説明

無線通信システム、基地局およびスケジューリング方法

【課題】基地局と複数の中継局の多重組合せパターンと、その多重組合せパターンにおいて各基地局や中継局が通信する端末局の組合せが得られ、フレーム全体でトータルスループットを向上させる。
【解決手段】基地局BSは、CNRの情報を基に各端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSを決定し、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局SSに対して送信したときの、各端末局SSと端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSとのCINRを計算して伝送レートを推定し、伝送レートが最大となる端末局SSを選択し、さらにグループごとに選択された端末局SSの伝送レートの和と組合せパターンに含まれる基地局BSと中継局RSの合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局および中継局を備えた無線通信システムにおいて、システム全体のトータルスループットを向上させる無線リソースのスケジューリングを行う無線通信システム、基地局およびスケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.16で規格化されているIEEE802.16e-2005規格の通信方式(いわゆるモバイルWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access) )では、高速なデータサービスに加えて、VoIPやストリーミング配信など、様々なアプリケーションに幅広く対応できるように設計されている。周波数帯域としてマイクロ波帯を使用することで、サービスエリアの広域化が期待されている。しかし、建物や丘陵地の起伏などによって、電波遮蔽に伴うスループットの劣化やカバレッジホールが発生するため、単一の基地局(以下、BS)による広域化には限界がある。
【0003】
また、IEEE802.16TGj では、IEEE802.16e-2005規格に中継局(以下、RS)を適用させるための拡張作業が行われている(非特許文献1)。RSを用いることにより、建物などの電波遮蔽による通信品質が劣化するエリアの補完や、サービスエリアの拡張が期待できる。検討されている中継方式は、同一チャネルでの中継を実現するために、同一の周波数帯域をアクセス回線と中継回線で時分割多重する方式である。
【0004】
IEEE802.16TGj で示される時分割で中継を実現するフレーム構成の一例を図14に示す。BSとRSは1つのフレームを時分割複信によって、ダウンリンク(以下、DL)サブフレームとアップリンク(以下、UL)サブフレームに分割し、さらに各サブフレームをアクセス区間と中継区間に再分割する。アクセス区間は、BSおよびRSが共に端末局(以下、SS)と通信する区間であり、このときBSおよびRSとSSとの通信が相互に干渉となる場合には、BSおよびRSは使用するリソース(周波数と時間)を分割する。DLサブフレームにおける中継区間は、BSが中継データを送信し、RSがその中継データを受信する区間である。ULサブフレームにおける中継区間は、RSが中継データを送信し、BSがその中継データを受信する区間である。また、DLサブフレームにおいて、アクセス区間とBSの中継区間の先頭で、各SSやRSと同期をとるためのプリアンブルや、通信に割り当てるサブチャネルや時間を通知するスケジュール情報などの制御信号を送信する。
【0005】
図14で示される時分割で中継を実現する方式では、各サブフレームに中継用のリソースを設定するためにアクセス用のリソースが抑圧される。そのため、PMP(Point-to-Multipoint) で構成されるシステムと比較してシステム全体のトータルスループットが低くなる問題がある。非特許文献2では、無線リソース(無線フレームの時間・周波数)を効率的に利用してトータルスループットを改善するために、BSとRSが使用する周波数の多重、アクセス区間と中継区間の比率の制御、サブキャリアの最適割当の適用が提案されている。
【0006】
なお、ここでの多重または周波数の多重とは、1以上のBSや1以上のRSが同一時間で同一周波数を用いて複数の異なるSSと通信することが指す。例えば、図15におけるSS1では、BSからの信号波が強く、RSからの干渉波が問題とならない。また、SS2では、BSからの信号が障害物によって遮断され、RSからの信号しか受信しない。このような場合には、BSからSS1への通信と、RSからSS2への通信を多重することにより、スループットを改善することができる。
【0007】
しかし、非特許文献2におけるBSとRSによる周波数の多重は、BSと単一のRSのスケジューリング手順に留まっている。複数のRSやBSが存在する場合、多重するBSやRSの組合せパターン(以下、多重組合せパターン)が多くなり、さらに各SSの位置する環境によって多重可能な多重組合せパターンやトータルスループットを最大化できる多重組合せパターンが異なる。そのため、トータルスループットを最大化するために、多重組合せパターンに含まれるBSやRSがそれぞれ通信するSSの環境を考慮して、最適な多重組合せパターンを動的に選択する手法が求められている。
【0008】
図14に示すフレーム構成において、時間軸または周波数軸において各SSに割り当てる通信領域(以下、スロット)に分割し、スロットごとに多重組合せパターンを動的に選択する方法として、次の2つの方法が考えられる。
【0009】
方法1は、各スロットにおいて、各SSを多重組合せパターンごとに多重可否を判定し、多重組合せパターンに含まれるBSとRSの合計数(=多重数)が最大になるように、多重組合せパターンと当該パターンで通信するSSを選択する。
【0010】
方法2は、非特許文献3に示されるように、各スロットにおいて多重して通信するSSのスループットの合計が最大になるように、多重組合せパターンと当該パターンで通信するSSを選択する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】IEEE Draft standards for Local and metropolitan area networks, Part 16: Air Interface for Fixed Broadband Wireless Access Systems, Multihop Relay Specification, 8.4.4.8 TDD frame structure of MR-BS and RS, pp.194-202, 2008
【非特許文献2】大野陽平、清水達也、中津川征士、「無線中継アクセスシステムにおけるリソース制御に関する検討」、2008年電子情報通信学会総合大会、B-5-186 、2008年
【非特許文献3】大野陽平、清水達也、中津川征士、「複数中継局を備えた無線アクセスシステムにおける周波数リユース効果」、2008年電子情報通信学会ソサイエティ大会、B-5-103 、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
