説明

無線通信装置

【課題】 補聴器使用者が容易にかつ迅速に無線通信を行うことができる携帯電話機等の無線通信装置を提供すること。
【解決手段】 スピーカ8に電気的に並列接続された誘導コイル4を一体に保有し、この誘導コイル4を補聴器3aのテレホンコイル13と磁気結合するように構成した携帯電話機11a。この携帯電話機によって、補聴器使用者が、そのテレホンコイル13に携帯電話機11aの誘導コイル4を近接配置するだけで、取扱い容易でかつ迅速に無線通信を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、補聴器で良質な音声を聴取するのに好適な携帯電話機等の無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種補聴器にはテレホンコイルが内蔵されており、電話の受話器からの信号電流を誘導コイルに流し、生じた漏洩磁束と磁気結合させてテレホンコイルに誘起される電流を増幅しこの増幅された信号を音声に再生することによって、補聴器使用者が電話機で十二分に会話できるようになっている。このような磁気結合は、非接続結合として、電気的に接続させないで情報を交換するものである。
【0003】
例えばハンドフリーリンクと称するものが知られているが、これは、耳穴補聴器、耳かけ補聴器又は箱型の補聴器等と、携帯電話機とを非接続結合させる補助部品である。
【0004】
図5に示すハンドフリーリンク58によれば、スピーカ68及びアンテナ70等を有する携帯電話機61の外部イヤホン端子60に着脱可能なプラグ59、コード56、マイク57及びコード56を順次介して、携帯電話機61で受信された音声信号電流を誘導コイル54に流すように構成されている。
【0005】
そして、補聴器の使用者55の耳66の耳殻52にフック51を引っ掛けて支持した状態で、耳穴69の付近に位置する誘導コイル54と、耳穴補聴器又は耳かけ補聴器(ここでは例えば耳穴補聴器53を図示している。)のテレホンコイル63とを磁気結合(或いは電磁結合)させて、補聴器53に電気信号を伝達し、最終的に補聴器内のスピーカによって耳穴69内に再生音声を伝達する。
【0006】
即ち、図5のA部詳細図に示すように、ハンドフリーリンク58の誘導コイル54を補聴器53のテレホンコイル63に近接配置させ、誘導コイル54に流れる信号電流によってテレホンコイル63に誘起される電流をアンプ65で増幅し、スピーカ64に供給して音声として出力する。
【0007】
なお、使用者55から発せられる音声は、ハンドフリーリンク58のマイク57又は携帯電話機61のマイク77に入力して電気信号に変換し、コード56、プラグ59、更には図示しない携帯電話回路及びアンテナ70等を順次経由させ、アンテナ70から無線出力して送信する。こうして、補聴器の使用者55は、携帯電話機61によって音声の受信のみならず、送信も行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来のハンドフリーリンク58は、本来、自動車の運転時等におけるように両手を使わずに携帯電話機61を使う場合の補助部品であって、純粋に補聴器の使用者のために用意された補助部品ではない。従って、長いコード56が取り扱いの際に邪魔になったり、突起物等に引っ掛けたりして使いづらいものである。
【0009】
しかも、携帯電話機61に電波が着信(受信)したとき、その外部イヤホン端子60にプラグ59を差し込む必要があるので、この受信に即ちに対応することが難しい。また、上記した耳穴補聴器ではなく、箱型の補聴器を用いる場合には、受信への対応がより困難となることは明らかである。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、補聴器等の音声再生機の使用者が、取扱い容易でかつ迅速に無線通信を行うことができる携帯電話機等の無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、スピーカ部に電気的に並列接続された誘導コイルを一体に保有し、この誘導コイルを補聴器等の音声再生機と磁気結合させるように構成した携帯電話機等の無線通信装置に係わるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スピーカ部に電気的に並列接続された誘導コイルを一体に保有し、この誘導コイルを音声再生機と磁気結合又は電磁結合(非接続結合)させるように構成しているので、音声再生機に無線通信装置を近づけるだけで、磁気結合によって受信信号に対応した電流を音声再生機に誘起し、この電流を音声に再生することができる。従って、上述したハンドフリーリンクの如き使用し難い補助部品を用いなくても、聴覚が正常な人(以下、正常者と称する。)が通常使用するのとほぼ同様の状態で補聴器等の使用者が無線通信装置を容易かつ迅速に用いることができる。
【0013】
また、このことは、例えば耳穴補聴器や耳かけ補聴器を用いるときには、携帯電話機を耳の近傍に配置すればよいので、有利であるが、箱型の補聴器を用いる場合にも、補聴器に内蔵されたテレホンコイルに携帯電話機の誘導コイルを近接させるだけで磁気結合が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、前記磁気結合を十分なものとするためには、前記誘導コイルが前記スピーカ部に近接配置されているのが望ましい。
【0015】
