説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】同一キャリア周波数を用いて同時に送信と受信を行う無線通信において、信号飽和の影響を軽減する。
【解決手段】無線通信の送受信を行う無線通信装置100において、受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる回り込み干渉信号電力抑圧部103と、回り込み干渉信号電力抑圧部103から出力された信号に含まれる回り込み干渉信号を除去する、アナログ領域の回り込み干渉信号除去機能及び/又はデジタル領域の回り込み干渉信号除去機能を有する送受信部104とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一キャリア周波数を用いて同時に送信と受信を行う無線通信装置及び無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信におけるTDD方式では、送信と受信で同一のRF(RadioFrequency)キャリア周波数を用い、送信と受信で異なる時間的な割当(タイムスロット)を用いることにより混信を防ぐが、周波数利用効率の向上を目的として、同一タイムスロットを用いて送信と受信を同時に行う方法が、下記の特許文献1により開示されている。
【0003】
この場合、サーキュレータの不完全性により送信RF信号処理部からの信号が受信RF信号処理部に漏れ込んでしまい干渉を生じる。また、アンテナから送信された送信信号が、反射・回折等の伝搬路の影響を受けて同一のアンテナで受信されることにより干渉を生じる。これらの干渉は「回り込み干渉」と呼ばれる。無線機では、当該無線機に向けて他の無線機から送信された希望信号と上記の回り込み干渉信号とが重畳された信号を用いて、希望信号を検出する必要があるが、回り込み干渉信号の電力が大きい場合、希望信号を正しく検出することができなくなる。特に、サーキュレータの不完全性に起因する回り込み干渉の影響は、アンテナから一旦送信された後に再度受信されてしまうことにより生じる回り込み干渉の影響に比較して非常に大きくなる。
【0004】
このため、特許文献1の方法では、回り込み干渉信号除去機能を有する無線通信装置を用いて、ベースバンドのデジタル領域において干渉除去を行う方法が示されている。
【0005】
また、これらの干渉を除去する別の無線通信装置としては、ブースタとして記載されている回り込み干渉信号除去機能を有する無線通信装置が利用可能である。下記の非特許文献1、2には、アナログ領域であるRF帯での干渉除去と、デジタル領域であるベースバンド帯での干渉除去とを同時に行うことを特徴とする無線呼出し方式用のブースタが記載され、非特許文献3にはIF帯またはベースバンド帯で干渉除去を行う地上デジタル放送用のブースタが記載され、さらに非特許文献4にはRF帯のみにおいて干渉キャンセルを行うCDMA信号用のブースタが記載されている。
【特許文献1】米国公開特許公報2004/0142700
【非特許文献1】鈴木、恵比根、“無線呼出方式用開空間ブースタ装置の構成と特性、”1996年電子情報通信学会総合大会、B-428、pp.428, 1996年3月
【非特許文献2】H. Suzuki, K. Itoh, Y. Ebine, M. Sato, “A booster configuration withadaptive reduction of transmitter-receiver antenna coupling for pager systems”,Proc. of 50th IEEE Vehicular Technology Conference, VTC 1999-Fall, vol.3, pp. 1516-1520, Sept. 1999
【非特許文献3】今村、濱住、渋谷、佐々木、“地上デジタル放送SFNにおける放送波中継用回り込みキャンセラの基礎検討”、映像情報メディア学会誌、vol. 54, No. 11, pp.1568-1575, 2000年
【非特許文献4】前山、井上、上村、大和、“干渉波抑圧機能を搭載したCDMA用リピータ装置の開発”、2002年電子情報通信学会総合大会、B-5-62、pp. 512, 2002年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術にかかる無線通信装置は、以下に示すような問題点があった。すなわち、上記従来の無線通信装置においては、本来受信すべき希望信号と回り込み干渉信号とが重畳されたアナログ領域の信号が、回り込み干渉信号除去機能を有する無線通信装置の受信RF信号処理部において処理される。受信RF信号処理部における信号増幅部、フィルタリング部、周波数変換部(ダウンコンバート部)は、それぞれが正しく動作するための入力電力の大きさには制限値があるために、回り込み干渉信号の電力が希望信号の電力に比較して非常に大きい場合には、入力電力が上記の制限値を超えてしまい信号が飽和してしまう。その結果、信号増幅部、フィルタリング部、周波数変換部等の受信RF信号処理部内において信号波形が大きく歪んでしまう。このとき、入力電力の大きさが上記の制限値に比べて大きいほど信号飽和の影響が大きくなり、信号波形はより大きく歪んでしまう。
