説明

無線通信システム

【課題】無線通信システムにおいて、同期までの期間を短く保ちつつ、通信性能を向上させる。
【解決手段】第1の状態において、低雑音増幅器12は、選択部31から選択出力された局部発振器11の発振出力信号S1を受けて増幅を行い、制御部14は、ミキサー15の出力を受ける強度判定部13の判定結果から、信号強度が最も高くなる、低雑音増幅器12の周波数帯域を学習する。そして第2の状態において、低雑音増幅器12は、第1の状態において学習された周波数帯域が設定され、選択部31によって選択出力された入力信号SINを受けて増幅を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、超広帯域の周波数帯の信号を用いたUWB(Ultra Wide Band)通信等に対応した、無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報量の急速な増大化に伴い、情報データの交換や伝送に大容量化・高速化が要求されてきている。このような要求に対応するため、無線通信に関する技術開発が急速なスピードで進められている。
【0003】
無線通信については、ケーブル等の配線が不要であることから、オフィスや家庭に至るまで、普及が拡大しつつある。中でも、低消費電力での通信が期待できるUWB通信(超広帯域通信)が脚光を浴びている。
【0004】
UWB通信では、1.5GHz以上、または、中心周波数の25%以上の帯域を利用する超広帯域信号を用いる。その中の一つの通信方式として、搬送周波数(キャリア)を一定期間ごとに切り替えるMB−OFDM(multiband orthogonal frequency-division multiplexing)方式が提案されている。
【0005】
図6は従来の無線通信システムの一例を示す図である。図6の構成はMB−OFDM方式を利用している(非特許文献1を参照)。図6において、91はアンテナ、92は挟帯域の帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)、93は利得周波数帯を切り替える(ホッピング)ことが可能な低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)、94はシングル入力を差動信号に変換するバラン、95a,95bはミキサー、96は復調部、97は周波数の切り替えが可能な局部発振器(LO:Local oscillator)である。
【0006】
受信時には、アンテナ91が送信アンテナからの信号を受信し、帯域通過フィルタ92を介して伝達された信号が低雑音増幅器93によって増幅される。その後、バラン94によってシングル−差動変換が行われ、ミキサー95a,95bと局部発振器97とによって周波数変換された後に、復調部96によって信号が復調される。
【0007】
ここで、UWBのMB−OFDM方式では、搬送周波数をホッピングさせるため、低雑音増幅器93の利得周波数帯域もホッピングさせ、選択した帯域における増幅を行う。これにより、広帯域の信号を増幅する際に比べて高い利得を実現し、良好な通信システムを構築していた。
【非特許文献1】Akio Tanaka、Hiroshi Kodama、Akifumi Kasamatsu、「Low Noise Amplifier with Center Frequency Hoping for an MB-OFDM UWB Receiver」、Ultra Wideband Systems, 2004. Joint with Conference on Ultrawideband Systems and Technologies. Joint UWBST & IWUWBS. 2004 International Workshop on、(米国)、IEEE、2004年3月18〜21日、p.420−423
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の手法では、低雑音増幅器が増幅を行う周波数帯域と局所発振器のホッピング周波数とがずれている場合に、通信性能の劣化が生じる、という問題があった。また、そのずれを補正するためには、送信器からのパイロット信号が必要であり、通信を開始する同期までに時間がかかるという欠点があった。
【0009】
前記の問題に鑑み、本発明は、無線通信システムにおいて、同期までの期間を短く保ちつつ、通信性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明が講じた解決手段は、無線通信システムとして、局部発振器と、入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて増幅を行う低雑音増幅器と、前記局部発振器の発振出力信号と前記低雑音増幅器の出力信号とを積算するミキサーと、前記ミキサーの出力から信号強度を判定する強度判定部と、前記選択部の選択動作と前記低雑音増幅器の周波数帯域とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる前記低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記低雑音増幅器の周波数帯域を前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定するものである。
【0011】
