説明

無線通信システム、基地局装置及び無線通信方法

【課題】基地局装置と無線通信を行う各端末装置に対して一定水準以上の無線通信品質を保証し、かつ無線通信品質を保証する条件のもと、基地局装置が収容可能な端末装置の数を増加させる。
【解決手段】複数のアンテナを有する基地局装置と、1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループと無線通信を行う端末装置とが存在する無線通信システムにおいて、該第一アンテナグループを該端末装置個別に構成可能とし、該基地局装置と該端末装置との間の通信品質の要求値を満たす範囲で該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるよう、端末装置毎の通信品質に基づいて、当該端末の該第一アンテナグループに対する該アンテナの追加または削除を行う(S1107〜S1113等)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局装置及び無線通信方法に係り、特に、分散アンテナシステムを用いたシステムにおいて無線通信品質を保証する無線通信システム、基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)−MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を適用したセルラシステムであるLTE(Long Term Evolution)がある。例えば、非特許文献1には基地局装置−端末装置間の無線物理層における通信手順が開示されており、非特許文献2では基地局装置と端末装置との間のシグナリング方法が開示されている。LTEは、基地局装置と端末装置との間でMIMO伝送を実施し、かつOFDMのサブキャリアを束ねたリソースブロック各々を別々の端末装置に割り当てることで、MIMOによる空間多重と広帯域OFDMAによる相乗効果で、高いシステムスループットを達成することができる。ただし、基地局装置から離れた場所に位置する、いわゆるセルエッジ端末は、複数基地局装置で同一周波数を使用するため、各基地局装置が形成するセルが相互に干渉することと、基地局装置からの距離が離れることによる無線伝搬減衰量が大きくなることから、スループットが低下する。
【0003】
セルエッジ端末の通信品質を改善する方法の1つとして、マクロダイバーシチがある。これは複数の基地局装置と1台の端末装置との間でデータを伝送することでセルエッジでの通信品質改善を狙うもので、例えば特許文献1に開示されている。この公報においては、例えば、端末装置が複数の基地局装置から所定の電力でそれぞれ送信される所定の信号を受信し、それらの信号を合成することにより、同時接続される各基地局装置との間の無線回線における合成後の通信品質を推定し、その推定結果に基づいて基地局装置との接続制御を行う方法が開示されている。つまり、複数基地局装置からの信号を合成する場合としない場合とで通信品質を比較し、合成による通信品質改善が一定以上見込まれる場合に複数基地局に対する接続制御を行う技術である。
【0004】
セルエッジ端末の通信品質を改善する他の方法の1つとして、分散アンテナシステムがある。例えば特許文献2で開示されているように、アンテナを分散配置し、信号処理を集中制御装置で実施するシステム構成方法が知られている。この公報においては、集中制御部は、複数のアンテナ部の少なくとも一つを選択する選択手段と、この選択手段により選択されたアンテナ部に対し任意の励振条件を設定して送信ビームまたは受信ビームを形成するビーム形成手段とを有することを特徴とする分散アンテナシステムが開示されている。つまり、端末装置に対してビームを形成する際、不要なアンテナを使用することによる第三者への与干渉放射や、受信側で除去すべき干渉信号の増加を防ぐ技術である。
【0005】
通信品質を改善するためには、少なくともSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)を改善する必要があるが、マクロダイバーシチのように、複数の信号供給源を1台の端末へ割り当てると、その分だけ他の通信機会を喪失させることとなり、その結果スループットが低下する。従って、SINRの改善度を抑えてでも、複数端末に対して別々の信号供給源を割当て、システムとして複数端末に同時通信させることで端末のスループットを改善することができる。端末スループットが端末数とSINRとのトレードオフの関係であることに着目した技術として、例えば特許文献3が知られている。本公報においては、基地局に備えられた複数のアンテナの一部または全部から成る複数のアンテナグループのうち、無線通信に利用される現行アンテナグループを動的に切り替えるアンテナグループ切替方法において、現在通信中の通信端末の数である収容ユーザ数を監視し、収容ユーザ数を、現行アンテナグループの通信品質を表す値が所定の閾値を維持できる最多の通信端末の数である収容可能ユーザ数と比較し、収容ユーザ数を超える最少の収容可能ユーザ数を有するアンテナグループを現行アンテナグループとすることを特徴とする無線通信方法が開示されている。つまり、収容端末数が大きくなるほど、少ないアンテナ数で端末に対して無線通信サービスを提供し、収容端末数が少なければ、多くのアンテナで高いSINRにて無線通信サービスを提供する端末数適応制御技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−186857号公報
【特許文献2】特開平11−261474号公報
【特許文献3】特開2010−010968号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP,“Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);Physical layer procedures”,TS36.213,v9.0.1,2009/12.
【非特許文献2】3GPP,“Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);Radio Resource Control(RRC);Protocol specification”,TS36.331,v9.1.0,2009/12.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
端末装置毎に通信品質を支配する基地局装置のアンテナの数や組合せは、端末装置の位置やシャドーイングにより異なる。また、端末装置に対して一定水準以上の通信品質を確保するために、必要最低限以上の基地局装置のアンテナを割り当てると、他の端末装置に対して提供可能な基地局装置のアンテナ数が減少するため、一定水準以上を保証できる端末装置の数が減少する。
【0009】
特許文献1の技術は、概略、単独基地局と通信する場合と比較して一定量以上の改善量が見込まれる場合に基地局を追加するものであり、通信品質を保証するものではない。特許文献3の技術は、全端末に対して一斉に制御するものであり、端末個別の通信品質に注目するものではない。
【0010】
以上の点に鑑み、本発明は、基地局装置と無線通信を行う各端末装置に対して一定水準以上の無線通信品質を保証し、かつ無線通信品質を保証する条件のもと、基地局装置が収容可能な端末装置の数を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
複数のアンテナを有する基地局装置と、1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループと無線通信を行う端末装置とが存在する無線通信システムにおいて、該第一アンテナグループを該端末装置個別に構成可能とし、該基地局装置と該端末装置との間の通信品質の要求値を満たす範囲で該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるよう、端末装置毎の通信品質に基づいて、当該端末の該第一アンテナグループに対する該アンテナの追加または削除を行うことを特徴とする無線通信方法により課題は解決する。
本発明は、保証水準に達するまでアンテナを追加し続け、保証水準に対してマージンがあればアンテナを解放すること、及び、アンテナの追加・解放を端末毎に行うことを特徴のひとつとする。
【0012】
本発明の第1の解決手段によると、
無線通信システムであって、
端末装置と、
複数のアンテナ、及び前記複数のアンテナのうち、一以上のアンテナを介して行われる前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質及びアンテナグループを構成するアンテナ数に基づいてアンテナグループを構成すべき一以上のアンテナを選択し、選択されたアンテナによって構成される第一アンテナグループを介して前記端末装置と通信する制御部を有する基地局装置と、
を備えることを特徴とする無線通信システムが提供される。
また、上述の無線通信システムにおいて、
該第一アンテナグループを該端末装置毎に構成し、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、該端末装置に対する第一アンテナグループに前記アンテナを追加又は削除し、
前記基地局装置は、少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて前記端末装置と通信する無線通信システムが提供される。
【0013】
本発明の第2の解決手段によると、
端末装置と無線通信を行うための複数のアンテナと、
1つ以上の該アンテナで第一アンテナグループを該端末装置毎に構成し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、該端末装置に対する第一アンテナグループに前記アンテナを追加又は削除するアンテナグループ制御部と
を備え
少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて前記端末装置と通信する基地局装置が提供される。
【0014】
本発明の第3の解決手段によると、
複数のアンテナを有し、1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループを介して端末装置と無線通信する基地局装置を用いた無線通信方法であって、
第一アンテナグループを端末装置毎に構成し、
基地局装置と端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、端末装置に対する第一アンテナグループにアンテナを追加又は削除し、
基地局装置は、少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて端末装置と通信する無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、基地局装置と無線通信を行う各端末装置に対して一定水準以上の無線通信品質を保証し、かつ無線通信品質を保証する条件のもと、基地局装置が収容可能な端末装置の数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】分散アンテナシステムを具備する基地局装置を用いた場合のシステム構成例。
【図2】本実施例により端末装置に対するアンテナの追加した場合の状態例。
【図3】本実施例により端末装置に第二アンテナグループを追加した場合の状態例。
【図4】本実施例による端末装置へのアンテナ追加および削除の動作例。
【図5】本実施例によるアンテナ追加または削除を行う制御タイミングと通信品質時間変動との関係例。
【図6】本実施例による無線通信方法を実現するためのフローチャート。
【図7】端末装置毎の第一アンテナグループと第二アンテナグループの確定手順一例。
【図8】本実施例による基地局装置−端末装置間動作シーケンスの第一例。
【図9】本実施例による基地局装置−端末装置間動作シーケンスの第二例。
【図10】本実施例による各端末装置に対するアンテナ割り当て手順の一例。
【図11】本実施例により端末装置に対して第二アンテナグループを補助的に割り当てた場合のデータ伝送準備手順の一例。
【図12】本実施例による通信品質推定方法の一例。
【図13】本実施例による基地局装置−端末装置間で伝送する制御メッセージの例。
【図14】本実施例による基地局装置の構成例。
【図15】本実施例による基地局装置のデバイス構成の構成例。
【図16】本実施例によるアンテナグループテーブルの構成例。
【図17】本実施例による通信品質テーブルの構成例。
【図18】本実施例によるベースバンド信号送信部の構成例。
【図19】本実施例によるベースバンド信号受信部の構成例。
【図20】本実施例による端末装置の構成例。
【図21】第二実施例による基地局装置−端末装置間動作シーケンス例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1. 実施例1
本実施例では、1台の基地局装置1が複数のアンテナを具備する分散アンテナシステムを用いた本発明の実施例を説明する。
図1は、分散アンテナシステムを具備する基地局装置1を用いた場合のシステム構成例を示す。基地局装置1は、各端末へ伝送するデータ信号を入力し、基地局装置1の内部で生成する制御信号と多重化して無線信号を出力する機能と、各端末から受信した無線信号を入力して制御信号とデータ信号を分離して、データ信号を出力する機能とを有する。データ信号は、バックホール回線6を介して基地局装置1とゲートウェイ7との間で伝送される。ゲートウェイ7は無線アクセス網から見たデータパケット終端装置であり、他のパケット伝送網と接続されている。
【0018】
基地局装置1から見て無線側の構成を説明する。基地局装置1は、アンテナケーブル2を介して複数のアンテナ3Aから3Fに接続している。アンテナケーブル2は銅線や光ファイバで実現できる。基地局装置1とアンテナ3が別途無線の送受信機を具備することで、アンテナケーブル2、つまり有線伝送の代替として無線伝送に置き換えることができる。また、アンテナ3側にアップコンバータやダウンコンバータを具備することで、アンテナケーブル上はベースバンドアナログ信号を伝送でき、アンテナ3側へ更にアナログデジタル変換器およびデジタルアナログ変換器を具備することで、ベースバンドデジタル信号を伝送できる。これらの代替手段は全て本実施例の範疇である。なお、デジタル信号を伝送することで、アンテナケーブル2上の伝送帯域は多く必要となるが、長距離伝送ができるようになる利点がある。
