無線通信装置
【課題】同期処理が不要で、消費電力の小さな無線通信装置を提供する。
【解決手段】互いに無線通信する第1無線機1と第2無線機2とを備え、第1無線機1は、距離測定信号を送信するとともに、距離測定信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信回路3と、折り返し信号を受信するとともに、折り返し信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信回路5と、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定回路7と、遅延時間に基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離を演算する距離演算回路8とを含み、遅延時間測定回路7は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延回路D1〜Dnを有し、送信タイミング信号を複数の遅延回路D1〜Dnを介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定するものである。
【解決手段】互いに無線通信する第1無線機1と第2無線機2とを備え、第1無線機1は、距離測定信号を送信するとともに、距離測定信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信回路3と、折り返し信号を受信するとともに、折り返し信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信回路5と、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定回路7と、遅延時間に基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離を演算する距離演算回路8とを含み、遅延時間測定回路7は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延回路D1〜Dnを有し、送信タイミング信号を複数の遅延回路D1〜Dnを介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに無線通信する第1無線機と第2無線機との距離を演算する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の距離検出装置は、送信手段と、受信手段と、信号入力手段と、距離検出手段とを備えている。
送信手段は、自局の基準タイマ(基準クロック)で周期性の信号を生成して相手局へ送信する。受信手段は、相手局が相手局の基準タイマで周期性の信号を生成して自局に送信してくる信号を受信する。信号入力手段は、送信手段からの送信信号を直接受信手段に入力する。
距離検出手段は、送信手段から信号を送信したときの送信タイミングと、送信信号が信号入力手段によって受信手段に入力されたときの受信タイミングとの差を測定して自局信号遅延時間を求め、さらに相手局からの送信信号を受信した受信タイミングを自局の基準タイマの基準タイミングとのずれ量を測定して自局検出位相差を求め、これら自局信号遅延時間及び自局検出位相差と、相手局で求められた相手局信号遅延時間及び相手局検出位相差とを用いて自局と相手局との相対距離を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来装置では、自局および相手局の基準タイマ(基準クロック)を用いて遅延時間を測定している。また、基準タイマの周期は、水晶発振器あるいは水晶振動子といった発振部品によって生成されている。
しかしながら、これらの発振部品は、生成周期の精度に個体差を有しているので、時間の経過とともに、自局の基準タイマと相手局の基準タイマとの間にずれが生じる。
そこで、十分な距離測定精度を確保するためには、定期的に自局の基準タイマと相手局の基準タイマとのタイミング一致させる同期処理が必要となる。
【0004】
また、無線センサノード等の通信距離が数10m程度の近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいては、各装置の設置間隔が5m程度と短距離になることが想定される。
ここで、例えば距離測定精度を1mとした場合には、電波伝搬の遅延時間が1mあたり約3.3nsとなる。
そのため、上記従来装置のように基準タイマを用いて遅延時間を測定する場合、十分な距離測定精度を確保するためには、高周波で動作する基準タイマが必要となる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−33543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の距離検出装置では、時間の経過とともに、自局の基準タイマと相手局の基準タイマとの間にずれが生じるので、十分な距離測定精度を確保するためには、頻繁に同期処理を実行する必要があり、距離の測定処理に支障を来すという問題点があった。
また、近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいて、十分な距離測定精度を確保するためには、高周波で動作する基準タイマが必要となるので、消費電力が増大するという問題点もあった。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、同期処理を必要とせず、かつ消費電力の小さな無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る無線通信装置は、互いに無線通信する第1無線機と第2無線機とを備え、第1無線機は、第2無線機に対して送信信号を送信するとともに、送信信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信手段と、送信信号が第2無線機で折り返された受信信号を受信するとともに、受信信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信手段と、送信タイミング信号および受信タイミング信号に応答して、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定手段と、遅延時間に基づいて、第1無線機と第2無線機との距離を演算する距離演算手段とを含み、遅延時間測定手段は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、送信タイミング信号を複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の無線通信装置によれば、遅延時間測定手段が、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、送信タイミング信号を複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定する。
そのため、基準タイマを用いる必要がなく、同期処理を不要にすることができるとともに、消費電力を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を示すブロック図である。
図1において、無線通信装置は、第1無線機1と第2無線機2とを備えている。
第1無線機1は、送信回路(送信手段)3と、送信アンテナ4と、受信回路(受信手段)5と、受信アンテナ6と、遅延時間測定回路(遅延時間測定手段)7と、距離演算回路(距離演算手段)8とを含んでいる。
また、第2無線機2は、受信回路9と、受信アンテナ10と、折り返し回路(折り返し手段)11と、送信回路12と、送信アンテナ13とを含んでいる。
【0012】
ここで、送信回路3、受信回路5、受信回路9、折り返し回路11、および送信回路12は、基準タイマ(基準クロック)を使用せずにアナログ回路を用いて構成されている。
送信回路3、受信回路5および遅延時間測定回路7は、第1無線機1に設けられた第1制御部(図示せず)の制御下で動作する。また、受信回路9、折り返し回路11および送信回路12は、第2無線機2に設けられた第2制御部(図示せず)の制御下で動作する。
【0013】
また、距離演算回路8、第1制御部および第2制御部は、CPUとプログラムを格納した記憶部とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0014】
送信回路3は、送信アンテナ4を介して、第2無線機2に対して距離測定信号(送信信号)を送信するとともに、距離測定信号の送信タイミングで遅延時間測定回路7に送信タイミング信号を出力する。
【0015】
受信回路5は、受信アンテナ6を介して、距離測定信号が第2無線機2で折り返された折り返し信号(受信信号)を受信するとともに、折り返し信号の受信タイミングで遅延時間測定回路7に受信タイミング信号を出力する。
【0016】
遅延時間測定回路7は、送信回路3からの送信タイミング信号と、受信回路5からの受信タイミング信号とに応答して、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する。
距離演算回路8は、遅延時間測定回路7で測定された遅延時間に基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離を演算する。
【0017】
受信回路9は、受信アンテナ10を介して、第1無線機1からの距離測定信号を受信し、折り返し回路11に出力する。
折り返し回路11は、受信回路9からの距離測定信号を入力し、任意に設定される折り返し時間を経て、折り返し信号として送信回路12に出力する。
送信回路12は、送信アンテナ13を介して、折り返し回路11からの折り返し信号を第1無線機1に送信する。
【0018】
