説明

焦点検出装置

【課題】瞳径の異なる対物レンズに切換えても、レーザ光を調光することなく光束の入射位置を対物レンズの瞳径に合せて最適化でき、しかも、焦点合せの対象でない側の表面からの反射光による悪影響を排除し焦点合せの対象側の表面からの反射光量を検出して、焦点合せを行うことが可能な焦点検出装置を提供する。
【解決手段】焦点検出用光束を対物レンズ7を介して試料面に投射して焦点合せを行う焦点検出装置において、互いに対向配置された傾斜面4a2,4b1を有し、且つ、傾斜面の間隔を調節可能な光学部材4a,4bからなり、傾斜面の間隔を調節することで対物レンズの瞳10位置での焦点検出用光束の入射位置を対物レンズの瞳径に応じた瞳内の所定位置に調節可能な光束入射位置調節手段4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置に関し、特に、顕微観察装置において、マイクロプレートやスライドガラスなどの透明基板の所望の表面に焦点合わせを自動的に行うための焦点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの分野においては、様々な条件下での種々の生細胞の反応を明らかにするため、多数の細胞を対象とした統計解析結果を用いることが頻繁に行われている。このような目的のため、従来、フローサイトメーターと呼ばれる装置が使用されてきたが、近年、顕微観察装置によって多数の細胞の画像を取得し、取得した画像を解析することにより統計解析結果を得るという手法が用いられるようになってきている。
【0003】
ところで、実際に様々な条件下での生細胞の反応を試験するためには、マイクロプレートなどの容器の中で培養された非常に多くの生細胞を解析対象とする必要がある。
このため、細胞画像を取得する顕微観察装置としては、マイクロプレートなどの容器の下方より観察する倒立顕微鏡型の光学配置を採用し、さらに視野位置変更、焦点合わせ、撮像などの画像取得に係わる一連の動作を自動化したものが望まれる。
【0004】
顕微観察装置を自動化する場合には、特に、焦点合わせの自動化方式が重要である。一般的に、焦点合わせの自動化方式には、大別して対象物(被写体)に赤外線等の照明光を照射し、その反射光の光量等を検出することにより焦点を検出するアクティブ方式と、レンズで捉えた画像を利用して焦点を検出するパッシブ方式の2つの方式が存在する。
【0005】
しかるに、様々な条件下での種々の生細胞の反応を明らかにすることを目的として細胞画像を取得する顕微観察装置においては、多数の画像を取得する必要があるため、迅速な動作速度を有するアクティブ方式の焦点合わせ方式が採用されることが多い。このようなアクティブ方式を採用した焦点検出装置としては、例えば、次の特許文献1に記載のものがある。
【0006】
ところで、このようなアクティブ方式の焦点検出装置においては、特許文献1に記載されているように光源としてレーザを使用することが一般的に行われているが、高い焦点合わせ精度を実現するために、レーザ光束径を対物レンズの瞳径に一致させるのが一般的である。しかしながら、レーザ光束径を瞳径の大きな低倍率の対物レンズに合わせて最適化すると、瞳径の小さな高倍率の対物レンズに切り換えた場合にレーザ光束が対物レンズの瞳によってケラレるため、光量不足となって焦点検出を行うことが困難になり易い。
一方、レーザ光束の径を瞳径の小さな高倍率の対物レンズに合わせて最適化すると、瞳径の大きな低倍率の対物レンズに切り換えた場合に焦点検出の精度が悪化する。
【0007】
特許文献1には、従来の焦点検出用光源のレーザパワーの制御に関し、レーザ光束径を瞳径の大きな対物レンズに合わせるとともに、制御回路を介して焦点検出用光源のレーザパワーを倍率の異なる対物レンズごとに変化させて、充分な受光量を得ることによって焦点検出を行うことが記載されている。
しかし、制御回路を介して焦点検出用光源のパワーを変化させる方法では、瞳径の小さい対物レンズを用いたときに、レーザ光のパワーが大きくなり過ぎ、対物レンズを外したときに、高出力のレーザ光が外部に出力されるなどの安全上の問題が生じるおそれがある。
【0008】
しかるに、特許文献1には、レーザ光源と対物レンズとの間に、NDフィルタと径の異なる開口絞りを組み合わせた絞りフィルタ組立体を備え、レーザ光源のパワーを一定にしたままで、NDフィルタを介してレーザ光量を調節するとともに、開口絞りを選択してレーザ光束の径を対物レンズの瞳径に合わせるようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特開2007−163738号公報
【0009】
また、アクティブ方式を採用した焦点検出装置においては、透明基板の一方の面に焦点を合わせるために、その一方の面からの反射光を光検出器で検出するような場合に、他方の面からの反射光も光検出器で検出されてノイズとなって焦点の検出に悪影響を及ぼすという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の焦点検出装置のように、開口絞りを介してレーザ光束の径を対物レンズの瞳径に合わせる構成では、他方の面からの反射光も光検出器で検出されてノイズとなって焦点の検出に悪影響を及ぼすという問題を解決することができない。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、瞳径の異なる対物レンズに切り換えても、レーザ光を調光することなく、レーザ光束の径を対物レンズの瞳径に合わせて最適化でき、しかも、瞳径の大きな対物レンズに切り換えたときでも、透明基板における焦点合わせの対象となっていない側の表面からの反射光による悪影響を排除しながら、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面からの反射光量を高い検出感度で検出して、この焦点合わせの対象となっている側の表面に焦点合わせを行うことが可能な焦点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明による焦点検出装置は、焦点検出用光束を対物レンズを介して試料面に投射して、焦点合わせを行う焦点検出装置において、互いに対向した状態で配置された傾斜面を有し、且つ、該傾斜面の間隔を調節可能な2つの光学部材からなり、該2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することにより、前記対物レンズの瞳位置における前記焦点検出用光束の入射位置を該対物レンズの瞳径に応じた該瞳内の所定位置に調節可能な光束入射位置調節手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記光束入射位置調節手段が、前記焦点検出用光束を光軸に対称に分離し、