説明

無線通信装置

【課題】LNAの飽和を防ぎ、また、受信信号の受信率を向上させ、無線局の設置場所を最小限とする。
【解決手段】無線局1は、それぞれがアンテナANT1〜ANTnを有する複数の送受信部2−1〜2−nを備えている。各送受信部2−1〜2−nのアンテナANT1〜ANTnとしては、ダイポールアンテナを用いている。アンテナANT1〜ANTnは、水平方向に対しては、全方向に指向性があり(無指向)、すなわち、垂直面方向には指向性が少ない放射パターンを有する。このアンテナANT1〜ANTnを、垂直面方向に複数本配置してアンテナ群3を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの無線チャネルを使用してTDD(Time Division Duplex:時分割複信方式)で通信する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1つの無線チャネルを使用してTDDで通信を実現する無線LAN(Local Area Network)においては、図19に示すように、アンテナ、RF(Radio Frequency)フィルタ、送信/受信切替えスイッチ、LNA(Low Noise Amplifier)、PA(Power Amplifier)およびMOD(Modulation)/DEM(Demodulation)(変復調器)を備えた、複数の送受信部1−1〜1−nを、図20(a)、(b)に示すように、具備した無線局100が運営されている場合、もしくは、図20(c)に示すように、非常に近い場所に異なる無線チャネル(周波数)で運用されている1つの送受信部1−1、1−2、…、1−nを具備した無線局102−1、102−2、…、102−nが複数設置され運営されている場合がある。いずれの場合においても、複数の送受信部1−1〜1−nに異なるチャネルを割り当て同時に通信が可能となり、通信容量の増加を図ることが期待できる。
【0003】
このような構成を実現する技術として、複数チャネルを用いた無線アドホックネットワークや、複数ノードにおける無線ネットワークについての技術が提案されている(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
【非特許文献1】水野 他、「自己増殖的マルチホップ無線ネットワークにおけるネットワーク最適化アルゴリズムの評価に関する一検討」電子情報通信学会、2003年総合大会、B−5−308
【非特許文献2】Katayama, M., Mizuno, K., Nakayama, M., Shimizu, M., “A multi-protocol wireless multi-hop network employing a new efficient hybrid routing scheme” Vehicular Technology conference, 2003. VTC 2003-Spring. The 57th IEEE Semiannual, Volume 3, 22-25 April 2003 Page(s):2013-2017 vol.3.
【非特許文献3】張 兵 他、「ワイヤレスメッシュネットワークにおけるペアワイズチャネル割当方法に関する検討」、4−1〜4−4、第3回アドホックネットワーク・ワークショップ講演予稿集、2006年1月23、24日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来技術では、アンテナANT1〜ANTnの配置のことは考慮されていない。アンテナANT1〜ANTnの配置を考慮した場合、従来技術では、アンテナ間距離が近いことから、図21に示すように、互いの送受信部2−1〜2−nが送出した信号が他の無線機能部で受信されるために相互に干渉源となってしまうという問題がある。本要因は、無線システムとして使用する無線チャネルを全て送受信できるように、図22に示すように、全チャネルをRFフィルタにより受信し、ダイナミックレンジの狭いLNAを使用するような無線機器(例えば、汎用的かつ安価なIEEE802.11の無線LANモジュール等)の場合、LNA前段の帯域通過フィルタで異なるチャネルの信号も受信してしまうためである。このため、非常に近い距離から発せられた信号により、LNA自体が飽和してしまい、本来受信したい信号に誤りが生じてしまうという問題がある。
【0005】
また、各送受信部2−1〜2−nに接続されたアンテナANT1〜ANTnを相互にLNAが飽和しない程度に離して設置しようとすると、無線局設置のためにより広い場所が必要となり、アンテナANT1〜ANTnを離すことでアンテナと送受信機との間の信号ロスも大きくなってしまうという問題がある。さらに、隣接チャネル間の干渉量も非常に近いアンテナからの信号であるため、本来受信したい無線局からの信号に比べ大きくなってしまうことから、所望のDU比(Desired to undesired ratio:希望波対非希望波電力比)が確保できなくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させ、LNAの飽和を防ぐことができ、また、チャネル間干渉を抑えることにより、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、2つ以上の複数の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段と、前記Nセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるN個のアンテナとを具備し、前記N個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、前記複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、前記無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局からなり、前記N個の無線局に備えられるN個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、2つ以上の異なるN個の