方法1の周波数の多重可否判定は、図16に示すように、例えばQPSK復調可能なレベルなどに設定されるCINRの閾値に基づいている。具体的には、BSとRSが同時に同じ周波数の信号を送信したときに、BSまたはRSの一方からSSへの送信信号に対する他方からの電波干渉量が大きくなく、一方からの送信信号のCINRが閾値以上であれば、そのSSはBSとRSによる周波数多重が可能と判定するものである。ここで、BSとRS1とRS2が存在し、BSとRS1とRS2で周波数を多重する場合、それぞれのサービスエリアに位置しているSS1とSS2とSS3とのCINRの全てがQPSK復調可能なレベル以上であれば、最大の多重数を有するBSとRS1とRS2による多重組合せパターンが選択される。
【0013】
しかし、実際にはBSとRS1とRS2の多重組合せパターンより、BSとRS1の2つの多重組合せパターンの方が高いトータルスループットを実現できる場合がある。例えば、前者の多重組合せパターンではSS1とSS2とSS3はQPSKでしか通信できないが、後者の多重組合せパターンではSS1とSS2は16QAMを用いて通信できる場合である。
【0014】
また、BSとRS1の多重組合せパターンより、RS1とRS2の多重組合せパターンの方がより高いトータルスループットを確保できる状況がある。方法2は、このような状況を想定しており、図17に示される伝送レートリストを用いて、多重して通信するSSのスループットの和が最大になるように、多重組合せパターンと当該パターンで通信するSSを選択する。すなわち、全ての多重組合せパターンに対する合計レートを比較する。例えば、多重組合せパターンBS,RS1,RS2の合計レートはX1+X2+X3であり、多重組合せパターンBS,RS1の合計レートはX4+X5であるが、それらの合計レートの中で最大となる多重組合せパターンを選択する。
【0015】
しかし、方法2では、スロットごとに最大のトータルスループットを確保できるが、スループットの公平性を考慮して、全てのSSに対して均等にスロットサイズを割り当てる場合などでは、必ずしもフレーム全体でトータルスループットを最大化できないことがある。図18に示すように、方法1では多重組合せパターンBS,RS1,RS2が選択されており、1つのスロットですべてのSSの通信を割り当てられるので、アクセス区間をスロットに分割する必要はない。一方、方法2はスロットごとに最もスループットの和が高くなるように多重組合せパターンBS,RS1が選択され、BS,RS1はそれぞれSS1,SS2と周波数を多重して通信する。全てのSSに対して均等にスロットサイズを割り当てる場合は、SS3に対してのスロットを用意する必要があり、アクセス区間は2スロットに分割される。したがって、多重組合せパターンに割り当てられるスロットサイズが小さくなり、フレーム全体におけるトータルスループットが方法1に比べて小さくなる。
【0016】
このように、フレーム全体におけるトータルスループットを最大化するという目的で、方法1および方法2は多重組合せパターンを必ずしも最適に選択できていない。
【0017】
本発明は、複数の中継局RSを備えた無線通信システムにおいて、基地局BSと複数の中継局RSが複数の端末局SSへの通信に用いる周波数を多重する際に、最適な基地局BSと複数の中継局RSの多重組合せパターンと、その多重組合せパターンにおいて各基地局BSや中継局RSが通信する端末局SSの組合せが得られ、フレーム全体でトータルスループットを向上させることができる無線通信システム、基地局およびスケジューリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明は、基地局BSと、複数の中継局RSと、複数の端末局SSによって構成される無線通信システムにおいて、基地局BSは、基地局BSおよび複数の中継局RSと、複数の端末局SSとのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSを決定する第1の手段と、基地局BSと複数の中継局RSの一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは複数の中継局RSが、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局SSに対して送信したときの、各端末局SSと端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSとのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2の手段と、組合せパターンごとに、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは中継局と通信する複数の端末局SSのグループの中で、推定された伝送レートが最大となる端末局SSを選択し、さらにグループごとに選択された端末局SSの伝送レートの和と組合せパターンに含まれる基地局BSと中継局RSの合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局SSが通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局SSを除外して、さらに端末局SSの選択、組合せパターンの決定、端末局SSの除外の手順を繰り返し、すべての端末局SSが通信に使用する組合せパターンを決定する第3の手段とを備える。
【0019】
第1の発明の無線通信システムにおいて、組合せパターンごとの伝送レートは、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSおよび中継局RSが同時に同一周波数の信号を送信しないときの伝送レートで正規化したものを用いる。
【0020】
第1の発明の無線通信システムにおいて、第1の手段は、基地局BSと端末局SSとの間、基地局BSと中継局RSとの間、中継局RSと端末局SSとの間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、端末局SSごとに、基地局BSとの直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと端末局SSの伝送レート)を計算し、中継局RSとの直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと中継局RS間の伝送レート+1/中継局RSと端末局SS間の伝送レート)を計算する手段と、無線リソースが最小となる基地局BSまたは中継局RSを選択する手段とを備える。
【0021】
第1の発明の無線通信システムにおいて、基地局BSと中継局RSは時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを基地局BSおよび中継局RSが端末局SSと通信するアクセス区間と、基地局BSおよび中継局RSが中継する中継区間とに時分割する構成であり、基地局BSは、基地局BSと中継局RSが通信するデータ量と、中継局RSと端末局SSが通信するデータ量が等しくなるように、アクセス区間と中継区間の比率を制御する構成である。また、基地局BSは、アクセス区間と中継区間の比率を、中継局RSごとに、(中継局RSとその中継局RSと直接通信する端末局SS間の伝送レートの和)/(基地局BSと中継局RS間の伝送レート×端末局SSの通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定する構成としてもよい。
【0022】
第1の発明の無線通信システムにおいて、基地局BSを制御局機能を有する第1の基地局BSとし、複数の中継局RSに代えて複数の第2の基地局BSを備え、第1の基地局BSと第2の基地局BSとの間でバックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する構成である。
