説明

無線端末装置

【課題】 次世代ネットワークのアクセス系にIEEE802.16eを使用しても、End-to-EndのQoSが保たれ、快適な通信ができる無線端末装置を提供する。
【解決手段】 次世代ネットワークをコアネットワークとして備える無線アクセスシステムにおいて、BWA用端末(無線端末装置)40が、アプリケーションに応じたSDP(Session Description Protocol)をSDP生成部41で生成し、当該SDPをSDP解析部42で解析し、Packet Classifier 部47でIPパケットをそれぞれのQoSクラスのキューに振り分け、DSA−REQ Message 生成部43でDSA-REQ MessageのQoSパラメータを設定してDSA-REQ Messageを生成し、BWA用無線基地局31に通知するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域無線アクセスシステム(Broadband Wireless Access system:BWA)に用いられる無線端末装置に係り、特に、通信プロトコル(protocol)で指定されているLayer 2のQoS(Quality of Service:品質確保)レベルとSDP(Session Description Protocol:セッションに関する情報を表記したプロトコル)の内容をマッピングする無線端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尚、QoSとは、ネットワーク内で、特定の通信のための帯域を予約し、一定の通信品質を確保するサービス機能のことである。
また、SDPとは、具体的に、端末と端末との間のセッションに関する情報を表現し、ビデオやオーディオ信号を送受信するために必要な情報をやりとりするためのプロトコルである。
【0003】
広帯域無線アクセスシステム用の無線端末装置は、以下に示す、非特許文献1と非特許文献2のIEEE802.16e規格に則って、製作される。
【0004】
しかし、IEEE802.16e規格では、図2に示すように、Layer 2までしか規定していない。つまり、BWA用の無線端末装置とBWA用無線基地局間のLayer 2におけるQoSはIEEE802.16e規格で規定されてはいるが、無線端末装置のアプリケーションのQoSとLayer 2のQoSのマッピング方法については規定されていない。
【0005】
また、図1に示すネットワーク全体における無線基地局の有線区間におけるQoSについても規定されていない。そのため、End-to-End(図1のBWA無線端末装置からVoice over IP用電話機までの区間)でのQoSを保証することができない。
【0006】
また、現在、有線のCore Networks側では、Next Generation Network(NGN:次世代ネットワーク)の開発が着々と進んでおり、以下の非特許文献4で示されるように、非特許文献3に示すSDPを用いてQoSを制御することが決まっているが、非特許文献4の中で、非特許文献1と非特許文献2のIEEE802.16e規格のQoSレベルとの関係は示されていない。
【0007】
そのため、非特許文献4の次世代ネットワークのアクセス系にIEEE802.16eを使用する場合には、図11に示すNext Generation Network側のQoSレベルとIEEE802.16e区間(無線基地局とBWA用の無線端末装置との区間)のQoSを合わせる必要がある。
【0008】
また、BWA用の無線端末装置から通信を始める場合、端末装置内部のアプリケーションがBWAにおける無線区間のQoSを決めて、BWA用の無線区間でQoSが働くように明示する必要がある。
【0009】
上述の問題を解決するために、特許文献1のように、コアネットワークにPolicy Serverを配置し、また、BWA用の無線端末装置内部にそのPolicy ServerのQoSに対応したApplication QoS機能を配置する方法がある。
【0010】
【特許文献1】US 2007/0255793 A1,“METHOD FOR PROVIDING SERVICE BETWEEN HETEROGENEOUS NETWORK”
【非特許文献1】IEEE Std 802.16-2004,Part 16: Air Interface for Fixed Broadband Wireless Access Systems
【非特許文献2】IEEE Std 802.16e-2005 and IEEE Std 802.16-2004/Cor1-2005,Part 16: Air Interface for Broadband Wireless Access Systems,Amendment 2: Physical and Medium Access Control Layers for Combined Fixed and Mobile Operation in Licensed Bands and Corrigendum 1
【非特許文献3】IETF RFC4566 “SDP: Session Description Protocol”
【非特許文献4】次世代ネットワークインタフェース資料(IP 通信網・LAN 型通信網)―網間インタフェース(NNI)―別表2:IPトランスポート仕様,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1のFIG.3やFIG.4の通信シーケンスにあるように、通信の途中でQoSパラメータのやりとりをPolicy Serverと無線端末装置の間で行わなくてはならないため、VoIPなどのリアルタイム性が必要なアプリケーションの場合、VoIP通信の応答性が悪くなるという問題が発生する。
