説明

焼結設備用廃熱回収発電プラント

【課題】焼結機の排ガスに含まれる無水硫酸の液滴硫酸化を抑制しながら、焼結鉱クーラーに加えて焼結機の廃熱を効果的に回収できる焼結設備用廃熱回収発電プラントを提供する。
【解決手段】蒸気タービン51の復水と低圧段フラッシャー42の戻り熱水を焼結鉱クーラー廃熱ボイラー(SCボイラー)30の節炭器37で加熱して得た熱水をSCボイラーの蒸気ドラム36と高圧段フラッシャー41と焼結機廃熱ボイラー(SMボイラー)10の蒸気ドラム16に分配して、SCボイラーの蒸発器35と過熱器33によって得た高圧蒸気とSMボイラーの蒸発器15と過熱器13によって得た高圧蒸気とを蒸気タービン51の高圧段に供給し、高圧段フラッシャー41の蒸気を中圧段に供給し、低圧段フラッシャー42の蒸気を低圧段に供給する廃熱回収発電プラントにより、焼結機排ガスを常時酸露点以上の温度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機と焼結鉱クーラーで構成され焼結鉱を生成する焼結設備に適用する廃熱回収発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所で使用する鉄鉱石は、粉状にした鉄鉱石を産地や性質についてブレンドして均質化した粉鉱石が主体となるが、粉鉱石をそのまま高炉に装入すると目詰まりを起こして還元ガスの流れを阻害する。そこで、事前に粉鉱石に少量の石灰粉とコークスを混ぜ、焼結機を用いて一定の大きさに焼き固めて塊状の焼結鉱としたものを使うことが多い。現在、日本では、高炉に装入される鉄鉱石のうち焼結鉱がほぼ75%を占めるとされている。
【0003】
焼結鉱は,粉鉱、粉石灰石、粉コークスを混合して造粒した焼結原料を焼結機に装入して着火させ、コンベアにより焼結原料が末端に向かって移動する間に吸引ブロワで吸引した空気を上から下に向けて吹き付けて粉コークスを燃焼させ、コークスの燃焼熱で粉鉱石を部分的に溶融して結合させたのちに、破砕、選別して直径15〜30mmの焼結鉱を得る。焼結機で製造される高温の焼結鉱は、焼結鉱クーラーに移されてコンベヤで搬送する間にコンベヤの下から冷却気流を当てられ貯蔵が可能な温度まで冷却される。
【0004】
このように、焼結鉱を生産する焼結設備は、焼結機と焼結鉱クーラーで構成される。焼結機では空気を供給して焼結原料を燃焼させ、燃焼により生ずるガスが着火部分における50〜60℃程度の低温からコンベア末端部分における400〜450℃程度の高温まで分布する排ガスとなる。また焼結鉱クーラーでは高温の焼結鉱を空気で冷却するので、冷却用空気が300〜400℃の高温の排ガスとなる。
従来、たとえば図3に図示されたように、焼結鉱クーラーの排ガスについては排ガスの余剰熱を廃熱ボイラーで回収して蒸気を発生し、ユーティリティ蒸気としてあるいは蒸気タービンを介して得られる電力として効果的に廃熱回収されている。
【0005】
ちなみに、特許文献1は、焼結鉱クーラーで暖められた冷却用空気を廃熱ボイラーに導いて発生させた蒸気を蒸気タービンに供給して電力を生成する廃熱回収方法における改良発明を開示している。
特許文献1に開示された焼結鉱クーラーの廃熱回収方法は、焼結鉱クーラーを焼結鉱がより高温状態にあるボイラー連通領域と冷却が進んだ煙道連通領域とに分けて、ボイラー連通領域に導入した冷却ガスは冷却後に焼結鉱を覆うフードを介してボイラーに導いて熱を回収し、煙道連通領域に導入した冷却ガスは冷却後の排ガスをそのまま煙道に導いて大気に放出する方法であって、フード内を常時正圧にして大気が混入しないようにして、回収する冷却ガスの温度低下を防ぐと共に、ボイラー連通領域と煙道連通領域の仕切りを任意に設定できるようにして熱回収率を向上させたことが特徴になっている。
特許文献1には、焼結機で発生する余剰熱について、これを回収して利用することについて何の言及も示唆もない。
【0006】
ところで、サスペンションプレヒータ(PH)とエアクエンチングクーラー(AQC)を備えるセメント焼成プラントでは、従来、PHの排ガスをボイラーで熱回収してセメント原料の乾燥に利用すると共に、AQCの排ガスをボイラーで限界まで熱回収して発電する廃熱発電システムが利用されてきた。PHの排ガスの温度はたとえば350〜400℃であり、AQCの排ガスの温度はたとえば300〜250℃であるが排ガスの量がPHより多い。
