説明

無線通信システムにおける環境評価

無線通信システムを取り巻き、送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む環境を評価する方法及びシステムが記載される。観測発生装置(300)は、送信機から受信機へ無線通信チャネルを介して送信した入力信号を受信し、また受信機、送信機及びインフレクタの少なくとも一つに関連するシステム状態情報を受信する。観測プロセッサ(302)は、観測発生装置(300)からの観測(303)を使用して、受信した入力信号及びシステム状態情報に基づいてインフレクタの少なくとも一つの特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信の分野に関する。特に、本発明は無線通信システムを取り巻く環境における物体の検出、追跡及び特徴付けに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、図1に示すように、チャネル102で分離された送信機100及び受信機104に基づいて表され得る。送信機は、データを、チャネル102を介して送信するために適した信号に変換する。送信データを決めるために、受信機104の目標は、信号からチャネル歪みの影響を除去しそしてデータの評価を得ることにある。
【0003】
チャネル102は、無線通信システムを取り巻く環境により誘起された影響を表す。チャネル102は、送信信号をある仕方で歪ませ得る。チャネル歪みには、振幅歪み、周波数オフセット、位相オフセット、ドップラー効果、多通過チャネルによって生じる歪み、外部雑音、或いは干渉が含まれ得る。
【0004】
受信機104はチャネル評価装置を含み得る。チャネル評価装置は、チャネル102を介しての送信により歪んだ受信信号を監視し、この監視に基づいてチャネル評価を出し得る。チャネル評価の内容は、チャネルを誘導した環境に関係する。
【0005】
送信機100及び/又は受信機104装置に付随する空間的パラメータは既知であり得る。かかるパラメータは、空間的座標、速度及び加速度を含み得る。例えばかかる装置は既知の固定位置に位置決めされ得る。空間的パラメータはまた大域測位システム(GPS)受信機又は同等の装置からも得られ得る。さらに、送信機100に関係した空間的情報は、送信データ内容内で受信機104に送られ得る。かかる場合の一例は専用ショートレンジ通信(DSRC)システムにおいて生じ、送信データは、SAE国際"Dedicated Short Range Communication (DSRC) Message Set Dictionary"J2735, 2006年12月に記載されているように、位置、速度、加速度及び飛行方向情報を含み得る。
【0006】
本明細書における先行技術の引用は、かかる先行技術がオーストラリア又はその他の法治区域における共通の一般的知識の一部を成す或いはかかる先行技術が当業者に関連するものとして確認され、理解されそして見做されると合理的に思われ得る知識又はあらゆる形態の提案として取られるべきではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、無線通信システムの要素に関連する情報及び無線通信システムの要素で受信した波形から取り出した情報を処理することによって無線通信システムを取り巻く環境における物体の検出、追跡及び特徴付けを行う方法を提供する。
【0008】
通信システムにおける送信機は、それら送信機の送信するメッセージにおけるそれらの状態を含み得る。受信機においては、メッセージは復旧されて送信機状態の受信機の見解の一部を成し得る。
【0009】
本発明の第一の態様によれば、無線通信システムを取り巻き、送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む環境を評価する方法が提供され、かかる方法は、
送信機から無線通信チャネルを介して受信機へ送信した入力信号を受信すること;
受信機、送信機及びインフレクタの少なくとも一つに関連するシステム状態情報を受信すること;及び
受信した入力信号及びシステム状態情報に基づいてインフレクタの少なくとも一つの特性を評価すること
からなる。
【0010】
本発明の別の態様においては、システム状態情報を含む時間を通しての観測情報を収集する環境評価装置が提供される。環境評価装置は、上記観測情報を用いて一つ以上のインフレクタの特徴を評価する。インフレクタは、無線波を反射又は回折させる環境における要素である。上記システム状態情報は、送信機、受信機、環境及び該環境内のインフレクタに関連し得る。
【0011】
本発明の別の態様においては、第一のインフレクタ制約条件は、
・インフレクタ送信機ユニットベクトル及びインフレクタ送信機距離によって送信機に関連してインフレクタが配置される
・受信機インフレクタユニットベクトル及び受信機インフレクタ距離によってインフレクタに関連して受信機が配置される
・制約条件:送信機に対する受信機を表すベクトルが送信機に対するインフレクタを表すベクトルとインフレクタに対する受信機を表すベクトルとの和に等しい
環境を評価するのに用いるために測定される。
【0012】
第二のインフレクタ制約条件も、
・送信信号の二つのバージョンが測定可能な時間差で受信機に到達する
・上記時間差が(例えば上記時間差と光速とを掛け算することで)経路長さの差に変換される
・制約条件:上記経路の長さの差に加えた送信機から受信機までの距離がインフレクタから送信機までの距離とインフレクタから受信機までの距離との和に等しくなければならない
場合に測定され得る。
【0013】
また、第三のインフレクタ制約条件は、
・送信信号の二つのバージョンが測定可能な周波数オフセットで受信機に到達する
・上記周波数オフセットが(例えば光速による掛け算及び中心周波数による割り算を介して)速度の差に変換される
・制約条件:インフレクタに向かう受信機及びインフレクタ速度の差の成分に加えられたインフレクタに向かう送信機速度の成分が上記の速度の差に等しくなければならない
場合に測定され得る。
【0014】
また、第四のインフレクタ制約条件は、
・第一及び第二の観測が異なった時間に生じる
・上記第一及び第二の観測の間の時間差が計算される
・第一のインフレクタ位置の差が上記時間差で掛け算したインフレクタ速度である
・第一のインフレクタ位置が、上記第一の観測時間における送信機の位置プラス(+)上記第一の観測時間におけるインフレクタ送信機距離で掛け算した上記第一の観測時間におけるインフレクタ送信機ユニットベクトルである
・第二のインフレクタ位置が、上記第二の観測時間における送信機の位置プラス(+)上記第二の観測時間におけるインフレクタ送信機距離で掛け算した上記第二の観測時間におけるインフレクタ送信機ユニットベクトルである
・第二のインフレクタ位置の差が、上記第二のインフレクタ位置マイナス(−)上記第一のインフレクタ位置である
・制約条件:第一のインフレクタ位置の差及び第二のインフレクタ位置の差が等しくなければならない複数の観測を通してインフレクタが拘束される場合に測定され得る。
【0015】
本発明の別の態様においては、費用関数を導出するのに一つ以上の制約条件が用いられる。上記費用関数は複数の観測を通じて結合されて別の費用関数を作り得る。
【0016】
本発明の別の態様においては、未知のインフレクタ特性の仮定設定がなされる。上記仮定設定における各仮定すなわち仮説のコストは上記費用関数を用いて計算され得る。
【0017】
本発明の別の態様においては、位置及び/又は速度の変化率における制約条件は観測プロセスに含まれる。
本発明の別の特徴においては、インフレクタ位置又は速度における制約条件はマップデータの知識を通して作られる。
環境評価装置の出力の機能的使用も記載される。
【0018】
本発明の別の態様は、
通信チャネルを介して送信される信号を受信するように動作できる入力と;
システム状態情報を受信するように動作できる入力と;
これら入力に基づいて環境の少なくとも一つの特徴を評価するように動作できる環境評価装置と;
環境の評価を提供する出力と
を有して成る無線通信システムを取り巻く環境を評価するシステムを提供する。
【0019】
環境評価装置は、上記入力の少なくとも一つを用いて発生した少なくとも一つの観測を出力する観測ジェネレータを備え得る。
環境評価装置は、さらに、入力として少なくとも一つの上記観測を処理しそして環境の評価を出力として発生する観測プロセッサを備え得る。
【0020】
システム状態情報は、
位置;
スピード;
加速度;
飛行方向;
速度;
上昇;
伝送の時間;
受信の時間;
送信パワーレベル;
受信パワーレベル;
信号対雑音比(SNR);
アンテナのようなシステム構成要素の位置;
ホストの構造;
障害物の存在;
障害物の位置のような障害物に関する情報;
温度及び天候状態;
雨センサー情報;
太陽センサー情報;
車両のフロントガラスのワイパー速度;
自動車コントローラエリアネットワーク(CAN)バスから利用できる情報;
マップデータ;
上記の任意のものに対する統計上の信頼評価
の少なくとも一つ及び好ましくはそれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
ホストの構造は、
ホストの寸法;
ホストの形式;
ホストの形態;
構成材料
の少なくとも一つを備え得る。
【0022】
システム状態情報は、
送信機;
受信機;及び
環境
における或いはこれらの少なくとも一つの傍のソースから得られ得る。
【0023】
入力システム状態情報は、受信機情報を含み得、受信機情報は、
受信信号サンプル;
送信機と受信機との間の通信チャネルの評価
の少なくとも一つから成り得る。
【0024】
通信チャネルの評価は、
時間ドメインチャネル評価;
周波数ドメインチャネル評価
の少なくとも一つを含み得る。
【0025】
送信機において又は送信機の近くで得られた入力システム状態は、送信信号に含まれ、そして受信機で取り出されて環境評価装置に入力される。
送信機に付随する入力システム状態情報は、受信機で導出され得る。
【0026】
送信機に付随する発生入力システム状態情報は、
スピード;
加速度;
飛行方向;及び
速度
の少なくとも一つを含み得る。
【0027】
Ωで表わす観測は、
【数1】

