説明

焼結設備及びその操業方法

【課題】焼結鉱冷却装置の排ガス処理装置の停止時においても、焼結設備を停止することなく、稼働率を向上できる焼結設備及びその操業方法を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置50と環境集塵装置60との間において、除塵機52より上流側の排ガスダクト51と集塵ダクト61とを接続するバイパスダクト56と、バイパスダクト56が接続された箇所と除塵機52との間の排ガスダクト51に設けられた第1切替弁55と、バイパスダクト56に設けられた第2切替弁57とを備え、排ガス処理装置50を停止する場合、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱の処理量を減少させると共に、第1切替弁55を閉、第2切替弁57を開とし、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機、焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置、焼結鉱冷却装置からの排ガスを処理する排ガス処理装置等を有する焼結設備及びその操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉で使用する焼結鉱は、原材料が焼結機により焼結された後、焼結鉱冷却装置により取り扱い可能な温度まで冷却される。焼結機から排鉱される焼結鉱は一般に500℃〜700℃の顕熱を有しており、焼結鉱冷却装置により150℃以下に冷却される。冷却の際に廃棄される顕熱は膨大であるため、焼結鉱冷却装置では、従来から排熱回収による有効利用が図られている。排熱を回収する焼結鉱冷却装置の型式としては、サーキュラパン型、円形ホッパ型等と種々あり、形式は異なるものの、いずれも焼結鉱と熱交換した冷却ガスのうち高温部のみを熱回収に利用する方法が用いられている。又、冷却ガスは量が多いため、全量を集塵するには集塵機が非常に大型となり、設備費用が非常に高くなることから、一般的には一部が除塵されているだけであり、大半は大気にそのまま放出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平06−010581号公報
【特許文献2】特開2004−069135号公報
【特許文献3】特開2008−232519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の円形ホッパ型の焼結鉱冷却装置としては、特許文献1の第2図に示すような構成が提案されていた。
特許文献1の第2図に示す円形ホッパ型の焼結鉱冷却装置では、押し込み通風のため、熱交換した冷却ガスがホッパの上面、側面、下部に分散して排出されてしまい、高温の冷却ガスを回収することが困難となる問題があった。又、ホッパの内側から外側に冷却ガスが流れるため、外側の焼結鉱が冷えにくく、その結果、冷却風量が多くなる問題もあった。更に、冷却ガスが分散して排出されるため、集塵のためには全面にフードを設けねばならず、加えて、回転するホッパとのシールも難しく、リーク量も著しく増大するため、全量を集塵するには集塵機が非常に大型となる問題があった。
【0005】
上記問題を解決するため、本発明者等は特許文献3に示す焼結鉱冷却装置を提案している。
特許文献3に示す焼結鉱冷却装置では、例えば、図1に示すように、堆積層下部に複数の通風ダクトを設け、焼結鉱の下方から上方に冷却ガスを均一に流すことで、冷却効率を高めており、更に、回転するホッパと上部固定フードとの間をウォータシールでシールすることで、漏風を無くしており、その結果、少風量での冷却が可能となっている。又、少風量であることから、堆積層の高さが高くても圧力損失が大きくならないといった効果が得られている。
【0006】
ところで、従来の焼結設備では、焼結鉱冷却装置の排ガス処理装置、具体的には、排ガス吸引用の吸引ファン、排ガス集塵用の集塵機、排ガスからの排熱回収用のボイラ等が、定期点検、メンテナンス、故障等で停止すれば、焼結鉱冷却装置を停止する必要があり、焼結機も停止する必要があり、その結果、焼結工場全体が停止することになり、稼働率が低下していた。つまり、排ガス処理装置の停止時において、焼結設備を稼働させ続けて、稼働率を向上させることは従来困難であった。
【0007】
このため、設備費用は増加するが、ボイラの法定点検等のような停止期間を織り込み、稼働率の低下分を補う所定の生産量が得られるように、焼結設備全体の設備能力を大きくして建設されるのが一般的である。この際には、焼結設備全体のための環境集塵装置も、各焼結設備機器の能力に応じて計画されて建設されるため、同様に設備費用が増加している。このように、稼働率の低下は、生産コストの悪化に直接影響する重要な因子であるため、日々、故障等による停止が発生しないように、その管理が行われているが、故障等により排ガス処理装置が停止する場合には、やはり、焼結設備、ひいては、焼結工場全体を停止することになる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、焼結鉱冷却装置の排ガス処理装置の停止時においても、焼結設備を停止することなく、稼働率を向上できる焼結設備及びその操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る焼結設備は、
原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機と、焼結された焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置と、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記焼結機、前記焼結機の周囲及び前記焼結鉱冷却装置の周囲を集塵する環境集塵装置とを有する焼結設備において、
前記焼結鉱冷却装置は、
前記焼結機から供給される焼結鉱が上方から堆積されると共に下方の外周部から排出される環状の堆積槽と、
前記堆積槽を水平方向に回転駆動させる回転駆動手段と、
前記堆積槽の上部に設けられて、前記堆積槽の上部を覆うと共に、内部が吸引される環状のフードと、
前記フードと前記堆積槽との間に設けられ、前記フードと前記堆積槽との間を密閉するウォータシール式のシール部と、
前記堆積槽の下部の内周側と外周側の間を横断するように配置されると共に、当該内周側及び外周側から外部の空気を取り込んで、前記堆積槽の下部へ供給する開口部が中央部に設けられ、前記堆積槽に堆積された焼結鉱の下方から上方へ前記空気を通過させて、当該焼結鉱全体を冷却する複数の通風ダクトとを有し、
前記排ガス処理装置は、
前記フードに接続され、前記フード内の排ガスを導く排ガスダクトと、
前記排ガスダクトに接続され、前記排ガスに含まれる塵を除塵する第1除塵手段と、
前記第1除塵手段に接続され、前記排ガスとの熱交換を行って、高温を回収する熱交換手段と、
前記熱交換手段に接続され、前記排ガスダクト、前記第1除塵手段及び前記熱交換手段を介して、前記フード内の排ガスを吸引するファンとを有し、