【0007】
これに対して、たとえば特許文献2は、PHの廃熱とAQCの廃熱をそれぞれ廃熱ボイラーで回収して蒸気を得て、蒸気タービンを駆動して発電する廃熱発電システムを開示している。
特許文献2に開示されたセメント焼成プラント廃熱発電システムは、AQCボイラーの節炭器で加熱された熱水の一部をフラッシャーを介して低圧蒸気化して蒸気タービンの低圧段に投入すると共に、残りの一部をAQCボイラーの蒸発器と過熱器を通して過熱し、さらに残りをPHボイラーの蒸発器と過熱器を通して過熱して、生成した高圧蒸気を蒸気タービンの高圧段に投入するシステムである。
【0008】
特許文献2の廃熱発電システムの特徴は、図4に示すように、PHボイラーの排ガス出口側にさらに蒸気ドラムを有する第2蒸発器を備えて、フラッシャーからの戻り熱水が蒸気ドラムを介して第2蒸発器に導入され、第2蒸発器で加熱された熱水が蒸気ドラムに戻され、蒸気ドラムで発生する蒸気が蒸気タービンの低圧段に投入されることである。
【0009】
開示された廃熱発電システムは、AQCボイラーの出口ガス温度をできるだけ低温に維持する一方、PHボイラーを2圧化して多段式蒸気タービンの高圧段と低圧段のそれぞれに適した蒸気を補給するようにして、PHボイラーの出口ガス温度をできるだけ低温にして廃熱回収率を大幅に高めるようにしたものである。
開示システムでは、PHボイラーの入り口ガス温度325℃が出口ガス温度165℃まで下げられ、AQCボイラーの入り口ガス温度360℃が出口ガス温度105℃まで下げられる。
このようにして、開示の廃熱発電システムは、AQCの廃熱を十分に回収した上、PHの廃熱も十分に利用して、電気エネルギー化することができる。
【0010】
そこで、焼結機と焼結鉱クーラーを備えた焼結設備にセメント焼成プラント廃熱発電システムの技術的思想を適用して焼結機の廃熱も有効に利用できるようにしようとすれば、焼結機にPHボイラーに対応する焼結機ボイラー(SMボイラー)を採用し、焼結鉱クーラーにAQCボイラーに対応する焼結鉱クーラー廃熱ボイラー(SCボイラー)を採用することになる。
【0011】
ところが、焼結機においては、焼結原料に含まれるイオウ成分が焼結過程で酸化して亜硫酸ガスSOになりさらに酸化して生成する無水硫酸SOが排ガスに含まれる。したがって、排ガスの温度が酸露点より低下すると、SOが水蒸気と反応して硫酸となったガスが結露して固体表面上に液滴硫酸が出現し高い腐食性を発揮するので、焼結機排ガスが流れ下る途中の流路に設けられた排ガス処理装置や煙道を腐食して損傷を与えるおそれがある。
【0012】
このため、通常は、排ガス用煙突出口における排ガスは酸露点を考慮して決められている。硫酸の酸露点は、SOの分圧と水分分圧により左右される値であるが、ほぼ120〜140℃程度であるので、排ガス温度はたとえば140〜150℃程度になるようにすることが好ましい。
【0013】
また、硫酸のガスが含まれた排ガスが、水の露点以下の温度になると、凝縮した水に硫酸が溶けて硫酸溶液になり、付着した金属表面を激しく腐食するようになる。
このため、煙道中の排ガスは水の露点温度より高くなるようにすることが好ましい。水露点は、ガス中の水蒸気分圧により左右される値であるが、ほぼ60〜80℃程度であるので、排ガス温度はたとえば100℃以上に維持することが好ましい。
【0014】
さらに、SMボイラーを設けた場合は、SMボイラー出口の排ガスは、廃熱ボイラーを経由しない焼結機の点火部で生じる低温の排ガスと合流したのち集塵機など排ガス処理装置を通って煙突から大気に排出されることになる。そこで、合流後の排ガス温度が酸露点を下回らないようにしないと、煙道などの排気系設備を著しく腐食させるため、合流後の排ガス温度を酸露点以上に維持することが求められる。したがって、SMボイラー出口の排ガスは、焼結機における低温領域の燃焼ガスに見合うため、できるだけ高温にすることが好ましい。
【0015】
特許文献2に開示された廃熱ボイラーは、出口における排ガス温度を低温にすることにより効果的な廃熱回収を図るものである。そこで、従来技術に従って焼結機に廃熱ボイラーを導入した場合には、焼結機廃熱ボイラーに要求される排ガスの温度条件を満たすことができず排ガスを過度に冷却して排ガス処理系に障害を招くことになる。このように、セメント焼成プラント廃熱発電システムをそのまま適用することはできず、焼結機の排ガスについては効果的な廃熱回収をすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−226618号公報
