説明

無限軌道の駆動構造

【課題】無限軌道の捩れを防止して、スプロケットから無限軌道が外れにくい無限軌道構造を提供する。
【解決手段】
走行装置に設けられたスプロケットと係合して駆動される無限軌道の駆動構造であって、上記無限軌道は、長さ方向に沿って連続して設けられた方形状の複数の構成部と、上記構成部間に配置された薄肉状部位とにより形成され、上記薄肉状部位は切断可能に形成され、幅方向の全体に亘って形成されている。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケットと係合して駆動される無限軌道の駆動構造に係り、特に、ロボットコンテストに使用される走行装置の無限軌道として使用され、捩れの発生を防止してスプロケットから外れにくい無限軌道の駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中学校・高等学校、高等専門学校等において、各学生同士が作成したロボット同士をゲーム形式で対戦形式で、箱を積み上げたり、ボールを搬送したりする適宜の作業を行う優劣を競うロボットコンテストが開催されている。
上記ロボットコンテストに際しては、各学生がアイデアを出しながら、工作パーツを組み合わせることにより、各種のロボットが製作されている。
【0003】
このような工作パーツとしては、例えば、ロボットの移動手段として構成された走行装置があり、上記ロボットコンテストにおいては、相手のロボットとの対戦競技の中で、段差のある部位や、様々な障害物を乗り越える必要があることから、ロボットの走行装置において無限軌道を使用する場合も多い。
【0004】
上記無限軌道は任意の長さに切断して使用することができるように、無限軌道を構成する多数の構成部を長さ方向に並べて配置し、無限軌道を走行装置に設けられたスプロケットと係合させて駆動するために、上記各構成部にはスプロケットとの係合用の係合孔が形成されている。
【特許文献1】特開2002−239260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1所載の無限軌道は、各構成部に形成されやスプロケットとの係合用の上記係合孔は無限軌道の幅方向中央において一箇所のみ設けられ、上記スプロケットに設けられている爪片と係合している。
また、無限軌道の長さ方向において各構成部の間には、無限軌道の幅方向に沿って設けられたスリットが形成され、各構成部は、無限軌道の幅方向の中間部に設けられた薄肉部によってのみ互いに接続されている。従って、上記無限軌道は、上記スリットが開くことにより、幅方向の両端部位が変形し、上記無限軌道が幅方向に対し捩れやすいため、上記無限軌道がスプロケットから外れやすいという不具合を生じていた。
【0006】
上記無限軌道を走行装置に使用した場合、上記無限軌道は横断面略矩形状に形成されているため、上記無限軌道は走行面に対し、上記無限軌道の走行面側全体として接触することとなる。従って、上記無限軌道をロボットの走行装置として使用して、上記ロボットを走行させた場合には、上記無限軌道は走行面に接触して大きな摩擦抵抗を受けることになる。上記走行面と、無限軌道との間の摩擦が大きくなると、上記ロボットを旋回させたときなどに、上記無限軌道に捩れが生じ、その捩れが原因で、無限軌道が上記スプロケットから外れて走行不能になるという、不具合があった。
また、無限軌道が捩れることにより、無限軌道の幅方向に設けられている上記スリットが開口されることとなり、上記無限軌道が一層捩れやすく、上記捩れにより、無限軌道がスプロケットから外れやすいという不具合があった。
そこで本発明の課題は、無限軌道の捩れを防止して、スプロケットから無限軌道が外れにくい無限軌道構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、走行装置に設けられたスプロケットと係合して駆動される無限軌道の駆動構造であって、上記無限軌道は、長さ方向に沿って連続して設けられた方形状の複数の構成部と、上記構成部間に配置された薄肉状部位とにより形成され、上記薄肉状部位は切断可能に形成され、幅方向の全体に亘って形成されていることを特徴とする。
即ち、上記無限軌道は、各構成部の間に設けられた上記薄肉状部位で容易に曲げることができるので、スプロケットに確実に巻き付けて係合させることができる。
また、上記無限軌道の長さ寸法を短縮したい場合は、各構成部の間に設けられた上記薄肉状部位で切断すればよい。
【0008】
また、請求項2記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記構成部の幅方向横断面は、上記構成部の表面部側において、上記構成部の幅方向中央部の厚さ寸法が幅方向両端部位の厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部の幅方向両端部から、幅方向中央部に向かって傾斜していることを特徴とする。
即ち、上記無限軌道を走行装置として使用する場合、上記各構成部の幅方向中央部が走行面に接触し、幅方向両端部は走行面に対し常に接触することはなく、非接触状態となる場合もあるので、走行時に走行面から受ける摩擦抵抗が減少することになる。