【0019】
アンテナケーブル2で示された区間は、基地局装置1とアンテナ3との間に、基地局装置1から送信する下り信号のための伝送チャネルと、基地局装置1が受信する上り信号のための伝送チャネルを準備する必要がある。すなわち、アンテナ3の数の2倍だけ伝送チャネルが必要となる。最も簡単な伝送チャネル確保の方法は、アンテナ3の数の2倍だけ基地局装置1から独立にアンテナケーブル2を敷設することである。アンテナケーブル2の敷設本数を減らすため、1本のアンテナケーブル2に複数の伝送チャネルを時間分割、周波数分割、波長分割などの方法で確保する方法もある。これらの方法を採用する場合、基地局装置1とアンテナ3の双方に伝送チャネルの多重化および多重化を解く機能が別途必要となる。本実施例では、アンテナ3の数の2倍だけ基地局装置1から独立にアンテナケーブル2を敷設する例で説明する。
【0020】
無線信号は、アンテナケーブル2およびアンテナ3を介して、基地局装置1と端末装置4Aおよび4B(以下単に端末装置4と称する場合もある)との間で伝送される。各端末装置4Aおよび4Bに対して無線信号を送受信する第一アンテナグループ5A、5Bは一例として図のように定義する。第一アンテナグループ5Aは端末装置4Aとの間の無線通信に使用するアンテナセット、第一アンテナグループ5Bは端末装置4Bとの間の無線通信に使用するアンテナセットである。各端末装置4に対する第一アンテナグループの決定方法は、後ほど図7の説明の所で述べる。
【0021】
図2は、本実施例により端末装置4に対してアンテナの追加を行った場合の状態を示す。図1の状態と比較して、端末装置4Aに対してアンテナ3Dが第一アンテナグループ5Aに追加されている。本実施例では、端末装置4Aに対して、図1に示す第一アンテナグループ5Aでは通信品質の要求値(下限要求値)を満たせないと判断すると、図2に示す第一アンテナグループ5Aに変更して通信品質の改善を図る。逆に、図2の状態で通信品質の下限要求値より高い値である上限要求値を、端末装置4Aの通信品質が超えた場合、第一アンテナグループ5Aを図1の状態に戻す。つまり、第一アンテナグループ5Aからアンテナ3Dを削除する、という動作を行う。第一アンテナグループへのアンテナ追加および削除の手順、ならびにどのアンテナを第一アンテナグループへ追加または第一アンテナグループから削除するかを判定する方法は、後ほど図7の説明の所で述べる。なお、通信品質の下限要求値、上限要求値は、予め定められることができる。
【0022】
図3は、本実施例により端末装置4に第二アンテナグループを追加した場合の状態を示す。本図では、端末装置4Aに対する第一アンテナグループ5Aと、第二アンテナグループ9Aのみを記載したが、端末装置4Bに対しても同様に定義できる。第二アンテナグループ9Aは、第一アンテナグループ5Aを除いた残りのアンテナ3(3A、3D、3E、3F)の中の全部または一部として定義する。本図では、アンテナ3A、3D、3Eを第二アンテナグループ9Aとして定義した例を示している。これらのアンテナは、当該端末装置4Aに対して、第一アンテナグループ5Aに所属するアンテナ3B、3Cに次いで、高い通信品質を当該端末装置4Aに関して供給できるアンテナ群である。ただし、第二アンテナグループ9Aに所属するアンテナ群は、当該端末装置4Aが通信品質要求値を満たすためには必ずしも必要ない。そのため、他の端末装置4、例えば4Bが第一アンテナグループとしてアンテナ3D、3Eを使用する時間周波数において、端末装置4Aはこれらのアンテナ3D、3Eを使用することはできない。アンテナ3Aは、図示していない他の端末装置4が第一アンテナグループとして使用しない場合、端末装置4Aに補助的に使用されても良い。
【0023】
また、アンテナ3D、3Eに関しても、これらのアンテナを第一アンテナグループとする端末装置4Bが、端末装置4Aと異なる時間周波数を使用する場合は、端末装置4Aに対してこれらのアンテナを補助的に使用しても良い。
このように、第二アンテナグループは、全アンテナのうち第一アンテナグループを除いたアンテナ群の全部または一部により構成される。基地局装置1が端末装置4Aにある時間周波数を割り当てて実際に通信する際、当該端末装置4Aの第一アンテナグループは必ず使用する。その上で、当該時間周波数において他の端末装置4Bが第一アンテナグループとして使用しない範囲で、第二アンテナグループのうち一部または全部を、第一アンテナグループに対して補助的に使用することができる。第二アンテナグループの決定方法、ならびに第二アンテナグループに属するアンテナを端末装置4へ割当てる方法については、後ほど図7の説明の所で述べる。
【0024】
図4は、端末装置4に対するアンテナ追加および削除の動作例である。第一アンテナグループ5Aへのアンテナ追加動作は上から下、第一アンテナグループ5Aからのアンテナ削減は下から上の方向に状態が遷移する。図4の例では、端末装置4Aに対して合計2アンテナの追加または削除が最終的には実施される。一度に2アンテナの追加または削除を行うことも可能であるが、1アンテナだけ追加または削除した場合と比較して、当該端末に対する通信品質が急激に変化するため、制御が振動、つまりアンテナの追加と削除が繰り返し発生する恐れがある。このため、一度に複数アンテナの追加削除を行うのではなく、1アンテナずつ追加削除を行う実施例で説明する。1アンテナずつ追加または削除する時間間隔は任意だが、1アンテナだけ追加または削除をした状態で通信品質の測定を行ってから、改めてもう一つのアンテナの追加または削除を行うかどうか判定できる程度の時間間隔を確保しておく。
【0025】
図5は、本実施例によるアンテナ追加または削除を行うタイミングと、端末の通信品質変動との関係を示す図である。縦軸は、ある一台の端末装置4の通信品質を表し、横軸は時間を表す。通信品質は、例えば、スループット、SINR(Signal to Intereference plus Noise Ratio)、当該端末に関する所望信号の基地局装置1側第一アンテナグループでの総受信電力、または、当該端末装置4での第一アンテナグループから送信された信号の総受信電力など、通信品質を定量的に示す指標とする。
【0026】
縦軸の通信品質に対し、2つのしきい値を設ける。当該端末が第一アンテナグループで最低限満たすべき通信品質要求値下限と、当該下限値より高い値である通信品質要求値の上限である。例えば、通信品質要求上限は、過剰に割り当てられたアンテナを他の端末へ割り当てるために解放するための閾値である。当該端末の通信品質が要求値下限を下回ると第一アンテナグループへのアンテナ追加、同じく要求値上限を上回ると第一アンテナグループからアンテナ削除、という動作を行う。なお、要求値上限を上回ることで削除する以外にも、基地局装置1と端末装置4との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、端末装置4に対する第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるようにしてもよい。
横軸の時間に対しては、一定時間毎にアンテナ追加または削除を行う制御タイミングを設ける。また、制御タイミング間のインターバル(制御間隔)を通信品質測定、ならびに同通信品質に基づくアンテナ追加または削除を行うかどうかを判定する区間とする。なお、制御間隔は予め定められることができる。
【0027】
図5に示される通信品質の端末装置4が、時刻T0の時点で2アンテナを第一アンテナグループとしていることを仮定する。時刻T0からT1の間に通信品質が変動している。フェージングによる無線伝搬路応答の変動、第二アンテナグループ活用による通信品質拡張、他の端末が同一時間周波数で通信することによる端末装置間相互干渉、等の理由により変動する。ただし、時刻T0からT1の間では、通信品質要求値下限と上限の間での変動だったため、制御タイミングである時刻T1においては、第一アンテナグループへのアンテナ追加や削除は行わない。時刻T2からT3、時刻T4からT5も同様である。
時刻T1からT2の間では、通信品質が要求値下限を下回っている。このため、制御タイミングT2において、当該端末装置4の第一アンテナグループに対してアンテナ追加を行う。逆に、時刻T3からT4の間では、通信品質が要求値上限を上回っているため、制御タイミングT4において、当該端末装置4の第一アンテナグループからアンテナ削除を行う。
【0028】
図6は、本実施例による無線通信方法を実現するための全体フローチャートを示す。図示のフローチャートは左右2つに分かれており、左側が第一アンテナグループおよび第二アンテナグループのメンテナンスを実施するフローで、右側が第一アンテナグループおよび第二アンテナグループが決定した状態で、タイムスロット毎の基地局装置1−端末装置4間のデータ通信を制御するフローである。定常状態においては左右両方のフローがともに(並行して)実施されるが、端末装置4が本実施例による無線通信システムにエントリーした時点では、当該端末装置4に関しては左側のフローのみが動作する。なお、各装置の構成、テーフルの構成は、図14〜図20を参照して後述するが、適宜参照して動作を説明する。
図6のStep1(S1001)では、基地局装置1が、端末装置4毎に通信品質の測定を行う。Step2(S1002)では、基地局装置1が、Step1で推定した端末装置4毎の通信品質を基に第一アンテナグループおよび第二アンテナグループを構成するアンテナの組合せを確定する。Step1とStep2の具体例な実施例を図7に示す。
【0029】
図7は、端末装置4毎の通信品質推定結果に基づいて第一アンテナグループと第二アンテナグループを確定する手順の一例を示す。この手順は、端末装置4毎に実施される。
本図のStep1(S1101)は、基地局装置1が、例えば後述するアンテナグループテーブル116を参照して、第一アンテナグループおよび第二アンテナグループのいずれにも所属しないアンテナに関して、アンテナ−端末装置4間の伝搬ロスを推定する。伝搬ロス推定の具体的な方法は、後ほど図8ならびに図9を参照して説明する。ここで、基地局装置1側のアンテナ3、端末装置4のいずれを送信源としても良い。全ての送信源の送信電力が均一であれば、送信電力から受信電力を減算することで伝搬ロスをアンテナ毎に推定することができる。伝搬ロスは、基地局装置1側のアンテナ3を送信源とした場合は、アンテナ3から送信した信号の送信電力と端末装置4での受信電力との差に相当し、端末装置4を送信源とした場合は、端末装置4から送信した信号の送信電力とアンテナ3での受信電力との差に相当する。
【0030】
Step2(S1102)は、基地局装置1が、Step1で推定した伝搬ロスのうち、最も伝搬ロスが小さいアンテナ(ベストなアンテナ)を選択して、第二アンテナグループへ追加する処理である。つまり、第一アンテナグループと第二アンテナグループのいずれにも所属しないアンテナのうち、最も高い受信電力が期待できるアンテナを第二アンテナグループへ追加する動作に相当する。なお、Step1とStep2において、第一アンテナグループと第二アンテナグループのいずれにも所属しないアンテナが存在しない場合、すなわち、第一アンテナグループと第二アンテナグループとで全てのアンテナを網羅している場合、第二アンテナグループに対して新たに追加されるアンテナは存在しない。
【0031】
Step3(S1103)とStep4(S1104)では、基地局装置1が、それぞれ現在の第一アンテナグループA、第二アンテナグループに所属するアンテナ毎の伝搬ロスをStep1と同様に推定する。
Step5(S1105)では、基地局装置1が、第二アンテナグループに所属するアンテナのうち、Step4で推定した伝搬ロスが最も小さいアンテナ(ベストなアンテナ)を選択し、このアンテナを現在の第一アンテナグループAへ追加して、新たな第一アンテナグループBとして仮に定義する。
【0032】
Step6(S1106)では、基地局装置1が、第一アンテナグループAに所属するアンテナのうち、Step3で推定した伝搬ロスが最も大きいワーストなアンテナを選択し、このアンテナを現在の第一アンテナグループAから削除して、新たな第一アンテナグループCとして仮に定義する。現在の第一アンテナグループAに所属するアンテナ数が1の場合、アンテナを削除すると第一アンテナグループに所属するアンテナ数が0となる。この状態は通信品質の要求値を満たせないことが自明のため、アンテナの削除は行わない。つまり、第一アンテナグループCとして、現在の第一アンテナグループAをコピーする。上述のStep5(S1105)、Step6(S1106)の処理は、アンテナ追加、削除のための準備処理であり、後に行っても良い。
【0033】
Step7(S1107)では、基地局装置1が、現在の第一アンテナグループAを用いて基地局装置1と端末装置4が通信を行った場合の通信品質を推定する。通信品質としては、既に述べた通り、スループット、SINR、または当該端末に関する所望信号の基地局装置1側第一アンテナグループでの総受信電力、または当該端末装置4での第一アンテナグループから送信された信号の送受信電力など、通信品質を定量的に示す指標とする。なお、後述するように、通信品質は端末装置4で推定し、基地局装置1に送信されてもよい。初めて図7の手順を通った初期状態の端末装置4は、Step2で第二アンテナグループに1つのアンテナが追加され、同アンテナがStep5で仮定義される第一アンテナグループBに所属するが、Step3以降で現れる第一アンテナグループAに所属するアンテナ数は0である。よって、Step7で推定される通信品質は0となる。この条件で必ず通ることになるStep9で、第一アンテナグループBが新たな第一アンテナグループとして確定する。よって、次回以降の図7の手順においては、当該端末装置4に対しても第一アンテナグループAが存在することが保証される。
【0034】
Step8(S1108)では、基地局装置1が、Step7で推定した通信品質と、本実施例による通信品質の要求値下限との比較を行い、前者が後者を下回っていればStep9へ、下回っていなければStep11の処理へ移行する。