【特許文献2】特開2008−157183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、焼結鉱クーラーにおける廃熱回収に加えて、焼結機の排ガスに含まれる無水硫酸の液滴硫酸化を抑制しながら、従来十分活用できなかった焼結機の廃熱を効果的に回収して、焼結設備の廃熱回収率を向上させるようにした焼結設備用廃熱回収発電プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、焼結機と焼結鉱クーラーを備える焼結設備に適用する廃熱回収発電プラントであって、蒸発器と節炭器と過熱器と蒸気ドラムを備えて焼結鉱クーラーの排ガスを導入し熱水と蒸気を発生する焼結鉱クーラー廃熱ボイラーと、蒸発器と過熱器と蒸気ドラムを備えて焼結機の排ガスを導入し蒸気を発生する焼結機廃熱ボイラーと、発電機と結合した多段式蒸気タービンと、第1段フラッシャーである高圧段フラッシャーの蒸気を多段式蒸気タービンの中圧段に供給し第2段フラッシャーである低圧段フラッシャーの蒸気を多段式蒸気タービンの低圧段に供給する2段式フラッシャーと、を備える。
【0019】
さらに、蒸気タービンの復水と低圧段フラッシャーの戻り熱水を焼結鉱クーラー廃熱ボイラーの節炭器で加熱して、加熱された熱水の一部を焼結鉱クーラー廃熱ボイラーの蒸気ドラムに供給し、残りの一部を焼結機廃熱ボイラーの蒸気ドラムに供給し、残りを高圧段フラッシャーに供給し、焼結鉱クーラー廃熱ボイラーの蒸発器と過熱器で生成した蒸気と焼結機廃熱ボイラーの蒸発器と過熱器で生成した蒸気を多段式蒸気タービンの高圧段に供給することを特徴とする。
【0020】
これにより、焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスを酸露点より高い温度に維持し、かつ、焼結機廃熱ボイラーの排ガスと焼結機の排ガスが合流するところにおける排ガスを水露点より高い温度に維持することができる。
たとえば、焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスを200℃以上に保持し、また焼結機廃熱ボイラーの排ガスと焼結機の排ガスが合流するところにおける排ガスをたとえば160℃以上に保持すれば、硫酸腐食を効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントでは、焼結機廃熱ボイラーを設置することにより、焼結機の排ガスによる硫酸腐食を抑制しながら、焼結機の廃熱を利用して蒸気タービンの高圧段に供給する高圧蒸気を補充することができる。また、焼結機廃熱ボイラーにおいて出口の排ガス温度を酸露点以上に維持するため、十分に廃熱回収することはできないが、その代わりに、焼結鉱クーラー廃熱ボイラーにおける高圧蒸気の生産量を抑制した分を2段式フラッシャーの高圧段フラッシャーにおける中圧蒸気の生産に利用して、中圧蒸気を蒸気タービンの中圧段に供給して出力を補うことで、全体として廃熱の利用率を向上させることができる。
本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、焼結機の廃熱を回収しない場合と比較してほぼ1.5倍の廃熱回収率を達成することができる。
【0022】
また、本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、焼結機廃熱ボイラーにさらに節炭器を備えて、蒸気タービンの復水と2段式フラッシャーの戻り熱水を焼結鉱クーラー廃熱ボイラーの節炭器で加熱して焼結機廃熱ボイラーの蒸気ドラムに供給する代わりに、高圧段フラッシャーの熱水を焼結機廃熱ボイラーの節炭器で加熱して一部を蒸気ドラムに供給し残りを高圧段フラッシャーに戻すものであってもよい。
【0023】
これにより、焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスを酸露点より高い温度に維持し、焼結機廃熱ボイラーの排ガスと焼結機の排ガスが合流したときの排ガスを水露点より高い温度に維持して、硫酸腐食を抑制することができる。
