説明

無線通信装置

【課題】反射器を内蔵するホスト機器を載置する読み取り面上で十分に広い通信可能エリアを確保し、反射波伝送方式によるデータ読み取り動作を行なう。
【解決手段】反射波読取装置は、反射器を搭載したホスト機器を載置する読み取り面に対して複数の平面アンテナを配設し、各平面アンテナを分配又は合成する分配/合成器と、複数の平面アンテナを同時に使用することと各平面アンテナをそれぞれ単独に使用することを切り替えるアンテナ・スイッチを備えている。そして、反射器側からの変調反射波信号の受信品質を測定し、その測定結果に応じてアンテナ・スイッチを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射波読取器側からの無変調キャリアの送信と、反射器側におけるアンテナの終端操作に基づく受信電波の吸収と反射を利用した反射波伝送方式によりデータ通信を行なう無線通信システムに係り、特に、反射波伝送システムにおいて、反射波読取器として動作し、反射器からの変調反射波信号の読み取りを行なう無線通信装置に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、読み取り面上に載置されたホスト機器に内蔵された反射器から反射波伝送方式によるデータ読み取り動作を行なう無線通信装置に係り、特に、反射器を内蔵するホスト機器を載置する読み取り面において十分に広い通信可能エリアを確保する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自ら電波の発生源を持たず無線でデータを送信する通信システムとしてRFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれる非接触通信システムが知られている。RFIDは、タグとリーダとから構成され、タグは、リーダ側から電波をエネルギ源として受動的に動作し、タグに格納された情報が読み取られる。RFIDの他の呼び方として、「IDシステム」や「データ・キャリア・システム」などがあるが、世界的に共通なのがRFIDシステム、略してRFIDである。日本語に訳すると「高周波(無線)を使用した認識システム」となる。
【0004】
RFIDシステムにおける非接触の通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられる。このうち電波通信方式のRFIDシステムは、受信した無変調キャリアに対し変調処理を施した反射波によりデータを送信する反射器と、反射器からの変調反射波信号からデータを読み取る反射波読取器で構成され、「バックスキャッタ」とも呼ばれる反射波伝送を行なう。
【0005】
反射器は、反射波読取器から無変調キャリアが送られてくると、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作などに基づいてその反射波に変調を施してデータを重畳する。すなわち、反射器側ではキャリア発生源が不要であることから、低消費でデータ伝送動作を駆動する。そして、反射波読取器側では、このような変調反射波を受信し、復調並びに復号処理して伝送データを取得することができる。
【0006】
ここで、反射器においてアンテナの負荷インピーダンスを変化させるためのアンテナ・スイッチを、回路モジュールに組み込んでCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成することもできるが、回路モジュールとは切り離して、ガリウム砒素(GaAs)のIC(Integrated Circuit)で構成することで、低消費電力で高速な切り替え動作が可能となる。後者の場合、反射波変調によるデータ伝送レートが向上するとともに、その消費電力は数10μW以下に抑制される。したがって、無線LAN(Local Area Network)では通信時に数百mW〜数W程度の電力を消費することを考慮すると、反射波通信は一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると圧倒的な性能差を持つと言える(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0007】
反射器を搭載した端末は受信電波を反射する動作を行なうだけであるから、無線局とはみなされず、電波通信に課される法規制の対象外として扱われるという利点もある。また、電磁誘導方式など他の非接触通信システムでは数MHz〜数百MHz(例えば13.56MHz)の周波数を用いるのに対し、反射波通信方式では例えばISM(Industrory Science and Medical Band)と呼ばれる2.4GHz帯(マイクロ波)の高帯域を用いた高速なデータ伝送を実現することができる。
【0008】
