説明

無線通信方式における基地局同期化方式

【課題】セルラー通信網において複数の基地局の相互間の同期を高速に効率的に追加のリソースを要することなく達成するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】無線通信システムにおける複数の基地局を同期させるシステムおよび方法。このシステムは各基地局についてタイミング精度の推算値を算定する。一つの基地局タイミング精度が閾値以上である場合は、その基地局よりもタイミング精度の高い隣接基地局があるか否かをこのシステムは判定する。その閾値以上の精度の基地局を、上記基地局と上記隣接基地局との間のタイミング精度推算値の差に応答して、調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般にはディジタル通信方式に関する。より詳細にはこの発明はセルラー通信回路網における複数の基地局の同期化システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
提唱されている第三世代無線通信プロトコルでは各基地局を極めて正確な外部信号源に対し外部的に同期化するという簡単ではあるがコストのかかる手順に基づくアプローチ法が必要となる。
【0003】
基地局同期化を支援する技術は、或る基地局が隣接する手段、例えば同期化チャンネル(SCH)または共通の物理的制御チャンネル(CCPCH)、からの同期化のための電磁波を受動的に受け、そして同期化のためにユーザー装置(UE)で行なわれる手順と同様な手順に従うことを必要とする。他のアプローチ法は、各基地局が、同じ電磁波を受信する一以上の隣接手段と協力して特殊な同期化バーストを時折送信するものである。さらに他のアプローチ法は複数のユーザ装置が二つのセルの夫々から入る電磁波の到達時間の差(TDOA)を測定するものである。これら技術は、基地局ごとに備えられた極めて正確な信号源を利用するものである。従って、各基地局がそのような信号源を持たなくてはならないから、これら技術は高価となり不便である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、別途物理的資源を使うことなく動作中の基地局間の高速、高効率であって比較的に低コストの同期化を可能にするシステムおよび方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は無線通信システムにおける複数の基地局の同期化のためのシステムおよび方法である。このシステムは各基地局のタイミング精度の推算値を算定する。一つの基地局のタイミング精度が閾値を越えると、このシステムはより高いタイミング精度を有する隣接基地局があるがどうかを判定する。閾値を越えたタイミング精度の基地局は、自局とそれより高いタイミング精度の隣接基地局との間の差の推算値に応じて調整される。
【0006】
このシステムおよび方法の他の目的および利点は好適な実施例の詳細な説明から当業者には明かとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】通信システムのブロック図。
【図2】本発明の好適な実施例による無線回路網コントローラのブロック図。
【図3】本発明の好適な実施例による基地局およびユーザ装置のブロック図。
【図4】本発明の好適な実施例による階層的時間品質設計を示す図。
【図5a】本発明の好適な実施例によるシステムのフローチャート。
【図5b】本発明の好適な実施例によるシステムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の好適な実施例を図面を参照して説明する。これら図面において同様の参照数字は同様の要素を示している。
【0009】
図1は単純化した無線スペクトラム拡散符号分割多元接続(CDMA)または時分割二重(TDD)通信システム18を示している。通信システム18は複数のノードB(NodeB) 26,32 および 34、複数の無線回路網コントローラ(RNC)36,38、… 40、複数のユーザ装置(UE)20,22,24およびコア回路網46から成る。通信システム18のノードB26は、一つの基地局30または複数の基地局301、…30nに関連した一つのサイトコントローラ(SC)を有している。夫々の基地局はセルと呼ばれる関連地域を有する。ここでは基地局の同期化について説明するが、セルの同期化もこの発明により達成される。