ここで、送信回路3での送信に伴う遅延を遅延時間T1とする。また、送信アンテナ4から受信アンテナ10までの距離測定信号の伝搬に要する時間を伝搬時間T2とする。また、受信回路5での受信に伴う遅延を遅延時間T3とする。また、折り返し回路11での折り返しに要する時間を折り返し時間T4とする。また、送信回路12での送信に伴う遅延を遅延時間T5とする。また、送信アンテナ13から受信アンテナ6までの折り返し信号の伝搬に要する時間を、上記と同じく伝搬時間T2とする。また、受信回路5での受信に伴う遅延を遅延時間T6とする。
【0019】
すなわち、送信回路3の距離測定信号の送信から受信回路5での折り返し信号の受信までにかかる遅延時間、伝搬時間および折り返し時間を総遅延時間Ttとすると、総遅延時間Ttは、次式(1)で表される。
【0020】
Tt=T1+T2×2+T3+T4+T5+T6・・・(1)
【0021】
なお、式(1)において、遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4は、装置仕様として既知の値である。
すなわち、前述のように、送信回路3、受信回路5、受信回路9、折り返し回路11、および送信回路12は、アナログ回路を用いて構成されているので、遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4を、基準タイマ(クロック)の影響を受けない固定値として取り扱うことができる。
【0022】
図2は、図1の遅延時間測定回路7を詳細に示すブロック図である。
図2において、遅延時間測定回路7は、並列に接続されたn個の遅延回路(遅延素子)D1〜Dnと、各遅延回路D1〜Dnにそれぞれ接続されたn個のラッチ回路L1〜Lnとを有している。
【0023】
遅延回路D1〜Dnは、互いに異なる遅延特性を有しており、送信タイミング信号を入力し、それぞれの遅延特性に応じて遅延させて、遅延送信タイミング信号を出力する。
ここで、遅延回路D1の遅延時間(遅延特性)をΔT、遅延回路D2の遅延時間をΔT×2、遅延回路Dnの遅延時間をΔT×nとする。
なお、ΔTは、必要とされる距離測定精度(測定分解能)を時間に換算した値である。
ラッチ回路L1〜Lnは、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を受信回路5からの受信タイミング信号で保持して、保持した値を距離演算回路8に出力する。
【0024】
以下、図1および図2とともに、図3を参照しながら、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の動作について説明する。
まず、距離測定信号は、送信回路3から送信アンテナ4を介して第2無線機2に送信される。第1無線機1からの距離測定信号は、受信アンテナ10を介して受信回路9で受信され、折り返し回路11に出力される。
距離測定信号は、折り返し回路11で折り返し時間T4を経て、折り返し信号として送信回路12に出力される。折り返し信号は、送信回路12から送信アンテナ13を介して第1無線機1に送信される。
第2無線機2からの折り返し信号は、受信アンテナ6を介して受信回路5で受信される。
【0025】
送信タイミング信号は、距離測定信号の送信タイミングで、送信回路3から遅延時間測定回路7に出力される。また、受信タイミング信号は、折り返し信号の受信タイミングで、受信回路5から遅延時間測定回路7に出力される。
【0026】
図3は、図2の遅延時間測定回路7による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
図3において、送信回路3から出力された送信タイミング信号は、各遅延回路D1〜Dnで、それぞれ異なる遅延時間(ΔT、ΔT×2、・・・、ΔT×n)だけ遅延され、遅延送信タイミング信号として各ラッチ回路L1〜Lnに出力される。
各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号は、各ラッチ回路L1〜Lnで、受信タイミング信号の立ち上がりによって値が保持される。
【0027】
すなわち、遅延回路Di(i=1、2、・・・、n)での遅延時間が、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差よりも短い遅延送信タイミング信号では、「1」が保持されて出力される。また、遅延回路Diでの遅延時間が、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差よりも長い遅延送信タイミング信号では、「0」が保持されて出力される。
ここで、ラッチ回路L1〜Lnの出力が、「1」から「0」に変化する遅延回路Diにおける遅延時間ΔT×iが、式(1)に示した総遅延時間(遅延時間)Ttとなる。
【0028】
遅延時間測定回路7で測定された総遅延時間Ttは、距離演算回路8に出力される。距離演算回路8では、総遅延時間Ttから前述した既知の遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4が減算され、伝搬時間T2が演算される。さらに、伝搬時間T2と電波の伝搬速度(30万km/秒)とに基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離が演算される。
【0029】
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置によれば、遅延時間測定回路7が並列に接続されて互いに遅延特性の異なる遅延回路D1〜Dnを有し、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を、受信タイミング信号で保持することによって総遅延時間Ttを測定し、既知の遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4が減算されることで、無線機間の伝搬時間T2が演算される。
そのため、総遅延時間Ttおよび伝搬時間T2の測定に基準タイマが関与しておらず、同期処理を不要にすることができる。
また、遅延回路D1〜Dnを用いて総遅延時間Ttを測定することにより、高周波で動作する基準タイマを搭載する必要がないので、消費電力を増大させることなく高精度に総遅延時間Ttを測定することができる。
【0030】
また、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置によれば、送信信号と受信信号とにそれぞれ異なる無線周波数を使用することにより、同一周波数を使用した場合に問題となる壁や柱といった構造物等による送信信号の反射信号と受信信号との混信(干渉)を回避し、電波干渉による距離測定精度の低下を防止できる利点がある。
すなわち、反射信号は送信信号と同一周波数であり、受信信号は送信信号と異なる周波数であるから、両者を明確に分離することが可能である。
【0031】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、遅延時間測定回路7のラッチ回路L1〜Lnは、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を、受信回路5からの受信タイミング信号で保持するとしたが、これに限定されず、ラッチ回路L1〜Lnは、受信タイミング信号を遅延送信タイミング信号で保持してもよい。
【0032】
図4は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の遅延時間測定回路7Aを詳細に示すブロック図である。
図4において、ラッチ回路L1〜Lnは、受信回路5からの受信タイミング信号を各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号で保持して、保持した値を距離演算回路8に出力する。
ここで、受信タイミング信号は、ΔT×2のパルス幅を有するとする。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0033】
図5は、図4の遅延時間測定回路7Aによる遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
図5において、送信回路3から出力された送信タイミング信号は、各遅延回路D1〜Dnで、それぞれ異なる遅延時間(ΔT、ΔT×2、・・・、ΔT×n)だけ遅延され、遅延送信タイミング信号として各ラッチ回路L1〜Lnに出力される。
受信回路5からの受信タイミング信号は、各ラッチ回路L1〜Lnで、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号の立ち上がりによって値が保持される。
【0034】
すなわち、受信タイミング信号の立ち上がりと、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号の立ち上がりとが合致した場合に、「1」が保持されて出力される。その他の場合には、「0」が保持されて出力される。
ここで、ラッチ回路L1〜Lnの出力が、「1」となる遅延回路Diにおける遅延時間ΔT×iが、図1に示した総遅延時間(遅延時間)Ttとなる。
【0035】
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置によれば、遅延時間測定回路7Aが並列に接続されて互いに遅延特性の異なる遅延回路D1〜Dnを有し、受信タイミング信号を各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号で保持することによって総遅延時間Ttを測定する。
そのため、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態2では、受信タイミング信号がΔT×2のパルス幅を有するとしたが、受信タイミング信号のパルス幅は、ΔT×2に限定されず、遅延送信タイミング信号によって保持されるのに十分な幅を有していればよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0037】
実施の形態3.
