説明

無線通信システム、中継装置、及び、屋外子局

【課題】 移動局が通話可能な無線通信システムにおいて音声放送を可能とする無線通信システム、中継装置、及び、屋外子局を提供する。
【解決手段】 移動局の通話が可能な無線通信システムにおいても放送送信時は音声コーディックを変更することにより屋外子局18,19からの放送を可能とし、さらに、入力された放送データについて同報直接通信中継局10が自身の管理する中継対象の戸別受信機(端末装置)13〜16の有無を判定し、中継対象の戸別受信機がある場合に、その戸別受信機で使用される音声コーディックで符号化し、戸別受信機で再生可能な信号に変換して送信する無線通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が通話可能な無線通信システムに係り、特に、拡声放送でき、更に移動局で使用される音声コーディックを実装した無線機でも放送を受信し報知できる無線通信システム、中継装置、及び、屋外子局に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
自治体を基本単位として、自治体の運用サービスエリア内に、災害情報等の一斉指令を放送する同報系無線通信システムと、無線機間の通話を可能とする移動系無線通信システムとがある。
これら無線通信システムは、例えば、標準規格ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:電波産業会) STD-T86、STD-T79に規定されている。
【0003】
従来の同報系無線通信システムには、放送対象局の子局として、屋外拡声子局と戸別受信機とが存在する。屋外拡声子局は、屋外に設置されトランペットスピーカ等を備え、親局から受信した放送を周囲に拡声放送する。また、戸別受信機は、公共施設や各家庭に設置され、親局から受信した放送をその施設や家に居る人に報知する。
【0004】
[関連技術]
一方、移動系無線通信システムに関連する先行技術として、特開2001−119339号公報「無線通信システムと無線通信方法」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]がある。
特許文献1には、移動系無線通信システムにおいて、一斉指令のときは送信チャネルが中継局毎に異なるようにチャネル設定し、個別通信のときは時分割制御方式で相手局となる移動局を探索する無線通信システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−119339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の同報系無線通信システムと移動系無線通信システムとは、通信プロトコルや使用する音声コーディックが異なるため、同一システムに統合することができない。
つまり、移動系無線通信システムの統制台と移動局との間、または、移動局相互の間の通話に用いられる通信プロトコルと、固定系無線通信システムの統制台から屋外子局及び戸別受信機への放送に用いられる通信プロトコルとは異なっている。
【0007】
さらに、固定系無線通信システムの放送データは、屋外子局のトランペットスピーカから音声出力するため、移動系無線通信システムの移動局で使用されるコーディックに比べて音声品質の高いコーディックが用いられている。戸別受信機でも同様の音声品質の高いコーディックを用いている。
つまり、固定系無線通信システムの放送データは移動系無線通信システムの移動局では受信できず、またその逆も同様である。
【0008】
しかしながら、地方自治体等では、これら固定系及び移動系無線通信システムを統合した無線通信システムが、システム導入コストの削減や利便性向上の観点から望まれている。
特に、固定系無線通信システムを導入しておらず、移動系無線通信システムのみを導入済み、あるいは、これから導入予定の自治体などでは、移動系無線通信システムにおいても、拡声放送や各施設、一般家庭への放送送信を可能としたいという要望が強い。