の少なくとも一つを含み得る。
【0028】
観測ジェネレータは、
時間で分離した多送信信号に相当する各受信信号;
時間で重なった多送信信号に相当する各受信信号;
多数の送信機の場合に、送信機と受信アンテナとの間に誘導した各チャネル;
多数の受信アンテナの場合に、送信アンテナと受信アンテナとの間に誘導した各チャネル;
多数の送信アンテナの場合に、送信アンテナと受信アンテナとの間に誘導した各チャネル;
の少なくとも一つに対する観測を出力し得る。
【0029】
観測ジェネレータは、共通の構成要素の返答なしに、上記共通の構成要素を含む観測を分類し得る。
観測プロセッサは、上記環境に位置した少なくとも一つのインフレクタの少なくとも一つの特性を処理し得る。
【0030】
インフレクタの特性は、
位置;
スピード;
加速度;
飛行方向;
速度;及び
仰角
の少なくとも一つを含み得る。
【0031】
出力環境評価には、上記環境内に位置した少なくとも一つのインフレクタの特性における少なくとも一つの仮説が含まれ得る。
観測プロセッサは、上記出力環境評価を計算するために少なくとも一つの上記インフレクタの少なくとも一つの特性において少なくとも一つの制約条件を適用し得る。
周波数オフセットパラメータωは、直接経路に相当するタップの位相の変化率に対して変曲した経路に相当するタップの位相の変化率として、時間ドメインにおいて上記チャネル評価に基づき計算され得る。
【0032】
上記チャネル評価に基づく周波数オフセットパラメータωの計算は、
上記チャネル評価の持続時間を通して;
上記チャネル評価のある部分を通して;及び
上記チャネル評価を通しての時間間隔で
のうちの少なくとも一つを介して行われる。
【0033】
上記制約条件は、時間に対する一つ以上のシステム構成要素の位置についてのある仮定の下に、多数の観測全体に加えられ得る。
多数の制約条件は、組合わされて等置のシステムを形成し得、そして上記観測プロセッサは少なくとも一つの入力観測を用いて上記システムを解析し、上記環境評価を出力する。
上記環境評価出力は、全ての実行できるインフレクタ特性解法から成り得る。
【0034】
上記観測プロセッサは、
付加的な制約条件;及び
付加的な入力観測
の少なくとも一つを用いて、出力する前に実行できるインフレクタ特性解法のセットを低減し得る。
【0035】
付加的な観測は、以下の少なくとも一つによって行われ得る。すなわち
同一送信機からの少なくとも一つ以上の送信信号の受信;
別の送信機からの少なくとも一つ以上の送信信号の受信;及び
少なくとも一つ以上の受信アンテナを介しての少なくとも一つ以上の送信信号の受信。
【0036】
上記制約条件は、一つ以上の費用関数を導出し、一つ以上のインフレクタ特性における
一つ以上の仮説のコストを評価するのに用いられ得、また上記観測プロセッサは、少なくとも一つの入力観測を用いて上記費用関数を計算して、上記環境評価を出力する。
インフレクタ位置仮説として用いられることになる点のセットは、環境のある領域を量子化
することにより選択され得る。
上記領域は、
送信機;及び
受信機
の少なくとも一方の近傍で選択され得る。
【0037】
出力環境評価は、
最低費用値でのインフレクタ特性仮説;
等しく最低費用値での一組のインフレクタ特性仮説;
最低費用値での上記インフレクタ特性における仮説からある予定距離の範囲内の費用値での一組のインフレクタ特性仮説;
ある予定の閾値以下の関連した費用での一組の一つ以上のインフレクタ特性仮説;
各々に割り当てられた費用値での一組の一つ以上のインフレクタ特性;
の少なくとも一つから成り得る。
【0038】
上記観測プロセッサは、少なくとも一つの入力観測を通して多数の上記費用関数を組み合わせ得る。
上記観測プロセッサは、異なった時間に生じる多数の入力観測を通して一つ以上の上記費用関数を組み合わせ得る。
上記費用関数は、中間段階で一つ以上のインフレクタ特性において設定した仮説のサイズを減少しながら、連続して適用され得る。
上記観測プロセッサは、少なくとも一つの費用関数を用いて各仮説の費用を計算し得、それで少なくとも一つの別の費用関数を適用する前に少なくとも一つの部材を外すことにより仮説設定サイズを低減する。
【0039】
仮説設定の少なくとも一つの部材は、
ある閾値より大きな費用;及び
最低費用からある距離より大きな費用
の少なくとも一方をもって除去され得る。
【0040】
上記観測プロセッサは、インフレクタのスピードを制約し得、インフレクタのスピードのかかる制約は、
ある予め決めた範囲外のスピードをもつインフレクタ特性仮説を除外すること;
スピードで制御されたある分布に従ってインフレクタ特性仮説を除外すること;
ある予め決めた範囲外のスピードに比較的高い費用を適用すること;及び
スピードで制御されたある分布に従って費用を割当てること
の少なくとも一つから成る。
【0041】
上記観測プロセッサは、インフレクタが
反射装置;
経路の妨げられない方向における飛行方向:
マップで決められたある制約された経路上;及び
道路上
の少なくとも一つであると見なすことによって少なくとも一つの上記インフレクタ特性を制約し得る。
【0042】
上記観測プロセッサは、少なくとも一つの付加的なインフレクタの存在によって誘導された通信チャネルの上記評価の少なくとも一つの付加的な特徴を用いて、上記付加的なインフレクタの少なくとも一つの上記インフレクタ特性を決定し得る。
付加的なチャネル特徴は、上記時間ドメインチャネル評価における時間ドメインタップであり得る。
【0043】
上記環境評価装置で受信した情報は、
衝突脅威の可能性を検知した際に警戒態勢を取るため;
警戒態勢の性質を変更するため;
警戒態勢の発令を変更するため;
間違った警戒態勢の可能性を低減するため;
位置決めの精度を改善するため
の少なくとも一つに対して用いられ得る。
【0044】
位置情報の信頼できないソースに対する位置情報の信頼できるソースの相対位置と関連した、位置情報の少なくとも一つの信頼できるソースの知識は、
信頼できないソースを検知するため;
信頼できないソースを追跡するため;及び
信頼できないソースを修正するため
の少なくとも一つを実施するのに用いられ得る。
【0045】
上記環境評価装置の出力は、
間違ったマップ情報を検知するため;
間違ったマップ情報を修正するため;及び
既存のマップ情報を示すため
の少なくとも一つを介してマップ情報を変えるために用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
以下添付図面を参照して本発明の複数の実施形態について説明する。
【図1】通信システムの概略線図である。
【図2】二経路チャネルを備えた環境の一例である。
【図3】環境評価装置の概略線図である。
【図4】通信システムにおける送信機で生じしかもシステム状態情報(SSI)の使用を含む処理を示す。
【図5】チャネルに通される送信信号を示しかつ一つの受信アンテナの場合における観測ジェネレータの概略線図である。
【図6】チャネルに通される送信信号を示しかつ二つの受信アンテナの場合における観測ジェネレータの概略線図である。
【図7】図2の環境に相当した時間ドメインの一例である。
【図8】第一及び第二の制約条件を組み合わせることによるインフレクタ位置の実行できる解決の場所を示す。
【図9A】制約条件から誘導した等式のシステムを解くことによって得られたインフレクタ位置及び速度の解決法の一例を示す。
【図9B】制約条件から誘導した等式のシステムを解くことによって得られたインフレクタ位置及び速度の解決法の一例を示す。
【図10A】制約条件から誘導した費用関数を最初の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図10B】制約条件から誘導した費用関数を最初の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図10C】制約条件から誘導した費用関数を最初の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図11A】制約条件から誘導した費用関数を第二の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図11B】制約条件から誘導した費用関数を第二の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図11C】制約条件から誘導した費用関数を第二の観測に適用することにより得られたインフレクタ位置解決法の例を示す。
【図12A】制約条件から誘導した費用関数を第一及び第二の両方の観測を通して適用することにより得られたインフレクタ位置の解決法を組み合わせることによる解決法の例を示す。
【図12B】制約条件から誘導した費用関数を第一及び第二の両方の観測を通して適用することにより得られたインフレクタ位置の解決法を組み合わせることによる解決法の例を示す。
【図12C】制約条件から誘導した費用関数を第一及び第二の両方の観測を通して適用することにより得られたインフレクタ位置の解決法を組み合わせることによる解決法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
無線通信システムの要素に関係する情報及び受信波形から取り出した情報を処理することで、無線通信システムを取り巻く環境における物体の検知、追跡及び特徴付けを行なう環境評価装置の複数の実施形態について説明する。
記載した技法は、無線通信システム、例えばDVB−T、DVB−H、IEEE802.11、IEEE802.16、3GPP2、専用ショートレンジ通信(DSRC)、陸上移動用の通信アクセス(CALM)、及び所有システムに適用できる可能性がある。
【0048】
環境内の物体は固定か又は移動であり得る。物体はまた、無線通信機器と適合され得る。例えば、専用ショートレンジ通信(DSRC)システムでは、送信機(Tx)100及び受信機(Rx)104はインフラ路側機(RSU)又は車両の搭載ユニット(OBU)に備えられ得る。送信信号は、環境内の物体によって、例えば反射又は回折を介して変曲され得る。インフレクタの例としては、送信機及び/又は受信機自体を備え得る環境内の車両、サイン、建物或いはその他の構造物が含まれる。
【0049】
図2には、送信機100と受信機104との間に二つの経路チャネルを含むインフレクタ200を備えた環境例を示し、
【数2】