【0012】
また、コアネットワーク内にPolicy Serverを用意しなければならず、このPolicy ServerがダウンするとQoSが働かなくなるという問題が発生する。
そのため、Serverダウンによる問題発生を減らすために、Policy Serverを冗長構成とすることにより、システム全体でServerがダウンする確率を下げることができるが、冗長構成とするにより設備投資額が増えるという問題が発生する。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、次世代ネットワークのアクセス系にIEEE802.16eを使用しても、End-to-EndのQoSが保たれ、快適な通信ができる無線端末装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、Policy Serverを用いないことにより、設備投資額を下げ、なおかつ、Serverダウンによる通信障害をなくすことができる無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、コアネットワークを備える無線アクセスシステムに接続する無線端末装置であって、予め、コアネットワークにおける通信のセッションに関するプロトコルのパラメータと上りリンクの品質確保のQoS制御におけるQoSレベルが、利用するアプリケーションに応じて対応表として記憶されており、当該対応表により、アプリケーションのサービスに応じたパラメータに基づいてQoSレベルの設定を行い、QoSレベルとパラメータとのマッピングを行うことを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記無線端末装置において、アプリケーションのサービスの内容に応じて、パラメータと、QoSレベルと、当該サービスが使用するポート番号とが対応付けて記憶されており、QoSレベルの設定を行う場合に、対応するポート番号のポートを通過するパケットを、当該QoSレベルのキューに振り分けることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記無線端末装置において、無線アクセスネットワークにおける上りリンクのQoSを設定するために、無線基地局に通知されるメッセージのパラメータを、アプリケーションのサービスに応じて定められた通信のセッションに関するプロトコルのパラメータに基づいて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コアネットワークを備える無線アクセスシステムに接続する無線端末装置であって、予め、コアネットワークにおける通信のセッションに関するプロトコルのパラメータと上りリンクの品質確保のQoS制御におけるQoSレベルが、利用するアプリケーションに応じて対応表として記憶されており、当該対応表により、アプリケーションのサービスに応じたパラメータに基づいてQoSレベルの設定を行うようにしているので、QoSレベルとパラメータとのマッピングを実現でき、快適な通信を可能とし、コアネットワークにポリシーサーバの設置を不要にできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線端末装置(以下、本無線端末装置)は、次世代ネットワークをコアネットワークとする無線アクセスネットワークシステムにおける上りリンクのQoSを、アプリケーションのサービスを利用する無線端末装置の方から主導的に設定するようにしたものであり、これにより、快適な通信を実現でき、コアネットワークにポリシーサーバ等を設ける必要がないものである。
【0020】
本無線端末装置は、SDPの内容と上りリンクのQoSレベルの対応付け機能を持った無線端末装置である。
【0021】
また、本無線端末装置は、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットと上記QoSレベルを対応付けし、そのport番号を通過するIPパケットをそのQoSレベルのキュー(Queue)に振り分ける機能、パケット分配機能(Packet Classifier)を備えた無線端末装置である。
【0022】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フロー(MS initiated Service Flow)において、SDPがmedia-type = video かつ a = sendrecvの場合、UGS(unsolicited grant service)のService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でUGSを指定し、また、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットをUGSのQoSレベルで送信するものである。
【0023】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フローにおいて、SDPでmedia-type = audio かつ a = sendrecvの場合、UGSのService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でUGSを指定し、また、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットをUGSのQoSレベルで送信するものである。
【0024】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フローにおいて、SDPでmedia-type = video かつ a = sendonlyの場合、rtPS (Real-time polling service)のService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でrtPSを指定し、また、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットをrtPSのQoSレベルで送信するものである。
【0025】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フローにおいて、SDPでmedia-type = audio かつ a = sendonlyの場合、rtPS (Real-time polling service)のService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でrtPSを指定し、また、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットをrtPSのQoSレベルで送信するものである。
【0026】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フローにおいて、SDPでmedia-type = dataの場合、nrtPS (Non-real-time polling service)のService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でnrtPSを指定し、また、SDP内のm=port番号で指定されるport番号を使うIPパケットをnrtPSのQoSレベルで送信するものである。
【0027】
また、本無線端末装置は、BWA用端末から始まる通信フローにおいて、SDPを用いない通信フローの場合、BE (Best Effort)のService Flowを選択し、そして、DSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameter でBEを指定するものである。
【0028】
また、本無線端末装置は、SDP内にa=ptime:値(例:a=ptime:20)が存在する場合、このSDPに該当する通信のDSA-REQ Messageを生成する時に、この値をDSA-REQ message内のUnsolicited Polling Intervalの値に設定するものである。
【0029】
また、本無線端末装置は、SDP内にa=rtpmap:0 PCMU/8000が存在する場合、このSDPに該当する通信のDSA-REQ Messageを生成する時に、DSA-REQ message内のMinimum Reserved Traffic Rateの値に100000から160000の値を設定するものである。
【0030】
[ネットワークシステムの概要:図1]
本発明の実施の形態に係るネットワークシステムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るネットワークシステムの構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係るネットワークシステム(本システム)は、図1に示すように、次世代ネットワーク(NGN)10を中心として、そのNGN10にSIP(Session Initiation Protocol)サーバ11と、Video On Demand (VoD)サーバ12と、Voice over IP (VoIP)用電話機13と、ホームサーバ14が接続し、更に、NGN10にホームエージェント(Home Agent)20と、ASN−GW(Access Service Network-Gateway)30を介してBWA用無線基地局31が接続し、当該基地局31に無線にて接続するBWA用端末40a,40bを基本的に有している。
ここで、BWA用端末40aとして無線通信の電話機、BWA用端末40bとして無線通信のビデオカメラを例示している。
【0031】
[ネットワークシステムの各部]
次ぎに、本システムにおける各部について具体的に説明する。
NGN10は、上記先行技術文献で説明されている次世代ネットワークである。
SIPサーバ11は、インターネットプロトコル(IP)に基づいた通信により呼制御を行うためのサーバである。
【0032】
VoD サーバ12は、映像コンテンツを記憶しており、視聴者が見たいときにそれら映像コンテンツを提供するサーバである。
VoIP 用電話機13は、VoIP 対応の電話機である。
【0033】
ホームサーバ14は、家庭内の通信ネットワーク(家庭内LAN)の中核を担い、ネットワークに接続された各部屋の機器に様々なデータやサービスを提供するサーバである。特に、映像や音楽などのデータを蓄積・配信する機能を持った大容量の専用機器のことである。
【0034】
ホームエージェント20は、Mobile IPをサポートし、BWA用端末40の移動を可能とする。
ASN−GW30は、複数のBWA用無線基地局31を束ね、ハンドオーバーやページングをサポートし、また、パケットのルーティング機能を有する機器である。
【0035】