【0010】
ノードB26,32,34のグループは無線回路網コントローラ36に接続される。無線回路網コントローラ36、…、40はコア回路網46に接続する。説明を簡潔にするために以下では一個のノードBのみについて述べるが、この発明は複数のノードBに容易に適用出来る。
【0011】
好適な実施例によれば、無線回路網コントローラRNC36はノードB26、32、34内およびそれらノード間での基地局同期化を維持する。図2に示すように、無線回路網コントローラRNC36は、基地局301、…30nの内の一局またはユーザ装置UE20、22、24の一つからそのメッセージ発生器53を通じて測定要求メッセージを出し、その測定値受信装置54を通じて測定結果を受け、同期化コントローラ55を用いてそれら測定結果に基づきその状態推算値を最適に更新し、そして共分散マトリクス57に記憶された状態群を管理する。これら記憶された状態は同期化に用いられる。この状態が基準に対する各基地局30の時間差、夫々の時間差の変化率および基地局30間の伝送遅延を表す。
【0012】
無線回路網コントローラ36はまた、測定された波形(すなわち同期化バースト)の到達時刻、ユーザ装置20で測定された二つの基地局からの電磁波の到着時間差および状態の不確定性および測定の不確実性の推算値を含むデータベース59に記憶された測定値群を管理する。無線回路網コントローラ36はカルマンフィルターのような改良型のフィルターを用いて、相対的なクロックドリフトを限定するパラメータを推算しそして基地局間の正確な距離のようなパラメータを精測する。推定された時間ドリフトは夫々の基地局の周波数基準間の周波数不整合の推測及び不正確な測定値が時としてそのプロセスを破壊させないようにするための合理性チェックの推測に用いられる。
【0013】
無線回路網コントローラ36は基地局301、…30nの夫々に時間品質を割り当てる。この時間品質は、一個の基地局を他のすべての基地局に対するタイムベースの基準として選ぶことにより無線回路網コントローラ36によって測定される。他のすべての基地局には、測定に基づき更新されそして修正される可変時間品質が割り当てられる。この時間品質は整数(例えば0から10)で表すことが出来る。時間品質の値が低ければ低いほど高い精度を示す。或いは、時間品質は連続する変数(浮動小数点)で表してもよい。好ましくは、基準とされた基地局(主基地局)には永久的に時間品質0を割り当てる。他のすべての基地局の時間品質としては可変であって基準基地局に対して調整される値が割り当てられる。図4はこの時間品質の階層構造を例示している。図4において、すべての従属基地局1、2、3は、主基地局に対し変化する時間品質を割り当てられる。一実施例において、従属基地局2の時間品質には従属基地局1に対し変化する値が割り当てられ、従属基地局3には従属基地局2に対し変化する値が割り当てられる。
【0014】
正常動作モードにおいて無線回路網コントローラ36は予定の単位時間について一回(例えば5秒ごとに一回またはオペレータにより決められた時間ごとに一回)、無線回路網コントローラのデータベース59に記憶された状態について共分散マトリクス57を更新する。共分散マトリクス57の一つの要素は各基地局の時間差の推定される分散である。
【0015】
或る基地局の時間差分散が予定の閾値を越えた時、無線回路網コントローラ36はその基地局の時間差の更新を指示するメッセージを出す。この更新は三つの方法の内の一つを用いて行なわれる。すなわち三つの方法の第一は隣接基地局301、302、…、30nの内の一つからの同期化バーストのその基地局への到達時間(BSTOA)を測定するようにその基地局に指示する方法であり、第二はより高い品質を有する隣接基地局301、302、…、30nの内の一局にその基地局の電磁波伝送のBSTOAの測定を指示する方法であり、第三はその基地局及び隣接する基地局301、302、…、30nの内の一つの同期バーストのBSTOAをユーザ装置20に測定させる方法である。
【0016】