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、該分離した2つの光束の間隔を調節するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記2つの光学部材が、入射側が平面、出射側が光軸に対称なV字形状に凹んだ傾斜面で構成された第1のプリズムと、入射側が前記第1のプリズムの傾斜面のV字形状に一致する、光軸に対称なV字形状に突出した傾斜面、出射側が平面で構成された第2のプリズムとからなるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記光束入射位置調節手段が、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、前記焦点検出用光束を光軸に垂直な方向にシフトさせるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記2つの光学部材が、互いの上下を逆向きにして配置された、頂角の等しい2つのプリズムからなるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記光束入射位置調節手段が、前記焦点検出用光束を、光軸を中心とした同心円状に変形し、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、該変形した同心円状の光束の径を調節するのが好ましい。
【0018】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記2つの光学部材が、入射側が平面、出射側が光軸に対称な円錐形状に凹んだ傾斜面で構成された第1の円錐レンズと、入射側が前記第1の円錐レンズの傾斜面の凹んだ円錐形状に一致する、光軸に対称な円錐形状に突出した傾斜面、出射側が平面で構成された第2の円錐レンズとからなるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の焦点検出装置においては、前記焦点検出装置は、前記対物レンズと、透明基板に対し合焦信号を生成するための照明光を発し、前記対物レンズを通して照射する点光源と、前記照明光の光束のうちの該照明光の光軸に沿う第1の仮想平面で分割したときの一方の領域を通る光束を遮光する第1の遮光部を有するマスク手段と、前記透明基板で反射された光の光軸に沿う第2の仮想平面を挟んで対称に配置された2つの受光部を有する光検出器とを備え、前記2つの受光部を介して夫々検出された前記透明基板からの反射光の光量に基づいて、前記透明基板の第1又は第2の表面に前記対物レンズの焦点合わせを行い、前記光束入射位置調節手段は、前記透明基板における第1又は第2の表面のうち一方の表面近傍に前記対物レンズの焦点が位置するときに、該一方の表面からの反射光が前記2つの受光部に入射するとともに他方の表面からの反射光が前記第2の仮想平面で分割したときの一方の領域における当該領域に配置された受光部を外れた領域を通るような該対物レンズの瞳内の所定位置に、該対物レンズの瞳位置における前記焦点検出用光束の入射位置を調節可能に構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、瞳径の異なる対物レンズに切り換えても、レーザ光を調光することなく、レーザ光束の径を対物レンズの瞳径に合わせて最適化でき、しかも、瞳径の大きな対物レンズに切り換えたときに、透明基板における焦点合わせの対象となっていない側の表面からの反射光による悪影響を排除しながら、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面からの反射光量を高い検出感度で検出して、この焦点合わせの対象となっている側の表面に焦点合わせを行うことが可能な焦点検出装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施形態に先立ち、本発明を導出するに至った経緯について説明する。
本件出願人は、本発明に先立ち、透明基板における焦点合わせの対象となっていない側の表面からの反射光による悪影響を排除しながら、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面からの反射光量を高い検出感度で検出して、この焦点合わせの対象となっている側の表面に焦点合わせを行うことを目的として、特願2007−316857号に記載の発明の焦点検出装置を想出した。
そこで、特願2007−316857号に記載の発明の焦点検出装置について説明する。
【0022】
図9は特願2007−316857号に記載の発明の一実施形態にかかる焦点検出装置を備えた顕微観察装置の概略構成を示す説明図、図10は図9の顕微観察装置に備わる焦点検出装置におけるマスク手段を構成する第1及び第2の遮光部の形状、及び(焦点検出用)照明光束における第1及び第2の遮光部で遮光されない領域と遮光される領域を示す説明図、図11は図10に示す第1及び第2の遮光部で遮光されない領域の(焦点検出用)照明光について、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面で反射された光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光の、2つの受光部との位置関係を示す説明図である。図12は図9の焦点検出装置において、焦点を透明基板の被検物側の面に合わせた場合における、焦点合わせの対象となっている側の表面で反射する光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射する光の経路を概念的に示す説明図である。図13は図12に示す状態の焦点検出装置において、透明基板における焦点検出対象となっている側と焦点検出対象となっていない側の夫々の表面で反射する光の2つの受光部近傍での入射状態を示す説明図である。図14は図9の焦点検出装置において、焦点を透明基板の被検物側とは反対側の面に合わせた場合における、焦点合わせの対象となっている側の表面で反射する光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射する光の経路を概念的に示す説明図である。図15は図14に示す状態の焦点検出装置において、透明基板における焦点検出対象となっている側と焦点検出対象となっていない側の夫々の表面で反射する光の2つの受光部近傍での入射状態を示す説明図である。なお、図12及び図14では説明の便宜上、本発明における点光源及びマスク手段と、光検出器の位置を入れ替えた状態で示してある。また、後述する外乱光遮光部材も省略して示してある。
【0023】
図9の焦点検出装置を備えた顕微観察装置は、顕微鏡本体51と、落射照明装置52と、焦点検出装置53とからなる。