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段と、前記Nセットの無線信号送受信手段の間を接続し、いずれかの無線信号送受信手段で受信した信号を他の無線信号送受信手段から送信するためのN個の入出力ポートとを備えた相互接続手段と、前記Nセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるN個のアンテナとを具備し、前記N個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、前記複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、前記無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局と、前記N個の無線局の間を接続し、いずれかの無線局で受信した信号を他の無線局から送信するためのN個の入出力ポートとを備えた相互接続手段とを具備し、前記N個の無線局に備えられるN個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記Nセットのアンテナは、水平面内無指向性を有し、垂直方向にヌルを有するダイポールアンテナであって、当該ダイポールアンテナを垂直方向に等間隔に配置されたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記Nセットのアンテナの指向性パターンを変更する指向性制御手段を具備し、前記指向性制御手段は、前記Nセットの無線信号送受信手段のいずれかが送信する場合、送信を行わない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記Nセットのアンテナの指向性パターンを変更する指向性制御手段を具備し、前記指向性制御手段は、前記Nセットの無線信号送受信手段が受信する場合、受信を行っていない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御することを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記Nセットのアンテナが用いるべき無線チャネルを割り当てる無線チャネル割当手段を具備し、前記無線チャネル割当手段は、前記Nセットのアンテナのうち、隣接するアンテナに対して、隣接する無線チャネルを割り当てないように制御することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記Nセットの無線信号送受信手段からの送信信号レベル、または前記Nセットの無線信号送受信手段への受信信号レベルを減衰する減衰手段を具備する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、2つ以上の異なるN個の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるNセットのアンテナを、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、該無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局から構成し、N個の無線局の各々アンテナを、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、また、チャネル間干渉を抑えることにより、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、相互接続手段によってそれぞれが接続された、2つ以上の異なるN個の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるNセットのアンテナを、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、該無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局と、該N個の無線局の間を接続し、いずれかの無線局で受信した信号を他の無線局から送信するためのN個の入出力ポートとを備えた相互接続手段とから構成し、N個の無線局の各々アンテナを、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、また、チャネル間干渉を抑えることにより、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、Nセットのアンテナを、水平面内無指向性、垂直方向にヌルを有するダイポールアンテナとし、当該ダイポールアンテナを垂直方向に等間隔に配置する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルを低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、指向性制御手段によって、Nセットの無線信号送受信手段のいずれかが送信する場合、送信を行わない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルをより確実に低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、指向性制御手段によって、Nセットの無線信号送受信手段が受信する場合、受信を行っていない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御する。したがって、近傍のアンテナから入力された信号レベルをより確実に低下させてLNAの飽和を防ぐことができ、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、無線チャネル割当手段によって、Nセットのアンテナのうち、隣接するアンテナに対して、隣接する無線チャネルを割り当てないように制御する。したがって、隣り合うアンテナに対して隣り合うチャネルを割り当てなくてよくなり、隣接チャネルからの干渉量を大幅に低減することができ、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、減衰手段によって、Nセットの無線信号送受信手段からの送信信号レベル、またはNセットの無線信号送受信手段への受信信号レベルを減衰する。したがって、近傍のアンテナへの送信レベルを減衰させることで、近傍のアンテナへの干渉量を大幅に減少させることができるとともに、LNAの最大入力レベルを減衰させることで、近傍のアンテナからの干渉量を大幅に減少させることができ、無線局の設置場所を最小限とすることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態による無線通信装置を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、少なくとも1つの無線局、または複数の無線局を統括して構成したものを無線通信装置としている。