請求項1の発明によると、第1の状態において、低雑音増幅器は、選択部によって選択出力された局部発振器の発振出力信号を受けて増幅を行い、このとき、ミキサーの出力を受ける強度判定部の判定結果から、信号強度が最も高くなる周波数帯域が学習される。そして第2の状態において、低雑音増幅器は、第1の状態において学習された周波数帯域が設定され、選択部によって選択出力された入力信号を受けて増幅を行う。これにより、低雑音増幅器における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。
【0012】
また、請求項2の発明が講じた解決手段は、無線通信システムとして、局部発振器と、増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記局部発振器の発振出力信号を受けて増幅を行う第1の低雑音増幅器と、増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、入力信号を受けて増幅を行う第2の低雑音増幅器と、前記局部発振器の発振出力信号と前記第1または第2の低雑音増幅器の出力信号とを積算するミキサーと、前記ミキサーの出力から信号強度を判定する強度判定部と、前記第1および第2の低雑音増幅器の増幅動作および周波数帯域を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1の低雑音増幅器が増幅を行うよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる前記第1の低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、前記第2の低雑音増幅器が増幅を行うよう制御した第2の状態において、前記第2の低雑音増幅器の周波数帯域を前記第1の状態において学習した前記第1の低雑音増幅器の周波数帯域と同一に設定するものである。
【0013】
請求項2の発明によると、第1の状態において、第1の低雑音増幅器は、局部発振器の発振出力信号を受けて増幅を行い、このとき、ミキサーの出力を受ける強度判定部の判定結果から、信号強度が最も高くなる周波数帯域が学習される。そして第2の状態において、第2の低雑音増幅器は、第1の状態において学習された第1の低雑音増幅器の周波数帯域と同一の周波数帯域が設定され、入力信号を受けて増幅を行う。これにより、第2の低雑音増幅器における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。
【0014】
請求項3の発明が講じた解決手段は、無線通信システムとして、局部発振器と、入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて増幅を行う低雑音増幅器と、前記低雑音増幅器の出力から信号強度を判定する強度判定部と、前記選択部の選択動作と前記低雑音増幅器の周波数帯域とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる前記低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記低雑音増幅器の周波数帯域を前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定するものである。
【0015】
請求項3の発明によると、第1の状態において、低雑音増幅器は、選択部によって選択出力された局部発振器の発振出力信号を受けて増幅を行い、このとき、低雑音増幅器の出力を受ける強度判定部の判定結果から、信号強度が最も高くなる周波数帯域が学習される。そして第2の状態において、低雑音増幅器は、第1の状態において学習された周波数帯域が設定され、選択部によって選択出力された入力信号を受けて増幅を行う。これにより、低雑音増幅器における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。
【0016】
また、請求項4の発明が講じた解決手段は、無線通信システムとして、局部発振器と、入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、選択する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて周波数選択を行う帯域通過フィルタと、前記帯域通過フィルタの出力から信号強度を判定する強度判定部と、前記選択部の選択動作と前記帯域通過フィルタの周波数帯域とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる前記帯域通過フィルタの周波数帯域を学習し、前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記帯域通過フィルタの周波数帯域を前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定するものである。
【0017】
請求項4の発明によると、第1の状態において、帯域通過フィルタは、局部発振器の発振出力信号を受け、このとき、帯域通過フィルタの出力を受ける強度判定部の判定結果から、信号強度が最も高くなる周波数帯域が学習される。そして第2の状態において、帯域通過フィルタは、第1の状態において学習された周波数帯域が設定され、入力信号を受けてフィルタ動作を行う。これにより、帯域通過フィルタにおける周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。
【0018】