【0050】
また、次の通り定義するのが都合よく、
【数3】

【0051】
図3には、環境評価装置のブロック線図を示す。環境評価装置は受信機104で作動し得る。代わりに、環境評価装置の機能構成要素は、分散形態で作動し得る。ある構成では、環境評価装置は、先に捕捉された情報を用いてオフラインで作動し得る。
【0052】
ここに記載した機能モジュール(観測ジェネレータ300、観測プロセッサ302、Txデータ構成子(生成関数)400、SSI抽出子504、及び観測構成子506を含む)はハードウエア、例えば複数の特定用途向け集積回路(ASIC)に実装され得る。その他のハードウエア実装は、限定するものではないが、複数の書き込み可能ゲートアレイ(FPGA)、複数の構造的ASIC、デジタル信号プロセッサ、及び離散論理回路を含む。代わりに、機能モジュールは、コンピュータシステム内で実行可能な一つ以上のアプリケーションプログラムのようなソフトウエアとして実装され得る。かかるソフトウエアはコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶され、そしてコンピュータシステムで実行するためにコンピュータ読み取り可能な媒体からにコンピュータシステムへロードされ得る。コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体はコンピュータプログラムプロダクトである。かかるメディアの例としては、CD−ROMに限定されず、ハードディスクドライブ、ROM又は集積回路が含まれる。また、プログラムコードは、コンピュータ読み取り可能な送信媒体、例えば無線送信チャネル又はネットワークコネクションを介して別のコンピュータ又はネットワーク装置へ送信され得る。
【0053】
一つ以上の受信信号は観測ジェネレータ300に入力される。システム状態情報(SSI)も観測ジェネレータに入力され得る。観測ジェネレータ300は一つ以上の観測303を観測プロセッサ302へ出力する。観測303は受信機104からの情報及びシステム状態情報を含み得る。観測プロセッサ302は観測303を処理して環境の評価を出力する。例えば、環境の評価は、該環境における一つ以上のインフレクタに対する複数の位置評価を含み得る。
【0054】
システム状態情報(SSI)は、送信機100、受信機104及び/又は環境に付随し、
位置;
スピード;
加速度;
飛行方向;
仰角;
送信又は受信の時間;
送信パワーレベル;
受信パワーレベル;
信号対雑音比(SNR);
アンテナのようなシステム構成要素の位置;
ホスト構造体:
ホストのサイズ、形式。
例えば送信機100又は受信機104が車上ホストに装着される場合には、この情報には
車両の形式及び
サイズを含み得る。
ホストを構成する材料:
環境について既知の他の情報、例えば、
障害物の存在及び例えば自動車レーダーシステムから得られた障害物の位置のような障害物に関する情報;
温度及び天候状態、並びに/又はかかる状態を評価できる情報例えば車両フロントガラスワイパーの速度;
雨センサー情報;
太陽センサー情報;
マップデータ、例えば構造体及び道路の位置表示;
自動車コントローラ−エリアネットワーク(CAN)バス;
上記用法のいずれかに対する統計的信頼性評価
を含んでいる。
【0055】
図4には、送信機100で生じる処理を概略的に示す。データは、システム状態情報(SSI)の一つ以上のソース402から集められ得る。SSIソース402は、送信機100に又はその近くに配置され得、例えば車両における送信機にGPSユニットが配置され得る。SSIソース402の別の例は車速及びブレーキ状態のような車両状態情報にアクセスでき得る車両CANバスである。また、SSIソース402は、環境中のどこかに配置され得、例えば無線通信リンクを介して送信機でSSIを利用できるようにする。SSIは送信データ構成子400で別のソース404からのデータと組み合わされ得、そして送信データ構成子400は送信機100へTxデータを出力する。送信機は、送信信号を形成し、一つ以上の送信アンテナ406を介して送信される。SSIを一時的に又は長期間にわたって記憶するデータ記憶機能が設けられ得る。
【0056】
送信機100及び受信機104は並置され得、それにより送信信号における送信機100に付随したシステム状態情報を含む必要がない。例えば、送信機100及び受信機104は両方とも同じ車両に設けられ得る。
【0057】
送信信号は、環境によって誘導されしかも図5に示すようにインフレクタ200の存在を含んでいるチャネル102に送られる。受信信号は受信アンテナ500で捉えられ、受信機104に入力される。受信機104は受信信号を処理して送信データを測定する。受信機104はまた、観測ジェネレータ300の一部として処理を行う。図5には、観測ジェネレータ300に関連して処理する受信機が示され、当業者に明らかである受信機104の普通の動作に伴う細部を省略し得る。例えば、受信機104は、また、システムのその他の構成要素に送信データを利用できるようにし得る。受信機104は、受信機情報、例えば受信信号サンプル及び/又はチャネル評価を出力する。チャネル評価は、ある持続時間を通して一つ以上のチャネル評価サンプルを含む時間及び/又は周波数ドメインにおいて行われ得る。本出願人の以前の共有の国際出願(PCT)、PCT/2006/AU001201、PCT/2007/AU000231及びPCT/2007/AU001506(それぞれWIPO公開番号WO2007022564、WO2007095697、WO2008040088で公開、それらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)には、受信機104における必要なチャネル評価を行うシステム及び方法が記載されている。
【0058】
観測ジェネレータ300は、SSI抽出装置504を用いて送信機によって伝送されるシステム状態情報を得る。データはまたシステム状態情報(SSI)の一つ以上のソース502からも集められ得る。SSIソース502は受信機104に又はその近くに配置され得、例えば車両の受信機にGPSユニットが並置され得る。SSIソース502はまた環境中のいずれかの場所に配置され得、受信機において例えば無線通信リンクを介してSSIを利用できるようにしている。
【0059】
送信機100に付随するシステム状態情報は、また、受信機104において導出され得る。例えば、受信機104(例えばSSI抽出装置504)における処理は、時間を通して送信機100の受信位置を追跡し、そしてこれを用いて送信機100のスピード、加速度及び飛行方向を導出し得る。
【0060】
観測構成子506には、受信機104から受信機情報、例えば受信信号サンプル及び/又はチャネル評価が供給される。観測構成子は、また、例えばSSI抽出装置504から送信機に付随したSSIを受信し、また例えばSSIソース502から受信機に付随したSSIを受信する。観測構成子506は、利用できる受信機情報及びシステム状態情報から観測303を形成する。かかる観測はΩ[i]で表され、ここでiは観測指標(インデックス)であり、そして
【数4】