【0023】
第2の発明は、基地局BSと、複数の中継局RSと、複数の端末局SSによって構成される無線通信システムのスケジューリング方法において、基地局BSは、基地局BSおよび複数の中継局RSと、複数の端末局SSとのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSを決定する第1のステップと、基地局BSと複数の中継局RSの一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは複数の中継局RSが、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局SSに対して送信したときの、各端末局SSと端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSとのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2のステップと、組合せパターンごとに、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは中継局と通信する複数の端末局SSのグループの中で、推定された伝送レートが最大となる端末局SSを選択し、さらにグループごとに選択された端末局SSの伝送レートの和と組合せパターンに含まれる基地局BSと中継局RSの合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局SSが通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局SSを除外して、さらに端末局SSの選択、組合せパターンの決定、端末局SSの除外の手順を繰り返し、すべての端末局SSが通信に使用する組合せパターンを決定する第3のステップとを有する。
【0024】
第2の発明の無線通信システムのスケジューリン方法において、組合せパターンごとの伝送レートは、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSおよび中継局RSが同時に同一周波数の信号を送信しないときの伝送レートで正規化したものを用いる。
【0025】
第2の発明の無線通信システムのスケジューリン方法において、第1のステップは、基地局BSと端末局SSとの間、基地局BSと中継局RSとの間、中継局RSと端末局SSとの間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、端末局SSごとに、基地局BSとの直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと端末局SSの伝送レート)を計算し、中継局RSとの直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと中継局RS間の伝送レート+1/中継局RSと端末局SS間の伝送レート)を計算するステップと、無線リソースが最小となる基地局BSまたは中継局RSを選択するステップとを有する。
【0026】
第2の発明の無線通信システムのスケジューリン方法において、基地局BSと中継局RSは時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを基地局BSおよび中継局RSが端末局SSと通信するアクセス区間と、基地局BSおよび中継局RSが中継する中継区間とに時分割する構成であり、基地局BSは、基地局BSと中継局RSが通信するデータ量と、中継局RSと端末局SSが通信するデータ量が等しくなるように、アクセス区間と中継区間の比率を制御する。また、基地局BSは、アクセス区間と中継区間の比率を、中継局RSごとに、(中継局RSとその中継局RSと直接通信する端末局SS間の伝送レートの和)/(基地局BSと中継局RS間の伝送レート×端末局SSの通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定してもよい。
【0027】
第2の発明の無線通信システムのスケジューリン方法において、基地局BSを制御局機能を有する第1の基地局BSとし、複数の中継局RSに代えて複数の第2の基地局BSを備え、第1の基地局BSと第2の基地局BSとの間でバックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する。
【0028】
第3の発明は、基地局BSと、複数の中継局RSと、複数の端末局SSによって構成される無線通信システムの基地局BSにおいて、基地局BSおよび複数の中継局RSと、複数の端末局SSとのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSを決定する第1の手段と、基地局BSと複数の中継局RSの一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは複数の中継局RSが、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局SSに対して送信したときの、各端末局SSと端末局SSが直接通信する基地局BSまたは中継局RSとのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2の手段と、組合せパターンごとに、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSまたは中継局と通信する複数の端末局SSのグループの中で、推定された伝送レートが最大となる端末局SSを選択し、さらにグループごとに選択された端末局SSの伝送レートの和と組合せパターンに含まれる基地局BSと中継局RSの合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局SSが通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局SSを除外して、さらに端末局SSの選択、組合せパターンの決定、端末局SSの除外の手順を繰り返し、すべての端末局SSが通信に使用する組合せパターンを決定する第3の手段とを備える。
【0029】
第3の発明の無線通信システムの基地局BSにおいて、組合せパターンごとの伝送レートは、組合せパターンに含まれる全ての基地局BSおよび中継局RSが同時に同一周波数の信号を送信しないときの伝送レートで正規化したものを用いる。
【0030】
第3の発明の無線通信システムの基地局BSにおいて、第1の手段は、基地局BSと端末局SSとの間、基地局BSと中継局RSとの間、中継局RSと端末局SSとの間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、端末局SSごとに、基地局BSとの直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと端末局SSの伝送レート)を計算し、中継局RSとの直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局BSと中継局RS間の伝送レート+1/中継局RSと端末局SS間の伝送レート)を計算する手段と、無線リソースが最小となる基地局BSまたは中継局RSを選択する手段とを備える。
【0031】