【0007】
また、上記非特許文献1、2で示されるように、受信RF信号処理部の前にアナログ領域において干渉除去を行うことにより、受信RF信号処理部での信号飽和の影響を軽減することができるが、この場合においても、アナログ領域における干渉除去部が正しく動作するための入力電力の大きさに制限値があるために、当該制限値を超える信号がアナログ領域における干渉除去部に入力してしまうと信号が飽和してしまう。このような信号飽和の影響により信号波形が歪んでしまった場合、アナログ領域であるRF帯や、デジタル領域におけるベースバンド帯にて干渉除去を行っても、十分な干渉除去特性が得られないため、希望信号の検出特性が大きく劣化してしまう。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決し、同一キャリア周波数を用いて同時に送信と受信を行う無線通信において、信号飽和の影響を軽減することができる無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、無線通信の送受信を行う無線通信装置であって、受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる回り込み干渉信号電力抑圧部と、前記回り込み干渉信号電力抑圧部から出力された信号に含まれる回り込み干渉信号を除去する、アナログ領域の回り込み干渉信号除去機能及び/又はデジタル領域の回り込み干渉信号除去機能を有する送受信部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記の構成により、希望信号と回り込み干渉信号とが重畳された信号の電力を、回り込み干渉信号電力抑圧部において減衰させることにより、送受信部において信号飽和の影響を軽減することができる。また、送受信部において、例えば、アナログ領域における適応干渉キャンセラを用いる場合には、当該適応干渉キャンセルでの信号飽和の影響を軽減することができる。
【0011】
また、本発明に係る無線通信装置では、送受信部が、送信ベースバンド信号処理部と受信ベースバンド信号処理部とを含むベースバンド信号処理部を有し、当該ベースバンド信号処理部が、送信ベースバンド信号処理部からの出力が受信ベースバンド信号処理部に入力されるよう構成とすることが望ましい。即ち、送信ベースバンド信号処理部は、受信ベースバンド信号処理部から入力されたデータを用いて送信信号を生成する。これにより、本発明に係る無線通信装置をTDD方式におけるブースタとして用いることができ、回り込み干渉信号に起因する信号飽和の影響を軽減することができる。
【0012】
また、本発明に係る無線通信装置では、送受信部が送信RF信号処理部と受信RF信号処理部とをさらに有し、当該無線通信装置が、回り込み干渉信号電力抑圧部により減衰される信号電力の大きさ、送信RF信号処理部における出力電力の大きさ、受信RF信号処理部における出力電力の大きさ、及びベースバンド信号処理部における出力の大きさ、のうち少なくとも一つを対象とした制御を行う抑圧電力制御部をさらに備え、当該抑圧電力制御部が、送信RF信号処理部の出力電力の大きさ、受信RF信号処理部の出力電力の大きさ、及びベースバンド信号処理部における出力の大きさ、のうち少なくとも一つに応じて制御を行う構成とすることが望ましい。この構成により、送信RF信号処理部、受信RF信号処理部、ベースバンド信号処理部といった信号処理部それぞれにより異なる許容可能な電力に応じた出力の大きさの制御が可能となるために、信号飽和の影響をさらに軽減することができる。
【0013】
また、本発明に係る無線通信装置は、送受信部によるアナログ領域の干渉除去後の出力信号を用いて受信電力変動速度を検出する受信電力変動検出部と、送受信部によるデジタル領域の干渉除去後の出力信号電力における残留干渉信号電力の比率を検出する残留干渉信号電力検出部と、受信電力変動検出部により検出された受信電力変動速度が所定の基準値以上か否か、及び、残留干渉信号電力検出部により検出された残留干渉信号電力の比率が所定の基準比率以上か否か、のうち少なくとも一方に基づいて、送信ベースバンド信号処理部からの送信の可否を決定する送信許可/不許可決定部と、をさらに備え、送信ベースバンド信号処理部は、送信許可/不許可決定部により決定された送信可否の結果に応じて、信号の送信の実行/停止を制御する構成とすることが望ましい。この構成により、受信電力の変動速度と残留干渉信号電力の比率のうち少なくとも一方に応じて、信号送信の可否を決定することができる。このため、信号飽和の影響が大きく十分な干渉除去特性が得られないような状況では、送信を許可しないと決定し、信号の送信を停止することができる。このようにして、希望信号の信号検出特性の劣化を防ぐことができる。