上記実施の形態1および2では、第1無線機1が1つの第2無線機2に対する距離を測定したが、これに限定されず、第1無線機1は、1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2に対する距離を測定してもよい。
【0038】
図6は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
図6において、第1無線機1の周辺には、3つの第2無線機2a〜2cが配置されている。
ここで、各第2無線機2a〜2cの折り返し回路における折り返し時間は、互いに異なる値が設定されており、それぞれ折り返し時間T4a、T4b、T4cとする。また、第1無線機1から各第2無線機2a〜2cまでの距離測定信号あるいは折り返し信号の伝搬に要する時間を、それぞれ伝搬時間T2a、T2b、T2cとする。
【0039】
図7は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を示すブロック図である。ここでは、第1無線機1および第2無線機2aを示している。
図7において、折り返し回路11aには、折り返し時間T4aが設定されている。
なお、第2無線機2b、2cについても図7と同様の構成を有しており、それぞれの折り返し回路には、個別の折り返し時間T4b、T4cが設定されている。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0040】
以下、図6および図7とともに、図8を参照しながら、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
図8は、この発明の実施の形態3による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
図8において、第1無線機1から送信された距離測定信号は、各第2無線機2a〜2cで受信される。各第2無線機2a〜2cで受信された距離測定信号は、折り返し回路でそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cを経た後に折り返し信号として送信回路12に出力され、第1無線機1に送信される。
なお、折り返し時間T4a、T4b、T4cは、各第2無線機2a〜2cの折り返し信号が重複しないように、互いに十分なタイミングマージンを持って設定されている。
【0041】
ここで、第1無線機1の距離測定信号の送信から第2無線機2aの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttaは、次式(2)で表される。
【0042】
Tta=T1+T2a×2+T3+T4a+T5+T6・・・(2)
【0043】
また、同様にして、第1無線機1の距離測定信号の送信から第2無線機2b、2cの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttb、Ttcは、次式(3)、(4)で表される。
【0044】
Ttb=T1+T2b×2+T3+T4b+T5+T6・・・(3)
Ttc=T1+T2c×2+T3+T4c+T5+T6・・・(4)
【0045】
なお、式(2)〜式(4)において、伝搬時間T2a、T2b、T2c以外の値は、前述のように装置仕様として全て既知の値である。
【0046】
また、遅延時間測定回路7は、各遅延回路D1〜Dnから出力される遅延送信タイミング信号と、各第2無線機2a〜2cからの折り返し信号の受信タイミングで出力される受信タイミング信号とを用いて、上記実施の形態1、2の場合と同様にして、総遅延時間Tta、Ttb、Ttcを測定する。
【0047】
遅延時間測定回路7で測定されたこれらの総遅延時間Tta、Ttb、Ttcは、距離演算回路8に出力される。距離演算回路8では、総遅延時間Tta、Ttb、Ttcから前述した既知の遅延時間T1、T3、T5、T6およびそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cが減算され、伝搬時間T2a、T2b、T2cが演算される。さらに、伝搬時間T2a、T2b、T2cと電波の伝搬速度(30万km/秒)とに基づいて、第1無線機1と各第2無線機2a〜2cとの距離が演算される。
【0048】
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置によれば、各第2無線機2a〜2cの折り返し回路にそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cを設定することにより、第1無線機1からの1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2a〜2cとの距離を時分割で測定することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態3では、第2無線機2が3つである場合について説明したが、これに限定されず、第2無線機2は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
この場合も、各第2無線機2からの折り返し信号が重複しないように折り返し時間T4を設定することにより、1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2に対する距離を測定することができる。
【0050】
実施の形態4.
無線センサノード(無線機)等の近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいては、無線センサノードが自身の設置位置を検出することが重要である。その方法として、無線センサノードは、設置位置が既知である3つ以上の無線機との距離を測定し、三点測位にて自身の設置位置を確定している。
しかしながら、無線通信においては、電波の減衰や干渉の影響により、遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致しなくなる場合が考えられる。
【0051】
上記実施の形態1〜3では、遅延時間測定回路7から出力される総遅延時間Ttのみを用いて第1無線機1と第2無線機2との距離を測定したが、上記のように遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致しなくなる場合が考えられる。
そのため、第1無線機1は、総遅延時間Ttに加えて、電波強度に基づいて第2無線機2との通信品質を判定し、通信品質を考慮して第2無線機2との距離を演算することが望ましい。
【0052】
図9は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
図9において、第1無線機1Aの周辺には、5つの第2無線機2d〜2hが配置されている。ここで、各第2無線機2d〜2hの設置位置は、それぞれ既知とする。
【0053】
図10は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を示すブロック図である。ここでは、第1無線機1Aおよび第2無線機2dを示している。
なお、第2無線機2e〜2hについても図10と同様の構成を有している。また、第2無線機2d〜2hは、少なくとも3つ以上設けられている。
【0054】
図10において、第1無線機1Aの受信回路5Aは、各第2無線機2d〜2hからの折り返し信号の電波強度を測定する電波強度測定手段(図示せず)を含んでいる。
また、第1無線機1Aは、図1に示した距離演算回路8に代えて、距離演算・通信品質判定回路(距離演算手段、通信品質判定手段)14を含んでいる。
【0055】
距離演算・通信品質判定回路14は、遅延時間測定回路7で測定された総遅延時間Ttに基づいて、第1無線機1Aと各第2無線機2d〜2hとの距離を演算する。また、受信回路5Aで測定された電波強度に基づいて、各第2無線機2d〜2hとの通信品質(総遅延時間の信頼度)を判定する。
また、距離演算・通信品質判定回路14は、自身の位置を同定する位置同定手段(図示せず)をさらに含んでいる。
【0056】
位置同定手段は、第2無線機2d〜2hのうちから、通信品質が所定条件を満たす3つの無線機を選択し、選択された各第2無線機2d〜2hとの遅延時間を用いて三点測位を実行し、自身の位置を同定する。
なお、位置同定手段は、電波強度が任意に設定される所定強度以上である場合に、上記の所定条件を満たすと判定し、あるいは、電波強度の変動量が任意に設定される所定変動量以下である場合に、上記の所定条件を満たすと判定する。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0057】
以下、図9および図10とともに、図11のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態4による通信品質の判定動作について説明する。
まず、送信回路3は、各第2無線機2d〜2hに対して電波強度を測定するために距離測定信号を送信する(ステップS21)。
続いて、受信回路5Aは、距離測定信号が各第2無線機2d〜2hで折り返された折り返し信号を受信して(ステップS22)、折り返し信号受信時の電波強度を測定する(ステップS23)。
【0058】
続いて、距離演算・通信品質判定回路14は、折り返し信号の受信回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS24)。
