説明

焼き芋製造装置

【課題】エネルギー効率がよい焼き芋装置を提供する。
【解決手段】筐体40の内部に設置されている加熱室50の中に、上から電気ヒータ20、輻射板30及び第1及び第2載置皿10,12を配置する。また、第1及び第2載置皿10,12及び輻射板30は、ステンレスの平板を断面形状が周期的に三角の溝状になるように、プレス加工して形成する。電気ヒータ20は、電熱線を 曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成し、直線状部分が、輻射板30の三角状の溝部に沿って、第1載置皿10側からみて、上下方向に溝部と平行になるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さつま芋などの芋類を加熱して焼き芋を製造するための焼き芋製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
さつま芋には澱粉を分解しブドウ糖や麦芽糖にする酵素であるアミラーゼが多く含まれており、この酵素は60℃〜70℃の温度で最適に働く。したがって、低温で加熱するとさつま芋の内部温度の上昇が緩やかになるので、さつま芋内部の温度が60℃〜70℃となる時間が長くなる。すると、アミラーゼが澱粉を分解する量が多くなるので焼きあがったさつま芋に含まれるブドウ糖が多くなる。
【0003】
また、60℃〜70℃の温度帯を通過した後は急速に加熱することが望ましい。これは澱粉にはαとβの2種あり、生芋に含まれるβ澱粉は分子がきっちり並び、堅くて消化が悪いが、水を加え加熱すると分子が離れて柔らかいα澱粉になり(糊化またはα化という)消化しやすくなる。
【0004】
焼き芋とは生芋に含まれるβ澱粉が内部の水分と加熱によりα化してα澱粉になった状態である。しかし低温の加熱を長時間続けるとβ澱粉がα化する前に内部の水分が蒸発してしまうので、水分が蒸発する前に急速に加熱してα化を行うことが必要である。
【0005】
従来、こうした特性を生かすため、遠赤外線を発生させて、低温と高温の二段階の加熱を行うことにより糖度が高く、やわらかい焼き芋を製造する装置がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−278798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に記載の電気式焼き芋製造装置は、電気ヒータでさつま芋を加熱する加熱室内の熱効率が低いという問題があった。
つまり、上記特許文献1に記載されている焼き芋製造装置を始めとする従来の焼き芋製造装置では、必要な加熱室の内容積を確保しつつ、必要な温度でさつま芋を加熱するためには、電気ヒータの出力が加熱室の内容積で決定されるものであった。換言すれば、必要な温度を確保しつつ、加熱室の内容積を大きくしようとすれば、電気ヒータの出力を大きくする必要があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、エネルギー効率がよい焼き芋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載の焼き芋製造装置(1)は、さつま芋を載置して加熱する載置皿(10)と、載置皿(10)の上方に配置された加熱手段(20)と、加熱手段(20)の上方に配置され、加熱手段(20)によって加熱されることにより、載置皿(10)に対して輻射熱を放射する輻射板(30)と、を備えており、輻射板(30)が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
このような焼き芋製造装置(1)では、加熱手段(20)により直接焼き芋が加熱されるだけではなく、加熱手段(20)により輻射板(30)が加熱される。そして、加熱された輻射板(30)から輻射板(30)の下方にある載置皿(10)に対して輻射熱が放射されるので、その輻射熱によって、輻射板(30)の下方にある載置皿(10)に載置されたさつま芋が加熱される。したがって、加熱手段(20)で発せられる熱のうち上方(輻射板(30)側)に発せられる熱が無駄にならないので、熱効率を向上させることができる。
【0011】
さらに、輻射板(30)が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されているため、平板に比べて表面積が大きくなる。したがって、加熱手段(20)で加熱されたときに、輻射熱を、平板状態のときに比べ多く発生させることができる。つまり、焼き芋製造装置(1)内部を必要な温度に保つためのエネルギー効率をよくすることができる。
【0012】