【0014】
上記問題点を解決するために、本発明に係る無線通信方法は、無線通信の送受信を行う無線通信装置における無線通信方法であって、受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる回り込み干渉信号電力抑圧ステップと、回り込み干渉信号電力抑圧ステップによる出力信号に含まれる回り込み干渉信号を除去するために、アナログ領域の回り込み干渉信号除去処理及び/又はデジタル領域の回り込み干渉信号除去処理を行う回り込み干渉信号除去ステップと、を備えたことを特徴とする。これにより、希望信号と回り込み干渉信号とが重畳された信号の電力を減衰させることにより、回り込み干渉信号除去ステップにおける信号飽和の影響を軽減することができる。
【0015】
また、本発明に係る無線通信方法は、回り込み干渉信号電力抑圧ステップにおいて減衰させる信号電力の大きさ、回り込み干渉信号除去ステップにおける送信RF信号処理後の出力電力の大きさ、回り込み干渉信号除去ステップにおける受信RF信号処理後の出力電力の大きさ、及び、回り込み干渉信号除去ステップにおけるベースバンド信号処理後の出力の大きさ、のうち少なくとも一つを対象とした制御を行う抑圧電力制御ステップをさらに備え、当該抑圧電力制御ステップでは、送信RF信号処理後の出力電力の大きさ、受信RF信号処理後の出力電力の大きさ、及びベースバンド信号処理後の出力の大きさ、のうち少なくとも一つに応じて、上記の制御が行われる構成とすることが望ましい。これにより、送信RF信号処理、受信RF信号処理、ベースバンド信号処理といった信号処理それぞれにより異なる許容可能な電力に応じた出力電力の大きさの制御が可能となるために、信号飽和の影響をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無線通信装置及び無線通信方法によれば、同一キャリア周波数を用いて同時に送信と受信を行う無線通信において、信号飽和の影響を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態にかかる無線通信装置について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。図1は本無線通信装置のハードウェア構成図である。無線通信装置100は、物理的には、図1に示すように、アンテナ101と、サーキュレータ102と、回り込み干渉信号電力抑圧部103と、回り込み干渉除去機能を有する送受信部104とを含んで構成される。ここで、送受信部104はアナログ信号処理部110とデジタル信号処理部120とを含んで構成され、アナログ信号処理部110はアナログ領域の干渉キャンセル部111と、受信RF信号処理部114と、送信RF信号処理部115と、A/D変換部116と、D/A変換部117とを含んで構成される。また、アナログ領域の干渉キャンセル部111は、干渉除去用アナログ信号生成部112と、アナログ領域の干渉信号除去部113とを含んで構成される。一方、デジタル信号処理部120は、入力インタフェース121と、出力インタフェース122と、CPU123と、主記憶装置であるRAM124及びROM125と、ハードディスク等の補助記憶装置126とを含んで構成される。
【0019】
本構成において、回り込み干渉信号電力抑圧部103は、アンテナ101において受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる。また、回り込み干渉除去機能を有する送受信部104は、信号電力が減衰された受信信号に含まれる回り込み干渉信号を干渉キャンセル部111において除去する。このように、回り込み干渉信号電力抑圧部103が信号電力を減衰させることにより、後続する干渉キャンセル部111における信号飽和の影響を軽減することができる。その結果、アナログ領域の回り込み干渉信号の除去特性を改善することができる。
【0020】