すなわち、電波干渉が強い場合には、折り返し信号の電波強度の変動が大きくなることが想定される。そのため、距離演算・通信品質判定回路14は、複数回の電波強度を測定し、電波強度の変動量を用いて各第2無線機2d〜2hとの通信品質を判定する。
【0059】
ステップS24において、受信回数が規定回数に達した(すなわち、Yes)と判定された場合には、測定した電波強度に基づいて、各第2無線機2d〜2hとの通信品質を判定する(ステップS25)。
続いて、遅延時間測定回路7は、上記実施の形態1、2の場合と同様にして、第1無線機1Aの距離測定信号の送信から、各第2無線機2d〜2hの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttを測定し(ステップS26)、図11の処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS24において、受信回数が規定回数に達していない(すなわち、No)と判定された場合には、再びステップS21に戻る。
【0061】
続いて、図9〜図11とともに、図12を参照しながら、この発明の実施の形態4による位置同定手段の位置同定動作について説明する。
図12は、図9の各第2無線機2d〜2hについて、上記の通信品質を判定した場合の判定結果を示す説明図である。
図12において、最低電波強度は、送信時の電波強度に対する受信時の電波強度の比を百分率で示したものであり、電波強度変動量は、送信時の電波強度に対する受信時の電波強度の変動量(最大値と最小値との差分)を百分率で示したものである。
【0062】
まず、位置同定手段は、最低電波強度が所定強度(例えば、50%)以上であるか否かを判定する。
図12において、第2無線機2gの電波強度が30%と所定強度よりも低いので、位置同定手段は、第2無線機2gが所定条件を満たしていないと判定する。
また、位置同定手段は、電波強度変動量が所定変動量(例えば、30%)以下であるか否かを判定する。
図12において、第2無線機2eの電波強度変動量が40%と所定変動量よりも高いので、位置同定手段は、第2無線機2eが所定条件を満たしていないと判定する。
【0063】
上記の判定結果より、位置同定手段は、上記の所定条件を満たす第2無線機2d、2f、2hを選択し、第2無線機2d、2f、2hに対する遅延時間を用いて位置を同定する。
すなわち、図12において、第2無線機2d、2f、2hとの距離測定値を用いて三点測位を実行して、自身の位置を同定する。
【0064】
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置によれば、位置同定手段が通信品質に基づいて3つの第2無線機2d〜2hを選択し、選択された各第2無線機2d〜2hとの遅延時間を用いて三点測位を実行することにより、自身の位置を同定する。
そのため、電波の減衰や干渉の影響によって遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致していないと考えられる第2無線機2d〜2hを除くことができ、測定誤差が少なく精度の高い位置同定を行うことができる。
【0065】
なお、上記実施の形態1〜4において、第1無線機1および第2無線機2は、それぞれ送信アンテナ4、13および受信アンテナ6、10を含んでいるとして説明したが、これに限定されない。
距離測定信号と折り返し信号とで同一周波数帯の電波が用いられる場合には、送信アンテナおよび受信アンテナを一体化して送受信アンテナとしてもよい。
すなわち、図13に示すように、第1無線機1Bは、送受信アンテナ15を有しており、第2無線機2Bは、送受信アンテナ16を有していてもよい。
この場合も、同一周波数帯内において、送信信号、受信信号に異なる周波数チャネルを割り当てることにより、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図2】図1の遅延時間測定回路を詳細に示すブロック図である。
【図3】図2の遅延時間測定回路による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の遅延時間測定回路を詳細に示すブロック図である。
【図5】図4の遅延時間測定回路による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図9】この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4による通信品質の判定動作を示すフローチャートを参照である。
【図12】図9の各第2無線機について、通信品質を判定した場合の判定結果を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態1〜4に係る無線通信装置を示す別のブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B 第1無線機、2、2a〜2h、2B 第2無線機、3 送信回路(送信手段)、5 受信回路(受信手段)、5A 受信回路(受信手段、強度検出手段)、7、7A 遅延時間測定回路(遅延時間測定手段)、8 距離演算回路(距離演算手段)、11、11a 折り返し回路(折り返し手段)、14 距離演算・通信品質判定回路(距離演算手段、通信品質判定手段)、D1〜Dn 遅延回路(遅延素子)、Tt 総遅延時間(遅延時間)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに無線通信する第1無線機と第2無線機との距離を演算する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の距離検出装置は、送信手段と、受信手段と、信号入力手段と、距離検出手段とを備えている。
送信手段は、自局の基準タイマ(基準クロック)で周期性の信号を生成して相手局へ送信する。受信手段は、相手局が相手局の基準タイマで周期性の信号を生成して自局に送信してくる信号を受信する。信号入力手段は、送信手段からの送信信号を直接受信手段に入力する。
距離検出手段は、送信手段から信号を送信したときの送信タイミングと、送信信号が信号入力手段によって受信手段に入力されたときの受信タイミングとの差を測定して自局信号遅延時間を求め、さらに相手局からの送信信号を受信した受信タイミングを自局の基準タイマの基準タイミングとのずれ量を測定して自局検出位相差を求め、これら自局信号遅延時間及び自局検出位相差と、相手局で求められた相手局信号遅延時間及び相手局検出位相差とを用いて自局と相手局との相対距離を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来装置では、自局および相手局の基準タイマ(基準クロック)を用いて遅延時間を測定している。また、基準タイマの周期は、水晶発振器あるいは水晶振動子といった発振部品によって生成されている。
しかしながら、これらの発振部品は、生成周期の精度に個体差を有しているので、時間の経過とともに、自局の基準タイマと相手局の基準タイマとの間にずれが生じる。
そこで、十分な距離測定精度を確保するためには、定期的に自局の基準タイマと相手局の基準タイマとのタイミング一致させる同期処理が必要となる。
【0004】
また、無線センサノード等の通信距離が数10m程度の近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいては、各装置の設置間隔が5m程度と短距離になることが想定される。
ここで、例えば距離測定精度を1mとした場合には、電波伝搬の遅延時間が1mあたり約3.3nsとなる。
そのため、上記従来装置のように基準タイマを用いて遅延時間を測定する場合、十分な距離測定精度を確保するためには、高周波で動作する基準タイマが必要となる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−33543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の距離検出装置では、時間の経過とともに、自局の基準タイマと相手局の基準タイマとの間にずれが生じるので、十分な距離測定精度を確保するためには、頻繁に同期処理を実行する必要があり、距離の測定処理に支障を来すという問題点があった。
また、近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいて、十分な距離測定精度を確保するためには、高周波で動作する基準タイマが必要となるので、消費電力が増大するという問題点もあった。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、同期処理を必要とせず、かつ消費電力の小さな無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る無線通信装置は、互いに無線通信する第1無線機と第2無線機とを備え、第1無線機は、第2無線機に対して送信信号を送信するとともに、送信信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信手段と、送信信号が第2無線機で折り返された受信信号を受信するとともに、受信信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信手段と、送信タイミング信号および受信タイミング信号に応答して、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定手段と、遅延時間に基づいて、第1無線機と第2無線機との距離を演算する距離演算手段とを含み、遅延時間測定手段は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、送信タイミング信号を複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の無線通信装置によれば、遅延時間測定手段が、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、送信タイミング信号を複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、受信タイミング信号とを用いて遅延時間を測定する。