また、焼結機の廃熱を利用して、蒸気タービンの高圧段に供給する高圧蒸気を補充すると共に、2段式フラッシャーを採用して低圧段フラッシャーで生成する低圧蒸気を蒸気タービンの低圧段に加える他に、高圧段フラッシャーで生産する中圧蒸気を中圧段に補充して蒸気タービンの出力を補うことで、低温媒体を活用して全体として廃熱の利用率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、焼結機排ガスによる硫酸腐食を抑制しながら、従来回収が十分できなかった焼結機で発生する廃熱を回収して電力を生成し、全体としての廃熱利用率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係る焼結設備用廃熱回収発電プラントのブロック図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る焼結設備用廃熱回収発電プラントのブロック図である。
【図3】従来の焼結設備用廃熱回収発電プラントの例を示すブロック図である。
【図4】従来のセメント焼成プラントに適用した廃熱回収発電システムの例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図番の異なる図面においても、同一の機能を備えた構成要素には同一の参照番号を付して、理解の容易化を図った。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の第1実施例に係る焼結設備用廃熱回収発電プラントのブロック図である。図中、有向実線は熱水や蒸気の流れを示し、有向点線は排気の流れを示す。
第1実施例の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、焼結設備における焼結機(SM)1と焼結鉱クーラー(SC)2で発生する廃熱を回収して電力を得る廃熱回収発電プラントである。
【0028】
たとえば最も一般的なドワイト・ロイド式の焼結機1は、直径2〜3mmの粉鉱と溶剤となる粉石灰石と燃料となる粉コークスとを混合して造粒した焼結原料を機中の鉄製のパレットに入れて着火させ、パレットの焼結原料が末端に向かって移動する間に排風機7で吸引して生成した気流を上から下に通して粉コークスを燃焼させ、コークスの燃焼熱で粉鉱石を部分的に溶融して結合させて焼結鉱を得る。焼結鉱は、破砕、選別して直径15〜30mmの焼結鉱とした後、焼結鉱クーラー2に投入する。
【0029】
焼結機1で焼結原料を燃焼させて生ずる排ガスの温度は、点火領域における50〜60℃程度の低温から焼結完了領域における400〜450℃程度の高温まで分布する。
また、焼結機1における排ガスには、粉コークスや鉄鉱石に含まれるイオウ成分が酸化して生成した亜硫酸ガスSOおよび亜硫酸ガスがさらに酸化して生成される無水硫酸SOが含まれる。無水硫酸SOが含まれる排ガスは、温度が酸露点より低下すると固体表面上に液滴硫酸が結露して付着し高い腐食性を呈するようになり、熱交換器の伝熱面や煙道に設けられた集塵機3などに損傷を与えるおそれがあるので、排ガスの温度を酸露点以上に保持する必要がある。
【0030】
焼結機1で製造される高温の焼結鉱は、焼結鉱クーラー2に移されてコンベヤで搬送する間にコンベヤの下から冷却用空気を流通させて冷却する。
焼結鉱クーラー2で高温の焼結鉱を冷却するために使用した冷却用空気は、300〜400℃の高温の排ガスとなる。
なお、焼結鉱クーラー2の排ガスは、破砕された焼結鉱を透過するため粉塵が含まれるので、集塵機4などの除塵装置により粉塵を除去した後に大気に放出される。
【0031】
本実施例に係る焼結設備用廃熱回収発電プラントは、上記構成の焼結設備に付帯させるもので、蒸気タービン51と発電機52と復水器53を備えた発電装置50と、焼結鉱クーラー廃熱ボイラー(SCボイラー)30と、焼結機廃熱ボイラー(SMボイラー)10と、第1段フラッシャーとして高圧段フラッシャー41と第2段フラッシャーとして低圧段フラッシャー42を備えた2段式フラッシャー40と、復水を給水する給水ポンプ54を含んで構成される。
【0032】