基地局対基地局のBSTOAを用いる第一及び第二の方法では、一つの基地局から他の基地局への電磁波の到達時間を測定する。図3において、送信側としての基地局301が予め決められた時点で既知の電磁波パターンを送信する。基地局301の同期バースト発生器62からの同期バーストでもよいこの電磁波パターンはアイソレータ64を通してアンテナ70から送信される。受信側としての基地局301は、受信した電磁波パターンが期待する特徴と一致したとき大きな値を出すように動作する測定装置60を用いて送信された電磁波の波形を検出する。送信側と受信側が同一位置にありそして正確に同期したクロックを有しているとすれば、測定装置60の出力は送信された波形と同時に生じることになる。しかしながらクロックの不整合と伝送路の遅延により時間差が生じる。
【0017】
伝送路遅延は次の式1で定義される。
【0018】
(式1) R/c + x
ここでRは送信側と受信側間の伝送距離、cは光速度、xは測定装置での遅延である。基地局間の距離が大きければこの式1はR/cできまる。無線電磁波は光速で、すなわちほぼ1フィート/ナノ秒、すなわち3×108m/sで伝播する。基地局間の同期化の目的はそれら基地局を1−3マイクロ秒以内で整合させることである。それゆえ、基地局間の距離が1/2マイル(1km)以上であると、その距離が重要になる。しかしながら、間隔が数十メートルのピコセルまたはマイクロセルについては、重要である測定精度xと比較してその距離の重要性は低い。
【0019】
以上の観点から、かなり離れた(1 km を越える)基地局間での同期化を達成しようとする場合、その距離が重要になる。間隔が50メートル程度内の基地局間の同期化を達成しようとする場合にはそれら基地局の正確な位置は無意味になる。BSTOAの測定を行なった後、その測定値からデータベース59に記憶されている既知の伝播距離を減算しそして得られた差が基地局間の時間不整合となる。
【0020】
第三の方法は、一つのユーザ装置から見ての二つの異なる基地局から送信される二つの電磁波間の相対的な到達時間の差(TDOA)を測定するものである。二つの基地局からの電磁波間の観測されたTDOAをそのユーザ装置が測定しそしてリポートする。無線回路網コントローラ36は二つの基地局のTDOAの測定を促すメッセージをユーザ装置20、22、24の一つに送る。このメッセージに応答してそのユーザ装置20、22、24はそれぞれのアンテナ72とアイソレータ64を介してそれら二つの基地局の電磁波を受信し、そしてそのユーザ装置の測定受信装置68を用いてTDOAを測定しその結果を関連する基地局に送信する。
【0021】
そのユーザ装置の位置が分かっていて(すなわち、それら二つの基地局の夫々に対するそのユーザ装置の距離r1とr2が既知)しかも両基地局のタイミングが正しいとすれば、到達時間差(TDOA)は次の式2で定義される。
【0022】
(式2) (r1 - r2)/c
この値と測定値の差時間ベースの不整合を示すインジケータとなることになる。当業者には明かなことであるが、ピコサイズのセルについてそうであるように距離r1とr2が充分に小さいとすればそれらの値を知る必要はないことになる。観測された到達時間の差は電磁波の時間差の目安として直接に使うことが出来る。
【0023】
いずれか一つの方法を選んでしまうと、適正なメッセージが基地局301、…、30nの一つ或いはユーザ装置22、24および20の一つ、例えばユーザ装置22、に送られる。そのメッセージが基地局302に送られたとすると、基地局302にはモニターし測定すべき隣接装置が知らされる。そのメッセージがユーザ装置22に宛てられる場合には、それ自体の基地局に加えて測定すべき基地局がそのユーザ装置22に知らされる。
【0024】
図2に戻ると、無線回路網コントローラ36のデータベース59には基地局301、…、30nの夫々の距離が記憶されている。次ぎに無線回路網コントローラ36は、更新されるべき基地局302より良い時間品質を有する隣接した基地局301があるがどうかのチェックを行なう。そのような隣接基地局301が有れば、同期のずれた「同期ずれ」基地局302からの測定を行うことを促すメッセージを隣接基地局301に送る。或いは、無線回路網コントローラ36は「同期ずれ」基地局302にメッセージを送り、隣接基地局301の測定を行うように要求することも出来る。その要求を受けた基地局、この実施例では「同期ずれ」基地局302であるが、同期している「同期」基地局301の測定を行い、そして測定値を無線回路網コントローラの測定装置54に送る。測定装置54はその測定値を同期化コントローラ55に転送する。同期化コントローラ55は測定値から伝播時間R/cを減算することでその測定値の伝送時間を計算する。