【0026】
A.第1実施形態
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。図において、無線局1は、それぞれがアンテナANT1〜ANTnを有する複数の送受信部2−1〜2−nを備えている。各送受信部2−1〜2−nのアンテナANT1〜ANTnとしては、ダイポールアンテナを用いている。アンテナANT1〜ANTnは、各々、図2に示すように、水平方向に対しては、全方向に指向性があり(無指向)、垂直面方向には指向性が少ない放射パターンを有する。ダイポールアンテナを用いる場合には、アンテナANT1〜ANTnを、図3に示すように、垂直面方向に複数本配置してアンテナ群3を構成する。
なお、ダイポールアンテナ以外のアンテナを用いる場合には、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されればよく、垂直面方向の配置に限られない。
【0027】
アンテナANT1〜ANTnを垂直面方向に配置する場合、可能な限り、垂直面方向に一直線となるように配置することがアンテナ相互間の干渉軽減に大きく影響するため、プリント基板上にアンテナエレメントを配置し、同軸ケーブルを用いたスリーブアンテナを、一直線になるように構成する。また、アクリル筒のようなもので上述したダイポールアンテナを直列に配置するようにしてもよい。
【0028】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局4は、複数の送受信部2−1〜2−nを相互接続する相互接続部5を備えている。この場合も、アンテナANT1〜ANTnを、複数本配置してアンテナ群3を構成している。
【0029】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図4に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局6は、複数の送受信部2−1〜2−n、相互接続部5に加えて、複数の有線送受信部(Etherなど:登録商標)7−1、7−2を備えている。相互接続部5は、複数の送受信部2−1〜2−n間を相互接続するのみでなく、複数の有線送受信部7−1、7−2と複数の(無線)送受信部2−1〜2−nとを相互接続する。この場合も、アンテナANT1〜ANTnを、複数本配置してアンテナ群3を構成している。
【0030】
D.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図6は、本発明の第4実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局1−1〜1−nは、各々、上述したダイポールアンテナANT1〜ANTnを有する送受信部2−1〜2−nを備えている。本第4実施形態においても、複数の無線局1−1〜1−nが有するアンテナANT1〜ANTnを集約して配置してアンテナ群3を構成している。なお、上記複数の無線局1−1〜1−nを集約する際に、該無線局1−1〜1−nの間を接続し、いずれかの無線局で受信した信号を他の無線局から送信するための相互接続装置を設けるようにしてもよい。
【0031】
E.第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図7(a)、(b)は、本発明の第5実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1、図5に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図7(a)は、前述した第1実施形態と第4実施形態との構成を組み合わせた構成を示している。図示するように、第1実施形態の構成に、無線局8を併設した構成を示している。無線局8は、送受信部9を備えており、該送受信部9に設けられたアンテナをアンテナANTnとしてアンテナ群3を構成する。また、図7(b)は、前述した第3実施形態と第4実施形態との構成を組み合わせた構成を示している。図示するように、第3実施形態の構成に、無線局8を併設した構成を示している。上述したように、無線局8は、送受信部9を備えており、該送受信部9に設けられたアンテナをアンテナANTnとしてアンテナ群3を構成する。
【0032】
F.第6実施形態
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図8(a)、(b)は、本発明の第6実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図4に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図8(a)では、無線局11は、送受信部12と有線送受信部13とを備えており、該無線局11の送受信部12のアンテナをアンテナANTnとしてアンテナ群3を構成している。
【0033】
また、無線局11の有線送受信部13と、前述した第3実施形態で説明した無線局6の有線送受信部7−2とが接続されている。また、図8(b)では、無線局14は、アンテナANTと送受信部15と相互接続部16と有線送受信部17とを備えており、該無線局14の有線送受信部17と、前述した第3実施形態で説明した無線局6の有線送受信部7−2とが接続されている。この場合、無線局14を無線局6に併設した構成としている。
【0034】
G.第7実施形態