SCボイラー30は、従来用いられてきたものと同様の構成を有するもので、ボイラー本体31を備える。ボイラー本体31には過熱器33と蒸発器35と節炭器37が組み込まれており、蒸気ドラム36が付属している。ボイラー本体31には焼結鉱クーラー2で300〜400℃まで昇温した冷却用空気が供給される。高温の冷却用空気は、過熱器33、蒸発器35、節炭器37で効率的に熱交換して、水あるいは蒸気を加熱して冷却し、ボイラー本体31の出口から放出される。
【0033】
SMボイラー10はボイラー本体11を備え、ボイラー本体11には過熱器13と蒸発器15を備え、蒸気ドラム16が付帯している。ボイラー本体11には、排風機9で吸引されることにより、焼結機1の排ガスのうち高温の部分が導入され、過熱器13と蒸発器15で効率的に熱交換して冷却された後に、ボイラー本体11の出口から放出される。SMボイラー10から放出される排ガスは、配管に導かれて、焼結機1の排ガスのうち低温の部分と合流し、さらに、集塵機3を通過して煙突5から大気に放出される。
【0034】
発電装置50の蒸気タービン51は、多段式蒸気タービンで、少なくとも高圧蒸気を供給する高圧段、低圧蒸気を供給して出力を補う低圧段、中間的な圧力の中圧蒸気を供給して出力を補う中圧段を備える。蒸気タービン51には発電機52が直結されていて、蒸気タービン51の回転軸の運動エネルギーを電力に変換する。
蒸気タービン51における仕事の終わった蒸気は、復水器53で凝縮して水に返り、給水ポンプ54により再度ボイラーに供給される。
【0035】
2段式フラッシャー40の高圧段フラッシャー41はSCボイラー30から供給される熱水から蒸気を分離して、生成する蒸気を蒸気タービン51の中段に供給し、残った熱水を低圧段フラッシャー42に供給する。低圧段フラッシャー42は、高圧段フラッシャー41から供給された熱水から低圧の蒸気を分離し、蒸気を蒸気タービン51の低圧段に供給し、残った熱水を底の出口から配管系に放出する。
【0036】
多段式蒸気タービン51の復水と低圧段フラッシャー42の戻り熱水をSCボイラー30の節炭器37に供給して加熱する。加熱された熱水は、高圧段フラッシャー41と、SMボイラー10の蒸気ドラム16と、SCボイラー30の蒸気ドラム36に分配される。
SCボイラー30の蒸気ドラム36に供給された熱水は、蒸発器35で加熱され高圧水になって蒸気ドラム36に戻り気液分離する。蒸気ドラム36の蒸気は過熱器33で飽和温度以上に加熱され高圧蒸気になる。
【0037】
また、SMボイラー10の蒸気ドラム16に供給された熱水は、蒸発器15と過熱器13により同様の高圧蒸気になり、SCボイラー30で生成された高圧蒸気と合流して、蒸気タービン51の高圧段に供給される。
このとき、排ガス中の無水硫酸による腐食を防止するため、SMボイラー10の排ガス出口における排ガス温度を酸露点より高いたとえば160℃以上に維持する必要がある。したがって、SMボイラー10における廃熱回収量は、SMボイラー10に供給される排ガス温度と排ガス流量により制約される。
【0038】
SMボイラー10から蒸気タービン51の高圧段に供給する蒸気の圧力あるいは温度を決めれば、上記のようにして決まる回収熱量に基づいて、SCボイラー30の節炭器37からSMボイラー10の蒸気ドラム16に供給される熱水の温度と流量が決まる。
【0039】
さらに、SCボイラー30の節炭器37から熱水が供給される高圧段フラッシャー41は、供給される熱水のたとえば10%を蒸気化して蒸気タービン51の中圧段に供給し、残る熱水を低圧段フラッシャー42に供給する。低圧段フラッシャー42においても、熱水のたとえば10%を蒸気化して蒸気タービン51の低圧段に供給することができる。低圧段フラッシャー42に残る熱水は戻り熱水として、復水器53で生成される蒸気タービン51の復水と一緒に、給水ポンプ54により再びSCボイラー30に供給される。
【0040】
なお、焼結鉱クーラー2で焼結鉱を冷却して昇温した冷却用空気は、SCボイラー30に導かれ、廃熱回収されて冷却し、集塵機4など除塵装置を介して煙突6から大気に放出されるが、SCボイラー30で冷却した空気は、一部を焼結鉱クーラー2に戻して再度冷却に使用することにより、外気取り込みの動力を節減することができる。
【0041】
このように構成された廃熱回収発電プラントでは、SMボイラー10において回収する廃熱の分だけ発電システムを循環する熱水あるいは蒸気の量を増加させることができるので、発電効率が向上する。ただし、SMボイラー10の出口における排ガス温度に制約があるため、蒸気タービン51で利用できるような高圧蒸気を得るためには、SMボイラー10の蒸気ドラム16に、SCボイラー30の節炭器37で加熱して適宜の温度まで昇温した熱水を供給することが好ましい。