【0025】
同期化コントローラ55で伝送時間が計算されると、その値がデータベース59に記憶された値と比較される。次ぎに同期化コントローラ55はカルマン利得を計算し、計算された到達時間と予定の到達時間の差と共通の利得とを用いて共分散マトリクス57における状態を更新する。その差が或る閾値を越える場合には、無線回路網コントローラのメッセージ発生器53は、無線回路網コントローラ36の制御のもとで「同期ずれ」基地局302を他の基地局303、…、30nと「同期」させるためにそのタイムベースまたはその基準周波数の調整を要求する他のメッセージを「同期ずれ」基地局302に送る。
【0026】
基地局302は要求された調整を行ない、それを無線回路網コントローラの測定装置54にリポートする。基地局302の時間基準の修正、その時間変化率、その共分散マトリクス57の更新(最も重要なその推定RMS時間誤差とドリフト誤差を含む)およびその時間品質の更新、を含めた更新が無線回路網コントローラ36のデータベースになされる。図4に戻ると、他の基地局との比較に基づき修正された時間ベースを有する基地局には、それが従属する基地局の品質に等しいか或いはそれより良い品質が割り当てられることがないようにしなければならない。そうすることにより安定度が保証される。例えば、従属基地局2が修正されるべきものとする、その従属基地局2にはその従属基地局1の時間品質の値より小さい値の時間品質のみを割り当てることが出来る。それにより、或る基地局が主基地局に対しふらふらしていずれは「同期ずれ」基地局群になってしまう可能性のあるレベルまたはそれより低いレベルの従属基地局に同期しないようにその時間品質が保証することになる。
【0027】
前述のように、「同期ずれ」基地局302を調整するために測定を行なう他の方法ではユーザ装置20、22、24の一個、例えばユーザ装置22、を使用する。この方法が無線回路網コントローラ36により選ばれると、「同期ずれ」基地局302と「同期」基地局301の同期バーストを測定させるメッセージがユーザ装置22に送られる。ユーザ装置22によりその測定が行なわれると、測定結果が無線回路網コントローラ36に送られ処理される。上述の方法と同様にその測定結果が無線回路網コントローラデータベース56および共分散マトリクス57に記憶されている既知の値および「同期ずれ」基地局302に送られた調整値と比較される。
【0028】
この好適な実施例によるシステムのフローチャートを図5aおよび図5bに示す。無線回路網コントローラ36は単位時間ごとに一回、共分散マトリクス57およびデータベース59を更新する(ステップ501)。基地局302、…、30nの一つの時間誤差分散が予定の閾値を超えたことを無線回路網コントローラ36が検出すると(ステップ502)、「同期ずれ」基地局の時間誤差分散を更新するために、無線回路網コントローラ36はBSTOAの測定のために基地局を使うかTDOAを測定するためユーザ装置を使用するかを決定する(ステップ503)。無線回路網コントローラ36がBSTOAの測定を決定した場合には、基地局の到達時間を測定するためのメッセージを「同期ずれ」基地局に隣接する基地局に送るか或いはその隣接基地局の到達時間を測定するためのメッセージを「同期ずれ」基地局に送る(ステップ504)。適正な基地局が必要な測定を行ない(ステップ505)、そして測定結果を無線回路網コントローラ36に送る(ステップ506)。無線回路網コントローラ36がTDOAの測定を選んだ場合には、一方が「同期ずれ」基地局である二つの基地局の到達時間差を測定するためのメッセージをユーザ装置に送る(ステップ507a)。そのユーザ装置は各基地局のTDOAを測定し(ステップ508b)、その差を無線回路網コントローラ36に送る(ステップ507c)。無線回路網コントローラ36が適正な測定結果を受けると(ステップ508)、無線回路網コントローラ36はその結果をデータベース59に記憶された値と比較する(ステップ509)。その差が或る閾値を越えると、無線回路網コントローラ36はその差に従ってその時間ベースまたはその基準周波数を調整するためのメッセージを「同期ずれ」基地局に送る(ステップ510)。「同期ずれ」基地局は要求された調整を行ない(ステップ511)、その結果を無線回路網コントローラ36にリポートする(ステップ512)。それによりデータベース59と共分散マトリクス57が新しい値を組みこんで更新される(ステップ513)。
