説明

照明光源評価方法、照明光源調整方法、露光方法、デバイス製造方法、露光装置、及びリソグラフィシステム

【課題】照明光源の形状の目標に対する一致度合が正確に評価する。
【解決手段】 目標Ψに基づいて照明光学系の瞳面に形成された照明光源の形状Ψを計測し(ステップ208)、計測されるべき照明光源の形状を、照明光学系内の光学部材の特性を考慮して前記目標に基づいて予測し(ステップ205)、前記計測の結果〈Ψ〉と前記予測の結果Ψとのずれに基づいて、照明光源の形状の目標に対する一致度合を評価する(ステップ209、210)。これにより、照明光源の形状の目標に対する一致度合が正確に評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源評価方法、照明光源調整方法、露光方法、デバイス製造方法、露光装置、及びリソグラフィシステムに係り、特に、ビーム源からのビームを用いて光学部材によって形成される照明光源の形状を評価する照明光源評価方法、該照明光源評価方法を利用して照明光源形状を調整する照明光源調整方法、該照明光源調整方法により調整された照明光源からの照明光で物体を露光する露光方法、該露光方法を用いるデバイス製造方法、照明光源からの照明光により物体を露光して物体上にパターンを形成する露光装置、及び該露光装置を備えるリソグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスパターンの微細化に伴い、半導体素子等の製造に用いられる所謂ステッパ、あるいは所謂スキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる)等の投影露光装置には、高い解像度が要求されるようになってきた。解像度Rは、レイリーの式、すなわちR=k(λ/NA)で表される。ここで、λは、光源(照明光)の波長、NAは投影光学系の開口数、kはレジストの解像性及び/又はプロセス制御性で決まるプロセス・ファクタである。
【0003】
従来、照明光の波長λの短波長化及び投影光学系の開口数の増大化(高NA化)などにより、解像度の向上が図られてきた。しかるに、露光波長の短波長化には例えば光源及び硝材の開発に困難が伴い、また、高NA化は投影光学系の焦点深度(DOF)の低下をもたらし、結像性能(結像特性)を悪化させるため、高NA化をむやみに推し進めることはできない。
【0004】
近年では、高NA化を実現するものとして、局所液浸露光技術を採用した露光装置が実用化されているが、液浸露光装置においても、照明光の波長λの短波長化は勿論、高NA化にも限界があり、Lowk化は必要不可欠となってきた。
【0005】
かかる背景の下、低k値で量産可能な光学結像ソリューションを提供すべく、例えば特許文献1などに開示されるような空間光変調器(SLM: Spatial Light Modulator)により実現される照明技術が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0097094号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ビーム源からのビームを用いて光学部材によって照明光路上の所定面に形成される照明光源の形状を評価する照明光源評価方法であって、目標に基づいて前記所定面に形成された前記照明光源の形状を計測することと;前記計測されるべき照明光源の形状を、少なくとも前記光学部材の特性を考慮して前記目標に基づいて予測することと;前記計測の結果と前記予測の結果とのずれに基づいて、前記照明光源の形状の目標に対する一致度合を評価することと;を含む照明光源評価方法が、提供される。
【0008】
これによれば、照明光源の形状を正確に評価することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、本発明の照明光源評価方法を利用して前記照明光源の形状を評価することと;前記評価結果に基づいて、前記照明光源の形状を調整することと;を含む照明光源調整方法が、提供される。
【0010】
これによれば、目標照明光源形状を正確に再現するように照明光源を調整することが可能になる。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、本発明の照明光源調整方法により調整された照明光源からの照明光で物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法が、提供される。
【0012】