図2は本実施形態におけるデジタル信号処理部120における機能ブロック図を示す。デジタル信号処理部120は、デジタル領域の干渉キャンセル部1201とベースバンド信号処理部1204とを含んで構成され、このうち干渉キャンセル部1201は干渉除去用デジタル信号生成部1202とデジタル領域の干渉信号除去部1203とを含んで構成され、ベースバンド信号処理部1204は受信ベースバンド信号処理部1205と送信ベースバンド信号処理部1206とを含んで構成される。上記の干渉キャンセル部1201は、A/D変換部116によりデジタル信号に変換された信号に残留して含まれる回り込み干渉信号成分を除去する。このとき干渉キャンセル部1201は、送信ベースバンド信号処理部1206の出力信号を用いて干渉除去用デジタル信号生成部1202によって生成された信号を、A/D変換部116の出力信号から差し引くことにより、上記の除去を行う。ここで、アナログ信号処理部110における信号飽和の影響により、デジタル領域における回り込み干渉信号除去特性は大きく異なるが、回り込み干渉信号電力抑圧部103において信号電力を減衰させることにより、デジタル領域の回り込み干渉信号の除去特性を改善することができる。
【0021】
続いて、本実施形態にかかる無線通信装置の動作及び無線通信方法について説明する。図3は、本実施形態にかかる無線通信装置において送受信を行う手順を示す図である。
【0022】
送信ベースバンド信号処理部1206は、図3のステップS100において、送信を行う信号を発生する。送信ベースバンド信号処理部1206の出力は、干渉除去用デジタル信号生成部1202に入力されるとともに、D/A変換部117に入力される。D/A変換部117に入力された信号は、ステップS101においてアナログ信号に変換され送信RF信号処理部115に入力される。その後、ステップS102において、送信RF信号処理部115において、アンプによる信号増幅、フィルタによる帯域制限、アップコンバータによる周波数変換によりRF帯のアナログ信号に変換され、変換後の信号が、干渉除去用アナログ信号生成部112に入力されるとともに、サーキュレータ102に入力される。サーキュレータ102に入力された信号は、ステップS103において、アンテナ101を介して送信される。ここで、サーキュレータ102のアイソレーション特性の不完全性により、サーキュレータ102に入力された信号の一部は、回り込み干渉信号電力抑圧部103に供給されてしまい回り込み干渉信号となる。当該無線機100に向けて他の無線機から送信された希望信号と、ステップS103により送信された信号の回り込み干渉信号が、アンテナ101により受信され、ステップS104によって回り込み干渉信号抑圧部103に供給される。回り込み干渉信号電力抑圧部103は、アナログ信号処理部110における信号の飽和の影響を軽減するために、ステップS105において信号電力を減衰させた後に、アナログ領域の干渉信号除去部113に信号を入力する。アナログ領域の干渉信号除去部113は、ステップS106において干渉除去用アナログ信号生成部112において生成された信号を用いて、ステップS107において干渉除去を行う。ここで、干渉除去用アナログ信号生成部112は、ステップS102において生成された送信RF信号処理部115の出力信号を用いて干渉除去用のアナログ信号を生成する。アナログ領域における干渉除去後の信号は受信RF信号処理部114に入力され、受信RF信号処理部114は、ステップS108においてアンプによる信号増幅、フィルタによる帯域制限、ダウンコンバータによる周波数変換等を行う。ステップS108の処理後の信号は、その後、A/D変換部116に入力され、ステップS109において、A/D変換部116によってデジタル信号に変換され、変換後の信号は、デジタル領域の干渉信号除去部1203に入力される。デジタル領域の干渉信号除去部1203は、ステップS110において干渉除去用デジタル信号生成部1202により生成された信号を用いて、ステップS111において干渉除去を行う。ここで、干渉除去用デジタル信号生成部1202は、ステップS100において送信ベースバンド信号処理部1206において生成された信号を用いて、デジタル領域における干渉除去用の信号を発生させる。デジタル領域の干渉信号除去部1203により干渉除去が行われた信号は、ステップS112において受信ベースバンド信号処理部1205に入力され、希望信号の検出が行われる。
【0023】
上述のように、ステップS105において回り込み干渉信号電力を抑圧するために信号電力を減衰させることで、ステップS107におけるアナログ領域における回り込み干渉信号の除去、及びステップS111におけるデジタル領域における回り込み干渉信号の除去における信号飽和の影響を軽減する。
【0024】
ここで、上記では、受信された信号における回り込み干渉信号電力を抑圧させるために、受信時に信号電力を減衰される方法を示したが、希望信号の送信信号を増大させることで、相対的に回り込み干渉信号電力を抑圧させることができるため、ステップS105は、希望信号の送信信号を増大させることとしてもよい。
【0025】
続いて、本実施形態にかかる無線通信装置100の効果について説明する。本実施形態にかかる無線通信装置においては、回り込み干渉信号電力抑圧部103が信号電力を減衰させることにより、アナログ領域における干渉キャンセラ111及び受信RF信号処理部114が受ける、回り込み干渉信号に起因して生じる信号飽和の影響を軽減することができる。
