説明

煙アラームシステム

特に航空機用の煙アラームシステムは、有益なことに、誤認アラームを防止するように高程度の安全性を提供する。本用途で説明される実施の形態によると、航空機用の煙アラームシステムが説明され、カメラモジュールと、煙警告送信器と、筐体とを備える。カメラモジュールと煙警告送信器とは、筐体に配置される。カメラモジュールと煙警告送信器とを1つの筐体に一緒に配置することにより、両方のセンサを1つの場所に配置することができ、これにより、設置費用が低減でき、また、検出信号を、局部のアラーム発令に直接使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2004年7月19日出願の米国特許仮出願第60/589,285号及び2004年7月19日出願のドイツ特許出願第10 2004 034 908.8号の優先日の利益を主張し、これらの開示内容を参考資料としてここに援用する。
【0002】
本発明は、例えば航空機のような車両での煙の状況又は火災の状況の検出に関する。特に、本発明は、航空機用の煙アラームシステム、及び、航空機のスペースでの煙の状況を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
移動型の用途及びそれに相応して設置が限定された選択肢(航空機、列車、潜水艦等)用の現在利用可能な煙警告システムは、光学煙警告送信器により動作する。これらの煙警告送信器は、特定のアラーム閾値を用いる散光原理を使用する。煙又は粒子がない場合、受信器は、光源とその受信器との間にバリアがあるために、信号を受信しない。しかしながら、煙粒子(又はその他の粒子)がこの領域に入ると、光が散乱され、受信器は、対応する信号の上昇を登録する。この信号の上昇が、特定の閾値を超えると、煙警告システムは、例えば、別の場所での断続的な光信号又はアラーム音のようなアラームを発する。
【0004】
しかしながら、欠点として、煙粒子だけでなく全ての種類のエアロゾルもが、光の散乱を招き、その結果、煙警告送信器が、アラーム状態を想定する恐れがある。実際の用途では、このような煙警告送信器において、例えば、霧、ほこり、又は、殺虫剤の使用さえも、誤認アラームを招くことが示されている。殆どの用途では、このような誤認アラームは、安全性のリスクを引き起こし、この状況においては、航空機又は船舶の排気が適当となる。
【0005】
このため、誤認アラームの確率を低減することは有益であり、これを低減する必要があり、この確率は、周囲条件が急激に変化する移動型の用途の場合には、場合により、より高くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、煙の状況を安全に検出することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
煙の状況は、例えば、火災、くすぶり火災、又は、くすぶりの結果として起こりうる。炎が起きない融解過程も、このような煙を引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明の一例としての実施の形態によると、航空機用の煙アラームシステムが提供され、この煙アラームシステムは、カメラモジュールと、煙警告送信器と、筐体とを備える。本実施の形態の一側面によると、カメラモジュールと煙警告送信器とは、同じ筐体に配置される。
【0009】
利点として、カメラモジュール又はカメラ、及び、例えば散光原理に従って機能する煙警告送信器を1つの筐体に配置することにより、設置費用が低減でき、また、必要なスペースを低減できる。これは、燃え尽き防止スペースにおいて、特に有益である。更に、煙警告送信器とカメラモジュールとが、同じものの見方をするため、改良された安全な煙の状況の検出を行うことができる。
【0010】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、カメラモジュールと煙警告送信器とは、それらが単一のコンピュータユニットに接続できるように、設計される。
【0011】
上述したことにより、カメラモジュール及び煙警告送信器の出力信号を、例えば中央に配置されたコンピュータユニットのような単一のコンピュータユニットにより容易に処理することができ、ここでは、例えば、カメラモジュール及び煙警告送信器のそれぞれに1つずつ個々のコンピュータユニットを提供する必要がなくなる。
【0012】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、カメラモジュール、煙警告送信器、又は、筐体は、航空機の客室屋根領域に固定されるように設計される。
【0013】
監視又は観察を、上部から、監視されるべき領域へと行っている結果、多くの場合において、見えない領域即ち死角の大きさを低減することができる。更に、荷物の積載状況から生じる包含範囲の漏れを引き起こす恐れのある角又は突起による問題が、低減される。