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、移動局が通話可能な無線通信システムにおいて音声放送を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、移動局の通話を実現すると共に、放送を行う無線通信システムであって、放送を行うための放送データを出力する統制台と、放送データを基地波信号で送信すると共に、通話のための通話データを基地波信号で送受信する基地局無線送受信装置と、基地局無線送受信装置からの放送データの基地局波を受信し、復号して放送データを出力する子局装置と、子局装置に接続し、当該子局装置からの放送データを入力し、当該放送データが管理する端末装置宛であるか否かを判定し、管理する端末装置宛であれば、当該端末装置用の信号に変換して送信する中継装置とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、中継装置において、移動局の通話を実現する無線通信システムの基地局無線送受信装置から受信した放送データを出力する子局装置に接続し、子局装置から放送データを入力し、当該放送データが管理する端末装置宛であるか否かを判定し、管理する端末装置宛であれば、放送データに含まれる音声信号を端末装置に対応する音声コーディックで端末装置が再生可能な信号に変換して送信することを特徴とする。
【0012】
本発明は、移動局の通話を実現する無線通信システムの基地局無線送受信装置から受信した放送データの内容を報知する屋外子局であって、放送データを受信すると、当該放送データに含まれる音声信号を、管理する端末装置が再生可能な信号に変換して、端末装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動局の通話を実現する無線通信システムにおいて、放送データを受信した屋外子局(子局装置)が、受信した放送データの音声信号を、端末装置が再生可能な信号に変換して端末装置に送信するので、端末装置が受信したデータに基づいて放送を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
【図2】(a)はフレーム中の1スロットを割り当てて通信する場合を示す図であり、(b)はフレーム中の3スロットを割り当てて通信する場合を示す図である。
【図3】同報直接通信中継局の構成ブロック図である。
【図4】同報直接通信中継局の制御部の処理フローチャートである。
【図5】本システムのシーケンスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、統制台と移動局間、あるいは、移動局間の移動局の通話が可能な無線通信システムにおいても放送送信時は音声コーディックを変更することにより屋外子局からの放送を可能とし、さらに、入力された放送データについて同報直接通信中継局が自身の管理する中継対象の戸別受信機(端末装置)の有無を判定し、中継対象の戸別受信機がある場合に、その戸別受信機で使用される音声コーディックで符号化し、戸別受信機で再生可能な信号に変換して送信するものであり、基地局無線送受信装置の基地局波が届かない基地波不感エリアにある戸別受信機に放送することができ、基地局無線送受信装置の基地局波が届く基地波エリア内でも屋外子局で使用される音声コーディックとは異なる移動局で使用される音声コーディックを実装する戸別受信機でも放送することができるものである。
【0016】
[無線通信システムの概要:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本システム)は、図1に示すように、統制台1と、統制局制御装置2と、基地局無線送受信装置3と、移動局4〜9と、同報直接通信中継局(中継装置)10a,10bと、子局装置11,12と、戸別受信機13〜16と、直接通信中継局17とを有している。
【0017】
尚、同報直接通信中継局10a,10bと子局装置11,12とから屋外子局18,19が構成されている。
また、移動局5,7,9と戸別受信機15,16は、基地波が届かない基地波不感エリア(直接中継波エリア)にある場合であり、その他の機器は、基地波が届く基地波エリアにいる場合である。
【0018】
[本システムの各部]
本システムの各部について具体的に説明する。
統制台1は、移動局との通話を行うと共に、例えば、災害情報等を一斉に、あるいは、対象局(装置)を選択送信して放送を行う等、通信統制を行う。
統制局制御装置2は、統制台1と基地局無線送受信装置3に接続し、回線制御を行う。
具体的には、統制台1と移動局との通話を行うための回線制御を行い、また、統制台1から子局装置又は戸別受信機に対する放送を行うための回線制御を行う。
【0019】
そして、統制局制御装置2は、統制台1からの通信要求が移動局との通話のためのものである場合には、通話用の音声コーディック(例えば、EL−CELP(Extended Learned-Code Excited Linear Prediction))により入力音声を符号化して移動局へ送信する。
一方、統制局装置2は、統制台1からの通信要求が子局装置や戸別受信機に対する放送のためのものである場合には、放送用の音声コーディック(例えば、AMR−WB(Adaptive Multi-Rate Wideband))により入力音声を符号化して子局装置や戸別受信機に送信する。