そのため、基準タイマを用いる必要がなく、同期処理を不要にすることができるとともに、消費電力を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を示すブロック図である。
図1において、無線通信装置は、第1無線機1と第2無線機2とを備えている。
第1無線機1は、送信回路(送信手段)3と、送信アンテナ4と、受信回路(受信手段)5と、受信アンテナ6と、遅延時間測定回路(遅延時間測定手段)7と、距離演算回路(距離演算手段)8とを含んでいる。
また、第2無線機2は、受信回路9と、受信アンテナ10と、折り返し回路(折り返し手段)11と、送信回路12と、送信アンテナ13とを含んでいる。
【0012】
ここで、送信回路3、受信回路5、受信回路9、折り返し回路11、および送信回路12は、基準タイマ(基準クロック)を使用せずにアナログ回路を用いて構成されている。
送信回路3、受信回路5および遅延時間測定回路7は、第1無線機1に設けられた第1制御部(図示せず)の制御下で動作する。また、受信回路9、折り返し回路11および送信回路12は、第2無線機2に設けられた第2制御部(図示せず)の制御下で動作する。
【0013】
また、距離演算回路8、第1制御部および第2制御部は、CPUとプログラムを格納した記憶部とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0014】
送信回路3は、送信アンテナ4を介して、第2無線機2に対して距離測定信号(送信信号)を送信するとともに、距離測定信号の送信タイミングで遅延時間測定回路7に送信タイミング信号を出力する。
【0015】
受信回路5は、受信アンテナ6を介して、距離測定信号が第2無線機2で折り返された折り返し信号(受信信号)を受信するとともに、折り返し信号の受信タイミングで遅延時間測定回路7に受信タイミング信号を出力する。
【0016】
遅延時間測定回路7は、送信回路3からの送信タイミング信号と、受信回路5からの受信タイミング信号とに応答して、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する。
距離演算回路8は、遅延時間測定回路7で測定された遅延時間に基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離を演算する。
【0017】
受信回路9は、受信アンテナ10を介して、第1無線機1からの距離測定信号を受信し、折り返し回路11に出力する。
折り返し回路11は、受信回路9からの距離測定信号を入力し、任意に設定される折り返し時間を経て、折り返し信号として送信回路12に出力する。
送信回路12は、送信アンテナ13を介して、折り返し回路11からの折り返し信号を第1無線機1に送信する。
【0018】
ここで、送信回路3での送信に伴う遅延を遅延時間T1とする。また、送信アンテナ4から受信アンテナ10までの距離測定信号の伝搬に要する時間を伝搬時間T2とする。また、受信回路5での受信に伴う遅延を遅延時間T3とする。また、折り返し回路11での折り返しに要する時間を折り返し時間T4とする。また、送信回路12での送信に伴う遅延を遅延時間T5とする。また、送信アンテナ13から受信アンテナ6までの折り返し信号の伝搬に要する時間を、上記と同じく伝搬時間T2とする。また、受信回路5での受信に伴う遅延を遅延時間T6とする。
【0019】
すなわち、送信回路3の距離測定信号の送信から受信回路5での折り返し信号の受信までにかかる遅延時間、伝搬時間および折り返し時間を総遅延時間Ttとすると、総遅延時間Ttは、次式(1)で表される。
【0020】
Tt=T1+T2×2+T3+T4+T5+T6・・・(1)
【0021】
なお、式(1)において、遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4は、装置仕様として既知の値である。
すなわち、前述のように、送信回路3、受信回路5、受信回路9、折り返し回路11、および送信回路12は、アナログ回路を用いて構成されているので、遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4を、基準タイマ(クロック)の影響を受けない固定値として取り扱うことができる。
【0022】
図2は、図1の遅延時間測定回路7を詳細に示すブロック図である。
図2において、遅延時間測定回路7は、並列に接続されたn個の遅延回路(遅延素子)D1〜Dnと、各遅延回路D1〜Dnにそれぞれ接続されたn個のラッチ回路L1〜Lnとを有している。
【0023】
遅延回路D1〜Dnは、互いに異なる遅延特性を有しており、送信タイミング信号を入力し、それぞれの遅延特性に応じて遅延させて、遅延送信タイミング信号を出力する。
ここで、遅延回路D1の遅延時間(遅延特性)をΔT、遅延回路D2の遅延時間をΔT×2、遅延回路Dnの遅延時間をΔT×nとする。
なお、ΔTは、必要とされる距離測定精度(測定分解能)を時間に換算した値である。
ラッチ回路L1〜Lnは、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を受信回路5からの受信タイミング信号で保持して、保持した値を距離演算回路8に出力する。
【0024】
以下、図1および図2とともに、図3を参照しながら、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の動作について説明する。
まず、距離測定信号は、送信回路3から送信アンテナ4を介して第2無線機2に送信される。第1無線機1からの距離測定信号は、受信アンテナ10を介して受信回路9で受信され、折り返し回路11に出力される。
距離測定信号は、折り返し回路11で折り返し時間T4を経て、折り返し信号として送信回路12に出力される。折り返し信号は、送信回路12から送信アンテナ13を介して第1無線機1に送信される。
第2無線機2からの折り返し信号は、受信アンテナ6を介して受信回路5で受信される。
【0025】
送信タイミング信号は、距離測定信号の送信タイミングで、送信回路3から遅延時間測定回路7に出力される。また、受信タイミング信号は、折り返し信号の受信タイミングで、受信回路5から遅延時間測定回路7に出力される。
【0026】
図3は、図2の遅延時間測定回路7による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
図3において、送信回路3から出力された送信タイミング信号は、各遅延回路D1〜Dnで、それぞれ異なる遅延時間(ΔT、ΔT×2、・・・、ΔT×n)だけ遅延され、遅延送信タイミング信号として各ラッチ回路L1〜Lnに出力される。
各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号は、各ラッチ回路L1〜Lnで、受信タイミング信号の立ち上がりによって値が保持される。
【0027】
すなわち、遅延回路Di(i=1、2、・・・、n)での遅延時間が、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差よりも短い遅延送信タイミング信号では、「1」が保持されて出力される。また、遅延回路Diでの遅延時間が、送信タイミング信号に対する受信タイミング信号の時間差よりも長い遅延送信タイミング信号では、「0」が保持されて出力される。
ここで、ラッチ回路L1〜Lnの出力が、「1」から「0」に変化する遅延回路Diにおける遅延時間ΔT×iが、式(1)に示した総遅延時間(遅延時間)Ttとなる。
【0028】
遅延時間測定回路7で測定された総遅延時間Ttは、距離演算回路8に出力される。距離演算回路8では、総遅延時間Ttから前述した既知の遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4が減算され、伝搬時間T2が演算される。さらに、伝搬時間T2と電波の伝搬速度(30万km/秒)とに基づいて、第1無線機1と第2無線機2との距離が演算される。
【0029】
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置によれば、遅延時間測定回路7が並列に接続されて互いに遅延特性の異なる遅延回路D1〜Dnを有し、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を、受信タイミング信号で保持することによって総遅延時間Ttを測定し、既知の遅延時間T1、T3、T5、T6および折り返し時間T4が減算されることで、無線機間の伝搬時間T2が演算される。