Step9(S1109)とStep10(S1110)では、基地局装置1が、当該端末装置4の第一アンテナグループによる通信品質が、通信品質要求値の下限を下回っていたため、新たなアンテナを第一アンテナグループへ追加する処理である。Step9では、Step5で仮定義した第一アンテナグループBを新たな第一アンテナグループとして確定する。Step10は、Step5で第二アンテナグループから第一アンテナグループBへ仮に移動していたアンテナを、当該アンテナがStep9において第一アンテナグループへ移動することが確定したことを以って、第二アンテナグループから削除する動作である。
【0035】
Step11(S1111)では、基地局装置1が、Step7で推定した通信品質と、本実施例による通信品質の要求値上限との比較を行い、前者が後者を上回っていればStep12へ、上回っていなければStep14の処理へ移行する。なお、Step8とStep11で、条件分岐が共にNoだった場合、すなわちStep7で推定した通信品質が、通信品質の要求値下限と要求値上限との間に収まっていた場合、第一アンテナグループは更新しない。
Step12(S1112)とStep13(S1113)では、基地局装置1が、当該端末装置4の第一アンテナグループによる通信品質が、通信品質要求値の上限を上回っていたため、第一アンテナグループからアンテナを削除する。Step12では、Step6で仮定義した第一アンテナグループCを新たな第一アンテナグループとして確定する。Step13は、Step6で第一アンテナグループから仮に削除していたアンテナを、当該アンテナがStep13において第一アンテナグループから削除されることが確定したことを以って、第一アンテナグループから第二アンテナグループへ移動する動作である。
【0036】
Step14(S1114)では、基地局装置1が、第二アンテナグループに所属するアンテナの数が予め定められたしきい値を上回っているかどうかを判定する。上回っていればStep15へ、上回っていなければ、当該端末装置4に関する図7の手順は完了となる。
Step15(S1115)では、基地局装置1が、第二アンテナグループに所属するアンテナの数がしきい値を上回っていた場合に、最も伝搬ロスが大きいアンテナ(ワーストなアンテナ)を第二アンテナグループから削除する動作である。ここで、第二アンテナグループに所属するアンテナの数に制約を設けることは、Step4における第二アンテナグループの各アンテナに対する伝搬ロス推定の処理数削減に貢献する。以上の手順を以って、端末装置4毎の第一アンテナグループと第二アンテナグループが確定する。基地局装置1は、確定した第一アンテナグループに属するアンテナのIDと、第二アンテナグループに属するアンテナのIDを、端末装置IDに対応して、後述するアンテナグループテーブルに記憶する。
【0037】
このように、基地局装置1は、複数のアンテナのうち、一以上のアンテナを介して行われる基地局装置1と端末装置4との間の通信品質及びアンテナグループを構成するアンテナ数に基づいてアンテナグループを構成すべき一以上のアンテナを選択し、選択されたアンテナによって構成される第一アンテナグループを介して端末装置4と通信する。アンテナグループを構成するアンテナ数は、例えば、基地局装置1と無線通信を行う各端末装置4に対して一定水準以上の無線通信品質を保証しつつ、かつ無線通信品質を保証する条件のもと、基地局装置1が収容可能な端末装置4の数を増加できる数である。例えば、基地局装置1と端末装置4との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になる数である。
【0038】
ここで、図6の説明に戻る。基地局装置1が、Step1とStep2で、端末装置4毎の第一アンテナグループと第二アンテナグループを確定させた後、Step3(S1003)では、図5に示す制御タイミングとなるまで待つ。制御タイミングとなったら、Step4(S1004)において、基地局装置1が、Step1とStep2で確定した第一アンテナグループと第二アンテナグループをシステムに反映する。システムへの反映方法の一例を挙げる。
【0039】
第一アンテナグループの変更に伴い、変更前に基地局装置1−端末装置4間でネゴシエーションした通信方法での通信が継続できない場合、新たに基地局装置1−端末装置4間で通信方法のネゴシエーションを行う。例えば、第一アンテナグループ変更に伴い、MIMO通信や送信ダイバーシチ通信で使用する空間レイヤ数が変更となる場合、新たなネゴシエーションが必要となる。このネゴシエーションは端末装置個別のシグナリング(Dedicated Signaling)によって実現する。このシグナリング方法については後述する。
Step5(S1005)では、基地局装置1が、Step4で更新されたアンテナグループのネゴシエーションが基地局装置1−端末装置4間で完了していることを前提として、タイムスロット毎に端末装置4に対する周波数およびアンテナリソース割当てを実施する。Step6(S1006)では、基地局装置1が、端末装置4に割り当てた周波数およびアンテナリソースを用いて、実際に基地局装置1−端末装置4間で無線通信を行う。端末装置4に対するリソース割当ての手順は、後ほど図10の説明の所で述べる。
【0040】
図8は、本実施例による基地局装置1と端末装置4との間で交換される信号やメッセージを記載したシーケンス図の第一例である。この図では、前半は当該端末装置4に対してアンテナ#1とアンテナ#2が第一アンテナグループであり、後半はアンテナ#1のみが第一アンテナグループとなる例を示す。また、この例では端末装置4からの上りパイロット信号を用いて基地局装置1が通信品質を推定することを前提とする。基地局装置1からの下りパイロット信号を用いる場合の例は後述する。
端末装置4は、基地局装置1側で既知のパイロット信号を送信する(S1201)。このパイロット信号は、それぞれのアンテナ3で受信され、基地局装置1へアンテナ3毎個別の信号として入力される。基地局装置1側で伝搬ロス推定を行うため、端末装置4は上り送信電力情報に関する制御信号を、例えばパイロット信号とともに送信する(S1202)。
【0041】
基地局装置1は、当該端末装置4の第一アンテナグループであるアンテナ#1とアンテナ#2で受信した当該制御信号に対して復調および復号する。当該制御信号の復調には、アンテナ#1とアンテナ#2で受信したパイロット信号を用いる。基地局装置1は当該制御信号の復号に成功すると、当該端末装置4からの上り送信電力を知ることができる。
基地局装置1は、端末装置4からの上りパイロット信号を用いて、アンテナ3毎の上りパイロット信号の受信電力を推定し、同推定値を上り送信電力から減算することで、アンテナ3毎の伝搬ロスを推定する(S1203)。基地局装置1は、推定されたアンテナ毎の伝搬ロスを、端末装置IDとアンテナIDに対応して、後述する通信品質テーブルに記憶する。
【0042】
アンテナ3毎の伝搬ロスが推定できると、図7に示した手順により第一アンテナグループおよび第二アンテナグループを決定することができる。同手順のStep7(S1107)にて通信品質測定を行っているが、図8において、このステップはS1204に相当する。また、図7の手順が完了し、図6のStep3で制御タイミングを待ち、Step4で第一アンテナグループと第二アンテナグループを反映する段階が、図8におけるステップS1205に相当する。
基地局装置1から、第一アンテナグループに属するアンテナ数に基づいて決定した上り通信方法を、制御情報として端末装置4へ通知する(S1206)。端末装置4からのACK(Ackknowledgement)応答を基地局装置1が受信すること(S1207)を以って、基地局装置1と端末装置4との間の送受信方法のネゴシエーションが完了する。このとき、基地局装置1から通知する内容は、上り送信空間レイヤ数と、MIMO空間多重または送信ダイバーシチのいずれかの送信方法を示すインジケータとの2点を含む。送信方法を示すインジケータとして、現在非特許文献1で開示されているTransmission Modeが例として挙げられる。Transmission Modeによって送信ダイバーシチかMIMO空間多重のいずれかが、端末装置個別に指定できるようになっている。
【0043】
また、図6の説明でも述べた通り、これらの通信方法に変更が発生する場合のみ、新たなネゴシエーションが必要であり、その他の端末装置4、具体的には第一アンテナグループに変更がない端末装置4、または第一アンテナグループが変更されても空間レイヤ数等に変更が発生しない端末装置4に対しては、新たなネゴシエーションは不要である。ネゴシエーションを行う方法としては、現在非特許文献2で開示されているRRC Connection Reconfiguration Procedureがある。この中で基地局装置1から端末装置4に向けて伝送されるRRCConnectionReconfigurationメッセージ中の、RadioResourceConfigDedicated::PhysicalConfigDedicated::AntennaInfoDedicatedの情報エレメントの中に、上記Transmission Modeを指定するインターフェースを有する。RRCConnectionReconfigurationメッセージは、端末装置個別を宛先としたメッセージのため、端末装置4毎にTransmission Modeを指定することができる。
【0044】
この非特許文献2に従うと、S1206の通知が基地局装置1から端末装置4へ伝送されるRRCConnectionReconfigurationメッセージに相当し、S1207の通知は端末装置4から基地局装置1へ伝送されるRRCConnectionReconfigurationCompleteメッセージに相当する。
なお、ネゴシエーションを行う段階においては、第一アンテナグループ変更前の空間レイヤ数やMIMOまたは送信ダイバーシチいずれかの通信方法を適用する。本図の例においては、第一アンテナグループ変更前はアンテナ#1とアンテナ#2を第一アンテナグループとしているため、これらのアンテナを用いて端末装置4と通信する。ネゴシエーション完了後は、第一アンテナグループがアンテナ#1のみに変更されるため、以降の制御信号やデータ信号の通信には、アンテナ#1のみを使用することになる。
【0045】
ネゴシエーションが完了した後、次の制御タイミングが来るまでは通常動作となる。端末装置4は上りパイロット信号を送信し(S1201)、基地局装置1は次の制御タイミングに備えた伝搬ロス推定(S1203)や通信品質推定(S1204)を継続しながら、上りデータ信号の適応変調を行うため、上り伝送速度の推定を行う(S1210)。基地局装置1は、図示されていないものも含めた各端末装置4に関する上り伝送速度推定結果に基づき、各端末装置4に対して上り通信リソースを割り当てる(S1211)。
【0046】
基地局装置1は、通信リソース割当て時、各端末装置4に対してサブキャリアなどの周波数リソースと、基地局装置1側のアンテナ3リソース、ならびにこれらのリソースを用いた時の変調方式や符号化率を指定する。これらのうち、端末装置4に通知すべき情報は、周波数リソースの割り当て情報と、変調方式と符号化率である。これらは基地局装置1での受信方法を規定するとともに、端末装置4に対する送信方法を規定し、端末装置4に通知するためである。基地局装置1が当該端末からの上り信号を受信するアンテナは、基地局装置1側の受信方法を規定するのみであり、端末装置4側に通知する必要はない。なお、端末装置4からの送信タイミングは、送信方法を規定するもののため通知しても良いが、端末装置4が同通知を受けてから一定時間後に上り信号を送信する、というプロトコルにすることで、送信タイミング情報を通知する必要はなくなる。
基地局装置1が、上述のように、端末装置4に割り当てた周波数リソース情報、および適用する変調方式や符号化率を、まとめて上りリソース割り当て情報として端末装置4へ通知する(S1212)。
【0047】
上りリソース割り当て情報を受信した端末装置4は、同情報に従って送信タイミングや周波数を決定し、適用する変調方式や符号化率に従ってデータ信号を生成し(S1213)、データ信号復調に使用するパイロット信号とともに基地局装置1へ向けて送信する(S1201、S1214)。基地局装置1は受信したデータ信号を、パイロット信号を用いて復調した後に復号し、送信されたデータ信号を取り出す(S1215)。なお、データ信号復調用パイロットとしては、通信品質推定や伝送速度推定用のパイロットと兼用としても、それぞれ別々のパイロット信号としても良い。いずれにしても、通信品質推定や伝送速度推定用のパイロットは端末装置4から送信され、上記データ復号と並行して伝搬ロス推定(S1203)、通信品質推定(S1204)、上り伝送速度推定(S1210)、上りリソース割当て(S1211)が基地局装置1において実施される。
【0048】
図9は、本実施例による基地局装置1と端末装置4との間で交換される信号やメッセージを記載したシーケンス図の第二例である。この図では、前半は当該端末装置4に対してアンテナ#1のみが第一アンテナグループであり、後半はアンテナ#1とアンテナ#2が第一アンテナグループとなる例を示す。また、この例では基地局装置1からの下りパイロット信号を用いて端末装置4が通信品質を推定することを前提とする。
【0049】
基地局装置1は、各アンテナ3からアンテナ固有のパイロット信号を送信する(S1301)。端末装置4は、アンテナ固有パイロット信号の受信電力を推定する(S1302)。さらに、図8の例と同様に下りの通信品質推定を行う(S1204)。端末装置4が推定したアンテナ3毎の受信電力情報、ならびに通信品質情報を基地局装置1へフィードバックする(S1303、S1304)。
基地局装置1は、端末装置4からフィードバックされた受信電力情報と、基地局装置1自身が管理しているアンテナ毎の送信電力との差分から、端末装置毎アンテナ毎の伝搬ロスを推定する(S1203)。ここから先、基地局装置1と端末装置4との間での送受信方法ネゴシエーション完了までは、通信品質情報を端末装置4からのフィードバックで入手する以外は、図8のシーケンスと同じである。
【0050】
ネゴシエーションが完了した後、次の制御タイミングが来るまでは通常動作となる。基地局装置1は下りパイロット信号を送信し(S1301)、端末装置4は次の制御タイミングに備えた受信電力推定(S1302)ならびに通信品質推定(S1204)を継続しながら、下りデータ信号の適応変調を行うため、下り伝送速度の推定を行う(S1210)。端末装置4が推定した受信電力の情報、通信品質情報、および下り伝送速度の情報を基地局装置1へフィードバックする(S1303、S1304、S1305)。
