備える請求項5に記載の無線端末装置。
【請求項7】
前記測位部は、前記第2の通信システムにおいて信号を受信できる基地局の数が所定未満の場合、前記第1の通信システムにおける基地局情報と、前記第2の通信システムにおける基地局情報とを統合して、GPS衛星をサーチする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項8】
GPS測位サービスが提供される第1の通信システム及び第2の通信システムを、選択的に切り替えて通信する無線端末装置の通信制御方法であって、
測位処理が実行される際、前記第1の通信システムを選択した状態で前記測位処理が実行される際、所定条件を満たす場合には、前記第2の通信システムを選択し直してから、測位処理を実行させる通信切替ステップを含む通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27006(P2013−27006A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162996(P2011−162996)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】