第3の発明の無線通信システムの基地局BSにおいて、基地局BSと中継局RSは時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを基地局BSおよび中継局RSが端末局SSと通信するアクセス区間と、基地局BSおよび中継局RSが中継する中継区間とに時分割する構成であり、基地局BSと中継局RSが通信するデータ量と、中継局RSと端末局SSが通信するデータ量が等しくなるように、アクセス区間と中継区間の比率を制御する構成である。また、基地局BSは、アクセス区間と中継区間の比率を、中継局RSごとに、(中継局RSとその中継局RSと直接通信する端末局SS間の伝送レートの和)/(基地局BSと中継局RS間の伝送レート×端末局SSの通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定する構成としてもよい。
【0032】
第3の発明の無線通信システムの基地局BSにおいて、複数の中継局RSに代えて配置される複数の基地局BSとの間で、バックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する制御局機能を備える。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、基地局BSと複数の中継局RSが複数の端末局SSへの通信に用いる周波数を多重する際に、最適な基地局BSと複数の中継局RSによる組合せパターンと、その組合せパターンにおいて各基地局BSや中継局RSが通信する端末局SSの組合せが得られ、フレーム全体でトータルスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の無線通信システムの実施形態を示す図である。
【図2】BS10のスケジューラ12の構成例を示す図である。
【図3】スケジュール情報構築部32のスケジューリング処理手順を示すフローチャートである。
【図4】SSの多重組合せ設定手順S1の一例を示すフローチャートである。
【図5】伝搬路情報記憶部31の一例を示す図である。
【図6】グループ化処理の一例を示す図である。
【図7】グループ化処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】CINRリストの一例を示す図である。
【図9】伝送レートリストの一例を示す図である。
【図10】正規化した伝送レートリストの一例を示す図である。
【図11】多重組合せリストの一例を示す図である。
【図12】アクセス区間と中継区間の比率設定手順S2の一例を示すフローチャートである。
【図13】RS20のスケジューラ22の構成例を示す図である。
【図14】従来のフレーム構成の一例を示す図である。
【図15】単一のBSとRSによる多重の一例を示す図である。
【図16】従来の周波数多重可否判定手順を示すフローチャートである。
【図17】従来の多重組合せパターン選定の一例を示す図である。
【図18】方法1と方法2の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(無線通信システムの実施例)
図1は、本発明の無線通信システムの実施例の構成を示す。
図1において、本実施例の無線通信システムは、バックボーンネットワーク1に接続されるBS10、複数(m個)のRS20(1) 〜20(m) 、複数(n個)のSS30(1) 〜30(n) から構成される。
【0036】
BS10のデータバッファ部11は、バックボーンネットワーク1からデータを入力する。スケジューラ12は、フレームをDLサブフレームとULサブフレームに分割し、さらに各サブフレームをアクセス区間と中継区間に再分割し、受信部17から入力する伝搬路情報を基に、アクセス区間および中継区間を時間領域および周波数領域で分割するスケジュール情報を構築する。そして、そのスケジュール情報に従ってデータバッファ部11からデータを取り出し、送信データ生成部13へ出力する。送信データ生成部13は、スケジューラ12から入力するデータと、スケジュール情報から構成される制御メッセージを用いてフレームを作成する。送信部14は、送信データ生成部13で作成されたフレームを変調および周波数変換により無線信号に変換し、スケジュール情報に基づいて送受信の切り替えを制御するTDDスイッチ15を介してアンテナ16から複数のRS20およびBS配下のSS30に送信する。
【0037】
また、BS10のアンテナ16で受信する無線信号は、TDDスイッチ15を介して受信部17に入力する。受信部17は、ULサブフレームの無線信号を周波数変換および復調し、復調された受信データをデータバッファ部11に出力し、さらにバックボーンネットワーク1に出力する。
【0038】
RS20は、アンテナ26に受信する無線信号をTDDスイッチ25を介して受信部27に入力する。受信部27は、DLサブフレームの中継区間およびULサブフレームのアクセス区間の無線信号を周波数変換および復調する。BS10または前ホップのRSから送信された制御メッセージはスケジューラ22に入力され、BS10、SS30との送受信に用いる周波数領域および時間領域を把握する。受信部27で復調されたDLサブフレームの中継区間およびULサブフレームのアクセス区間の受信データはデータバッファ部21に入力される。
【0039】
RS20のスケジューラ22は、BS10から通知されるスケジュール情報と受信部27から入力する伝搬路情報を基にスケジュール情報を構築する。そして、そのスケジュール情報に従ってデータバッファ部21からデータを取り出し、送信データ生成部23へ出力する。送信データ生成部23は、スケジューラ22から入力するデータと、スケジュール情報から構成される制御メッセージを用いてフレームを作成する。送信部24は、送信データ生成部23で作成されたフレームを変調および周波数変換により無線信号に変換し、スケジュール情報に基づいて送受信の切り替えを制御するTDDスイッチ25を介してアンテナ26からBS10またはSS30に送信する。
【0040】
SS30は、アンテナ31を介してBS10またはRS20が送信するスケジュール情報を参照し、フレームのアクセス区間において送受信を行う。
【0041】
(BS10のスケジューラ12の構成例)
図2は、BS10のスケジューラ12の構成例を示す。
図2において、スケジューラ12は、受信部17から入力する伝搬路情報を記憶する伝搬路情報記憶部31と、スケジュール情報を構築するスケジュール情報構築部32から構成される。
【0042】
図3は、スケジュール情報構築部32のスケジューリング処理手順を示す。
図3において、スケジュール情報構築部32は、伝搬路情報記憶部31を参照してSSの多重組合せを設定し(S1)、アクセス区間と中継区間の比率を設定する(S2)。
【0043】
BS10のスケジューラ12の伝搬路情報記憶部31には、BSとSS(i) 間のCNR(BS CNR(i))と、RS(j) とSS(i) 間のCNR(RSj CNR(i)) と、BSとRS(j) 間のCNR(BS CNR RELAY(j))が保存されている。iはSSの識別番号であり、jはRSの識別番号である。一例として、RS数が2、SS数が6の場合の伝搬路情報記憶部31の状態を図5に示す。CNR(Carrier-to-Noise Ratio) は、BSとRSが周波数多重しないときにSSが受信する搬送波電力対雑音電力比の値である。
【0044】
BS CNR(i) は、BSが各SS(i) の送信信号をアンテナ16、TDDスイッチ15を介して受信部17で受信してそのCNRを把握するか、またはBSが送信する制御信号(プリアンブルなど)をSS(i) が受信し、SS(i) でCNRを把握してその結果をBSに通知することにより、伝搬路情報記憶部31に登録される。