これによれば、物体上にパターンを精度良く形成することが可能になる。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、本発明の露光方法を用いて、物体上にパターンを形成することと;前記パターンが形成された前記物体を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記物体の表面に形成することと;前記マスク層を介して前記物体の表面を加工することと;を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、ビーム源からのビームを用いて照明光源を形成し、該照明光源からの照明光により物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光装置であって、前記照明光源をその瞳面及びその共役面に形成する光学部材をその内部に有し、前記照明光源からの照明光を前記物体に向けて射出する光学系と;前記照明光源の形状を計測する計測装置と;少なくとも前記光学部材の特性を考慮して目標に基づいて前記計測されるべき照明光源の形状を予測する予測装置と;前記計測装置を用いて前記照明光源の形状を計測するとともに、該計測の結果と前記予測の結果とのずれに基づいて、前記照明光源の形状の前記目標に対する一致度合を評価する評価装置と;を備える露光装置が、提供される。
【0015】
これによれば、照明光源の形状を正確に評価することが可能となり、その評価結果に応じて照明光源を調整された照明光源からの照明光で物体の露光を行うことで物体上にパターンを精度良く形成することが可能になる。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、本発明の露光装置と;前記露光装置を管理する上位装置と;を備えるリソグラフィシステムが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の空間光変調ユニットの構成を示す図である。
【図3】瞳輝度分布を計測する輝度分布計測器の一例について説明するための図である。
【図4】図1の露光装置を含むリソグラフィシステムを備える社内LANシステムの構成を示す図である。
【図5】初期調整時(起動時)における照明光源形状の設定に関する主制御装置(内のCPU)の処理アルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【図6】露光装置の稼働中、ロット先頭時等における照明光源形状の設定処理に関する主制御装置(内のCPU)の処理アルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【図7】図7(A)は目標照明光源形状の一例を、図7(B)は図7(A)に対応する理想照明光源形状を、図7(C)は照明光源の形状の計測結果の一例を、図7(D)は図7(B)の理想照明光源形状からの図7(C)の計測結果のずれを、図7(E)は図7(D)の移動平均を、図7(F)は図7(D)のずれに対する評価の重み分布の一例を、それぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図7(F)に基づいて説明する。
【0019】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0020】
露光装置100は、照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRに形成されたパターンの像を感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWST、及びこれらの制御系等を備えている。
【0021】
照明系IOPは、光源1と、光源1から射出される光ビームLBの光路上に順次配置されたビームエキスパンダ2、ビームスプリッタBS1、空間光変調ユニット3、リレー光学系4、ビームスプリッタBS2、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ5、コンデンサ光学系6、照明視野絞り(レチクルブラインド)7、結像光学系8、及び折曲ミラー9等を含む照明光学系と、を含む。
【0022】
光源1としては、一例として、ArFエキシマレーザ(出力波長193nm)が用いられているものとする。光源1から射出される光ビームLBは、一例としてX軸方向に長い矩形の断面形状を有する。
【0023】
ビームエキスパンダ2は、凹レンズ2aと凸レンズ2bとから構成されている。凹レンズ2aは負の屈折力を、凸レンズ2bは正の屈折力を、それぞれ有する。
【0024】
ビームエキスパンダ2に対する光ビームLBの光路後方には、ビームスプリッタBS1が配置されている。ビームスプリッタBS1は、光ビームLBの大部分を透過させ、残りを反射する。光ビームLBの反射光路上には、CCD等の撮像素子を含むビーム形状検出部D1が配置されている。ビーム形状検出部D1は、ビームスプリッタBS1からの光ビームLBを受光して、空間光変調ユニット3へ向かう光ビームLBの強度分布(光ビームLBの位置ずれを含む)を検出する。ビーム形状検出部D1の検出結果は、主制御装置20に送られる。
【0025】
空間光変調ユニット3は、いわゆるKプリズム(以下、単にプリズムと呼ぶ)3Pと、プリズム3Pの上面(+Z側の面)に配置された反射型の空間光変調器(SLM: Spatial Light Modulator)3Sとを備えている。プリズム3Pは、蛍石、石英ガラス等の光学ガラスから成る。