例えば、デジタルカメラや、ビデオ・カメラ、携帯電話、携帯情報端末、携帯型音楽再生装置など、消費電力を極力抑えたいモバイル系の端末機器に反射器を組み込み、テレビ、モニタ、プリンタ、パーソナル・コンピュータ(PC)、VTR(Video Tape Recorder)、DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤなど、据え置き型の家電製品などからなるホスト機器に反射波読取器を組み込む。そして、カメラ付き携帯電話やデジタルカメラで撮った画像データを、反射波伝送路を経由でPCにアップロードし、画像データの蓄積や表示出力、プリントアウトなどを行なうことができる。
【0009】
また、反射器機能を備えたメモリカードについて提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。デジタルカメラや携帯電話機など、このようなメモリカードを装着したホスト機器は、有線インターフェースを介してメモリカードへのアクセス動作を行なうことができる。他方、PCやプリンタといった外部機器は、メモリカードを装着しているホスト機器とは独立して、メモリカードからのデータ読み出し動作を反射波伝送路経由で行なうことができる。すなわち、反射波伝送動作を、メモリカードを装着したホスト機器による制御外で制御することができるので、ホスト機器側で反射波伝送制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要がない。
【0010】
図7には、メモリカードに適用した反射波伝送システムの構成例を模式的に示している。図示のシステムは、携帯電話機などのホスト機器120に装着されたメモリカード100と、読み取り面上に載置されたホスト機器120内のメモリカード100から反射波伝送によりデータ読み取り動作を行なう反射波読取装置300で構成される。
【0011】
メモリカード100は、記憶手段を構成するフラッシュ・メモリ103と、メモリカード側コネクタ101と、メモリ/通信制御部102と、無線部104と、アンテナ105で構成される。
【0012】
メモリカード側コネクタ101の接点部分はケースの外面に露出しており、通常のメモリカードと同様にホスト機器120側と接続可能である。フラッシュ・メモリ103は、データを電気的に書き換え可能に格納することができる。メモリ/通信制御部102は、ホスト機器とフラッシュ・メモリ103の間でメモリカード側コネクタ101を介してデータを転送するとともに、フラッシュ・メモリ102のデータを無線部104、アンテナ105を介して反射波読取装置300に反射波で送信する。
【0013】
図8には、無線部104の内部構成例を示している。図示の無線部104は、反射波伝送システムにおける反射器として動作することができる。
【0014】
参照番号200はSPDT(Single−Pole/Double−Throw Switch:単極/双投スイッチ)のアンテナ・スイッチであり、反射波の生成と送受信の切り替えを兼用する。図中、端子cはメモリカード100内のアンテナ105に接続される。
【0015】
無線部104から送信するときには、端子bはベースバンド制御部(図示しない)からの制御信号(TX/RX)によりオフに制御される。そして、ベースバンド制御部より送信データ(TX_DATA)が端子aに加えられる。図中、左端のスイッチは端子dを接地しているため、送信データが1のときはアンテナ105の終端がグランドにショートとなるが、送信データが0のときはアンテナ105の終端がオープンとなる。このようなアンテナ・スイッチ200の切り替え動作(すなわち、アンテナ105終端のスイッチング動作)によって、アンテナ105より受信された無変調キャリアに対して位相変調が施され、内蔵アンテナ105より変調反射波信号として放射される。
【0016】
一方、無線部104で受信するときには、端子bは、図示しないベースバンド制御部よりオン状態に保たれる。したがって、アンテナ105で受信されたASK(Amplitude Shift Keynigt)変調信号は、端子eを経由してASK受信部201に送られ、ここで復調され受信データ(RX_DATA)に変換される。このようにして、受信データは図示しないベースバンド制御部に渡される。
【0017】
また、図9には、図8に示した無線部104と通信を行なう相手の反射波読取装置300の内部構成を模式的に示している。図示の反射波読取装置300は、アンテナ301と、サーキュレータ302と、受信部303と、送信部304と、ベースバンド制御部305で構成される。
【0018】
送信部304は、ベースバンド部305の指示により、無変調キャリアを生成する。この無変調キャリアは、サーキュレータ302を経由してアンテナ301より無線部304に向けて放射される。ここで、サーキュレータ302は送受信を同時に行なう際に、送信波と受信波を分離するために用いられる。
【0019】