前記環境集塵装置は、
塵を含む空気を前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から導く集塵ダクトと、
前記集塵ダクトに接続され、前記空気の除塵を行う第2除塵手段と、
前記第2除塵手段に接続され、前記集塵ダクト及び前記第2除塵手段を介して、前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から塵を含む空気を吸引する環境集塵ファンとを有し、
更に、
前記第1除塵手段より上流側の前記排ガスダクトと前記集塵ダクトとを接続するバイパスダクトと、
前記バイパスダクトが接続された箇所と前記第1除塵手段との間の前記排ガスダクトに設けられた第1切替弁と、
前記バイパスダクトに設けられた第2切替弁とを備え、
前記第1切替弁及び前記第2切替弁を切り替えることにより、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側又は前記環境集塵装置側のいずれか一方で吸引するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る焼結設備は、
原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機と、焼結された焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置と、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記焼結機、前記焼結機の周囲及び前記焼結鉱冷却装置の周囲を集塵する環境集塵装置とを有する焼結設備において、
前記焼結鉱冷却装置は、
前記焼結機から供給される焼結鉱が上方から堆積されると共に下方の外周部から排出される環状の堆積槽と、
前記堆積槽を水平方向に回転駆動させる回転駆動手段と、
前記堆積槽の上部に設けられて、前記堆積槽の上部を覆うと共に、内部が吸引される環状のフードと、
前記フードと前記堆積槽との間に設けられ、前記フードと前記堆積槽との間を密閉するウォータシール式のシール部と、
前記堆積槽の下部の内周側と外周側の間を横断するように配置されると共に、当該内周側及び外周側から外部の空気を取り込んで、前記堆積槽の下部へ供給する開口部が中央部に設けられ、前記堆積槽に堆積された焼結鉱の下方から上方へ前記空気を通過させて、当該焼結鉱全体を冷却する複数の通風ダクトとを有し、
前記排ガス処理装置は、
前記フードに接続され、前記フード内の排ガスを導く排ガスダクトと、
前記排ガスダクトに接続されて、前記フード内の排ガスを吸引するファンとを有し、
前記環境集塵装置は、
塵を含む空気を前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から導く集塵ダクトと、
前記集塵ダクトに接続され、前記空気の除塵を行う第2除塵手段と、
前記第2除塵手段に接続され、前記集塵ダクト及び前記第2除塵手段を介して、前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から塵を含む空気を吸引する環境集塵ファンとを有し、
更に、
前記ファンより上流側の前記排ガスダクトと前記集塵ダクトとを接続するバイパスダクトと、
前記バイパスダクトが接続された箇所と前記ファンとの間の前記排ガスダクトに設けられた第1切替弁と、
前記バイパスダクトに設けられた第2切替弁とを備え、
前記第1切替弁及び前記第2切替弁を切り替えることにより、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側又は前記環境集塵装置側のいずれか一方で吸引するようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る焼結設備の操業方法は、
上記第1又は第2の発明に記載の焼結設備の操業方法であって、
通常は、前記第1切替弁を開、前記第2切替弁を閉とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側で吸引し、
前記排ガス処理装置を停止する場合は、前記焼結鉱冷却装置での焼結鉱の処理量を減少させると共に、前記第1切替弁を閉、前記第2切替弁を開とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記環境集塵装置側で吸引することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る焼結設備の操業方法は、
上記第3の発明に記載の焼結設備の操業方法において、
前記焼結鉱冷却装置における焼結鉱の処理量と冷却風量及び圧力との関係を示すデータを予め取得しておき、
取得した前記データに基づき、前記環境集塵装置で吸引可能な圧力から、焼結鉱の処理量と冷却風量を算出し、
前記焼結鉱冷却装置での焼結鉱の処理量を算出した前記処理量まで減少させると共に、前記排ガス処理装置の前記吸引ファンの風量を算出した前記冷却風量まで落とし、
前記焼結鉱冷却装置から排出される焼結鉱の温度が予め規定した温度以下であれば、前記第1切替弁を閉、前記第2切替弁を開とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記環境集塵装置側で吸引し、前記排ガス処理装置を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排ガス処理装置を停止する際に、焼結鉱冷却装置からの排ガスをバイパスダクト側に切替えて、焼結設備全体の環境集塵装置により吸引するので、排ガス処理装置を停止しても、焼結鉱冷却装置及び焼結機を稼動させ続けることができることとなり、焼結設備ひいては焼結工場の稼働率を向上させることが可能となる。
【0014】
これは、本発明における焼結鉱冷却装置が、従来の焼結鉱冷却装置と比較すると、1/2〜1/3の少ない風量で冷却できるという利点があり、冷却する焼結鉱の量を減らしていくと、必要な冷却風量が更に減り、焼結鉱層の通気圧力損失も減少し、そして、環境集塵風量に対する高温冷却排ガスの風量が少なくなるので、環境集塵装置の耐熱温度より排ガスの温度が上昇することが無く、焼結設備全体の環境集塵装置の風量、圧力の能力内で、焼結鉱冷却装置からの排ガスも吸引することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る焼結設備の実施形態の一例を示す図である。
【図2】(a)は、図1に示した焼結設備中の焼結鉱冷却装置の上面図であり、(b)は、(a)のB−B線矢視図である。
【図3】図1に示した焼結設備中の排ガス処理装置と環境集塵装置を説明する図である。
【図4】(a)は、中央ルーバ部の斜視図、(b)は、通風ダクトの斜視図、(c)は、中央ルーバ部及び通風ダクトの上面図である。
【図5】(a)は、ホッパの外周側からの外観図、(b)は、ホッパの断面図である。
【図6】ホッパ上部に設けたフードを説明する図である。
【図7】(a)は、ホッパの他の構成例を示す上面図であり、(b)は、その断面図である。