BWA用無線基地局31は、エリア毎に複数配置され、ASN−GW30に接続し、BWA用端末40との広帯域無線アクセスを行うものである。
BWA用端末40a,40bは、エリア内のBWA用無線基地局31と広帯域無線アクセスで接続するものである。BWA用端末40の具体的構成及び処理については後述する。
【0036】
尚、上記ネットワークシステムにおける各部のサーバは、基本的にコンピュータで構成され、従って、CPU(Central Processing Unit)等の制御部、主メモリ、ハードディスク等の記憶部等を備え、コンピュータプログラムの動作によって各機能を実行する処理手段を備えるようになっている。
【0037】
また、図1における本システムの特徴としては、ポリシーサーバ(Policy Server)がないことである。Policy Serverがいらないので、Policy Serverダウンによる通信障害を防ぐことができる。
【0038】
[プロトコルアーキテクチャモデル:図2]
ここで、非特許文献1で規定されている、IEEE Std.802.16 Protocol Architecture Modelを図2に示す。図2は、IEEE Std.802.16のプロトコルアーキテクチャモデルを示す図である。
図2に示すように、IEEE規格では、Layer2のMACまでしか規定していない。
【0039】
[プロトコルスタック:図3]
次ぎに、BWA用端末のプロトコルスタックの例について図3を用いて説明する。図3は、BWA用端末のプロトコルスタックの例を示す図である。
図3に示すように、プロトコルスタックでは、SIPとSDPをサポートしていることを特徴としている。また、アプリケーションの一例として、音声と映像を載せている。これ以外にも、e-MailクライアントやWWWブラウザーなどが挙げられる。
【0040】
また、BWA用端末なので、Layer2はIEEE802.16e MAC(Media Access Control)、Layer1はIEEE802.16e OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access) PHY(Physical layer)となっている。
【0041】
[BWA用端末内部構成:図4]
次ぎに、BWA用端末内部における構成及びアプリケーションデータの流れについて図4を用いて説明する。図4は、BWA用端末内部における構成及びアプリケーションデータの流れを示す図である。
BWA用端末内部において、図4に示すように、SDP生成部41と、SDP解析部42と、DSA−REQ Message 生成部43と、アプリケーション部44と、TCP/UDP部45と、IP部46と、Packet Classifier 部47と、UGS部48と、Extended rtPS部49と、rtPS部50と、nrtPS部51と、BE部52と、Scheduler部53と、IEEE802.16e OFDMA PHY部54とを備えている。
【0042】
SDP生成部41は、BWA用端末40の用途に応じてSDPを生成する。SDP生成部41の詳細は後述する。
SDP解析部42は、NGNの優先度クラスとBWAのQoSクラスの対応票を備え、SDPを解析してNGNの優先度クラスに対応したBWAのQoSクラスを決定し、ポート番号と決定したQoSクラスの対応表を生成し、その対応表をPacket Classifier部47に通知して、IPパケットをそれぞれのQoSクラスのキューに振り分けさせる。
また、SDP解析部42は、SDPを解析してNGNの優先度クラスに対応したBWAのQoSクラスを決定すると、そのQoSクラスをDSA-REQ message内に設定するよう指示し、その他指示を行う。
SDP解析部42の詳細は後述する。
【0043】
DSA−REQ Message 生成部43は、SDP解析部42の指示に従って、DSA-REQ MessageのQoSパラメータを設定して、DSA-REQ Messageを生成し、BWA用無線基地局に通知する。
【0044】
アプリケーション部44は、音声・映像のデータを入力し、当該データの内容をSDP生成部41に通知して、当該データをTCP/UDP部45に出力する。
TCP/UDP部45は、トランスポート層のプロトコルとしてTCP(Transmission Control Protocol)/UDP(User Datagram Protocol)に従い、アプリケーション部44からのデータとSDP生成部41から通信相手に通知するためのSDPを入力し、データ転送管理の処理が為されてIP部46に処理されたデータが出力される。
【0045】
IP部46は、ネットワークレイヤにおけるIPデータグラムの道筋を決めるルート決定等を行い、データをPacket Classifier 部47に出力する。
Packet Classifier 部47は、SDP解析部42から通知されたポート番号とQoSクラスの対応表に基づいて、IPパケットをそれぞれのQoSクラスのキューに振り分ける処理を行う。
【0046】
UGS部48は、固定量のデータをリアルタイムで伝送するUGS(Unsolicited Grant Service)モードでデータ処理を行う。
Extended rtPS部49は、無音圧縮機能でデータを伝送するExtended rtPS(Real Time Polling Service)モードでデータ処理を行う。
rtPS部50は、可変量のデータをリアルタイムで伝送するrtPS(Real Time Polling Service)モードでデータ処理を行う。