顕微鏡本体51は、被検物54を載置するXYステージ55を備えている。XYステージ55の下方には、対物レンズ56と、ハーフミラー57,70と、結像レンズ58と、CCDカメラ59とを備えている。XYステージ55は、水平面内(紙面に対して垂直な平面内)を移動可能に構成されている。対物レンズ56は、駆動部60を介して光軸方向に移動可能に構成されている。
被検物54は、公知の複数ウェルを有するポリスチレン等の光透過性部材で製作されたマイクロプレート54aを容器として使用し、培養液54b中で培養された細胞をマイクロプレート54aの底面部54a1の表面54a11に公知の技術によって固定化したものである。マイクロプレート54aの底面部54a1は、本発明における透明基板に相当する。なお、被検物54に用いる細胞は、さらに解析する項目に応じて適切な方法によって染色された細胞でもかまわない。また、使用する容器として、ここではプラスチック製のものを例示したが、底面にガラスを貼り付けたガラスボトムプレートでもかまわない。
【0024】
落射照明装置52は、XYステージ55の下方に備えられ、光源61と、レンズ62からなる。光源61は、白色LEDで構成されている。
焦点検出装置53は、対物レンズ56と、ハーフミラー57と、焦点検出ユニット53’とからなり、焦点検出ユニット53’は、顕微鏡本体51におけるハーフミラー57の反射光路上に配置され、λ/4板65と、レンズ63と、偏光ビームスプリッタ64と、マスク手段66と、偏光ビームスプリッタ64の透過光路上に配置された、焦点合わせ用の点光源67と、偏光ビームスプリッタ64の反射光路上に配置された、外乱光遮光部材68と、光検出器69とを備えている。焦点合わせ用の点光源67は、レーザダイオードで構成されていて、被検物54の透明基板(マイクロプレート54aの底面部54a1)に対して合焦信号を生成するための照明光を発するようになっている。外乱光遮光部材68は、後述するマスク手段66を通過し対物レンズ56を介して被検物54を照射し被検物54で反射されて光検出器69側へ向かう光のうち、所定の光路を外れた外乱光を遮光するように、光軸X2に沿う第2の仮想平面(図9では光軸X2を含む紙面に垂直な平面)で分割したときの一方の領域に設けられている。なお、外乱光遮光部材68は、所定の光路を外れた外乱光が殆ど発生しない場合には、その配置を省略してもよい。
光検出器69は、2分割フォトダイオードで構成されている。2分割フォトダイオードは、2つの受光部69a,69bを有している。2つの受光部69a,69bは、光軸X2に沿う仮想平面(図9では光軸X2を含む紙面に垂直な平面)を挟んで対称に配置されている。
【0025】
マスク手段66は、図10に示すように、第1の遮光部66aと、第2の遮光部66bを有している。
第1の遮光部66aは、点光源67から発せられた照明光の光束のうち光軸X1に沿う第1の仮想平面(図9では光軸X1を含む紙面に垂直な平面)で分割したときの一方の領域を通る光束を遮光する形状及び大きさに形成されている。なお、本実施形態では、第1の遮光部66aは、矩形形状をしているが、この一方の片側部分の光束を遮光することができる形状であればどのような形状でもよい。
第2の遮光部66bは、光検出器69における一方の受光部と相似形状(ここでは矩形)に形成され、且つ、透明基板(マイクロプレート54aの底面部54a1)における第1又は第2の表面(底面部54a1の表面54a11又は表面54a12)のうち、一方の表面近傍に対物レンズ56の焦点が位置するときに、一方の表面からの反射光が2つの受光部69a,69bに入射するとともに他方の表面からの反射光が、例えば図11に示すように、第2の仮想平面で分割したときの一方の領域におけるその一方の領域に配置された受光部(図11の例では受光部69a)を外れた領域を通るように、点光源67から発せられた照明光の光束のうち光軸X1に沿う第1の仮想平面で分割したときの他方の領域を通る一部の光束を遮光するように構成されている。
【0026】
このように構成された本実施形態の焦点検出装置を備えた顕微観察装置では、まず、落射照明装置52の光源61である白色LEDから射出された光が、レンズ62、ハーフミラー70、ハーフミラー57、対物レンズ56を介してXYステージ55に載置された被検物54を照明する。このときの被検物54からの光は、対物レンズ56、ハーフミラー57、ハーフミラー70、レンズ58を経由してCCDカメラ59へ導かれる。これにより、CCDカメラ59を介して被検物54を撮像することができる。
【0027】
また、焦点検出装置53では、レーザダイオード67から射出された光の一部が、遮光部材66を介して遮光される。一方、遮光部材66によって遮光されることなく通り抜けた光は、偏光ビームスプリッタ64、レンズ63、λ/4板65、ハーフミラー57、対物レンズ58を経由して、被検物54へ導かれる。このときの被検物54からの反射光は、対物レンズ58、ハーフミラー57、λ/4板65、レンズ63、偏光ビームスプリッタ64を経由して、受光素子69側に導かれる。
【0028】
ここで、焦点検出装置53において、マイクロプレート54aの底面部54a1からの反射光が受光素子69へ入射する状態は、底面部54a1の2つの表面位置と対物レンズ58の焦点位置との関係において次のように変化する。
【0029】
まず、底面部54a1における培養液54b及び細胞と接する側の表面54a11に対物レンズ58の焦点位置を合わせる場合(以下、対物レンズ58の焦点を合わせる表面を目的表面と称す。)において、目的表面54a11近傍に対物レンズ58の焦点が位置するときは、図12に示すように、焦点検出装置53の光路を辿る。
すなわち、レーザダイオード67から発してマイクロプレート54aの底面部54a1で反射された光のうち、目的表面54a11で反射された光は、対物レンズ58を透過した後、受光素子69である2分割フォトディテクター上の結像点71に結像する。一方、目的表面54a11に対向する表面54a12で反射された光は、結像点71よりも遠い結像点73で結像する。
【0030】
したがって、図13に示すように、目的表面54a11で反射された光は、ほぼ点に近い状態に集光して2分割フォトディテクターに入射し、2分割フォトディテクターの双方の受光部69a,69bで均等な光量が検出される。一方、表面54a12で反射された光は、結像しない状態で2分割フォトディテクター側に向かうが、点光源67から発せられて表面54a12で反射しうる光のうち2分割フォトディテクターに入射しうる領域の光は、マスク手段66の第2の遮光部66bによって遮光され、表面54a12で反射されない。このため、表面54a12で反射された光は、そのすべてが、2分割フォトディテクターから外れた位置を通る。
【0031】
