説明

無線送信機

【課題】所定の周期間隔で無線通信を行い、常時電力消費する用途に適した電源構成を有する無線通信機を提供する。
【解決手段】無線送信機10は、所定の情報を無線伝送するための電力を消費する通信モードと、無線伝送を行わずに待機電力を消費する待機モードとを交互に繰り返す無線モジュール50と、無線モジュール50に電力を供給する電源部40を備える。電源部40は、電力を蓄電する二次電池42と、光エネルギーを電力に変換する太陽電池41と、太陽電池41から二次電池42への電力供給及び二次電池42から無線モジュール50への電力供給を制御する充電回路43を備える。充電回路43は、待機モードの期間中に太陽電池41から二次電池42へ電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセキュリティ分野等で用いられる無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカードやキャッシュカードなどのカードにIC(集積回路)を組み込み、ICに特定の情報を記憶させて、非接触方式で読み取り/書き込み装置との間で情報を送受信又は更新する非接触型ICカードシステムが運用されている。特開平11−134456号公報には、太陽光エネルギーを電力に変換する太陽電池と、この太陽電池によって充電される二次電池と、この二次電池とICとの間に設けられたスイッチと、磁界を受けて誘電起電力を生じさせる薄型コイルを備え、薄型コイルに生じる誘導起電力を受けてスイッチをオンさせることにより、二次電池からICに電源電圧を供給するICカードが開示されている。このICカードによれば、読み取り/書き込み装置から発生する磁界が微少であっても、ICに安定した電源を供給することが可能となる。
【特許文献1】特開平11−134456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のICカードは、ICカードから情報を読み出すとき或いは書き込みするときにのみICに電源供給される構成となっているため、所定の周期間隔で無線通信を行い、常時電力消費する用途に適した電源構成にはなっていない。常時電力消費する用途として、例えば、携帯電話やパソコンなどを自動的にロック/アンロックする機能を備えた無線送信機が知られている。この種の無線送信機からは、認証用のIDが所定の周期間隔で携帯電話やパソコンに向けて送信される。携帯電話やパソコンは、所定の周期間隔で無線送信機から送信される電波の受信強度が閾値以下になると、自動的にロックし、この受信強度が閾値以上になると、自動的にアンロックする。このような用途に使用される無線送信機では、所定の周期間隔で無線通信を行い、常時電力を消費しているため、無線通信時間をできるだけ長くするための工夫が必要となる。
【0004】
そこで、本発明は、所定の周期間隔で無線通信を行い、常時電力消費する用途に適した電源構成を有する無線通信機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明に係わる無線送信機は、所定の情報を無線伝送するための電力を消費する通信モードと無線伝送を行わずに待機電力を消費する待機モードとを交互に繰り返す無線モジュールと、無線モジュールに電力を供給する電源部を備える。電源部は、電力を蓄電する蓄電装置と、発電素子と、発電素子から蓄電装置への電力供給及び蓄電装置から無線モジュールへの電力供給を制御する充電回路を備える。充電回路は、待機モードの期間中に発電素子から蓄電装置へ電力を供給する。通信モードの期間中に無線モジュールによって消費された蓄電装置の電力を、待機モードの期間中に発電素子から蓄電装置へ補充することで、通信時間に制限のない無線通信機器を提供できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、所定の周期間隔で無線通信を行い、常時電力消費する用途に適した電源構成を有する無線通信機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、各図を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は無線送信機10及び端末機器60の機能ブロック図を示す。無線送信機10は、アンテナ20、無線モジュール50、及び電源部40を備える。無線モジュール50は、アンテナ20、及び送信モジュール30を備える。送信モジュール30は、信号処理回路31、及び高周波回路32を備える。電源部40は、太陽電池41、二次電池42、及び充電回路43を備える。
【0008】