【0026】
以下、上述の無線通信装置の構成の変形例について説明する。上述の無線通信装置構成の例では、図1に示されるように、回り込み干渉信号電力抑圧部103が、サーキュレータ102と干渉キャンセル部111の間に設けられる構成について説明したが、図4に示すように、回り込み干渉信号電力抑圧部103が干渉キャンセル部111と受信RF信号処理部114の間に設けられる構成としても良い。この場合、回り込み干渉信号電力抑圧部103は、干渉キャンセル部111において回り込み干渉信号が除去された信号の電力を減衰させることにより、後続する受信RF信号処理部114及びA/D変換部116における信号飽和の影響を軽減することができる。
【0027】
また、図5に示すように、回り込み干渉信号電力抑圧部103が、受信RF信号処理部114とA/D変換部116の間に設けられる構成としても良い。この場合も同様に、回り込み干渉信号電力抑圧部103が信号電力を減衰させることにより、A/D変換部116が受ける信号飽和の影響を軽減することができる。同様にして、回り込み干渉信号電力抑圧部103は受信RF信号処理部114内における任意の箇所に設けてもよい。
【0028】
以上のように、無線通信装置100の構成において、回り込み干渉信号電力抑圧部103を、サーキュレータ102とA/D変換部116の間のいずれかの箇所に設けることで、信号飽和の影響を軽減させることができる。
【0029】
さらに、同様にして、上述の無線通信用送受信方法においては、図3に示すように、ステップS104により回り込み信号電力抑圧部103に供給された信号を対象として、ステップS105にて信号電力を減衰させる方法について説明したが、図6に示すように、ステップS107においてアナログ領域の干渉除去が行われた信号を対象として、ステップS105にて信号電力を減衰させても良い。これにより、ステップS108以降における信号飽和の影響を軽減することができる。
【0030】
また、図7に示すように、ステップS108において受信RF信号処理後の信号を対象として、ステップS105にて信号電力を減衰させても良い。これにより、A/D変換(ステップS109)に対する信号飽和の影響を軽減することができる。同様にして、ステップS105による信号電力の減衰処理は、ステップS108における受信RF信号処理内のいずれかの段階で行うこととしても良い。
【0031】
以上のように、本無線通信方法において、ステップS105による信号電力の減衰処理は、ステップS104とステップS109の間のいずれかにおいて実行することにより、信号飽和の影響を軽減することができる。
【0032】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。本実施形態における無線通信装置の構成は、図1に示される第1実施形態における無線通信装置の構成と同一であるが、本実施形態では、デジタル信号処理部120における機能ブロックが第1実施形態とは異なる。本実施形態のデジタル信号処理部120における機能ブロック図を図8に示す。本実施形態では、ベースバンド信号処理部1204は、受信ベースバンド信号処理部1205における出力信号を、送信ベースバンド信号処理部1206の入力信号として用いる。
【0033】
第2実施形態における無線通信装置の動作について説明する。図9は第2実施形態にかかる無線通信装置において送受信を行う手順を示す図である。上述のように、ベースバンド信号処理部1204は、ステップS200において、受信ベースバンド信号処理部1205における出力信号を、送信ベースバンド信号処理部1206の入力信号として用いる。これにより、無線通信装置200をTDD方式におけるブースタとして用いることができ、回り込み干渉信号電力抑圧部103が信号を減衰させることにより、TDD方式のブースタとして無線通信装置200を用いた場合における問題点、即ち、回り込み干渉信号に起因して生じる信号飽和の影響を低減することができる。
【0034】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。本実施形態における無線通信装置のハードウェア構成を図10に示す。本実施形態における無線通信装置300は、図1に示される第1実施形態における無線通信装置100の構成に、抑圧電力制御部301をさらに備えることを特徴とする。本構成において抑圧電力制御部301は、現在の受信RF信号処理部114の出力、現在の送信RF信号処理部115の出力、現在のデジタル信号処理部120の出力、の少なくとも一つに応じて、回り込み干渉信号電力抑圧部103における信号の減衰量、受信RF信号処理部114における出力信号の大きさ、送信RF信号処理部115における出力信号の大きさ、デジタル信号処理部120における出力の大きさの少なくとも一つ制御する。