一方、底面部54a1における培養液54b及び細胞と接する側とは反対側の表面54a12に対物レンズ58の焦点位置を合わせる場合において、目的表面54a12近傍に対物レンズ58の焦点が位置するときは、図14に示すように、焦点検出装置53の光路を辿る。
すなわち、レーザダイオード67から発してマイクロプレート54aの底面部54a1で反射された光のうち、目的表面54a12で反射された光は、対物レンズ58を透過した後、受光素子69である2分割フォトディテクター上の結像点73’に結像する。一方、目的表面54a12に対向する表面54a11で反射された光は、結像点73’よりも近い結像点71’で結像する。
【0032】
したがって、図15に示すように、目的表面54a12で反射された光は、ほぼ点に近い状態に集光して2分割フォトディテクターに入射し、2分割フォトディテクターの双方の受光部69a,69bで均等な光量が検出される。一方、表面54a11で反射された光は、2分割フォトディテクター側に向かうが、点光源67から発せられて表面54a11で反射しうる光のうち2分割フォトディテクターに入射しうる領域の光は、マスク手段66の第2の遮光部66bによって遮光され、表面54a11で反射されない。このため、表面54a11で反射された光は、そのすべてが、2分割フォトディテクターから外れた位置を通る。
【0033】
このようにして被検物54の目的表面からの反射光だけを受光した2分割フォトディテクター69は、前記反射光の光量情報を捉え、焦点合わせ信号として不図示の制御部へ出力する。そして、この制御部はこの焦点合わせ信号に基づき、(A−B)/(A十B)なる評価関数を計算する。焦点検出装置における2分割フォトディテクターによって検出される光量変化の一例を図16のグラフに示す。また、図17に図16のデータに基づいて行った評価関数計算値の一例をグラフに示す。図17のグラフにおいて、横軸が被検物54と対物レンズの相対距離、縦軸が焦点合わせ評価値である。焦点合わせは、この評価関数計算値が0となるように駆動部60を介して対物レンズ58を上下させる。評価関数計算値が0となる位置に対物レンズ58が移動したときに対物レンズ58の焦点が被検物54の目的表面に位置し合焦が達成される。
【0034】
このように図9の焦点検出装置によれば、焦点合わせ用光源67から発した光は、マスク手段66を介してサンプル容器底面部に照射され、目的としない側の表面からの反射光が排除されるので、点光源67から発されて目的表面からの反射する光だけを、受光素子で検出することができる。このため、目的としない側の表面からの反射光が外乱光として、焦点合わせ信号に悪影響を及ぼすことなく、高精度な焦点合わせを行うことができるようになる。
【0035】
ここで、本件出願人は、図9の焦点検出装置において、点光源67から発せられて目的としない側の表面からの反射光のうち2分割フォトディテクターに入射しうる領域の光が、マスク手段66における第2の遮光部66bによって遮光される点について着目した。
即ち、図9の発明においては第2の遮光部66bによって遮光される分、第2の遮光部66bを設けない場合に比べて、マスク手段66を透過したときの光量が少なくなる。ところで、第2の遮光部66bで遮光される領域を通る光は、第2の遮光部66bを設けない場合には外乱光として焦点合わせに影響を与える光である。ここで、この第2の遮光部66bで遮光される領域を通る光を目的表面からの反射光となるべき光として用いることができるようにすれば、目的としない側の表面からの反射光を減らすことができるとともに、目的表面からの反射光が2分割フォトディテクターに入射する強度を強くすることができるので、より高精度な焦点合わせを行うことができるようになる。
【0036】
しかるに、本件出願人は、点光源67からの光束が図9の焦点検出装置におけるマスク手段66を介して遮光される領域から外れた位置を通るように、点光源67からの光束の位置を調節すれば、マスク手段66において第2の遮光部66bを設けた場合と同様に、焦点合わせ信号に外乱光の悪影響を及ぼすことをなくす効果が得られ、点光源67からの光束を有効利用でき、しかも2分割フォトディテクターに入射する強度が強くなり、より高精度な焦点合わせを行うことができるようになることに気がついた。
また、対物レンズの瞳径は、一般に低倍率になるほど大きく、高倍率になるにしたがって小さくなるので、照明用光源からの光束の位置を調整できるようにすることにより、本件出願人は、瞳径の小さい高倍率の対物レンズから瞳径の大きい低倍率の対物レンズに切り換えたときに、点光源からの光束を図8の焦点検出装置におけるマスク手段66を介して遮光される領域に入らない位置を通るように位置調整可能な本発明を導出するに至った。
【0037】
第一実施形態
図1は本発明の第一実施形態にかかる焦点検出装置の概略構成を示す説明図である。図2は図1の焦点検出装置におけるマスク手段で遮光されない照明光束が、光束入射位置調節手段を介して、対物レンズの瞳位置における入射位置を対物レンズの瞳径に応じた瞳内の所定位置に調節される状態を示す説明図で、(a)は上方から見た図、(b)は側方から見た図である。図3は図1の焦点検出装置に用いられている光束入射位置調節手段の構成を示す分解斜視図である。図4は光束入射位置調節手段による光束入射位置調節の原理説明図である。図5は光束入射位置調節手段による光束入射位置調節の一数値例を示す説明図である。図6は光束入射位置調節手段を構成するプリズムの屈折率n=1.51として径が2mmの光束のマージナル光線が対物レンズの瞳位置において光軸から4mmの位置に入射するようにする場合における、光束入射位置調節手段を構成するプリズムの傾斜面間の間隔と、光軸とプリズムの傾斜面とのなす角度との関係を示すグラフである。なお、説明の便宜上、図1では光束入射位置調節手段を光軸周りに90度回転させた状態で示してある。
【0038】
第一実施形態の焦点検出装置は、焦点検出用光源1と、コリメートレンズ2と、マスク手段3と、光束入射位置調節手段4と、偏光ビームスプリッタ5と、λ/4板6と、対物レンズ7と、偏光ビームスプリッタ5の反射光路上に配置された結像レンズ8と、光検出器9を有している。なお、図1中、10は対物レンズの入射瞳であり、Sは被検出表面を有する透明基板である。
焦点検出用光源1は、例えば、レーザダイオードなどの点光源で構成されていて、被検物としての透明基板(例えば、マイクロプレートの表面部又は底面部)Sの目的表面S1に対して合焦信号を生成するための照明光を発するようになっている。
コリメートレンズ2は、焦点検出用光源1からの光を平行光束に変換する。
マスク手段3は、点光源1から発せられた照明光の光束のうち光軸X1に沿う仮想平面(図1では光軸X1を含む紙面に垂直な平面)で分割したときの一方の領域を通る光束を遮光することが可能な形状及び大きさに形成されている。本実施形態では、マスク手段3は矩形形状に形成されている。なお、この一方の領域の光束を遮光することができる形状であればどのような形状でもよい。
