説明

無線通信端末

【課題】既存のIS801規格による測位の仕組みを変えることなく、不安定な電波状況下にあっても緊急発信時における測位を行い、当該測位結果を緊急呼出しセンタサーバに通知することが可能な無線通信端末を提供する。
【解決手段】緊急発信時に基地局との間でトラフィックチャネルを確保し、IS801規格に基づき基地局宛測位情報を送信する無線通信端末であって、緊急発信が行われると、スタンドアロンGPSによる測位を開始するとともにトラフィックチャネルの捕捉試行を行い、トラフィックチャネルの捕捉が先であればスタンドアロンGPSによる測位をIS801規格に基づく測位に変更し、スタンドアロンGPSによる測位情報取得が先であれば捕捉したトラフィックチャネルにて取得した位置情報を送信する制御部18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急発信時に基地局(緊急呼出しセンタ)との間でトラフィックチャネルを確保し、基地局宛測位情報を送信する無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
電話が何処から通報しているのか、通話と同時に現在位置のデータを通話先に通知するのが緊急通報位置通知システムであり、国内では、総務省が関係法令の準備を進め、緊急通報の際に発信者の位置を通知することが2007年4月から義務化されることになった。
【0003】
上記した緊急通報位置通知システムは、世界的に採用が推進されようとしており、例えば、米国では、1999年に無線通信および公衆安全法(Wireless Communications and Public Safety Act of 1999)に基づいてこれらの整備をすすめており、携帯電話に関しては、E911(The wireless Enhanced 911)法に基づいて、緊急通報をかけると911番の受付機関である緊急呼出しセンタ(PSAP:Public Safety Answering Point)に発信位置を特定する情報(精度は50〜300mの範囲)を通知する仕組みになっている。
【0004】
すなわち、携帯電話は、ユーザによるE911緊急発信時、基地局と専用の通話チャネル(以下、トラフィックチャネルという)を確保し、ANSI(American National Standard Institute)で定義されたIS801規格(基地局を用いた携帯電話測位プロトコル)を利用して自身の位置情報を基地局(緊急呼出しセンタ宛)に通知する。
【0005】
具体的に、図5に、IS801規格に基づく緊急発信時の初回測位シーケンスが示されるように、ユーザにより緊急発信の要求があった場合(ステップS501)、携帯電話(MS)は、基地局(BS)との間でトラフィックチャネルを確立し(ステップS502)、当該トラフィックチャネル上で基地局から必要な衛星情報を取得する(図5のA)。
この衛星情報を取得した携帯電話は測位演算を行い自身の現在位置を測位する(図5のB)。
ここで測位された結果は基地局を通じて緊急呼出しセンタサーバへ通知され、このことによりユーザの位置を特定することができる。以降の説明では便宜上、図5のAを“Aシーケンス”、Bを“Bシーケンス”と呼ぶことにする。
【0006】
Aシーケンスでは、基地局から携帯電話へ測位を開始するよう要求するメッセージを送ることと、これに伴い携帯電話が通信中の基地局の情報に基づいて簡易的な位置の情報を生成し、基地局にその結果を含むメッセージを送ることとにより、基地局は、携帯電話の位置をある程度予測することができる。
また、Bシーケンスでは、携帯電話の位置をある程度予測できた基地局は、携帯電話機が捕捉すべき衛星情報を携帯電話に送信し、携帯電話は、それらの情報を元に測位を開始し、測位が終了した後、測位結果を基地局に通知する。
【0007】
上記したように緊急発信時にIS801規格を用いてネットワークサポートを行う技術については従来から複数出願されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特表2005−535901号公報
【特許文献2】特開2006−33839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示すIS801規格に基づく測位シーケンスによれば、携帯電話と基地局との間で必ずトラフィックチャネルを確立する必要がある。このため、不安定な電波状況でトラフィックチャネルを確立することができない場合、測位が失敗する可能性がある。
また、トラフィックチャネルが確立できたとしても、上記したBシーケンスは10秒前後の時間を必要としており、したがって、Bシーケンス実行途中にトラフィックチャネルがロストすると測位が失敗する可能性がある。