また、請求項5の発明では、前記請求項1〜4のうちいずれか1項の発明において、前記局部発振器は発振周波数が変更可能に構成されており、前記制御部は前記局部発振器の発振周波数を制御するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、低雑音増幅器または帯域通過フィルタにおける周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。したがって、短い期間で、通信性能の劣化を未然に抑制することができ、通信性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。図1において、11は局部発振器(LO:Local Oscillator)、12は増幅する周波数帯域が変更可能に構成されている低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)、13は信号強度を判定する強度判定部、14は低雑音増幅器12の周波数帯域を制御する制御部、15は局部発振器11の発振出力信号S1と低雑音増幅器12の出力信号とを積算するミキサー、31は入力信号SINと局部発振器11の発振出力信号S1とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部、35はミキサー15の出力信号から復調を行う復調器である。
【0022】
制御部14は、低雑音増幅器12の周波数帯域の制御に加えて、選択部31の選択動作も制御する。選択部31の出力信号は低雑音増幅器12に与えられ、低雑音増幅器12は選択部31の出力信号を受けて増幅を行う。
【0023】
図1の構成の動作について説明する。まず制御部14は、選択部31が局部発振器11の発振出力信号S1を選択出力するよう制御する。この第1の状態において、局部発振器11の発振出力信号S1は低雑音増幅器12によって増幅される。そして、ミキサー15において、低雑音増幅器12の出力信号と局部発振器11の発振出力信号S1とが積算され、その積算結果を示す出力信号が強度判定部13に与えられる。強度判定部13はミキサー15の出力信号から信号強度を判定する。制御部14は、強度判定部13の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる低雑音増幅器12の周波数帯域を学習する。すなわち、制御部14は、低雑音増幅器12の周波数帯域をスキャンさせていき、強度判定部13において信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習し、そのポイントで低雑音増幅器12を制御する。
【0024】
そして、実際の通信を行う際には、制御部14は、選択部31が入力信号SINを選択出力するよう制御する。この第2の状態において、第1の状態において学習した周波数帯域を低雑音増幅器12に設定する。低雑音増幅器12は選択部31から選択出力された入力信号SINを受けて増幅を行い、ミキサー15は低雑音増幅器12の出力信号と局部発振器11の発振出力信号S1とを積算する。ミキサー15の出力信号から、復調器35によって復調が行われる。
【0025】
ここで、局部発振器11の発振周波数をfl(Hz)とし、低雑音増幅器12の周波数帯域の中心周波数をfN(Hz)とすると、flとfNとが一致したとき、ミキサー15の出力は最も大きくなる。一方、温度、電圧等のばらつき等何らかの原因によってflとfNとがずれた場合、ミキサー15の出力は、flとfNとが一致したときと比べて小さくなる。
【0026】
そこで、第1の状態すなわち、低雑音増幅器12が局部発振器11の発振出力信号S1を増幅する状態において、ミキサー15の出力における信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習することによって、低雑音増幅器12における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。したがって、短い期間で、通信性能の劣化を未然に抑制することができ、通信性能を向上させることができる。
【0027】
なお、MB−OFDM方式のように搬送周波数を切り替えることを可能にするためには、局部発振器11は、発振周波数が変更可能に構成されているのが好ましい。そして、図2に示すように、制御部14Aが局部発振器11の発振周波数を制御するように構成してもよい。これにより、各搬送周波数に対して、低雑音増幅器12における周波数帯域のずれを補正することが可能になる。
【0028】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。図3において、図1と共通の構成要素には図1と同一の符号を付している。図3を図1の構成と対比すると、低雑音増幅器12および選択部31に代えて、増幅する周波数帯域が変更可能に構成されている第1および第2の低雑音増幅器51,52が設けられている。第1の低雑音増幅器51は局部発振器11の出力信号S1を受けて増幅を行う。一方、第2の低雑音増幅器52は入力信号SINを受けて増幅を行う。制御部14Bは、第1および第2の低雑音増幅器51,52の増幅動作および周波数帯域の制御を行い、ミキサー15は局部発振器11の出力信号S1と第1または第2の低雑音増幅器51,52の出力信号とを積算する。
【0029】