【0014】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、カメラモジュール又は対応するカメラは、単一の煙アラームシステムで広い領域を監視することを可能にする魚眼レンズを備える。
【0015】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、カメラモジュールは、特性を有するレンズを備える。コンピュータユニットは、レンズの特性を少なくとも部分的に補償するように設計される。例えば、カメラモジュールが魚眼レンズを備える場合、コンピュータユニットは、周知の計算プロセスにより、魚眼レンズにより発生したひずみを補償するように設計できる。
【0016】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、カメラモジュールと煙警告送信器とは、カメラモジュールと煙警告送信器とが接続できるネットワークにより、コンピュータユニットと通信するように、備え付けられる。有益なことに、これにより、カメラモジュールと、煙警告送信器と、コンピュータユニットとを相互接続するのに、たった1つのネットワークを提供するだけで十分になる。
【0017】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、煙アラームシステムは、航空機のスペースで煙の状況を検出するために、備え付けられる。撮像領域、即ち、カメラモジュールのカメラの視野内の領域は、煙アラームシステムがスペースの天井の中央領域に配置される場合に、スペースの床領域が包含されるように、備え付けられる。利点として、例えば、カメラの撮像領域を、適切なレンズによって、調整することができる。また、利点として、撮像領域は、スペースの床領域全体を包含する。
【0018】
利点として、このように、煙アラームシステムによって、スペースの床領域を、安全に監視することができる。
【0019】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、航空機のスペースで煙の状況を検出する方法が述べられ、この方法において、両方が筐体に配置されるカメラモジュールと煙警告送信器とを備える煙アラームシステムが提供される。カメラモジュールによって、スペースの画像が撮像される。煙警告送信器によって、スペースの空気の粒子が検出される。なお、この文脈において、粒子という用語は、煙粒子だけでなくエアロゾルをも含みうる。煙警告送信器の検出結果が、画像と比較される。例えば、この方法では、例えば、空気中に多くの粒子(水滴)があるために、煙警告送信器がアラームの状況を検出する、という霧の状況において、単に霧があるだけであると検出でき、アラームの発令を防止できる。本実施の形態の方法によると、アラームは、粒子の画像と、粒子の検出との比較結果に基づいて、発せられる。
【0020】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、粒子の画像と粒子の検出は、単一のコンピュータユニットにより、調整又は評価される。
【0021】
本発明の更なる一例としての実施の形態によると、スペースの画像は、上部から、例えば、スペースの天井領域から、撮像され、画像の撮像領域は、スペースの床領域を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明の有益な実施の形態を説明する。
【0023】
図1乃至図3の以下の説明において、等しいか又は対応する要素には、等しい符号が使用される。
【0024】
図1は、本発明の一例としての実施の形態の煙アラームシステムの簡易な論理図を示す。符号2は、例えばCCDカメラを備えるカメラモジュールを指す。カメラモジュール2は、カメラモジュール2の撮像領域即ち視野42を規定するのを助けるレンズ又はレンズシステム12を備える。例えば、魚眼レンズ又は広角レンズによって、視野42を広げることができる。例えば望遠レンズのようなより長い焦点距離を有するレンズによって、カメラモジュール2の撮像領域即ち視野は、特定の点に焦点が合わせられる。
【0025】
符号4は、例えば特定のアラーム閾値を用いる散光原理に基づいて動作する煙警告送信器を指す。スペースに煙及び粒子がない場合、煙警告送信器4の受信器は、光源50と煙警告送信器4の受信器との間にバリア52があるために、信号を受信しない。しかしながら、煙粒子(又は、例えばエアロゾルのようなその他の粒子)がこの領域に入ると、光が散乱され、受信器は、対応する信号の上昇を登録する。この信号の上昇が、特定の閾値を超えると、煙警告送信器は、アラームを発する。
【0026】
既に述べたように、この機能原理は、煙粒子だけでなく全ての種類のエアロゾルもが、光の散乱を招き、その結果、煙警告送信器が、アラーム状態を想定する恐れがあるという点で、混乱を招く恐れがある。実際の用途では、例えば、霧、ほこり、又は、殺虫剤の使用さえも、誤認アラームを招くことが示されている。
【0027】
符号6は、追加として又は選択肢として提供できる湿度センサ及び/又は温度センサを指す。
【0028】