また、音声信号を磁気結合によって十分に伝達するためには、前記誘導コイルを前記音声再生機のスピーカ回路部の誘導コイルに近接配置させ、前者の誘導コイルに流れる信号電流によって誘起される後者の誘導コイルに流れる電流を増幅して、前記スピーカ回路部に供給するのが望ましい。
【0016】
また、前記スピーカ回路部から発せられる音声の音量が大きい時に生じうるハウリングを防止するためには、前記スピーカ部に切換スイッチが設けられ、この切換スイッチによって前記スピーカ部が回路的に遮断されて、前記磁気結合が行われるのが望ましい。
【0017】
また、本発明の無線通信装置は、例えば、前記音声再生機としての補聴器と組合せて用いられる携帯電話機として構成されるのがよい。
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0019】
第1の実施の形態
図1及び図3は、本発明の第1の実施の形態を示すものである。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態においては、携帯電話機11aと組み合せて用いられる補聴器3aは、通常の使用条件下は勿論のこと、自動車の運転中等の特殊な条件下でも使用可能に構成され、筐体15内に、アンプ(増幅器)10及びスピーカ9からなるスピーカ回路部を内蔵したものである。
【0021】
この補聴器3aは、耳穴補聴器又は耳かけ補聴器のみならず、通常の使用条件下で用いられる箱型の補聴器であってよいが、特に箱型の補聴器を使用する難聴者にとっても容易に使用できるように携帯電話機11aが構成されている。即ち、無線信号を受信又は送信するアンテナ20、スピーカ8、スピーカ8を配線16によって接続した携帯電話機回路17、スピーカ配線16と電気的に並列接続された誘導コイル4等を筐体14内に内蔵し、特に誘導コイル4を一体に保有している。なお、こうしたコイルは、フェライト材のコアの周囲に巻回したものであってよい。
【0022】
従って、携帯電話機11aの(内部)スピーカ8と並列接続された誘導コイル4が携帯電話機11a内に内蔵されるが、この誘導コイル4は、信号電流を流したときに開放された漏洩磁路を形成し、この漏洩磁束が携帯電話機11aの外部に放出される位置に配置される。ここで、携帯電話機11aのスピーカ8のインピーダンスは例えば10Ω程度であり、誘導コイル4として、数100Ω程度のインピーダンスを持つものであれば、上記のようにスピーカ8と並列に接続しても影響は出ない。
【0023】
また、携帯電話機11aを使用者の耳に当てる部分であるスピーカ8と、使用者の口に当てる部分であるマイク(図示せず)との距離は人間工学に基づいてほぼ定まっているので、耳穴付近に耳穴補聴器又は耳かけ補聴器のテレホンコイル13を配置したときに、携帯電話機11aの誘導コイル4の位置がスピーカ8の位置からあまりにずれていると、テレホンコイル13の位置に誘導コイル4の位置を合せるときに携帯電話機11aのマイクの位置もずれることになり、使用者の口がマイクから位置ずれしてしまう。これでは、使用者の発声音を携帯電話機11aのマイクで拾い難くなることがあるので、これを防止するには、携帯電話機11aの誘導コイル4をスピーカ8から5cm以内の位置に配置するのが望ましい。
【0024】
また、ハウリング防止用の切換スイッチ18を設けているので、難聴者にとって非常に有利である。即ち、例えば、音声の聴取が著しく困難である難聴者5が箱型補聴器3aの再生音のボリウムを上げて携帯電話機11aを使用すると、スピーカ8から発せられる音声との相互作用で通話時にハウリングが起きることがあるので、補聴器3aの使用時にはスピーカ8を切換スイッチ18のオフによって回路的に遮断し、ここから音声を発しないようにしてハウリングを防止することができる。従って、難聴者は聞き取り可能な大きなボリウムの音声を聞くことができる。耳穴補聴器のような補聴器を使用したり、難聴者以外が難聴器を使用するときは、切換スイッチ18をオンしてスピーカ8から音声を発してもよいことは勿論であるが、これは、ハウリングが生じることはないからである。
【0025】
なお、図3(A)及び図3(B)に示すように、耳穴補聴器3aの使用者5が携帯電話機11aによって音声信号を受信する時には、携帯電話機11aの誘導コイル4を耳穴19内の耳穴補聴器3aのテレホンコイル13に近接配置させ、誘導コイル4に流れる信号電流によって誘起されるテレホンコイル13に流れる電流を図1に示したようにアンプ10で増幅してスピーカ9に供給し、音声を耳穴19内に出力する。
【0026】
また、使用者5の口から発せられる音声は、図示しないマイク、携帯電話機回路17及びアンテナ20等を順次経由して無線出力され、携帯電話機11aから音声信号が送信される。
【0027】
本実施の形態によれば、スピーカ8に電気的に並列接続された誘導コイル4を携帯電話機11a内に一体に保有し、この誘導コイル4を補聴器3aのテレホンコイル13と磁気結合するように携帯電話機11aを構成しているので、補聴器3aと携帯電話機11aとを直接近づけることにより磁気結合することができ、使用し難い既述したハンドフリーリンク58等の補助部品を用いる必要がない。これにより、正常者が通常使用するのとほぼ同様の状態で補聴器使用者が携帯電話機11aを容易にかつ迅速に用いることができる。従って、必要最小限の機器構成の携帯電話機11aを提供でき、これを用いて補聴器使用者が簡便に無線通信(受信及び送信)を行うことができる。
【0028】
第2の実施の形態
図2は、本発明の第2の実施の形態を示すものである。
【0029】