【0045】
RSj CNR(i)は、まずRS(j) が各SS(i) の送信信号を受信してCNRを把握するか、またはRS(j) が送信する制御信号(プリアンブルなど)をSS(i) が受信し、SS(i) でCNRを把握してその結果をRS(j) に通知し、さらにRS(j) からBSへそのCNRを通知することにより、伝搬路情報記憶部31に登録される。このとき、BSがRS(j) の送信信号を受信することにより、BSとRS(j) と間のCNRが把握される。
【0046】
(図3のステップS1の多重組合せ設定手順)
本発明では、全てのSSに対してスループットの公平性を考慮して均等にスロットサイズを割り当てる場合などにおいて、BSと複数のRSが複数のSSへの通信に用いる周波数を多重した場合のトータルスループットの最大化を目的としている。そのため、図3のステップS1の多重組合せ設定手順では、BSと複数のRSの最適な多重組合せパターンと、この多重組合せパターンにおけるそれぞれのBSやRSが通信するSSの組合せを選択する。
【0047】
BSと複数のRSが複数のSSへの通信に用いる周波数を多重した場合のトータルスループットは、シャノンの定理を用いて次のように表される。
【数1】

【0048】
ここで、KはSS数、LはBSとRSの合計数、Tはアクセス区間を分割するスロット数を示す。Bはシステムが保有する周波数帯域、pはBSとRSの送信電力、N0 は雑音電力密度、hk,l はBS(l) とSS(k) とのチャネル利得を示す。なお、図1の実施例の構成では、BS(1) はBSを示し、それ以外のBS(l) はRSに相当する。C(k,l,t) は、0と1により構成されるK×L×Tの割当行列の要素であり、スロット(t) でBS(l) からSS(k) へ通信する場合は1と設定され、そうでない場合は0と設定される。例えば、K=3、L=3の場合、スロット(t')におけるC(k,l,t')がK×Lの行列
【数2】

の要素として表される場合、BS(1) とSS(1) との通信およびBS(2) とSS(3) との通信が、スロット(t')において周波数を多重して行われる。Σp|hk,j 2 は、BS(l) とSS(k) 間の通信時における干渉電力を示す。上記のC(k,l,t')の場合、多重組合せパターンはBS(1) とBS(2) であるので、スロット(t')でBS(1) とSS(1) の通信に対しては、RS(2) からSS(1) への干渉電力がΣp|hk,j 2 に相当する。
【0049】
トータルスループットを最大化するためには、最適な割当行列の要素C(k,l,t) を選択することで、BSと複数のRSの多重組合せパターンと、この多重組合せパターンにおいてそれぞれのBSやRSが通信するSSの組合せを導くことができる。全てのSSをいずれか1つのスロットでいずれか1つのRSとの通信に割り当てる場合、最適な割当行列の要素C(k,l,t) には制約条件である
【数3】

が付加される。この場合に、C(k,l,t) が取りうる行列のパターン数は(L・T) K となる。また、Tの数は多重組合せパターンによって1〜Kの領域で動的に変化する。したがって、RS数またはSS数が増加するに従い、C(k,l,t) の組合せ数が増え、最適な解を得るまでには膨大な計算処理が必要となる。
【0050】
しかし、各SSにおける各BSまたはRSからの受信信号電力がフェージングによって時々刻々と変化する環境では、それらに追随可能なスケジューリングが問われるので、計算処理を軽減する必要がある。そこで、準最適解を得ることを目的として (1)式を簡略化する。具体的には、全てのSSにおいて、所望のBSまたはRSからの信号電力が等しくhであり、全てのBS、RSからの干渉電力が等しくh’であると仮定する。さらに、全てのSSにおいて、多重組合せパターンにおける多重数を等しくMと仮定した場合、トータルスループットは次のように簡略化できる。
M・(B/(K/M)) log2(1+p|h|2/(N0B+Mp|h'|2))
=(B/K)・M2・F(M) …(2)
【0051】
この場合、スロット数TはK/Mと計算できる。また、
F(M) = log2(1+p|h|2/(N0B+Mp|h'|2))
としている。上記の仮定においては、トータルスループットの最大化を図るためには、(2) 式を最大化するように、多重数Mを選択することが必要である。
【0052】
ここで、背景技術に記した方法1および方法2と比較する。方法1は、 (2)式においてMを最大化する方法である。方法2は、M・F(M) を最大化する方法である。したがって、本発明では、 (2)式に基づいてM2 ・F(M) を最大化するために、方法2において各スロットで多重して通信するSSのスループットの合計(=M・F(M) )に多重数Mを重み付けした値が最大となるように、多重組合せパターンと当該パターンにおいて通信するSSを選択する。
【0053】
図4は、SSの多重組合せ設定手順S1の一例を示す。
図4において、SSのグループ化(S101) では、SSが直接通信するBSまたはRS(j) を決定し、BSと直接通信するSSはBSグループに分類し、RS(j) と通信するSSはRS(j) グループに分類する。RS数が2、SS数が6の場合のグループ化処理の一例を図6に示す。図6では、SS(1) とSS(2) はBSグループに分類され、SS(3) とSS(4) はRS(1) グループに分類され、SS(5) とSS(6) はRS(2) グループに分類される。ここでの分類は、各SS(i) にとって最もCNRの高いBSまたはRS(j) のグループを選択してもよい。また、BSと直接通信したときにアクセスに必要となる無線リソースと、RS(j) を介して通信したときに中継とアクセスで必要になる無線リソースの和を比較し、必要となる無線リソースが最小となるBSまたはRS(j) のグループを選択してもよい。後者の場合のグループ化処理手順の一例を図7に示す。
【0054】
まず、伝搬路情報記憶部31に登録されているBS CNR(i) とRSj CNR(i)から、通信可能なアクセスの伝送レートBS RATE(i)とRSj RATE(i) を推定する(S1011) 。続いて、BSとRS(j) 間のBS CNR RELAY(j) から通信可能な中継の伝送レートBS RATE RELAY(j)を推定する(S1012) 。続いて、SS(i) ごとに、BSと直接通信したときにアクセスに必要となる無線リソース
1/BS RATE(i)
と、RS(j) を介して通信したときに中継とアクセスに必要となる無線リソース
1/BS RATE RELAY(j)+1/RSj RATE(i)
とを計算し(S1013)、各SS(i) をリソースが最小となるBSまたはRS(j) のグループに分類する(S1014)。
【0055】
続いて図4において、BSやRS(j) が使用する周波数を多重したときの干渉量を考慮した伝送レートリストを作成する(S102)。伝送レートリストは、多重組合せパターンに対応した伝送レートが計算される。RS数(BS数を含む)がLであった場合、多重組合せパターン数Xは、
X=2L −1
である。まず、組み合わせパターンごとのCINRリストが真値で
CINR=(SSが直接通信するBSまたはRS(j) からのCNR)/(1+Σ多重 組み合わせパターンで干渉となるBSまたはRS(j) からのCNR)
と計算され、CINRリストの値と通信可能な変調方式の多値数から伝送レートリストの値が推定される。
【0056】