を含み得る。
【0061】
角括弧内の観測指標は、Ω[i]から直接得られる又はΩ[i]における情報から誘導される値を表すのに用いられる。
送信機100が時間で分離した多数の信号例えば多数のパケットを送信する際に、観測ジェネレータ300は各相応した受信信号に対する観測を出力し得る。時間で分離したN個の送信信号が存在ししかも受信機104がM個の受信アンテナを備えている場合に、N×M個までの観測が出力される。
【0062】
多数の送信機の場合、観測ジェネレータ300は、送信機と受信アンテナとの間に誘導した各チャネルに対する観測を出力し得る。N個の送信信号が存在ししかも受信機104がM個の受信アンテナを備えている場合に、N×M個までの観測が出力される。N個の送信信号が受信信号にやがて重なる場合には、送信データ及び受信機情報は、本出願人の共有の国際出願(PCT)、PCT/2003/AU00502及びPCT/2004/AU01036(それぞれWIPO公開番号WO2005011128及びWO03094037で公開、それらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)に記載された技法を用いて測定され得る。この場合、受信機104がM個のアンテナを備えているとすると、N×M個までの観測が出力される。
【0063】
多数の送信アンテナを用いた空間多様システムの場合には、観測ジェネレータ300の動作は、当業者には明らかなように、多数の送信機の場合と同じであると考えられ得る。
図6には、受信機が二つの受信アンテナ500、5002を用いる際の観測ジェネレータ300を概略的に示している。第一の観測303は上述のように形成される。第二のチャネル1022は、送信信号が送信機100から第二の受信アンテナ5002へ伝送する際に、インフレクタ200の存在を含む周囲環境によって誘導される。システム状態情報は、単一アンテナの場合について記載したようにして得られる。受信機104は、第二の受信アンテナ5002からの信号入力に相応した第二の組の受信機情報を出力する。観測構成子506は、システム状態情報及び第二の組の受信機情報を用いて第二の観測305を形成する。このアプローチはまた、二つ以上の受信アンテナを用いる受信機をサポートするのに用いられる。
【0064】
送信及び/又は受信アンテナの位置についての正確な情報がSSIにおいて利用できる場合に、この情報は、経路長さの計算中に用いられ得る。
各観測は観測プロセッサ302に送られる。観測は、共通の構成要素が重複しないように分類され得る。かかる分類が用いられ得る例は、多数のアンテナが送信機に付随した共通のSSIをもつ同じ受信パケットについて多数のチャネル評価を行う場合である。観測プロセッサ302は、受信機104の一部と並置される及び/又は受信機104の一部であるシステム構成要素によって発生した観測を受信し得る。観測プロセッサ302は、また、環境中のいずれかにおけるシステム構成要素から、例えば別の物理的に分離した受信機において観測を受信し、そして例えば無線通信を用いて観測プロセッサへ送られ得る。
【0065】
図2の環境における受信信号は、
送信機100からの直接経路を介しての送信波形;及び
送信機100からインフレクタ200へ、そしてインフレクタ200から受信機104へ伝搬する信号
を組み合わせたものである。
従って信号インフレクタ200の位置における第一の制約条件は、
【数5】

である。
【0066】
図7には、図2の環境に相応した時間ドメインにおけるチャナンネルの例を(正規化パワー遅延プロファイルをもって)示している。直接経路は、時間t1においてチャネルタップh1700に相当する。変曲した経路は、遅延t2においてチャネルタップh2702に相当する。この例では、h2702は、変曲点200における増大した伝搬損失(変曲した経路が直接経路より長いので)及び減衰のため、タップh1700に対してパワーが低い。二つのチャネルタップ間の時間差はΔt12=t2−t1である。タップh1700及びh2702の瞬間位相、及び位相の変化率も異なり得る。
光速での伝搬をc1とすると、Δt12は、第二の制約条件において、直接経路と変曲経路との経路長さの差に関係する。
【数6】

【0067】
第一の制約条件と第二の制約条件とを組み合わせることにより、観測プロセッサ302は、信号インフレクタ200が図8に示すように送信機100T及び受信機104Rに焦点(中心)をもつ楕円800の場所に位置すると結論できる。点Pはこの例ではインフレクタの実際の位置である。
【数7】

【0068】
周波数オフセットωは、第三の制約条件
【数8】

ここで、cは光速であり;
ω0は送信信号の中心周波数であり;
・はベクトルドット積を表す
もとでの相対ドプラーによる。
【0069】
さらなる制約条件は、時間に関して微分し、適用できるシステム状態情報から速度及び/又は加速度を使用するようにすることにより、式1〜3から導出され得る。
【0070】
【数9】

【0071】
システムは四つの解をもたらし、そのうちの二つは仮想解であり、他の二つは実際の解である。実際の解の各々は、入力観測と一致するPの実行可能な選択に相当する。
観測プロセッサは、以下に記載するように、例えば付加的な観測を含ませることによってこの曖昧さを減少させる技法を適用し得る。
【0072】
別の構成では、観測プロセッサ302は、二つ以上の観測を用いることによって、一つ以上の実現可能なインフレクタ位置P及び実現可能な速度νPを決定する。時間τ[i]における入力観測Ω[i]及び時間τ[k]>τ[i]における入力観測Ω[k]を仮定する。時間に対するインフレクタ位置についての仮定がなされ得る。例えば、τ[k]−τ[i]がインフレクタの加速度を無視するように十分に小さいと考えられる時に、
【数10】

である。
【0073】
従って、観測指標は、インフレクタ速度から削除され、P及びνPを決めるために観測プロセッサによって以下の式系が解かれる。
【数11】

【0074】
観測プロセッサ302は、入力観測によって送信機100及び受信機104の速度を決め得る。代わりに、いずれか一方又は両方における加速度を無視し得、上記系において
【数12】

で設定される。
【0075】
【数13】

【0076】
【数14】

【0077】
一つの構成では、観測プロセッサ302は、上記のように制約条件から導出した式系を解く。図9A及び図9Bには、単一送信機100、受信機104及びインフレクタ200を備えた例示システムに対する解を示している。実現可能なインフレクタ位置は点及び矢印による速度で表されている。観測プロセッサ302は、インフレクタ位置及び速度に対する二つの実現可能な解を決める。これらの解は図9Aに示される。上述のように曖昧さを低減するために別の観測を用いることで、観測プロセッサ302は、図9Bに示す正解に到達する。
この例は二次元スペースに対して与えられる。しかし、環境はその他の数の次元で考えられ得、そしてかかるスペースに適用できる本明細書に記載した技法も当業者には自明である。
【0078】
別の構成では、観測プロセッサ302は、一つ以上の費用関数を構成する制約条件を使用し、そして
位置;
スピード;
加速度;
飛行方向;
速度;及び
仰角
のようなインフレクタの特性に関する一つ以上の仮説に対す費用を評価する。
【0079】
【数15】