偏光ビームスプリッタ5は、入射光のうちS偏光又はP偏光のいずれか一方の直線偏光成分を透過し、他方の直線偏光成分を反射する。
λ/4板6は、偏光ビームスプリッタ5の透過光路上に配置されており、偏光ビームスプリッタ5からの一方の直線偏光を円偏光に変換し、また、対物レンズ7からの円偏光を直線偏光を他方の直線偏光に変換する。
光検出器9は、2分割フォトダイオードで構成されている。2分割フォトダイオードは、2つの受光部9a,9bを有している。2つの受光部は、光軸X2に沿う仮想平面(図1では光軸X2を含む紙面に垂直な平面)を挟んで対称に配置されている。
【0039】
光束位置調整手段4は、第1のプリズム4aと、第2のプリズム4bとで構成されている。第1のプリズム4aは、入射側が平面4a1、出射側が光軸X1に対称なV字形状に凹んだ傾斜面4a2で構成されている。第2のプリズム4bは、入射側が第1のプリズム4aの傾斜面4a2のV字形状に一致する光軸X1に対称なV字形状に突出した傾斜面4b1、出射側が平面4b2で構成されている。
第1のプリズム4aと第2のプリズム4bは、傾斜面4a2と傾斜面4b1とが互いに対向した状態で配置され、傾斜面4a2,4b1の間隔を調節可能に構成されている。
また、第1のプリズム4aと第2のプリズム4bは、焦点検出用光束を光軸X1に対称に分離するとともに、傾斜面4a2,4b1の間隔を調節することによって、分離した2つの光束の間隔を調節するように構成されている。
【0040】
そして、光束入射位置調節手段4は、第1のプリズム4aと第2のプリズム4bの間隔を調整することにより、対物レンズ7の瞳10の位置における焦点検出用光束の入射位置を対物レンズ7の瞳10の径に応じた瞳10内の所定位置に調節することができるようになっている。
なお、ここでは、光束入射位置調節手段4は、瞳径の大きい対物レンズに切り換えたとき、被検物としての透明基板(例えば、マイクロプレートの表面部又は底面部)Sにおける2つの表面のうち目的表面S1近傍に対物レンズ7の焦点が位置するとき、目的表面S1からの反射光が2分割フォトダイオードの2つの受光部に入射するとともに他方の表面からの反射光が第2の仮想平面で分割したときの一方の領域における当該領域に配置された受光部を外れた領域を通るような対物レンズ7の瞳10内の所定位置に、対物レンズ7の瞳10の位置における焦点検出用光束の入射位置を調節可能に構成されている(図2(a))。
【0041】
ここで、光束入射位置調節手段4による光束入射位置調節の原理を、図4に示す第1のプリズム4aと第2のプリズム4bとの距離による分離された光束のシフト量との関係から説明する。なお、説明の便宜上、図2(a)に示した光束のうちの光軸X1から上側の部分について説明することとする。
【0042】
図4に示すように、第1のプリズム4aと第2のプリズム4bとの面間隔をd、第1のプリズム4aに入射する光束の光軸X1からのマージナル光線の光線高をh1、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2と光軸X1とのなす角度をθ、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2に垂直な直線と光軸とのなす角度をα、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2及び第2のプリズム4bの入射面(傾斜面)4b1に垂直な直線と第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2で屈折して出射するマージナル光線とのなす角度をβ、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2で屈折して出射するマージナル光線と光軸X1とのなす角度をγ、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2及び第2のプリズム4bの入射面(傾斜面)4b1に垂直な線と、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2と第2のプリズム4bの入射面(傾斜面)4b1との交点間の長さをl、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2で屈折して出射するマージナル光線の第2のプリズムの入射面(傾斜面)4b1までの長さをl1、第1のプリズム4a及び第2のプリズム4bの屈折率をnとすると、
α=π/2−θ
β=sin-1[nsin(π/2−θ)]
l=dsinθ
l/l1=cosβ よってl1=l/cosβ
γ=β−α
=β−(π/2−θ)
=β+θ−(π/2)
と表すことができる。
【0043】
また、第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2で屈折して出射するマージナル光線の第2のプリズムの入射面(傾斜面)4b1との交点に第1のプリズム4aに入射する光束の光軸X1からマージナル光線(の延長線)までの垂直な距離をh2とすると、
2=l1sinγ
=l1sin[β+θ−(π/2)]
=(l/cosβ)sin[β+θ−(π/2)]
=(dsinθ/cosβ)sin[β+θ−(π/2)]
よって、
d=h2(cosβ/sinθ)sin[β+θ−(π/2)]
となる。
【0044】
図5に光束入射位置調節手段4による光束入射位置調節の一数値例を示す。
図5の例では、第1のプリズム4a、第2のプリズム4bの屈折率n=1.51、傾斜第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2と光軸X1とのなす角度が60度である。第1のプリズム4aの出射面(傾斜面)4a2と第2のプリズム4bの入射面4b1との間隔を0.74mmあけると、径が2mmの光束のマージナル光線が対物レンズ7の瞳10の位置において光軸から4mmの位置に入射することができるようになっている。
そこで、対物レンズ7の瞳10の径が10mmであるような場合、図5に示すように構成された光束入力位置調節手段4のプリズム4a,4bの傾斜面4b2,4b1の間隔を調節することで、入射光束をノイズとはならない好適な位置に調節できる。
【0045】
なお、光束入射位置調整手段4を構成するプリズム4a,4bに形成する傾斜面4b2,4b1の光軸X1に対する角度は、図5の例に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、光軸X1に対するプリズム4a,4bの傾斜面4a2,4b1の角度に応じて、プリズム4a,4bの傾斜面間の距離を調節することで、対物レンズ7における瞳10内の所定位置に光束の位置を調節することが可能である。
【0046】