図1に示すように、カメラモジュール2と煙警告送信器4とは、筐体10に配置される。利点として、これにより、煙アラームシステム40を容易に設置することができる。これは、例えば、カメラモジュール2と煙警告送信器4とのために別々の設置場所及びデバイスを提供するのではなく、煙アラームシステム40のためにたった1つの設置場所を提供・用意すればよいためである。
【0029】
カメラモジュール2は、ネットワーク14を経由して、データ接続部18によって、データ接続部26に接続され、このデータ接続部26のほうは、コンピュータユニット16に接続される。煙警告送信器4は、データ接続部20によってネットワーク14に接続され、ネットワーク14のほうは、データ接続部26を経由して、コンピュータユニット16に接続される。温度又は湿度センサは、データ接続部22及び24、ネットワーク14、及び、データ接続部26を経由して、コンピュータユニット16に接続される。コンピュータユニットは、データ出力デバイス28を備える。例えば、このデータ出力デバイス28を経由して、アラーム信号を出力できる。データ出力デバイス28は、例えば、対応する光学ディスプレイ又は聴覚ディスプレイによって接続されてもよい。
【0030】
図1に示す実施の形態によると、コンピュータユニット16、データ接続部18、20、22、24、26、ネットワーク14、カメラモジュール2、煙警告送信器4、及び更なるセンサ6を配置できる更なる筐体30を提供してもよい。これにより、システム全体の設計を小さくすることができる。
【0031】
しかしながら、例えばコンピュータユニット16を、例えば煙アラームシステムの筐体10から一定の距離離れたところに配置してもよい。この場合、ネットワーク14とデータ接続部18、20、22、24及び26とによって、接続を確立できる。
【0032】
例えばCPUを備え、例えば市販のPCでもよいコンピュータユニット16は、カメラモジュール2の出力信号と煙警告送信器4の出力とが処理されるようになされる。即ち、カメラモジュール2の出力信号と煙警告送信器4の出力信号とを処理するのに、たった1つのコンピュータユニット16のみが提供される。コンピュータユニット16は、カメラモジュール2の出力信号と煙警告送信器4の出力信号とを一緒に処理又は調整する手段を備える。これを、以下に一例で説明する。
【0033】
例えば、霧の状況において、煙警告送信器4が、アラーム信号を出力することもある。しかしながら、コンピュータユニット16が、この信号と、カメラモジュール2によって撮像された画像とを比較して調整することにより、霧のみが発生しているだけで、実際は、煙の状況即ちアラームの状況が発生しているわけではない、ということがわかる。したがって、アラーム出力デバイス28によるアラーム信号の出力を抑制できる。
【0034】
更に、例えば、煙警告送信器がアラーム検出をしたにもかかわらず、航空機の客室又は貨物室で例えば殺虫剤が撒かれただけであると検出できる。このような場合にも、アラームの出力を抑制できる。
【0035】
全体として、2つの異なる検出システム、即ち、煙警告送信器4及びカメラモジュール2によって、そして、各検出結果の調整又は比較によって、煙の状況を検出することにより、改良された安全な煙の状況の検出を行うことができ、誤認アラームの確率を著しく低減できる。
【0036】
図2は、航空機の貨物室における、例えば図1に示す煙アラームシステムのような煙アラームシステムの、本発明に係る配置を示す。図2に示すように、貨物室の壁32が、空気で満たされたスペース44を規定する。符号34は、貨物を指す。貨物室の天井領域には、溝が設けられ、ここに、例えば図1に示す煙アラームシステムのような本発明に係る煙アラームシステムが配置される。即ち、本発明に係る煙アラームシステムは、それが、監視されるべきスペースを上部から監視するように、配置される。
【0037】
図3は、図2の貨物室の上面図を示す。図3に示すように、2つの煙アラームシステム40が設けられる。各煙アラームシステム40は、視野42を備える。煙アラームシステム40は、視野42が、貨物室の床領域全体を実質的に包含することで、死角、即ち、光学的に包含されない領域を最小限に抑えるように、設計される。
【0038】
したがって、本発明に係る煙アラームシステムが、デバイスの数を最小限に抑えたことにより、また、例えば既に存在する一般的なネットワークや中央コンピュータを使用したことにより、特に、燃え尽き防止スペースにおいて、設置の必要性やスペースの必要性を低減したことは、本分野の当業者にとって明白なことである。更に、このようにして、例えば軽量化を達成することができる。更に、例えば、より多くの基準に基づいて火災煙警告送信器とカメラモジュールとの間に湿度センサ及び温度センサを更に配置することによる相乗効果を、改良された方法でよりよく用いることができる。これは、例えば、煙警告送信器4とカメラモジュール2とを同じ設置状況にすることにより、可能となる。更に、カメラモジュール2と煙警告送信器4とを筐体10に配置した結果、検出される全てのパラメータ及び測定値を、局部のアラーム発令に直接使用することができる。更に、殆どの場合において、上部から、監視されるべき領域へと監視することにより、死角の大きさを小さくすることができる。更に、例えば角又は突起により、又は、異なる荷物の積載状況により生じる隠された領域の大きさを、多くの場合、小さくすることができる。