【0035】
本実施形態におけるデジタル信号処理部120の機能ブロック図について図11に示す。デジタル信号処理部120の構成は、第1実施形態と同等であるが、ベースバンド信号処理部1204の出力が、抑圧電力制御部301に入力され、抑圧電力制御部301は制御後にベースバンド信号処理部1204が適用する出力の大きさを決定し、その結果に基づいて、ベースバンド信号処理部1204は送信ベースバンド信号処理部1206の出力の大きさを制御する点が、第1実施形態とは異なる。
【0036】
続いて、本実施形態にかかる無線通信装置300の動作及び無線通信方法について説明する。図12は、本実施形態にかかる無線通信装置300において送受信を行う手順を示す図である。
【0037】
本実施形態にかかる無線通信用送受信方法は、第1実施形態で示される図3の手順に加えて、ステップS300〜S302、S310〜S312、S320、S321を備えることを特徴とする。
【0038】
まず、ステップS300では、送信RF信号処理部115における現在の出力信号の大きさが抑圧電力制御部301に入力されると同時に、ステップS301において、受信RF信号処理部114における現在の出力信号の大きさが抑圧電力制御部301に入力され、ステップS302において、ベースバンド信号処理1204における送信ベースバンド信号処理部1206の出力の大きさが抑圧電力制御部301に入力される。
【0039】
抑圧電力制御部301は、ステップS320において、信号飽和の影響を軽減するための、回り込み干渉信号電力抑圧部103における信号の減衰量、送信RF信号処理部115の出力信号の大きさ、受信RF信号処理部114の出力信号の大きさ、ベースバンド信号処理部1204の出力の大きさを決定する。そして、抑圧電力制御部301は、上記決定された信号減衰量を回り込み干渉信号電力抑圧部103に通知する(ステップS321)とともに、決定された出力の大きさを、送信RF信号処理部115と受信RF信号処理部114とベースバンド信号処理部1204のそれぞれに通知する(ステップS310、S311、S312)。その後、回り込み干渉信号電力抑圧部103は、上記通知された値を用いて信号を減衰させるとともに、送信RF信号処理部115、受信RF信号処理部114、ベースバンド信号処理部1204の各々は、上記通知された出力の大きさで信号を出力する。
【0040】
なお、ここで、ステップS300〜S302について、上述ではステップS300〜S302の全てが実行される例について示したが、ステップS300〜S302のうち少なくとも一つのステップが実行されれば良い。また、ステップS310〜S312、S321についても同様に、これら全てのステップが実行される例について示したが、ステップS310〜S312、S321のうち少なくとも一つのステップが実行されれば良い。
【0041】
以上により、アナログ領域の各信号処理部によって異なる許容可能な電力に応じた出力電力の大きさの制御が可能となるために、信号飽和の影響をさらに軽減することができる。
【0042】
[第4実施形態]
続いて、本発明の第4実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。本実施形態における無線通信装置のハードウェア構成を図13に示す。本実施形態における無線通信装置400は、図1に示される第1実施形態における無線通信装置100の構成に、受信電力変動検出部401をさらに備えることを特徴とする。本構成において受信電力変動検出部401は、受信電力の変動速度を検出する機能を有する。これは、受信電力の変動が速い場合には良好な干渉除去特性が得られないために、無線装置400からの信号送信を停止させることを目的とする。受信電力変動検出部401の出力は、デジタル信号処理部120に入力され、デジタル信号処理部120によって信号送信の可否が決定される。
【0043】
本実施形態におけるデジタル信号処理部120の機能ブロック図を図14に示す。デジタル信号処理部120の構成は、図2に示される第1実施形態における機能ブロックに加えて、残留干渉信号電力検出部410と送信許可/不許可決定部411とをさらに含んで構成されることを特徴とする。残留干渉信号電力検出部410は、デジタル領域の干渉除去後の出力信号における残留干渉信号の電力の比率を検出する。残留干渉信号電力検出部410により検出された残留干渉信号の電力の比率は、送信許可/不許可決定部411に入力される。送信許可/不許可決定部411は、受信電力変動検出部401により検出された受信電力変動速度が所定の基準値以上か否か、及び、残留干渉信号電力検出部410により検出された残留干渉信号の電力の比率が所定の基準比率以上か否かに基づいて、送信ベースバンド信号処理部1206から信号送信を行うか行わないかを決定し、その結果をベースバンド信号処理部1204に入力する。