これらの理由により、不安定な電波状況下でユーザによる緊急発信が行われた場合、ユーザの位置情報を緊急呼出しセンタサーバに送信することが失敗し、もしくは遅れる恐れがある。
【0009】
本発明は、既存のIS801規格による測位の仕組みを変えることなく、不安定な電波状況下にあっても測位を行い、当該測位結果を緊急呼出しセンタサーバに通知することのできる、無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために本発明の無線通信端末は、緊急発信時に基地局との間でトラフィックチャネルを確保し、IS801規格に基づき前記基地局宛測位情報を送信する無線通信端末であって、前記基地局との間でトラフィックチャネルを捕捉する通信部と、基地局を介さずに測位を行うスタンドアロンGPS部と、緊急発信時、前記スタンドアロンGPS部、またはIS801規格に基づく測位を行い、前記通信部により前記基地局へ測位情報を送信させる制御部と、を備え、前記制御部は、緊急発信が行われると、前記スタンドアロンGPS部による測位を開始するとともに前記通信部を制御してトラフィックチャネルの捕捉試行を行い、前記トラフィックチャネルの確保が先であれば前記スタンドアロンGPS部による測位を止めて前記IS801規格に基づく測位に変更し、前記スタンドアロンGPS部による測位情報取得が先であれば前記確保したトラフィックチャネルにて前記取得した位置情報を基地局宛送信する。
【0011】
また、本発明の無線通信端末において、前記制御部は、緊急発信に基づくトラフィックチャネルの確保に失敗すると、所定時間、もしくは所定回数だけ緊急発信を繰り返しつつ、その間前記スタンドアロンGPS部による測位を継続し、当該スタンドアロンGPSによる測位と前記IS801規格に基づく測位のいずれが先に測位を完了するかを判定するように構成してもよい。
【0012】
また、本発明の無線通信端末において、前記制御部は、所定時間もしくは所定回数だけ緊急発信を繰り返すカウンタを有し、前記緊急発信に失敗した場合に前記カウンタが所定の値を示した場合、前記スタンドアロンGPS部による測位が途中であれば、当該スタンドアロンGPS部による測位の最大許容時間を越えない範囲で測位を継続してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線通信端末によれば、測位の仕組みを大きく変えることなく、不安定な電波状況下にあっても測位を行い、当該測位結果を緊急呼出しセンタサーバに通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信端末の内部構成を示すブロック図である。ここでは、無線通信端末として携帯電話が例示されている。
図1に示されるように、携帯電話は、通信部11と、操作部12と、音声処理部13と、スピーカ(SP)14と、マイクロフォン(MIC)15と、表示部16と、記憶部17と、制御部18とにより構成される。
【0015】
通信部11は、通信チャネル(トラフィックチャネル)を捕捉し、例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)2000 1xやEVDO(Evolution Data Only)の通信プロトコルにしたがい、移動体通信網を介して接続される不図示の基地局を含む網側装置(緊急呼出しセンタサーバ)との間で無線通信を行う。
なお、EVDO通信は、1x通信よりも高速であり、1x通信は、EVDO通信とは異なりデータ通信の他に音声通信もサポートするといった特徴を有している。
なお、通信部11は、基地局からの下り方向の電波の受信とGPS測位とを同時に行うことができるRF(Radio Frequency)受信回路を有するものとする。
【0016】
操作部12は、例えば、電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、方向キー、決定キー、発信キーなど、各種の機能が割り当てられたキーを有しており、これらのキーがユーザによって操作された場合に、その操作内容に対応する信号を発生し、これをユーザの指示として制御部18に入力する。
【0017】
音声処理部13は、スピーカ14から出力される音声信号やマイクロフォン15において入力される音声信号の処理を行う。
すなわち、音声処理部13は、マイクロフォン15から入力される音声を増幅し、アナログ/デジタル変換を行い、更に符号化等の信号処理を施し、デジタルの音声データに変換して制御部18に出力する。
また、音声処理部13は、制御部18から供給される音声データに復号化、デジタル/アナログ変換、増幅等の信号処理を施し、アナログの音声信号に変換してスピーカ14に出力する。