【0029】
好適な実施例は各無線回路網コントローラ36におけるシステムと方法である。従来技術では制御無線回路網コントローラ(C−RNC)がその基地局と直接に通信を行ない、そしてサービス無線回路網コントローラ(S−RNC)がそのユーザ装置と直接に通信を行なう。隣接基地局が異なる無線回路網コントローラの制御を受ける場合には隣接する複数の基地局を制御する複数の制御無線回路網コントローラおよび複数のサービス無線回路網と複数のユーザ装置との間の通信を加える必要がありうる。
【0030】
別の実施例では、互いに通信出来る基地局対の夫々がそれ自体の周波数を相手のそれに近づけるように調整できなくてはならない。相対的な調整量は、各基地局に割り振られそして無線回路網コントローラのデータベース59に記憶された一組の固有の重みで定義される。基地局の夫々を調整するプロセスは、「同期」及び「同期ずれ」基地局双方がそれぞれの基地局に割り振られた重みにより調整されることを除き、上記好適な実施例で述べた通りである。異なる重み付けにより完全に集中したものから完全に分布したものまで度合いの変化する集中性を達成できる。
【0031】
最適な実施例では、無線回路網コントローラ36が基地局302、…、30nの内の一局に時間修正そしてまたは周波数修正を行なわせることが出来る。主基地局は、それに従属する基地局の夫々が特定の限界内の正確な時間基準を持つことを保証する機能を有する。無線回路網コントローラ36は、そのアルゴリズムおよび修正において、主基地局とその従属基地局の間に無視しうる誤差があるものとし、それゆえすべての基地局が同一の時間基準を持っているものと仮定している。
【0032】
その結果、その無線回路網コントローラ36は修正を行なわず、そのため、無線回路網コントローラ36が主基地局とその従属基地局間の個々の時間誤差を推定しないから、主基地局が自局と他の基地局のそれぞれとの間のタイミング誤差を除去または補償しなければならない。この実施例は無線回路網コントローラ36と主基地局の間の滑らかなインタフェースを提供するものである。主基地局がピコセルに適した従属基地局の同期化についてのそれ自体の解決法を与える。
【0033】
別の実施例では各基地局が独立した時間基準及び周波数基準を有し、それに基づき無線回路網コントローラ36が夫々の基地局に時間修正値や周波数修正値を送ることが出来るようになっている。そのアルゴリズム及び修正法においては無線回路網コントローラ36は各基地局の時間及び周波数誤差を表す状態を推定する。
【0034】
その結果、無線回路網コントローラ36は各基地局と主基地局の個々の時間誤差を推定するから、一つの基地局についての測定値は他の基地局の状態の推定には役立たない。それゆえ、基地局の製造者は基地局のタイミングと時間ドリフトについて緩い範囲の誤差を与えるだけでよく、そしてすべての基地局が電磁波を介して他の基地局(同一または異なる基地局)への許される接続性を持たねばならない。
【0035】
この実施例は、基地局間の距離が大きい大規模セルラー領域に有利である。主基地局に従属する他の基地局を含む測定によりその主基地局の時間基準に従属する一つの基地局を修正する能力は限られている。
【0036】
この実施例における各基地局は独立した夫々時間基準を用いるが主基地局は一つの周波数基準を与える。無線回路コントローラ36は各基地局個々の時間修正値そしてまたは一つの修正値を主基地局に送る。無線回路コントローラ36は、各基地局のクロック周波数が主基地局のクロック周波数に従属するようにする。そのアルゴリズム及び修正法において無線回路コントローラ36は主基地局と割り当てられた基地局の間に無視できるドリフト誤差があるものと仮定するが、扱われるオフセットは一定と推定する。
【0037】
その結果、無線回路コントローラ36はその主基地局とその複数の基地局との間の個々の時間誤差と、主基地局に対する基地局の共通の周波数ドリフトとを推定する。
【0038】