そのため、総遅延時間Ttおよび伝搬時間T2の測定に基準タイマが関与しておらず、同期処理を不要にすることができる。
また、遅延回路D1〜Dnを用いて総遅延時間Ttを測定することにより、高周波で動作する基準タイマを搭載する必要がないので、消費電力を増大させることなく高精度に総遅延時間Ttを測定することができる。
【0030】
また、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置によれば、送信信号と受信信号とにそれぞれ異なる無線周波数を使用することにより、同一周波数を使用した場合に問題となる壁や柱といった構造物等による送信信号の反射信号と受信信号との混信(干渉)を回避し、電波干渉による距離測定精度の低下を防止できる利点がある。
すなわち、反射信号は送信信号と同一周波数であり、受信信号は送信信号と異なる周波数であるから、両者を明確に分離することが可能である。
【0031】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、遅延時間測定回路7のラッチ回路L1〜Lnは、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号を、受信回路5からの受信タイミング信号で保持するとしたが、これに限定されず、ラッチ回路L1〜Lnは、受信タイミング信号を遅延送信タイミング信号で保持してもよい。
【0032】
図4は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の遅延時間測定回路7Aを詳細に示すブロック図である。
図4において、ラッチ回路L1〜Lnは、受信回路5からの受信タイミング信号を各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号で保持して、保持した値を距離演算回路8に出力する。
ここで、受信タイミング信号は、ΔT×2のパルス幅を有するとする。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0033】
図5は、図4の遅延時間測定回路7Aによる遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
図5において、送信回路3から出力された送信タイミング信号は、各遅延回路D1〜Dnで、それぞれ異なる遅延時間(ΔT、ΔT×2、・・・、ΔT×n)だけ遅延され、遅延送信タイミング信号として各ラッチ回路L1〜Lnに出力される。
受信回路5からの受信タイミング信号は、各ラッチ回路L1〜Lnで、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号の立ち上がりによって値が保持される。
【0034】
すなわち、受信タイミング信号の立ち上がりと、各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号の立ち上がりとが合致した場合に、「1」が保持されて出力される。その他の場合には、「0」が保持されて出力される。
ここで、ラッチ回路L1〜Lnの出力が、「1」となる遅延回路Diにおける遅延時間ΔT×iが、図1に示した総遅延時間(遅延時間)Ttとなる。
【0035】
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置によれば、遅延時間測定回路7Aが並列に接続されて互いに遅延特性の異なる遅延回路D1〜Dnを有し、受信タイミング信号を各遅延回路D1〜Dnから出力された遅延送信タイミング信号で保持することによって総遅延時間Ttを測定する。
そのため、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態2では、受信タイミング信号がΔT×2のパルス幅を有するとしたが、受信タイミング信号のパルス幅は、ΔT×2に限定されず、遅延送信タイミング信号によって保持されるのに十分な幅を有していればよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0037】
実施の形態3.
上記実施の形態1および2では、第1無線機1が1つの第2無線機2に対する距離を測定したが、これに限定されず、第1無線機1は、1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2に対する距離を測定してもよい。
【0038】
図6は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
図6において、第1無線機1の周辺には、3つの第2無線機2a〜2cが配置されている。
ここで、各第2無線機2a〜2cの折り返し回路における折り返し時間は、互いに異なる値が設定されており、それぞれ折り返し時間T4a、T4b、T4cとする。また、第1無線機1から各第2無線機2a〜2cまでの距離測定信号あるいは折り返し信号の伝搬に要する時間を、それぞれ伝搬時間T2a、T2b、T2cとする。
【0039】
図7は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を示すブロック図である。ここでは、第1無線機1および第2無線機2aを示している。
図7において、折り返し回路11aには、折り返し時間T4aが設定されている。
なお、第2無線機2b、2cについても図7と同様の構成を有しており、それぞれの折り返し回路には、個別の折り返し時間T4b、T4cが設定されている。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0040】
以下、図6および図7とともに、図8を参照しながら、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
図8は、この発明の実施の形態3による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
図8において、第1無線機1から送信された距離測定信号は、各第2無線機2a〜2cで受信される。各第2無線機2a〜2cで受信された距離測定信号は、折り返し回路でそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cを経た後に折り返し信号として送信回路12に出力され、第1無線機1に送信される。
なお、折り返し時間T4a、T4b、T4cは、各第2無線機2a〜2cの折り返し信号が重複しないように、互いに十分なタイミングマージンを持って設定されている。
【0041】
ここで、第1無線機1の距離測定信号の送信から第2無線機2aの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttaは、次式(2)で表される。
【0042】
Tta=T1+T2a×2+T3+T4a+T5+T6・・・(2)
【0043】
また、同様にして、第1無線機1の距離測定信号の送信から第2無線機2b、2cの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttb、Ttcは、次式(3)、(4)で表される。
【0044】
Ttb=T1+T2b×2+T3+T4b+T5+T6・・・(3)
Ttc=T1+T2c×2+T3+T4c+T5+T6・・・(4)
【0045】
なお、式(2)〜式(4)において、伝搬時間T2a、T2b、T2c以外の値は、前述のように装置仕様として全て既知の値である。
【0046】
また、遅延時間測定回路7は、各遅延回路D1〜Dnから出力される遅延送信タイミング信号と、各第2無線機2a〜2cからの折り返し信号の受信タイミングで出力される受信タイミング信号とを用いて、上記実施の形態1、2の場合と同様にして、総遅延時間Tta、Ttb、Ttcを測定する。
【0047】
遅延時間測定回路7で測定されたこれらの総遅延時間Tta、Ttb、Ttcは、距離演算回路8に出力される。距離演算回路8では、総遅延時間Tta、Ttb、Ttcから前述した既知の遅延時間T1、T3、T5、T6およびそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cが減算され、伝搬時間T2a、T2b、T2cが演算される。さらに、伝搬時間T2a、T2b、T2cと電波の伝搬速度(30万km/秒)とに基づいて、第1無線機1と各第2無線機2a〜2cとの距離が演算される。
【0048】
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置によれば、各第2無線機2a〜2cの折り返し回路にそれぞれ異なる折り返し時間T4a、T4b、T4cを設定することにより、第1無線機1からの1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2a〜2cとの距離を時分割で測定することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態3では、第2無線機2が3つである場合について説明したが、これに限定されず、第2無線機2は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
この場合も、各第2無線機2からの折り返し信号が重複しないように折り返し時間T4を設定することにより、1回の距離測定信号の送信によって、複数の第2無線機2に対する距離を測定することができる。
【0050】
実施の形態4.