一例として、RS数が2、SS数が6の場合のCINRリストを図8に示し、伝送レートリストを図9に示す。多重組合せパターン数は7である。多重組合せパターンID=1は、BS、RS(1) 、RS(2) の3個をすべて多重した場合である。多重組合せパターンID=2〜4は、BS、RS(1) 、RS(2) のいずれか2個を多重した場合である。多重組合せパターンID=5〜7は、BS、RS(1) 、RS(2) のいずれも周波数を多重しない場合である。
【0057】
なお、図8および図9において斜線を記入した部分は、そのSSは周波数多重通信を行わないことを示す。例えば、図8の多重組合せパターンID=2の列では、BSとRS(1) が同時送信した場合の各SSのCINRが記されている。SS(1) とSS(2) はBSと直接接続するグループであり、対応する欄にBSとのCINRが記されている。また、SS(3) とSS(4) はRS(1) と直接接続するグループであり、対応する欄にRS(1) とのCINRが記されている。一方、SS(5) とSS(6) はRS(2) と直接接続するグループであり、多重組合せパターンID=2ではRS(2) は信号を送信しないため、斜線が記入されている。
【0058】
続いて、多重組合せパターンIDをx=1と設定し(S103)、ステップS102で作成した伝送レートリストから多重組合せパターンID=xにおいて多重化する各グループ(BSグループ、RS(j) グループ)から最も伝送レートの高いSSを伝送レートリストから選択する(S104)。続いて、多重化する各グループで選択したSSの伝送レートの和を計算し、その値に多重組合せパターンID=xに含まれるBSとRSの合計数である多重数を乗算する(S105)。多重組合せパターンIDのxを1つずつ増やしながら(S107)、ステップS104,S105 を繰り返す。すべての多重組合せパターンでステップS104,S105 を繰り返した後に(S106でYes )、各多重組合せパターンにおけるステップS105で乗算した値を比較し(S108)、最大となる多重組合せパターンで選択したSSを多重組合せとして確定するとともにその伝送レートを保存し(S109)、そのSSの伝送レートを伝送レートリストから削除する(S110)。そして、ステップS103〜S110を繰り返し、すべてのSSの多重組合せを確定したら(S111でYes )、多重組合せリストを作成して多重組合せの設定を終了する(S112)。
【0059】
また、伝送レートリストは、図10に示すように各SSの多重組合せパターンごとの伝送レートを、多重していないときの各SSの伝送レートで正規化してもよい。この場合についても、正規化された伝送レートを参照して図4のステップS103〜S111の処理を実施し、多重組合せの設定を行う。
【0060】
RS数が2、SS数が6の場合の多重組合せリストの一例を図11に示す。多重組合せリストには確定した多重組合せが示されていると同時に、その多重組合せの伝送レートが示されている。SS(1) ,SS(3) 、SS(5) は多重組合せパターンID=1であり、それぞれBS、RS(1)、RS(2) によって同じ周波数で多重化されて通信する。SS(4) ,SS(6) は多重組合せパターンID=4であり、それぞれRS(1),RS(2) によって同じ周波数で多重化されて通信する。SS(2) は多重組合せパターンID=5であり、BSはRS(1),RS(2) と周波数を多重せずに占有して通信する。
【0061】
(図3のステップS2のアクセス区間と中継区間の比率設定手順)
図12は、アクセス区間と中継区間の比率設定手順S2の一例を示す。
図12において、各RSは、中継区間で通信するデータ量と、アクセス区間で通信するデータ量のいずれかがボトルネックとならないように区間の比率を設定する。具体的には、ステップS1で設定された多重組合せリストと、スケジューラ12の伝搬路情報記憶部31に保存されているBSとRS(j) 間のCNRから推定される伝送レートBS RATE RELAY(j)から、アクセス区間と中継区間で通信できるデータ量が等しくなるように、アクセス区間長length1と中継区間長length2の比率length2/length1を決定する。
【0062】
アクセス区間において、SSを割り当てた各多重組合せに等しい通信区間を設定する場合、アクセス区間はSSを割り当てた各多重組合せ数(スロット数T)で分割される。なお、図11ではT=3である。RS(j) がアクセス区間で通信できるデータ量は、多重組合せリストでRS(j) グループに割り当てられたSSの伝送レートの和に、
length1/T
を乗算して計算する。ここで、RS(j) がアクセス区間でSSと通信可能なデータ量は、
ΣRSj RATE・length1/T
となる。一方、中継区間においてBSとRS(j) 間で通信可能なデータ量は、
BS RATE RELAY(j)・a(j)・length2
である。ここで、a(j) とは、RS(j) に割り当てた通信区間の中継区間length2に対する比率である。
【0063】
続いて、この2式の右辺が等しくなるように設定すると、
a(j) = (ΣRSj RATE/BS RATE RELAY(j))・(length1/length2・T)
となる。このとき、Σa(j) =1(j=1からj=RS数を加算)であるので、アクセス区間と中継区間の比率は、
length1/length2 =Σ(ΣRSj RATE/BS RATE RELAY(j))・(1/T)
と決定することができる。
【0064】
BS10のスケジューラ12は、スケジュール情報構築部32において、以上のようにSSの多重組合せとアクセス区間と中継区間の比率を反映させたスケジューリング情報を構築し、送信データ生成部14へ出力する。送信データ生成部13は、スケジューラ12から入力するデータとスケジュール情報から構築される制御信号によってフレームを作成する。アクセス区間における制御信号は、BS10からSSに割り当てた通信領域の情報を含む。中継区間の制御信号は、複数のRSがスケジューリング情報を構築するために必要な情報、例えばアクセス区間と中継区間の比率や、SSの多重組合せの情報に加えて、各多重組合せのSSが使用する通信領域の情報などが含まれる。
【0065】
(RS20のスケジューラ22の構成例)
図13は、RS20のスケジューラ22の構成例を示す。
図13において、スケジューラ22は、RS配下のサブチャネルごとの伝搬路情報を記憶する伝搬路情報記憶部33、BSのスケジュール情報保持部34、スケジュール情報構築部35から構成される。BSのスケジュール情報保持部34には、RS20が中継区間でBS10から受信した制御信号に含まれるスケジュール情報、例えばアクセス区間と中継区間の比率や、SSの多重組合せの情報などが、受信部27から入力して保存される。スケジュール情報構築部35は、BSのスケジュール情報保持部34を参照して、RS20から複数のSSへのスケジュール情報を構築し、送信データ生成部23へ出力する。
【0066】
なお、以上の実施例では、本発明のスケジューリング処理における端末局SSの多重組合せの設定の手順(ステップS1)を、基地局BS、複数の中継局RS、複数の端末局SSが存在する環境で実施する場合について説明した。しかし、本手順は、複数の基地局BSと複数の端末局SSが存在する環境であっても、複数の基地局BSを集中的に制御可能な制御局機能を備えることにより実施することができる。
【0067】