このように構成された第一実施形態の焦点検出装置では、まず、焦点検出用光源1から射出された光が、コリメートレンズ2で平行光束に変換される。変換された光束のうちの光軸X1に沿う第1の仮想平面で分割したときの一方の領域を通る光束がマスク手段3を介して遮光される。一方、マスク手段3によって遮光されることなく通り抜けた光束は、図2(a)、図2(b)に示すように、光束入射位置調節手段4を介して、対物レンズ7の瞳10の位置における焦点検出用光束が対物レンズ7の瞳10の径に応じた瞳10内の所定位置に入射するように調節される。位置を調節された光は、偏光ビームスプリッタ5に入射する。偏光ビームスプリッタ5を透過した一方の直線偏光がλ/4板6で円偏光に変換され、対物レンズ7を介して被検物を照明する。そして、被検物で反射した光束は、対物レンズ7を通り、λ/4板6で他方の直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ5で反射され、結像レンズ8を経て光検出器9に導かれる。
【0047】
ここで、第一実施形態の焦点検出装置では、光束入射調節手段4が、互いに対向した状態で配置された傾斜面4a2,4b1を有し、且つ、傾斜面4a2,4b1の間隔を調節可能な第1のプリズム4a、第2のプリズム4bで構成されており、第1のプリズム4a、第2のプリズム4bの傾斜面4a2,4b1の間隔を調節することにより、対物レンズ7の瞳10の位置における焦点検出用光束の入射位置を対物レンズ7の瞳10の径に応じた瞳10内の所定位置に調節可能に構成されている。
【0048】
したがって、第1のプリズム4a、第2のプリズム4bの傾斜面4a2,4b1の間隔を調節することにより、例えば、被検物である透明基板の第1又は第2の表面のうち一方の表面近傍に対物レンズ7の焦点が位置するときに、一方の表面からの反射光が光検出器9における2つの受光部に入射するとともに他方の表面からの反射光が第2の仮想平面で分割したときの一方の領域における当該領域に配置された受光部を外れた領域を通るような対物レンズ7の瞳10内の所定位置に、対物レンズ7の瞳10位置における瞳10内の焦点検出用光束の入射位置を調節することができる。
【0049】
このため、第一実施形態の焦点検出装置によれば、瞳径が異なる対物レンズに切り換えても、レーザ光を調光することなく、レーザ光束の径を対物レンズの瞳径に合わせて最適化でき、しかも、瞳径の大きな対物レンズに切り換えたときに、透明基板における焦点合わせの対象となっていない側の表面からの反射光による影響を極力排除しながら、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面からの反射光量を高い検出感度で検出して、この焦点合わせの対象となっている側の表面に焦点合わせを行うことができる。
【0050】
第二実施形態
図7は本発明の第二実施形態にかかる焦点検出装置の概略構成を側方からみた説明図で、(a)は瞳径の大きな対物レンズを用いた場合における、光束入射位置調節手段による光束入射位置の調節状態を示す図、(b)は透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光と焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光に関し、(a)の状態での2分割フォトディテクターとの位置関係を示す図であり、(c)は瞳径の小さな対物レンズを用いた場合における、光束入射位置調節手段による光束入射位置の調節状態を示す図である。
第二実施形態の焦点検出装置では、光束入射位置調節手段4は、互いの上下を逆向きにして配置された、頂角の等しい2つのプリズム4a’,4b’で構成されている。
第1のプリズム4a’は、入射側が平面4a1’、出射側が傾斜面4a2’で構成されている。
第2のプリズム4b’は、入射側が傾斜面4a2’に平行な傾斜面4b1’、出射側が平面4b2’で構成されている。
また、第1のプリズム4a’と第2のプリズム4b’は、傾斜面4a2’,4b1’の間隔を調節することによって、焦点検出用光束を光軸X1と垂直な方向にシフトするように構成されている。
そして、光束入射位置調節手段4は、第1のプリズム4aと第2のプリズム4bの間隔を調整することにより、対物レンズ7の瞳10の位置における焦点検出用光束の入射位置を対物レンズ7の瞳10の径に応じた瞳10内の所定位置に調節することができるようになっている。
その他の構成は、第一実施形態の焦点検出装置と略同じである。
【0051】
このように構成された第二実施形態の焦点検出装置では、プリズム4a’とプリズム4b’との間隔が広がるにしたがって、プリズム4a’に入射した焦点検出用光束が光軸X1から離れる方向にシフトし、プリズム4a’とプリズム4b’との間隔が狭まるにしたがって、プリズム4a’に入射した焦点検出用光束が光軸X1に近づく方向にシフトする。
そこで、瞳径の大きい対物レンズを用いた場合には、図7(a)に示すように、プリズム4a’とプリズム4b’との間隔を広げて、焦点検出用光束の対物レンズ7の瞳10位置での入射位置を、瞳10内における光軸X1から離れた所定位置(ノイズとはならない好適な位置)に調節する。
このとき、図7(b)に示すように、透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光は、ほぼ点に近い状態に集光して2分割フォトディテクターに入射し、2分割フォトディテクターの双方の受光部で均等な光量が検出される。一方、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光は、結像しない状態で2分割フォトディテクター側に向かうが、この光のうち2分割フォトディテクターに入射しうる領域の光は、そのすべてが、2分割フォトディテクターから外れた位置を通る。
一方、瞳径の小さい対物レンズを用いた場合には、図7(c)に示すように、プリズム4a’とプリズム4b’との間隔を狭めて、焦点検出用光束の対物レンズ7の瞳10位置での入射位置を、瞳10内に入るように調節する。
【0052】
このため、第二実施形態の焦点検出装置によれば、第一実施形態の焦点検出装置と同様に、瞳径の異なる対物レンズに切り換えても、レーザ光を調光することなく、レーザ光束径を対物レンズの瞳径に合わせて最適化でき、しかも、瞳径の大きな対物レンズに切り換えたときでも、焦点合わせの対象となっている側の表面からの反射光量を高い検出感度で検出して、この焦点合わせの対象となっている側の表面に焦点合わせを行うことができる。
しかも、第二実施形態の焦点検出装置によれば、入射光束位置調節手段を構成するプリズムが一種類で済みしかも形状が単純であるため、その分、構成を簡単化できコスト低減に寄与できる。
【0053】
第三実施形態