無線センサノード(無線機)等の近距離無線技術を応用したネットワークシステムにおいては、無線センサノードが自身の設置位置を検出することが重要である。その方法として、無線センサノードは、設置位置が既知である3つ以上の無線機との距離を測定し、三点測位にて自身の設置位置を確定している。
しかしながら、無線通信においては、電波の減衰や干渉の影響により、遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致しなくなる場合が考えられる。
【0051】
上記実施の形態1〜3では、遅延時間測定回路7から出力される総遅延時間Ttのみを用いて第1無線機1と第2無線機2との距離を測定したが、上記のように遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致しなくなる場合が考えられる。
そのため、第1無線機1は、総遅延時間Ttに加えて、電波強度に基づいて第2無線機2との通信品質を判定し、通信品質を考慮して第2無線機2との距離を演算することが望ましい。
【0052】
図9は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
図9において、第1無線機1Aの周辺には、5つの第2無線機2d〜2hが配置されている。ここで、各第2無線機2d〜2hの設置位置は、それぞれ既知とする。
【0053】
図10は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を示すブロック図である。ここでは、第1無線機1Aおよび第2無線機2dを示している。
なお、第2無線機2e〜2hについても図10と同様の構成を有している。また、第2無線機2d〜2hは、少なくとも3つ以上設けられている。
【0054】
図10において、第1無線機1Aの受信回路5Aは、各第2無線機2d〜2hからの折り返し信号の電波強度を測定する電波強度測定手段(図示せず)を含んでいる。
また、第1無線機1Aは、図1に示した距離演算回路8に代えて、距離演算・通信品質判定回路(距離演算手段、通信品質判定手段)14を含んでいる。
【0055】
距離演算・通信品質判定回路14は、遅延時間測定回路7で測定された総遅延時間Ttに基づいて、第1無線機1Aと各第2無線機2d〜2hとの距離を演算する。また、受信回路5Aで測定された電波強度に基づいて、各第2無線機2d〜2hとの通信品質(総遅延時間の信頼度)を判定する。
また、距離演算・通信品質判定回路14は、自身の位置を同定する位置同定手段(図示せず)をさらに含んでいる。
【0056】
位置同定手段は、第2無線機2d〜2hのうちから、通信品質が所定条件を満たす3つの無線機を選択し、選択された各第2無線機2d〜2hとの遅延時間を用いて三点測位を実行し、自身の位置を同定する。
なお、位置同定手段は、電波強度が任意に設定される所定強度以上である場合に、上記の所定条件を満たすと判定し、あるいは、電波強度の変動量が任意に設定される所定変動量以下である場合に、上記の所定条件を満たすと判定する。
その他の構成については、前述の実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0057】
以下、図9および図10とともに、図11のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態4による通信品質の判定動作について説明する。
まず、送信回路3は、各第2無線機2d〜2hに対して電波強度を測定するために距離測定信号を送信する(ステップS21)。
続いて、受信回路5Aは、距離測定信号が各第2無線機2d〜2hで折り返された折り返し信号を受信して(ステップS22)、折り返し信号受信時の電波強度を測定する(ステップS23)。
【0058】
続いて、距離演算・通信品質判定回路14は、折り返し信号の受信回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS24)。
すなわち、電波干渉が強い場合には、折り返し信号の電波強度の変動が大きくなることが想定される。そのため、距離演算・通信品質判定回路14は、複数回の電波強度を測定し、電波強度の変動量を用いて各第2無線機2d〜2hとの通信品質を判定する。
【0059】
ステップS24において、受信回数が規定回数に達した(すなわち、Yes)と判定された場合には、測定した電波強度に基づいて、各第2無線機2d〜2hとの通信品質を判定する(ステップS25)。
続いて、遅延時間測定回路7は、上記実施の形態1、2の場合と同様にして、第1無線機1Aの距離測定信号の送信から、各第2無線機2d〜2hの折り返し信号の受信までの総遅延時間Ttを測定し(ステップS26)、図11の処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS24において、受信回数が規定回数に達していない(すなわち、No)と判定された場合には、再びステップS21に戻る。
【0061】
続いて、図9〜図11とともに、図12を参照しながら、この発明の実施の形態4による位置同定手段の位置同定動作について説明する。
図12は、図9の各第2無線機2d〜2hについて、上記の通信品質を判定した場合の判定結果を示す説明図である。
図12において、最低電波強度は、送信時の電波強度に対する受信時の電波強度の比を百分率で示したものであり、電波強度変動量は、送信時の電波強度に対する受信時の電波強度の変動量(最大値と最小値との差分)を百分率で示したものである。
【0062】
まず、位置同定手段は、最低電波強度が所定強度(例えば、50%)以上であるか否かを判定する。
図12において、第2無線機2gの電波強度が30%と所定強度よりも低いので、位置同定手段は、第2無線機2gが所定条件を満たしていないと判定する。
また、位置同定手段は、電波強度変動量が所定変動量(例えば、30%)以下であるか否かを判定する。
図12において、第2無線機2eの電波強度変動量が40%と所定変動量よりも高いので、位置同定手段は、第2無線機2eが所定条件を満たしていないと判定する。
【0063】
上記の判定結果より、位置同定手段は、上記の所定条件を満たす第2無線機2d、2f、2hを選択し、第2無線機2d、2f、2hに対する遅延時間を用いて位置を同定する。
すなわち、図12において、第2無線機2d、2f、2hとの距離測定値を用いて三点測位を実行して、自身の位置を同定する。
【0064】
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置によれば、位置同定手段が通信品質に基づいて3つの第2無線機2d〜2hを選択し、選択された各第2無線機2d〜2hとの遅延時間を用いて三点測位を実行することにより、自身の位置を同定する。
そのため、電波の減衰や干渉の影響によって遅延時間と実際の無線機間の距離とが一致していないと考えられる第2無線機2d〜2hを除くことができ、測定誤差が少なく精度の高い位置同定を行うことができる。
【0065】
なお、上記実施の形態1〜4において、第1無線機1および第2無線機2は、それぞれ送信アンテナ4、13および受信アンテナ6、10を含んでいるとして説明したが、これに限定されない。
距離測定信号と折り返し信号とで同一周波数帯の電波が用いられる場合には、送信アンテナおよび受信アンテナを一体化して送受信アンテナとしてもよい。
すなわち、図13に示すように、第1無線機1Bは、送受信アンテナ15を有しており、第2無線機2Bは、送受信アンテナ16を有していてもよい。
この場合も、同一周波数帯内において、送信信号、受信信号に異なる周波数チャネルを割り当てることにより、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図2】図1の遅延時間測定回路を詳細に示すブロック図である。
【図3】図2の遅延時間測定回路による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の遅延時間測定回路を詳細に示すブロック図である。
【図5】図4の遅延時間測定回路による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による遅延時間の測定動作を示すタイミングチャートである。