【0051】
これらのフィードバック情報を受信した基地局装置1は、伝搬ロス推定(S1203)を次の制御タイミングまで継続しながら、下り伝送速度の推定情報に基づきタイムスロット毎の下りリソース割当てを実施する(S1211)。通信リソース割当て時、各端末装置4に対してサブキャリアなどの周波数リソースと、基地局装置1側のアンテナ3リソース、ならびにこれらのリソースを用いた時の変調方式や符号化率を指定する。これらのうち、端末装置4に通知すべき情報は、周波数リソースの割り当て情報と、変調方式と符号化率である。これらは基地局装置1での送信方法を規定するとともに、端末装置4に対する受信方法を規定するためである。予め基地局装置1−端末装置4間でネゴシエーションされた通信方法に対して変更しないことを前提とすると、基地局装置1が当該端末装置4に対して下り信号を送信するアンテナは端末装置4が必ずしも知る必要はない。
【0052】
これは、基地局装置1と端末装置4との間で、例えば4レイヤMIMO通信することさえネゴシエーションが取れていれば、本実施例では基地局装置1が5アンテナ以上使用したとしても、端末装置4がその送信方法に合わせる必要はないためである。基地局装置1側が、タイムスロット毎に端末装置4へ割り当てたアンテナ全てを用いて、予めネゴシエーションした送信方法を実施することになる。例えば、基地局装置1が4レイヤMIMO通信するとネゴシエーションした端末装置4に対して、あるタイムスロットで5アンテナを割り当てた場合、5アンテナのうち4アンテナで4レイヤ送信を行い、5アンテナ目は前記4アンテナのうち1つと、全く同じデータ信号およびデータ信号復調用パイロットを送信する。端末装置4側では、4アンテナ、4空間レイヤで受信すればよい。
【0053】
基地局装置1は、端末装置4への通信リソース割当て(S1211)が完了した後、通信リソース割当て結果に従って、各端末装置4に対して下り送信信号を生成する(S1306)。その後、リソース割り当て情報、データ信号、パイロット信号を端末装置4に対して送信する(S1301、S1307、S1308)。
端末装置4は、基地局装置1から送信されたリソース割り当て情報、データ信号、パイロット信号を用いて、下りデータ信号の復号を行う。具体的には、パイロット信号を用いてリソース割り当て情報を復号した後、同情報に格納されている周波数情報や変調方式、符号化率を参照して、データ信号を復号する(S1215)。このとき、パイロット信号を用いて受信電力推定(S1302)、通信品質推定(S1204)、ならびに伝送速度推定(S1210)は継続する。
【0054】
図10は、本実施例による端末装置4毎の第一アンテナグループと第二アンテナグループから、各タイムスロットにおける各端末装置4に対するアンテナ割り当て方法の説明図である。上述のステップS1006の処理の詳細フローチャートである。図10のフローチャートは、周波数分割リソース毎に実施される。全体の流れとしては、端末装置4間で割り当てアンテナが重複しないという条件で、可能な限り端末装置4の第一アンテナグループを全て当該端末装置4向けにマッピングし、どの端末装置4に対してもマッピングされなかった、各端末装置4の第二アンテナグループのアンテナの一部または全部を割当てる。この段階までどの端末装置4にもマッピングされなかったアンテナは、当該タイムスロットにおいてMutingを実施する。
【0055】
Step1(S1401)では、基地局装置1は、パケットスケジューリングのための評価関数値A(u)を計算する。uは端末装置4のインデックスを示す。スケジューリングアルゴリズムとしては、例えばプロポーショナルフェアネスが挙げられる。プロポーショナルフェアネスは、当該端末装置4が第一アンテナグループを全て使用し、予め基地局装置1−端末装置4間でネゴシエーションした送受信方法で通信した場合の、瞬時の推定伝送速度を分子に、当該端末装置4に対して提供できた平均伝送速度を分母に配した値を評価関数とする。この値が大きいほど、平均伝送速度に対して推定瞬時伝送速度の比率が高いことを示し、この値が高い端末装置4に通信リソースを配分することで、いわゆるユーザダイバーシチ効果により、単純なラウンドロビンスケジューラよりも高いシステム周波数利用効率を達成できる。
【0056】
瞬時の推定伝送速度は、図8および図9のS1210において推定され、図9の場合は端末装置4での推定結果を、S1305においてフィードバック情報として基地局装置1へ伝送する。分母の平均伝送速度は、基地局装置1において各端末装置4に対するリソース割当て実績から計算することができる。
Step2(S1402)では、基地局装置1は、Step1で計算した評価関数値が高い順に端末装置4のインデックスを指定する。Step3からStep5が、ある端末装置4のインデックスに対する処理であり、一連の処理が完了するとStep2に戻り、次に評価関数値が高い別の端末装置4のインデックスを指定する。
【0057】
Step3(S1403)では、基地局装置1は、Step2で指定された端末装置4の第一アンテナグループに属する全てのアンテナを、当該周波数分割リソースにおいて割り当て可能かどうかを判定する。少なくとも1つのアンテナにおいて、既に他の端末装置4に対して割り当てられていれば、割り当て不可能と判定し、Step5へ進む。割り当て可能であればStep4へ進む。なお、指定された端末装置4の第一アンテナグループは、アンテナグループテーブルを参照して判別できる。以下の処理における第二アンテナグループについても同様である。割当不可能と判定された端末装置4には、例えば、他のタイムスロット、他の周波数分割リソースで第一アンテナグループが割り当てられることになる。
【0058】
Step4(S1404)では、基地局装置1は、Step2で指定された端末装置4の第一アンテナグループ全てのアンテナを、当該端末装置向けアンテナリソースとして割り当てることを確定する。この動作により、当該タイムスロットの同一周波数分割リソースにおいて、他の端末装置4が、このステップで当該端末装置4に割当てられたアンテナを使用することができなくなる。
Step5(S1405)では、基地局装置1は、全ての端末装置4についてStep3とStep4の処理が完了したかどうかを判定する。完了していればStep6へ進む。完了していなければ、別の端末装置4を指定するためStep2へ戻る。
【0059】
Step6(S1406)では、基地局装置1は、Step5までで全てのアンテナにいずれかの端末装置4をマッピングしたか、端末装置4がマッピングされていないアンテナが残っているかどうかを判定する。Step5までで全てのアンテナにいずれかの端末装置4が割り当てられている場合は、当該タイムスロットかつ当該周波数分割リソースにおいて、端末装置4に割り当て可能なアンテナが残されていないため、当該周波数分割リソースにおけるアンテナ割り当てを終了し、別の周波数分割リソースの割り当てを開始する。端末装置4がマッピングされていないアンテナが残っている場合は、第二アンテナグループからの追加割り当てを行うため、Step7へ進む。
【0060】
Step7(S1407)では、基地局装置1は、どの端末装置4に第二アンテナグループからアンテナの追加割り当てを行うか、を決定するための評価関数値B(u)を計算する。一例として、図8および図9のS1204で推定される通信品質を分母として、通信品質の要求値下限を分子とする評価関数が考えられる。この評価関数は、端末装置4の通信品質が要求値下限に対して低い値となるほど高い値を示すものであり、通信品質の要求値下限に近い(又は下回っている)端末装置4に対して、第二アンテナグループからアンテナの追加割り当てを行いやすくする狙いである。
【0061】
Step8(S1408)は、Step2と同様の動作である。具体的には、基地局装置1は、Step7で計算した評価関数値が高い順に端末装置4のインデックスを指定する。Step9からStep11が、指定された端末装置4のインデックスに対する処理であり、一連の処理が完了するとStep8に戻り、次に評価関数値が高い別の端末装置4のインデックスを指定する。
Step9(S1409)では、基地局装置1は、Step8で指定された端末装置4の第二アンテナグループに属するアンテナのうち、当該周波数分割リソースにおいて少なくとも1アンテナが割り当て可能かどうかを判定する。第二アンテナグループに属するアンテナ全てが、既に他の端末装置4に対して割り当てられていれば、割り当て不可能と判定し、Step11へ進む。割り当て可能であればStep10へ進む。
【0062】
Step10(S1410)では、基地局装置1は、Step8で指定された端末装置4の第二アンテナグループのうち、Step9で割り当て可能と判断されたアンテナをひとつ(複数でもよい)を、当該端末装置向けアンテナリソースとして割り当てることを確定する。この動作により、当該タイムスロットの同一周波数分割リソースにおいて、他の端末装置4が、このステップで当該端末装置4に割当てられたアンテナを使用することができなくなる。
Step11(S1411)では、基地局装置1は、全ての端末装置4についてStep9とStep10の処理が完了したかどうかを判定する。完了していれば当該周波数分割リソースでの割り当てを終了する。完了していなければ、別の端末装置4を指定するためStep8へ戻る。
【0063】
図11は、第二アンテナグループを補助的に割り当てた端末装置4に関するデータ信号伝送を行うための準備手順を示す。この手順は、基地局装置1−端末装置4間でネゴシエーションした通信方法が、第一アンテナグループのみを使用した場合の通信方法であることから、第二アンテナグループから追加されたアンテナを、第一アンテナグループのアンテナに結合することで、予めネゴシエーションした通信方法(例えば、空間レイヤ数)に従いながら、受信側への信号到達電力を向上することが狙いである。
【0064】
Step1(S1501)およびStep2(S1502)では、基地局装置1は、それぞれ第一アンテナグループの全アンテナ、第二アンテナグループに所属するアンテナのうち、図10に示す手順により当該端末に当該タイムスロット及び当該周波数分割リソースにおいて割当てられたアンテナに関して、伝搬ロスの降順にソートする。降順であることに特別な意味はなく、Step3において最も伝搬ロスが大きい、または小さいアンテナを探索しやすくしているに過ぎない。
【0065】
Step3(S1503)では、基地局装置1は、第一アンテナグループのうち最も伝搬ロスが大きいアンテナ(アンテナAとする)と、第二アンテナグループのうち最も伝搬ロスが小さいアンテナ(アンテナBとする)とを結合する。つまり、アンテナBからアンテナAと全く同一のデータ信号とデータ復調用のパイロット信号を出力させる。これを本実施例ではアンテナの結合と称する。アンテナBが結合された第一アンテナグループのアンテナAに関する伝搬ロスを、図11の手順動作中だけ一時的に更新する。伝搬ロスをデシベル値とすると、それぞれの伝搬ロス値に−1を掛けたものをリニア値に変換し、デシベルに戻して−1を掛けることで、伝搬ロス値を結合する。
以上の動作を、全ての第二アンテナグループのアンテナがいずれかの第一アンテナグループのアンテナに結合されるまで繰り返し、Step4(S1504)において終了判定を行う。端末装置4に割り当てる各アンテナ、及び、どのアンテナにどのアンテナを結合するかの情報は、後述するベースバンド信号送信部102に通知される。
【0066】
図12に、本実施例による通信品質推定方法を説明する。この図は、通信品質推定を実施する測定主体が基地局装置1および端末装置4のいずれにも適用できるよう記載している。通信品質の測定対象となるパイロット信号やデータ信号を送信する主体(送信主体)は、測定主体とは異なる。すなわち、測定主体が基地局装置1であれば、測定対象の信号を送信する送信主体は端末装置4であり、一方、測定主体が端末装置4であれば、測定対象の信号を送信する送信主体は基地局装置1となる。なお、測定周期は、図5で示した制御タイミング間インターバルと同じ長さとする。図12に示すフローチャートは、測定主体が基地局装置1であれば端末装置4毎に処理され、測定主体が端末装置4であれば各端末装置4内で個別に実施される。
【0067】
Step1(S1601)では、測定主体が、測定周期が始まるタイミングで各種測定値をリセットする。スループットを測定する場合は、データ通信に成功したビット数Tbを0にリセットする。SINRや受信電力を測定する場合は、第一アンテナグループのアンテナから送信される下りパイロット信号の端末装置4での総受信電力、または各端末装置4から送信される上りパイロット信号の第一アンテナグループのアンテナでの総受信電力Paと、第一アンテナグループ以外のアンテナに関する送受信電力Pbとを0にリセットする。
【0068】
Step2(S1602)では、測定主体が、測定対象の信号が測定主体側で検出されるまで待つ動作である。パイロット信号であれば、送信タイミングは測定主体側でも既知であるため、既知の送信タイミングに合わせて測定対象信号であるパイロット信号の受信を開始する。データ信号であれば、リソース割当て情報がデータ信号受信タイミング決定の手掛かりとなる。測定主体が基地局装置1の場合、端末装置4に対してリソース割り当て情報を送信してから一定時間後、例えば8タイムスロット後に、当該端末装置4からデータ信号が、リソース割り当て情報で指定した周波数分割リソース、ならびに変調方式や符号化率で送信されることが分かっている。一方、測定主体が端末装置4の場合、端末装置4はリソース割り当て情報をブラインドデコーディングし、当該端末装置4宛のリソース割り当て情報を検出したら、同一のタイムスロットに当該端末装置4宛のデータ信号が、リソース割り当て情報が指定する周波数分割リソース、ならびに変調方式や符号化率で送信されていることが判明する。
【0069】
Step3(S1603)では、測定主体が、測定対象がスループットかどうかを判定している。本質的には、データ信号を測定対象としているか、パイロット信号を測定対象としているかを区別する動作である。測定対象がスループットであれば、データ信号の復号を行うためStep4へ進む。測定対象がスループット以外のSINRや受信電力であれば、パイロット信号を用いた通信品質推定を行うためStep8へ進む。