【0018】
表示部16は、例えば、液晶表示パネルや有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示デバイスを用いて構成されており、制御部18から供給される映像信号に応じた画像を表示する。
表示部16は、例えば、発信時における発信先の電話番号、着信時における着信相手の電話番号、受信メールや送信メールの内容、日付、時刻、電池残量、発信成否、待ち受け画面などの各種の情報や画像を表示する。
【0019】
記憶部17は、制御部18において処理に利用される各種のデータを記憶する。記憶部17は、例えば、制御部18が実行するアプリケーションプログラム、通信相手の電話番号や電子メールアドレス等の個人情報を管理するアドレス帳、着信音やアラーム音を再生するための音声ファイル、待ち受け画面用の画像ファイル、各種の設定データ、プログラムの処理過程で利用される一時的なデータなどを保持する。
なお、記憶部17は、例えば、不揮発性の記憶デバイス(フラッシュメモリ)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(SRAM、DRAM)等によって構成される。
【0020】
制御部18は、携帯電話の全体的な動作を統括的に制御する。すなわち、制御部18は、携帯電話の各種の処理(回線交換網を介して行われる音声通話、電子メールの作成と送受信、インターネットのWeb(World Wide Web)サイトの閲覧などの制御)が操作部12の操作に応じて適切な手順で実行されるように、上述した各ブロックの動作(通信部11における信号の送受信、音声処理部13における音声の入出力、表示部16における画像の表示など)を制御する。
【0021】
制御部18は、記憶部17に格納されるプログラム(オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行するコンピュータ(マイクロプロセッサ)を備えており、このプログラムにおいて指示された手順に従って上述した処理を実行する。
すなわち、制御部18は、記憶部17に格納されるオペレーティングシステムやアプリケーションプログラム等のプログラムから命令コードを順次読み込んで処理を実行する。
【0022】
制御部18は、緊急発信時、既存の測位技術であるGPS(Global Positioning System)レシーバを用いた携帯電話単独での測位(スタンドアロンGPS)、およびIS801規格に基づく基地局を利用した測位(アシステッドGPS)を行い、通信部11により基地局へ測位情報を送信する機能を有する。
具体的に、制御部18は、緊急発信が行われると、スタンドアロンGPSによる測位を開始するとともに通信部11を制御してトラフィックチャネルの捕捉試行を行い、トラフィックチャネルの確保(捕捉)が先であればスタンドアロンGPSによる測位をIS801規格に基づく測位に変更し、一方、スタンドアロンGPSによる測位情報取得が先であれば確保したトラフィックチャネルにて取得した位置情報を基地局宛送信する。詳細は後述する。
【0023】
制御部18は、図1にその内部構成が機能展開され示されるように、主制御部180と、タイマ監視部181と、チャネル捕捉制御部182と、IS801シーケンス測位部183と、スタンドアロンGPS測位部184と、緊急発信処理部185と、により構成される。なお、これらのブロックが持つ機能は、記憶部17に記憶されるそれぞれのプログラムを制御部18で実行することにより達成されるものであって、制御部18内において実体的に他のブロックと区分され内蔵されるもののみを指すのではなく、あくまで説明の簡略化のために各処理部を分けて表現したものである。
【0024】
主制御部180は、緊急発信が行われると、スタンドアロンGPSによる測位を開始するとともに通信部11を制御してトラフィックチャネルの捕捉試行を行い、トラフィックチャネルの確保が先であればスタンドアロンGPSによる測位をIS801規格に基づく測位に変更する。
一方、主制御部180は、スタンドアロンGPSによる測位情報取得が先であれば、確保したトラフィックチャネルにて取得した位置情報を基地局宛送信する制御部18としての機能を実現するために、後述する各機能ブロック181〜185のシーケンス制御を行う。
【0025】
タイマ監視部181は、タイマTstart_userとタイマTsagとを内蔵し、各タイマ(Tstart_user/Tsag)は、ユーザによる緊急発信からの経過時間、スタンドアロンGPS測位に許容される最大時間のそれぞれを監視する機能を有する。
【0026】