【0080】
観測プロセッサは、観測及び仮説の入力セットに対する一つ以上の費用関数の組み合わせを評価し、そしてインフレクタ状態の評価を出力する。かかる出力は以下の一つ以上であり得る。
・最低費用値をもつ位置仮説(いくつかが等しいか同様である場合には一つ以上の位置が出力され得る);
・最低費用値をもつ速度仮説(いくつかが等しいか同様である場合には一つ以上の速度が出力され得る);
・最低費用値をもつ位置仮説からある予定距離の範囲内の費用値をもつ一組の位置仮説;
・最低費用値をもつ速度仮説からある予定距離の範囲内の費用値をもつ一組の速度仮説;
・ある閾値以下の関連した費用をもつ一組の一つ以上の位置仮説;
・ある閾値以下の関連した費用をもつ一組の一つ以上の速度仮説;
・互いに割り当てた費用値をもつ一組の位置仮説;
・互いに割り当てた費用値をもつ一組の速度仮説。
【0081】
【数16】

【0082】
abs()関数はある他の関数に置き換えられ得るか又はある他の関数と組み合わされ得、その例としては、
・パワー;
・倍率で掛け算;及び
・ログ
が含まれる。
【0083】
インフレクタ200の位置及びそれの瞬間速度は、同一時間における又はある限定した時間ウインドウ内における観測を通じて一定であると考えられ得る。費用関数はこれらの観測を通じて組み合わされて、該観測を次のようにn個(重複の可能性あり)の組Ω1、Ω2、.....、Ωnに分割する。
【数17】

【0084】
【数18】

の一つ以上を含み得る。
例えば、全ての観測を通じて単一費用関数を適用することにより、全ての観測を含むn=1及びΩ1が得られる。
【0085】
【数19】

【0086】
費用関数は、所望な場合には例えば計算の複雑さ(計算量)を軽減するために中間段階で一つ以上のインフレクタ特性(例えば位置及び/又は速度)に関する仮説セットのサイズを減少しながら、順次に加えられ得る。例えば、観測プロセッサは、一つ以上の費用関数を用いて各仮説の費用を計算し得、そして、減少したセットに一つ以上の別の費用関数を適用する前に、ある閾値より大きい費用をもつ或いは最低費用からある距離以上の費用をもつセットから仮説を除去し得る。
【0087】
一つの構成では、観測プロセッサ302は固定インフレクタ200を仮定し、そして上記のように第一及び第二の制約条件から導出した費用関数を適用して、送信機100及び受信機104の周りの点の費用を決定する。例示の結果を図10Aに示す。図面の暗い領域は低い費用を表し、明るい領域は高い費用を表している。予想されるように、この費用関数を用いて観測プロセッサで決められた最もありそうな(もっとも暗い)領域は楕円刑である。円形マークの部分200はインフレクタの実際の位置を表している。
【0088】
この構成では、観測プロセッサ302はまた、式2において上記した第二の制約条件の導関数に基づいて、以下の費用関数を適用する。
【数20】

