説明

無線装置、その制御方法、およびプログラム

【課題】スマートキーなどに必要なキーの位置判別を指向性切替アンテナで簡易な構成で実現する。
【解決手段】車両9の天井に設置した平面式の指向性アンテナ8で、携帯無線機6からの電波を受信して電波強度レベルを計測することで、指向性10、11、12の方向とRSSI値の関係から携帯無線機6の位置を判別する。これにより、キーレスエントリーやスマートキー機能用に新たに複数のアンテナを設置せずとも、車両ドアの施解錠の際やエンジン始動の際に、携帯無線機6のある側のドアだけを解錠したり、携帯無線機6を所持しない不正なエンジン始動を防止したり、鍵の閉じ込めを防止したりといった機能を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスマートエントリー(登録商標)やスマートキー(登録商標)などの車載用無線キー装置に関する発明であり、特にユーザが携帯機を所持して接近した側のドアのみを解錠したり、キーの車内への閉じ込めを防止するといった車載用無線キー装置のセキュリティ機能に関わる発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用無線キー装置としてスマートエントリー(登録商標)、スマートキー(登録商標)などと呼ばれるような、無線機を内蔵した携帯キーを所持して車両に接近するだけでドアロックが解錠され、キーを鍵穴に差し込んで回さなくても、ドアのノブを上げたりエントリースイッチに触れるといった操作をするだけでドアを開けて乗り込むことのできる無線キー装置が登場して来ている。
【0003】
こうした無線キー装置では、ユーザが車両のドアのノブやスイッチにタッチした際や、間欠的に繰り返し行う送受信の電波強度レベルが閾値を超えた際に、携帯キーを所持したユーザが車両に接近したとして認証用符号(以下、ID)を含んだ暗号文を相互に通信してIDの照合を行い、正しい携帯キーであると判定すればドアを解錠するようになっている。
【0004】
この機能に加えて、更にセキュリティ上の観点から、車両の反対側に潜んだ不審者が乗り込めないよう携帯キーの存在する側のドアのみを解錠する保護機能や、窓を破壊して車両に乗り込んでも携帯キーを所持してないとエンジンが始動しない保護機能、携帯キーを車内に置き忘れている場合は閉じ込め防止のため施錠できないようにする利便機能、などの機能が備えられているのが普通である。
【0005】
こうした機能を実現するためには、施解錠やエンジン始動の際に携帯キーの位置を判定することが必要であり、通信の開始のトリガとなる通信やIDを含んだ通信を行うための微弱無線機に加え、携帯キーの位置特定のために長波用のアンテナをダッシュボード下や運転席と助手席の間、各ドアの内部やミラー内部といった車両の各部分に5〜6個以上備える構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1では、複数の位置に設置した複数のアンテナと携帯キーとの間で電界強度レベルを計測し、各複数のアンテナ位置と電界強度レベルの相関関係から、携帯機の位置を特定するようになっている。
【特許文献1】特開2002−77972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法では、携帯キーの位置判定を行うためのアンテナを複数設置しなければならない。その設置箇所もドアやミラー等の可動部に設置せざるを得ない場合が多いなど、設置作業の工数、ハーネスなどに要する費用などを考えれば得策ではない。
【0008】
本発明は、上記する従来の問題を解消するためになされたものであり、1箇所に設けたアンテナの電波送受信感度の強いエリア(以下、指向性)を切り替えることにより、切り替えた指向性の方向ごとの電界強度レベルを計測することにより、携帯キーの位置を判定するものである。
【0009】
これによりキーレスエントリーやスマートキー機能用に複数のアンテナを車両の各部に設置する必要がなくなり、車両ドアの施解錠の際やエンジン始動の際に携帯キーの位置を判別することができ、複数アンテナ設置の設計や設置作業の工数や調整の手間の増加を招くことなく、携帯機のある側のドアだけを解錠したり、不正なエンジンの始動を防止したり、鍵の閉じ込めを防止したりといった機能を実現でき、セキュリティ性や利便性の向上効果を実現できうるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、前記従来の課題を解決するために、ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯無線機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置において、前記携帯無線機は、前記車載無線