信号処理回路31は、CPUとメモリICとから構成されており、消費電力を抑えるための制御やIDナンバーの出力処理等を行う。メモリICには、IDナンバーと、通信フォーマットとが予め記憶されている。IDナンバーは、無線送信機を一意に識別するために割り当てられたユニークな識別情報である。通信フォーマットは、所定の通信プロトコル(例えば、400MHz帯特定省電力無線用の通信プロトコル)に準拠している。メモリICとしては、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の各種のメモリを適用できる。CPUは、IDナンバーと共に通信フォーマットをメモリICから読み出し、所定の転送レート(例えば、9600bps)で変調された所定のインターフェース形式(例えば、UARTシリアルインターフェース形式)の変調信号を高周波回路32へ断続的かつ定期的に出力する。CPUとしては、例えば、8ビットマイコンを用いることができる。
【0009】
信号処理回路31は、消費電力を抑えるための制御として、間欠通信を実施する。間欠通信では、所定の送信サイクル(例えば、15秒周期)のうち通信モードとして動作する送信期間(例えば、15msec)だけIDナンバーが所定の通信フォーマットで出力され、それ以外の待機モード(スリープモード)として動作するスリープ期間(例えば、1485msec)では、信号処理回路31及び高周波回路32の動作は待機状態に遷移する。信号処理回路31及び高周波回路32は、通信モードと待機モードとを交互に繰り返すことにより、二次電池42の消費電力を抑えている。
【0010】
高周波回路32は、チップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗等の受動部品、トランジスタ等の半導体素子等により構成される。高周波回路32は、信号処理回路31からの変調信号を受信し、通信フォーマットに従って、無線送信機10のIDナンバーを含む送信信号(例えば、300MHz帯の2値FSK変調信号)に変調する。アンテナ20は、高周波回路32によって生成された送信信号を電磁波に変換して放射する。アンテナ20から放射される電磁波は、基本周波数315MHzの微弱無線規格を遵守する仕様に設計されている。
【0011】
太陽電池41は、光エネルギー(太陽光又は照明光などの光エネルギー)を直流電力に変換する発電素子である。無線送信機10の各部(アンテナ20、送信モジュール30、及び電源部40)は、光透過性材質(例えば、厚み0.2mm程度の白色ABS材)から成る外装ケースの内部に収納されており、光エネルギーが効率よく太陽電池41に吸収されるように構成されている。なお、発電素子は、太陽電池41に限られるものではなく、例えば、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光発電素子、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電素子、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換素子、電磁エネルギーを電気エネルギーに変換する電磁誘導発電素子などでもよい。
【0012】
二次電池42は、信号処理回路31及び高周波回路32へ供給される電力を蓄電する蓄電装置である。二次電池42は、例えば、リチウムイオン電池であり、定格でDC3Vの電圧を出力する。二次電池42では、信号処理回路31及び高周波回路32での最低動作電圧レベルにもよるが、約1.8V〜3.3V程度の範囲で電力が消費される。なお、蓄電装置は、二次電池42に限定されるものではなく、例えば、キャパシタなどでもよい。
【0013】
充電回路43は、太陽電池41から二次電池42への電力供給、及び二次電池42から送信モジュール30への電力供給を制御する。充電回路43は、二次電池42から太陽電池41への電流の逆流を防止する機能や、二次電池42の端子電圧を監視し、過充電時には二次電池42への充電を停止し、過放電時には二次電池42の過放電を停止する機能を有する。具体的には、充電回路43は、二次電池42が十分に充電されるまで、送信サイクルを長くしたり、或いは無線通信を一時停止したりする。
【0014】