ここで、放送用の音声コーディックは、通話用の音声コーディックよりも高音質の高ビットレートの音声コーディックである。
【0020】
尚、統制局制御装置2は、統制台1からの通信要求が移動局との通信のためか、屋外子局等への放送のためかを、統制台1からのコマンド内容や宛先(通信相手)情報などに基づいて判断する。
【0021】
また、統制局制御装置2は、上述した音声コーディックの違いにより符号化された音声データのデータ量が異なることに起因して、基地局無線送受信装置3から送信される通信チャネルにおける使用スロット数を制御する機能を有している。
つまり、統制局制御装置2は、統制台1からの通話用の音声を通話用コーディックにより符号化する場合には、フレーム中の1スロットを割り当てて通信するように制御し、また、統制台1からの放送用の音声を放送用コーディックにより符号化する場合には、フレーム中の2以上の数のスロット(一例として、3スロット)を割り当てて通信するように制御する。このように、統制局制御装置2は、放送時には移動局との通話時よりも多いスロットを割り当てる。
【0022】
[フレーム中のスロット割当:図2]
ここで、図2(a)には、フレーム中の1スロットを割り当てて通信する場合の様子の一例を示してあり、また、図2(b)には、フレーム中の3スロットを割り当てて通信する場合の様子の一例を示してある。尚、本例の無線通信システムは、例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用している。
【0023】
図2(a)、(b)では、横軸は時間を表しており、下り通信チャネルの1フレームは「制御スロット、通信スロット、通信スロット、通信スロット」という4個のスロットから構成されている。
図2(a)の例では、通信区間中において、移動局との通信時には毎フレームについて1個の通信スロット(例えば、1番のスロット)が割り当てられ、また、図2(b)の例では、通信区間中において、屋外子局への放送時には毎フレームについて3個の通信スロット(例えば、1、2、3番のスロット)が割り当てられる。
【0024】
基地局無線送受信装置3は、統制台1と移動局との間、移動局相互の間で通話を行うための通話データの送受信を行うと共に、統制台1から子局装置11,12、戸別受信機13〜16に一斉指令、あるいは、対象装置を選択した指令を放送するための放送データを基地波エリアに配信する。
移動局4〜9は、統制台1又は他の移動局との通話を行うと共に、同報直接通信中継局10a,10bから送信された放送データを受信して音声出力する。ここでは、移動局4〜9は通話用の音声コーディック(例えば、EL−CELP)により受信した符号化音声を復号する。
【0025】
同報直接通信中継局10a,10b(以下、同報直接通信中継局10a,10bを区別しない場合には同報直接通信中継局10ともいう)は、本実施の形態の特徴部分であり、隣接する子局装置11,12に接続し、子局装置11,12から入力された放送データを受信し、宛先の情報である選択呼出のグループ番号から中継対象に該当する戸別受信機の有無を判定し、該当する戸別受信機がある場合には、放送データを対応するコーディックを用いて直接通信のプロトコルに変換し、子局装置11,12が受信した受信波とは異なる周波数の送信波(例えば、直接中継波)により送信を行う。
【0026】
ここで、変換前の放送データは子局装置11,12が放送用の音声コーディックにより復号したデータであり、同報直接通信中継局10a,10bは、移動局で用いられている通話用の音声コーディックを用いて受信した放送データのうち少なくとも放送音声(内容)である音声信号を符号化する。
【0027】
尚、中継対象の戸別受信機の有無を判定する処理を、子局装置で行うようにしてもよい。
この場合、中継対象の戸別受信機がある場合に限り、子局装置が同報直接通信中継局10に放送データを出力することになる。
同報直接通信中継局10の構成及び処理については後述する。
【0028】
子局装置11,12は、基地局無線送受信装置3からの放送データを受信すると、放送用の音声コーディックにて復号してスピーカから拡声放送する。
【0029】
戸別受信機13〜16は、同報直接通信中継局10a,10bからの放送データを受信して内蔵のスピーカから出力する。
但し、戸別受信機13〜16が受信する同報直接通信中継局10a,10bからの放送データは、子局装置11,12が基地局無線送受信装置3から受信する放送データとは、周波数が異なり、子局装置11,12で使用されるコーディックに比べて音声品質は高いものではなく、移動局で用いられている通話用の音声コーディックによって符号化されたものである。