Step4(S1604)では、測定主体が、データ信号の復号を開始するための準備として、リソース割り当て情報を参照して、当該データ信号の配置された周波数分割リソース、変調方式ならびに符号化率の情報を取得する。測定主体が基地局装置1の場合は、リソース割り当て情報は基地局装置1自身が発行しているため、基地局装置1内部に記録してある情報を参照することになる。一方、測定主体が端末装置4の場合は、リソース割り当て情報は端末装置4におけるブラインドデコーディングにより取得する。
【0070】
Step5(S1605)では、測定主体が、リソース割り当て情報に格納されている周波数分割リソース割り当て情報を基に、当該端末装置4に関するデータ信号を受信信号全体から抽出する。Step6(S1606)では、測定主体が、Step5で抽出したデータ信号を、リソース割り当て情報に含まれている当該データ信号に関する変調方式や符号化率を読み出し、当該データ信号の復号を実施する。復号に成功したかどうかは、データ信号に付加される誤り検出符号をチェックすることで判定する。Step7(S1607)では、測定主体が、Step6で復号成功判定結果に応じて、復号成功と判定された場合は、データ通信に成功したビット数Tbに、復号に成功したビット数を加算する。その後、Step12(S1612)に移る。
【0071】
一方、Step8(S1608)では、測定主体が、パイロット信号の受信電力を、基地局装置1側のアンテナ3毎に測定する。Step9(S1609)では、測定主体が、Step8で測定したアンテナ毎の受信電力のうち、第一アンテナグループに所属するアンテナに関して、受信電力を合計したものをPaとする処理である。Step10(S1610)では、測定主体が、Step8で測定したアンテナ毎の受信電力のうち、第一アンテナグループに所属していないアンテナに関して、受信電力を合計したものをPbとする処理である。Step11(S1611)では、測定主体が、Step9とStep10で計算したPaとPbを、測定区間の間累算する処理である。その後、Step12(S1612)に移る。
【0072】
Step12(S1612)では、測定主体が、測定区間が完了したかどうかを判定し、測定区間が完了していなければStep2へ戻り、次の測定対象信号の受信を待つ。測定区間が完了していればStep13へ進む。
Step13(S1613)では、測定結果Tb、Pa、Pbの平均化を行い、通信品質推定結果として出力する。測定区間の時間的長さをTとすると、スループットであれば、Tb/T、第一アンテナグループに関する総受信電力であればPa/T(又はPa/累積数)、SINRであれば、SIRでの近似となるが、Pa/Pbにより計算できる。
【0073】
図13は、本実施例による基地局装置1−端末装置4間で伝送する制御メッセージの内容に関する説明図である。
図13(a)は、基地局装置1から端末装置4へ伝送する送受信方法変更通知(図8および図9のS1206)の例である。送受信方法変更通知(S1206)は、第一アンテナグループ変更に伴い、端末装置4に対して伝送可能な空間レイヤ数が増減するため、空間レイヤ数の通知は必要となる。本実施例では1〜4の値の範囲としているが、この値の範囲はシステムに依存する。また、ビット量削減のため、0〜3の範囲を指定し、受信側ではこれを1〜4として解釈するプロトコルとするのが望ましいことは、同業者であれば容易に想到できるであろう。また、空間レイヤ数通知と合わせて、複数の空間レイヤを空間多重(SDMと表記)伝送とするか送信ダイバーシチ(Diversityと表記)伝送とするか、を示すインジケータを付加しても良い。
【0074】
図13(b)は、端末装置4から基地局装置1へ伝送する下り受信電力情報(図9のS1303)の例である。第一のフィールドに示しているアンテナ数は、第二フィールド以下に続く下り受信電力情報の数を示すものであり、下り受信電力情報のフィールドの長さを決定づけるものである。基地局装置1側の各アンテナ3固有のパイロット信号の数に相当する。第二フィールド以下は、端末装置4で推定したアンテナ毎の下り受信電力が、アンテナIDと下り受信電力のセットとして格納される。
【0075】
図13(c)は、端末装置4から基地局装置1へ伝送する上り送信電力情報(図8のS1202)の例である。通知する内容は、端末装置4の上り送信電力のみである。
図13(d)は、端末装置4から基地局装置1へ伝送する下りの通信品質情報(図9のS1304)の例である。第一フィールドは、当通信品質情報の種類を示すインジケータであり、スループット、SINR、受信電力などに相当する。種類各々に数字を割り当てて、送受信側双方で数字割り当てルールを共有するプロトコルとすることは、同業者であれば容易に想到できるであろう。第二フィールドは、第一フィールドで指定された通信品質の値が格納される。
【0076】
図14は、本実施例による基地局装置1のブロック構成図を示す。
基地局装置1は、例えば、ネットワークI/F部119と、データバッファ118と、制御部150とを有する。制御部150は、例えば図14に示す各ブロック101〜117を含む。なお、制御部150は、例えば、端末装置4と通信するための通信処理部(例えばアンテナグループ制御部107以外のブロック)と、アンテナグループ制御部107とを有することができる。
RF信号送信部101は、入力されたベースバンドデジタル信号に対し、デジタルアナログ変換器によりアナログ信号へ変換し、アップコンバータにより無線周波数信号(RF信号)に変換し、RFアナログ信号を出力する機能を有する。出力先はアンテナケーブル2である。
【0077】
ベースバンド信号送信部102は、アンテナパイロット生成部103が生成する各アンテナ固有のパイロットシンボル、データ信号生成部104が生成するデータシンボルとデータシンボル復調に使用する復調用パイロットシンボル、ならびに制御信号生成部105が生成する制御シンボルを時間、周波数、アンテナの軸で構成されるリソースエレメントに配置し、各アンテナから出力するベースバンドデジタル信号を生成する。OFDMA−MIMO通信システムにおけるレイヤマッピング、プレコーディング、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)の処理が含まれる。図11で示した、第二アンテナグループのアンテナの、第一アンテナグループのアンテナへの結合は、このベースバンド信号送信部102で実施される。この結合の実施方法は後述する。
【0078】
アンテナパイロット生成部103は、アンテナ固有のパイロットシンボルを生成し、ベースバンド信号送信部102へ出力する機能を有する。図9のシーケンス図のS1301で送信する下りパイロット信号はここで生成される。
データ信号生成部104は、下りリソース割当て部106から指示された変調方式と符号化率を用いて、リソースを割り当てた端末装置4向けのデータ系列をデータバッファ118から読出し、符号化ならびに変調を実施する。周波数分割リソースの割当て結果から、当該端末装置4に対して送信するシンボル数が決定するため、同シンボル数だけ変調シンボルが出力されるよう、レートマッチングを行う。また、データシンボル復調用パイロットシンボルも生成する。データ信号生成部104で生成するデータシンボルおよびデータシンボル復調用パイロットシンボルは、図9のシーケンス図の下りデータ信号(S1308)に相当する。
【0079】
制御信号生成部105は、下りリソース割り当て部106が生成する端末装置4毎の下り割り当て周波数分割リソース、変調方式ならびに符号化率を入力し、下りリソース割り当て情報(図9のS1307相当)を含む制御シンボルを生成する。さらに、アンテナグループ制御部107が生成する送受信方法変更通知(図8および図9のS1206)を含む制御シンボルを生成する。さらに、上りリソース割り当て部109が生成する端末装置4毎の上り通信における割り当て周波数分割リソース、変調方式、ならびに符号化率を当該端末装置4に通知するための制御シンボルを生成する(図8のS1212)。
【0080】
下りリソース割り当て部106は、図10および図11で示したリソース割り当て方法に従い、各端末装置4に対してアンテナ、周波数分割リソースを割り当てる。端末装置4へのリソース割り当てにあたって、各端末装置4の第一アンテナグループおよび第二アンテナグループをアンテナグループテーブル116から読出し、伝搬ロスや通信品質を通信品質テーブル117から読出し、端末装置4が推定した下り瞬時伝送速度は上り制御信号として伝送されているため、制御信号復号部110で復号した下り瞬時伝送速度の推定値を入力する。出力は、データ信号生成部104に対して、端末装置4に割り当てた周波数分割リソース、アンテナ、および変調方式と符号化率であり、制御信号生成部105に対して、端末装置4でデータ信号が格納されている周波数分割リソースと変調方式、符号化率を特定するための制御シンボルを生成するために、周波数分割リソース、変調方式、符号化率を出力する。また、図11で示したアンテナ結合を実施するため、結合させるアンテナの組合せをベースバンド信号送信部102へ通知し、複数アンテナから同一のデータ信号とデータ復調用のパイロット信号を出力するよう制御する。この制御については後述する。
【0081】
アンテナグループ制御部107は、図7に示したアンテナグループ更新手順に従い、各端末装置4の第一アンテナグループおよび第二アンテナグループを更新し、更新結果をアンテナグループテーブル116へ格納する。アンテナグループ更新に伴い、基地局装置1と端末装置4との間で通信方法の切り替えが必要な端末装置4が存在する場合、当該端末装置4向けに新たな通信方法を通知するための制御情報を、制御信号生成部105へ入力する。制御情報生成部105へ入力するものと同じ制御情報、すなわち各端末装置4に対して適用する空間レイヤ数と通信方法(例えば空間多重または送信ダイバーシチ)をアンテナグループテーブル116に格納し、下りリソース割り当て部106と上りリソース割り当て部109で参照できるようにする。各アンテナの伝搬ロスと、各端末装置4の通信品質は、通信品質テーブル117から読み出す。
【0082】
通信品質測定部108は、基地局装置1自身が図11の手順に従って通信品質を測定する機能と、端末装置4からフィードバックされた通信品質情報(図9のS1304相当)を制御信号復号部110から入力する機能とを有する。基地局自身による通信品質測定結果、ならびに端末装置4からフィードバックされた通信品質情報を、通信品質情報テーブル117へ格納する。基地局装置1自身が通信品質を測定するために必要な、端末装置4毎の伝搬ロス情報は伝搬ロス推定部111から、スループットに関連する情報、すなわち割当て周波数分割リソース、変調方式、符号化率ならびに信号受信に成功したかどうかのインジケータは、データ信号復号部113から、それぞれ供給される。
【0083】
上りリソース割り当て部109は、下りリソース割り当て部106とほぼ同様の動作である。図10および図11で示したリソース割り当て方法に従い、各端末装置4に対してアンテナ、周波数分割リソースを割り当てる。端末装置4へのリソース割り当てにあたって、各端末装置4の第一アンテナグループおよび第二アンテナグループをアンテナグループテーブル116から読出し、伝搬ロスや通信品質は通信品質テーブル117から読出し、基地局装置1自身で推定する上り瞬時伝送速度は上り伝送速度推定部112から入力する。出力は、データ信号復号部113に対して、端末装置4に過去に割り当てた周波数分割リソース、アンテナ、および変調方式と符号化率である。ここで、過去に割り当てたとは、上りリソース割り当て部109が端末装置4向けの上り通信リソース割り当て情報を生成してから、端末装置4から送信された信号がデータ信号復号部113に入力されるまでのタイムラグを考慮している。さらに、制御信号生成部105に対して、端末装置4からデータ信号を送信する周波数分割リソースと変調方式、符号化率を指定するための制御シンボルを生成するために、周波数分割リソース、変調方式、符号化率を出力する。また、図11で示したアンテナ結合を実施するため、結合させるアンテナの組合せをベースバンド信号受信部114へ通知し、複数アンテナで受信したデータ信号とデータ復調用のパイロット信号を合成して出力するよう制御する。この制御については後述する。
【0084】
制御信号復号部110は、ベースバンド信号受信部114で分離された制御信号が入力される。本実施例に関して制御情報として入力されるものは5種類ある。1つ目は、図8のS1202に相当する上り送信電力情報である。これは、上り信号に対する伝搬ロス推定を行うために必要な情報で、伝搬ロス推定部111へ出力される。2つ目は、図8および図9でS1207として示している、送受信方法変更通知(S1206)に対するAcknowledgement応答である。この応答は、送受信方法変更通知(S1206)の発行元である制御信号生成部105に通知する。3つ目は、図9にS1303として示した下り受信電力情報である。これは、下り信号に対する伝搬ロスを推定するのに必要な情報であるため、伝搬ロス推定部111へ出力される。4つ目は、図9にS1304として記載されている、端末装置4で推定した下りの通信品質情報である。この情報は、通信品質測定部108へ出力される。5つ目は、図9でS1305として表記した下り伝送速度情報である。この情報は、下りリソース割当て時に使用する瞬時伝送速度の情報であるため、下りリソース割り当て部106へ出力される。なお、これ以外に適宜の制御情報があってもよい。
【0085】
伝搬ロス推定部111は、ベースバンド信号受信部114で分離された端末装置4毎の上りパイロット信号(図8のS1201)を使用した受信電力推定と、制御情報復号部110から出力された上り送信電力情報(図8のS1202)と下り受信電力情報(図9のS1303)、ならびに基地局装置1自身が認識している下り送信電力の情報を集めて、送信電力と受信電力との比較からアンテナ3−端末装置4間の伝搬ロスを推定し、推定結果を通信品質測定部108へ出力する。
上り伝送速度推定部112は、ベースバンド信号受信部114で分離された端末装置4毎の上りパイロット信号(図8のS1201)を参照して端末装置4毎の上り瞬時伝送速度を推定する。端末装置4毎に第一アンテナグループが異なるため、端末装置4毎の第一アンテナグループのアンテナで受信した端末装置4からの上りパイロット信号を用いて伝送速度推定を行う。推定結果は、上りリソース割当て部109へ出力する。
【0086】