【0009】
また、請求項3記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記構成部は幅広に形成されると共に、幅方向両側部に夫々スプロケットに係合しうるスプロケット係合孔部が設けられていることを特徴とする。
即ち、上記各構成部は捩れにくくなるように幅広に形成されている。また、スプロケットと係合して駆動される際に、スプロケットから受ける力が1箇所に集中して捩れやすくなるのを防止するため、スプロケットから受ける力が幅方向の両側部位に夫々分散するように、スプロケットに係合しうるスプロケット係合孔部が幅方向両側部に夫々配置されている。
【0010】
また、請求項4記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は、長さ方向各端部同士が連結部材を介し接続しうるように形成され、上記各構成部には、上記各構成部の幅方向中間部と幅方向両端部とに夫々上記連結部材が係合しうる連結孔部が形成されていることを特徴とする。
即ち、無限軌道の端部同士は連結部材を介し接続されるが、その接続部で捩れが発生するのを防止するために、上記各構成部と連結部材は、幅方向中間部と幅方向両端部の3箇所で夫々係合されるように構成されている。
【0011】
また、請求項5記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記各構成部は、平面長方形状に形成され、設置面と当接する表面部には幅方向に沿って形成された滑り止め用の凸部が形成されると共に、上記各構成部の裏面部には、幅方向において上記スプロケット係合孔部の両外側位置に案内突起が形成されていることを特徴とする。
即ち、上記無限軌道を走行装置として使用する場合、上記凸部が走行面に接触して滑り止め効果を発揮する。また、スプロケットと係合させた場合に、上記案内突起がスプロケットの両側面をガイドし、無限軌道がスプロケットに対し幅方向に位置ずれするのを防止する。
【0012】
また、請求項6記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は可撓性を有する素材により形成され、上記連結部材は上記無限軌道よりも大きな剛性を有する素材により形成されていることを特徴とする。
即ち、上記無限軌道はスプロケットの周囲を支障なく周回できるように可撓性を有する素材により形成されている。また、上記連結部材は捩れを含む変形を生じてスプロケットから安易に外れないように、剛性を有する素材により形成されている。
【0013】
また、請求項7記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は、運動を伝達するベルトコンベヤーとして使用されることを特徴とする。
即ち、本発明に係る上記無限軌道は、走行装置として使用される他、運動伝達機構としても使用可能である。
【0014】
また、請求項8記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は所定長さに切断されて往復運動する部材に取り付けられ、ピニオンとして使用される上記スプロケットと係合して駆動されることにより、回転運動を直進往復運動に変換するラックとして使用されることを徴とする。
即ち、本発明に係る上記無限軌道は、走行装置として使用される他、運動変換機構としても使用可能である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、走行装置に設けられたスプロケットと係合して駆動される無限軌道の駆動構造であって、上記無限軌道は、長さ方向に沿って連続して設けられた方形状の複数の構成部と、上記構成部間に配置された薄肉状部位とにより形成され、上記薄肉状部位は切断可能に形成され、幅方向の全体に亘って形成されていることから、上記薄肉状部位において各構成部の間をナイフやハサミにより切断して、無限軌道を所望の長さ寸法にすることができる。
また、上記薄肉状部位は幅方向の全体に亘って設けられ、上記課題で述べたようなスリットが存在しないので、スリットが開いて各構成部が捩れやすくなるといった不具合が解消される。したがって、無限軌道の捩れが防止されてスプロケットから外れにくくなる。
【0016】
また、請求項2記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記各構成部の幅方向横断面は、上記各構成部の表面部側において、上記各構成部の幅方向中央部の厚さ寸法が幅方向両端部位の厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部の幅方向両端部から、幅方向中央部に向かって傾斜していることから、スプロケットと係合させて駆動し、例えば床の上で走行させた場合に、各構成部の幅方向中央部のみが床に接触することになるので、床との接触面積の増大による摩擦の増大を抑制することができる。したがって、旋回する場合などに、床との摩擦により無限軌道が捩れてスプロケットから外れるという不具合を解消することができる。