本実施の形態による携帯電話機11bは、切換スイッチ18を除去したこと以外は、上述した第1の実施の形態と同様である。
【0030】
従って、上述した第1の実施の形態において切換スイッチ18をオンしたときと同様に、例えば、音声の聴取がそれほど困難でない使用者5にとっては補聴器3aのボリウムを下げたままでも十分に聞き取れるため、スピーカ8からの再生音によってもハウリングが起き難い。即ち、切換スイッチ18を除去することができるので、携帯電話機11bの構造をより簡易化することができる。
【0031】
その他、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態で述べたのと同様の作用及び効果が得られる。
【0032】
第3の実施の形態
図4は、本発明の第3の実施の形態を示すものである。
【0033】
本実施の形態では、難聴者用の箱型の補聴器3bを使用すること以外は、上述した第1の実施の形態と同様である。
【0034】
この箱型の補聴器3bは、耳21の耳穴19に配置するイヤホン12、コード6、マイク7及びテレホンコイル13を有し、本体に内蔵されたテレホンコイル13と携帯電話機11aの誘導コイル4とが近接配置されて磁気結合する。
【0035】
本実施の形態によれば、箱型の補聴器3bを扱う際に、この箱型の補聴器3bに内蔵したテレホンコイル13と携帯電話機11aに内蔵した誘導コイル4とを近接配置するだけで、上述したと同様に磁気結合できるので、上述したと同様に難聴者でも無線通信を容易かつ迅速に行うことができる。
【0036】
その他、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態で述べたのと同様の作用及び効果が得られる。
【0037】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0038】
例えば、誘導コイル4の配置については、携帯電話機11aの筐体14内部に一体に収容されるだけでなく、その一部が携帯電話機11aの表面に露出するように一体に収容してもよい。
【0039】
また、音声再生機としての補聴器3a及び3bにおいて誘導コイル4に対向した2次コイル(図示せず)を付加すれば、この2次コイルに誘起される信号電流を用いて音声を録音する機能も付加することができる。また、本発明を適用できる補聴器として、耳穴補聴器及び耳かけ補聴器の他に、振動式の補聴器を用いることもできる。また、携帯電話機11aを介して配信される音楽等を、両耳にイヤホンを差し込むステレオ方式の補聴器で聴取することもできる。
【0040】
また、本発明は、補聴器の使用者のみならず、音声等を正確に聴取する必要のある聴取者用に適用することもできる。
【0041】
例えば、ヘッドホンステレオ、CDラジカセ、パソコンのCDROMドライブ及びDYDドライブ、トランシーバー、ラジオ、据え置き型電話機の無線式の子機等の特定小電力型無線機、CB(シチズンバンド)無線機、アマチュア無線機、防災無線機、船舶無線機、航空無線機、行政無線機、消防無線機、医療無線機及び警察無線機等のように、携帯電話機以外の無線通信機等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の無線通信装置としての例えば携帯電話機は、補聴器用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態による携帯電話機の概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による携帯電話機の概略断面図である。
【図3】本発明の第1(又は第2)の実施の形態による携帯電話機使用時の正面図(A)及び側面図(B)である。
【図4】本発明の第3の実施の形態による携帯電話機使用時の側面図である。
【図5】従来例による携帯電話機使用時の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…フック、2…耳殻、3a、3b…補聴器、4…誘導コイル、5…使用者、
6…コード、7…マイク、8、9…スピーカ、10…アンプ、
11a、11b…携帯電話機、12…イヤホン、13…テレホンコイル、
17…携帯電話機回路、18…切換スイッチ、19…耳穴、20…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ部に電気的に並列接続された誘導コイルを一体に保有し、この誘導コイルを音声再生機と磁気結合させるように構成した無線通信装置。
【請求項2】
前記誘導コイルが前記スピーカ部に近接配置されている、請求項1に記載した無線通信装置。
【請求項3】
前記誘導コイルを前記音声再生機のスピーカ回路部の誘導コイルに近接配置させ、前者の誘導コイルに流れる信号電流によって誘起される後者の誘導コイルに流れる電流を増幅して、前記スピーカ回路部に供給する、請求項1に記載した無線通信装置。
【請求項4】
前記スピーカ部に切換スイッチが設けられ、この切換スイッチによって前記スピーカ部が回路的に遮断されて、前記磁気結合が行われる、請求項1に記載した無線通信装置。
【請求項5】
前記音声再生機としての補聴器と組合せて用いられる携帯電話機である、請求項1〜4の何れか1項に記載した無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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