説明

無電極放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で調光可能な無電極放電灯点灯装置及び照明器具を提供する。
【解決手段】定格点灯時の光出力に近い浅い調光をする場合(例えば、調光比を99%〜80%とする場合)、時分割調光回路4がオン期間Tonを上限値Ton-maxに固定した状態で高周波電源回路3がオン期間Tonに供給する高周波電力を増減させて調光する。故に、時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で連続して調光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電灯を調光点灯する無電極放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電ガスが封入されたバルブに誘導コイルを近接配置してなり、誘導コイルから放電ガスに高周波電磁界を作用させることで発光する無電極放電灯を点灯させる無電極放電灯点灯装置が提供されている。
【0003】
この種の無電極放電灯点灯装置として、誘導コイルに高周波電力を供給して前記高周波電磁界を発生させる高周波電源回路と、高周波電源回路の出力を制御することにより無電極放電灯を調光点灯させる時分割調光回路とを備えたものがある。
【0004】
この無電極放電灯点灯装置では、時分割調光回路において高周波電源回路の駆動周波数を切り替えることにより、誘導コイルに供給する高周波電力を無電極放電灯が点灯する大きさに設定するオン期間と点灯しない大きさに設定するオフ期間とを周期的に交互に切り替え、1周期に占めるオン期間の割合(以下、オンデューティという)を調節することで無電極放電灯の調光を行うことができる(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−353600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような時分割調光回路を有する無電極放電灯点灯装置においては、オフ期間からオン期間への切替時に無電極放電灯を再点灯(再点弧)するのに必要な電圧(再点弧電圧)を所定期間(点弧期間)だけ印加しなければならない。したがって、オン期間とオフ期間を切り替える切替周期に対して点弧期間の占める割合が大きくなると十分なオフ期間を確保できなくなるため、定格点灯時の光出力に近い浅い調光ができないという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で調光することができる無電極放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、放電ガスを封入したバルブに誘導コイルが近接配置されてなる無電極放電灯を点灯させる無電極放電灯点灯装置であって、駆動周波数に応じて増減する高周波電力を誘導コイルに供給する高周波電源回路と、誘導コイルに供給される高周波電力を無電極放電灯が点灯するレベルに設定するオン期間と点灯しないレベルに設定するオフ期間とを周期的に交互に繰り返すように高周波電源回路の駆動周波数を制御することで無電極放電灯を調光点灯させる時分割調光回路とを備え、時分割調光回路は、オン期間が所定の上限値に達すると高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を増大させることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、時分割調光回路がオン期間が所定の上限値に達すると高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を増大させるので、定格点灯時の光出力に近い浅い調光をする場合、オン期間を上限値に固定した状態で高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を増減させたり、あるいは高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を前記無電極放電灯が点灯するレベルよりも高いレベルに固定するとともにオン期間を前記上限値以下の範囲で増減させて調光することができる。その結果、時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で調光することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、時分割調光回路は、前記上限値に達して以降のオン期間において当該オン期間を上限値に固定するとともに高周波電源回路が供給する高周波電力を増減させて無電極放電灯を調光することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、時分割調光回路は、オン期間が所定の上限値に達すると高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を前記無電極放電灯が点灯するレベルよりも高いレベルに固定するとともにオン期間を前記上限値以下の範囲で増減させて無電極放電灯を調光することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記上限値は、オン期間とオフ期間の切替周期から無電極放電灯の再点弧に要する点弧期間を差し引いた期間が前記切替周期の八割以上となる値であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、時分割調光回路をマイクロコンピュータで構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、上記目的を達成するために、請求項1〜5の何れかに記載の無電極放電灯点灯装置と、無電極放電灯を支持する灯体とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明によれば、請求項1〜5の発明と同様の作用を奏する照明器具が提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で調光することができる無電極放電灯点灯装置及び照明器具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態1を示す概略回路構成図である。
