説明

煤煙フィルター再生システム、及びその方法

【課題】排気ガスを浄化させると同時に、煤煙フィルターの再生が可能な煤煙再生システム、及びその方法を提供することにある。
【解決手段】複数の気筒と気筒内に流入された燃料と空気を点火させる点火装置を有するガソリンエンジンと、ガソリンエンジンと連結した排気パイプに設置されて、ガソリンエンジンから排出された排気ガスを酸化−還元させる触媒装置と、排気パイプの触媒装置の下流側に設置されて、排気ガスに含まれている粒子状物質を捕集し、排気ガスの温度を利用して粒子状物質を再生させることができる煤煙フィルターと、煤煙フィルターの前後に設置されて、煤煙フィルターの差圧を測定する差圧センサと、差圧センサで測定された差圧と制御パラメータの入力を受けて、複数の気筒に流入された燃料のうちの一部燃料を非点火で触媒装置に送られる非点火燃料の量を決める制御部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煤煙フィルター再生システム、及びその方法に関し、より詳しくは、ガソリンエンジンの煤煙フィルター再生システム、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の燃費や性能を改善するためにガソリン直接噴射(Gasoline Direct Injection、以下「GDI」と記す)技術が開発されており、このGDIエンジンは、燃料を吸機関内部に噴射せず、燃焼室に直接噴射する方式である。
【0003】
この方式は、点火プラグ周囲の空燃比(混合気における空気質量を燃料質量で割った値)を下げて、燃焼室内に不完全燃焼区間が増えることによって粒子状物質(Particulate Matters、PM)の発生が問題になっている。そこで、GDIエンジン車両に煤煙フィルターを装着して上記の問題を解決しようとした。しかし、ガソリンエンジンの場合、煤煙フィルター内の温度が低く、酸素濃度が充分でないこともあって、煤煙フィルターに堆積した粒子状物質(PM)の自然再生が困難であるという問題点があった。
【0004】
ガソリンエンジンから排出される排気ガスは、通常触媒装置を通過して浄化されるが、この時、気筒内の燃料と空気が理論空燃比である時に最も効果的な浄化が行われる。しかし、煤煙フィルター再生のために追加的に酸素を供給すると、空燃比が大きくなると、排気ガス内の窒素酸化物(NOx)が殆ど低減しない問題点が生じてくる。
【0005】
煤煙フィルターに堆積した粒子状物質を除去する対策として、エンジンの後噴射制御による高温の排気ガスによって燃焼させ、煤煙フィルターを再生する提案がなされている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−190666号公報
【特許文献2】特開2004−232544号公報
【特許文献3】特開2011−117438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、排気ガスを効果的に浄化させると同時に、煤煙フィルターの再生が可能な煤煙再生システム、及びその方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、ガソリンエンジンの気筒内に流す燃料と空気の比率を理論空燃比に維持しつつ、煤煙フィルターの再生が可能な温度を確保し、触媒装置の浄化性能を維持する煤煙再生システム、及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するためになされた本発明は、ガソリンエンジンの排気パイプ上に設置された煤煙フィルター再生システムであって、複数の気筒と気筒内に流入された燃料と空気を点火させる点火装置を有するガソリンエンジンと、ガソリンエンジンと連結した排気パイプに設置されて、ガソリンエンジンから排出された排気ガスを酸化−還元させる触媒装置と、排気パイプの触媒装置の下流側に設置されて、排気ガスに含まれている粒子状物質を捕集し、排気ガスの温度を利用して粒子状物質を再生させることができる煤煙フィルターと、煤煙フィルターの前後に設置されて、煤煙フィルターの差圧を測定する差圧センサと、差圧センサで測定された差圧と制御パラメータの入力を受けて、複数の気筒に流す燃料のうちの一部燃料を非点火で触媒装置に送られる非点火燃料の量を決める制御部と、を有している。
【0009】
制御部は、非点火燃料の量によって、点火を中断させる気筒数と点火の中断比率を決定し、点火の中断が決定された気筒での燃料の点火を中断させることができる。
あるいは、制御部は、気筒に流す燃料を点火装置による点火時点前後に分けて流し、決定された非点火燃料の量によって各気筒内の点火前に流す燃料量と点火後に流す燃料量を決めることができる。
制御パラメータは、エンジンの運転条件、触媒の温度などである。
【0010】