上述したように、無線部104では、反射波読取装置300からの無変調キャリアに対して反射波が生成され、この反射波には読み取りデータに応じた位相変調が施されるから、反射波読取装置300には変調反射波として戻ってくる。この変調反射波は、アンテナ301とサーキュレータ302を経由して受信部303で受信されると、in位相(I)とその直角位相(Quadrature:Q)からなるベースバンドIQ信号に変換され、ベースバンド制御部305で復調される。
【0020】
また、読取装置300から無線部104にデータや制御コマンドを送信する場合には、ベースバンド制御部305からの送信データに従って送信部304でASK変調波を生成して、同様にアンテナ301より放射される。
【0021】
ベースバンド制御部305は他の機器とのインターフェースを備えており、例えば読み取った画像データをデコードしてテレビ(図示しない)にビデオ信号として接続し画像表示をしたり、USB(Universal Serail Bus)接続されたPC(図示しない)に画像転送したりすることが可能である。
【0022】
図7に示したように、反射波読取装置300の上面に読み取り面が形成され、メモリカード100を収容したホスト機器120を読み取り面上に載置するという利用形態では、アンテナ301は反射波読取装置300の上面中央に配置される。また、反射波伝送は、比較的近距離の通信を想定し、通信相手からの直接波しか受信しない見通し内通信であること、並びに、自らキャリア発生源を持たない反射器からの反射波の信号強度は微弱となり、さらに電波の往路と復路で減衰されてしまう。このため、アンテナ301には、無変調キャリアを効率よく放射するとともに、その反射波を効率よく受信するために、無線部104(反射器)への指向性を持ち、大きなアンテナ利得を得ることが望まれる。
【0023】
そこで、本発明者らは、読取装置300のアンテナ301として、指向性を有する平面パッチ・アンテナが好適であると思料する。ここで、パッチ・アンテナは、絶縁性物質を介在物として放射導体と導体地板とを対向して配置することにより構成される薄型アンテナであり、放射導体の形状は、特に決まりはないが、大体において矩形若しくは円形が用いられている(例えば、特許文献3を参照のこと)。また、無線メモリカード100内のアンテナ105の位置やホスト機器120におけるメモリカードの挿入位置などによって偏波面を特定できないことから、円偏波の平面パッチ・アンテナがより好ましいと思料する。直線偏波であれば最大利得が大きくなるのに対し、円偏波ではどの方向にも利得があるが利得が3dBほど低下してしまう。
【0024】
しかしながら、デジタルカメラや携帯電話機など既存の製品は当然のことながら無線メモリカードの挿入位置やコネクタの作り、さらには筐体全体の作りは個々に区々であり、また、一般的にホスト機器の方がアンテナより大きい場合が多い。このため、反射波読取装置300の読み取り面に乗せるホスト機器120の位置によっては反射波伝送による通信が困難な場合があり、反射波読取装置300にホスト機器120を置いて通信可能となるエリアが狭いという問題点がある。読み取り面上でユーザが携帯電話機などのホスト機器を何度も置き直すといった具合に通信状態が良好となるよい位置をユーザに探させるという方法も考えられるが、使い勝手が悪く現実的ではない。
【0025】
【特許文献1】特開2005−64822号公報
【特許文献2】特開2006−216011号公報
【特許文献3】特開2006−41563号公報、段落0022〜0024
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、反射波伝送システムにおいて、反射波読取器として動作し、反射器からの変調反射波信号の読み取りを好適に行なうことができる、優れた無線通信装置を提供することにある。
【0027】
本発明のさらなる目的は、読み取り面上に載置されたホスト機器に内蔵された反射器から反射波伝送方式によるデータ読み取り動作を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置を提供することにある。
【0028】
本発明のさらなる目的は、反射器を内蔵するホスト機器を載置する読み取り面において十分に広い通信可能エリアを確保することができる、優れた無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、無変調キャリアを送信するとともに、反射器からの変調反射波信号を読み取る無線通信装置であって、
読み取り対象となる反射器を搭載したホスト機器を載置する読み取り面と、
前記読み取り面に指向性が合わせられた複数の平面アンテナと、
前記の各平面アンテナを分配又は合成する分配/合成器と、
前記複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用することといずれかの平面アンテナを単独で使用することを切り替えるアンテナ切り替え手段と、
送受信動作を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置である。
【0030】