この実施例の特徴は、主基地局から離れた基地局に有利である前述の実施例と同様である。この実施例は長距離通信における時間のずれを除くための機構を提供する。それら時間オフセットが安定であるという仮定の利点によりこの実施例は主基地局のクロック周波数に従属する任意の基地局の周波数を含む測定の利点をその主基地局に従属するすべての基地局についてのドリフトレートの更新に使用する。
【0039】
更に他の実施例では、無線回路コントローラ36は主基地局に従属する基地局の同期化を行なうための推定をその主基地局に与える。無線回路コントローラ36は関連する夫々の基地局についての時間修正値そしてまたは周波数修正値をその夫々の主基地局に送る。主基地局は、それに関連する夫々の基地局がそれ自体に従属する時間基準を特定の限界内の精度で有することが出来るようにする。主基地局は基地局同期化を援助するための基地局特有の推定を使用するため選ぶことが出来る。そのアルゴリズム及び修正法において無線回路コントローラ36は主基地局とそれに関連する基地局との間の時間及び周波数誤差の最良の推定を作り出す。状態推定を行なう際に、測定と基地局誤差の不確実性との間の相対的な確実性を比較検討する。
【0040】
その結果、無線回路コントローラ36は主基地局とそれに関連する基地局との間の個々の時間誤差の推算を試み、そして主基地局は主基地局とその時間基準に従う各基地局との間の時間誤差を無くしまたは補償し、或いは無線回路コントローラ36の支援を要求する。
【0041】
この発明はその好適な実施例について説明したが、特許請求の範囲で限定するこの発明の範囲内での他の変更は当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0042】
18 通信システム
20、22、24 ユーザー装置(UE)
26,32,34 ノードB(NodeB)
SC サイトコントローラ
301、…、30n 基地局
36、…、40 無線回路網コントローラ(RNC)
46 コア回路網
53 メッセージ発生器
54 測定値受信装置
55 同期コントローラ
57 共分散マトリクス
59 データベース
60 測定装置
62 同期化バースト発生器
64,66 アイソレータ
68 測定値受信装置
70,72 アンテナ
ステップ501 RNCが共分散マトリクスおよびデータベースを更新する
ステップ502 RNCが基地局時間誤差共分散が閾値以上であることを検出する
ステップ503 RNCが同期ずれ基地局の更新のために用いるべき方法を決める
ステップ504 RNCがBSTOAを測定するよう基地局にメッセージを送る
ステップ505 基地局が要求のあった測定を行う
ステップ506 測定をRNCに移す
ステップ507 RNCが適切な測定値を受ける
ステップ507a RNCが基地局のTDOAを測定するようUEにメッセージを送る
ステップ507b UEが指定の基地局のTDOAを測定する
ステップ507c UEが基地局TDOA間の差を送る
ステップ509 RNCが測定値とデータベース中の蓄積値と比較する
ステップ510 RNCが同期ずれ基地局にタイムベースまたは周波
数を調節するようメッセージを送る
ステップ511 同期ずれ基地局が要求のあった調節を行う
ステップ512 基地局がRNCに通知する
ステップ513 RNCを上記調節した値で更新する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線回路網コントローラ(RNC)において実施される、複数の基地局の同期を維持するための方法であって、
共分散マトリクスおよびデータベースを更新するステップと、
第1の基地局の時間誤差分散が所定の閾値を超えたことを検出するステップと、
ユーザ装置(UE)に対し、前記第1の基地局から送信される信号とリファレンス基地局から送信される信号との間の到達時間の差(TDOA)を測定するように指示する信号を送信するステップと、
前記到達時間の差(TDOA)の測定値を受信するステップと、
前記到達時間の差(TDOA)の測定値を、前記データベースに記憶される値と比較するステップと、