本発明は、また、ガソリンエンジン、ガソリンエンジンから発生した排気ガスを酸化−還元させる触媒装置、及び排気ガスに含まれている粒子状物質を捕集する煤煙フィルターを含む煤煙フィルター再生システムで煤煙フィルターを再生する方法であって、ガソリンエンジンの運転中に煤煙フィルターの差圧と予め設定された差圧を比較する段階と、煤煙フィルターの差圧が、予め設定された差圧より大きいかまたは同じであるとき、ガソリンエンジンの複数の気筒に流入された燃料のうちの一部燃料を非点火で触媒装置に送られる非点火燃料の量を決める段階と、ガソリンエンジンからの非点火燃料を、触媒装置で酸化する段階と、触媒装置で発生した酸化熱を利用して煤煙フィルターを再生する段階と、を主要構成としている。
【0011】
主要構成に加えてさらに、煤煙フィルターの再生中の触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、触媒装置の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、煤煙フィルターの再生を維持させるとき、非点火燃料の量を再決定する段階と、を有するようにすることができる。
【0012】
主要構成に加えてさらに、非点火燃料の量が決定された後、非点火燃料の量によって複数の気筒のうちの点火を中断させる気筒の個数と点火の中断比率を決定する段階、を有することができる。
【0013】
またさらに、煤煙フィルターの再生中の触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、触媒装置の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、煤煙フィルターの再生を維持させるとき、非点火燃料の量を再決定する段階と、非点火燃料の量を再決定した後、再決定された非点火燃料の量によって複数の気筒のうちの点火を中断させる気筒の個数と点火の中断比率を決定する段階と、を有するようにすることができる。
【0014】
主要構成に加えてさらに、非点火燃料の量が決定された後、非点火燃料の量によって気筒の点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を決める段階と、
燃料を点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量によって燃料噴射を制御する段階と、を有するようにすることができる。
【0015】
またさらに、煤煙フィルター再生中の触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、触媒装置の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、煤煙フィルター再生を維持させるとき、非点火燃料の量を再決定する段階と、非点火燃料の量を再決定した後、再決定された非点火燃料の量によって気筒内の点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を再決定する段階と、を有するようにすることができる。
【0016】
非点火燃料の量は、エンジンの運転条件に応じて決定することができ、非点火燃料の量の再決定は、エンジンの運転条件、触媒温度に応じて行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の煤煙再生システムによれば、排気ガスを効果的に浄化させると同時に、煤煙フィルターの再生を行うことができる。また、ガソリンエンジンの気筒内に流入する空気と燃料の比率を理論空燃比に維持しつつ、煤煙フィルターの再生が可能な温度を確保し、触媒装置の浄化性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の煤煙フィルター再生システムにおける一実施形態の構成図である。
【図2】本発明の煤煙フィルター再生方法における一実施形態のフローチャートである。
【図3】本発明の煤煙フィルター再生方法における別の実施形態のフローチャートである。
【図4】本発明の煤煙フィルター再生方法におけるまた別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の煤煙フィルター再生システムを、好ましい実施形態を挙げ、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の煤煙フィルター再生システムにおける一つの実施形態の構成図である。煤煙フィルター再生システム1は、ガソリンエンジン10、触媒装置20、煤煙フィルター30、制御パラメータ測定部40、及び制御部50を有している。
【0020】
ガソリンエンジン10は、ガソリンを燃料とした内燃機関であって、空気により燃料を燃焼させて化学的エネルギーを機械的エネルギーに変換するものである。その構成をみると、ガソリンエンジン10には、複数の気筒11があり、インジェクター13により気筒11内に燃料が噴射され、吸気マニホールド15により気筒11内に空気が流入され、点火装置(図示していない)により流入された燃料を点火して燃焼させ、燃焼で発生した排気ガスを排気マニホールド17から排気パイプ19を経て車外に排出している。