ここで、「輻射板(30)が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されている」とは、正弦波状や三角波状に一定の周期をもって溝状に形成されていたり、平板をその断面形状が周期的に、三角や半正弦波状に溝状に形成されていたりするものを意味するが、輻射板(30)を取り付けたりするために、周期的に溝形状となっていない部分を一部に含むものを包含する意味である。
【0013】
なお、この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0014】
ところで、輻射板(30)からの輻射熱により、さつま芋だけでなく、さつま芋を載置している載置板も加熱される。そこで、請求項2に記載のように、載置皿(10)を、その断面形状が周期的に溝状になるように形成し、溝状に形成された載置皿(10)の下方に、さらに、その断面形状が周期的に溝状に成るように形成された1又は2以上載置皿(10)を配置するようにするとよい。
【0015】
このように載置板(10)を溝状に形成すると、載置板の表面積が大きくなるので、加熱された載置皿(10)から、さらに下方に多くの輻射熱が放射されることになる。したがって、載置板を重ねて配置した場合、それぞれの載置板から下方に放射熱が効率よく放射されるので、焼き芋製造装置(1)全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。
【0016】
ところで、載置皿(12)に載置したさつま芋の加熱は、必ずしもさつま芋の上方から行う必要はなく、下方から加熱してもよい。そこで、請求項3に記載のように、加熱手段(22)を載置皿(12)の下方に配置し、輻射板(32)を加熱手段(22)の更に下方に配置することによって、載置皿(12)に載置したさつま芋を、下方から加熱手段(22)と輻射板(32)で加熱するようにしても、請求項1に記載の焼き芋製造装置(1)と同様の効果が得られる焼き芋製造装置(3)とすることができる。
【0017】
この場合、請求項4に記載のように、載置皿(12)の断面形状が周期的に溝状になるように形成し、溝状に形成された載置皿(12)の上方に、さらに、その断面形状が周期的に溝状になるように形成した1又は2以上の載置皿(10)を配置するようにしても請求項2に記載の焼き芋製造装置(1)と同様の効果が得られる焼き芋製造装置(3)とすることができる。
【0018】
また、請求項5に記載のように、加熱手段(20,22)は、電熱線を、曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成した電気ヒータとし、電気ヒータの直線状部分が、輻射板(30,32)の溝部に沿って、載置皿(10,12)側からみて、上下方向に溝部と平行になるように配置するとよい。
【0019】
このようにすると、輻射板(30,32)において、電気ヒータの電熱線からの距離が均等に近くなるので、輻射板(30,32)が溝状に形成されていても均一に加熱される。したがって、溝状の輻射板(30,32)から載置皿(10)に載置されたさつま芋に対して均一に輻射熱が加わるので、さつま芋が均一に加熱される。その結果、全体が甘い焼き芋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】焼き芋製造装置1の概略の構成を示す外観図である。
【図2】第1載置皿10、第2載置皿12及び輻射板30の外観図である。
【図3】電気ヒータ20の形状を示す外観図である。
【図4】焼き芋製造装置1の概略の構成を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
(焼き芋製造装置1の構成)
図1は、本発明が適用された焼き芋製造装置1の概略の構成を示す構成図であり、図2は、第1載置皿10、第2載置皿12及び輻射板30の外観図である。焼き芋製造装置1は、さつま芋を遠赤外線で加熱して焼き芋を製造する焼き芋製造装置であって、図1(b)(正面図)に示すように、筐体40の内部に設置されている加熱室50の中に、第1載置皿10、第2載置皿12、電気ヒータ20及び輻射板30を備えている。
【0022】
第1載置皿10及び第2載置皿12には、さつま芋が載置される。また、第1載置皿10及び第2載置皿12は、図2(a)(平面図)及び図2(b)(側面図)に示すように、熱伝導をよくするために、アルミニウム合金の平板を断面形状が周期的に三角の溝状になるように、プレス加工されて形成されている。
【0023】
第1及び第2載置皿10,12の図2(a)中左右両端部分は、平板状のままであり、その部分が加熱室50の対抗する内壁側面に約17cm間隔で2段に亘って形成された溝に挿入され、第1載置皿10の下方に第2載置皿12が配置されている。
【0024】