【図8】本発明に係る焼結設備の操業方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る焼結設備及びその操業方法の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明に係る焼結設備の実施形態の一例を示す図であり、図2(a)は、その焼結設備中の焼結鉱冷却装置の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B線矢視図であり、図3は、その焼結設備中の排ガス処理装置と環境集塵装置を説明する図である。
【0018】
本発明に係る焼結設備は、複数の原材料(例えば、粉鉄鉱石、粉コークス、消石灰等)が各々収容された原材料槽と、これらの原材料を混合するミキサーと、混合された原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機と、焼結された焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置1と、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを処理する排ガス処理装置50と、焼結機及び焼結鉱冷却装置1の周囲を集塵する環境集塵装置60とを有する。なお、ここでは、原材料槽、ミキサー、焼結機等の図示は省略している。又、焼結鉱冷却装置1は、便宜的に、装置本体1a、装置下部1b、装置上部1cに分けて説明を行う。
【0019】
焼結鉱冷却装置1において、装置本体1aは、円形ドーナツ状のテーブル2と、テーブル2の内周側全周に設けられ、内周側に傾けて配置した内側板3と、テーブル2の外周側全周に設けられ、外周側に傾けて配置した外側板4とを有し、テーブル2、内側板3、外側板4が囲む逆台形断面の空間を、焼結鉱5を堆積する環状のホッパ6とする構造である。このホッパ6には、図示しない焼結機からの高温の焼結鉱5が上方から堆積されており、後述するように、ホッパ6に堆積された焼結鉱5が冷却された後、堆積槽6の下方の外周部、つまり、外側板4の下方から冷却された焼結鉱5が排出される構成である。
【0020】
又、ホッパ6の下部の内周側、つまり、内側板3の下部には、外部の空気を取り込むための複数の内側ルーバ部7と複数の内側開口部が全周に渡って設けられており、又、ホッパ6の下部の外周側、つまり、外側板4の下部には、外部の空気を取り込むための複数の外側ルーバ部8と複数の外側開口部が全周に渡って設けられている。詳細は後述するが、更に、対向する位置の内側開口部と外側開口部との間には通風ダクト9が設けられており、複数の通風ダクト9の中央を接続するように、中央ルーバ部10が設けられている。つまり、ホッパ6には、その内周側下部及び外周側下部だけでなく、その中央部下部にもルーバを有する構造である。
【0021】
外側ルーバ部8とテーブル2との間には、所定の間隙が設けられており、その間隙を通って、スクレーパ11がホッパ6の下部内部に挿入されており、スクレーパ11により、ホッパ6内の焼結鉱5を外部にかき出すようにしている。
【0022】
装置本体1aにおいて、テーブル2、内側板3、外側板4は、それらの内周側に設けられた架構12により支持されており、架構12は、その中央部で基礎13上に固設された中心軸受14と回転自在に結合されている。又、装置本体1aの下面には、円形状の複数のレール15が固設されている。
【0023】
装置下部1bには、円形状の複数のレール15に対応して、複数の支持ローラ16が基礎13上に円形状に配置されており、装置本体1aが、レール15を介して、支持ローラ16上に回転自在に支持されている。支持ローラ16のうち複数個には、駆動モータ17が接続されており、駆動モータ17による支持ローラ16の回転摩擦力により、中心軸受14を中心に、装置本体1aと共にホッパ6を水平方向に回転駆動させている(回転駆動手段)。
【0024】
又、ホッパ6の上部には、つまり、装置上部1cには、ホッパ6の上部を覆うように、環状のフード18が設けられており、フード18には、フード18と連通するように、排ガスダクト51が接続されている。
【0025】
排ガスダクト51には、排ガス処理装置50が接続されている。排ガス処理装置50は、図3に示すように、排ガスダクト51に接続された除塵機52(第1除塵手段)と、除塵機42に接続されたボイラ53(熱交換手段)と、ボイラ53に接続された吸引ファン54とを有しており、除塵機52、ボイラ53を介し、吸引ファン54によりフード18内の空気を吸引することにより、外部の空気を内側ルーバ部7、外側ルーバ部8等から取り込み、取り込んだ外部の空気をホッパ6内の焼結鉱5に通過させて、焼結鉱5を冷却するようにしている。そして、吸引された空気に含まれる塵は除塵機52で除塵され、更に、高温の空気と熱交換を行うボイラ53により、高温の空気から熱エネルギーが回収され、その後、吸引ファン54から大気へ放出されている。なお、大気へ放出せず、焼結機上の焼結鉱ベッドへ循環させる場合は、除塵機52、ボイラ53をバイパスし、除塵、排熱回収を行わない場合もある。又、詳細は後述するが、フード18の内部には、内部を流れる空気の流れを制御するため、複数の案内板43、整流板44が設けられている。
【0026】
上述したように、装置本体1aは、回転運動をするものであるが、装置上部1c側は、その位置が固定されているものである。従って、焼結鉱冷却装置1の内部を吸引する際に装置本体1aの上部とフード18との間からのリークを防止することが望ましい。そこで、焼結鉱冷却装置1においては、ホッパ6の上部とフード18との間にフード18とホッパ6との間を密閉するシール部23を設けている。拡大図Aを用いて、このシール部23を説明すると、外側板4の上部には、その全周に沿って溝部24が設けられており、この溝部24には、所定量の水25が常に供給されている。又、フード18の下部には、溝部24の水25の中に沈下するように、封止板26が設けられている。つまり、溝部24の水25の中に、封止板26を沈下させることにより、ホッパ6の上部とフード18との間を水25により密封する構造となっている(ウォータシール構造)。
【0027】
このように、回転するホッパ6の上部と固定されたフード18との間にウォータシール構造のシール部を設けたので、フード18内を吸引ファン54により、外部リーク無く吸引することができ、外部の空気を内側ルーバ部7、外側ルーバ部8等から効率的に取り込むことができる。従って、吸引ファン54が吸引する空気量を大きくしなくても、焼結鉱5を十分冷却することができ、吸引ファン54が吸引する空気量を大幅に減らすことができる。その結果、吸引する空気中に含まれる粉塵を効率的に除塵機52で除塵することができる。
【0028】