図8(a)は本発明の第三実施形態の焦点検出装置の概略構成を示す説明図、(b)は透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光と焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光に関し、焦点検出装置内の光検出器である2分割フォトディテクターとの位置関係を示す図である。
第三実施形態の焦点検出装置では、光束入射位置調節手段4が、入射側が平面4a1”、出射側が光軸X1に対称な円錐形状に凹んだ傾斜面4a2”で構成された第1の円錐レンズ4a”と、入射側が第1の円錐レンズ4a”の傾斜面4a2”の凹んだ円錐形状に一致する、光軸X11に対称な円錐形状に突出した傾斜面4b1”、出射側が平面4b2”で構成された第2の円錐レンズ4b”とで構成されている。
そして、光束入射位置調節手段4は、焦点検出用光束を光軸を中心とした同心円状に変形し、円錐レンズ4a”,4b”の傾斜面4a2”,4b1”の間隔を大きくすることによって、変形した光束を光軸X1から離れる方向にシフトするようになっている。
その他の構成は、第一実施形態の焦点検出装置と略同じである。
したがって、図8(b)に示すように、透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光は、ほぼ点に近い状態に集光して2分割フォトディテクターに入射し、2分割フォトディテクターの双方の受光部で均等な光量が検出される。一方、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光は、結像しない状態で2分割フォトディテクター側に向かうが、この光のうち2分割フォトディテクターに入射しうる領域の光は、そのすべてが、2分割フォトディテクターから外れた位置を通る。
【0054】
第三実施形態の焦点検出装置によれば、図8に示すように、対物レンズ7の瞳10内における外周部全域を検出用照明光が通る光路として使用できるので、自動焦点検出の感度が良くなる。
その他の作用効果は、第一実施形態の焦点検出装置と略同じである。
【0055】
なお、上記各実施形態の焦点検出装置において、瞳径の極端に小さい対物レンズを用いた場合、焦点検出用光束は、瞳10位置において略瞳10の全範囲を含む位置に入射し、ノイズとなる光軸近傍の領域にも入射することになる。
そこで、上記各実施形態の焦点検出装置においても、マスク手段3とともに、図9の焦点検出装置において示したマスク手段66(図10)をマスク手段3と切り換え可能に備えておき、瞳径の小さい対物レンズを用いた場合には、マスク手段3からマスク手段66に切り換えるようにするのが好ましい。そのようにすれば、瞳径の小さい対物レンズを用いたときに、焦点合わせ信号に悪影響を及ぼすことなく、高精度な焦点合わせを行うことができるようになる。
【0056】
その他、上記各実施形態の焦点検出装置では、光束入射位置調節手段4を構成する2つの光学部材としてプリズムを用いたが、プリズムの代わりにDOEを用いても良い。
そのようにすれば、光束入射位置調節手段4を構成する光学部材を小さくすることができ、光束入射位置調節手段4の配置スペースを小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、自動化した顕微観察装置を用いて多数の細胞の画像を取得し、取得した画像を解析することにより統計解析結果を得ることが求められる分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる焦点検出装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の焦点検出装置におけるマスク手段で遮光されない照明光束が、光束入射位置調節手段を介して、対物レンズの瞳位置における入射位置を対物レンズの瞳径に応じた所定位置に調節される状態を示す説明図で、(a)は上方から見た図、(b)は側方から見た図である。
【図3】図1の焦点検出装置に用いられている光束入射位置調節手段の構成を示す分解斜視図である。
【図4】光束入射位置調節手段による光束入射位置調節の原理説明図である。
【図5】光束入射位置調節手段による光束調節の一例を示す説明図である。
【図6】光束入射位置調節手段を構成するプリズムの屈折率n=1.51として径が2mmの光束のマージナル光線が対物レンズの瞳位置において光軸から4mmの位置に入射するようにする場合における、光束入射位置調節手段を構成するプリズムの傾斜面間の間隔と、光軸とプリズムの傾斜面とのなす角度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる焦点検出装置の概略構成を側方からみた説明図で、(a)は光束入射位置調節手段を介して入射光束の位置を平行にシフトした状態を示す図、(b)は透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光と焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光に関し、(a)の状態での2分割フォトディテクターとの位置関係を示す図、(c)は光束入射位置調節手段を介して入射光束の位置をシフトしない状態を示す図である。
【図8】(a)は本発明の第三実施形態の焦点検出装置の概略構成を示す説明図、(b)は透明基板の焦点合わせの対象になっている側の表面で反射された光と焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光に関し、焦点検出装置内の光検出器である2分割フォトディテクターとの位置関係を示す図である。
【図9】特願2007−316857号に記載の発明の一実施形態にかかる焦点検出装置を備えた顕微観察装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】図9の顕微観察装置に備わる焦点検出装置におけるマスク手段を構成する第1及び第2の遮光部の形状、及び(焦点検出用)照明光束における第1及び第2の遮光部で遮光されない領域と遮光される領域を示す説明図である。
【図11】図10に示す第1及び第2の遮光部で遮光されない領域の(焦点検出用)照明光について、透明基板における焦点合わせの対象となっている側の表面で反射された光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射された光の、2つの受光部との位置関係を示す説明図である。
【図12】図9の焦点検出装置において、焦点を透明基板の被検物側の面に合わせた場合における、焦点合わせの対象となっている側の表面で反射する光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射する光の経路を概念的に示す説明図である。