【0021】
触媒装置20は、ガソリンエンジン10から排気パイプ19で連結されて、ガソリンエンジン10からの排気ガスを酸化、還元させている。一般に、触媒装置20は、排気ガスに含まれている有害物質(主にCO、HC、NOx)を酸化−還元反応によって無害なガス(CO、HO、N、O)に変化させる。この酸化−還元反応を促進させる触媒として、白金(Pt)とロジウム(Rh)が主に使用され、白金触媒は、一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を低減させる酸化反応を促進させ、ロジウム触媒は窒素酸化物(NOx)を低減させる還元反応を促進させる。
【0022】
触媒装置20は、気筒11内に空気と燃料が理論空燃比(stoichiometric ratio)で流入された時に、有害物質(CO、HC、NOx)を同時に効率的に低減させる。ここで、理論空燃比とは、燃料が完全燃焼するために理論上過不足のない状態の空気と燃料の比率である。空燃比が大きい場合、つまり、空気が過剰である場合には一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)が顕著に低減するが、窒素酸化物(NOX)は殆ど低減しない。また、空燃比が小さい場合、つまり、空気が希薄な場合には一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)が殆ど低減しないが、窒素酸化物(NOX)は顕著に低減する。そのために、ガソリンエンジン10は、酸素センサ(図示していない)と制御部50を利用して、空気と燃料の比率を理論空燃比となるように制御している。
【0023】
煤煙フィルター30は、触媒装置20の下流に設置され、触媒装置20通過後の排気ガス中に含まれている粒子状物質(Particulate Matters、PM)を捕集する。ここで捕集される粒子状物質は、主にスート(soot)と呼ばれる炭化水素からなる物質である。
【0024】
煤煙フィルター30の好ましい形態は、フィルターに酸化触媒をコーティング処理し、ハニカム(honeycomb)状に形成して粒子状物質を捕集する。粒子状物質が煤煙フィルター30上に所定量捕集されたとき、粒子状物質を酸化させて除去する再生過程を行う。
【0025】
煤煙フィルター30は、粒子状物質を酸化させるために一定以上の温度と酸素濃度が必要である。言い換えれば、煤煙フィルター30は、通常のエンジン運転時には粒子状物質を酸化させる温度と酸素濃度が不足しており、粒子状物質の燃焼による煤煙フィルター30の再生は実質的に行われていない。煤煙フィルター30が再生可能とするには、外部から別途の熱及び/又は酸素の供給が必要である。
【0026】
差圧センサ32は、煤煙フィルター30の前後に置かれて、煤煙フィルター30の圧力差(差圧)を測定する。つまり、差圧センサ32は、煤煙フィルター30に流入する排気ガスの圧力と、煤煙フィルター30を通過して排出される排気ガスの圧力を探知して、それぞれの圧力の差、すなわち差圧を測定する。煤煙フィルター30の差圧は、粒子状物質が煤煙フィルター30に捕集されて、通過する排気ガスの流れが阻害されることによって発生する。ここで測定された差圧は、制御部50に伝達される。
【0027】
制御パラメータ測定部40は、煤煙フィルター30の再生のための制御パラメータを測定する。一例を挙げると、制御パラメータは、エンジンの運転領域(高負荷または低負荷)に応じたエンジンの運転条件、触媒装置20の温度、煤煙フィルター30の温度、及び排気ガスに含まれている酸素濃度などである。制御パラメータ測定部40は測定された制御パラメータは制御部50に伝達する。
【0028】
制御部50は、差圧センサ32で測定された差圧と、制御パラメータ測定部40で検出された制御パラメータを収集し、収集されたデータによって煤煙フィルター30の再生を制御する。
【0029】
制御部50は、差圧センサ32で測定された差圧と予め設定された差圧を比較して、煤煙フィルター30の再生の要否を決定する。差圧センサ32で測定された差圧が、予め設定された差圧より大きいとき、制御パラメータを考慮して非点火燃料の量を決定する。非点火燃料の量は、複数ある気筒11に流入された燃料のうち、一部の気筒11では燃料を点火せず、すなわち燃焼せずに排気パイプ19から排気浄化装置に送られる燃料の量である。非点火燃料の量は、エンジンの運転条件と触媒温度などの制御パラメータによって決定される。
【0030】
一実施形態によれば、制御部50は、非点火燃料の量によって、点火を中断させる気筒11数と点火の中断比率を決定する。言い換えれば、気筒11内に流入する燃料量が理論空燃比によって決定されるので、制御部50は、非点火燃料の量と気筒11内に流入する燃料量を比較して、点火を中断させる気筒11の個数を決定することができる。そのために、制御部50は、点火を中断させる気筒11の数に合わせて、一部気筒11の点火を中断させる。点火が中断された気筒11の燃料と空気は、そのまま排気マニホールド17を通じて排気パイプ19に排出される。