例えば、制御局機能を有する1つの基地局BS1と、その他の複数の基地局BS2と、複数の端末局SSとからなる無線通信システムにおいて、基地局BS1を図1の基地局BSと同様の構成とし、基地局BS2を図1の中継局RSと同様の構成とすればよい。ただし、基地局BS2はそれぞれバックボーンネットワークに接続される点が中継局RSとは異なる。このようなシステムでは、図14における中継区間の長さは、基地局BS1と基地局BS2とがバックボーンネットワークを介して制御信号を送受信する場合はゼロであり、または基地局BS1と基地局BS2とが無線通信によって制御信号を送受信する場合は一定値となるため、図3におけるアクセス区間と中継区間の比率設定の手順(ステップS2)は不要となる。
【符号の説明】
【0068】
1 バックボーンネットワーク
10 基地局(BS)
20 中継局(RS)
11,21 データバッファ部
12,22 スケジューラ
13,23 送信データ生成部
14,24 送信部
15,25 TDDスイッチ
16,26 アンテナ
17,27 受信部
31,33 伝搬路情報記憶部
32,35 スケジュール情報構築部
34 BSのスケジュール情報保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、複数の中継局と、複数の端末局によって構成される無線通信システムにおいて、
前記基地局は、
前記基地局および前記複数の中継局と、前記複数の端末局とのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局が直接通信する前記基地局または前記中継局を決定する第1の手段と、
前記基地局と前記複数の中継局の一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局または複数の中継局が、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局に対して送信したときの、各端末局と端末局が直接通信する基地局または中継局とのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2の手段と、
前記組合せパターンごとに、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局または中継局と通信する複数の端末局のグループの中で、前記推定された伝送レートが最大となる端末局を選択し、さらにグループごとに選択された端末局の伝送レートの和と前記組合せパターンに含まれる基地局と中継局の合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局が通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局を除外して、さらに前記端末局の選択、前記組合せパターンの決定、前記端末局の除外の手順を繰り返し、すべての端末局が通信に使用する組合せパターンを決定する第3の手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記組合せパターンごとの伝送レートは、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局および中継局が同時に同一周波数の信号を送信しないときの前記伝送レートで正規化したものを用いる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の手段は、
前記基地局と前記端末局との間、前記基地局と前記中継局との間、前記中継局と前記端末局との間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、
前記端末局ごとに、前記基地局との直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局と端末局の伝送レート)を計算し、前記中継局との直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局と中継局間の伝送レート+1/中継局と端末局間の伝送レート)を計算する手段と、
前記無線リソースが最小となる基地局または中継局を選択する手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局と前記中継局は時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを前記基地局および前記中継局が前記端末局と通信するアクセス区間と、前記基地局および前記中継局が中継する中継区間とに時分割する構成であり、
前記基地局は、前記基地局と前記中継局が通信するデータ量と、前記中継局と前記端末局が通信するデータ量が等しくなるように、前記アクセス区間と前記中継区間の比率を制御する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局は、前記アクセス区間と前記中継区間の比率を、前記中継局ごとに、(中継局とその中継局と直接通信する端末局間の伝送レートの和)/(基地局と中継局間の伝送レート×端末局の通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局を制御局機能を有する第1の基地局とし、前記複数の中継局に代えて複数の第2の基地局を備え、前記第1の基地局と前記第2の基地局との間でバックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
基地局と、複数の中継局と、複数の端末局によって構成される無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記基地局は、
前記基地局および前記複数の中継局と、前記複数の端末局とのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局が直接通信する前記基地局または前記中継局を決定する第1のステップと、
前記基地局と前記複数の中継局の一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局または複数の中継局が、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局に対して送信したときの、各端末局と端末局が直接通信する基地局または中継局とのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2のステップと、
前記組合せパターンごとに、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局または中継局と通信する複数の端末局のグループの中で、前記推定された伝送レートが最大となる端末局を選択し、さらにグループごとに選択された端末局の伝送レートの和と前記組合せパターンに含まれる基地局と中継局の合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局が通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局を除外して、さらに前記端末局の選択、前記組合せパターンの決定、前記端末局の除外の手順を繰り返し、すべての端末局が通信に使用する組合せパターンを決定する第3のステップと
を有することを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記組合せパターンごとの伝送レートは、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局および中継局が同時に同一周波数の信号を送信しないときの前記伝送レートで正規化したものを用いる