機からのリクエスト信号を受信する第1の受信手段と、前記リクエスト信号の電界強度レベルを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値を含んだアンサー信号を返信する第1の送信手段を備え、前記車載無線機は、電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替える指向性アンテナ手段と、前記リクエスト信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて送信する第2の送信手段と、前記携帯無線機から返信されたアンサー信号を受信する第2の受信手段と、前記アンサー信号に含まれた前記複数の方向ごとの計測値に基づいて前記携帯無線機の位置判定を行う位置判定手段とを備えるようにしている。
【0011】
これにより、複数のアンテナを車両の各部に備える必要なく、アンテナの指向性と電界強度レベルの強弱関係から携帯機の存在方向を判定でき、車両ドアの施解錠やエンジンの始動の際に携帯無線機の位置を判定した結果に応じてセキュリティ性や利便性の高い制御ができうるものである。
【発明の効果】
【0012】
このように、キーレスエントリーやスマートキー機能を、車両の各部に複数アンテナを設置する必要がなく実現でき、セキュリティ性や利便性に優れた車載用の無線装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯無線機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置において、前記携帯無線機は、前記車載無線機からのリクエスト信号を受信する第1の受信手段と、前記リクエスト信号の電界強度レベルを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値を含んだアンサー信号を返信する第1の送信手段を備え、前記車載無線機は、電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替える指向性アンテナ手段と、前記リクエスト信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて送信する第2の送信手段と、前記携帯無線機から返信されたアンサー信号を受信する第2の受信手段と、前記アンサー信号に含まれた前記複数の方向ごとの計測値に基づいて前記携帯無線機の位置判定を行う位置判定手段とを備えるようにしている。
【0014】
これにより、1箇所に設置したアンテナの指向性を切り替えることで、新たに携帯無線機の位置を判定するための複数のアンテナを車両の各部に設置する必要なく、携帯無線機の存在位置に応じた最適な車両装備の制御が可能となる。
【0015】
第2の発明は、ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置において、前記携帯無線機は、電界強度レベル計測用信号を送信する第1の送信手段を備え、前記車載無線機は、電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替える指向性アンテナ手段と、前記電界強度レベル計測用信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて受信する第2の受信手段と、前記電界強度レベル計測信号の電界強度レベルを計測する計測手段と、前記電界強度レベル計測手段が計測した前
記複数の方向ごとの電界強度レベルの計測値に基づいて、前記携帯無線機の位置判定を行う位置判定手段とを備えるようにしている。
【0016】
これにより、1箇所に設置したアンテナの指向性を切り替えることで、新たに携帯無線機の位置を判定するための複数のアンテナを車両の各部に設置する必要なく、携帯無線機の存在位置に応じた最適な車両装備の制御が可能となる上、車載無線機側で電界強度レベルを計測するので、計測値を形態無線機から送信する必要がなく、盗聴などに対して、よりセキュリティ性が向上できる。
【0017】
第3の発明は、第1ないし第2の発明に加えて、前記車両のドアに備えた解錠スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記位置が前記タッチした車両のドアの近傍である場合に、前記ドアを解錠するようにしている。
【0018】
これにより、タイヤ空気圧センサ無線機の電波を利用することで、携帯無線機の位置を判定するために複数のアンテナを車両の各部に設置する必要なく、必要なドア以外を解錠しないセキュリティの高い無線装置が実現できる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第2の発明に加えて、前記車両のドアに備えた施錠スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記位置が前記車両外であった場合に前記ドアを施錠するようにしている。