【0044】
続いて、本実施形態にかかる無線通信装置400の動作及び無線通信方法について説明する。図15は、本実施形態にかかる無線通信装置において送受信を行う手順を示す図である。
【0045】
本実施形態にかかる手順は、第1実施形態で示される図3の手順に加えて、ステップS400〜S402をさらに備えることを特徴とする。ステップS400ではS107において、アナログ領域の干渉除去が行われた信号を用いて受信電力の変動速度を検出する。ここで、ステップS400における受信電力の変動速度の検出時においては、アナログ領域の干渉除去前の信号を用いても良いし、受信RF信号処理部114内の各処理におけるどの段階の信号を用いても良い。
【0046】
次に、ステップS401においては、デジタル領域の干渉除去後の出力信号から、残留干渉信号電力検出部410において、残留する残留干渉信号の電力を検出し、上記デジタル領域の干渉除去後の出力信号における残留干渉信号の電力比率を検出する。
【0047】
そして、S402では、送信許可/不許可決定部411が、ステップS400により検出された受信電力変動速度が所定の基準値以上か否かを判断するとともに、S401により検出された残留干渉信号の電力比率が所定の基準比率以上か否かを判断する。ここで、送信許可/不許可決定部411は、受信電力変動速度が所定の基準値以上であるか、又は、残留干渉信号の電力比率が所定の基準比率以上である場合、送信ベースバンド信号処理部1206からの送信は不可と決定し、受信電力変動速度が所定の基準値未満であり、且つ、残留干渉信号の電力比率が所定の基準比率未満である場合、送信ベースバンド信号処理部1206からの送信は可能と決定する。そして、送信許可/不許可決定部411は、当該決定結果をベースバンド信号処理部1204に出力する。
【0048】
上記の動作を行うことにより、受信電力変動速度が所定の基準値以上に高い場合、及び、残留干渉信号の電力比率が所定の基準比率以上に高い場合に、無線通信装置400からの送信を停止するよう制御できる。これにより、信号飽和の影響を軽減し、受信ベースバンド信号処理部1205における希望信号の検出特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る無線通信装置のハードブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るデジタル信号処理部の機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る無線通信装置の動作手順を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る無線通信装置のハードブロック図の第1変形例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る無線通信装置のハードブロック図の第2変形例を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る無線通信装置の動作手順の第1変形例を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る無線通信装置の動作手順の第2変形例を示す図である。
【図8】第2実施形態に係るデジタル信号処理部の機能ブロック図である。
【図9】第2実施形態に係る無線通信装置の動作手順を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態に係る無線通信装置のハードブロック図である。
【図11】第3実施形態に係るデジタル信号処理部の機能ブロック図である。
【図12】第3実施形態に係る無線通信装置の動作手順を示すブロック図である。
【図13】第4実施形態に係る無線通信装置のハードブロック図である。
【図14】第4実施形態に係るデジタル信号処理部の機能ブロック図である。
【図15】第4実施形態に係る無線通信装置の動作手順を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
100…無線通信装置、101…アンテナ、102…サーキュレータ、103…回り込み干渉信号電力抑圧部、104…送受信部、110…アナログ信号処理部、111…干渉キャンセル部、112…干渉除去用アナログ信号生成部、113…アナログ領域の干渉信号除去部、114…受信RF信号処理部、115…送信RF信号処理部、116…A/D変換部、117…D/A変換部、120…デジタル信号処理部、121…入力インタフェース、122…出力インタフェース、123…CPU、124…RAM、125…ROM、126…HD、200…無線通信装置、300…無線通信装置、301…抑圧電力制御部、302…入出力インタフェース、400…無線通信装置、401…受信電力変動検出部、402…入力インタフェース、410…残留干渉信号電力検出部、411…送信許可/不許可決定部、1201…干渉キャンセル部、1202…干渉除去用デジタル信号生成部、1203…干渉信号除去部、1204…ベースバンド信号処理部、1205…受信ベースバンド信号処理部、1206…送信ベースバンド信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信の送受信を行う無線通信装置であって、