【0017】
また、請求項3記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記各構成部は幅広に形成されると共に、幅方向両側部に夫々スプロケットに係合しうるスプロケット係合孔部が設けられていることから、各構成部は幅方向の両側部の2ヶ所がスプロケットと係合するので、無限軌道の幅方向の両側部に均等にスプロケットの駆動力が作用することになり、捩れにくくなる。したがって、捩れにより無限軌道がスプロケットから外れるという不具合を解消することができる。
【0018】
また、請求項4記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は、長さ方向各端部同士が連結部材を介し接続しうるように形成され、上記各構成部には、上記各構成部の幅方向中間部と幅方向両端部とに夫々上記連結部材が係合しうる連結孔部が形成されていることから、上記各構成部と上記連結部材は、幅方向の3箇所で互いに接続することになり、上記連結部材が捩れにくくなる。したがって、無限軌道が連結部で捩れることによりスプロケットから外れるのを防止することができる。
【0019】
また、請求項5記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記各構成部は、平面長方形状に形成され、設置面と当接する表面部には幅方向に沿って形成された滑り止め用の凸部が形成されると共に、上記各構成部の裏面部には、幅方向において上記スプロケット係合孔部の両外側位置に案内突起が形成されていることから、無限軌道の表面部が例えば床等に接触した場合に上記凸部が滑り止め効果を生じて床等を確実にグリップすることができる。
また、上記スプロケット係合孔部に裏面側からスプロケットが係合した場合に、上記案内突起がスプロケットの両側面の外側に位置して幅方向の位置ずれが防止されるので、スプロケットがスプロケット係合孔部から外れにくくなり、無限軌道の捩れが防止される。
【0020】
また、請求項6記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道の各構成部は可撓性を有する素材により形成されていることから、スプロケットに巻き付くように自在に変形させて、スプロケットに確実に係合させることができる。
また、上記連結部材は上記無限軌道よりも大きな剛性を有する素材により形成されていることから、上記連結部材が変形しにくく、上記無限軌道が連結部において捩れることが防止される。したがって、無限軌道が連結部においてスプロケットから外れる可能性が少なくなる。
【0021】
また、請求項7記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は、運動を伝達するベルトコンベヤーとして使用されることから、上記ベルトコンベヤーがスプロケットから外れにくい伝達機構を構成することができ、有用性が増大する。
【0022】
また、請求項8記載の本発明に係る無限軌道の駆動構造は、上記無限軌道は所定長さに切断されて往復運動する部材に取り付けられ、ピニオンとして使用される上記スプロケットと係合して駆動されることにより、回転運動を直進往復運動に変換するラックとして使用されることから、実物のラック機構を用いることなく上記部材を確実に往復運動させることができ、有用性が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る無限軌道11の駆動構造は、図1に示すように、走行装置13に設けられたスプロケット15と係合して駆動されるものであって、上記無限軌道11は、図7及び図8に示すように、長さ方向に沿って連続して設けられた方形状の複数の構成部21と、上記構成部21間に配置された薄肉状部位22とにより形成され、図4〜図6示すように、上記薄肉状部位22は切断可能に形成され、幅方向の全体に亘って形成されている。
【0024】
また、上記各構成部21の幅方向横断面は、図6に示すように、上記各構成部21の表面部側において、上記各構成部21の幅方向中央部Aの厚さ寸法が幅方向両端部位Bの厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部21の幅方向両端部Bから、幅方向中央部Aに向かって傾斜している。
【0025】
また、上記各構成部21は幅広に形成されると共に、図4及び図5に示すように、幅方向両側部に夫々スプロケット15に係合しうるスプロケット係合孔部25a,25bが設けられている。
【0026】
また、上記無限軌道11は、図7及び図8に示すように、長さ方向各端部同士が連結部材20を介し接続しうるように形成され、上記各構成部21には、図4及び図5に示すように、上記各構成部21の幅方向中間部と幅方向両端部とに夫々上記連結部材20が係合しうる連結孔部24,23a,23bが形成されている。
【0027】
また、上記各構成部21は、平面長方形状に形成され、図4に示すように、表面部35には幅方向に沿って形成された滑り止め用の凸部37bが形成されると共に、上記各構成部21の裏面部36には、図5に示すように、幅方向において上記スプロケット係合孔部25a,25bの両外側位置に案内突起39a,39bが形成されている。