データ信号復号部113は、ベースバンド信号受信部114で分離された端末装置4毎の上りデータ信号(図8のS1214)の復号を、上りリソース割り当て部109から入力される各端末装置4への割り当て情報を参照して実施する。同割り当て情報には、過去に端末装置4に対して制御信号生成部105を介して各端末装置4に通知した割当て周波数分割リソースと、変調方式と符号化率が含まれる。
ベースバンド信号受信部114は、アンテナ側から入力されたアンテナ毎のベースバンドデジタル信号に対して、端末装置4毎のパイロット信号、データ信号、制御信号を分離し、復調動作を経て各々のシンボル系列を取りだす動作が含まれる。OFDMA−MIMO通信システムにおけるFFT(Fast Fourier Transform)、伝搬路応答推定、MIMO受信処理が含まれる。図11で示した、第二アンテナグループのアンテナの、第一アンテナグループのアンテナへの結合は、このベースバンド信号受信部114で実施される。この結合の実施方法は後述する。
【0087】
RF信号受信部115は、アンテナケーブル2から入力されたアナログRF信号に対し、ダウンコンバータによりベースバンド信号へ変換し、アナログデジタル変換器によりデジタル信号へ変換される。
アンテナグループテーブル116は、端末装置4毎の第一アンテナグループと第二アンテナグループを記録するメモリであり、通信品質テーブル117は、端末装置4毎の通信品質をそれぞれ記録するメモリである。両テーブルへの記録例は後述する。
【0088】
データバッファ118は、端末装置4に対して送信するデータ、ならびに端末装置4から送信されたデータを一時蓄積するメモリである。端末装置4に対して送信するデータは、下りリソース割り当て部106からの指示で、データ信号生成部104へ出力される。端末装置4から送信されたデータは、データ信号復号部113から順次書き込まれ、ネットワークI/F部119を介してゲートウェイ7へ転送される。
【0089】
図15は、本実施例による基地局装置1のデバイス構成を示す。図14の各ブロックが、図15に示す各デバイスで実現される。
ネットワークインターフェースデバイス201は、図14の機能ブロックにおけるネットワークI/F部119に相当し、下りデータメモリ202と、上りデータメモリ204と、プログラムメモリ211とのインターフェースを持ち、バックホール回線6と接続する。例えば、ネットワークインターフェースカード(NIC)で実現する。
【0090】
下りデータメモリ202と上りデータメモリ204は、図14の機能ブロックにおけるデータバッファ118に相当し、ネットワークインターフェースデバイス201と、それぞれ送信信号処理プロセッサ205と、受信信号処理プロセッサ207とのインターフェースを有する。双方からの書きこみと読出しが同時に発生するため、DPRAM(Dual Port RAM)を使用する。
制御用メモリ203は、図14の機能ブロックにおけるアンテナグループテーブル116と通信品質テーブル117に相当し、制御処理プロセッサ206とのインターフェースを有する。DPRAMなど、ランダムアクセスできるメモリで実現する。
【0091】
送信信号処理プロセッサ205は、図14の機能ブロックにおけるベースバンド信号送信部102、アンテナパイロット生成部103、データ信号生成部104、および制御信号生成部105を含む論理回路またはプロセッサである。また、送信信号処理プロセッサ205は、下りデータメモリ202、プログラムメモリ211、データバス210、デジタルアナログ変換器212とのインターフェースを有し、データバス210を介して制御処理プロセッサ206と受信信号処理プロセッサ207との間でデータ転送を可能とする。送信信号処理プロセッサ205のプログラムは、プログラムメモリ211に格納されており、基地局装置1が起動したときにプログラムメモリ211からベースバンド信号送信部102、アンテナパイロット生成部103、データ信号生成部104、および制御信号生成部105のプログラムが送信信号処理プロセッサ205へダウンロードされる。
【0092】
制御処理プロセッサ206は、図14の機能ブロックにおける下りリソース割り当て部106、アンテナグループ制御部107、通信品質測定部108、および上りリソース割り当て部109を含む論理回路またはプロセッサである。また、制御処理プロセッサ206は、制御用メモリ203、プログラムメモリ211、データバス210とのインターフェースを有し、データバス210を介して送信信号処理プロセッサ205と受信信号処理プロセッサ207との間のデータ転送を可能とする。制御処理プロセッサ206のプログラムは、プログラムメモリ211に格納されており、基地局装置1が起動したときにプログラムメモリ211から下りリソース割り当て部106、アンテナグループ制御部107、通信品質測定部108、および上りリソース割り当て部109のプログラムが制御処理プロセッサ206へダウンロードされる。
【0093】
受信信号処理プロセッサ207は、図14の機能ブロックにおける制御信号復号部110、伝搬ロス推定部111、上り伝送速度推定部112、データ信号復号部113、およびベースバンド信号受信部114を含む論理回路またはプロセッサである。また、受信信号処理プロセッサ207は、上りデータメモリ204、プログラムメモリ211、アナログデジタル変換器208、データバス210とのインターフェースを有し、データバス210を介して送信信号処理プロセッサ205と制御処理プロセッサ206との間のデータ転送を可能とする。受信信号処理プロセッサ207のプログラムは、プログラムメモリ211に格納されており、基地局装置1が起動したときにプログラムメモリ211から制御信号復号部110、伝搬ロス推定部111、上り伝送速度推定部112、データ信号復号部113、およびベースバンド信号受信部114のプログラムが受信信号処理プロセッサ207へダウンロードされる。
【0094】
プログラムメモリ211は、送信信号処理プロセッサ205、制御処理プロセッサ206、受信信号処理プロセッサ207とのインターフェースを持ち、これらのプロセッサに供給するプログラムを格納している。基地局装置1起動時にこれらのプログラムを供給するため、不揮発性のメモリ、例えばフラッシュメモリで実現する。また、ネットワークインターフェースデバイス201とのインターフェースも有し、フラッシュメモリへのネットワーク経由でのプログラムダウンロードを実現する。
送信信号処理プロセッサ205で生成された下りのベースバンド信号は、デジタルアナログ変換器212でアナログ信号に変換され、アップコンバータ213で更にRF信号へ変換され、アンテナケーブル2へ出力される。
アンテナケーブル2から入力された上りのRF信号は、ダウンコンバータ209でベースバンド信号へ変換され、アナログデジタル変換器208で更にデジタル信号へ変換され、受信信号処理プロセッサ207へベースバンドデジタル信号として入力される。
【0095】
図16は、本実施例によるアンテナグループテーブル116の構成例である。アンテナグループテーブル116では、端末装置ID(2001)毎に、該端末装置4に適用する空間レイヤ数(2002)、空間多重伝送(SDM)か送信ダイバーシチ(DIV)で区別される通信方法(2003)、第一アンテナグループを構成するアンテナのID(2004)、及び、第二アンテナグループを構成するアンテナのID(2005)がリスト化されている。アンテナグループテーブル116は、アンテナグループ制御部107から図7に示す手順で制御された結果が書きこまれ、下りリソース割り当て部106と上りリソース割り当て部109が、図10および図11に示す手順で端末装置4に対するリソース割り当てを実施する際に参照する。例えば、図16に示すテーブルの状態で、ある周波数分割リソースにおいて第一アンテナグループを割り当てる端末装置4をID=1、3、4の3台に決定したとする。このとき、アンテナID=2、3、4、5、6、7、8がいずれかの端末装置4に割り当てられた事になる。システム全体のアンテナIDのレンジを0から9とすると、残りのアンテナのIDは0、1、9となる。これらは、第二アンテナグループから割当てられるが、第一アンテナグループに対する補助的なアンテナとなるため、第一アンテナグループが割り当てられた端末装置ID=1、3、4のいずれかに割り当てることになる。残るアンテナIDのうち、ID=0は、当該アンテナを第二アンテナグループに含んでいる端末装置4は、端末装置ID=1、3、4の中には含まれていないため、当該アンテナID=0はどの端末にも割り当てられず、Mutingとなる。アンテナID=1と9は、それぞれ端末装置ID=1と4が第二アンテナグループとして包含しているため、端末装置ID=1と4の端末装置4に、アンテナID=1と9をそれぞれ追加で割り当てる。図11に示すアンテナ結合を実施するために、図17の実施例で示す通信品質テーブルを参照する必要がある。
【0096】
図17は、本実施例による通信品質テーブル117の構成例を示す。通信品質テーブル117では、端末装置ID(2006)毎に通信品質を表す指標(2007)とアンテナID毎の伝搬ロス(2008)をリスト化している。本実施例では通信品質をスループットとしたが、既に述べた通り受信電力の絶対値[dBm]やSINR[dB]でも良い。伝搬ロスは小さいほど、基地局装置1−端末装置4間の減衰量が小さく、第一アンテナグループとして選択されやすくなる。図11に示すアンテナ結合を、図16の例における端末ID=1のケースで説明する。端末ID=1の端末装置4は、図16によるとアンテナID=2、3、4を第一アンテナグループとしており、図16の構成例によるとアンテナID=1を追加で割当てることになる。図11の手順によると、第一アンテナグループのうち最も伝搬ロスが大きいアンテナに追加アンテナを結合する。図17によると、端末装置ID=1の端末装置4の第一グループアンテナ内で最も伝搬ロスが大きいのはアンテナID=2である。したがって、アンテナID=1をアンテナID=2に結合し、これらのアンテナから端末装置ID=1の端末装置4に対して同一のデータ信号およびデータ信号復調用パイロット信号を送信することになる。
【0097】
図18は、本実施例によるベースバンド信号送信部の構成例を示す。入力は、下りリソース割り当て部106からリソースを割り当てた端末装置4に関する周波数分割リソースの割り当て情報、アンテナグループに関する情報、ならびに当該端末に適用する空間レイヤ数と、アンテナパイロット部103、データ信号生成部104、ならびに制御信号生成部105で生成される変調シンボル系列である。出力は、アンテナ毎のRF信号送信部101に対するアンテナ毎のベースバンドデジタル信号である。本実施例では、アンテナ固有パイロットシンボル系列と、制御シンボル系列は固定のアンテナおよび周波数分割リソースに格納されることを前提とし、データシンボル系列のアンテナおよび周波数分割リソースへの格納方法を説明する。
【0098】
シリアルパラレル変換部301は、データ信号生成部104から入力されたある端末装置4向けのデータシンボル系列を、当該端末装置4に適用する空間レイヤ数を参照して、空間レイヤ毎のデータシンボル系列を生成する。空間レイヤ数は、アンテナグループテーブル116から下りリソース割り当て部106を介して入力される。図18の例では、データシンボル系列を4空間レイヤに並列化しているが、並列化する数自体はいくつでも設定可能である。ただし、無線通信システムで適用する無線インターフェース規格によって規定される上限のレイヤ数を超えることはできない。
【0099】
マッピング制御部302は、図10の手順で決定した端末装置4に対して割り当てたアンテナおよび周波数分割リソース、ならびに図11の手順で決定した割り当てアンテナ間の結合結果に従って、シリアルパラレル変換部301から入力されたデータシンボル系列をマッピングメモリ303に格納する制御を行う。図18の例では、ある端末装置4に対して送信する4空間レイヤのデータシンボル系列がシリアルパラレル変換部301から入力され、そのうちの第一レイヤに対してアンテナ結合が実施された例を示している。シリアルパラレル変換部301から入力された各空間レイヤの変調シンボルを、どのアンテナならびにどの周波数分割リソースに格納するかは、下りリソース割り当て部106から指示された値に従う。なお、複数の空間レイヤ信号に対してプレコーディングを適用する場合は、シリアルパラレル変換部301とマッピング制御部302との間にプレコーディング部を挿入する、もしくはマッピング制御部302にプレコーディングの機能を持たせる。
【0100】
マッピングメモリ303は、アンテナ毎に周波数方向、いわゆるサブキャリア毎に送信する変調シンボルを単位時間、例えばOFDMシンボル毎に格納するメモリである。該単位時間に関する変調シンボルが全て格納されると、マッピング制御部302から各IFFT部304に対してイネーブルが掛かり、各アンテナのIFFT部304が自身のアンテナに関するメモリ内容を読出し、IFFT処理を実施して時間領域のベースバンドデジタル信号を、RF信号送信部101へ出力する。
IFFT部304は、上述のようにマッピング制御部302からのイネーブルをトリガに、マッピングメモリ303の内容を参照してIFFT処理を施し、ベースバンド信号をRF信号送信部101へ出力する機能を有する。GI(Guard Interval)を挿入する機能をIFFT部304に含めても良い。
【0101】
図19は、本実施例によるベースバンド信号受信部の構成例を示す。入力は、アンテナ毎のRF信号受信部115から入力されるアンテナ毎のベースバンドデジタル信号と、上りリソース割り当て部109から上りリソースを割り当てた端末装置4に関する周波数分割リソースの割り当て情報、アンテナグループに関する情報、ならびに当該端末に適用する空間レイヤ数である。出力は、制御信号復号部110へ出力する制御シンボル系列、伝搬ロス推定部111と上り伝送速度推定部112へ出力するパイロットシンボル系列、ならびにデータ復号部113へ出力するデータシンボル系列である。本実施例では、端末装置4から送信されるパイロット信号と制御信号が固定のアンテナおよび周波数分割リソースに格納されることを前提とし、データシンボル系列をアンテナおよび周波数分割リソースから割当情報に基づき抽出する方法を説明する。
【0102】
FFT部311は、RF信号受信部115から入力されたベースバンドデジタル信号に対しFFT処理を施し、周波数領域信号に変換した結果をアンテナ毎にデマッピングメモリ312に格納する機能を有する。ある単位時間、例えばOFDMシンボル分の格納が完了したら、デマッピング制御部313へ読出し可能のイネーブルを発行する。