【0031】
また、別の一実施形態によれば、制御部50は、点火時点前後に各気筒11内に燃料がそれぞれ流入するようにインジェクター13を制御し、非点火燃料の量によって点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を決定する。言い換えれば、制御部50は、複数の気筒11のうちの一部の気筒11の点火を中断させるのではなく、各気筒11への燃料を、点火時点前と後に分けて流す。これにより、点火時点前に流した燃料は点火されて燃焼し、点火時点後に流した燃料は、点火せず、従って燃焼しない。
【0032】
煤煙フィルター再生システム1は、制御部50によって決定された非点火燃料の量に基いて煤煙フィルター30の再生過程が行われる。言い換えれば、煤煙フィルター再生システム1は、気筒11内に流入された燃料の一部を点火せず、触媒装置20で燃料を酸化させて、その酸化熱によって煤煙フィルター30を再生させている。
【0033】
図2〜4は、本発明の煤煙フィルター再生方法について、3つの実施形態それぞれの流れを説明している。
図2を参照すると、煤煙フィルター30の再生は、エンジン運転中に行われる(S100)。エンジンからの排気ガスに含まれる粒子状物質は、煤煙フィルター30に捕集され、煤煙フィルター30の両端に圧力差が発生する。差圧センサ32は、煤煙フィルター30前後の圧力を検出して煤煙フィルター30の差圧を測定する。また、制御パラメータ測定部40は、煤煙フィルター30の再生に必要なエンジンの運転条件、触媒装置の温度、及び煤煙フィルター30の温度などの制御パラメータを検出する(S110)。
【0034】
制御部50は、差圧センサ32から伝送された煤煙フィルター30の差圧と、予め設定された煤煙フィルター30の再生差圧を比較する(S120)。差圧センサ32によって測定された煤煙フィルター30の差圧が、予め設定された差圧より大きいかまたは同じであるとき、制御部50は制御パラメータを考慮して非点火燃料の量を決定する(S130)。特に、この段階(S130)の非点火燃料の量は、制御バラメータの中でエンジンの回転速度のようなエンジンの運転条件によって決定される。非点火燃料の量は、ガソリンエンジン10の複数の気筒11に流入された燃料のうちの一部燃料を点火させずに触媒装置20に送られる燃料量をいう。従って、複数の気筒11に流入する燃料は、非点火燃料の量によって点火されるものと点火されないものに分かれる。
【0035】
制御部50で非点火燃料の量が決定されると、煤煙フィルター再生システム1は、再生運転モードに切り替わる(S200)。言い換えれば、制御部50で決定された非点火燃料の量によって、複数の気筒11に流入された燃料の一部燃料は、点火、燃焼せずに触媒装置20にそのまま送られ、この未燃焼の燃料は、触媒装置20で空気によって酸化され、その酸化熱によって高温になる。
【0036】
ガソリンエンジン10は、燃料と空気が理論空燃比で気筒11に流入される。従って、気筒11内に流入された燃料は、点火しないときはそのまま触媒装置20に送られる。触媒装置20は、非点火燃料を酸化させると同時に、排気ガス中の有害物質(CO、HC、NOx)を低減させることができる。
【0037】
高温の排気ガスは、引き続いて排気パイプ19を通って煤煙フィルター30に流入し、煤煙フィルター30は再生可能な温度を確保できる。煤煙フィルター30は、高温の排気ガスから得られた熱と酸素を用いて粒子状物質を酸化させて除去する再生過程を行う(S210)。
【0038】
煤煙フィルター30の再生過程が行われる間、非点火燃料の酸化熱によって触媒装置20の温度が一定水準の温度以上に高くなることもあり得る。そこで、触媒装置20の温度が一定水準温度(例えば、950℃)以上になると触媒が損傷する可能性がある。
そこで、制御部50は、制御パラメータ測定部40によって検出された触媒装置20の温度と触媒保護温度を比較する(S220)。
【0039】
触媒装置20の温度が、触媒保護温度より低いとき、煤煙フィルター30の再生過程はそのまま進行される(S230)。煤煙フィルター30の再生過程によって煤煙フィルター30内の粒子状物質が除去されると、煤煙フィルター30の差圧は次第に小さくなる。煤煙フィルター30の差圧が、予め設定された差圧より小さくなれば、煤煙フィルター30の再生が完了して(S240)、煤煙フィルター再生システム1は、通常の運転モードに切り替わる(S250)。
【0040】
触媒装置20の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、制御部50は煤煙フィルター30の再生維持の要否を判断する(S300)。煤煙フィルター30の再生過程を維持する場合、制御部50はエンジンの運転条件、及び触媒装置20の温度を考慮して、非点火燃料の量を再決定する(S320)。煤煙再生システムは、再決定された非点火燃料の量によって再生運転モードを行う。煤煙フィルター30の再生過程を維持できないと判断される場合には、制御部50は、煤煙フィルター30の再生を中断させ、煤煙フィルター再生システム1を通常の運転モードに切り替える(S250)。