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
図9は、本発明の第7実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局は、アンテナANT1〜ANTnと送受信部2−1〜2−nとの間に介挿された減衰器(ATT)20−1〜20−nを備えている。なお、送受信部2−1〜2−nおよび減衰器20−1〜20−nは、図1に示すように、1つの無線局として構成されていてもよいし、図6に示すように、1つ1つが独立した無線局として構成されていてもよい。
【0035】
本第7実施形態では、前述した第1ないし第6実施形態において、アンテナANT1〜ANTnのうち、近傍のアンテナからの干渉波を十分に減衰できない場合、すなわち、相互干渉量が想定以上となってしまう場合や、(無線)送受信部2−1〜2−nの相互間の干渉量を十分小さくできない場合、アンテナANT1〜ANTnと送受信部2−1〜2−nとの間に減衰器20−1〜20−nを挿入することで、LNAの最大入力レベルを超えないようにして問題を解消している。
【0036】
また、上述した減衰器20−1〜20−nと同等の機能を有するものとして、図10に示すように、各送受信部2−1〜2−nの送信出力を制御するTPC(Transmission Power Control:送信電力制御部)21−1〜21−nを設けることで、LNAの最大入力レベルを超えないようにしてもよい。
【0037】
H.第8実施形態
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
図11は、本発明の第8実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局は、アンテナANT1〜ANTnと送受信部2−1〜2−nとの間に介挿されたフィルタ22−1〜22−nを備えている。なお、送受信部2−1〜2−nおよびフィルタ22−1〜22−nは、図1に示すように、1つの無線局として構成されていてもよいし、図6に示すように、1つ1つが独立した無線局として構成されていてもよい。
【0038】
上述した第8実施形態では、隣接チャンネル間の干渉を十分に小さくできない場合に、上記フィルタ22−1〜22−nにより、チャネル帯域以外を大幅に減衰させ、送信時のチャネル帯域外の信号レベルを減衰させることで、隣接および次隣接チャネルへの干渉量を削減することができる。
【0039】
I.第9実施形態
次に、本発明の第9実施形態について説明する。
図12は、本発明の第9実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、無線局は、無線チャネルを送受信部2−1〜2−nに割り当てるチャネル割当制御部25を備えている。上記チャネル割当制御部25は、隣接チャネルからの干渉量が大きいとき、隣り合うアンテナが隣接チャネルを使用しないように、無線チャネルを送受信部2−1〜2−nに固定的に割り当てるか、動的に割り当てる。例えば、送受信部2−1〜2−nの各々に対して、4チャネルの無線チャネルのうち、チャネルCH2、CH4、CH1、CH3を割り当てれば、隣り合うアンテナに対して隣り合うチャネルを割り当てなくてよくなり、隣接チャネルからの干渉量を大幅に低減することができる。
【0040】
図13は、上述したアンテナANT1〜ANTnと割り当てチャネルとの関係とを示す概念図である。隣接する2チャネルの場合には、チャネルCH1をアンテナANT1、チャネルCH2をアンテナANT4に割り当て、3チャネルの場合には、チャネルCH1をアンテナANT1、チャネルCH2をアンテナANT4、チャネルCH3をアンテナANT2に割り当て、4チャネルの場合には、チャネルCH1をアンテナANT3、チャネルCH2をアンテナANT1、チャネルCH3をアンテナANT4、チャネルCH4をアンテナANT2に割り当てればよい。
【0041】
J.第10実施形態
次に、本発明の第10実施形態について説明する。
図14は、本発明の第10実施形態による無線通信装置をネットワークのアクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。図において、無線局1−1は、他の無線局29−1〜29−6を有線ネットワーク(NW)30に接続するためのアクセスポイントとして配設されている。無線局29−1〜29−6は、各々、異なる複数の無線チャネルを同時に用いて、アクセスポイントである無線局1−1と無線により接続される。無線局29−1は、周波数f3で接続され、無線局29−2は、周波数f1で接続され、無線局29−3は、周波数f2で、無線局29−4、29−5は、周波数f4で接続され、無線局29−6は、周波数f1で接続される。本第10実施形態では、複数の無線チャネルを用いることで、同一カバーエリアの通信容量の増大を図ることができる。なお、アクセスポイントである無線局1−1におけるアンテナに割り当てられる周波数は、上述した第9実施形態で説明したように、隣接したアンテナが隣接したチャネル(周波数)を使用しないように、図13に示すテーブルで示されるチャネル割り当てに従って設定されている。
【0042】
K.第11実施形態
次に、本発明の第11実施形態について説明する。
図15は、本発明の第11実施形態による無線通信装置をネットワークの中継局あるいはアクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。図において、無線局1−1〜1−6は、無線アクセスネットワークにおいて、ワイヤレスアドホック(メッシュ)ネットワークの無線中継局、あるいは無線中継局およびアクセスポイントとして動作する。
【0043】
無線局1−1は、アクセスポイントとして有線ネットワーク30に接続され、他の無線局1−2〜1−6は、無線中継局として配設されている。無線中継局あるいは、無線中継局およびアクセスポイントで用いる無線チャネルは、各無線局1−1〜1−6が自律的にそれぞれの送受信部(図示略)に割り当てるか、または集中制御的に各無線局1−1〜1−6で用いる無線チャネルを決定し、各無線局1−1〜1−6の送受信部(図示略)に割り当てる。各無線局1−1〜1−6は、異なる複数の無線チャネルを用いて、無線中継局間の通信、および無線局1−1との通信を実現している。本第11実施形態では、無線通信の干渉が軽減され、スループット向上ならびに通信容量の増大を図ることが可能となる。