nrtPS部51は、時間遅延が許されるが不定期に可変量のデータ伝送を行うnrtPS(Non Real Time Polling Service)モードでデータ処理を行う。
BE部52は、遅延について規定せず、ジッターについても規定しない無保証のBE(Best Effort)モードでデータ処理を行う。
【0047】
Scheduler部53は、DSA−REQ Message 生成部43で生成されたDSA-REQ Messageに従い、各QoSのクラスで処理されたデータを各端末の無線フレームにおいて帯域及び時間割り当てを行う。
IEEE802.16e OFDMA PHY部54は、Scheduler部53から入力された無線フレームをIEEE802.16eのOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式により物理層(Physical Layer:PHY)での伝送を実現する。
【0048】
図4において、SDP生成部41からSDP解析部42へ、更にDSA−REQ Message 生成部43及びPacket Classifier部47への太い線は、SDPによる、各機能部への制御情報の流れを示している。また、アプリケーション部44からIEEE802.16e OFDMA PHY部54への細い線は、アプリケーションデータの流れで、アップリンクの通信にフォーカスして、示している。
【0049】
[SDP生成部41]
次ぎに、SDP生成部41について説明する。
BWA用端末がTV電話で、動画データの双方向通信を行う場合、動画アプリケーションとSDP生成部41が連携して、SDP生成部41で、media-type = video かつ a = sendrecvのSDPを生成する。SDPの詳細は、非特許文献3に記載されている。
【0050】
また、BWA用端末がVoIP電話を行う場合、VoIPアプリケーションとSDP生成部41が連携して、SDP生成部41で、media-type = audio かつ a = sendrecvのSDPを生成する。また、VoIPの音声CodecがG.711の場合、a=rtpmap:0 PCMU/8000のSDPを生成する。そして、VoIPのPacket化の周期が20msecの場合、SDP生成部41でa=ptime:20を生成する。
また、SDP生成部41は、アプリケーションデータが使用する通信ポートをSDPにm=port番号として書き込む。
【0051】
このSDP生成部41は、非特許文献3のSDP(Session Description Protocol)に従ったアプリケーションの呼制御情報を生成する機能部で、VoIP電話機などに用いられている一般的なものである。また、このSDP生成部41で作成されたSDPは、SDP解析部42と通信相手に通知するためにTCP/UDP部45に送られる。
【0052】
[SDP解析部42]
次に、SDP解析部42について説明する。このSDP解析部42がこの発明で一番重要な機能である。
[優先度クラスとBWAのQoSの対応:図5,6]
SDP解析部42では、図6のNGNの優先度クラスとBWAのQoSの対応表を有する。図6の対応表は、図5の表とBWAのQoSクラスを対応付けたものである。ここで、図5は、SDPによる転送品質クラスの指定方法を示す図であり、図6は、NGNの優先度クラスとBWAのQoSの対応表を示す図である。
【0053】
このSDP解析部42では、SDPのm行/a行を解析して、このm行/a行に対応した図6のBWAのQoSクラスを決定する。
[ポート番号とBWAのQoSクラスの対応:図7]
また、SDPのm=port番号のport番号と前に決定したQoSクラスより、図7に示すポート番号とBWAのQoSクラスの対応表を生成し、この対応表を図4のPacket Classifier部47に通知する。図7は、SDPのm=port番号のport番号とBWAのQoSクラスの対応表の例を示す図である。
【0054】
図4のPacket Classifier部47では、この図7の対応表に従って、IPパケットをそれぞれのQoSクラスのキューに振り分ける。また、図7の対応表でポート番号が明示されていないIPパケットについては、BEとして扱う。
【0055】
[DSA−REQ Message 生成部43への指示]
次ぎに、SDP解析部42からDSA−REQ Message 生成部43に対して為される指示について説明する。
SDP解析部42は、DSA−REQ Message 生成部43に対しては、SDPのm行/a行を解析して、図6のBWAのQoSクラスを決定し、そのQoSクラスをDSA-REQ message内のUL Grant Scheduling Type
parameterに設定するように指示する。
【0056】
また、SDP解析部42は、SDP内にa=ptime:値が存在する場合には、この値をDSA-REQ message内のUnsolicited Polling Intervalの値に設定するように指示する。
また、SDP解析部42は、SDP内にa=rtpmap:0 PCMU/8000が存在する場合、DSA-REQ message内のMinimum Reserved Traffic Rateの値に10000から160000の間の値を設定するように指示する。
【0057】
PCMU/8000の場合、片方向通信のIPパケット量は80000bpsであるが、BWA無線通信区間では、このIPパケットに対してBWAのMAC Headerが追加され、さらに、BWAの通信ではPiggybackによる通信も可能なので、Piggybackによるデータ量の増加がおきる。そのため、80000bpsより大きい伝送量が必要である。Piggybackの量は、無線の電波レベルの変動量にも依存するため、一概に決めることができない。そのため、100000から160000の値としている。