チャネル捕捉制御部182は、基地局との間で複数の通信チャネルによる捕捉を試行し、捕捉に成功したチャネル(トラフィックチャネル)により緊急発信処理部185による緊急発信処理を起動する機能を有する。
【0027】
IS801シーケンス測位部183は、図5に示すAシーケンスと、Bシーケンスを実行し、基地局により送信される携帯電話が捕捉すべき衛星情報に基づいて測位を開始し、当該測位結果を基地局に送信する機能を有する。
【0028】
スタンドアロンGPS測位部184は、通信部11(GPSレシーバを含む)により自律的にGPS衛星から、緯度、経度、時間に関する情報を取得し、自身が属する位置を測位演算により取得して主制御部180へ供給する機能を有する。
【0029】
緊急発信処理部185は、主制御部180による制御の下、緊急発信に失敗すると、所定時間、もしくは所定回数だけ緊急発信処理を繰り返してスタンドアロンGPSによる測位を継続し、当該スタンドアロンGPSによる測位と、IS801規格に基づくIS801シーケンス測位のいずれが先に測位を完了するかを判定する機能を有する。
緊急発信処理部185は、所定時間もしくは所定回数だけ緊急発信を繰り返すカウンタ(例えば、再試行タイマ)を有し、緊急発信に失敗した場合に、上記したカウンタが所定の値を示した場合、スタンドアロンGPSによる測位が途中であれば、当該スタンドアロンGPSによる測位の最大許容時間(Tsag)を越えない範囲で測位を継続させる機能を有する。
【0030】
図2、図3は、本発明の実施の形態に係る無線通信端末の動作を示すフローチャートである。以下、図2、図3に示すフローチャートを参照しながら図1に示す本発明の実施の形態に係る無線通信端末の発信動作について詳細に説明する。
【0031】
携帯電話(制御部18の主制御部180)は、まず、ユーザによる緊急発信(119番通報等、)が行われると(ステップS201)、タイマ監視部181のタイマTstart_userを初期化してスタートさせることによりタイマ監視部181によるタイマ監視を開始する(ステップS203、S204)。
また、主制御部180は、通信部11によるトラフィックチャネルの捕捉試行も開始させる。なお、緊急発信以外の発信であれば、主制御部180は通常の発信動作を行う(ステップS202)。
【0032】
同時に、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184を起動し、スタンドアロンGPSによる、基地局を使用しない自律的なGPS測位演算を行う。
すなわち、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184が位置情報を測位中でない場合(ステップS205“Yes”)、スタンドアロンGPS測位部184を起動し、通信部11を介して取得される、緯度、経度、時間に関する情報から自律的な位置情報の測位を開始する(ステップS206)。
続いて主制御部180は、逐次更新されるタイマTstart_userと、スタンドアロンGPS測位のために許容される最大時間Tsagとを比較し(ステップS207)、Tstart_user>Tsagの関係になるまで(ステップS207“Yes”)スタンドアロンGPS測位部による自立的なGPS測位を継続させる(ステップS208)。
【0033】
続いて、主制御部180は、チャネル捕捉制御部182によるトラフィックチャネル(TCH)への移行の有無(捕捉の成否)を判定する(ステップS209)。ここで、不安定な電波環境等のため正常にトラフィックチャネルの確立ができず補足に失敗した場合(ステップS209“No”)、主制御部180は、再試行タイマに設定された所定時間内、あるいは再試行カウンタに設定された所定回数内であれば(ステップS210“No”)、ステップS205の処理に戻って緊急発信処理部185による緊急発信の再試行を行い、スタンドアロンGPS測位部184による自律的な測位を継続させる。
なお、所定時間、あるいは所定回数、緊急発信を試行したにも関わらず、トラフィックチャネルを捕捉できない場合は発信の再試行を諦めて待受け状態に移行させる(ステップS211)。待受け状態における処理の流れは図4に示すフローチャートを参照しながら後述する。
【0034】
一方、ステップS209の処理にてチャネル捕捉制御部182がトラフィックチャネルへの移行に成功した場合(ステップS209“Yes”)、主制御部180は、IS801シーケンス測位部183を起動し、このことにより、IS801シーケンス測位部183は、図5に示すシーケンスAの処理を実行する(ステップS212)。
【0035】
続いて、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184に対しスタンドアロンGPSによる測位演算の終了の有無を問い合わせ、測位情報が、取得済みか否かを判定する(ステップS213)。