上述したように、焼結鉱冷却装置1には、それ専用の排ガス処理装置50が接続されている。一方、焼結設備には、焼結設備全体に対応する環境集塵装置60が接続されている。この環境集塵装置60は、図3に示すように、集塵ダクト61に接続された環境集塵バッグフィルタ62(第2除塵手段)と、環境集塵バッグフィルタ62に接続された環境集塵ファン63とを有しており、環境集塵バッグフィルタ62、環境集塵ファン63を介し、焼結設備全体の各集塵箇所、例えば、焼結機や焼結鉱冷却装置の周囲から、塵を含む空気を吸引している。そして、環境集塵ファン63により吸引された空気に含まれる塵は環境集塵バッグフィルタ62で除塵され、その後、煙突64を通って大気へ放出されている。
【0029】
従来、排ガス処理装置50と環境集塵装置60は、独立した排ガス系統として設けられていた。これは、環境集塵装置60で処理する空気が常温(室温程度)であるのに対して、排ガス処理装置50で処理する排ガスが400℃前後と高温であり、且つ、その風量が比較的多かったからである。
【0030】
しかしながら、上述したように、焼結鉱冷却装置1は、従来の焼結鉱冷却装置と比較すると、1/2〜1/3の少ない風量で焼結鉱を冷却できるという利点があり、吸引する空気量を大幅に減らしても、焼結鉱5を十分冷却することができる。そのため、後述するように、冷却する焼結鉱の処理量を減らしていくと、冷却に必要な風量を更に減らすことが可能となり、環境集塵装置60の処理能力内で、焼結設備全体からの環境集塵排ガスと共に、焼結鉱冷却装置1からの排ガスも吸引することが可能となる。更に、環境集塵装置60は、焼結設備全体の環境集塵を行うものであるため、排ガス処理装置50の2倍以上の空気を吸引可能であり、焼結鉱冷却装置1からの排ガスが高温であっても、概ね、常温の環境集塵排ガスで希釈すれば、環境集塵装置60で処理可能な温度まで冷却することが可能となる。
【0031】
従って、本実施例では、従来、独立した排ガス系統であった排ガス処理装置50と環境集塵装置60とを接続し、いずれか一方に切り替え可能な構成としている。具体的には、図3に示すように、除塵機52より上流側の排ガスダクト51と集塵ダクト61とを接続するバイパスダクト56と、バイパスダクト56が接続された箇所と除塵機52との間の排ガスダクト51に設けられた第1切替弁55と、バイパスダクト56に設けられた第2切替弁57とを備えている。そして、第1切替弁55及び第2切替弁57を切り替えることにより、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを排ガス処理装置50側又は環境集塵装置60側のいずれか一方で吸引するようにしている。更に、バイパスダクト56にダンパ58を設け、ダンパ58の角度を調整することにより、環境集塵装置60側が焼結鉱冷却装置1から吸引する排ガス量(風量)を調整可能な構成としてもよい。
【0032】
通常は、第1切替弁55を開、第2切替弁57を閉とし、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを排ガス処理装置50側で吸引し、排ガス処理(除塵及び排熱回収)を行っているが、排ガス処理装置50を停止する場合は、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を減少させると共に、第1切替弁55を閉、第2切替弁57を開とし、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引するようにしている。この場合、焼結鉱冷却装置1からの排ガスは、焼結設備全体から吸引された環境集塵排ガスにより希釈されて、環境集塵装置60で処理可能な温度まで冷却されるので、排熱の回収は行わないが、環境集塵バッグフィルタ62で除塵されて、その後、除塵された排ガスが煙突64を通って大気へ放出されることになる。
【0033】
又、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引する場合、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を減少させているが、この場合、環境集塵装置60の吸引能力に対応して、焼結鉱冷却装置1から排出される焼結鉱の温度が150℃以下となるように、焼結鉱処理量を減少させることが望ましい。このための具体的な操業方法については、後述の実施例2において説明する。
【0034】
このように、本実施例では、定期点検(例えば、ボイラ53等)、メンテナンス、故障等により、排ガス処理装置50を停止する際に、焼結鉱冷却装置1からの排ガスをバイパスダクト56側に切替えて、焼結設備全体の環境集塵装置60により吸引するので、排ガス処理装置50を停止しても、焼結機及び焼結鉱冷却装置1を稼動させ続けることができることとなり、焼結設備ひいては焼結工場の稼働率を向上させることが可能となる。
【0035】
ここから、焼結鉱冷却装置1の他の部分の構成について、更に説明を行う。
【0036】
焼結鉱冷却装置1において、フード18には、フード18を貫通して供給シュート27が設けられている。供給シュート27には、図示しない焼結機から焼結鉱5が供給されており、供給シュート27を通過して、ホッパ6に焼結鉱5が供給されて、所定量の焼結鉱5がホッパ6に堆積させられる構造である。ホッパ6内に堆積される焼結鉱5は一定高さで有ることが望ましい。特に、供給シュート27に焼結鉱5を供給する焼結機は、間欠的に(例えば、パレット毎に)焼結鉱5を供給するものであるため、そのまま、供給シュート27を通過させて、焼結鉱5をホッパ6に堆積させると、焼結機の供給タイミングに応じて、堆積された焼結鉱5の高さが大きく変動してしまう。
【0037】
そこで、焼結鉱冷却装置1においては、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5を一定高さとするため、焼結機からの焼結鉱5を供給シュート27内に常に一定量充填しておき、供給シュート27内に充填した焼結鉱5を充填状態で連続的にホッパ6内へ供給することで、焼結機の供給タイミングによる変動を防止するようにしている。供給シュート27内に充填する焼結鉱5の量としては、少なくとも、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5の高さより、供給シュート27内に充填する焼結鉱5の高さが高くなるような量であればよい。そのため、供給シュート27は、充填する焼結鉱5の量、例えば、充填する焼結鉱5の重量を検知可能な構造となっている。具体的には、供給シュート27全体が支持部材28により支持されており、支持部材28の一端がヒンジ29に支持され、支持部材28の他端がロードセル30に支持されて、供給シュート27内の焼結鉱5の重量を測定可能な構造である。
【0038】
そして、供給シュート27内に充填された焼結鉱5は、供給シュート27出口でホッパ6内の焼結鉱5の堆積層上に堆積し、供給シュート27からホッパ6内の焼結鉱5の堆積層まで充填状態又は堆積状態となって連続体を成しており、装置本体1aと共に環状のホッパ6が回転することにより、ホッパ6内へ連続的に供給されることとなる。その際、上記ロードセルにより供給シュート27内の焼結鉱5の重量を測定すると共に、ホッパ6(装置本体1a)の回転数を制御して、供給シュート27内の焼結鉱5が一定量以上となるようにしている。その結果、供給シュート27内に充填する焼結鉱5の高さが、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5の高さより高くなり、供給シュート27内の焼結鉱5をマテリアルシールとすることが可能となって、外部の空気が供給シュート27側からフード18内へショートパスすることを防止できる。