【0058】
[DSA−REQ Message 生成部43]
DSA−REQ Message 生成部43は、SDP解析部42の指示に従って、以下に示すDSA-REQ MessageのQoSパラメータを設定して、DSA-REQ Messageを生成する。
DSA-REQ Message
UL Grant Scheduling Type
parameter
Minimum Reserved Traffic Rate
unsolicited polling interval
この生成されたDSA-REQ Messageは、図4のScheduler部53とIEEE802.16e OFDMA PHY部54を通って、BWA用無線無線基地局に通知される。
【0059】
図7の通信シーケンスは、BWA無線区間のアップリンク通信におけるQoSクラスの設定シーケンスで、先のDSA-REQ Messageもこのシーケンスを使う。DSA-ACKが終了すると、BWA無線区間でのQoSクラスの設定が終了して、無線区間におけるQoSが働くようになる。
【0060】
例えば、BWA用端末が発信元となるVoIP通信を例にすると、SDP生成部41はVoIPアプリケーションと連携して、以下の内容を含むSDPを生成する。
M=audio 26696 RTP/AVP 0
a=rtpmap:0 PCMU/8000
a=sendrecv
a=ptime:20
【0061】
次に、SDP解析部42がこのSDPを解析して、ポート番号:26696,BWAのQoSクラス:USGというポート番号とBWAのQoSクラスを図7の対応表に追加して、図4のPacket Classifier部47に通知する。
【0062】
図4のPacket Classifier部47では、ポート番号26696のIPパケットをUGSのキューに入れる。
また、SDP解析部42は、DSA−REQ Message生成部43に、DSA-REQ Messageを以下のように設定するように指示する。
DSA-REQ Message
UL Grant Scheduling Type
parameter:UGS
Minimum Reserved Traffic Rate: 104000
unsolicited polling interval:20
【0063】
[通信シーケンス:図8]
DSA−REQ Message生成部43では、上記値をセットしたDSA-REQ Messageを生成し、BWA用無線基地局に通知する。その後の通信シーケンスは、図8のようになり、BWA無線区間でのアップリンクのQoSが設定される。BWA無線区間でのQoSクラスがUGSとなるため、BWA無線区間では、最優先となる。図8は、BWA無線区間でのQoSクラスの設定シーケンスを示す図である。
【0064】
また、このSDPの通信は、図5のNGNの優先度クラスで最優先クラスとなるので、NGNネットワーク内でも最優先となる。
BWA無線区間でも、NGN内でも最優先となるので、End-to-Endで最優先となり、遅延の少ないVoIP通信が可能となる。
【0065】
DSA-REQ MessageのQoSパラメータの一部が、非特許文献1で規定されている。これらのパラメータを設定することで、BWA用無線基地局とBWA用端末間の無線区間でのQoSが受けられる。
【0066】
[DSA-REQ Message内のQoSパラメータ:図9〜11]
図9〜図11に示したものは、DSA-REQ Message内のQoSパラメータの一つ一つを詳細化したものであり、非特許文献1と非特許文献2で規定されている。図9は、Minimum Reserved Traffic Rate
parameterを示す図であり、図10は、UL Grant Scheduling Type
parameterを示す図であり、図11は、Unsolicited Polling Interval
parameterを示す図である。
【0067】
また、BWA用無線基地局が送信側、BWA用端末が受信側となるダウンリンク通信では、DSA-REQ MessageはBWA用無線基地局が発行する。逆に、BWA用無線基地局が受信側、BWA用端末が送信側となる上りリンクの通信では、DSA-REQ MessageはBWA用端末が発行する。
【0068】
BWA通信方式の場合、BWA用無線基地局のMAC Schedulerによる集中制御方式なので、上りリンクの通信でQoSを行うには、BWA用端末がDSA-REQ Messageを発行して、どのようなQoSレベルの通信を行いたいかをBWA用無線基地局に通知しなければならない。
【0069】
BWA用無線基地局のMAC Schedulerでは、各端末からのDSA-REQ MessageのQoSレベルやパラメータを見て、各端末の無線Frameの帯域割当量や割当時間を制御する。
BWAでは、一般的に、図4のUGSが一番優先度が高く、BEが一番優先度が低い仕組みになっている。そのため、優先度の高さは、USG > Extended rtPS > rtPS > nrtPS > BEの順番となる。
【0070】
図5では、図1の次世代ネットワーク(NGN)内での優先度レベルとそのレベルに対応したSDPの内容が表となって示されている。この表は、非特許文献4 表a−1:SDPによる転送品質クラス指定に書かれている。
【0071】