【0020】
これにより、1箇所に設置したアンテナの指向性を切り替えることで、携帯無線機の位置を判定するために複数のアンテナを車両の各部に設置する必要なく、携帯無線機を誤って車内に閉じ込めたりする不都合が発生することのない利便性の高い無線装置が実現できる。
【0021】
第5の発明は、第1ないし第2の発明に加えて、前記車両のエンジン始動スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記位置が前記車両内であった場合にエンジンの始動を行うようにしている。
【0022】
これにより、1箇所に設置したアンテナの指向性を切り替えることで、携帯無線機の位置を判定するための複数のアンテナを車両の各部に設置する必要なく、ドアを破ったりして不正に車両に乗り込んだような場合でもエンジンを始動することのできないセキュリティの高い無線装置が実現できる。
【0023】
第6の発明は、ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯無線機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置の制御方法において、前記車載無線機が電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替えるステップと、前記携帯無線機が前記車載無線機から前記携帯無線機へのリクエスト信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて送信するステップと、前記車載無線機が前記リクエスト信号を受信するステップと、前記車載無線機が前記リクエスト信号の電界強度レベルを計測するステップと、前記車載無線機が前記計測ステップでの計測値を含んだアンサー信号を前記携帯無線機から前記車載機へ返信するステップと、前記携帯無線機が前記アンサー信号を受信するステップと、前記携帯無線機が前記アンサー信号に含まれた前記複数の方向ごとの計測値に基づいて前記携帯無線機の位置判定を行うステップとを行う無線装置の制御方法である。
【0024】
これにより、1箇所に設置したアンテナの指向性を切り替えることで、携帯無線機の位置を判定するための複数アンテナを車両の各部に設置する必要なく、携帯無線機の存在位置に応じた最適な車両装備の制御方法が可能となる。
【0025】
第7の発明は、第1〜5の発明に記載の無線装置の少なくとも一部を実行するプログラムである。
【0026】
そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させて本発明の無線キーシステムの少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における無線装置の一例として、車載用の無線キー装置として構成する場合の略構成図を示すものである。図1は、車両9の上視略図を示したものであり、車両上部や座席などの構造物は除き、タイヤ1、2、3、4や車体における各無線装置の配置のみを略式に示しており、図上部が車両フロント側としている。
【0029】
図1において車載無線機8は、一例として車両内天井部に設置し、車両全体の電気制御を行う電気制御ユニットである車両制御装置(以下、ECU)に接続し、破線楕円で示すエリア10、11、12での電波送受信感度がそれぞれ高くなるようにエリア10、11、12の方向(以下、指向性)を切り替えが可能なように構成する。
【0030】
例えば、指向性を切り替え可能なアンテナの実現方法の一例としては、容量装荷型モノポールアンテナを使った低背型のアンテナなどが代表的である。これらは、車両に天井などにも装備可能な平面アンテナとして構成できる。アンテナ中心部多角形のパッチを設け、この周囲に放射素子となるパッチ電極を120度ごとに配置した3つパッチ電極部分に対して、いずれか1つもしくは2つのパッチ電極に対して電気的に給電を切り替えることで3方向に指向性を変化させることが可能なものもある。
【0031】
この車載無線機8は、ECU7のプログラムと連動することにより、キーレスエントリ機能の受信機としての機能を備え、ユーザ5が所持した携帯無線機6に備えたスイッチを押下したりタッチするなどの操作した際などの無線電波を受信し、受信した内容をECUに入力して、ドアの解錠やエンジン始動などの制御を行うものである。
【0032】
図1では携帯無線機6は、ドアの開閉やエンジン始動などを従来と同じく手動で行うためのメカニカルキーなどと一体構成としてユーザ5が所持する携帯キーとしてキーホルダなどのユーザ5が常時携帯しやすい形状に構成する。