デマッピングメモリ312は、アンテナ毎に周波数方向、いわゆるサブキャリア毎に受信した変調シンボルを単位時間、例えばOFDMシンボル毎に格納するメモリである。該単位時間に関する変調シンボルが全て格納されると、各FFT部311からデマッピング制御部313へイネーブル信号が発行され、デマッピング制御部313からメモリ内容が読みだされる。
【0103】
デマッピング制御部313は、図10の手順で決定した端末装置4に対して割り当てたアンテナおよび周波数分割リソース、ならびに図11の手順で決定した割り当てアンテナ間の結合結果に従って、デマッピングメモリ312から当該端末装置4に関する空間レイヤ毎のデータシンボル系列を再形成する。当該端末装置4のデータシンボルが、どのアンテナの、どの周波数分割リソースに位置するかは、上りリソース割り当て部109から指示された値により特定する。図11によるアンテナ結合が発生している場合、図19の例では、第二および第三アンテナに関するデマッピングメモリ312からデマッピング制御部313への矢印が結合することでアンテナ結合を表しているが、これらの信号は単純に加算され、つまり、2つのアンテナから入力された信号を単純に加算したものを、第一空間レイヤからの受信信号としてパラレルシリアル変換部314へ出力する。なお、アンテナ結合処理後の複数空間レイヤの受信シンボル系列に対して、Zero Forcingなどの空間信号処理を実施する場合、デマッピング制御部313とパラレルシリアル変換部314との間に空間信号処理部を挿入する。
パラレルシリアル変換部314は、デマッピング制御部313から入力されるある端末装置4の複数空間レイヤのデータシンボル系列を結合する処理である。デマッピング制御部313から入力される空間レイヤ数は、上りリソース割り当て部109から指示される。
【0104】
図20は、本実施例による端末装置4の構成例である。図示の例は端末装置4がアンテナ401を2本具備している場合の例であるが、端末装置4が具備するアンテナ数に制限を加えるものではない。
デュプレクサ402は、基地局装置1から端末装置4に送信される下りRF信号をRF信号受信部415へ、端末装置4から基地局装置1に送信される上りRF信号をアンテナ401へ流すための分波器としての機能を有する。
RF信号送信部403は、入力されたベースバンドデジタル信号に対し、デジタルアナログ変換器によりアナログ信号へ変換し、アップコンバータにより無線周波数信号(RF信号)に変換し、RFアナログ信号を出力する機能を有する。出力先はアンテナ401である。
【0105】
ベースバンド信号送信部404は、端末パイロット生成部405が生成する端末装置固有のパイロットシンボル、データ信号生成部406が生成するデータシンボルとデータシンボル復調に使用する復調用パイロットシンボル、ならびに制御信号生成部407が生成する制御シンボルを時間、周波数、アンテナの軸で構成されるリソースエレメントに配置し、各アンテナから出力するベースバンドデジタル信号を生成する。OFDMA−MIMO通信システムにおけるレイヤマッピング、プレコーディング、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)の処理が含まれる。
端末パイロット生成部405は、端末装置固有のパイロットシンボルを生成し、ベースバンド信号処理部404へ出力する機能を有する。図8のシーケンス図のS1201で送信する上りパイロット信号はここで生成される。
【0106】
データ信号生成部406は、上り送信方法バッファ408に格納された変調方式と符号化率を用いて、基地局装置1向けのデータ系列をデータバッファ416から読出し、符号化ならびに変調を実施する。周波数分割リソースの割当て結果から、当該端末装置4に対して送信するシンボル数が決定するため、同シンボル数だけ変調シンボルが出力されるよう、レートマッチングを行う。また、データシンボル復調用パイロットシンボルも生成する。データ信号生成部406で生成するデータシンボルおよびデータシンボル復調用パイロットシンボルは、図8のシーケンス図の上りデータ信号(S1214)に相当する。
【0107】
制御信号生成部407は、基地局装置1に伝送する端末装置4の送信電力情報(図8のS1202)、基地局装置1から伝送された送受信方法変更通知(S1206)に対するAcknowledgement応答(S1207)、下り受信電力推定部413で推定した結果を図13(b)に示したフォーマットで伝送する下り受信電力情報(図9のS1303)、通信品質推定部412で推定した下り通信品質を図13(d)に示したフォーマットで伝送する通信品質情報(図9のS1304)、ならびに下り伝送速度推定部411で推定した下り伝送速度(図9のS1305)を、制御シンボル系列として生成する。
【0108】
上り送信方法バッファ408は、基地局装置1から端末装置4に対して通知された上りリソース割り当て情報(図8のS1212)を制御信号復号部409から取得し、上り信号の送信タイミングとなるまで記憶しておくバッファである。上り信号の送信タイミングは、例えば端末装置4が該上りリソース割り当て情報を取得してから一定時間後とするなど、プロトコルにより一意に決定する。上り送信方法バッファ408に格納される情報は、上り通信向けに基地局装置1から割当てられた周波数分割リソースの情報と、適用する変調方式および符号化率と、図13(a)に示す送受信方法変更通知(S1206)で通知された空間レイヤ数と通信方法を示す識別情報である。
【0109】
制御信号復号部409は、ベースバンド信号受信部414で分離された制御信号が入力される。具体的には、基地局装置1から通知される図13(a)の送受信方法変更通知(S1206)、上りリソース割り当て情報(S1212)、ならびに下りリソース割当て情報(S1307)である。送受信方法変更通知(S1206)と上りリソース割り当て情報(S1212)の内容は、上り送信方法バッファ408に格納される。送受信方法変更通知(S1206)に関しては、同通知が誤りなく受信できたことを基地局装置1側へ通知するため、Acknowledgement応答(S1207)を、制御信号生成部407を介して上り制御信号として送信する。下りリソース割り当て情報(S1307)は、同時に下り送信されるデータ信号(S1308)を復号するために必要な周波数分割リソース割り当て情報および変調方式と符号化率が含まれており、データ信号復号部410へ出力される。
【0110】
データ信号復号部410は、ベースバンド信号受信部414で分離された下りデータ信号(図9のS1308)の復号を、制御信号復号部409から割り当て情報を参照して実施する。
下り伝送速度推定部411は、ベースバンド信号受信部414で分離された下りパイロット信号(図9のS1301)を参照して当該端末装置4の下り瞬時伝送速度を推定する。推定結果は、制御信号生成部407に入力され、上り制御信号として基地局装置1へ伝送される。
通信品質推定部412は、基地局装置1から送信された下りパイロット信号(図9のS1301)を用いた受信電力推定またはSINR推定、またはデータ信号復号部410での復号結果が成功したかどうかのインジケータを参照することによるスループット測定を行う。これらの推定手順は図12に示した通りである。推定結果は、制御信号生成部409を介して、図13(d)に示すフォーマットの制御信号として基地局装置1へ伝送される(図9のS1304)。
【0111】
下り受信電力推定部413は、基地局装置1から送信された下りパイロット信号(図9のS1301)を用いたアンテナ3毎の下り受信電力推定を行う。推定結果は、制御信号生成部409を介して、図13(b)に示すフォーマットの制御信号として基地局装置1へ伝送される(図9のS1303)。
ベースバンド信号受信部414は、アンテナ側から入力されたアンテナ毎のベースバンドデジタル信号に対して、パイロット信号、データ信号、制御信号を分離し、復調動作を経て各々のシンボル系列を取りだす動作が含まれる。OFDMA−MIMO通信システムにおけるFFT(Fast Fourier Transform)、伝搬路応答推定、MIMO受信処理が含まれる。
【0112】
RF信号受信部415は、アンテナ401から入力されたアナログRF信号に対し、ダウンコンバータによりベースバンド信号へ変換し、アナログデジタル変換器によりデジタル信号へ変換する。
データバッファ416は、アプリケーション417から上りデータ信号として送信するデータをバッファする機能と、データ信号復号部410が出力した基地局装置1から送信された下りデータ信号をアプリケーション417が取りこむまでのバッファ機能を有する。
【0113】
2. 実施例2
本実施例では、第一の実施例で示した無線通信システムをベースに、端末装置4から第一アンテナグループの更新要求トリガを掛けるための動作を説明する。
図21は、第二の実施例における動作シーケンスの一例を示す。図21は、第一の実施例における図9とほぼ同じ内容であり、内容が重複する部分の説明は省略する。
S1311は、基地局装置1が、第一の実施例では基地局装置1が使用していた通信品質の要求値下限と要求値上限を含むメッセージを、端末装置4へ伝送する。S1312において、端末装置4は、S1204において推定された通信品質に対するしきい値判定を、例えば図5の要領で実施し、推定された通信品質が要求値下限を下回っていれば基地局装置1に対してアンテナ数の増加を要求する。一方、端末装置4は要求値上限を上回っていれば基地局装置1に対してアンテナ数減少を認めるインジケータ、すなわちアンテナ数増加要求を1、アンテナ数減少許可を0とするインジケータを発行し、S1313において基地局装置1に対し該インジケータを伝送する。
【0114】
S1311は、下り制御信号として送信されるため、図14の基地局装置1において制御信号生成部105が、基地局装置1に設定される(例えば初期設定など)通信品質の要求値下限と要求値上限を制御情報として、端末装置4に伝送するための信号を生成する。この制御信号は、図20の端末装置4における制御信号復号部409で復号され、制御信号生成部407に通知される。この値と、通信品質推定部412が推定した結果との比較は、制御信号生成部407が実施し、しきい値判定結果に応じて該インジケータを制御情報として生成し、S1313の上り制御信号として送信する。
本実施例によると、端末で測定した下りの品質をベースに処理できるので、上り/下りの伝搬ロスが同じと仮定する実施例1と比べてさらに精度がよくなると期待される。
【0115】
3.構成例
本無線通信方法は、例えば、
複数のアンテナを有する基地局装置と、
1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループと無線通信を行う端末装置とが存在する無線通信システムにおいて、
該第一アンテナグループを該端末装置個別に構成可能とし、
該基地局装置と該端末装置との間の通信品質の要求値を満たす範囲で該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるよう、
端末装置毎の通信品質に基づいて、当該端末の該第一アンテナグループに対する該アンテナの追加または削除を行うことを特徴のひとつとする。
【0116】
上述の無線通信方法において、
該基地局装置が具備する全ての該アンテナのうち、該第一アンテナグループを構成する該アンテナを除いた全部または一部の該アンテナで構成されるアンテナグループを第二アンテナグループとし、
該第一アンテナグループを構成する該アンテナは、該基地局装置が該端末装置と通信する際に必ず使用する該アンテナとし、
該第二アンテナグループを構成する該アンテナの全部または一部は、該基地局装置が該端末装置と通信する際に使用しても良い該アンテナとすることを特徴のひとつとする。
【0117】
上述の無線通信方法において、
該第一アンテナグループに対する該アンテナの該追加または該削除の動作は、複数回に分けて、時間間隔を空けて実施することを特徴のひとつとする。
上述の無線通信方法において、
該通信品質の要求値として通信品質要求値下限と、該通信品質要求値下限より大きい値を通信品質要求値上限の2種類を定義し、
該通信品質が該通信品質要求値下限を下回ったことを条件に該アンテナの該追加の動作を行い、該通信品質が該通信品質要求値上限を上回ったことを条件に該アンテナの該削除の動作を行うことを特徴のひとつとする。
【0118】
また、該通信品質要求値下限と、該通信品質要求値上限を基地局装置から端末装置へ伝送し、
該通信品質の測定及びしきい値判定を該端末装置で実施し、
該アンテナの該追加または該アンテナの該削除の判定を該端末装置で実施し、
該判定結果を該端末装置から該基地局装置へ伝送し、
該基地局装置が該判定結果に基づき該アンテナの該追加の動作、または該アンテナの該削除の動作を行うことを特徴のひとつとする。
【0119】
上述の無線通信方法において、
該端末装置毎の該通信品質を測定する第一ステップと、
該第一ステップの結果を基に該端末装置毎の該第一アンテナグループを更新する第二ステップと、
該第二ステップの結果を基に、タイムスロット毎に該端末装置に対して無線通信を行うための該アンテナを含む無線通信リソース割り当てを実施する第三ステップとを含むことを特徴のひとつとする。
【0120】
また、該第二ステップが完了した時点で、該第二ステップを実施する前後で、該端末装置に対して提供可能な空間レイヤ数に変更が発生した場合に、
該基地局装置と該端末装置との間で送受信方法のネゴシエーションを実施することを特徴のひとつとする。
また、該ネゴシエーションを実施する際に基地局装置と端末装置との間で交換するメッセージの中に、該空間レイヤ数と、該空間レイヤを活用する伝送方法として、空間多重伝送またはダイバーシチ伝送のいずれであるかを示すインジケータであることを特徴のひとつとする。
【0121】
上述の無線通信方法において、
該第三ステップは、該端末装置毎の瞬時伝送速度の推定結果を基に、該第一アンテナグループに所属する該アンテナ全てを割り当てる第四ステップと、
該第四ステップにおいてどの該端末装置にも割り当てられなかった該アンテナを、該第四ステップで該アンテナが割り当てられた該端末装置のうちいずれかに、補助的に割り当てる第五ステップ、とを含むことを特徴のひとつとする。
また、該第五ステップで補助的に割り当てられた該アンテナは、該第四ステップで割当てられた該アンテナのいずれかと結合し、双方の該アンテナが割り当てられた該端末装置に対して、双方の該アンテナから同一のデータ信号を送信し、該端末装置から送信されたデータ信号は、双方の該アンテナで受信されたものが加算されることを特徴のひとつとする。