前記比較に基づいて、送信タイミングを調節するためのメッセージを前記第1の基地局に送信するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記共分散マトリクスは前記無線回路網コントローラ(RNC)と関連付けられた各基地局の状態推算値を保持し、前記状態推算値は、リファレンス、各時間誤差の変化率、及び基地局ペア間の送信遅延に対する各基地局の時間誤差を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データベースは、前に受信された前記到達時間の差(TDOA)の測定値と、複数の基地局それぞれのタイムリファレンス、時間変化率と、を保持することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記到達時間の差(TDOA)の測定値と、前記データベースに記憶される到達時間の差(TDOA)の値との差異が、所定の到達時間の差(TDOA)の閾値を超えているかどうかを判定するステップと、
前記差異が前記所定の到達時間の差(TDOA)の閾値を超えている場合、前記第1の基地局に調整メッセージを送信するステップと
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記調整の報告は、送信された前記調整メッセージに従って前記第1の基地局の送信タイミングが調整されたことを含み、
前記調整に従って前記データベース及び共分散マトリクスを更新するステップ
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リファレンス基地局は、ノードBにおける主基地局であり、前記第1の基地局は、前記主基地局にスレーブされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ノードBを構成する基地局の同期を維持する無線回路網コントローラ(RNC)であって、
無線回路網コントローラ(RNC)は、
リファレンス、各時間誤差の変化率、及び基地局ペア間の送信遅延に対する各基地局の時間誤差を含む状態推算値であって、複数の基地局のそれぞれの前記状態推算値を保持するように構成される共分散マトリクスであって、データベース内にある共分散マトリクスと、
第1の基地局及びリファレンス基地局から送信された信号間の受信した到達時間の差(TDOA)の測定値を保持するように構成されるデータベースと、
測定要求メッセージを生成して送信するように構成されるメッセージ生成部と、
到達時間の差(TDOA)の測定値を受信して処理するように構成される測定値受信装置と、
受信した到達時間の差(TDOA)の測定値に基づいて、前記基地局のそれぞれの送信時間及び利得を計算し、かつ受信した到達時間の差(TDOA)の測定値と、前記データベースに格納された到達時間の差(TDOA)との差分が予め定められた閾値を超えているかどうかを判別するように構成されており、前記共分散マトリクス及び前記データベースと通信する同期化コントローラと
を備え、
前記メッセージ生成部は、さらに、受信した到達時間の差(TDOA)の測定値と、前記データベースに格納された到達時間の差(TDOA)との間の判別した差分に従って、調整を要求する基地局に調整メッセージを生成して送信するように構成される
ことを特徴とする無線回路網コントローラ(RNC)。
【請求項8】
前記測定値受信装置は、送信された調整メッセージに応じた報告メッセージであって、調整が前記基地局によりなされたことを含む報告メッセージを受信して処理するようにさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載の無線回路網コントローラ(RNC)。
【請求項9】
前記同期化コントローラは、前記共分散マトリクス内の状態推算値を更新し、かつ、受信した前記到達時間の差(TDOA)の値で前記データベースを更新するようにさらに構成されることを特徴とする請求項8に記載の無線回路網コントローラ(RNC)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2011−244486(P2011−244486A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180808(P2011−180808)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2007−176631(P2007−176631)の分割
【原出願日】平成13年4月5日(2001.4.5)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】