【0033】
本実施の形態1では、携帯無線機6と車載無線機8の間で通信する際に、特に車載携帯機8の指向性をエリア10、11、12に切り替えて、各々の指向性での電波の電界強度レベル(以下、RSSI)を計測し、それぞれの指向性でのRSSIの大小関係により携帯無線機6の位置を判定する。
【0034】
これにより、ECU7はユーザによる車両ドアの施解錠やエンジン始動の際の携帯無線機6の位置を判定し、位置に応じた制御を実行することで、セキュリティ性やキー閉じ込め防止などの利便性を向上した無線装置を実現できうるものである。
【0035】
すなわち、ユーザがドアを開けようと車両ドアのノブやスイッチ(図示せず)にタッチした際に車両ドアを包含する存在エリアに携帯無線機6が存在しない、エンジン始動の際
に携帯無線機8が運転席を包含する車内に存在しない、などの場合は、不正に車両が操作されているとして、車両ドアを施錠したままにしたりエンジンが始動できなくするといったセキュリティ機能のほか、車両ドアを施錠する操作がされた際に携帯無線機6が車内に存在すれば施錠を実行せずブザーで報知してキー閉じ込めを防止するといったユーティリティ機能を実現できうるものである。
【0036】
図2は、各無線機の構成を示したブロック図であり、携帯無線機6はユーザが所持する携帯キー内に構成した無線機部分であり、無線機全体を制御する制御部15、第1の送信手段である送信部16、第1の受信手段である受信部18、受信電文に含まれる識別符号(以下、ID)から通信すべき相手からの電文かを判定するとともに暗号化電文の復号などを行う認証部17、受信電文のRSSIを計測する計測手段である電界強度レベル計測部14、およびアンテナ部13を備えている。制御部15は、マイコン、メモリとその周辺回路で構成し、認証部17は、予め記憶したプログラムに従って、制御部15を構成するマイコンの処理の一部として実行してもよい。
【0037】
また、同様に車載無線機8は、制御部20、電界強度レベル計測部19、認証部22、第2の送信手段となる送信部21、第2の受信手段となる受信部23とアンテナ部25を備える。更に、車載無線機8は、指向性切替部24を備える。指向性切替部24は、アンテナ部25と共に指向性アンテナ手段を構成し、制御部20からの信号により、アンテナ部25を構成する複数の放射パッチ電極への接続または切断を行うことにより、指向性を切り替えを行う。また、指向性切替部24は、放射パッチ電極の数や構成により、必要に応じて電波信号の位相の進行、遅延を行う位相回路を備えるよう構成する。
【0038】
一般的には、電波の反射や回折などのマルチパスの影響が大きくない場合には、受信される電波のRSSIは、伝搬減衰により送信元からの距離と共に減衰する。また、指向性の方向からの電波は、他の方向からの電波に比べてRSSIは大きくなる。従って、指向性の方向とRSSIにより、車載無線機8と携帯無線機6の相対位置を略判定できうる。更に、この位置判定を精度よく行うために、予め車両室内や車両周辺において予めRSSIを測定したデータを元に参照テーブルを作成して制御部20に記憶しておき、参照テーブルとの誤差距離演算などを行う方法も有効である。
【0039】
図1において簡略化した例で説明すると、携帯キー6で計測したRSSIを比較して、指向性アンテナ8の指向性をエリア10の方に切り替えた場合が、他のエリア11、12に指向性を切り替えた婆に比べてRSSIが最大である場合には、運転席側のドア付近にユーザがいると判定できる。また、エリア12に指向性を切り替えた場合が他のエリア10、11に指向性を切り替えた場合に比べてRSSiが最大であれば、後部トランク方向にユーザがいると判断できうるのである。更に、エリア10、11に指向性を切り替えた場合が、残るエリア12に比べて極端に大きい場合など、複数のエリアで大きいRSSIが計測された場合は車室内であると判断することができる。
【0040】
なお、これらの判定方法は、簡略化のために図1のようにエリアを3つに設定した場合の例であるが、アンテナ部25の放射パッチ電極数を増やして切替エリアを増加させたり、他のエリアのRSSI地との比率演算、閾値を設けてRSSI値の数値範囲を限定するなどの方法で、携帯キー6の位置判定の精度を向上させうることが可能である。
【0041】
従って、例えばこうした判定をユーザ5が車両ドアを開けようとドアのノブやキーレスエントリ機能用に設けたエントリスイッチにタッチしたタイミングで行い、正当なユーザであることを示す携帯キー6を所持したユーザが、運転席、助手席、後部トランクの何れの箇所のドアを開けようと意図しているかを判定することにより、ユーザ5がいない箇所のドアは施錠したままとする。
【0042】
これにより、ユーザ5が車両9に乗り込もうとした際に、車両の反対側に潜んでいた不審者がユーザ5のドアを開くタイミングで反対側のドアを開けて共乗り込みしてくるといった不正行為を防止でき、防犯性の高いキーレスエントリー装置を実現できうるものである。