【図13】図12に示す状態の焦点検出装置において、透明基板における焦点検出対象となっている側と焦点検出対象となっていない側の夫々の表面で反射する光の2つの受光部近傍での入射状態を示す説明図である。
【図14】図9の焦点検出装置において、焦点を透明基板の被検物側とは反対側の面に合わせた場合における、焦点合わせの対象となっている側の表面で反射する光と、焦点合わせの対象となっていない側の表面で反射する光の経路を概念的に示す説明図である。
【図15】図14に示す状態の焦点検出装置において、透明基板における焦点検出対象となっている側と焦点検出対象となっていない側の夫々の表面で反射する光の2つの受光部近傍での入射状態を示す説明図である。
【図16】図9の焦点検出装置における2つの受光部で検出される、合焦状態に応じた受光量の変化の一例を示すグラフである。
【図17】図16に示した2つの受光部で検出された受光量に基づき計算された評価関数計算値の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 焦点検出用光源
2 コリメートレンズ
3 マスク手段
4 光束入射位置調節手段
4a,4a’ 第1のプリズム
4a1,4a1’,4a1” 平面
4a2 光軸に対称なV字形状に凹んだ傾斜面
4a2’ 傾斜面
4a2” 光軸に対称な円錐形状に凹んだ傾斜面
4b,4b’ 第2のプリズム
4b1 第1のプリズム4aの傾斜面4a2のV字形状に一致する光軸に対称なV字形状に突出した傾斜面
4b1’ 傾斜面4a2’に平行な傾斜面
4b2,4b2’ 平面
5 偏光ビームスプリッタ
6 λ/4板
7 対物レンズ
8 結像レンズ
9 光検出器
9a,9b 受光部
10 入射瞳
51 顕微鏡本体
52 落射照明装置
53 焦点検出装置
53’ 自動焦点検出ユニット
54 被検物
54a マイクロプレート
54a1 底面部
54a11,54a12 底面部4a1の表面
54b 培養液
55 XYステージ
56 対物レンズ
57,70 ハーフミラー
58 結像レンズ
59 CCDカメラ
60 駆動部
61 光源
62,63 レンズ
64 偏光ビームスプリッタ
65 λ/4板
66 マスク手段
66a 第1の遮光部
66b 第2の遮光部
67 点光源
68 外乱光遮光部材
69 光検出器
69a,69b 受光部
S 被検出表面を有する透明基板
S1 目的表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点検出用光束を対物レンズを介して試料面に投射して、焦点合わせを行う焦点検出装置において、
互いに対向した状態で配置された傾斜面を有し、且つ、該傾斜面の間隔を調節可能な2つの光学部材からなり、該2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することにより、前記対物レンズの瞳位置における前記焦点検出用光束の入射位置を該対物レンズの瞳径に応じた該瞳内の所定位置に調節可能な光束入射位置調節手段を備えたことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記光束入射位置調節手段が、前記焦点検出用光束を光軸に対称に分離し、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、該分離した2つの光束の間隔を調節することを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記2つの光学部材が、入射側が平面、出射側が光軸に対称なV字形状に凹んだ傾斜面で構成された第1のプリズムと、入射側が前記第1のプリズムの傾斜面のV字形状に一致する、光軸に対称なV字形状に突出した傾斜面、出射側が平面で構成された第2のプリズムとからなることを特徴とする請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記光束入射位置調節手段が、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、前記焦点検出用光束を光軸に垂直な方向にシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記2つの光学部材が、互いの上下を逆向きにして配置された、頂角の等しい2つのプリズムからなることを特徴とする請求項4に記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記光束入射位置調節手段が、前記焦点検出用光束を、光軸を中心とした同心円状に変形し、前記2つの光学部材の傾斜面の間隔を調節することによって、該変形した同心円状の光束の径を調節することを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項7】
前記2つの光学部材が、入射側が平面、出射側が光軸に対称な円錐形状に凹んだ傾斜面で構成された第1の円錐レンズと、入射側が前記第1の円錐レンズの傾斜面の凹んだ円錐形状に一致する、光軸に対称な円錐形状に突出した傾斜面、出射側が平面で構成された第2の円錐レンズとからなることを特徴とする請求項6に記載の焦点検出装置。
【請求項8】
前記焦点検出装置は、前記対物レンズと、透明基板に対し合焦信号を生成するための照明光を発し、前記対物レンズを通して照射する点光源と、前記照明光の光束のうちの該照明光の光軸に沿う第1の仮想平面で分割したときの一方の領域を通る光束を遮光する第1の遮光部を有するマスク手段と、前記透明基板で反射された光の光軸に沿う第2の仮想平面を挟んで対称に配置された2つの受光部を有する光検出器とを備え、前記2つの受光部を介して夫々検出された前記透明基板からの反射光の光量に基づいて、前記透明基板の第1又は第2の表面に前記対物レンズの焦点合わせを行い、
前記光束入射位置調節手段は、前記透明基板における第1又は第2の表面のうち一方の表面近傍に前記対物レンズの焦点が位置するときに、該一方の表面からの反射光が前記2つの受光部に入射するとともに他方の表面からの反射光が前記第2の仮想平面で分割したときの一方の領域における当該領域に配置された受光部を外れた領域を通るような該対物レンズの瞳内の所定位置に、該対物レンズの瞳位置における前記焦点検出用光束の入射位置を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の焦点検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−145531(P2010−145531A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320011(P2008−320011)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】