【0026】
図2に拡大して示されるように、プリズム3Pの下面、すなわち空間光変調器3Sと反対側には、図2におけるX-Z平面と平行な入射面(−Y側面)及び射出面(+Y側面)に対して、それぞれ60度で交差し、かつ互いに120度で交差する面PS1,PS2から成るV字状の面(楔形に凹んだ面)が形成されている。面PS1,PS2の裏面(プリズム3Pの内面)は、それぞれ、反射面R1,R2として機能する。
【0027】
反射面R1は、ビームエキスパンダ2からビームスプリッタBS1を透過してプリズム3Pの入射面に垂直に入射したY軸に平行な光を空間光変調器3Sの方向へ反射する。反射された光ビームLBは、プリズム3Pの上面を介して空間光変調器3Sに至り、後述するように空間光変調器3Sによって反射面R2に向けて反射される。プリズム3Pの反射面R2は、空間光変調器3Sからプリズム3Pの上面を介して到達した光を反射してリレー光学系4側に射出する。
【0028】
空間光変調器3Sは、反射型の空間光変調器である。空間光変調器とは、入射光の振幅、位相又は進行方向などを二次元的に制御して、画像、あるいはパターン化されたデータなどの空間情報を処理、表示、消去する素子を意味する。本実施形態の空間光変調器3Sとしては、二次元(XY)平面上に配列された多数の微小なミラー要素SEを有する可動マルチミラーアレイが用いられている。空間光変調器3Sは、多数のミラー要素を有するが、図2では、そのうちミラー要素SEa、SEb、SEc、SEdのみが示されている。空間光変調器3Sは、多数のミラー要素SEと、該多数のミラー要素SEをXY平面内の直交二軸(例えばX軸及びY軸)回りに所定範囲で連続的に傾斜(回動)させる同一数の駆動部とを有する。駆動部は、例えばミラー要素SEの裏面(+Z側の面、すなわち反射面と反対側の面)の中央を支持する支柱、該支柱が固定された基板、該基板上に設けられた4つの電極、該電極に対向してミラー要素SEの裏面に設けられた4つの電極(不図示)を有する。なお、空間光変調器3Sと同様の空間光変調器についての詳細構成等は、例えば、米国特許出願公開第2009/0097094号明細書に開示されている。
【0029】
図1に戻り、リレー光学系4の光路後方には、ビームスプリッタBS2が配置され、ビームスプリッタBS2の透過光路上には、フライアイレンズ5が配置されている。フライアイレンズ5は、光ビームLBに対して垂直方向に稠密に配列された正の屈折力を有する多数の微小レンズ素子の集合である。フライアイレンズ5は、後述するように入射した光束を波面分割して、その後側焦点面にレンズ素子と同数の光源像からなる二次光源(実質的な面光源)を形成する。本実施形態では、フライアイレンズ5として、例えば米国特許第6,913,373号明細書に開示されているシリンドリカルマイクロフライアイレンズが採用されているものとする。
【0030】
本実施形態の照明系IOPによると、光源1から射出された光ビームLBは、ビームエキスパンダ2に入射し、ビームエキスパンダ2を通過することによりその断面が拡大されて、所定の矩形断面を有する光ビームに整形される。ビームエキスパンダ2により整形された光ビームLBは、ビームスプリッタBS1を透過して、空間光変調ユニット3に入射する。
【0031】
例えば、図2に示されるように、光ビームLB中のZ軸方向に並ぶ互いに平行な4本の光線L1〜L4は、プリズム3Pの入射面からその内部に入り、反射面R1により空間光変調器3Sに向けて互いに平行に反射される。そして、光線L1〜L4は、それぞれ、複数のミラー要素SEのうちのY軸方向に並ぶ互いに異なるミラー要素SEa、SEb、SEc、SEdの反射面に入射する。ここで、ミラー要素SEa、SEb、SEc、SEdは、それぞれの駆動部(不図示)により独立に傾けられている。このため、光線L1〜L4は、反射面R2に向けて、ただしそれぞれ異なる方向に反射される。そして、光線L1〜L4(光ビームLB)は、反射面R2により反射され、プリズム3Pの外部に射出される。ここで、プリズム3Pの−Y側面(入射面)から+Y側面(出射面)までの光線L1〜L4のそれぞれの空気換算光路長は、プリズム3Pが設けられていない場合に対応する空気換算光路長に等しく定められている。ここで、空気換算光路長とは、媒質中(屈折率n)における光の光路長(L)を空気中(屈折率1)における光路長に換算した光路長L/nである。
【0032】
プリズム3Pの外部に射出された光線L1〜L4(光ビームLB)は、リレー光学系4を介してY軸に平行に揃えられ、リレー光学系4の後方に配置されるビームスプリッタBS2を透過してフライアイレンズ5に入射する。そして、光線L1〜L4のそれぞれがフライアイレンズ5の多数のレンズ素子のいずれかに入射することにより、光ビームLBが分割(波面分割)される。これにより、複数の光源像からなる二次光源(面光源、すなわち照明光源)が、照明光学系の瞳面(照明瞳面)に一致するフライアイレンズ5の後側焦点面LPPに形成される。
【0033】