【0043】
最後に、図3、図4を用いて携帯キー6を所持したユーザ5が何れの方向にいるかを判別する際のECU7、各無線機の動作を示すフローの一例について説明する。
【0044】
まず、図3の動作フロー図では、携帯キー3を所持したユーザが運転席、助手席、後部トランクのいずれかのドアを開けるために、ドアノブもしくはキーレスエントリー用のエントリスイッチにタッチすると(ステップS30)、ECUは、ドアに設置されたタッチセンサからドアが開けようとされたことを検出する。ECUは、車載無線機8に信号を送出して、アンテナの指向性をそれぞれエリア10、11、12に切り替えて、順次リクエスト信号となる無線電波RF42、43、44を送信させる。
【0045】
一方、携帯無線機6は、一定時間おきに電波が送信されてきているかどうかをチェックするキャリアセンスを行い(ステップS35)、もし電波が送信されてなければ、一定時間ごとにステップS35を繰り返す。
【0046】
無線電波RF42は、ヘッダ部分に携帯無線機6がキャリアセンスを行う間隔時間分の同期信号を送出し、携帯無線機5はこの同期信により同期を合わせてRF42、43、44を受信する。このときRF42、43、44はそれぞれ同期信号を付与しても良いが、連続する電文のそれぞれ一部分として送出してもよい。
【0047】
ステップS35でキャリアセンスにより無線電波が送信されていることを検出すると、携帯無線機6はエリア10、11、12のそれぞれの指向性でのRSSIを計測して記憶する。この場合、車載無線機8側での指向性の切替は、無線電波RF42の同期部分以降一定時間若しくは一定長電文を送信するごとにRF43、RF44に切り替わるよう予め通信のプロトコルを決めておけば携帯無線機6はいずれの指向性の切替タイミングを検出でき、指向性ごとのRSSIを判別できる。
【0048】
なお、図示していないが、無線電波RF42、RF43、RF44には、車載無線機8と、携帯無線機6が正当な組み合わせである事を認証するIDを含んでおり、携帯無線機6でIDが認証されない場合は、計測したRSSIは破棄する。また、いずれかの指向性での無線電波が弱すぎて受信できない場合や、予め取り決めた閾値より小さい場合もRSSI値は破棄する。
【0049】
ステップS36でエリア10、11、12のそれぞれの志向性でのRSSI値を計測すると、これらの値を含むアンサー信号である電文RF45を車載無線機8に送信する。電文RF45を受信した車載無線機8は、これをECU7に入力する(ステップS37)。指向性ごとのRSSIの計測値を入手すると、ECUはこれらの値から携帯無線機6の存在位置を判定し(ステップS38)、携帯キー6の位置とステップS30でタッチしたドアの方向が一致すれば(ステップS39)、ドアを解錠する(ステップS41)。もしステップS39で一致しなければ、ドアを施錠、もしくは施錠したままとする(ステップS40)。
【0050】
この際、ハザードランプを点灯したり、クラクションや警告ブザーを鳴らすなど、ドア解錠が受け入れられたことや、不正な位置のドアが操作をされたことなどを報知するアンサーバック制御を行えば、より効果的である。
【0051】
また、RSSIを返送する電文RF45や、ステップS38で携帯キー6の位置をECU7で判定する代わりに、携帯無線機6や車載無線機8側で位置判定までを行い、判定結果を示す位置コードなどをRF46の電文として送信する構成などでも構わない。
【0052】
加えて、いずれのドアを判定対象にするかにより、指向性のエリアは必ずしも3箇所である必要は無く、増減しても構わない。例えば、運転席ドアのみを判定する場合には、エリア10、11に向ける指向性の方向のみからRSSI計測用の電波を送信するといった構成も可能である。
【0053】
続いて図4には、別のシーケンスとして携帯キー6側からRSSI計測用の電波を送信する構成を説明する。図3に比べて、計測したRSSIを送信する必要がないため、電文の盗聴などの高度な不正行為に対してもセキュリティが高められる上で有効なものである。
【0054】
図4において、ユーザが車両に近づいてドアへのタッチを行うと(ステップS43)、ECUはドアのタッチがあった旨の信号を車載無線機8に送り、車載無線機8は携帯キー6の位置を判定するためのRSSI計測用電文を携帯キー6から送出させるためのリクエスト電文(RF52)を送信する(ステップS44)。
【0055】
一方、携帯無線機6は、一定インターバルで送信電波があるかどうかをチェックするキャリアセンスをしており(ステップS45)、もし電波があればこのリクエスト電文(RF52)を受信してRSSI計測用のアンサー電文(RF53)を送出する処理に移行し、電波がなければステップS45のキャリアセンス処理を継続する。