測位情報が取得済みの場合(ステップS213“Yes”)、主制御部180は、IS801シーケンス測位部183による図5のBシーケンスで示す動作を行わず、既に取得したスタンドアロンGPSによる測位情報を、通信部11を介して基地局宛(緊急呼出しセンタサーバ)送信する(ステップS214)。
【0036】
一方、スタンドアロンGPSによる測位情報が未取得の場合(ステップS213“No”)、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184による測位演算を停止させ、IS801シーケンス測位部183による中断している図5のBシーケンスを実行させる(図3のステップS215)。具体的には、基地局からのGPS捕捉のための情報を取得し、これを用いてGPS測位を行う。
続いて、主制御部180は、チャネル捕捉制御部182が、IS801シーケンス測位部183によるIS801シーケンスに基づく測位が終了するまでに正常にトラフィックチャネルTCHを確保したか否かを判定し(ステップS216)、トラフィックチャネルTCHを確保できていた場合(ステップS216“Yes”)、通信部11を介してその測位情報を確保したトラフィックチャネルTCHを用いて基地局(緊急呼出しセンタサーバ)へ送信する。
トラフィックチャネルTCHが確保できなかった場合(ステップS216“No”)、主制御部180は、図2のステップS211の処理に戻り、このことにより携帯電話は待受け状態に遷移する。
【0037】
上記のようにIS801シーケンスによる測位情報、あるいはスタンドアロンGPSによる測位情報を緊急呼出しセンタサーバへ送信後(それぞれ、図3のステップS216、図2のS214)、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184による自律的な測位演算を終了させるとともに(ステップS218)、タイマ監視部181を制御してタイマTstart_userを終了させ(ステップS219)、かつ、当該タイマTstart_useをクリアして上記した発信時における一連の処理を終了する(ステップS220)。
【0038】
図4は、本発明の実施の形態に係る無線通信端末の待受け時における処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、図2、図3に示すようにスタンドアロンGPS測位開始後、待受け状態に移行した場合の動作が示されている。
【0039】
一定時間、あるいは所定回数、緊急発信を試行したにも関わらず、トラフィックチャネルを捕捉できない場合、携帯電話は、発信の再試行を諦めて待受け状態に移行することは上記したとおりである。
待受け状態移行時、主制御部180は、スタンドアロンGPS測位部184に測位中か否かの問い合わせを行う(ステップS401)。
【0040】
問い合わせの結果、スタンドアロンGPS測位部184がスタンドアロンGPSによる測位を継続中であれば(ステップS401“Yes”)、主制御部180は、逐次更新されるタイマTstart_userと、スタンドアロンGPS測位のために許容される最大時間Tsagとを比較し(ステップS207)、Tsag<Tstart_userの関係になるまで(S402“Yes”)スタンドアロンGPS測位部184による自立的なGPS測位を継続させ、終了処理を行う(ステップS403)。スタンドアロンGPSによる測位が継続中でなければ(ステップS401“No”)、待受け時の処理を終了する。
スタンドアロンGPS測位部184による自律的なGPS測位終了後(ステップS403)、主制御部180は、タイマ監視部181を制御してタイマTstart_userを終了させ(ステップS404)、かつ、タイマTstart_userをクリアして上記した発信時における一連の処理を終了する(ステップS405)。
【0041】
以上説明のように本発明の実施の形態に係る無線通信端末によれば、ユーザによる緊急発信と同時にスタンドアロンGPSによる測位を開始することにより、不安定な電波状況にあってIS801シーケンスによる基地局を利用した測位ができない環境にあっても緊急呼出しセンタサーバへ位置情報を送信することができる。なお、上記した構成は、既存のIS801シーケンス測位の仕組みを変えることなく実現することができる。
【0042】
また、不安定な電波環境のためにトラフィックチャネルTCHを確保できなかった場合、制御部18は、所定時間、所定回数だけ発信動作を繰り返す(再試行)。