図3の構成の動作について説明する。まず制御部14Bは、第1の低雑音増幅器51が増幅を行うよう制御する。この第1の状態において、局部発振器11の発振出力信号S1は第1の低雑音増幅器51によって増幅される。そして、ミキサー15において、第1の低雑音増幅器51の出力信号と局部発振器11の発振出力信号S1とが積算され、その積算結果を示す出力信号が強度判定部13に与えられる。強度判定部13はミキサー15の出力信号から信号強度を判定する。制御部14Bは、強度判定部13の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる第1の低雑音増幅器51の周波数帯域を学習する。すなわち、制御部14Bは、第1の低雑音増幅器51の周波数帯域をスキャンさせていき、強度判定部13において信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習する。
【0030】
そして、実際の通信を行う際には、制御部14Bは、第2の低雑音増幅器52が増幅を行うよう制御する。この第2の状態において、第2の低雑音増幅器52の周波数帯域を、第1の状態において学習した第1の低雑音増幅器51の周波数帯域と同一に設定する。第2の低雑音増幅器52は、設定された周波数帯域において、入力信号SINの増幅を行う。ミキサー15は第2の低雑音増幅器52の出力信号と局部発振器11の発振出力信号S1とを積算する。ミキサー15の出力信号から、復調器35によって復調が行われる。
【0031】
このような構成および動作によって、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、第1の状態すなわち、第1の低雑音増幅器51が局部発振器11の発振出力信号S1を増幅する状態において、ミキサー15の出力における信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習し、この学習した周波数帯域を第2の低雑音増幅器52に設定することによって、第2の低雑音増幅器52における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。したがって、短い期間で、通信性能の劣化を未然に抑制することができ、通信性能を向上させることができる。
【0032】
さらに、第1の実施形態と比べると、第2の低雑音増幅器52の前段には選択部が設けられていないため、選択部を構成する回路要素による高周波特性の劣化を抑制することが可能になる。
【0033】
なお、第1の実施形態と同様に、局部発振器11は発振周波数が変更可能に構成されているのが好ましい。そして、制御部14Bが局部発振器11の発振周波数を制御するように構成してもよい。
【0034】
なお、第1および第2の実施形態において、従来の図6の構成と同様に、低雑音増幅器の後段にシングル入力を差動信号に変換するバランを設けて、複数のミキサーによって周波数変換を行うように構成してもよい。
【0035】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態では、ミキサーを用いた周波数変換を利用しない通信方式において、本発明を適用した例について説明する。
【0036】
図4は本発明の第3の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。図4において、図1と共通の構成要素には図1と同一の符号を付している。図4を図1の構成と対比すると、ミキサー15が省かれており、強度判定部13は低雑音増幅器12の出力から信号強度を判定し、復調器35は低雑音増幅器12の出力を受けて信号の復調を行う。
【0037】
図4の構成において、ミキサーを利用しない通信方式では、送信する際にパルス信号をいったんバンドパスフィルターに入力し周波数成分を選択した後に、アンテナにより出力させる。一方、受信側では、アンテナに到達した信号を増幅するためには送信側で選択した周波数帯域の信号を増幅する必要がある。そこで、局部発振器11は、送信信号の中心周波数、すなわち前記バンドパスフィルターで選択した中心周波数の発振出力信号を出力する。
【0038】
図4の構成の動作について説明する。まず制御部14Cは、選択部31が局部発振器11の発振出力信号S1を選択出力するよう制御する。この第1の状態において、局部発振器11の発振出力信号S1は低雑音増幅器12によって増幅される。強度判定部13は低雑音増幅器12の出力信号から信号強度を判定する。制御部14Cは、強度判定部13の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる低雑音増幅器12の周波数帯域を学習する。すなわち、制御部14Cは、低雑音増幅器12の周波数帯域をスキャンさせていき、強度判定部13において信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習し、そのポイントで低雑音増幅器12を制御する。
【0039】
そして、実施の通信を行う際には、制御部14Cは、選択部31が入力信号SINを選択出力するよう制御する。この第2の状態において、第1の状態において学習した周波数帯域を低雑音増幅器12に設定する。低雑音増幅器12は選択部31から選択出力された入力信号SINを受けて増幅を行い、低雑音増幅器12の出力信号から、復調器35によって復調が行われる。
【0040】
このように、第1の状態すなわち、低雑音増幅器12が局部発振器11の発振出力信号S1を増幅する状態において、低雑音増幅器12の出力における信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習することによって、低雑音増幅器12における周波数帯域のずれを補正することができる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。したがって、短い期間で、通信性能の劣化を未然に抑制することができ、通信性能を向上させることができる。