図2には、フライアイレンズ5の後側焦点面LPPにおける、光線L1〜L4に対応する光強度分布SP1〜SP4が、模式的に示されている。このように、本実施形態では、二次光源(照明光源)の光強度分布(輝度分布又は照明光源形状とも呼ぶ)は、空間光変調器3Sにより自在に設定される。なお、空間光変調器としては、上述の反射型の能動的空間光変調器に限らず、非能動的な空間光変調器としての透過型又は反射型の回折光学素子なども用いることができる。このような非能動的な空間光変調器を用いる場合には、リレー光学系4を、例えばアフォーカルレンズ及びズームレンズ等を含んで構成することができ、その少なくとも一部の光学部材(レンズ、プリズム部材等)の位置及び/又は姿勢を制御することによって、二次光源(照明光源)の光強度分布を可変に設定することができる。また、回折光学素子として、例えば特開2001−217188号公報及びこれに対応する米国特許第6,671,035号明細書、あるいは特開2006−005319号公報及びこれに対応する米国特許第7,265,816号明細書などに開示されるように、複数区画を備えた回折光学素子の位置を制御することによって二次光源(照明光源)の光強度分布を可変に設定しても良い。また、上述の能動的又は非能動的な空間光変調器に加えて、例えば特開2000−58441号公報およびこれに対応する米国特許第6,452,662号明細書に開示される可動照明開口絞りを用いて二次光源(照明光源)の光強度分布を可変に設定しても良い。
【0034】
なお、本実施形態では、フライアイレンズ5が形成する二次光源を照明光源として、後述するレチクルステージRSTに保持されるレチクルRをケーラー照明する。そのため、二次光源が形成される面は、投影光学系PLの開口絞り41の面(開口絞り面)に対する共役面であり、照明光学系の瞳面(照明瞳面)と呼ばれる。また、照明瞳面に対して被照射面(レチクルRが配置される面又はウエハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。なお、フライアイレンズ5による波面分割数が比較的大きい場合、フライアイレンズ5の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、フライアイレンズ5の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても二次光源(照明光源)の光強度分布(輝度分布又は照明光源形状)と称することができる。
【0035】
上述のビームスプリッタBS2の反射光路上には、照明瞳分布計測部D2が配置されている。照明瞳分布計測部D2は、フライアイレンズ5の入射面と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、フライアイレンズ5の入射面に形成される光強度分布(輝度分布又は照明光源形状)をモニタする。すなわち、照明瞳分布計測部D2は、照明瞳又は照明瞳と光学的に共役な面で瞳強度分布を計測する機能を有する。照明瞳分布計測部D2の計測結果は、主制御装置20に供給される。照明瞳分布計測部D2の詳細な構成および作用については、例えば米国特許出願公開第2008/0030707号明細書を参照することができる。
【0036】
二次光源からの光ビームLBは、コンデンサ光学系6を介して照明視野絞り7を重畳的に照明する。このようにして、照明視野絞り7には、フライアイレンズ5の波面分割単位である矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。照明視野絞り7の矩形状の開口部(光透過部)を介した光ビームLBは、結像光学系8の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたレチクルRを重畳的に照明する。すなわち、二次光源からの光ビームLBは、コンデンサ光学系6により集光され、さらに照明視野絞り7、結像光学系8、折曲ミラー9等(コンデンサ光学系6から折曲ミラー9までをまとめて送光光学系10と称する)を介して照明系IOPから射出され、図1に示されるように、照明光ILとしてレチクルRに照射される。この場合、照明視野絞り7により光ビームLB(照明光IL)を整形することにより、レチクルRのパターン面の一部(照明領域IAR)が照明される。
【0037】
レチクルステージRSTは、照明系IOPの下方(−Z側)に配置されている。レチクルステージRST上には、レチクルRが例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系(不図示)によって、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(Y軸方向)に所定ストローク範囲で駆動可能となっている。
【0038】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」と呼ぶ)14によって、移動鏡12(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計14の計測情報は、主制御装置20に供給される。