【0039】
このように、ホッパ6に焼結鉱5を供給する際には、一定量の焼結鉱5を常に充填している供給シュート27からホッパ6に焼結鉱5が供給されることにより、連続的に焼結鉱5を供給することが可能となり、間欠的に焼結鉱5を供給することによる堆積高さの変動を防止することができる。従って、図2(b)に示すように、供給シュート27からホッパ6へ焼結鉱5を連続的に供給するため、供給シュート27下部の排出口の位置が、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5の高さ位置となり、その高さ位置を一定に保つことができる。又、図2(a)に示すように、供給シュート27に近接してスクレーパ11を設けることにより、スクレーパ11によりかき出されて堆積高さが変動する領域をできるだけ小さくすることができる。この結果、ホッパ6の高さを最大限に生かすことができるため、焼結鉱冷却装置の外形を小さくして、コンパクトに設置可能となる。又、上記構造の供給シュート27により、ホッパ6での焼結鉱5の堆積高さを最大高さ位置に維持できるため、焼結鉱5の滞留時間(冷却時間)が長くなり、冷却用の空気量を大幅に低減できると共に、回収される空気の温度も高くすることができ、排熱利用の効率が向上する。
【0040】
次に、通風ダクト9、中央ルーバ部10について説明を行う。
図4、図5は、焼結鉱冷却装置のホッパ6内に設ける通風ダクト9、中央ルーバ部10を説明する図であり、図4(a)は、中央ルーバ部10の斜視図、図4(b)は、通風ダクト9の斜視図、図4(c)は、中央ルーバ部10及び通風ダクト9を上面図である。図5(a)は、ホッパ6の外周側からの外観図、図5(b)は、ホッパ6の断面図である。なお、図5(b)は、図1におけるホッパ6下部を拡大した図に相当する。
【0041】
中央ルーバ部10は、図4(a)に示すように、上面及び下面が閉じた箱型形状であり、対向する一方の側面に複数のルーバ31を設け、対向する他方の側面に通風口32を設けたものである。又、図4(a)からも明らかなように、中央ルーバ部10は、その中央に設けられた仕切板33により、通風口32の部分を含めて、内側ルーバ部7に対面する側と外側ルーバ部8に対面する側に仕切られている。中央ルーバ部10の内側ルーバ部7に対面する側に設けられた複数のルーバ31は、ルーバ31同士の間隙が内側ルーバ部7に向かって下向きになるように配置され、中央ルーバ部10の外側ルーバ部8に対面する側に設けられた複数のルーバ31は、ルーバ31同士の間隙が外側ルーバ部8に向かって下向きになるように配置されている。
【0042】
又、通風ダクト9は、ホッパ6下部の対向する位置における内側開口部と外側開口部との間を接続するように配置されたものであり、ホッパ6の内側開口部及び外側開口部に嵌め込まれる内側吸気口34及び外側吸気口35を有し、上面及び下面が閉じた逆台形の箱型形状となっている。内側吸気口34及び外側吸気口35は、分割板36により複数に分割されており、更に、分割板36により分割された上方側の吸気口には可動板37が設けられており、吸引圧に応じて、その吸気口が開口するようになっている(ダンパ構造)。又、通風ダクト9の側面中央部には、中央ルーバ部10を取り付けるための接続開口部38(開口部)が設けられており、隣り合う通風ダクト9同士を中央ルーバ部10で接続して、通風ダクト9及び中央ルーバ部10により、ホッパ6の下部中央に全周に渡って、中央ルーバ部10を環状に配置する構成である(図4(c)参照)。
【0043】
又、通風ダクト9の中央部には、その内部を4分割に仕切る十字断面の仕切部39が設けられている。この仕切部39は、吸入された空気を分割して、中央ルーバ部10に通風するものであり、内側吸気口34から内部に取り込まれた空気は、2分割された後、通風ダクト9に接続された2つの中央ルーバ部10の内側ルーバ部7に対面する側に導入されて、ホッパ6内に供給され、又、外側吸気口35から取り込まれた空気は、2分割された後、通風ダクト9に接続された2つの中央ルーバ部10の外側ルーバ部8に対面する側に導入されて、ホッパ6内に供給される。
【0044】
このように構成された通風ダクト9を、装置本体1aの外周側から見てみると、図5(a)に示すように、外側ルーバ部8の間の外側開口部に通風ダクト9が配置された構造となっている。又、装置本体1aの内周側も、同様な構造となっている。そして、図5(b)に示すように、通風ダクト9に接続された中央ルーバ部10が、外側ルーバ部8及び内側ルーバ部7に対向するように配置されることとなる。なお、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8に各々設けられた複数のルーバ31は、ルーバ31同士の間隙がホッパ6の中央に向かって下向きになるように配置されている。
【0045】
従って、吸引ファン54により吸引される空気は、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8では、それらのルーバ31同士の間からホッパ6内へ直接取り込まれ、中央ルーバ部10では、通風ダクト9の内側吸気口34及び外側吸気口35から吸入された後、通風ダクト9を通過して、中央ルーバ部10のルーバ31同士の間からホッパ6内の中央部下部へ取り込まれる。取り込まれた空気は、ホッパ6内に堆積された焼結鉱5の下方から上方へ通り抜けて、フード18を通過した後、排気ダクト51側へ排気されることとなる。
【0046】
このように、ホッパ6下部の内周側、外周側だけに、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8を設けるのではなく、外部の空気を取り込む通風ダクト9に連通された中央ルーバ部10をホッパ6の下部中央にも設けると共に、ホッパ6の全周に渡って中央ルーバ部10を配置したので、内側ルーバ部7及び外側ルーバ部8と共に中央ルーバ部10からも、ホッパ6内の焼結鉱5へ外部の空気を供給可能となる。従って、ホッパ6内に堆積された焼結鉱5の堆積高さを十分に利用して、焼結鉱5の下方から上方へ向けて、焼結鉱5の全体に均一に外部の空気が流れるようになるので、冷却用の空気を有効に利用することが可能となり、その結果、少ない流量で高温の空気を回収することが可能となる。
【0047】
なお、ホッパ6内に堆積された焼結鉱5の下部中央に外気を供給できるのであれば、図7(a)、(b)に示すように、ホッパ6の下部に通風ダクト9のみを設けた構成とし、図4に示されている接続開口部38(開口部)から外気を供給するようにしてもよい。その場合、通風ダクト9同士の配置間隔を短くし、使用する通風ダクト9の数を増やすことにより、中央ルーバ部10を設けた場合と同様に、焼結鉱5全体に均一に外気を供給して、効率的に冷却を行うことが可能である。