【0089】
図10Bには、この関数による領域を通じた費用を示している。そして観測プロセッサ302は、例えば式4によるような一次結合を介して二つの費用関数による結果を組み合わせる。かかる合成複合費用は図10Cに示される。
図11には、観測プロセッサ302の図10と同じ実施形態の別の例の結果セットを示している。この場合、結果は、第一の観測を行った後、100ms(ミリ秒)の受信信号に基づいて第二の観測を用いて発生される。送信機100及び受信機104の動きにより、プロットは図10のプロットと異なる。全てのプロットにおいて、インフレクタについて予測した最もありそうな位置のセットはインフレクタ200の実際の位置を含んでいる。
【0090】
図12には、観測プロセッサ302が例えば一次結合を介して図10及び図11に示す結果を組み合わせた後の結果を示している。図12Aの一番左のプロットには第一の制約条件及び第二の制約条件から導出された費用関数、すなわち図10A及び図11Aに示した費用を組み合わせた結果を示している。図12Bの中間のプロットには第二の制約条件の導関数に基づいた費用関数、すなわち図10B及び図11Bに示した費用を組み合わせた結果を示している。図12Cの一番右のプロットには両方の観測を通じた両方の費用関数、すなわち図10C及び図11Cに示した費用の組み合わせを示している。別の観測の組み合わせによれば、例えばより多くの受信信号及び/又は別の受信アンテナ、そしてインフレクタ200の位置から別に画定され得る。
【0091】
観測プロセッサ302はまた別の制約条件を適用し得る。インフレクタ特性の仮説は仮説セットから除外され得、すなわちインフレクタ特性の仮説における費用は、インフレクタ200のスピードにおける一つ以上の制約条件を適用した後に計算され得る。例えば、インフレクタのスピードは、ある予め決めた範囲外のスピードに高い費用を適用することによって、又はスピードで制御したある分散に従って費用を割り当てることによって制限され得る。
インフレクタ200の移動方向を拘束することは妥当であり得る。例えば、インフレクタ200を反射装置と見なし、そしてその移動方向を、図8に示す制約条件を用いて構成した楕円800に対して接線方向又は直交方向に制約するのが妥当であり得る。
【0092】
インフレクタ200の位置及び移動性を制約することは妥当であり得る。例えば、インフレクタ200は、経路がブロックされない方向における飛行方向であると考えられ得る。マップデータは、インフレクタの位置及び移動性を制約して、マップで画定した境界をもつ道路上に移動を制約するようにするのに用いられ得る。
上記の技法は、環境が多数のインフレクタを含んでいる場合に適用され得る。各付加的なインフレクタは、チャネルにおける新しい特徴、例えば時間ドメインチャネルにおける新しいタップ及び付加的なインフレクタの位置及び速度のようなインフレクタ特性を決めることができる新しい組の制約条件を誘導する。
【0093】
無線通信システムを取り巻く環境を評価するのに上記の方法を用いることによって、環境についての情報を処理でき、受信者、例えば車両の運転者及び/又は占有者に供給でき、並び/或いは
車両システム、
路側システム、及び
安全システム
のような別の接続システムに対する入力として用いられる。
例えば、情報は、
衝突の可能性の恐れを検知する際の警戒を行うために;
例えば、警戒の性質又は警戒の発生を変えることによって警戒を変更するために;及び
誤った警戒の可能性を低減するために
用いられ得る。
【0094】
上記の方法による無線通信システムを取り巻く環境の評価は位置決め精度を改善するのにも用いられ得る。例えば、位置情報の信頼できないソースに対する相対位置(検知、追跡及び/又は特徴付けを介して決められる)と組合された、位置情報の一つ以上の信頼できるソースの知識は、信頼できないソースを検知し、追跡し、修正するのに用いられ得る。
無線通信システムを取り巻く環境を評価することで得られた情報は、また、誤ったマップ情報を検知及び/又は修正するのに、或いは既存のマップ情報を増大するのにも用いられ得る。これらのマップ変更はまた、マップデータを見直しそして更新を配信するために応答できる中央本体に提供され得る。
【0095】
環境評価装置は、入力が利用できるようになるので、オンライン作動し得、或いはオフラインモードで作動して実行前に集められた入力データを後処理してもよい。
本明細書に記載し定義した本発明は、記載した又は明細書及び図面から明らかな個々の特徴の二つ以上の特徴の全ての選択的組み合わせに及ぶことが理解される。これら全ての異なる組み合わせは本発明の種々の選択的特徴を構成する。
また、本明細書で用いた用語"有する、備える"及びその文法的変形は用語"含む"と同等であり、他の要素や特徴の存在を除外するものとして取られるべきでないことも理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む無線通信システムを取り巻く環境を評価する方法において、
無線通信チャネルを介して送信機から受信機へ送信した入力信号を受信すること;
受信機、送信機及びインフレクタの少なくとも一つに関連するシステム状態情報を受信すること;
受信した入力信号及びシステム状態情報に基づいてインフレクタの少なくとも一つの特性を評価すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記評価することが、
少なくとも一つのインフレクタの位置;
少なくとも一つのインフレクタの速度;
少なくとも一つのインフレクタの加速度;
少なくとも一つのインフレクタの飛行方向;
少なくとも一つのインフレクタのスピード;及び
少なくとも一つのインフレクタの仰角
の少なくとも一つを評価することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
インフレクタの評価した特性に依存した警報を発生することをさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
警報が衝突の可能性を表していることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
さらに、
少なくとも一つのインフレクタの評価した少なくとも一つの特性を環境の記述的マップ情報と比較すること;及び
上記比較が不一致を表す場合に間違ったマップ情報の表示を発生すること