したがって、戸別受信機13〜16は受信したデータを移動局と同じく通話用の音声コーディックによって復号して周囲に報知する。
【0030】
このように、戸別受信機13〜16は、移動局4〜9に対して送信機能は不要なものの無線受信部等の受信機構は移動局4〜9と同様に構成される。つまり、戸別受信機13〜16は、既存の移動局4〜9を流用して安価で容易に製造することが可能である。
【0031】
直接通信中継局17は、基地波不感エリアにある移動局が統制台1又は他の移動局と通話を可能とするために、基地局無線送受信装置2からの基地波を受信し、受信した信号データを別の周波数に変換して直接中継波として基地波不感エリア内の移動局に送信し、基地波不感エリア内の移動局からの直接中継波を受信して基地波に変換して基地局無線送受信装置3に送信する。
【0032】
[同報直接通信中継局の構成:図3]
次に、本システムの同報直接通信中継局について図3を参照しながら説明する。図3は、同報直接通信中継局の構成ブロック図である。
同報直接通信中継局は、図3に示すように、受信部101と、制御部102と、記憶部103と、送信部104とを備えている。
【0033】
受信部101は、子局装置11又は子局装置12から入力される放送データを受信し、制御部102に出力する。
制御部102は、受信部101からの放送データについて記憶部103内の戸別受信機テーブル103aを参照し、当該放送データに含まれる宛先情報を見て当該放送データが中継対象であるか否かを判定し、中継対象であれば、戸別受信機に対応した通話用コーディックを用いて符号化し、符号化データを送信部104に出力する。
【0034】
記憶部103は、制御部102を動作させる処理プログラムを記憶しており、また、管理する戸別受信機の宛先を戸別受信機テーブル103aに記憶している。
宛先は、選択呼出を行うためのグループ番号であってもよく、個別の識別番号であってもよい。また、戸別受信機テーブル103aには、中継先として移動局の選択呼出を行うためのグループ番号を記憶していてもよい。
送信部104は、制御部102で戸別受信機の通話用コーディックを用いて符号化され、対応する直接通信の通信プロトコルに変換されて、対応する周波数でアンテナに送信出力する。
【0035】
[同報直接通信中継局の処理:図4]
次に、同報直接通信中継局の制御部102における処理について図4を参照しながら説明する。図4は、同報直接通信中継局の制御部の処理フローチャートである。
同報直接通信中継局の制御部102は、子局装置11又は12から拡声用コーディックで復号化された放送データが入力されたか否かを判定し(S1)、入力されていなければ(Noの場合)、処理を繰り返す。
【0036】
放送データが入力されたならば(Yesの場合)、制御部102は、記憶部103の戸別受信機テーブル103aを参照し(S2)、当該放送データが管理する戸別受信機宛か否かを判定する(S3)。
次に、判定処理S3で、管理する戸別受信機宛ではない場合(Noの場合)、処理S1に戻り、管理する戸別受信機宛であれば(Yesの場合)、通話用コーディックにより符号化し、直接通信のプロトコルで信号変換を行い(S4)、送信部104に出力する(S5)。
【0037】
[本システムのシーケンス:図5]
次に、本システムにおけるシーケンスについて図5を参照しながら説明する。図5は、本システムのシーケンスを示す概略図である。
本システムでは、図5に示すように、統制台1で一斉指令の音声(Audio)アナログ信号が入力され、A/D(アナログ/デジタル)コンバータでA/D変換され、変換された音声デジタルデータを放送用の音声コーディック(音声品質が高い)により符号化を行う。
【0038】
統制局制御装置2で基地局無線送受信装置3への回線接続を行い、基地局無線送受信装置3では、デジタル変調を行い、基地波送信周波数f1で複数スロット(ここでは3スロット)を用いて屋外子局18,19(子局装置11,12)へデータ伝送を行う。
子局装置11,12は、基地波受信周波数f1で受信してデジタル復調し、放送用の音声コーディックによる復号化を行い、音声デジタルデータを得る。この音声デジタルデータは、D/A(デジタル/アナログ)変換されて子局装置11,12のスピーカから音声出力される。
【0039】
同報直接通信中継局10は、子局装置11,12から入力された音声デジタルデータを戸別受信機13〜16で用いられる通話用の音声コーディックにより符号化し、デジタル変調して直接波送受信周波数f3で1スロットを用いて戸別受信機13〜16へ送信する。
ここで、符号化を行うのは、制御部102が戸別受信機テーブル103aを参照して中継対象があると判断した場合である。また、デジタル変調は、音声デジタルデータをビットレートの低いものに変換する。