本発明は、無変調キャリアを受信してデータを重畳させた変調反射波を送出する反射器を搭載した反射器と、変調反射波からデータを読み取る反射波読取器を搭載した反射波読取器で構成される、電波の反射技術を利用した無線通信システムに関する。反射波伝送を利用した通信システムによれば、反射器側ではキャリア発生源が不要であることから、消費電力を格段に削減しながらデータ伝送を行なうことができる。
【0031】
反射波伝送システムの1つの典型的な利用形態として、反射器を内蔵したホスト機器を、反射波読取装置が備える読み取り面上に載置して、反射波読取装置側から無変調キャリアを送出して、反射器からの変調反射波信号の読み取ることが挙げられる。
【0032】
反射波読取装置に適用可能なアンテナとして、指向性を有する平面パッチ・アンテナが挙げられる。また、読み取り面上に載置されたホスト機器内での、反射器が持つアンテナの偏波面を特定できないことから、例えばどの方向にも利得がある円偏波の平面パッチ・アンテナがより好ましい反面、利得が3dBほど低下してしまう。
【0033】
反射波読取装置やホスト機器の筐体全体の作りは個々に区々であるとともに、ホスト機器の方がアンテナより大きいことから、反射波読取装置の読み取り面上にホスト機器を載置した際に通信可能となるエリアが狭いという問題がある。
【0034】
これに対し、本発明に係る無線通信装置は、無変調キャリアを送信するとともに、反射器からの変調反射波信号を読み取る反射波読取装置として動作するが、反射器を搭載したホスト機器を載置する読み取り面に指向性が合わせられた複数の平面アンテナと、各平面アンテナを分配又は合成する分配/合成器と、複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用することといずれかの平面アンテナを単独で使用することを切り替えるアンテナ切り替え手段を備え、合成したアンテナと各アンテナを個別に選択できるように構成されている。
【0035】
反射波読取装置としての無線通信装置は、反射器を搭載したホスト機器との接続を確立する際には、まず、前記複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用したとき、並びにいずれかの平面アンテナを単独で使用したときのそれぞれの受信品質を測定する。そして、制御手段は、それぞれの受信品質の測定結果に基づいて、アンテナ切り替え手段による切り替え動作を制御して、複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用し、あるいはいずれかの平面アンテナを単独で使用して反射波伝送による読み取り動作を行なうようにすればよい。
【0036】
例えば、平面アンテナとして円偏波の平面アンテナを読み取り面に複数配置したときには、個々のアンテナの利得は直線偏波の平面アンテナよりも3dB程度低くなるが、全体としてはアンテナの感度範囲は広がり、反射器を置く場所の範囲を広げることが可能となる。
【0037】
また、平面アンテナとして2つの直線偏波のアンテナを用いるときには、それぞれの偏波が直交するように配置する。すなわち、個々の平面アンテナは円偏波アンテナに比べると指向性に偏りがあるものの、一方の平面アンテナは垂直偏波、他方の平面アンテナは水平偏波のアンテナとして動作するようにすることで、複数の円偏波アンテナを用いた上記の場合と同様に、全体としてはアンテナの感度範囲は広がり、反射器を置く場所の範囲を広げることが可能となる。
【0038】
このように、本発明によれば、反射波読取装置の読み取り面において、ホスト機器を置く上での使用可能エリアが広がり、ユーザが何度も置き場を変更する必要が無くなり、利便性が向上する。
【0039】
また、反射波読取装置は、ホスト機器内での(反射器を搭載した)メモリカードの挿入位置やコネクタの構造、ホスト機器の筐体の設計に依存せず、良好なアンテナ感度を得易いので、読み取り動作に対応可能なホスト機器の種類を増やすことができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、反射波伝送システムにおいて、反射波読取器として動作し、反射器からの変調反射波信号の読み取りを好適に行なうことができる、優れた無線通信装置を提供することができる。
【0041】
また、本発明によれば、読み取り面上に載置されたホスト機器に内蔵された反射器から反射波伝送方式によるデータ読み取り動作を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置を提供することができる。
【0042】
また、本発明によれば、反射器を内蔵するホスト機器を載置する読み取り面において十分に広い通信可能エリアを確保することができる、優れた無線通信装置を提供することができる。
【0043】