【0042】
このようにすると、SCボイラー30で回収する熱量の一部をSMボイラー10のために利用するので、この分だけフラッシャー蒸気は減少するが、SMボイラー10で蒸発及び加熱することにより、蒸気タービン51に供給する高圧蒸気が増加するので、全体的にはより効率のよい発電システムとなる。
さらに、フラッシャーで生成する蒸気を蒸気タービン51の低圧段に供給して出力を増強してきた従来手法に加えて、SCボイラー30で蒸気タービン51の中圧段に適合する蒸気を生成して蒸気タービン51の中圧段に注入して電力を補強する方式を採用するものとして、新たに高圧段フラッシャー41を導入してフラッシャーを2段式フラッシャー40として、高圧段フラッシャー41に節炭器37で加熱した熱水を供給し蒸気タービン51の出力を増強している。
【0043】
たとえば、焼結機1で20万Nm/hの排ガスを発生し、焼結鉱クーラー2で40万Nm/hの排ガスを発生する焼結設備において、SMボイラー10に供給される排ガス温度が350℃で、出口における排ガス温度を酸露点以上に保持するものとする。
このためには、たとえば、SCボイラー30の節炭器37の出口における熱水の温度を177℃として、SMボイラー10の蒸気ドラム16に給水することにより、蒸発器15の水側温度は182℃に保持され、このときのSMボイラー10の出口における排ガス温度は約200℃に保持できる。
【0044】
硫酸の酸露点は、SOの分圧と水分分圧により左右されるが、ここでは、ほぼ120〜140℃程度となる。SMボイラー10の出口における排ガス温度は酸露点温度まで60〜80℃の余裕がある。また、焼結機1から排出される低温の排ガスと合流する位置における排ガス温度も、水露点より高い100℃程度に維持することができる。したがって、排ガス中に含まれる無水硫酸SOの液滴硫酸化および硫酸成分の水溶液化を抑制し、廃熱ボイラーの伝熱面および排気系設備の腐食を防止することができる。
【0045】
なお、高圧段フラッシャー41では、0.4MPaでフラッシュさせると、10%が蒸気になり90%が熱水になるので、蒸気を蒸気タービン51の中圧段に供給し、熱水を低圧段フラッシャー42に供給する。低圧段フラッシャー42では、0.13MPaでフラッシュさせて、供給された熱水を同じく10%の蒸気と90%の水に分けて、蒸気を蒸気タービン51の低圧段に供給し、水を戻り熱水として、復水器53からの復水と一緒にしてSCボイラー30に給水する。
【0046】
2段フラッシャーを採用することにより、2つの圧力温度水準の蒸気を生成させることができるので、高いポテンシャルを持つより高温の蒸気を活用することができる。
本実施例の廃熱回収発電プラントを上記の条件下で運転して焼結機の排ガスから回収した廃熱を加えたことにより、焼結鉱クーラーからの廃熱回収のみの場合と比較して、ほぼ1.5倍の電力を得ることができた。
【0047】
本実施例の廃熱回収発電プラントを用いることにより、焼結機1で発生する無水硫酸による排ガス管路中の各種機器の損傷を抑制しながら、焼結機1で発生する排ガスから廃熱を回収して利用し、より効率のよい焼結設備の運転を行うことができる。
本実施例の廃熱回収発電プラントは、SMボイラー10とSCボイラー30で共有される給水系統を備え、設備コストが安価でシンプルな運用が可能という利点があり、焼結機1で発生する利用可能な廃熱が比較的少ない場合に適している。
【実施例2】
【0048】
図2は、本発明の第2実施例に係る焼結設備用廃熱回収発電プラントのブロック図である。図中、図1と同じ機能を有する要素は、図1と同じ参照番号を付すことにより重複した説明を避けて簡易化を図った。
第2実施例の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、第1実施例の廃熱回収発電プラントと比較して、焼結機廃熱ボイラー(SMボイラー)10にさらに節炭器17を設けて配管系統を少し変更し、焼結鉱クーラー廃熱ボイラー(SCボイラー)30の節炭器37から供給される熱水を直接にSMボイラー10の蒸気ドラム16に供給する代わりに、高圧段フラッシャー41とSMボイラー10の節炭器17を介して蒸気ドラム16に供給するようにしたもので、他の構成には大きな相違がない。