また、このような再試行にもかかわらずトラフィックチャネルTCHを確保できなかった場合、制御部18は、再試行による発信を諦め、携帯電話を待受け状態に移行させる。そして、制御部18は、初回発信から再試行、待受けに移行しても所定時間、あるいは位置測位が成功するまでスタンドアロンGPSによる測位を継続する。
このことにより、スタンドアロンGPSにより測位された位置情報は、次回緊急発信時に(ユーザによる継続した発信操作が予測される)、トラフィックチャネルが確保できた場合、IS801のBシーケンスに移ったときに改めて位置測位を行う必要なく、既に取得してある位置情報を緊急通報センタ宛送信することで迅速な対応が可能になる。
【0043】
なお、上記した本発明の実施の形態に係る無線通信端末によれば、無線通信端末として携帯電話のみ例示したが、同様の構成を有する、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、やゲーム機等にも同様に適用が可能である。
【0044】
また、図1に示す本発明の実施の形態に係る無線通信端末(制御部18)が有する各構成ブロックの機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。例えば、主制御部180、タイマ監視部181、チャネル捕捉制御部182、IS801シーケンス測位部183、スタンドアロンGPS測位部184、緊急発信処理部185におけるデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の発信時の動作(1)を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の発信時の動作(1)を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の待受け時の動作を示すフローチャートである。
【図5】IS801規格に基づく緊急発信時の初回測位シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
11…通信部、12…操作部、13…音声処理部、14…スピーカ(SP)、15…マイクロフォン(MIC)、16…表示部、17…記憶部、18…制御部、180…主制御部、181…タイマ監視部、182…チャネル捕捉制御部、183…IS801シーケンス測位部、184…スタンドアロンGPS測位部、185…緊急発信処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急発信時に基地局との間でトラフィックチャネルを確保し、IS801規格に基づき前記基地局宛測位情報を送信する無線通信端末であって、
前記基地局との間でトラフィックチャネルを捕捉する通信部と、
基地局を介さずに測位を行うスタンドアロンGPS部と、
緊急発信時、前記スタンドアロンGPS部、またはIS801規格に基づく測位を行い、前記通信部により前記基地局へ測位情報を送信させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
緊急発信が行われると、前記スタンドアロンGPS部による測位を開始するとともに前記通信部を制御してトラフィックチャネルの捕捉試行を行い、
前記トラフィックチャネルの確保が先であれば前記スタンドアロンGPS部による測位を止めて前記IS801規格に基づく測位に変更し、前記スタンドアロンGPS部による測位情報取得が先であれば前記確保したトラフィックチャネルにて前記取得した位置情報を基地局宛送信する
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記制御部は、
緊急発信に基づくトラフィックチャネルの確保に失敗すると、所定時間、もしくは所定回数だけ緊急発信を繰り返しつつ、その間前記スタンドアロンGPS部による測位を継続し、当該スタンドアロンGPSによる測位と前記IS801規格に基づく測位のいずれが先に測位を完了するかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、
所定時間もしくは所定回数だけ緊急発信を繰り返すカウンタを有し、前記緊急発信に失敗した場合に前記カウンタが所定の値を示した場合、前記スタンドアロンGPS部による測位が途中であれば、当該スタンドアロンGPS部による測位の最大許容時間を越えない範囲で測位を継続する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60281(P2009−60281A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224689(P2007−224689)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】