本発明に係る反射波読取装置は、2以上のアンテナを備え、各アンテナを分配/合成器に接続して、合成したアンテナと各アンテナを個別に選択できるように構成されているので、反射器を内蔵したホスト機器を読取装置に置く上での使用可能エリアが広がり、ユーザが何度も置き場を変更する必要が無くなり、利便性が向上する。また、反射波読取装置は、ホスト機器内での(反射器を搭載した)メモリカードの挿入位置やコネクタの構造、ホスト機器の筐体の設計に依存せず、良好なアンテナ感度を得易いので、読み取り動作に対応可能なホスト機器の種類を増やすことができる。
【0044】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0046】
図1Aには、本発明の一実施形態に係る反射波読取装置300の構成を模式的に示している。また、図1Bには、反射波読取装置300の読み取り面上にホスト機器120を載置した様子を示している。但し、図9に示した反射波読取装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付与している。
【0047】
図9に示した反射波読取装置との主な相違点は、平面パッチ・アンテナを2つ設けて、読取装置300の読み取り面に向けて配置することと、これら2つのアンテナ301及び401の合成と各アンテナを個別に選択できるようにスイッチ402、403、405を設けていることである。
【0048】
各アンテナ301及び401の合成には分配/合成器404が使用される。この分配/合成器404は、例えば、ウィルキンソン・パワーデバイダやブランチライン・カップラなどで構成される。
【0049】
一方の平面アンテナ301と他方の平面アンテナ401を合成して使用して読み取り動作を行なう場合には、ベースバンド制御部305からの制御により、スイッチ402、403をそれぞれ、c側、f側に、スイッチ405をj側にして、分配/合成器404の出力がサーキュレータ302に接続するようにする。
【0050】
また、平面アンテナ301のみ使用して読み取り動作を行なう場合には、スイッチ402をb側、スイッチ405をh側にする。同様に、平面アンテナ401のみ使用する場合には、スイッチ403をe側、スイッチ405をi側にする。
【0051】
このようして、ベースバンド制御部305の指示により、以下の3通りの方法でアンテナはサーキュレータ302を経由して受信部303、送信部304に接続される。
【0052】
(1)→平面アンテナ301と平面アンテナ401の合成アンテナ
(2)→平面アンテナ301
(3)→平面アンテナ401
【0053】
ホスト機器120が読取装置300の読み取り面のほぼ中央に置かれた場合や無線メモリカードがホスト機器120のほぼ中央にある場合は、(1)に従う接続方法が有効である。また、ホスト機器120が読取装置300の読み取り面のどちらか片側に偏って置かれた場合や、無線メモリカードがホスト機器120の片側に寄っている場合には、(2)又は(3)のいずれかに従う接続方法が適応的に有効となる。これは、ホスト機器の仕様及び、ユーザの置き方に依存するため予期することはできない。
【0054】
図2には、2つの平面アンテナ301及び平面アンテナ401を反射波読取装置300の読み取り面上に実際に配置した例を示している。同図において、参照番号500並びに501は各アンテナ301並びに401の給電点をそれぞれ示している。また、各平面パッチ・アンテナの縦横の長さLは使用周波数帯λに対し約λ/2に設計される。図示のように、円偏波の平面パッチ・アンテナを2つ並べて配置することにより、アンテナの感度範囲は広がり、ホスト機器120を置く場所の範囲も広げることが可能となる。
【0055】
また、図3には、反射波読取装置300の読み取り面上における2つの平面アンテナ301及び平面アンテナ401の他の配置例を示している。同図では、平面アンテナ301及び平面アンテナ401として、ともに直線偏波のアンテナが用いられ、それぞれの偏波が直交するように配置されている。図中の参照番号600及び601が給電点であるため、平面アンテナ301は垂直偏波、平面アンテナ401は水平偏波のアンテナとして動作する。このように構成することで、複数の円偏波の平面アンテナを使用した図2に示した構成例と同様に、アンテナの感度範囲は広がり、ホスト機器120を置く場所の範囲も広げることができ、ホスト機器120側の影響を受け難くすることが可能である。
【0056】
図4Aには、反射器を内蔵したメモリカード100を装着するホスト機器120と反射波読取装置300間において反射波伝送を行なうための通信制御シーケンスを示している。但し、ここでは、反射波読取装置300がある一定の間隔でビーコン・フレームを送信することにより、自局のサービス・エリアを報知するという、というサービス・エントリ・シーケンスが採用されているものとする。
【0057】
反射波読取装置300は、ビーコン・フレームを定期的に送信するとともに、ビーコン・フレームの送信後に設けられるエントリ期間エントリ期間において無変調キャリアを送出し続ける。一方、ビーコン・フレームを受信できた反射器はエントリ期間内に受信した無変調キャリアの反射波に重畳させてエントリ・フレームを返信する。