を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
上記システム状態情報が、
位置;
スピード;
加速度;
飛行方向;
速度;
仰角;
送信の時間;
受信の時間;
送信パワーレベル;
受信パワーレベル;
信号対雑音比(SNR);
システム構成要素の位置;
送信機又は受信機をサポートするホストの構造;
障害物の存在;
障害物に関する情報;
温度及び天候状態;
雨センサー情報;
太陽センサー情報;
車両のフロントガラスのワイパー速度;
自動車コントローラエリアネットワーク(CAN)バスから利用できる情報;
マップデータ;
上記の任意のものに対する統計上の信頼評価
の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
送信機と受信機との間の通信チャネルの評価を発生することを含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
システム状態情報を受信する上記ステップが、受信入力信号から送信機に付随するシステム状態情報を取り出すことを含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
受信システム状態情報から付加的なシステム状態情報を導出することを含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
送信機に付随する付加的なシステム状態情報が受信機で導出されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
送信機に付随する上記導出した入力システム状態情報が、
送信機スピード;
送信機加速度;
送信機飛行方向;及び
送信機速度
の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
受信入力信号及び受信システム状態情報の少なくとも一つからΩで表わす観測を発生することを含み、該観測が、
【数21】

受信信号の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
上記評価に用いる観測を発生することを含み、上記観測が以下の場合:
・多数の受信信号の各々が時間で分離した多数の送信信号に相当している場合;
・多数の受信信号の各々が時間で重なった多数の送信信号に相当している場合;
・多数の送信機の場合に多数のチャネルの各々が、送信機と受信アンテナと間に誘導される場合;
・多数の受信アンテナの場合に多数のチャネルの各々が、送信アンテナと受信アンテナと間に誘導される場合;
・多数の送信アンテナの場合に多数のチャネルの各々が、送信アンテナと受信アンテナと間に誘導される場合
の少なくとも一つに関係することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
共通構成要素の複製を避けるために上記共通構成要素を含む多数の観測を分類することを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つのインフレクタの少なくとも一つの特性の未来値における少なくとも一つの仮説を生成することを含むことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
上記評価処理が、少なくとも一つの上記インフレクタの少なくとも一つの特性に少なくとも一つの制約条件を適用することを含むことを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
上記評価処理は、
【数22】

を特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
上記評価処理は、
【数23】

Δt12=t2−t1は時間t1における直接信号伝搬経路及び時間t2における変曲した信号伝搬経路による、二つの時間ドメインチャネルタップ間のタップ遅延差であり;また
cは光速であること
を特徴とする請求項16又は請求項17記載の方法。
【請求項19】
通信チャネルの評価により上記タップ遅延差パラメータΔt12を決めること含むことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
時間ドメインにおける通信チャネルの上記評価における変曲した経路と直接経路とに相当するタップ間の遅延差を測定することにより上記タップ遅延差パラメータΔt12を決めること含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
上記評価処理は、
【数24】

を特徴とする請求項16〜請求項20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
上記周波数オフセットパラメータωが通信チャネルの上記評価により決められることを特徴とする請求項21及び請求項7記載に依存する方法。
【請求項23】
上記周波数オフセットパラメータωが、直接経路に相当するタップの位相に対する変曲した経路に相当するタップの位相の変化率として時間ドメインにおける上記チャネル評価により計算されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
上記チャネル評価による上記周波数オフセットパラメータωの計算が、以下の場合:
・上記チャネル評価の持続時間を通して;
・上記チャネル評価のある部分を通して;また
・上記チャネル評価を通しての間隔で;
の少なくとも一つについて行なわれることを特徴とする請求項22及び請求項23記載の方法。
【請求項25】
上記評価処理は、
【数25】

であるように制約されることを特徴とする請求項16〜請求項24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
上記制約条件が、時間に関しての一つ以上のシステム構成要素の位置にについてのある仮定に基づいて複数の観測全体に適用され、システム構成要素が、インフレクタ、送信機、受信機及びシステム状態情報のソースの少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項16〜請求項25記載の方法。
【請求項27】
上記評価処理は、
【数26】