【0044】
次に、図16は、上記第11実施形態の変形例として、一部の無線局を無線中継局および無線アクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。図において、無線局1−3、1−6は、無線中継局として動作するとともに、自身の無線アクセスエリア内の機器を有線ネットワーク30に接続するための無線アクセスポイントとしても動作する。この場合、各無線局1−1〜1−6には、前述した第1ないし第6実施形態で説明した構成を適用することが可能である。
【0045】
また、特に中継する無線周波数帯と無線アクセスを提供する無線帯域とが、例えば、2.4GHz帯、5GHz帯などのように、大きく異なり(LNAに相互に影響を与えない、また干渉を与えない)、アクセスポイントとして1チャネル(1つの周波数)しか用いない場合には、図8(b)に示すように、無線アクセスポイント用に有線送受信部7−2を介して接続することも可能である。
【0046】
L.第12実施形態
次に、本発明の第12実施形態について説明する。
図17(a)、(b)は、本発明の第12実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。図において、無線局は、同一水平面上の近傍域に設置されたアンテナ方向に指向性がヌルとなるように指向制御可能なアンテナANTa〜ANTc、アンテナ指向性制御部35、および信号送受信タイミング部36を備えている。アンテナ指向性制御部35は、信号送受信タイミング部36によるタイミングに従って、図17(a)に示すように、アンテナANTa、ANTcから信号送信するタイミングで信号受信状態のアンテナANTbがあれば、アンテナANTbの方向へのアンテナANTa、ANTcの指向性がヌルとなるように制御する。
【0047】
同様に、アンテナ指向性制御部35は、信号送受信タイミング部36によるタイミングに従って、図17(b)に示すように、アンテナANTbによって信号を受信(または未送信)するタイミングで信号送信状態のアンテナANTa、ANTcがあれば、アンテナANTa、ANTcの方向へのアンテナANTbの指向性をヌルとするように制御する。
【0048】
また、前述したように、アンテナ指向性制御を信号送受信タイミングに準じて変更するのではなく、アンテナ設置状況に応じて半固定的にアンテナ指向性が互いにヌルとなるように設定することも可能である。また、本第12実施形態は、前述した第1実施形態、第10実施形態にも適用可能である。また、アンテナ指向性を制御しても、アンテナの方向によっては、結合度が異なるため、結合度の強さに応じて割り当てチャネルを選択するようにしてもよい。
【0049】
また、図18は、上記第12実施形態の他の例、すなわち垂直方向にヌルとなるアンテナによる無線通信装置の構成を示すブロック図である。図において、無線局は、水平面方向では全方向に指向性があり(無指向)、垂直面方向では指向性が少ない、図2に示す放射パターンとなるように、指向性を制御可能なアンテナANTA〜ANTCおよびアンテナ指向性制御部35を備えている。この場合、前述した第1から第6実施形態に適用可能である。
【0050】
なお、上記の第12実施形態では、水平面方向にて指向性を制御する構成について示したが、本発明はこれに限られず、垂直面方向にアンテナを並べて、垂直面方向の指向性を制御する構成としてもよい。
【0051】
上述した第1から第12実施形態によれば、近傍のアンテナから入力された信号レベルが低下するため、LNAが飽和しなくなり、また、チャネル間干渉も抑えられることになり、本来受信した信号の受信率を向上することができるとともに、無線局の設置場所を最小限とすることができる。
【0052】
なお、上述した第9から第11実施形態において示した、無線チャネルの割り当ての構成において、無線チャネルの数とアンテナの数を同じ数としていたが、本発明はこの構成に限られず、無線チャネルの数と、アンテナの数が異なっていてもよい。
【0053】
なお、上述した第7及び第8実施形態において示した、減衰器、TPC、フィルタを用いた構成は、第7及び第8実施形態の構成に限られず、それ以外の実施形態のいずれの構成に対しても適用するようにしてもよい。
【0054】
なお、上述した第9から第11実施形態において示した、無線チャネルの割り当ての構成は、第9から第11実施形態の構成に限られず、それ以外の実施形態のいずれの構成に対しても適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ダイポールアンテナの指向性を説明するための概念図である。
【図3】本発明で用いるアンテナ群の配置、指向性を説明するための概念図である。
【図4】本発明の第2実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第5実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第6実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第7実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第7実施形態による無線通信装置の他の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第8実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第9実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。アンテナANT1〜ANTnと割り当てチャネルとの関係とを示す概念図である。
【図13】本第9実施形態において、アンテナANT1〜ANTnと割り当てチャネルとの関係とを示す概念図である。
【図14】本発明の第10実施形態による無線通信装置をネットワークのアクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第11実施形態による無線通信装置をネットワークの中継局あるいはアクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。