【0040】
そして、戸別受信機13〜16では、直接波送受信周波数f3で受信し、デジタル復調して、音声コーディックBによる復号化を行い、音声デジタルデータを取得する。その音声デジタルデータはD/AコンバータでD/A変換され、音声アナログ信号が内蔵のスピーカから音声出力される。
【0041】
以上では、戸別受信機13〜16が直接波送受信周波数f3で通話用の音声コーディック(子局装置で使用される放送用の音声コーディックよりビットレートが低く音声品質が低い)により内蔵スピーカから放送を行うことを説明したものである。
ここで、通話用の音声コーディックは移動局4〜9で使用される音声コーディックと同じであるため、同報直接通信中継局10から送信される直接波送受信周波数f3を移動局4〜9が受信可能とすれば、移動局4〜9において放送データを音声出力することができるようになるものである。
【0042】
直接通信波の利用は、ARIB STD T79で規定された移動系無線通信システムの全国共通波であり、かつ、チャネル数が規定されているが、選択呼出のグループ番号で無線中継の有無を判断することができるため、直接通信波を有効に活用することが可能となる。
【0043】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、屋外子局18,19への放送送信の場合には、統制局制御装置2が高音質高ビットレートの放送用コーディックにて音声符号化を行い基地局無線送受信装置3が複数スロットを用いて屋外子局18,19へ放送データを基地局波信号で送信するので、屋外子局18,19はスピーカから音質に問題のない放送を拡声することができる。
【0044】
さらに、屋外子局18の子局装置11に接続する同報直接通信中継局10aが放送データを受信すると、中継対象の戸別受信機がある場合に、戸別受信機15,16で使用される通話用の音声コーディックで対応する通信プロトコルに変換して直接通信波で1スロットを用いて放送データを送信し、戸別受信機15,16が受信して通話用の音声コーディックで復号し、放送データを音声出力するものであり、基地波不感エリア内の戸別受信機15,16へも放送できる効果がある。
【0045】
また、本システムによれば、屋外子局19の子局装置12に接続する同報直接通信中継局10bが放送データを受信すると、中継対象の戸別受信機がある場合に、戸別受信機13,14で使用される通話用の音声コーディックで対応する通信プロトコルに変換して直接通信波で1スロットを用いて放送データを送信し、戸別受信機13,14が受信して復号し、放送データを音声出力するものであり、基地波エリア内の戸別受信機13,14へも放送できる効果がある。
【0046】
さらに、本システムによれば、同報直接通信中継局10が放送データの音声コーディックを変換して戸別受信機13〜16に中継送信するので、子局装置11,12で使用される放送用の音声コーディックの音声品質より低い低ビットレートの通話用の音声コーディックの機能を備える戸別受信機13〜16であっても確実に放送できる効果がある。したがって、従来の移動系無線通信システムで採用している移動局4〜9の主として受信機能(機構)、報知機能(機構)を利用して戸別受信機13〜16を安価で容易に製造することができる。
【0047】
更に、本システムによれば、移動局が通話用の音声コーディックを使用しているので、同報直接通信中継局10から送信される直接通信波を受信可能とすれば、移動局でも放送でき、あるいは、放送を視聴できる効果がある。
【0048】
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々変形して実施できるものである。例えば、上述した実施例では、同報直接通信中継局10が、直接通信(中継)波を用いて戸別受信機13〜16に放送データを中継送信する場合を例にあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、同報直接通信中継局10は、基地局無線送受信装置3と子局装置11,12との間の無線通信に使用される周波数以外の周波数の電波を用いて放送データを戸別受信機13〜16に送信すればよい。
【0049】
また、上述した実施例では、同報直接通信中継局10が、子局装置11,12から入力された放送データの宛先に自身が管理する戸別受信機13〜16が含まれているか否かを戸別受信機テーブル103aに基づいて判断し、含まれている場合にのみ中継送信を行う場合を例にあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、同報直接通信中継局10は子局装置11,12から放送データを入力されると、放送データの宛先判断を行わずに戸別受信機13〜16に中継送信するように構成してもよい。つまり、屋外子局18,19は、自局宛の放送データを受信すると、必ず戸別受信機13〜16にも放送データを中継するように構成してもよい。これにより同報直接通信中継局10の構成を簡略化でき、製造コストを低減することができる。