【0039】
上述したように、例えばネットワーク14は、例えば航空機に既に存在するネットワークであってもよい。更に、コンピュータユニット16は、例えば、航空機の中央コンピュータでもよい。この場合、当然ながら、共同の筐体30(図1)は設けられない。
【0040】
なお、「備える」は、その他の要素又はステップを排除するのではなく、また、「1つの」は、複数を排除するのではない。更に、上述した実施の形態のうちの1つを参照して説明した特性又はステップを、上述した他の実施の形態の他の特性又はステップと組み合わせて使用してもよい。請求項における符号は、限定と考えられないこととする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る煙アラームシステムの設計の一実施の形態の簡易な概略図である。
【図2】例えば航空機の貨物室の断面図であり、この図において、本発明に係る煙アラームシステムの一実施の形態が、本発明により配置される。
【図3】監視されるべきスペースの上面図であり、この図において、本発明に係る煙アラームシステムが、本発明の実施の形態により配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュール(2)と、
煙警告送信器(4)と、
筐体(10)とを備え、
前記カメラモジュールと前記煙警告送信器とは、前記筐体に配置される、航空機用煙アラームシステム。
【請求項2】
前記カメラモジュールと前記煙警告送信器とは、コンピュータユニットに接続可能であり、
前記コンピュータユニット(16)は、前記カメラモジュール及び前記煙警告送信器の出力信号を分析するようになされることを特徴とする請求項1に記載の煙アラームシステム。
【請求項3】
前記カメラモジュールと前記煙警告送信器と前記筐体とは、前記航空機の客室天井領域に取り付けられるようになされることを特徴とする請求項1に記載の煙アラームシステム。
【請求項4】
前記カメラモジュールは、魚眼レンズ(12)を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の煙アラームシステム。
【請求項5】
前記カメラモジュールは、特性を有するレンズを備え、
前記コンピュータユニットは、前記レンズの前記特性を少なくとも部分的に補償するようになされることを特徴とする請求項2に記載の煙アラームシステム。
【請求項6】
前記カメラモジュールと前記煙警告送信器とは、前記カメラモジュールと前記煙警告送信器とが接続可能なネットワーク(14)を介して、前記コンピュータユニットと通信するようになされることを特徴とする請求項2に記載の煙アラームシステム。
【請求項7】
前記煙アラームシステムは、航空機のスペースにおける煙の状況を検出するようになされ、
前記カメラモジュールのカメラの撮像領域は、前記煙アラームシステムが前記スペースの天井の中央領域に配置される場合に、前記スペースの床領域が包含されるようになされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の煙アラームシステム。
【請求項8】
航空機のスペースにおける煙の状況を検出する方法であって、
筐体に配置されるカメラモジュールと煙警告送信器とを煙アラームシステムに提供するステップと、
前記カメラモジュールで前記スペースの画像を撮像するステップと、
前記煙警告送信器で前記スペースの空気中の粒子を検出するステップと、
前記粒子の前記検出結果と前記画像とを比較するステップと、
前記比較結果に基づいてアラームを発するステップとを備える方法。
【請求項9】
更に、前記カメラモジュールの前記画像と前記煙警告送信器の前記粒子の前記検出結果とを、単一のコンピュータユニットで評価するステップを備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更に、前記画像の撮像領域が、前記スペースの床領域を包含するように、前記スペースの前記画像を上部から撮像するステップを備える請求項8乃至9のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−507054(P2008−507054A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521895(P2007−521895)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007877
【国際公開番号】WO2006/008146
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】