受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる回り込み干渉信号電力抑圧部と、
前記回り込み干渉信号電力抑圧部から出力された信号に含まれる回り込み干渉信号を除去する、アナログ領域の回り込み干渉信号除去機能及び/又はデジタル領域の回り込み干渉信号除去機能を有する送受信部と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送受信部は、送信ベースバンド信号処理部と受信ベースバンド信号処理部とを含むベースバンド信号処理部を有し、
前記ベースバンド信号処理部は、前記送信ベースバンド信号処理部からの出力が前記受信ベースバンド信号処理部に入力されるよう構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送受信部は、送信RF信号処理部と受信RF信号処理部とをさらに有し、
前記無線通信装置は、前記回り込み干渉信号電力抑圧部により減衰される信号電力の大きさ、前記送信RF信号処理部における出力電力の大きさ、前記受信RF信号処理部における出力電力の大きさ、及び前記ベースバンド信号処理部における出力の大きさ、のうち少なくとも一つを対象とした制御を行う抑圧電力制御部をさらに備え、
当該抑圧電力制御部は、前記送信RF信号処理部の出力電力の大きさ、前記受信RF信号処理部の出力電力の大きさ、及び前記ベースバンド信号処理部における出力の大きさ、のうち少なくとも一つに応じて、前記制御を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記無線通信装置は、
前記送受信部によるアナログ領域の干渉除去後の出力信号を用いて受信電力変動速度を検出する受信電力変動検出部と、
前記送受信部によるデジタル領域の干渉除去後の出力信号電力における残留干渉信号電力の比率を検出する残留干渉信号電力検出部と、
前記受信電力変動検出部により検出された受信電力変動速度が所定の基準値以上か否か、及び、前記残留干渉信号電力検出部により検出された残留干渉信号電力の比率が所定の基準比率以上か否か、のうち少なくとも一方に基づいて、前記送信ベースバンド信号処理部からの送信の可否を決定する送信許可/不許可決定部と、
をさらに備え、
前記送信ベースバンド信号処理部は、前記送信許可/不許可決定部により決定された送信可否の結果に応じて、信号の送信の実行/停止を制御する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
無線通信の送受信を行う無線通信装置における無線通信方法であって、
受信される信号に含まれる回り込み干渉信号電力を抑圧するために、当該受信される信号の信号電力を減衰させる回り込み干渉信号電力抑圧ステップと、
前記回り込み干渉信号電力抑圧ステップ後の出力信号に含まれる回り込み干渉信号を除去するために、アナログ領域の回り込み干渉信号除去処理及び/又はデジタル領域の回り込み干渉信号除去処理を行う回り込み干渉信号除去ステップと、
を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
前記無線通信方法は、
前記回り込み干渉信号電力抑圧ステップにおいて減衰させる信号電力の大きさ、前記回り込み干渉信号除去ステップにおける送信RF信号処理後の出力電力の大きさ、前記回り込み干渉信号除去ステップにおける受信RF信号処理後の出力電力の大きさ、及び、前記回り込み干渉信号除去ステップにおけるベースバンド信号処理後の出力の大きさ、のうち少なくとも一つを対象とした制御を行う抑圧電力制御ステップをさらに備え、
当該抑圧電力制御ステップでは、前記送信RF信号処理後の出力電力の大きさ、前記受信RF信号処理後の出力電力の大きさ、及び前記ベースバンド信号処理後の出力の大きさ、のうち少なくとも一つに応じて、前記制御が行われる、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−274390(P2007−274390A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98202(P2006−98202)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】