【0050】
なお、上述した実施例では、放送データが、屋外子局18,19が管理する戸別受信機宛てであるか否かの判断を同報直接通信中継局10が行う場合を例にあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、子局装置11,12が放送データの宛先に管理する戸別受信機13〜16が含まれているか否かを判断するように構成してもよい。この場合には、子局装置11,12は含まれると判断した場合にのみ放送データを同報直接通信中継局10に入力し、これを受けた同報通信中継局10は宛先判断を行わずに中継送信を実施する。
【0051】
さらに、本発明において、同報直接通信中継局10の中継対象は戸別受信機13〜16に限定されるものではなく、上述したように移動局4〜9であってもよいし、移動局4〜9以外であっても通話用の音声コーディックを備えた無線受信機であればよい。
【0052】
また、上述した実施例では、子局装置11,12は放送データを受信すると自身もスピーカから音声放送を実施する場合を例にあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、子局装置11,12は自身が宛先に含まれていても、その宛先情報(拡声放送も行う場合の宛先とは区別された中継する場合のみの宛先)や制御情報(拡声放送無しを示す情報)を判断し、拡声放送を行わないように構成してもよい。これにより、戸別受信機13〜16に対してのみの放送も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、少なくとも移動局間の通話が可能な無線通信システムにおいても子局からの放送を実施できるようにした無線通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0054】
1...統制台、 2...統制局制御装置、 3...基地局無線送受信装置、 4〜9...移動局、 10...同報直接通信中継局、 11,12...子局装置、 13〜16...戸別受信機、 17...直接通信中継局、 18,19...屋外子局、 101...受信部、 102...制御部、 103...記憶部、 103a...戸別受信機テーブル、 104...送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局の通話を実現すると共に、放送を行う無線通信システムであって、
放送を行うための放送データを出力する統制台と、
前記放送データを基地波信号で送信すると共に、通話のための通話データを基地波信号で送受信する基地局無線送受信装置と、
前記基地局無線送受信装置からの放送データの基地局波を受信し、復号して放送データを出力する子局装置と、
前記子局装置に接続し、当該子局装置からの放送データを入力し、当該放送データが管理する端末装置宛であるか否かを判定し、管理する端末装置宛であれば、当該端末装置用の信号に変換して送信する中継装置とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
移動局の通話を実現する無線通信システムの基地局無線送受信装置から受信した放送データを出力する子局装置に接続し、前記子局装置から放送データを入力し、当該放送データが管理する端末装置宛であるか否かを判定し、管理する端末装置宛であれば、放送データに含まれる音声信号を端末装置に対応する音声コーディックで前記端末装置が再生可能な信号に変換して送信することを特徴とする中継装置。
【請求項3】
移動局の通話を実現する無線通信システムの基地局無線送受信装置から受信した放送データの内容を報知する屋外子局であって、
放送データを受信すると、前記放送データに含まれる音声信号を、管理する端末装置が再生可能な信号に変換して、前記端末装置に送信することを特徴とする屋外子局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175256(P2012−175256A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33334(P2011−33334)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】