であるように複数の観測を通して制約され、
上記式において
括弧内の用語は観測指標を表し;
τ[i]は観測iの行なわれた時間であり;また
τ[k]は観測kの行なわれた時間であること
を特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、時間についての微分によって上記評価処理に対するさらなる制約条件を導出することを特徴とする請求項16〜請求項27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
複数の上記制約条件を組み合わせて式系を作ることを含み、また上記評価処理が、少なくとも一つの入力観測を用いて上記式系を解くことを含むことを特徴とする請求項16〜請求項28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
上記評価処理がインフレクタ特性についての一組の実行可能な解を生成することを特徴とする請求項1〜請求項29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
付加的な制約条件;及び
付加的な入力観測
の少なくとも一つを用いて、実行可能なインフレクタ特性の解の組を低減することを含むことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
・同じ送信機からの少なくとも一つ以上の送信信号の受信;
・代わりの送信機からの少なくとも一つ以上の送信信号の受信;及び
・少なくとも一つ以上の受信アンテナを介しての少なくとも一つ以上の送信信号の受信
の少なくとも一つによって付加的な観測が行なわれることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
時間τ[k]においてインフレクタ位置
【数27】

に関する仮説を作り、そしてこの仮説が時間τ[k]において行なった観測を用いて一つ以上の制約条件を満たすテストを行なうことを含むことを特徴とする請求項16〜請求項32記載の方法。
【請求項34】
上記制約条件から一つ以上の費用関数を導出し、そして
少なくとも一つの入力観測を用いて、少なくとも一つ以上のインフレクタ特性に関する一つ以上の仮説の費用を評価して上記インフレクタ特性を評価すること含むことを特徴とする請求項16〜請求項33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
環境の領域を量子化することでインフレクタ位置仮説として用いられることになる一組の点を選択することを含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
上記評価処理のための仮説として一組の瞬間速度を選択することを含むことを特徴とする請求項34又は請求項35記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一つの入力観測全体で複数の費用関数を組み合わせることを含むことを特徴とする請求項34〜請求項35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
上記費用関数が、上記観測を以下のようにn個の組Ω1、Ω2、....、Ωnに分割した後、上記観測を通して組み合わされ、
【数28】

を特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
種々の時間に生じる複数の入力観測を通して一つ以上の上記費用関数を組み合わせることを含むことを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
【数29】

を特徴とする請求項38又は請求項39記載の方法。
【請求項41】
上記費用関数を順次に適用すること;及び
上記費用関数の順次の適用の間における一つ以上のインフレクタ特性に関する仮説セットのサイズを低減すること
を含むことを特徴とする請求項34〜請求項40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
少なくとも一つの費用関数を用いて仮説の費用を計算すること;及び
少なくとも一つの別の費用関数を適用する前に、少なくとも一つの部材を除去することで仮説セットサイズを低減すること
を含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項43】
インフレクタの評価したスピードを制約すること
を含むことを特徴とする請求項1〜請求項42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
上記インフレクタスピードの制約が、
・ある予め決めた範囲外のスピードをもつインフレクタ特性仮説を除外すること;
・スピードで制御したある分散に従うインフレクタ特性仮説を除外すること;
・ある予め決めた範囲外のスピードに高い費用を適用すること;及び
・スピードで制御したある分散に従って費用を割当てること
の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
・反射装置;
・インフレクタの経路がブロックされない方向における飛行方向;
・マップによって画定したある制約された経路上:及び
・道路上
の少なくとも一つであるとインフレクタを見なすことにより少なくとも一つのインフレクタ特性を制約することを含むこと
を特徴とする請求項1〜請求項44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
少なくとも一つの付加的なインフレクタの少なくとも一つの上記インフレクタ特性を決めるために上記付加的なインフレクタの存在によって誘導した通信チャネルの上記評価の少なくとも一つの付加的な特徴を用いること含む請求項7記載の方法。
【請求項47】
上記付加的なチャネル特徴が、上記時間ドメインチャネル評価における時間ドメインタップであることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
上記評価したインフレクタ特性に基づき出力を発生すること;及び
出力を接続したシステムに入力として供給すること
を含むこと
を特徴とする請求項1〜請求項47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
上記接続したシステムが、
・車両側システム;
・道路側システム;及び
・安全システム
のすくなくとも一つであることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
無線通信システムを取り巻き、送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む環境を評価する装置において、
送信機から無線通信チャネルを介して受信機へ送信される入力信号を受信する第一の入力と;
受信機、送信機及びインフレクタの少なくとも一つに付随するシステム状態情報を受信する第二の入力と;
受信入力信号及びシステム状態情報に基づきインフレクタの少なくとも一つの特性を評価する環境評価装置と
を有することを特徴とする装置。
【請求項51】
無線通信システムを取り巻き、送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む環境を評価するシステムにおいて、
少なくとも一つの送信機と;
送信機から無線通信チャネルを介して送信される入力信号を受信する受信機と;
受信機、少なくとも一つの送信機及び少なくとも一つのインフレクタの少なくとも一つに付随するシステム状態情報の少なくとも一つのソースと;
受信入力信号及びシステム状態情報に基づきインフレクタの少なくとも一つの特性を評価するため、受信機及びシステム状態情報の少なくとも一つのソースとデータ通信する環境評価装置と
を有することを特徴とするシステム。
【請求項52】
送信機、受信機及びインフレクタの少なくとも一つが移動することを特徴とする請求項51記載のシステム。
【請求項53】
上記少なくとも一つの送信機及び受信機が併設されていることを特徴とする請求項51又は請求項52記載のシステム。
【請求項54】
データ処理装置の動作を制御するために機械読取り可能な記録媒体に記録した機械読取り可能なプログラムコードを有し、無線通信システムを取り巻き、送信信号を変曲させる少なくとも一つのインフレクタを含む環境を評価する方法を実行するようにプログラムコードを実施するコンピュータプログラム製品において、
上記方法が、
送信機から受信機へ無線通信チャネルを介して送信した入力信号を受信すること;
受信機、送信機及びインフレクタの少なくとも一つに関連するシステム状態情報を受信すること;
受信した入力信号及びシステム状態情報に基づいてインフレクタの少なくとも一つの特性を評価すること
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate


【公表番号】特表2012−530409(P2012−530409A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515292(P2012−515292)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000768
【国際公開番号】WO2010/144973
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(509098043)コーダ ワイヤレス ピーティーワイ リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】COHDA WIRELESS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Suite 5, 85 Fullarton Road,Kent Town,South Australia 5067(AU)
【Fターム(参考)】