【0048】
次に、フード18について説明を行う。
図6は、ホッパ6上部に設けたフード18を説明する図であり、図2(a)のC−C線展開断面図である。
【0049】
フード18内の空気は、排ガスダクト51が接続されたフード18の1つの箇所から吸引ファン54に吸引される。従って、後述する案内板43が存在せず、フード18のみの場合には、フード18内を水平に流れる空気には偏流が発生し、その速度が速い場所では、ホッパ6内の焼結鉱5を通過した空気と共に出てくる塵を気流に乗せて随伴してしまうため、吸引される空気中の塵量が多くなるという問題があった。そこで、焼結鉱冷却装置1においては、堆積槽5を通過してきた空気を上方に導いた後、水平方向に導くL字断面の案内板43を、フード18内の周方向に複数設けた構造としている。
【0050】
フード18内部の構造を具体的に説明すると、ホッパ6内部を通過した空気は、フード18を通って、吸引ファン54側に吸引されるため、フード18は、後述する仕切壁により、2つの領域に分割されると共に、フード18内部を流れる空気の偏流を防止するための複数の案内板43と、空気を整流するための複数の整流板44とが設けられている。仕切壁は、排ガスダクト51の直下に、排ガスダクト51への流れを2分するように設けられた第1仕切り壁41と、供給シュート27を囲むように設けられた2つの第2仕切壁42から構成される。2つの第2仕切壁42は、吸入された空気が供給シュート27側に逃げるのを防止する役割を果たしている。
【0051】
そして、2つに分割された領域各々に、案内板43及び整流板44が複数設けられている。案内板43は、フード18の内部に、その周方向に沿って設けられており、鉛直上方に立ち上がる面と空気の流れ方向に水平に延設された面からなるL字断面形状のものである。又、案内板43は、排ガスダクト51から遠くなるに従って、その高さが高くなっており、排ガスダクト51に最も近い案内板43の高さが一番低く、排ガスダクト51から最も遠い案内板43の高さが一番高くなっている。従って、ホッパ6内に堆積された焼結鉱5を通過した空気は、案内板43により、上方に導かれた後、排気ダクト51が接続された方向に水平に導かれる。
【0052】
このように、案内板43を用いて、フード18の領域を更に小さな領域に分割すると共に、排ガスダクト51からの距離に従って、案内板43の高さを変更することにより、フード18内の偏流を防止して、環状のホッパ6の全ての領域において、焼結鉱5を通過してくる空気の流速を均等にすることができる。その結果、ホッパ6内の焼結鉱5を通過した空気と共に出てくる塵が、一旦上方に導かれるため、フード18内を水平に流れる空気に随伴される量が大幅に低減されて、空気中の塵量を大幅に低減することができる。
【0053】
又、排ガスダクト51の近傍には、案内板43の高さ位置に対応して、複数の整流板44が設けられており、排ガスダクト51に流れ込む空気を整流している。
【0054】
上記構成を有する焼結鉱冷却装置1における焼結鉱5の供給手順及び冷却手順を簡単に説明する。
【0055】
焼結鉱5は、供給シュート27内の焼結鉱5が一定量以上となるように、図示しない焼結機から供給シュート27に供給される。そして、供給シュート27の供給された焼結鉱5は、供給シュート27を通って、ホッパ6内に供給される。このとき、供給シュート27内の焼結鉱5の重量を測定すると共に、ホッパ6の周方向の回転速度を所定速度で回転しているので、供給シュート27内には一定量以上の焼結鉱5を常に充填されると共に、この供給シュート27からホッパ6へ連続的に焼結鉱5が供給されて、供給シュート27下部の排出口の位置が、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5の高さ位置となって、一定高さの焼結鉱5がホッパ6に堆積されることになる。
【0056】
又、上述してきたように、ホッパ6の下部には、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8、通風ダクト9及び中央ルーバ部10が設けられており、吸引ファン54により上方から吸引することにより、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8、通風ダクト9から外部の空気が取り込まれ、取り込まれた外部の空気が、内側ルーバ部7、外側ルーバ部8、中央ルーバ部10から、ホッパ6の下方に供給される。この結果、供給された外部の空気は、ホッパ6内に一定高さで堆積された焼結鉱5の下方側に供給され、焼結鉱5の下方から上方へ向けて流れる。その際、外部の空気は、焼結鉱5の水平断面に均一に広がって流れて、焼結鉱5を冷却することになる。そして、冷却に使用された外部の空気は、フード18、排気ダクト51を通って、除塵機52で除塵され、ボイラ53で熱交換された後、大気に放出されるか、焼結機に循環される。
【0057】
一方、冷却された焼結鉱5は、ホッパ6下部に挿入されたスクレーパ11により、装置本体1aの回転に伴い連続的に排出され、その後、ベルトコンベア19により搬送される。すなわち、焼結鉱5は、ホッパ6上部から連続的に供給されると共に、スクレーパ11によりかき取られながら、外部から吸引された空気と熱交換して冷却されて、順次ホッパ6内を下方へと降りて行き、最後に、スクレーパ11によってかき出されることとなる。この際、ホッパ6内の焼結鉱5は、徐々に下方に移動することになり、下方に徐々に移動する間に、吸引された外部の空気により冷却されるため、焼結鉱5全体が均一な温度に冷却されて排出されることになる。
【0058】
このように、円形テーブル式の焼結鉱冷却装置1は、空気等の冷却ガスを下から上に流す対向流式の熱交換を可能にしたものであり、小風量で冷却することにより高温排熱ガス得ることができ、従来不可能であった廃熱回収を可能とすると共に粉塵発生のない、環境にやさしいものである。上述した構造を採用することにより、風量が従来の1/2〜1/3、設置面積も従来の1/2程度と、コンパクトで高性能の焼結鉱冷却装置を実現できた。
【0059】
(実施例2)
次に、実施例1に示した焼結設備に関し、その具体的な操業方法について、図8のフローチャートを参照して説明を行う。
【0060】
(ステップS1)
焼結鉱冷却装置1における焼結鉱処理量と冷却風量・圧力との関係を示すデータを予め取得する。具体的には、焼結鉱処理量の変化に対し、必要な冷却風量を求め、求めた風量に対して、吸引ファン54の性能曲線から圧力損失を求めることで、焼結鉱処理量と冷却風量・圧力との関係を示すデータを取得する。このようなデータは、通常、試運転時に焼結鉱処理量を変化させた性能試験で確認しておけばよい。
【0061】
(ステップS2)
取得したデータに基づき、環境集塵装置60の環境集塵ファン63で焼結鉱冷却装置1を吸引可能な圧力から冷却風量が算出でき、算出された冷却風量から処理可能な焼結鉱処理量が算出できる。
【0062】
(ステップS3)
焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を、算出した焼結鉱処理量まで減少させると共に、排ガス処理装置50の吸引ファン54の風量を、算出した冷却風量まで落とす。定期点検や予め計画したメンテナンス予定に基づき、排ガス処理装置50を停止する場合には、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を徐々に減少させると共に、この減少量に併せて、吸引ファン54の風量を徐々に落としていけばよい。
【0063】
焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を徐々に減少させる際、焼結鉱冷却装置1では、供給シュート27下部の排出口の位置を徐々に下げ、ホッパ6内に堆積される焼結鉱5の高さ位置を徐々に下げることにより、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を徐々に減少させている。
【0064】
これに併せて、焼結機では、排鉱部周辺の温度(焼結機出口での排ガスの温度)が350〜420℃の範囲となるように、原材料中のコークス燃焼のためのブロワーの回転数を定常状態から徐々に下げていくと共に、パレット速度を徐々に下げていくことで、焼結鉱の生産量(焼結鉱冷却装置1への供給量)を徐々に減少させている。又、ブロワーの回転数を徐々に下げると共に、パレット台車上に積載する焼結鉱の原材料の層厚を徐々に低くしていって、焼結鉱の生産量を徐々に減少させてもよいし、ブロワー回転数、パレット速度、原材料層厚の3つの条件を徐々に低くしていって、焼結鉱の生産量を徐々に減少させてもよい。なお、排鉱部の焼結鉱、つまり、焼結鉱冷却装置1へ供給される焼結鉱は、その生産量が下がっても同じ温度であり、従って、排鉱部周辺の温度は、通常の生産量のときでも、350〜420℃の範囲となる。
【0065】
(ステップS4〜S5)
焼結鉱冷却装置1から排出される焼結鉱5の温度が予め規定した温度(例えば、150℃)以下であるか確認する。排出される焼結鉱5の温度が予め規定した温度以下であれば、ステップS6へ進むが、そうでなければ、ステップS5へ進み、排出される焼結鉱5の温度が予め規定した温度以下となるように、つまり、次のステップS6で切り替える環境集塵装置60の吸引能力に対応するように、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を下げる。
【0066】
排出される焼結鉱5の温度が150℃以下であれば、焼結鉱冷却装置1からの排ガスの温度は400℃前後となる。このような温度であれば、環境集塵装置60側で吸引する際に、環境集塵装置60で処理可能な温度まで(例えば、150℃以下)、常温の空気で希釈し、冷却可能である。
【0067】
(ステップS6)
排出される焼結鉱5の温度が予め規定した温度以下であれば、第1切替弁55を閉、第2切替弁57を開とし、排ガス処理装置50側から環境集塵装置60側へ切り替えて、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引するようにする。
【0068】
このとき、焼結設備の各集塵箇所において、発塵が目立たなければ、環境集塵装置60側の集塵機能も適正に動作していると言え、このときの焼結鉱処理量が最大の処理量と言える。一方、発塵が目立つようであれば、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量を更に下げると共に、ダンパ58の開度を調整して、環境集塵装置60側で吸引する焼結鉱冷却装置1からの吸引風量も下げる。
【0069】
(ステップS7)
その後、排ガス処理装置50を停止し、例えば、定期点検やメンテナンス等を実施する。
【0070】
一方、故障等により突発的に排ガス処理装置50を停止し、環境集塵装置60側へ切り替える場合には、以下のようにすればよい。
【0071】
故障等により突発的に排ガス処理装置50を停止する場合、最初に、第1切替弁55を閉、第2切替弁57を開とし、排ガス処理装置50側から環境集塵装置60側へ強制的に切り替えて、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引する。
【0072】
この場合、焼結鉱冷却装置1では、ホッパ6の周方向の回転速度を下げることにより、焼結鉱5の滞留時間を増やして、冷却能力を確保する。
【0073】
一方、焼結機では、その生産能力等の特性を予め把握しておき、パレット速度を低くする条件を主に、上述した方法と同様に、ブロワー回転数、原材料層厚を低くして、焼結鉱の生産量を減少させればよい。これにより、焼結機の給鉱側で給鉱した原材料が焼結鉱となって排鉱部に到達する頃には、所望の生産量に調整可能となる。特に、焼結鉱冷却装置1では、供給シュート27自体が焼結鉱冷却装置1へ供給する焼結鉱のバッファ(一時的な保管場所)となっているので、供給シュート27から溢れないように、焼結機から焼結鉱を供給すれば、故障等により突発的に排ガス処理装置50を停止する場合にも対応可能である。
【0074】
又、故障等により突発的に排ガス処理装置50を停止し、環境集塵装置60側へ強制的に切り替える場合、冷却風量は急に下がるが、ホッパ6内に既に堆積してある焼結鉱5の量はそのままであるので、焼結鉱冷却装置1から排出される焼結鉱の温度が一時的に150℃を越えるおそれもある。このような場合には、通常、焼結鉱冷却装置1の排鉱部には緊急時の冷却用散水装置が設けられているので、一時的に散水することで、排出される焼結鉱5の冷却を行えばよい。
【0075】
ここで、具体的な操業例を説明する。
【0076】
例えば、通常操業において、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量が380t/hである場合、焼結鉱冷却装置1は5000m3/minの冷却風量で排ガス処理装置50から吸引されている。又、環境集塵装置60の吸引風量は10000m3/minで運転されている。
【0077】
そして、図8に示した手順を経て、排ガス処理装置50側から環境集塵装置60側へ切り替えて、焼結鉱冷却装置1からの排ガスを環境集塵装置60側で吸引するようにした結果、焼結鉱冷却装置1における冷却風量、即ち、環境集塵装置60側で吸引可能な冷却風量は、3000m3/minであり、焼結鉱冷却装置1での焼結鉱処理量は228t/h程度、即ち、通常時の60%程度の処理量で焼結設備を操業が可能であった。従来、排ガス処理装置50を停止すると、焼結設備も停止する必要があったが、本実施例の手順を実施することにより、連続操業が可能となり、稼働率を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、焼結鉱を製造する焼結設備、焼結工場に好適なものである。
【符号の説明】
【0079】
1 焼結鉱冷却装置
5 焼結鉱
6 ホッパ
9 通風ダクト
18 フード
23 シール部
27 供給シュート
50 排ガス処理装置
51 排ガスダクト
52 除塵機
53 ボイラ
54 吸引ファン
55 第1切替弁
56 バイパスダクト
57 第2切替弁
58 ダンパ
60 環境集塵装置