【0041】
非点火燃料の量が決定された後は、多様な方式によって燃料を気筒11内で点火せずに排出することができる。図3には、本発明の別の実施形態を示している。
制御部50は、非点火燃料の量を決めた後に、非点火燃料の量によって複数の気筒11のうち点火を中断させる気筒11の個数及び比率を決定する(S140)。制御部50は、点火を中断させる気筒11の個数及び比率によって、複数ある気筒11中の一部の気筒11の点火を中断させる。これによって、煤煙フィルター再生システム1は、再生運転モードに入る(S200)。つまり、点火が中断された気筒11内の燃料と空気は燃焼せずに、排気パイプ19を通して触媒装置20に送られる。この後の過程は、図2に示した煤煙フィルター再生システム1と同じである。
【0042】
但し、触媒装置20の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるので、非点火燃料の量を再決定する場合においても、再決定された非点火燃料の量によって点火を中断させる気筒11の個数及び比率を再決定する(S330)。
【0043】
図4には、本発明のまた別の一実施形態を示している。制御部50は、非点火燃料の量を決めた後に、非点火燃料の量によって点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を決定する(S150)。制御部50は、燃料がそれぞれの気筒11に点火時点前と後に分けて流すようにインジェクター13を制御する。すなわち、複数ある気筒11について点火を中断させずに、燃料の各気筒11への流入タイミングを制御している。これによって、煤煙フィルター再生システム1は、再生運転モードを行う(S200)。点火時点前に流した燃料は、空気により燃焼され、未燃焼した酸素は点火時点後に流した燃料と共に排気パイプ19を通して触媒装置20に送られる。
【0044】
この後の過程は、図2に示した煤煙フィルター再生システム1と同じである。触媒装置20の温度が触媒保護温度より高いかまたは同じであるので、非点火燃料の量を再決定する場合においても、再決定された非点火燃料の量によって点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を再決定する(S340)。
【0045】
以上、本発明の煤煙フィルター再生システムを、好ましい実施形態を挙げて説明した。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当該発明が属する技術分野−で通常の知識を有する者が本発明の実施形態から容易に変更でき、また均等と認められる範囲の全てを含むものである。
【符号の説明】
【0046】
1;煤煙フィルター再生システム
10;ガソリンエンジン
11;気筒
13;インジェクター
15;吸気マニホールド
17;排気マニホールド
19;排気パイプ
20;触媒装置
30;煤煙フィルター
32;差圧センサ
34;温度計
40;制御パラメータ測定部
50;制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンの排気パイプ上に設置された煤煙フィルター再生システムであって、
複数の気筒と前記気筒内に流入された燃料と空気を点火させる点火装置を有するガソリンエンジンと、
前記ガソリンエンジンと連結した前記排気パイプに設置されて、前記ガソリンエンジンからの排気ガスを酸化−還元させる触媒装置と、
前記排気パイプの前記触媒装置の下流側に設置されて、前記排気ガスに含まれている粒子状物質(Particulate Matters)を捕集し、前記排気ガスの温度を利用して前記粒子状物質を再生させることができる煤煙フィルターと、
前記煤煙フィルターの前後に設置されて、前記煤煙フィルターの差圧を測定する差圧センサと、
前記差圧センサで測定された差圧と制御パラメータの入力を受けて、前記複数の気筒に流す燃料のうちの一部燃料を非点火で前記触媒装置に送られる非点火燃料の量を決める制御部と、
を有してなることを特徴とする煤煙フィルター再生システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記非点火燃料の量によって、点火を中断させる気筒数と点火の中断比率を決定し、点火の中断が決定された気筒での点火を中断させることを特徴とする請求項1に記載の煤煙フィルター再生システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記気筒に流す燃料を前記点火装置による点火時点前後に分けて流し、前記決定された非点火燃料の量によって前記気筒のうち点火前に流す燃料量と点火後に流す燃料量を決めることを特徴とする請求項1に記載の煤煙フィルター再生システム。
【請求項4】
前記制御パラメータは、エンジンの運転条件を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の煤煙フィルター再生システム。