【0049】
本実施例の廃熱回収発電プラントでは、給水ポンプ54により復水器53と低圧段フラッシャー42から供給される給水が、SCボイラー30の節炭器37で加熱されて、蒸気ドラム36と高圧段フラッシャー41に分配される。蒸気ドラム36に供給された熱水は蒸発器35で加熱され蒸気ドラム36に戻って気液分離して蒸気を発生し、発生した飽和蒸気は過熱器33で高圧蒸気となって、蒸気タービン51の高圧段に供給される。
【0050】
また、高圧段フラッシャー41に供給される熱水は、高圧段フラッシャー41で蒸気と熱水に分離して、蒸気は蒸気タービン51の中圧段に供給される。また、熱水は低圧段フラッシャー42に供給されるが、配管の途中で昇圧ポンプ43により一部が取り出されてSMボイラー10の節炭器17に給水される。節炭器17に供給された熱水は、節炭器17で加熱された後に蒸気ドラム16に供給され、余剰は高圧段フラッシャー41に分配される。
SMボイラー10の蒸気ドラム16に供給された熱水は、蒸発器15と加熱器13により高圧蒸気となって、SCボイラー30から供給される高圧蒸気と一緒に蒸気タービン51の高圧段に供給される。
【0051】
また、SMボイラー10の節炭器17から供給される余剰の熱水は、SCボイラー30の節炭器37から供給される余剰の熱水と一緒に高圧段フラッシャー41に供給され、発生する中圧蒸気と熱水の量を増加させる。
低圧段フラッシャー42に供給された熱水は、低圧蒸気と熱水に分離し、低圧蒸気は蒸気タービン51の低圧段に供給されて発電機52における発電電力を増大させる。
【0052】
本実施例の廃熱回収発電プラントでも、SMボイラー10において回収する廃熱の分だけ蒸気タービン51に供給する熱エネルギーを増加させることができるので、発電量が増大する。しかし、SMボイラー10の出口における排ガス温度が酸露点を超えていなければならないという制約があるため、SMボイラー10で回収する廃熱の一部を使って昇温させた熱水を受け入れて利用することにより、蒸気タービン51で利用できる高圧蒸気をより大量に生成するようにしている。
【0053】
ただし、熱水をSCボイラー30から蒸気ドラム16に直接受け入れる代わりに、高圧段フラッシャー41の熱水を節炭器17を介して受け入れるようにし、かつ節炭器17で加熱した熱水のうち蒸気ドラム16に供給して高圧蒸気にする分を除いた余剰分は高圧段フラッシャー41に戻して、中圧蒸気の生成に利用している。
【0054】
第2実施例の廃熱回収発電プラントでも、SCボイラー30で回収する熱量の一部をSMボイラー10で高圧蒸気を得るために利用する分だけ、SMボイラー10で生成する高圧蒸気量が増加することになる。さらに、2段式フラッシャー40の低圧段フラッシャー42で生成する低圧蒸気を蒸気タービン51の低圧段に供給するのに加えて、2段式フラッシャー40の高圧段フラッシャー41にSCボイラー30とSMボイラー10で得られる熱水の一部を供給して、蒸気タービン51の中圧段に適合する蒸気を生成して蒸気タービン51の中圧段に注入することにより、蒸気タービン51の出力を増強し発電装置50で発生する電力を補強するようにしている。
【0055】
たとえば、高圧段フラッシャー41の圧力を飽和温度144℃に対応する中圧段圧力に維持して気液分離を行い、生成した熱水の一部をSMボイラー10の節炭器17に給水することにより、SMボイラー10の出口における排ガス温度は酸露点より20〜40℃高い約160℃に保持することができる。
したがって、排ガス中に含まれる無水硫酸や亜硫酸ガスの結露による液滴硫酸化を抑制して、廃熱ボイラー11の伝熱面や排気系設備の腐食を防止することができる。
【0056】
本実施例の廃熱回収発電プラントは、SMボイラー10とSCボイラー30のそれぞれに独立した給水系統を備えSMボイラー10に節炭器17を備えるため設備コストが高くなる反面、焼結機1の廃熱をより多く回収できるため、焼結機1と焼結クーラー2で利用可能な廃熱全体に対して焼結機1の占める割合が大きい場合に適している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の焼結設備用廃熱回収発電プラントは、製鉄に必要とされる焼結鉱を製造する焼結設備に適用することにより、焼結機で発生する廃熱を電力として回収して省エネルギーを達成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 焼結機