61 集塵ダクト
62 環境集塵バッグフィルタ
63 環境集塵ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機と、焼結された焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置と、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記焼結機、前記焼結機の周囲及び前記焼結鉱冷却装置の周囲を集塵する環境集塵装置とを有する焼結設備において、
前記焼結鉱冷却装置は、
前記焼結機から供給される焼結鉱が上方から堆積されると共に下方の外周部から排出される環状の堆積槽と、
前記堆積槽を水平方向に回転駆動させる回転駆動手段と、
前記堆積槽の上部に設けられて、前記堆積槽の上部を覆うと共に、内部が吸引される環状のフードと、
前記フードと前記堆積槽との間に設けられ、前記フードと前記堆積槽との間を密閉するウォータシール式のシール部と、
前記堆積槽の下部の内周側と外周側の間を横断するように配置されると共に、当該内周側及び外周側から外部の空気を取り込んで、前記堆積槽の下部へ供給する開口部が中央部に設けられ、前記堆積槽に堆積された焼結鉱の下方から上方へ前記空気を通過させて、当該焼結鉱全体を冷却する複数の通風ダクトとを有し、
前記排ガス処理装置は、
前記フードに接続され、前記フード内の排ガスを導く排ガスダクトと、
前記排ガスダクトに接続され、前記排ガスに含まれる塵を除塵する第1除塵手段と、
前記第1除塵手段に接続され、前記排ガスとの熱交換を行って、高温を回収する熱交換手段と、
前記熱交換手段に接続され、前記排ガスダクト、前記第1除塵手段及び前記熱交換手段を介して、前記フード内の排ガスを吸引するファンとを有し、
前記環境集塵装置は、
塵を含む空気を前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から導く集塵ダクトと、
前記集塵ダクトに接続され、前記空気の除塵を行う第2除塵手段と、
前記第2除塵手段に接続され、前記集塵ダクト及び前記第2除塵手段を介して、前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から塵を含む空気を吸引する環境集塵ファンとを有し、
更に、
前記第1除塵手段より上流側の前記排ガスダクトと前記集塵ダクトとを接続するバイパスダクトと、
前記バイパスダクトが接続された箇所と前記第1除塵手段との間の前記排ガスダクトに設けられた第1切替弁と、
前記バイパスダクトに設けられた第2切替弁とを備え、
前記第1切替弁及び前記第2切替弁を切り替えることにより、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側又は前記環境集塵装置側のいずれか一方で吸引するようにしたことを特徴とする焼結設備。
【請求項2】
原材料を焼結して焼結鉱とする焼結機と、焼結された焼結鉱を冷却する焼結鉱冷却装置と、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記焼結機、前記焼結機の周囲及び前記焼結鉱冷却装置の周囲を集塵する環境集塵装置とを有する焼結設備において、
前記焼結鉱冷却装置は、
前記焼結機から供給される焼結鉱が上方から堆積されると共に下方の外周部から排出される環状の堆積槽と、
前記堆積槽を水平方向に回転駆動させる回転駆動手段と、
前記堆積槽の上部に設けられて、前記堆積槽の上部を覆うと共に、内部が吸引される環状のフードと、
前記フードと前記堆積槽との間に設けられ、前記フードと前記堆積槽との間を密閉するウォータシール式のシール部と、
前記堆積槽の下部の内周側と外周側の間を横断するように配置されると共に、当該内周側及び外周側から外部の空気を取り込んで、前記堆積槽の下部へ供給する開口部が中央部に設けられ、前記堆積槽に堆積された焼結鉱の下方から上方へ前記空気を通過させて、当該焼結鉱全体を冷却する複数の通風ダクトとを有し、
前記排ガス処理装置は、
前記フードに接続され、前記フード内の排ガスを導く排ガスダクトと、
前記排ガスダクトに接続されて、前記フード内の排ガスを吸引するファンとを有し、
前記環境集塵装置は、
塵を含む空気を前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から導く集塵ダクトと、
前記集塵ダクトに接続され、前記空気の除塵を行う第2除塵手段と、
前記第2除塵手段に接続され、前記集塵ダクト及び前記第2除塵手段を介して、前記焼結機及び前記焼結鉱冷却装置の周囲から塵を含む空気を吸引する環境集塵ファンとを有し、
更に、
前記ファンより上流側の前記排ガスダクトと前記集塵ダクトとを接続するバイパスダクトと、
前記バイパスダクトが接続された箇所と前記ファンとの間の前記排ガスダクトに設けられた第1切替弁と、
前記バイパスダクトに設けられた第2切替弁とを備え、
前記第1切替弁及び前記第2切替弁を切り替えることにより、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側又は前記環境集塵装置側のいずれか一方で吸引するようにしたことを特徴とする焼結設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焼結設備の操業方法であって、
通常は、前記第1切替弁を開、前記第2切替弁を閉とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記排ガス処理装置側で吸引し、
前記排ガス処理装置を停止する場合は、前記焼結鉱冷却装置での焼結鉱の処理量を減少させると共に、前記第1切替弁を閉、前記第2切替弁を開とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記環境集塵装置側で吸引することを特徴とする焼結設備の操業方法。
【請求項4】
請求項3に記載の焼結設備の操業方法において、
前記焼結鉱冷却装置における焼結鉱の処理量と冷却風量及び圧力との関係を示すデータを予め取得しておき、
取得した前記データに基づき、前記環境集塵装置で吸引可能な圧力から、焼結鉱の処理量と冷却風量を算出し、
前記焼結鉱冷却装置での焼結鉱の処理量を算出した前記処理量まで減少させると共に、前記排ガス処理装置の前記吸引ファンの風量を算出した前記冷却風量まで落とし、
前記焼結鉱冷却装置から排出される焼結鉱の温度が予め規定した温度以下であれば、前記第1切替弁を閉、前記第2切替弁を開とし、前記焼結鉱冷却装置からの排ガスを前記環境集塵装置側で吸引し、前記排ガス処理装置を停止することを特徴とする焼結設備の操業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2782(P2013−2782A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136926(P2011−136926)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】