本実施の形態において、図5のNGN側での優先度クラス(最優先クラス、高優先度クラス、優先度クラス)と、図4のBWA無線区間での5段階のQoSクラス(USG、Extended rtPS、rtPS、nrtPS、BE)の対応付けをおこなっており、図6がその対応表である。
【0072】
BWAのExtended rtPSは、無音圧縮機能を有するVoIP用のQoSクラスであり、NGNでは無音圧縮を用いたVoIP通信を行わないため、このQoSクラスへの対応付けは行っていない。
また、NGNの優先クラスがない部分に、BWAのBEを対応付けている。この理由としては、NGNを含めたEnd-to-EndのQoSが保証できないため、BWA無線区間でもBEと設定している。
【0073】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態によれば、次世代ネットワークのアクセス系に、広帯域無線アクセスシステム(BWA)を使用しても、End-to-EndのQoS(Quality of Service)が行うことができ、快適な通信を実現できる効果がある。
【0074】
また、本システムによれば、Policy Serverを用いていないので、Policy Serverダウンによる通信障害を防ぐことができると共に、コストを削減できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、次世代ネットワークのアクセス系にIEEE802.16eを使用しても、End-to-EndのQoSが保たれ、快適な通信ができる無線端末装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態に係るネットワークシステムの構成ブロック図である。
【図2】IEEE Std.802.16のプロトコルアーキテクチャモデルを示す図である。
【図3】BWA用端末のプロトコルスタックの例を示す図である。
【図4】BWA用端末内部における構成及びアプリケーションデータの流れを示す図である。
【図5】SDPによる転送品質クラスの指定方法を示す図である。
【図6】NGNの優先度クラスとBWAのQoSの対応表を示す図である。
【図7】SDPのm=port番号のport番号とBWAのQoSクラスの対応表の例を示す図である。
【図8】BWA無線区間でのQoSクラスの設定シーケンスを示す図である。
【図9】Minimum Reserved Traffic Rate parameterを示す図でである。
【図10】UL Grant Scheduling Type parameterを示す図でである。
【図11】Unsolicited Polling Interval parameterを示す図である。
【符号の説明】
【0077】
10…次世代ネットワーク(NGN)、 11…SIP(Session Initiation Protocol)サーバ、 12…Video On Demand (VoD)サーバ、 13…Voice over IP (VoIP)用電話機、 14…ホームサーバ、 20…ホームエージェント(Home Agent)、 30…ASN−GW(Access Service Network-Gateway)、 31…BWA用無線基地局、 40a,40b…BWA用端末、 41…SDP生成部、 42…SDP解析部、 43…DSA−REQ Message 生成部、 44…アプリケーション部、 45…TCP/UDP部、 46…IP部、 47…Packet Classifier 部、 48…UGS部、 49…Extended rtPS部、 50…rtPS部、 51…nrtPS部、 52…BE部、 53…Scheduler部、 54…IEEE802.16e OFDMA PHY部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアネットワークを備える無線アクセスシステムに接続する無線端末装置であって、
予め、前記コアネットワークにおける通信のセッションに関するプロトコルのパラメータと上りリンクの品質確保のQoS制御におけるQoSレベルが、利用するアプリケーションに応じて対応表として記憶されており、前記対応表により、アプリケーションのサービスに応じたパラメータに基づいてQoSレベルの設定を行い、前記QoSレベルと前記パラメータとのマッピングを行うことを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
アプリケーションのサービスの内容に応じて、パラメータと、QoSレベルと、当該サービスが使用するポート番号とが対応付けて記憶されており、
QoSレベルの設定を行う場合に、対応するポート番号のポートを通過するパケットを、当該QoSレベルのキューに振り分けることを特徴とする請求項1記載の無線端末装置。
【請求項3】
無線アクセスネットワークにおける上りリンクのQoSを設定するために、無線基地局に通知されるメッセージのパラメータを、アプリケーションのサービスに応じて定められた通信のセッションに関するプロトコルのパラメータに基づいて設定することを特徴とする請求項1又は2記載の無線端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−68025(P2010−68025A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229776(P2008−229776)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】