なお、第1及び第2載置皿10,12は、さつま芋の出し入れが容易となるように、加熱室50の内壁側面に形成された溝に沿って、正面側(図1(a)中下側)にスライドさせて引き出せるようになっている。
【0025】
電気ヒータ20は、図1(a)(平面図)に点線で示すように、第1載置皿10の上方の加熱室50の図1中左右の側板にセラミックなどの断熱部材を介して装着されており、図3に示すように、ニクロム線などの電熱線を 曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成されている。
【0026】
また、電気ヒータ20は、図2(a)及び図2(b)中に点線で示すように、電気ヒータ20の直線状部分が、輻射板30の三角状の溝部に沿って、第1載置皿10側からみて、上下方向に溝部と平行になるように配置されている。
【0027】
輻射板30は、電気ヒータ20の上方に配置され、電気ヒータ20によって加熱されることにより、第1載置皿10に対して輻射熱を放射する。また、輻射板30は、ステンレスの平板を、第1及び第2載置皿10,12と同様に図3に示すように、断面形状が周期的に三角の溝状になるようにプレス加工されて形成されている。
【0028】
また、図1(a)に示すように、筐体40の正面(図1(a)中下側)には、観音開きの扉60が設置され、加熱室50内の加熱された雰囲気(空気)を外部に漏らさないようになっている。
【0029】
(焼き芋製造装置1の特徴)
以上のような焼き芋製造装置1では、電気ヒータ20により輻射板30が加熱されることにより、輻射板30から輻射熱が放射され、その輻射熱によって、輻射板30の下方にある第1載置皿10に載置されたさつま芋が加熱される。
【0030】
さらに、輻射板30が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されているため、平板に比べて表面積が大きくなる。したがって、電気ヒータ20で加熱されたときに、輻射熱を、平板状態のときに比べ多く発生させることができる。つまり、焼き芋製造装置1内部を必要な温度に保つためのエネルギー効率をよくすることができる。
【0031】
また、電気ヒータ20は、電熱線を、曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成し、電気ヒータの直線状部分が、輻射板30の溝部に沿って、第1載置皿10側からみて、上下方向に溝部と平行になるように配置してある。
【0032】
したがって、輻射板30において、電気ヒータの電熱線からの距離が均等に近くなるので、輻射板30が溝状に形成されていても均一に加熱されるので、溝状の輻射板30から第1載置皿10に載置されたさつま芋に対して均一に輻射熱が加わる。したがって、さつま芋が均一に加熱され、全体が甘い焼き芋を製造することができる。
【0033】
また、第1載置皿10の断面形状が周期的に溝状になるように形成し、溝状に形成された第1載置皿10の下方に、さらに、その断面形状が周期的に溝状に成るように形成された第2載置皿12を配置しているので、載置板の表面積が大きくなる。
【0034】
したがって、加熱された第1及び第2載置皿10,12から、さらに下方に多くの輻射熱が放射されることになるので、焼き芋製造装置1全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、図4に基づき、電気ヒータ22と輻射板32とを加熱室50の下部に設置した第2実施形態について説明する。第2実施形態における焼き芋製造装置3は、第1実施形態における焼き芋製造装置1の電気ヒータ20と輻射板30の設置位置を加熱室50下部にした以外は、第1実施形態の焼き芋製造装置1と同様であるので、同じ構成品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
焼き芋製造装置3は、図4(焼き芋製造装置3の正面図)に示すように、電気ヒータ22が第2載置皿12の下方の設置されており、輻射板32が電気ヒータ22の更に下方に設置されている。
【0037】
電気ヒータ22は、第1実施形態の電気ヒータ20と同様に、加熱室50の図4中左右の側板にセラミックなどの断熱部材を介して装着されており、図3に示すように、ニクロム線などの電熱線を 曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成されている。
【0038】
また、電気ヒータ22は、電気ヒータ20と同様に、直線状部分が、輻射板32の三角状の溝部に沿って、第2載置皿12側からみて、上下方向に溝部と平行になるように配置されている。
【0039】