2 焼結鉱クーラー
3,4 集塵機
5,6 煙突
7,8,9 排風機
10 焼結機廃熱ボイラー(SMボイラー)
11 ボイラー本体
13 過熱器
15 蒸発器
16 蒸気ドラム
17 節炭器
30 焼結鉱クーラー廃熱ボイラー(SCボイラー)
31 ボイラー本体
33 過熱器
35 蒸発器
36 蒸気ドラム
37 節炭器
40 2段式フラッシャー
41 高圧段フラッシャー
42 低圧段フラッシャー
43 昇圧ポンプ
50 発電装置
51 蒸気タービン
52 発電機
53 復水器
54 給水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機と焼結鉱クーラーを備える焼結設備に適用する廃熱回収発電プラントであって、
第1蒸発器と第1節炭器と第1過熱器と第1蒸気ドラムを備えて、前記焼結鉱クーラーの排ガスを導入して熱水と蒸気を発生する焼結鉱クーラー廃熱ボイラーと、
第2蒸発器と第2過熱器と第2蒸気ドラムを備えて、前記焼結機の排ガスを導入して蒸気を発生する焼結機廃熱ボイラーと、
発電機と結合した多段式蒸気タービンと、
第1段フラッシャーの蒸気を前記多段式蒸気タービンの中圧段に供給し、第2段フラッシャーの蒸気を前記多段式蒸気タービンの低圧段に供給する2段式フラッシャーと、を備え、
前記多段式蒸気タービンの復水と前記2段式フラッシャーの戻り熱水を前記第1節炭器で加熱して、加熱された熱水を前記2段式フラッシャーと前記第2蒸気ドラムと前記第1蒸気ドラムに分配し、
前記第1蒸発器と前記第1過熱器で生成した蒸気と前記第2蒸発器と前記第2過熱器で生成した蒸気を前記多段式蒸気タービンの高圧段に供給して、
前記焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスを酸露点より高い温度に維持し、前記焼結機廃熱ボイラーの排ガスと前記焼結機の排ガスが合流するところの排ガスを水露点より高い温度に維持することを特徴とする焼結設備用廃熱回収発電プラント。
【請求項2】
焼結機と焼結鉱クーラーを備える焼結設備に適用する廃熱回収発電プラントであって、
第1蒸発器と第1過熱器と第1節炭器と第1蒸気ドラムを備え、前記焼結鉱クーラーの排ガスを導入して熱水と蒸気を発生する焼結鉱クーラー廃熱ボイラーと、
第2蒸発器と第2過熱器と第2節炭器と第2蒸気ドラムを備え、前記焼結機の排ガスを導入して蒸気を発生する焼結機廃熱ボイラーと、
発電機と結合した多段式蒸気タービンと、
第1段フラッシャーの蒸気を前記多段式蒸気タービンの中圧段に供給し、第2段フラッシャーの蒸気を前記多段式蒸気タービンの低圧段に供給する2段式フラッシャーと、を備え、
前記多段式蒸気タービンの復水と前記第2段フラッシャーの戻り熱水を前記第1節炭器で加熱して、加熱された熱水を前記第1段フラッシャーと前記第1蒸気ドラムに分配し、
前記第1段フラッシャーの熱水を前記第2節炭器で加熱して、前記第1段フラッシャーと前記第2蒸発ドラムに分配し、
前記第1蒸発器と前記第1過熱器で生成した蒸気と前記第2蒸発器と前記第2過熱器で生成した蒸気を前記多段式蒸気タービンの高圧段に供給して、
前記焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスを酸露点より高い温度に維持し、前記焼結機廃熱ボイラーの排ガスと前記焼結機の排ガスが合流するところの排ガスを水露点より高い温度に維持することを特徴とする焼結設備用廃熱回収発電プラント。
【請求項3】
前記焼結機廃熱ボイラーの排ガス出口における排ガスの温度を160℃以上、前記焼結機廃熱ボイラーの排ガスと前記焼結機の排ガスが合流するところにおける排ガスの温度を100℃以上に維持するように運転することを特徴とする請求項1または2に記載の焼結設備用廃熱回収発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193909(P2012−193909A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58779(P2011−58779)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】