【0041】
また、局部発振器11は、発振周波数が変更可能に構成されており、制御部14Cは、局部発振器11の発振周波数を制御する。これにより、MB−OFDM方式のように搬送周波数を切り替えることが可能になり、各搬送周波数に対する低雑音増幅器12の周波数帯域のずれを補正することが可能になる。
【0042】
(第4の実施形態)
図5は本発明の第4の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。図5において、図1と共通の構成要素には図1と同一の符号を付している。図5において、61は所定の周波数成分のみを選択する帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)、71はミキサー15の出力から信号強度を判定する第1の強度判定部、72は帯域通過フィルタ61の出力から信号強度を判定する第2の強度判定部、73は局部発振器11の発振出力信号S1と帯域通過フィルタ61の出力とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する第1の選択部、74は入力信号SINと局部発振器11の発振出力信号S1とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する第2の選択部である。
【0043】
制御部14Dは、低雑音増幅器12の周波数帯域の制御に加えて、帯域通過フィルタ61の周波数帯域と、第1および第2の選択部73,74の選択動作も制御する。第1の選択部73の出力信号は低雑音増幅器12に与えられ、第2の選択部74の出力信号は帯域通過フィルタ61に与えられる。
【0044】
図5の構成の動作について説明する。なお、第1の強度判定部71および第1の選択部73は、図1の構成における強度判定部13および選択部31にそれぞれ対応しており、第1の選択部73以降の構成の動作は第1の実施形態と同様である。
【0045】
まず制御部14Dは、第1の選択部73が局部発振器11の発振出力信号S1を選択出力するよう制御し、また、第2の選択部74が局部発振器11の発振出力信号S1を選択出力するよう制御する。この第1の状態において、制御部14Dは、第1の実施形態と同様に、低雑音増幅器12の周波数帯域をスキャンさせていき、第1の強度判定部71において信号強度が最も高くなる周波数帯域を学習する。また、局部発振器11の発振出力信号S1は第2の選択部74を介して帯域通過フィルタ61にも与えられ、第2の強度判定部72は帯域通過フィルタ61の出力信号から信号強度を判定する。制御部14Dは、第2の強度判定部72の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる帯域通過フィルタ61の周波数帯域を学習する。すなわち、制御部14Dは、帯域通過フィルタ61の通過周波数帯域をスキャンさせていき、強度が最も高くなる通過周波数帯域を学習する。
【0046】
そして、実際の通信を行う際には、制御部14Dは、第1の選択部73が帯域通過フィルタ61の出力信号を選択出力するよう制御し、また、第2の選択部74が入力信号SINを選択出力するよう制御する。そしてこの第2の状態において、低雑音増幅器12および帯域通過フィルタ61に、第1の状態において学習した周波数帯域をそれぞれ設定する。帯域通過フィルタ61は入力信号SINを受け、この帯域通過フィルタ61の出力信号は低雑音増幅器12に与えられる。ミキサー15は低雑音増幅器12の出力信号と局部発振器11の発振出力信号S1とを積算する。ミキサー15の出力信号から、復調器35によって復調が行われる。
【0047】
本実施形態によると、第1の実施形態と同様に、低雑音増幅器12における周波数帯域のずれを補正することができる。またこれとともに、帯域通過フィルタ61における周波数帯域のずれを補正することも可能になる。しかも、このずれの補正のために、送信側からパイロット信号を送る必要もない。したがって、短い期間で、通信性能の劣化を未然に抑制することができ、通信性能を向上させることができる。
【0048】
また、局部発振器11は、発振周波数が変更可能に構成されており、制御部14Dは、局部発振器11の発振周波数を制御する。これにより、MB−OFDM方式のように搬送周波数を切り替えることが可能になり、各搬送周波数に対する低雑音増幅器12および帯域通過フィルタ61の周波数帯域のずれを補正することが可能になる。
【0049】
なお、本実施形態では、低雑音増幅器12と帯域通過フィルタ61の両方について、周波数帯域のずれを補正するものとしたが、図5の構成から第1の強度判定部71および第1の選択部73を省き、帯域通過フィルタ61についてのみ、周波数帯域のずれを補正するようにしてもかまわない。
【0050】
また、上述の各実施形態で示した無線通信システムを含む無線通信機器では、この無線通信システムにおいて、低雑音増幅器の利得のばらつきを抑制することによって低雑音増幅器の利得マージンを少なくすることができるので、セット全体の消費電力の削減を行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、UWB通信等に対応した無線通信システムの通信性能を向上させるのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1の構成の変形例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図6】従来の無線通信システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