輻射板32は、電気ヒータ22の下方に設置され、電気ヒータ20によって加熱されることにより、第2載置皿12に対して輻射熱を放射する。また、輻射板32は、第1実施形態の輻射板30と同様にステンレスの平板を、第1及び第2載置皿10,12と同様に図3に示すように、断面形状が周期的に三角の溝状になるようにプレス加工されて形成されている。
【0040】
このように、電気ヒータ22を第2載置皿12の下方に配置し、輻射板32を電気ヒータ22の更に下方に配置することによって、第2載置皿12に載置したさつま芋を下方から加熱するようにしても、第1実施形態の焼き芋製造装置1と同様の効果が得られる焼き芋製造装置3とすることができる。
【0041】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0042】
(1)例えば、上記実施形態では、第1及び第2載置皿10,12及び輻射板30,32の断面形状が周期的に三角の溝状になるように、それらを形成していたが、断面形状が正弦波形状や三角波形状のような周期的に変化する形状であってもよい。
【0043】
(2)また、上記実施形態では、載置皿は2つであったが、さらに多くの載置皿を配置できるようにしてもよい。
(3)さらに、第1実施形態では、輻射板30及び電気ヒータ20を加熱室50の上部(第1載置皿10の上方)に設置し、さつま芋を上から加熱し、第2実施形態では、輻射板32及び電気ヒータ22を加熱室50の下部(第2載置皿12の下方)に設置し、さつま芋を下から加熱していたが、輻射板30,32及び電気ヒータ20,22を加熱室50の上部と下部とに配置し、さつま芋を上下から同時に加熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,3…焼き芋製造装置、10…第1載置皿、12…第2載置皿、20,22…電気ヒータ、30…輻射板、32…輻射板、40…筐体、50…加熱室、60…扉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さつま芋を遠赤外線で加熱して焼き芋を製造する焼き芋製造装置であって、
さつま芋を載置する載置皿と、
前記載置皿の上方に配置された加熱手段と、
前記加熱手段の上方に配置され、前記加熱手段によって加熱されることにより、前記載置皿に対して輻射熱を放射する輻射板と、
を備え、
前記輻射板が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されていることを特徴とする焼き芋製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焼き芋製造装置において、
前記載置皿は、その断面形状が周期的に溝状になるように形成され、
該溝状に形成された載置皿の下方に、さらに、その断面形状が周期的に溝状になるように形成された1又は2以上の載置皿を配置したことを特徴とする焼き芋製造装置。
【請求項3】
さつま芋を遠赤外線で加熱して焼き芋を製造する焼き芋製造装置であって、
さつま芋を載置する載置皿と、
前記載置皿の下方に配置された加熱手段と、
前記加熱手段の下方に配置され、前記加熱手段によって加熱されることにより、前記載置皿に対して輻射熱を放射する輻射板と、
を備え、
前記輻射板が、その断面形状が周期的に溝状になるように形成されていることを特徴とする焼き芋製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の焼き芋製造装置において、
前記載置皿は、その断面形状が周期的に溝状になるように形成され、
該溝状に形成された載置皿の上方に、さらに、その断面形状が周期的に溝状になるように形成された1又は2以上の載置皿を配置したことを特徴とする焼き芋製造装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の焼き芋製造装置において、
前記加熱手段は、
電熱線を 曲線状部分と曲線状部分とを直線状部分で接続して蛇行させたサーペンタイン形状に形成した電気ヒータであり、
前記電気ヒータの直線状部分が、前記輻射板の溝部に沿って、前記載置皿側からみて、上下方向に前記溝部と平行になるように配置されていることを特徴とする焼き芋製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67391(P2011−67391A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220870(P2009−220870)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(503129877)サニア工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】