ことを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項9】
請求項7に記載の無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記第1のステップは、
前記基地局と前記端末局との間、前記基地局と前記中継局との間、前記中継局と前記端末局との間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、
前記端末局ごとに、前記基地局との直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局と端末局の伝送レート)を計算し、前記中継局との直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局と中継局間の伝送レート+1/中継局と端末局間の伝送レート)を計算するステップと、
前記無線リソースが最小となる基地局または中継局を選択するステップと
を有することを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項10】
請求項7に記載の無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記基地局と前記中継局は時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを前記基地局および前記中継局が前記端末局と通信するアクセス区間と、前記基地局および前記中継局が中継する中継区間とに時分割する構成であり、
前記基地局は、前記基地局と前記中継局が通信するデータ量と、前記中継局と前記端末局が通信するデータ量が等しくなるように、前記アクセス区間と前記中継区間の比率を制御する
ことを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項11】
請求項10に記載の無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記基地局は、前記アクセス区間と前記中継区間の比率を、前記中継局ごとに、(中継局とその中継局と直接通信する端末局間の伝送レートの和)/(基地局と中継局間の伝送レート×端末局の通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定する
ことを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項12】
請求項7に記載の無線通信システムのスケジューリング方法において、
前記基地局を制御局機能を有する第1の基地局とし、前記複数の中継局に代えて複数の第2の基地局を備え、前記第1の基地局と前記第2の基地局との間でバックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する
ことを特徴とする無線通信システムのスケジューリング方法。
【請求項13】
基地局と、複数の中継局と、複数の端末局によって構成される無線通信システムの基地局において、
前記基地局および前記複数の中継局と、前記複数の端末局とのCNR(搬送波電力対雑音電力比)を収集し、そのCNRの情報を基に各端末局が直接通信する前記基地局または前記中継局を決定する第1の手段と、
前記基地局と前記複数の中継局の一部または全部で構成される組合せパターンごとに、各組合せパターンに含まれる全ての基地局または複数の中継局が、同時に同一周波数の信号をそれぞれ相手の端末局に対して送信したときの、各端末局と端末局が直接通信する基地局または中継局とのCINR(搬送波電力対雑音+干渉電力比)を計算し、伝送レートを推定する第2の手段と、
前記組合せパターンごとに、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局または中継局と通信する複数の端末局のグループの中で、前記推定された伝送レートが最大となる端末局を選択し、さらにグループごとに選択された端末局の伝送レートの和と前記組合せパターンに含まれる基地局と中継局の合計数である多重数とを乗算し、その値が最大となる組合せパターンを、該組合せパターンにより選択された端末局が通信に使用する組合せパターンとして決定し、通信に使用する組合せパターンが決定した端末局を除外して、さらに前記端末局の選択、前記組合せパターンの決定、前記端末局の除外の手順を繰り返し、すべての端末局が通信に使用する組合せパターンを決定する第3の手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システムの基地局。
【請求項14】
請求項13に記載の無線通信システムの基地局において、
前記組合せパターンごとの伝送レートは、前記組合せパターンに含まれる全ての基地局および中継局が同時に同一周波数の信号を送信しないときの前記伝送レートで正規化したものを用いる
ことを特徴とする無線通信システムの基地局。
【請求項15】
請求項13に記載の無線通信システムの基地局において、
前記第1の手段は、
前記基地局と前記端末局との間、前記基地局と前記中継局との間、前記中継局と前記端末局との間のCNRから、それぞれの区間で通信可能な伝送レートを推定する手段と、
前記端末局ごとに、前記基地局との直接通信に必要となるアクセスの無線リソースとして(1/基地局と端末局の伝送レート)を計算し、前記中継局との直接通信に必要となる中継とアクセスの無線リソースとして(1/基地局と中継局間の伝送レート+1/中継局と端末局間の伝送レート)を計算する手段と、
前記無線リソースが最小となる基地局または中継局を選択する手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システムの基地局。
【請求項16】
請求項13に記載の無線通信システムの基地局において、
前記基地局と前記中継局は時分割複信により送受信を切り替え、無線フレームを前記基地局および前記中継局が前記端末局と通信するアクセス区間と、前記基地局および前記中継局が中継する中継区間とに時分割する構成であり、
前記基地局と前記中継局が通信するデータ量と、前記中継局と前記端末局が通信するデータ量が等しくなるように、前記アクセス区間と前記中継区間の比率を制御する構成である
ことを特徴とする無線通信システムの基地局。
【請求項17】
請求項16に記載の無線通信システムの基地局において、
前記アクセス区間と前記中継区間の比率を、前記中継局ごとに、(中継局とその中継局と直接通信する端末局間の伝送レートの和)/(基地局と中継局間の伝送レート×端末局の通信に確定した組合せパターン数)を計算し、それらの和を計算した値に基づいて決定する構成である
ことを特徴とする無線通信システムの基地局。
【請求項18】
請求項13に記載の無線通信システムの基地局において、
前記複数の中継局に代えて配置される複数の基地局との間で、バックボーンネットワークを介してまたは無線通信により制御信号を送受信する制御局機能を備えた
ことを特徴とする無線通信システムの基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−193289(P2010−193289A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36763(P2009−36763)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】