【0028】
また、上記無限軌道11は可撓性を有する素材により形成され、上記連結部材20は上記無限軌道よりも大きな剛性を有する素材により形成されている。
【0029】
また、他の実施形態においては、上記無限軌道11は、図13に示すように、運動を伝達するベルトコンベヤーとして使用される。
さらに、他の実施形態においては、上記無限軌道11は、図14に示すように、所定長さに切断されて往復運動する部材に取り付けられ、ピニオン50として使用される上記スプロケット46と係合して駆動されることにより、回転運動を直進往復運動に変換するラック49として使用される。
【実施例1】
【0030】
図1〜図12は本発明の実施例1に係る無限軌道11の駆動構造を示したものである。
本実施例1では、上記無限軌道11は、図1に示すように、走行ロボットの走行装置13を構成する走行ベルト12として使用されている。
上記走行ベルト12は、走行ロボット本体(図示せず)の左右両側に夫々配置された走行装置13に組み付けられている。
上記走行装置13は、図2に示すように、適宜な間隔をおいて平行に配置された一対のフレーム部材14a,14bの長さ方向両端に夫々駆動スプロケット15と、従動輪16が配置され、上記駆動スプロケット15と上記従動輪16は2枚の上記フレーム部材14a,14bの間に挟まれて、回転可能に支持されている。
上記駆動スプロケット15は、図2及び図3に示すように、上記駆動スプロケット15の軸方向に所定の間隔寸法をおいて設けられた2列のスプロケットにより形成され、上記駆動スプロケット15の全周部位に一定ピッチをおいて爪片17が突設されている。
また、図1及び図2に示すように、上記フレーム部材14a,14bの適宜箇所には複数のテンションプーリ18a,18b,18c,18dが配置されている。
【0031】
上記無限軌道11は、図1に示すように、ベルト状に形成され、その両端が接続されて無端ベルト状の走行ベルト12として構成され、上記駆動スプロケット15、上記従動輪16及び上記テンションプーリ18a,18b,18c,18d等の周囲に巻き掛けされ、上記駆動スプロケット15の各爪片17に係合している。
上記駆動スプロケット15の回転軸19には、図示はしないが、モータの回転が歯車減速機構を介して伝達されている。
【0032】
上記無限軌道11は、図1に示すように、ベルト状に形成され、その両端が接続されて上記のように無端ベルト状の走行ベルト12が構成されている。
上記走行装置13は、上記駆動スプロケット15と上記従動輪16間の距離寸法を任意に変更可能に形成されている。したがって、上記距離寸法を変更する場合は上記走行ベルト12の全長もそれに合わせて変化させる必要がある。
そのために、上記無限軌道11は所要位置で切断することにより全長を短縮したり、上記無限軌道11の長さ方向の端部に他の無限軌道構成部材を接続して全体を伸長しうるように形成されている。
【0033】
上記無限軌道11は、可撓性を有する素材であるEVAにより形成され、図7及び図8に示すように、一定形状の多数の構成部21を長さ方向に連設して構成されている。
【0034】
上記各構成部21は、図4及び図5に示すように、平面長方形の板状に形成され、各構成部21は、図7及び図8に示すように、上記無限軌道11の長さ方向に沿って一定の間隔寸法をおいて連続的に配置されている。
上記各構成部21の境界部は、図4及び図5に示すように、ナイフやハサミで容易に切断可能に、かつ容易に曲げられるように薄肉状部位22に形成されている。
【0035】
上記各構成部21には、図4及び図5に示すように、幅方向両端部に夫々連結孔部23a,23bが穿設されると共に、幅方向中央部には中央連結孔部24が穿設されている。
また、上記各構成部21には、図4及び図5に示すように、上記中央連結孔部24の幅方向両側に夫々スプロケット係合孔部25a,25bが設けられている。
【0036】
上記無限軌道11の各構成部21の表面部35には、図4に示すように、上記無限軌道11の長さ方向に対し直交するように滑り止め用の凸部37bが形成されている。
上記滑り止め用の凸部37bは、図4及び図6に示すように、上記各構成部21の幅方向中央部Aの厚さ寸法が幅方向両端部位Bの厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部21の幅方向両端部Bから、幅方向中央部Aに向かって傾斜している。
【0037】
また、上記無限軌道11の各構成部21の裏面部36には、図5に示すように、上記スプロケット係合孔部25a,25bの両側位置に夫々、上記無限軌道11の長さ方向に沿って幅方向の位置ずれ防止用の案内突起39a,39bが設けられている。
【0038】
図1に示すように、上記無限軌道11の両端を接続して無端ベルト状にしたり、上記無限軌道11に他の無限軌道構成部材を接続して全体を伸長する場合は、図9及び図10に示すような連結部材20が使用されている。
【0039】