充電回路43は、信号処理回路31から出力される制御信号CTLの論理値に基づいて上述の電力供給を制御する。送信モジュール30は、上述の如く、通信モードと待機モードとを交互に繰り返す間欠通信を常時実施する。そして、通信モードとして動作する送信期間中には、送信モジュール30は、二次電池42から送信モジュール30へ動作電力(無線伝送に必要な電力)が供給され且つ太陽電池41から二次電池42へ充電電力が供給されないように制御信号CTLの論理値を制御し、待機モードとして動作するスリープ期間中には、送信モジュール30は、二次電池42から送信モジュール30へ待機電力(待機中に消費される電力)が供給され且つ太陽電池41から二次電池42へ充電電力が供給されるように制御信号CTLの論理値を制御する。これにより、通信モードの期間中に送信モジュール30によって消費された二次電池42の電力を、待機モードの期間中に太陽電池41から二次電池42へ補充することができる。また、待機モード期間中の二次電池42のインピーダンスは、通信モード期間中の二次電池42のインピーダンスよりも低いので、二次電池42を常時充電し続けるよりも容易に充電できるという利点を有する。
【0015】
なお、通信モードで15mAの電流が消費され、待機モードで1.0μAの電流が消費される場合を想定すると、デューティ0.1%の間欠通信によって消費される平均消費電流は16μAである。太陽電池41の受光照度と発電電流との関係を示す実験データを取得したところ、オフィス内での通常使用時(例えば、胸ポケットに無線通信機10を収納したとき)では、100Lux程度の照度が得られ、この程度の照度によって得られる太陽電池41の発電電流は約16μAである。適度な照度が得られる環境下に無線通信機10を配置しておくことより、無線通信機10の消費電力(通信モード中に消費される動作電力と待機モード中に消費される待機電力との合計電力)は、太陽電池41によって十分に補うことが可能である。これにより、電池交換を不要とし、通信時間に制限がない無線通信機10を提供できる。
【0016】
端末機器60は、例えば、携帯電話やパソコン等の無線通信機能を搭載した電子機器であり、無線モジュール70、及びCPU80を備える。無線モジュール70は、アンテナ71、高周波回路72、及び信号処理回路73を備える。無線送信機10から無線電波として放射された送信信号に含まれるIDナンバーは、アンテナ71にて受信され、高周波回路72にて復調され、信号処理回路73にて復号されて、所定のインターフェース形式(例えば、UARTシリアルインターフェース形式)でCPU80に出力される。CPU80は、無線モジュール70が受信したIDナンバーに基づいて無線送信機10を認証する。例えば、端末機器60が携帯電話の場合、無線送信機10を携帯するユーザが移動することにより、無線送信機10と端末機器60とがある一定の距離以上離れると、端末機器60はロックし、無線送信機10と端末機器60とがある一定の距離以内に近づくと、端末機器60はアンロックする。
【0017】
本実施形態に係わる無線通信機10によれば、通信モードの期間中に無線モジュール50によって消費された二次電池42の電力を、待機モードの期間中に太陽電池41から二次電池42へ補充することで、通信時間に制限のない無線通信機器10を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係わる無線送信機及び端末機器の機能ブロック図である。
【図2】本実施形態に係わる間欠通信のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0019】
10…無線送信機 20…アンテナ 30…送信モジュール 31…信号処理回路 32…高周波回路 40…電源部 41…太陽電池 42…二次電池 43…充電回路 50…無線モジュール 60…端末機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を無線伝送するための電力を消費する通信モードと、前記無線伝送を行わずに待機電力を消費する待機モードとを交互に繰り返す無線モジュールと、
前記無線モジュールに電力を供給する電源部を備え、
前記電源部は、電力を蓄電する蓄電装置と、発電素子と、前記発電素子から前記蓄電装置への電力供給及び前記蓄電装置から前記無線モジュールへの電力供給を制御する充電回路を備え、
前記充電回路は、前記待機モードの期間中に前記発電素子から前記蓄電装置へ電力を供給する、無線送信機。
【請求項2】
請求項1に記載の無線送信機であって、
前記充電回路は、前記通信モードの期間中に前記無線モジュールによって消費された前記蓄電装置の電力を、前記待機モードの期間中に前記発電素子から前記蓄電装置へ補充する、無線送信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−92195(P2010−92195A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260317(P2008−260317)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】