【図16】第11実施形態の変形例として、一部の無線局を無線中継局および無線アクセスポイントとして用いた場合のネットワーク構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第12実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図18】第12実施形態の他の例(垂直方向にヌルとなるアンテナ)による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図19】従来技術による無線局の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図20】従来技術による無線局の構成を示すブロック図である。
【図21】従来技術による無線局での干渉について説明するための概念図である。
【図22】従来技術による無線局での干渉原因を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0056】
1、4、1−1〜1−n、8、11、14 無線局
2−1〜2−n、9、15 送受信部(Nセットの無線信号送受信手段)
3 アンテナ群(N個のアンテナ)
5、16 相互接続部(相互接続手段)
7−1、7−2、13、17 有線送受信部
20−1〜20−n 減衰器(減衰手段)
21−1〜21−n TPC(減衰手段)
22−1〜22−n フィルタ(減衰手段)
25 チャネル割当制御部(無線チャネル割当手段)
35 アンテナ指向性制御部(指向性制御手段)
36 信号送受信タイミング部
ANT1〜ANTn、ANT、ANTa〜ANTc、ANTA〜ANTC アンテナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、
2つ以上の複数の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段と、
前記Nセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるN個のアンテナとを具備し、
前記N個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、
前記複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、前記無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局からなり、
前記N個の無線局に備えられるN個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、
2つ以上の異なるN個の無線チャネルで同時に送受信するNセットの無線信号送受信手段と、
前記Nセットの無線信号送受信手段の間を接続し、いずれかの無線信号送受信手段で受信した信号を他の無線信号送受信手段から送信するためのN個の入出力ポートとを備えた相互接続手段と、
前記Nセットの無線信号送受信手段の各々に接続されるN個のアンテナとを具備し、
前記N個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
所定の帯域を分割した複数の無線チャネルを用いて、1つの無線チャネルで時間的に送受信を切り換えることで双方向通信を行う無線通信装置において、
前記複数の無線チャネルのいずれかで送受信する無線信号送受信手段と、前記無線信号送受信手段に接続されるアンテナとを備える、2つ以上のN個の無線局と、
前記N個の無線局の間を接続し、いずれかの無線局で受信した信号を他の無線局から送信するためのN個の入出力ポートとを備えた相互接続手段とを具備し、
前記N個の無線局に備えられるN個のアンテナは、各アンテナの指向性パターンが互いに最小の送受信利得となるように配置されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
前記N個のアンテナは、水平面内無指向性を有し、垂直方向にヌルを有するダイポールアンテナであって、当該ダイポールアンテナを垂直方向に所定の間隔をおいて配置されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記N個のアンテナの指向性パターンを変更する指向性制御手段を具備し、
前記指向性制御手段は、前記Nセットの無線信号送受信手段のいずれかが送信する場合、送信を行わない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記N個のアンテナの指向性パターンを変更する指向性制御手段を具備し、
前記指向性制御手段は、前記Nセットの無線信号送受信手段が受信する場合、受信を行っていない他の無線信号送受信手段に接続されているアンテナの方向に対して利得を小さくするように制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記N個のアンテナが用いるべき無線チャネルを割り当てる無線チャネル割当手段を具備し、
前記無線チャネル割当手段は、前記N個のアンテナのうち、隣接するアンテナに対して、隣接する無線チャネルを割り当てないように制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記Nセットの無線信号送受信手段からの送信信号レベル、または前記Nセットの無線信号送受信手段への受信信号レベルを減衰する減衰手段を具備することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに無線通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−243407(P2007−243407A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60947(P2006−60947)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】