上記連結部材20は、剛性を有する素材であるPP(ポリプロピレン)により形成され、図9及び図10に示すように、基板部26と、連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bとを有している。
【0040】
上記基板部26は、図9及び図10に示すように、上記無限軌道11の上記構成部21と同一形状で、平面長方形状に形成され、厚さ寸法も同一に設定されている。
【0041】
上記連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bは、図9及び図10に示すように、端部側連結ピン部27a,27b,27c,27dと、中央連結ピン部28a,28bから成り、上記端部側連結ピン部27a,27b,27c,27dは、図7〜図12に示すように、無限軌道11の幅方向両端部に設けられている上記連結孔部23a,23bに係合しうるように形成され、又、上記中央連結ピン部28a,28bは上記無限軌道11の幅方向中央部に設けられている上記中央連結孔部24に係合しうるように形成されている。
即ち、上記連結孔部23a,23bと上記端部側連結ピン部27a,27b,27c,27d、上記中央連結孔部24と上記中央連結ピン部28a,28bは、夫々、上記無限軌道11の幅方向において同一位置に配置されている。
【0042】
上記連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bは、図10に示すように、上記基板部26の裏面部31から突出して形成されている。
即ち、上記連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bは、図10に示すように、上記基板部26の裏面部31に基端部が接続されると共に、図9に示すように、先端部が上記基板部26の両側面部33a,33bの外側を表面部32側へ向かうように配置されている。
即ち、上記連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bの先端部は、上記構成部21の上記連結孔部23a,23b及び中央連結孔部24に対し裏面側から圧入しうるように形成されている。
また、上記連結ピン部27a,27b,27c,27d,28a,28bの先端部には、図9に示すように、上記連結孔部23a,23b及び中央連結孔部24と係合しうる係止突部29a,29b,29c,29d,30a,30bが形成されている。
【0043】
また、図9及び図10に示すように、上記無限軌道11の幅方向両端部に夫々形成された端部側連結ピン部27a,27b,27c,27dは横断面略円形に形成され、上記無限軌道11の幅方向中央部に設けられた中央連結ピン部28a,28bは横断面方形で、かつ上記端部側連結ピン部27a,27b,27c,27dより大きな断面積を有するように形成されている。
【0044】
また、図9及び図10に示すように、設置面と当接する上記無限軌道の各構成部及び、上記連結部材の基板部には、夫々上記スプロケット係合孔部25a,25bとスプロケット係合孔部34a,34bが無限軌道の幅方向において略同一の位置となるように設けられている。
【0045】
図9に示すように、設置面に当接する上記連結部材20の基板部26の表面部32及び上記各構成部21には、夫々滑り止め用の凸部37bと、滑り止め用の凸部37aとが無限軌道の幅方向同一の位置となるように形成されている。
上記凸部37aも、上記各構成部21に形成された上記滑り止め用の凸部37bと同様に、上記基板部26の幅方向中央部Cの厚さ寸法が幅方向両端部位Dの厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記基板部26の幅方向両端部Dから、幅方向中央部Cに向かって傾斜している。
また、上記連結部材20の基板部26の裏面部31には、図10に示すように、上記各構成部21に形成された上記案内突起39a,39bと同一配置で、同じく幅方向の位置ずれ防止用の案内突起38a,38bが設けられている。
【0046】
上記無限軌道11同士を接続する場合、図11及び図12に示すように、上記連結部材20の基板部26を、両側の無限軌道11の長さ方向の端部に夫々位置する構成部21の間に配置し、上記連結部材20の上記端部側連結ピン部27a,27b,27c,27dを両側に位置する上記構成部21における上記連結孔部23a,23bに係合させると共に、上記中央連結ピン部28a,28bを上記構成部21における上記中央連結孔部24に係合させる。
これにより、図7及び図8に示すように、両側の上記無限軌道11同士を上記連結部材20を介し一連に接続することができる。
【0047】
以下、上記実施例1の作用について説明する。
上記実施例1に係る無限軌道11は、長さ方向に沿って一定の間隔寸法をおいて連続して設けられた方形状の各構成部21により形成され、上記各構成部21は、切断可能な薄肉状部位22を介して長さ方向に沿って連続的に形成されていることから、上記薄肉状部位22で切断することにより、上記無限軌道11を所望の長さ寸法にすることができる。