【0058】
また、図4Bには、反射波読取装置300とホスト機器120(反射器)間において、図4Aに示したサービス・エントリ・シーケンスを利用して通信動作を開始する際のシーケンスを示している。
【0059】
反射波読取装置300は、一定の時間間隔でビーコン・フレームの送信を間欠的に行なう。ホスト機器120は、電波到達範囲外ではビーコン・フレームを受信することはできないが、電波到達範囲内に入り、ビーコン・フレームが到来するとその受信処理を実行する。
【0060】
ホスト機器120は、受信したビーコン・フレームのペイロードに記載されている情報に基づいて、使用する通信周波数チャネルの情報や反射波読取装置300の固有IDなどの情報を取得する。そして、反射波読取装置300との接続したい場合には、エントリ期間を利用して、無変調キャリアの反射に重畳させてエントリ・フレームを返す。
【0061】
反射波読取装置300は、エントリ・フレームの記載内容に基づいて、ホスト機器120の固有IDや、設定可能な通信パラメータの情報などを取得する。そして、ホスト機器120と通信したいときには、通信パラメータなどの指定情報をペイロードに記載した接続要求フレームを送信する。これに対し、ホスト機器120は、接続要求に応じるときには、接続結果などをペイロードに記載した接続応答フレームを返し、これによって接続が確立する。接続が確立している期間は、反射波読取装置300からのコマンド・フレームの送信と、これに応じたホスト機器120によるレスポンス・フレームの返信が繰り返し実行される。
【0062】
なお、通信制御シーケンスの詳細に関しては、本出願人に既に譲渡されている特願2006−270365号明細書を参照されたい。
【0063】
図5には、通信動作を開始する際において、反射波読取装置300が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0064】
反射波読取装置300は、まず、スイッチ402、403、405を制御して、平面アンテナ301及び平面アンテナ401の同時使用を選択する(ステップS1)。
【0065】
反射波読取装置300は、ビーコン信号を送信した後(ステップS2)、読み取り面上に載置されたホスト機器120からのエントリ・フレーム並びに接続要求フレームの受信を待機する(ステップS3)。
【0066】
ここで、ホスト機器120からのエントリ・フレーム並びに接続要求フレームを受信したときには、少なくとも一方のフレームを利用して、ホスト機器120からの反射波信号の受信レベルを測定する(ステップS4)。
【0067】
このとき、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができたときには(ステップS5のYes)、ステップS12に進む(後述)。
【0068】
一方、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができなかったときには(ステップS5のNo)、スイッチ402及び405を制御して、一方の平面アンテナ301を選択する(ステップS6)。そして、次のビーコン送信タイミングが到来すると、ビーコン・フレームを送信して(ステップS7)、再びホスト機器120からのエントリ・フレーム並びに接続要求フレームの受信を待機する。このとき、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができたならば(ステップS8のYes)、ステップS12に進む(後述)。
【0069】
また、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができなかったときには(ステップS8のNo)、スイッチ403及び405を制御して、今度は他方の平面アンテナ401を選択し(ステップS9)、次のビーコン送信タイミングが到来すると、ビーコン・フレームを送信する(ステップS10)。このとき、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができたならば(ステップS11のYes)、ステップS12に進む(後述)。
【0070】
反射波読取装置300は、2つの平面アンテナ301及び401を同時に使用するか、又はいずれか一方の平面アンテナのみを使用することで、ホスト機器120からの反射波信号を一定のレベル以上で受信することができたときには、当該使用中の平面アンテナを用いて、ホスト機器120に対して接続応答信号を送信する(ステップS13)。その後、ホスト機器120との通信中のフェーズに入る。
【0071】