【図9】この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の無線機の配置トポロジを示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4による通信品質の判定動作を示すフローチャートを参照である。
【図12】図9の各第2無線機について、通信品質を判定した場合の判定結果を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態1〜4に係る無線通信装置を示す別のブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B 第1無線機、2、2a〜2h、2B 第2無線機、3 送信回路(送信手段)、5 受信回路(受信手段)、5A 受信回路(受信手段、強度検出手段)、7、7A 遅延時間測定回路(遅延時間測定手段)、8 距離演算回路(距離演算手段)、11、11a 折り返し回路(折り返し手段)、14 距離演算・通信品質判定回路(距離演算手段、通信品質判定手段)、D1〜Dn 遅延回路(遅延素子)、Tt 総遅延時間(遅延時間)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに無線通信する第1無線機と第2無線機とを備え、
前記第1無線機は、
前記第2無線機に対して送信信号を送信するとともに、前記送信信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信手段と、
前記送信信号が前記第2無線機で折り返された受信信号を受信するとともに、前記受信信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信手段と、
前記送信タイミング信号および前記受信タイミング信号に応答して、前記送信タイミング信号に対する前記受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定手段と、
前記遅延時間に基づいて、前記第1無線機と前記第2無線機との距離を演算する距離演算手段とを含み、
前記遅延時間測定手段は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、前記送信タイミング信号を前記複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、前記受信タイミング信号とを用いて前記遅延時間を測定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記遅延時間測定手段は、前記受信タイミング信号を用いて前記遅延送信タイミング信号を保持することにより、前記遅延時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記遅延時間測定手段は、前記遅延送信タイミング信号を用いて前記受信タイミング信号を保持することにより、前記遅延時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2無線機は、複数設けられるとともに、各第2無線機は、個別の折り返し時間で前記送信信号を折り返し送信する折り返し手段を含み、
前記折り返し時間は、前記各第2無線機毎に異なる値が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第2無線機は、少なくとも3つ以上設けられ、
前記受信手段は、前記受信信号の電波強度を測定する電波強度測定手段をさらに含み、
前記距離演算手段は、前記電波強度に基づいてそれぞれの第2無線機との通信品質を判定する通信品質判定手段と、自身の位置を同定する位置同定手段とをさらに含み、
前記位置同定手段は、
前記通信品質が所定条件を満たす第2無線機を選択し、前記選択された第2無線機との遅延時間を用いた三点測位に基づき、自身の位置を同定することを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記位置同定手段は、前記電波強度が所定強度以上である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記位置同定手段は、前記電波強度の変動量が所定変動量以下である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする請求項5または6に記載の無線通信装置。
【請求項1】
互いに無線通信する第1無線機と第2無線機とを備え、
前記第1無線機は、
前記第2無線機に対して送信信号を送信するとともに、前記送信信号の送信タイミングで送信タイミング信号を出力する送信手段と、
前記送信信号が前記第2無線機で折り返された受信信号を受信するとともに、前記受信信号の受信タイミングで受信タイミング信号を出力する受信手段と、
前記送信タイミング信号および前記受信タイミング信号に応答して、前記送信タイミング信号に対する前記受信タイミング信号の時間差を遅延時間として測定する遅延時間測定手段と、
前記遅延時間に基づいて、前記第1無線機と前記第2無線機との距離を演算する距離演算手段とを含み、
前記遅延時間測定手段は、並列に接続され互いに遅延特性の異なる複数の遅延素子を有し、前記送信タイミング信号を前記複数の遅延素子を介して遅延させた遅延送信タイミング信号と、前記受信タイミング信号とを用いて前記遅延時間を測定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記遅延時間測定手段は、前記受信タイミング信号を用いて前記遅延送信タイミング信号を保持することにより、前記遅延時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記遅延時間測定手段は、前記遅延送信タイミング信号を用いて前記受信タイミング信号を保持することにより、前記遅延時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2無線機は、複数設けられるとともに、各第2無線機は、個別の折り返し時間で前記送信信号を折り返し送信する折り返し手段を含み、
前記折り返し時間は、前記各第2無線機毎に異なる値が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第2無線機は、少なくとも3つ以上設けられ、
前記受信手段は、前記受信信号の電波強度を測定する電波強度測定手段をさらに含み、
前記距離演算手段は、前記電波強度に基づいてそれぞれの第2無線機との通信品質を判定する通信品質判定手段と、自身の位置を同定する位置同定手段とをさらに含み、
前記位置同定手段は、
前記通信品質が所定条件を満たす第2無線機を選択し、前記選択された第2無線機との遅延時間を用いた三点測位に基づき、自身の位置を同定することを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記位置同定手段は、前記電波強度が所定強度以上である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記位置同定手段は、前記電波強度の変動量が所定変動量以下である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする請求項5または6に記載の無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−256059(P2007−256059A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80468(P2006−80468)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、総務省、「ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発」委託契約、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、総務省、「ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発」委託契約、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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