【図2】同上の動作説明用の波形図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態2を示す概略回路構成図である。
【図5】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態3の動作を説明する説明図である。
【図6】本発明に係る照明器具の実施形態を示す一部破断した側面図である
【図7】本発明に係る照明器具の別の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態の無電極放電灯点灯装置は、図1に示すように直流電源Eから供給される直流電力を高周波電力に変換して無電極放電灯1に近接配置された誘導コイル2に供給する高周波電源回路3を備えている。
【0019】
高周波電源回路3は、直流電源Eの出力端間に一対のスイッチング素子Q1,Q2を直列接続してなるハーフブリッジ型のインバータ回路30と、インバータ回路30のローサイドのスイッチング素子Q2と誘導コイル2との間に挿入された共振回路31と、スイッチング素子Q1,Q2を駆動するインバータ制御回路32とを具備している。
【0020】
インバータ回路30は、一対のスイッチング素子Q1,Q2をインバータ制御回路32から出力される駆動信号によって交互に高周波数でスイッチングすることにより、直流電源Eから出力される直流電力を高周波電力に変換する。共振回路31は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点と誘導コイル2の一端の間に直列接続されたインダクタLsおよびコンデンサCsと、誘導コイル2およびコンデンサCsに並列接続されたコンデンサCpとからなる。そして、インバータ制御回路32が駆動信号の周波数(駆動周波数)を共振回路31の共振周波数に近付ければ高周波電源回路3の高周波出力(高周波電力)を増大させ、共振周波数から遠ざければ高周波電源回路3の高周波出力が減少させることができる。
【0021】
ここで、インバータ制御回路32は、消灯している無電極放電灯1を点灯(点弧)する際、駆動周波数を共振周波数近傍の周波数(始動周波数)まで徐々に下降させて誘導コイル2に印加される電圧(誘導コイル電圧)を漸次増大させることによって無電極放電灯1を点灯(点弧)させる制御(スイープ制御)を実行する。
【0022】
また、本実施形態の無電極放電灯点灯装置は、無電極放電灯1を調光点灯させる時分割調光回路4を備えている。時分割調光回路4は、誘導コイル2に供給される高周波電力を無電極放電灯1が点灯するレベル(点灯レベル)に設定するオン期間Tonと点灯しないレベル(不点灯レベル)に設定するオフ期間Toffとを周期的に交互に繰り返すように高周波電源回路3(インバータ制御回路32)を制御するのであって、定格点灯時における高周波電力を100%としたときの割合で調光比を表したときに、調光比が減少するにつれてオンデューティを短縮するような制御を行うものである(図3参照)。
【0023】
インバータ制御回路32は、時分割調光回路4の出力に応じてスイッチング素子Q1,Q2をスイッチングする駆動信号の周波数(駆動周波数)を切り替えるように動作する。すなわち、図2に示すようにインバータ制御回路32は時分割調光回路4の出力がオン(ハイレベル)のときに定格点灯時と同一の駆動周波数(例えば、135キロヘルツ)でスイッチング素子Q1,Q2を駆動することで無電極放電灯1を点灯状態とし、時分割調光回路4の出力がオフ(ローレベル)のときに定格点灯時よりも充分に高い駆動周波数(例えば、280キロヘルツ)でスイッチング素子Q1,Q2を駆動することで無電極放電灯1を不点灯状態とする。尚以下の説明では、オン期間Tonの開始時点から無電極放電灯1が再点弧するまでに要する期間を点弧期間T1と呼び、オン期間Tonから点弧期間T1を差し引いた期間を点灯期間T2と呼ぶ(図2参照)。
【0024】
ここで、従来技術で説明したようにオン期間Tonのオンデューティ制御のみでは、オン期間とオフ期間を切り替える切替周期に対して点弧期間T1の占める割合が大きくなると十分なオフ期間Toffを確保できなくなるために調光比が100%に近い浅い調光ができないという問題が生じる。
【0025】
そのために本実施形態における時分割調光回路4は、オン期間Tonが所定の上限値Ton-maxに達して以降は調光比に応じて高周波電源回路3がオン期間Tonに供給する高周波電力を増減させることで無電極放電灯1を調光点灯させている(図3参照)。オン期間Tonにおける高周波電源回路3の高周波出力(高周波電力)を増減させる方法としては、時分割調光回路4がインバータ回路30の駆動周波数を定格点灯時と同一の駆動周波数よりも低下させるようにインバータ制御回路32を制御することで高周波電力を増大させ、またインバータ回路30の駆動周波数を定格点灯時と同一の駆動周波数よりも上昇させるようにインバータ制御回路32を制御することで高周波電力を減少させるという方法が採用できる。尚、オン期間Tonの上限値Ton-maxは、オン期間Tonとオフ期間Toffの切替周期(=Ton+Toff)から点弧期間T1を差し引いた期間が切替周期の八割以上となる値とすることが望ましい。つまり、Ton-max=(Ton+Toff−T1)/(Ton+Toff)×100≧80という関係が成立するように上限値Ton-maxを設定すればよい。
【0026】
而して本実施形態によれば、定格点灯時の光出力に近い浅い調光をする場合(例えば、調光比を99%〜80%とする場合)、時分割調光回路4がオン期間Tonを上限値Ton-maxに固定した状態で高周波電源回路3がオン期間Tonに供給する高周波電力を増減させて調光するので、時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で連続して調光することができる。
【0027】
(実施形態2)
本実施形態の無電極放電灯点灯装置は、図4に示すように直流電源Eとして商用交流電源ACから供給される交流電力を直流電力に変換する昇圧チョッパ回路5を備えるとともに、時分割調光回路4がマイクロコンピュータを主構成要素とする点に特徴がある。但し、高周波電源回路3を含むその他の構成については実施形態1と共通であるから、共通の
構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