11 局部発振器
12 低雑音増幅器
13 強度判定部
14,14A,14B,14C,14D 制御部
15 ミキサー
31 選択部
51 第1の低雑音増幅器
52 第2の低雑音増幅器
61 帯域通過フィルタ
71 第1の強度判定部
72 第2の強度判定部
73 第1の選択部
74 第2の選択部
SIN 入力信号
S1 発振出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振器と、
入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、
増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて増幅を行う低雑音増幅器と、
前記局部発振器の発振出力信号と前記低雑音増幅器の出力信号とを積算するミキサーと、
前記ミキサーの出力から、信号強度を判定する強度判定部と、
前記選択部の選択動作と、前記低雑音増幅器の周波数帯域とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる、前記低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、
前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記低雑音増幅器の周波数帯域を、前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
局部発振器と、
増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記局部発振器の発振出力信号を受けて増幅を行う第1の低雑音増幅器と、
増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、入力信号を受けて増幅を行う第2の低雑音増幅器と、
前記局部発振器の発振出力信号と前記第1または第2の低雑音増幅器の出力信号とを積算するミキサーと、
前記ミキサーの出力から、信号強度を判定する強度判定部と、
前記第1および第2の低雑音増幅器の増幅動作および周波数帯域を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1の低雑音増幅器が増幅を行うよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる、前記第1の低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、
前記第2の低雑音増幅器が増幅を行うよう制御した第2の状態において、前記第2の低雑音増幅器の周波数帯域を、前記第1の状態において学習した前記第1の低雑音増幅器の周波数帯域と同一に設定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
局部発振器と、
入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、
増幅する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて増幅を行う低雑音増幅器と、
前記低雑音増幅器の出力から、信号強度を判定する強度判定部と、
前記選択部の選択動作と、前記低雑音増幅器の周波数帯域とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる、前記低雑音増幅器の周波数帯域を学習し、
前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記低雑音増幅器の周波数帯域を、前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
局部発振器と、
入力信号と前記局部発振器の発振出力信号とを入力とし、そのうちのいずれか一方を選択出力する選択部と、
選択する周波数帯域が変更可能に構成されており、前記選択部の出力を受けて周波数選択を行う帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタの出力から、信号強度を判定する強度判定部と、
前記選択部の選択動作と、前記帯域通過フィルタの周波数帯域とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記選択部が前記局部発振器の発振出力信号を選択出力するよう制御した第1の状態において、前記強度判定部の判定結果を受け、信号強度が最も高くなる、前記帯域通過フィルタの周波数帯域を学習し、
前記選択部が前記入力信号を選択出力するよう制御した第2の状態において、前記帯域通過フィルタの周波数帯域を、前記第1の状態において学習した周波数帯域に設定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項において、
前記局部発振器は、発振周波数が変更可能に構成されており、
前記制御部は、前記局部発振器の発振周波数を制御するものである
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−235513(P2007−235513A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54452(P2006−54452)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】