【請求項5】
前記制御パラメータは、触媒の温度をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の煤煙フィルター再生システム。
【請求項6】
ガソリンエンジン、前記ガソリンエンジンから発生した排気ガスを酸化−還元させる触媒装置、及び前記排気ガスに含まれている粒子状物質を捕集する煤煙フィルターを含む煤煙フィルター再生システムで前記煤煙フィルターを再生する方法であって、
前記ガソリンエンジンの運転中に前記煤煙フィルターの差圧と予め設定された差圧を比較する段階と、
前記煤煙フィルターの差圧が、予め設定された差圧より大きいかまたは同じであるとき、前記ガソリンエンジンの複数の気筒に流入された燃料のうちの一部燃料を非点火で前記触媒装置に送る非点火燃料の量を決める段階と、
前記ガソリンエンジンからの非点火燃料を、前記触媒装置で酸化する段階と、
前記触媒装置で発生した酸化熱を利用して前記煤煙フィルターを再生する段階と、
を含んで構成されることをことを特徴とする煤煙フィルター再生方法。
【請求項7】
前記煤煙フィルターの再生中の前記触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、
前記触媒装置の温度が前記触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、前記煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、
前記煤煙フィルターの再生を維持させるとき、前記非点火燃料の量を再決定する段階と、
をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項8】
前記非点火燃料の量が決定された後、前記非点火燃料の量によって前記複数の気筒のうちの点火を中断させる気筒の個数と点火の中断比率を決定する段階、
をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項9】
前記煤煙フィルターの再生中の前記触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、
前記触媒装置の温度が前記触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、前記煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、
前記煤煙フィルターの再生を維持させるとき、前記非点火燃料の量を再決定する段階と、
前記非点火燃料の量を再決定した後、前記再決定された非点火燃料の量によって前記複数の気筒のうちの点火を中断させる気筒の個数と点火の中断比率を決定する段階と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項10】
前記非点火燃料の量が決定された後、前記非点火燃料の量によって気筒の点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を決める段階と、
前記燃料を点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量によって燃料噴射を制御する段階と、
をさらにに有することを特徴とする請求項6に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項11】
前記煤煙フィルター再生中の前記触媒装置の温度を、予め設定された触媒保護温度と比較する段階と、
前記触媒装置の温度が前記触媒保護温度より高いかまたは同じであるとき、前記煤煙フィルターの再生維持の要否を判断する段階と、
前記煤煙フィルター再生を維持させるとき、前記非点火燃料の量を再決定する段階と、
前記非点火燃料の量を再決定した後、前記再決定された非点火燃料の量によって前記気筒のうち点火時点前に流す燃料量と点火時点後に流す燃料量を再決定する段階と、
をさらにに有することを特徴とする請求項10に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項12】
前記非点火燃料の量は、エンジンの運転条件に応じて決定されることを特徴とする請求項6、8、10のいずれか1項に記載の煤煙フィルター再生方法。
【請求項13】
前記非点火燃料の量の再決定は、エンジンの運転条件と触媒温度に応じて行われることを特徴とする請求項7、9、11のいずれか1項に記載の煤煙フィルター再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87770(P2013−87770A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111561(P2012−111561)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】