また、上記無限軌道11における上記薄肉状部位22は幅方向の全体に亘って形成されており、スリットを有しないことから、スリットが開いて無限軌道が捩れるという不具合を回避することができる。したがって、スプロケット15から外れにくくなる。
【0048】
また、上記各構成部21の幅方向横断面は、図6に示すように、上記各構成部21の表面部側において、上記各構成部21の幅方向中央部Aの厚さ寸法が幅方向両端部位Bの厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部21の幅方向両端部Bから、幅方向中央部Aに向かって傾斜していることから、上記無限軌道11を走行装置13として使用する場合、上記構成部21の表面部35は幅方向の中央部のみが走行面に接触し、幅方向両端部位は走行面に非接触状態となるので、走行面から受ける摩擦抵抗が減少する。したがって、旋回する場合などに、摩擦が小さいので捩れにくくなり、スプロケット15から外れにくくなる。
【0049】
また、上記各構成部21は幅広に形成されることから、一層捩れにくくなる。また、上記各構成部21幅方向両側部に夫々スプロケット15に係合しうるスプロケット係合孔部25a,25bが設けられていることから、スプロケット15から受ける駆動力が中央1箇所に集中せず、幅方向の両側部位に分散されるので、捩れにくくなる。したがって、スプロケット15からの脱輪が防止される。
【0050】
また、上記無限軌道11は、長さ方向各端部同士が連結部材20を介し接続しうるように形成されていることから、無限軌道11の全長を伸長させたり、端部同士を接続して無端ベルト状にすることが可能である。
また、上記各構成部21には、幅方向中間部と幅方向両端部とに夫々上記連結部材20が係合しうる連結孔部24,23a,23bが形成されていることから、上記各構成部21と上記連結部材20は、幅方向中間部と幅方向両端部の3箇所で接続されることになる。したがって、無限軌道11は接続部において捩れにくくなり、上記連結部材20が捩れにより無限軌道11から外れるのを防止することができる。
【0051】
また、上記各構成部21の表面部35には幅方向に沿って形成された滑り止め用の凸部37bが形成されていることから、上記凸部37bが走行面を確実にグリップして走行が安定する。
また、上記各構成部21の裏面部36には、幅方向において上記スプロケット係合孔部25a,25bの両外側位置に案内突起39a,39bが形成されていることから、スプロケット15が無限軌道11に対し幅方向に位置ずれせず、スプロケット15の爪片17がスプロケット係合孔25a,25bから外れない。
【0052】
また、上記無限軌道11は可撓性を有する素材により形成されるが、上記連結部材20は上記無限軌道11よりも大きな剛性を有する素材により形成されていることから、上記連結部材20の捩れを含む変形が防止され、スプロケット15から外れにくくなる。
【実施例2】
【0053】
また、図13は本発明の実施例2に係る動力伝達機構40を示したものである。
上記無限軌道11は、上記連結部材20を介して端部に位置する構成部21同士が接続されてエンドレスの輪状に形成され、ベルトコンベヤー11として使用されている。
上記無限軌道11は駆動軸42に取り付けられた駆動スプロケット41と、従動軸44に取り付けられた従動スプロケット43間に巻き掛けされ、上記駆動軸42の回転力を上記駆動軸42に伝達している。
【実施例3】
【0054】
また、図14は本発明の実施例3に係る運動変換機構45を示したものである。
上記無限軌道11は、上記連結部材20を介して端部に位置する構成部21同士が接続されて所要長さの線状に形成され、往復運動するスライド部材48の上面部に取り付けられることによりラック49として使用されている。
上記ラック49としての上記無限軌道11には、ピニオン50として使用される駆動スプロケット46が係合され、上記駆動スプロケット46の軸47の回転が上記スライド部材48の往復直進運動に変換されている。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、スプロケットで駆動される無限軌道の端部同士を連結部材を介して接続する全ての接続構造に適用可能である。

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を使用して構成された走行部の側面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を装着する走行装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を装着する走行装置における駆動スプロケットの斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を構成する一つの構成部の表面側斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を構成する一つの構成部の裏面側斜視図である。
【図6】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造を構成する一つの構成部の側面図である。