【0056】
車載無線機8は、指向性をエリア10、11、12に順次切り替えてアンサー電文RF52のRSSIを計測し(ステップS47〜S49)、車載無線機8とECU7を接続するインターフェイス信号によりECU7に入力される。続いて、ECU7は入力されたRSSIから携帯キー6の位置を判定する(ステップS50)。
【0057】
判定方法としては、図3に説明したと同様の方法が適用できうる。すなわち説明を簡略化した判定方法の一例としては、RSSI計測用電文(RF53)にて計測されたRSSIは、どのエリアに携帯機キー6が存在したかを示しており、即ち一番大きなRSSIを計測したエリアに携帯機キー6が存在すると判定できる。今、仮に指向性のエリア10に切り替えた際に計測したRSSIが最大であった場合には、携帯キー6を所持したユーザは運転席側のドア近傍エリアに居ると判定できうる。
【0058】
以上の説明では、携帯キー6の存在位置の判定はECU7にて行う構成を述べたが、車載無線機8で行って結果をECU7に入力する構成でも構わない。
【0059】
続いて、ステップS50で携帯機の位置を判定し、この結果がステップS43でタッチされたドアのある方向と一致するかを判定し(ステップS51)、もし一致すればタッチされたドアを解錠し(ステップS53)、一致しなければ携帯キー6を所持しない不審者によりドアにタッチしたと判定してドアを施錠したままとする(ステップS52)。
【0060】
これまでの説明では、車両ドアを解錠する際の説明を行ったが、エンジン始動や降車した際の施錠時にも同様に適用できうる。例えば、エンジン始動のスイッチを操作した際に、図3もしくは図4のシーケンスにて判定を行い、携帯キー6が車内もしくは運転席付近になければエンジンを始動しないよう制御する構成や、降車してドアロックのスイッチを操作した際に、図3もしくは図4のシーケンスにて判定を行い、携帯キー6が車内に有っ
たり、運転席側のドア付近になかった婆には施錠せず注意換気の報知を行う制御をする構成を実現できうるものである。
【0061】
ここまでの図4の説明では、ユーザ5が車両のドアにタッチする動作をトリガとして送受信する無線通信によりRSSIを計測する例を示したが、携帯無線機6が定期的にRSSI計測用電文を繰り返し送信し、これを車載無線機8で受信して携帯キー6の存在位置を予め判定しておけば、ユーザ5が車両に近づいてくる段階で事前に携帯キー6の位置を判定でき、ユーザがドアにタッチしてから判定を行うよりも応答が早くなる点で有効である。
【0062】
更に、携帯キー6に備えた車両ドアの施錠や解錠の操作をユーザ5が、手動スイッチを押下した手動で行うような遠隔操作の機能を実装する場合においても、車載無線機8でこの遠隔操作の電波のRSSIを計測して携帯キー6の存在位置を判定しておけば、車両の反対側のドアを施錠したままにして不審者の共乗り込みを防止したり、車両から極端に離れている場合は解錠を受付けないなど、セキュリティ性を向上できる。
【0063】
最後に、本実施の形態1は車両のキーレスエントリー(登録商標)、スマートエントリー(登録商標)用の無線装置として説明したが、例えば携帯キーが近辺に無いと決済機能や住所録の表示、通話機能がロックされる携帯電話システムや、玄関ドアの電子錠に携帯キーを携帯して接近した場合に自動的に解錠されるシステムや、携帯キーを所持した管理者が機器の近傍エリアに居ない場合は印刷や入力が受け付けられないプリンタやパソコンのような情報機器への応用など、携帯電話用以外の機器へも広く応用できうるものである。
【0064】
なお、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したりインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明によれば、車両の複数箇所にアンテナを付設する工数を必要とせず、携帯無線機の位置を特定でき、車両ドアの施解錠やエンジンの始動の際に携帯無線機の位置を判定した結果に応じてセキュリティ性や利便性の高い無線装置が実現できる。
【0066】
また、キーに限らず認証を行う無線認証システムにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一例となる実施の形態1における無線装置を車両に配置する一例を示した略上透視図
【図2】本発明の実施の形態1における無線装置の各無線機の構成を示す略ブロック図
【図3】本発明の実施の形態1における車両ドアの解錠の際の通信シーケンスの一例を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1における車両ドアの解錠の際の通信シーケンスの別の一例を示すフローチャート
【符号の説明】
【0068】
5 ユーザ