昇圧チョッパ回路5は、ダイオードブリッジDB、チョークコイルL1、整流用のダイオードD1、スイッチング素子Q3、平滑コンデンサC1、スイッチング素子Q3を駆動するチョッパ制御回路50で構成される。但し、この種の昇圧チョッパ回路5は従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施形態における時分割調光回路4は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す。)40を主構成要素とし、調光信号が入力される調光信号入力端子41,41と、調光信号入力端子41,41間に直列接続された分圧抵抗R1,R2と、分圧抵抗R1,R2で抵抗分圧された調光信号を平滑するコンデンサC2とを具備している。調光信号は、矩形波信号からなり、調光比に応じてハイレベルのパルス幅が変化するものである。つまり、調光信号のパルス幅が長くなるほどにコンデンサC2の両端電圧(充電電圧)が上昇するから、マイコン40ではコンデンサC2の両端電圧を取り込むとともに当該両端電圧の電圧レベルに基づいて目標とする調光比を求めている。
【0030】
そして、調光信号で指示された調光比に応じて、マイコン40がオンデューティDuty並びにオン期間Tonにおけるインバータ回路30の駆動周波数finvを演算してインバータ制御回路32に与え、インバータ制御回路32がマイコン40から与えられるオンデューティDuty、駆動周波数finvでインバータ回路30のスイッチング素子Q1,Q2を駆動すれば、実施形態1と同様に時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で連続して調光することができる。
【0031】
(実施形態3)
本実施形態の無電極放電灯点灯装置は実施形態2と共通の構成を有しているので、各構成要素についての図示並びに説明は省略する。
【0032】
本実施形態における時分割調光回路4は、定格点灯時の光出力に近い浅い調光をする場合(例えば、調光比を99%〜80%とする場合)、図5に示すようにオン期間Tonが上限値Ton-maxに達すると高周波電源回路3がオン期間Tonに供給する高周波電力を無電極放電灯1が点灯するレベルよりも高いレベルに固定するとともにオン期間Tonを前記上限値Ton-max以下の範囲で増減させることによって無電極放電灯1を調光している。
【0033】
而して本実施形態においても実施形態1又は2と同様に時分割調光における切替周波数が高い場合においても広範囲に亘って所望の調光比で連続して調光することができる。
【0034】
尚、誘導コイル2に印加される高周波電圧(誘導コイル電圧)を抵抗分圧してマイコン40に取り込み、マイコン40が、高周波電圧が徐々に増大して飽和する変曲点までの時間を検出するとともに当該時間から点弧期間T1を算出し、算出した点弧期間T1と調光信号で指示される調光比に応じてオンデューティDuty並びにオン期間Tonにおけるインバータ回路30の駆動周波数finvを演算してインバータ制御回路32に与えれば、より正確に目標とする調光比を実現できる。
【0035】
ところで、上記各実施形態の無電極放電灯点灯装置を用いた照明器具の例として、図6および図7に示すような照明器具Aが考えられる。図6に示す照明器具Aの筐体11は内部に無電極放電灯点灯装置(図示せず)および無電極放電灯1を支持し、内部空間を密閉することにより防水性能が付与されたものであって、街路灯として屋外で使用される。また、図7に示す照明器具Aの筐体11も内部空間を密閉することで防水性能が付与されたものであって、電柱12等に取り付けられ防犯灯として屋外で使用される。
【符号の説明】
【0036】
1 無電極放電灯
2 誘導コイル
3 高周波電源回路
4 時分割調光回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスを封入したバルブに誘導コイルが近接配置されてなる無電極放電灯を点灯させる無電極放電灯点灯装置であって、
駆動周波数に応じて増減する高周波電力を誘導コイルに供給する高周波電源回路と、誘導コイルに供給される高周波電力を無電極放電灯が点灯するレベルに設定するオン期間と点灯しないレベルに設定するオフ期間とを周期的に交互に繰り返すように高周波電源回路の駆動周波数を制御することで無電極放電灯を調光点灯させる時分割調光回路とを備え、
時分割調光回路は、オン期間が所定の上限値に達すると高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を増大させることを特徴とする無電極放電灯点灯装置。
【請求項2】
時分割調光回路は、前記上限値に達して以降のオン期間において当該オン期間を上限値に固定するとともに高周波電源回路が供給する高周波電力を増減させて無電極放電灯を調光することを特徴とする請求項1記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項3】
時分割調光回路は、オン期間が所定の上限値に達すると高周波電源回路がオン期間に供給する高周波電力を前記無電極放電灯が点灯するレベルよりも高いレベルに固定するとともにオン期間を前記上限値以下の範囲で増減させて無電極放電灯を調光することを特徴とする請求項1記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記上限値は、オン期間とオフ期間の切替周期から無電極放電灯の再点弧に要する点弧期間を差し引いた期間が前記切替周期の八割以上となる値であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項5】
時分割調光回路をマイクロコンピュータで構成したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の無電極放電灯点灯装置と、無電極放電灯を支持する灯体とを備えたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−28910(P2011−28910A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171407(P2009−171407)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】