【図7】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造の表面側斜視図である。
【図8】本発明の実施例1に係る無限軌道の駆動構造の裏面側斜視図である。
【図9】本発明の実施例1に係る無限軌道を接続するために使用する連結部材の表面側斜視図である。
【図10】本発明の実施例1に係る無限軌道を接続するために使用する連結部材の裏面側斜視図である。
【図11】本発明の実施例1に係る無限軌道と連結部材の配置関係を示す表面側斜視図である。
【図12】本発明の実施例1に係る無限軌道と連結部材の配置関係を示す裏面側斜視図である。
【図13】本発明の実施例2に係る無限軌道を使用した動力伝達機構の側面図である。
【図14】本発明の実施例3に係る無限軌道を使用した運動変換機構の側面図である。
【符号の説明】
【0057】
11 無限軌道
12 走行ベルト
13 走行装置
14a,14b フレーム部材
15 駆動スプロケット
16 従動輪
17 爪片
18 テンションプーリ
19 回転軸
20 連結部材
21 構成部
22 薄肉状部位
23a,23b 連結孔部
24 中央連結孔部
25a,25b スプロケット係合孔部
26 基板部
27a,27b,27c,27d 連結ピン部
28a,28b 連結ピン部
29a,29b,29c,29d 係止突部
30a,30b 係止突部
31 裏面部
32 表面部
33a,33b 側面部
34a,34b スプロケット係合孔部
35 表面部
36 裏面部
37a,37b 滑り止め用凸部
38a,38b 位置ずれ防止用突起
39a,39b 位置ずれ防止用突起
40 動力伝達機構
41 駆動スプロケット
42 駆動軸
43 従動スプロケット
44 従動軸
45 運動変換機構
46 駆動スプロケット
47 軸
48 スライド部材
49 ラック
50 ピニオン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に設けられたスプロケットと係合して駆動される無限軌道の駆動構造であって、
上記無限軌道は、長さ方向に沿って連続して設けられた方形状の複数の構成部と、上記構成部間に配置された薄肉状部位とにより形成され、
上記薄肉状部位は切断可能に形成され、幅方向の全体に亘って形成されていることを特徴とする無限軌道の駆動構造。
【請求項2】
上記構成部の幅方向横断面は、上記構成部の表面部側において、上記構成部の幅方向中央部の厚さ寸法が幅方向両端部位の厚み寸法よりも厚い厚さ寸法を有し、上記構成部の幅方向両端部から、幅方向中央部に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1記載の無限軌道の駆動構造。
【請求項3】
上記構成部は幅広に形成されると共に、幅方向両側部に夫々スプロケットに係合しうるスプロケット係合孔部が設けられていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。
【請求項4】
上記無限軌道は、長さ方向各端部同士が連結部材を介し接続しうるように形成され、
上記各構成部には、上記各構成部の幅方向中間部と幅方向両端部とに夫々上記連結部材が係合しうる連結孔部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。
【請求項5】
上記各構成部は、平面長方形状に形成され、設置面と当接する表面部には幅方向に沿って形成された滑り止め用の凸部が形成されると共に、上記各構成部の裏面部には、幅方向において上記スプロケット係合孔部の両外側位置に案内突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。
【請求項6】
上記無限軌道は可撓性を有する素材により形成され、上記連結部材は上記無限軌道よりも大きな剛性を有する素材により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。
【請求項7】
上記無限軌道は、運動を伝達するベルトコンベヤーとして使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。
【請求項8】
上記無限軌道は所定長さに切断されて往復運動する部材に取り付けられ、ピニオンとして使用される上記スプロケットと係合して駆動されることにより、回転運動を直進往復運動に変換するラックとして使用されることを徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された無限軌道の駆動構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−290632(P2007−290632A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122677(P2006−122677)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000129264)株式会社キクイチ (10)
【Fターム(参考)】