6 携帯キー(携帯無線機)
7 車両制御装置(ECU)
8 車載無線機
9 車両
10、11、12 指向性(電界送受信感度の強いエリア)
14 電界強度レベル計測部(計測手段)
16 送信部(第1の送信手段)
18 受信部(第1の受信手段)
19 電界強度レベル計測部(計測手段)
21 送信部(第2の送信手段)
23 受信部(第2の受信手段)
24 指向性切替部(指向性アンテン手段)
25 アンテナ部(指向性アンテナ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯無線機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置において、前記携帯無線機は、前記車載無線機からのリクエスト信号を受信する第1の受信手段と、前記リクエスト信号の電界強度レベルを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値を含んだアンサー信号を返信する第1の送信手段を備え、前記車載無線機は、電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替える指向性アンテナ手段と、前記リクエスト信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて送信する第2の送信手段と、前記携帯無線機から返信されたアンサー信号を受信する第2の受信手段と、前記アンサー信号に含まれた前記複数の方向ごとの計測値に基づいて前記携帯無線機の位置判定を行う位置判定手段とを備えた無線装置。
【請求項2】
ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置において、前記携帯無線機は、電界強度レベル計測用信号を送信する第1の送信手段を備え、前記車載無線機は、電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替える指向性アンテナ手段と、前記電界強度レベル計測用信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて受信する第2の受信手段と、前記電界強度レベル計測信号の電界強度レベルを計測する計測手段と、前記電界強度レベル計測手段が計測した前記複数の方向ごとの電界強度レベルの計測値に基づいて、前記携帯無線機の位置判定を行う位置判定手段とを備えた無線装置。
【請求項3】
車両のドアに備えた解錠スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記携帯無線機の位置が前記タッチした車両のドアの近傍である場合に、前記ドアを解錠する請求項1ないし2記載の無線装置。
【請求項4】
車両のドアに備えた施錠スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記携帯無線機の位置が前記車両外であった場合に前記ドアを施錠する請求項1ないし2記載の無線装置。
【請求項5】
車両のエンジン始動スイッチをユーザが操作した際に、前記位置判定手段による前記携帯無線機の位置判定を行い、前記携帯無線機の位置が前記車両内であった場合に前記エンジンの始動を行う請求項1ないし2記載の無線装置。
【請求項6】
ユーザが所持する携帯無線機と、前記携帯無線機との間で無線通信を行う車載無線機とを有する無線装置の制御方法において、前記車載無線機が電波送受信感度の強いエリアを複数の方向に切り替えるステップと、前記携帯無線機が前記車載無線機から前記携帯無線機へのリクエスト信号の少なくとも一部を前記複数の方向に切り替えて送信するステップと、前記車載無線機が前記リクエスト信号を受信するステップと、前記車載無線機が前記リクエスト信号の電界強度レベルを計測するステップと、前記車載無線機が前記計測ステップでの計測値を含んだアンサー信号を前記携帯無線機から前記車載機へ返信するステップと、前記携帯無線機が前記アンサー信号を受信するステップと、前記携帯無線機が前記アンサー信号に含まれた前記複数の方向ごとの計測値に基づいて前記携帯無線機の位置判定を行うステップとを行う無線装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1〜5記載のいずれか1項に記載の無線装置の少なくとも一部を実行するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−94767(P2009−94767A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263076(P2007−263076)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】