【0122】
本無線通信システムは、例えば、
複数のアンテナを有する基地局装置と、
1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループと無線通信を行う端末装置とが存在する無線通信システムにおいて、
該基地局装置が該端末装置との間の通信品質に基づいて、該端末装置個別の該第一アンテナグループを形成し、
該基地局装置が形成した該端末装置各々の該第一アンテナグループに基づいて、該端末装置各々に提供可能な空間レイヤ数を該端末装置へ通知することを特徴のひとつとする。
【0123】
上述の無線通信システムにおいて、
該通信品質は、該端末装置が推定することと、
推定結果を該端末装置から該基地局装置へ伝送することと、
該端末装置が該通信品質を推定するために必要なパイロット信号、制御信号、およびデータ信号を該基地局装置が該端末装置へ伝送することを特徴のひとつとする。
上述の無線通信システムにおいて、
該通信品質は、該基地局装置が推定することと、
該基地局装置が該通信品質を推定するために必要なパイロット信号、制御信号、およびデータ信号を該端末装置が該基地局装置へ伝送することを特徴のひとつとする。
【0124】
本基地局装置は、
複数のアンテナを具備し、端末装置に対する下り通信向け信号を該アンテナ毎に出力し、該端末装置から送信した上り通信向け信号を該アンテナ毎に入力し、
ベースバンド信号処理部と、該端末装置に対する該下り通信および該上り通信の無線通信リソース割当て部を有する基地局装置であって、
該端末装置毎の通信品質を逐次更新する通信品質測定部と、
該通信品質測定部で取得した該端末装置毎の該通信品質が、該通信品質の要求値を満たすか否かにより、該端末装置が通信する際に必ず使用する第一アンテナグループに所属する該アンテナの追加または削除を行うアンテナグループ制御部、とを具備することを特徴のひとつとする。
【0125】
上述の基地局装置において、
該アンテナグループ制御部は、該端末装置が通信する際に必ず使用する該第一アンテナグループに加えて、該端末装置が補助的に使用可能で、該第一アンテナグループに所属しない該アンテナで構成される第二アンテナグループに所属する該アンテナの追加または削除をも行うことを特徴のひとつとする。
また、該無線通信リソース割り当て部は、該アンテナグループが決定する該端末装置毎の該第一アンテナグループおよび該第二アンテナグループを基に、タイムスロット毎に該端末装置に対する該アンテナの割り当てを含む無線通信リソースの割り当てを実施することを特徴のひとつとする。
【0126】
さらに、該無線通信リソース割り当て部が、該端末装置に対して該第一アンテナグループに所属する該アンテナに加え、該第二アンテナグループに所属する該アンテナを補助的に割り当てた場合、
当該端末装置に対して同一のデータ信号を双方の該アンテナから送信する、または当該端末装置から送信され、双方の該アンテナで受信されたデータ信号を合成するよう、該ベースバンド信号処理部を制御することを特徴のひとつとする。
【0127】
上述の基地局装置において、
該ベースバンド信号処理部は、該アンテナグループ制御部が該端末装置に対して決定した該第一アンテナグループの更新に伴い、該基地局装置と該端末装置との間で確保可能な空間レイヤ数が変更される際に、該端末装置に対して変更後の該空間レイヤ数を通知するための制御信号を生成する制御信号生成部を具備することを特徴のひとつとする。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、例えば、複数のアンテナを用いた無線通信に利用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 基地局装置
2 アンテナケーブル
3 アンテナ
4 端末装置
5 第一アンテナグループ
6 バックホール回線
7 ゲートウェイ装置
9 第二アンテナグループ
101 RF信号送信部
102 ベースバンド信号送信部
103 アンテナパイロット生成部
104 データ信号生成部
105 制御信号生成部
106 下りリソース割り当て部
107 アンテナグループ制御部
108 通信品質測定部
109 上りリソース割り当て部
110 制御信号復号部
111 伝搬ロス推定部
112 上り伝送速度推定部
113 データ信号復号部
114 ベースバンド信号受信部
115 RF信号受信部
116 アンテナグループテーブル
117 通信品質テーブル
118 データバッファ
119 ネットワークI/F部
201 ネットワークインターフェースデバイス
202 下りデータメモリ
203 制御用メモリ
204 上りデータメモリ
205 送信信号処理プロセッサ
206 制御処理プロセッサ
207 受信信号処理プロセッサ
208 アナログデジタル変換器
209 ダウンコンバータ
210 データバス
211 プログラムメモリ
212 デジタルアナログ変換器
213 アップコンバータ
301 シリアルパラレル変換器
302 マッピング制御部
303 マッピングメモリ
304 IFFT部
311 FFT部
312 デマッピングメモリ
313 デマッピング制御部
314 パラレルシリアル変換器
401 アンテナ
402 デュプレクサ
403 RF信号送信部
404 ベースバンド信号送信部
405 端末パイロット生成部
406 データ信号生成部
407 制御信号生成部
408 上り送信方法バッファ
409 制御信号復号部
410 データ信号復号部
411 下り伝送速度推定部
412 通信品質推定部
413 下り受信電力推定部
414 ベースバンド信号受信部
415 RF信号受信部
416 データバッファ
417 アプリケーション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
端末装置と、
複数のアンテナ、及び前記複数のアンテナのうち、一以上のアンテナを介して行われる前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質及びアンテナグループを構成するアンテナ数に基づいてアンテナグループを構成すべき一以上のアンテナを選択し、選択されたアンテナによって構成される第一アンテナグループを介して前記端末装置と通信する制御部を有する基地局装置と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムであって、
該第一アンテナグループを該端末装置毎に構成し、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、該端末装置に対する第一アンテナグループに前記アンテナを追加又は削除し、
前記基地局装置は、少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて前記端末装置と通信する無線通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置が具備する前記アンテナのうち、第一アンテナグループを構成する前記アンテナを除いた全部又は一部の該アンテナを第二アンテナグループとし、
第一アンテナグループを構成する前記アンテナは、前記基地局装置が前記端末装置と通信する際に必ず使用する前記アンテナとし、
第二アンテナグループを構成する前記アンテナは、前記基地局装置が前記端末装置のいずれかと通信する際に、第一アンテナグループのアンテナとともに使用されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項2記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
該第一アンテナグループに対する該アンテナの該追加又は該削除の処理を、複数回に分けて、時間間隔を空けて実施することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項2記載の無線通信システムであって、
要求通信品質として前記通信品質要求下限値と、該通信品質要求下限値より大きい通信品質要求上限値が予め定められ、
通信品質が該通信品質要求下限値を下回ったことを条件に、前記基地局装置は、前記アンテナの第一アンテナグループへの追加の処理を行い、
通信品質が該通信品質要求上限値を上回ったことを条件に、前記基地局装置は、前記アンテナの第一アンテナグループからの削除の処理を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項5記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置は、該通信品質要求下限値と該通信品質要求上限値を前記端末装置へ伝送し、
該端末装置は、該基地局装置との通信品質を測定し、該該通信品質要求下限値及び該通信品質要求上限値と比較して、アンテナの追加又は削除の判定を実施し、判定結果を該基地局装置へ伝送し、
該基地局装置は、該判定結果に基づきアンテナの追加の処理又はアンテナの削除の処理を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項2記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
各端末装置との通信品質を測定し、
測定された通信品質を基に前記端末装置毎の第一アンテナグループを更新し、
更新された第一アンテナグループを基に、タイムスロット毎に該端末装置に対して無線通信を行うための該アンテナを含む無線通信リソース割り当てを実施することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項2記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置と前記端末装置とで、予めネゴシエーションにより空間レイヤ数が定められ、
第一アンテナグループの更新により、前記端末装置に対して提供可能な空間レイヤ数が更新前後で変化した場合に、該基地局装置と該端末装置との間で送受信方法のネゴシエーションを再度実施することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項8記載の無線通信システムであって、
該ネゴシエーションを再度実施する際に前記基地局装置と前記端末装置との間で交換するメッセージの中に、空間レイヤ数と、該空間レイヤを活用する伝送方法として空間多重伝送又はダイバーシチ伝送のいずれであるかを示すインジケータとを含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項3記載の無線通信システムであって、
前記端末装置に対する第一アンテナグループに所属するアンテナを前記端末装置に割り当て、
どの端末装置にも割り当てられていない第二アンテナグループのアンテナを、該第一アンテナグループのアンテナが割り当てられた該端末装置のうちいずれかに、該端末との間で予め定められた空間レイヤ数を変更しないように割り当てる無線通信システム。
【請求項11】
請求項10記載の無線通信システムであって、
前記端末装置毎の瞬時伝送速度の推定結果を基に、所定のタイムスロットの所定の周波数分割リソースにおいて第一アンテナグループのアンテナを割り当てる前記端末装置を順に選択し、選択された該端末装置の該第一アンテナグループに属する全アンテナが、当該タイムスロットの当該周波数分割リソースにおいて他の端末装置に割り当てられていない場合、該アンテナを選択された前記端末装置に割り当てる無線通信システム。
【請求項12】
請求項10記載の無線通信システムであって、
第二アンテナグループから割り当てられたアンテナからは、第一アンテナグループから割当てられた該アンテナのいずれかと同一のデータ信号を、該端末装置に対して送信し、
該端末装置から送信されたデータ信号は、該アンテナの双方で受信されたものが加算されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項13】
請求項10記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値に近い又は下回っている端末装置に、優先して第二アンテナグループからアンテナを追加する無線通信システム。
【請求項14】
請求項2記載の無線通信システムであって、
前記基地局装置が、前記端末装置からパイロット信号、制御信号、及びデータ信号を受信して通信品質を推定する、又は、
前記端末装置が、前記基地局装置からパイロット信号、制御信号、及びデータ信号を受信して通信品質を推定し、推定結果を該基地局装置へ伝送する無線通信システム。
【請求項15】
端末装置と無線通信を行うための複数のアンテナと、
1つ以上の該アンテナで第一アンテナグループを該端末装置毎に構成し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、該端末装置に対する第一アンテナグループに前記アンテナを追加又は削除するアンテナグループ制御部と
を備え
少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて前記端末装置と通信する基地局装置。
【請求項16】
複数のアンテナを有し、1つ以上の該アンテナで構成される第一アンテナグループを介して端末装置と無線通信する基地局装置を用いた無線通信方法であって、
第一アンテナグループを端末装置毎に構成し、
基地局装置と端末装置との間の通信品質が、通信品質の要求下限値を満たし、かつ、該第一アンテナグループを構成するアンテナ数が最小となるように、若しくは、該通信品質が、通信品質の要求下限値及び要求上限値で定まる範囲内になるように、端末装置に対する第一アンテナグループにアンテナを追加又は削除し、
基地局装置は、少なくとも第一アンテナグループのアンテナを用いて端末装置と通信する無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−204974(P2012−204974A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66063(P2011−66063)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】