図5に示した処理手順では、反射波読取装置300は、ホスト機器120から接続要求信号を受信できた時点で接続応答信号を送信して通信中のフェーズに移行するようになっている。その代替案として、受信した接続要求信号の受信レベルを測定して、一定のレベル以上で受信できた場合という条件を付けるようにしてもよい。図6には、この場合の反射波読取装置300が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。図示のように、いずれの平面アンテナ301並びに401のいずれを用いても受信レベルが閾値以上で接続要求信号を受信できないときには(ステップS11)、その閾値を限度値まであるステップで下げていく(ステップS13)。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態に係る反射波読取装置300の構成を模式的に示した図である。
【図1B】図1Bは、反射波読取装置300の読み取り面上にホスト機器120を載置した様子を示した図である。
【図2】図2は、複数の平面アンテナを反射波読取装置の読み取り面上に実際に配置した様子を示した図である。
【図3】図3は、反射波読取装置300の読み取り面上における2つの平面アンテナ301及び平面アンテナ401の他の配置例を示した図である。
【図4A】図4Aは、反射器を内蔵したメモリカード100を装着するホスト機器120と反射波読取装置300間において反射波伝送を行なうための通信制御シーケンスを示した図である。
【図4B】図4Bは、反射器を内蔵したメモリカード100を装着するホスト機器120と反射波読取装置300間において反射波伝送を行なうための通信制御シーケンスを示した図である。
【図5】図5は、通信動作を開始する際に反射波読取装置300が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図6】図6は、通信動作を開始する際に反射波読取装置300が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は、メモリカードに適用した反射波伝送システムの構成例を模式的に示した図である。
【図8】図8は、無線部104の内部構成例を示した図である。
【図9】図9は、図8に示した無線部104と通信を行なう相手の読取装置300の内部構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0074】
100…メモリカード
101…メモリカード側コネクタ
102…メモリ/通信制御部
103…フラッシュ・メモリ
104…無線部
105…アンテナ
120…ホスト機器
200…アンテナ・スイッチ
201…ASK受信部
300…反射波読取装置
301、401…アンテナ
302…サーキュレータ
303…受信部
304…送信部
305…ベースバンド処理部
402、403、405…アンテナ選択スイッチ
404…分配/合成器
500、501、600、601…給電点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無変調キャリアを送信するとともに、反射器からの変調反射波信号を読み取る無線通信装置であって、
読み取り対象となる反射器を搭載したホスト機器を載置する読み取り面と、
前記読み取り面に指向性が合わせられた複数の平面アンテナと、
前記の各平面アンテナを分配又は合成する分配/合成器と、
前記複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用することといずれかの平面アンテナを単独で使用することを切り替えるアンテナ切り替え手段と、
送受信動作を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記反射器からの反射波の受信品質を測定する測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記複数の平面アンテナのうち2以上を同時に使用したとき、並びにいずれかの平面アンテナを単独で使用したときのそれぞれの受信品質の測定結果に基づいて、アンテナ切り替え手段による切り替え動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記測定手段は、反射波の受信レベルを受信品質として測定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記複数の平面アンテナは、円偏波のアンテナである、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数の平面アンテナは、それぞれの偏波が直交するように配置された2つの直線偏波のアンテナを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。


【図1A】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−277922(P2008−277922A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116156(P2007−116156)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】