【0039】
投影光学系PLは、レチクルステージRSTの下方(−Z側)に配置されている。投影光学系PLとしては、例えば、光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。そのため、前述の通り照明系IOPからの照明光ILによってレチクルRが照明されると、投影光学系PLを介して、レチクルRのパターン面(投影光学系の第1面、物体面)上の照明領域内のパターンの縮小像(パターンの一部の縮小像)が、レジスト(感応剤)が塗布されたウエハW(投影光学系の第2面、像面)上の露光領域IAに投影される。
【0040】
投影光学系PLを構成する複数枚のレンズエレメントのうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚のレンズエレメント(不図示)は、主制御装置20の配下にある結像性能補正コントローラ48によって例えば投影光学系PLの光軸方向であるZ軸方向、及びXY平面に対する傾斜方向(すなわちθx及びθy方向)に駆動可能な可動レンズとなっている。また、投影光学系PLの瞳面の近傍には、開口数(NA)を所定範囲内で連続的に変更可能な開口絞り41が設けられている。開口絞り41としては、例えばいわゆる虹彩絞りが用いられる。開口絞り41は、主制御装置20によって結像性能補正コントローラ48を介して制御される。
【0041】
ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系24によって、ステージベース22上をX軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向に微小駆動される。ウエハステージWST上には、ウエハWが、ウエハホルダ(不図示)を介して真空吸着等によって保持されている。
【0042】
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量)、ピッチング量(θx方向の回転量)及びローリング量(θy方向の回転量))を含む)は、レーザ干渉計システム(以下、「干渉計システム」と略記する)18によって、移動鏡16(又はウエハステージWSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。干渉計システム18の計測結果は、主制御装置20に供給される。
【0043】
また、ウエハWの表面のZ軸方向の位置及び傾斜は、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハW表面での反射光束を受光する受光系60bとを有する焦点位置検出系によって計測される。焦点位置検出系(60a,60b)としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される斜入射方式の多点焦点位置検出系と同様の構成のものが用いられる。
【0044】
また、ウエハステージWST上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さにある基準板FPが固定されている。基準板FPの表面には、アライメント系ASのベースライン計測等に用いられる基準マーク、後述するレチクルアライメント系で検出される一対の基準マーク等が形成されている。
【0045】
また、ウエハステージWSTには、瞳輝度分布をオン・ボディで計測(測定)する輝度分布計測器80が設けられている。輝度分布計測器80は、図3に示されるように、カバーガラス80a、集光レンズ80b、及び受光部80c等から構成される。
【0046】
カバーガラス80aの上面は、投影光学系PLの結像面位置、すなわちウエハステージWST上に載置されるウエハWの面位置に等しく設置されている。ここで上面には、クロム等の金属の蒸着により中央部に円形の開口(ピンホール)を有する遮光膜が形成されている。この遮光膜によって、瞳輝度分布の計測の際に、周囲から不要な光が受光部80cに入らないように遮られる。カバーガラス80a(ピンホール)及び受光部80cは、それぞれ、集光レンズ80bの前側及び後側焦点位置に配置されている。すなわち、受光部80cの受光面は、投影光学系PLの開口絞り41(すなわち投影光学系PLの瞳面及び照明系IOPの瞳面)の位置と光学的に共役な位置に配置されている。受光部80cは、2次元CCD等から成る受光素子と、例えば電荷転送制御回路等の電気回路等とを有している。なお、受光部80cからの計測データは、主制御装置20に送られる。
【0047】
上述の構成の輝度分布計測器80では、投影光学系PLから射出された照明光ILの一部がカバーガラス80aのピンホールを通過し、集光レンズ80bにより集光されて、受光部80cの受光面に入射する。ここで、受光部80cの受光面には、投影光学系PLの開口絞り41における照明光ILの強度分布が再現される。すなわち、受光部80cにより、カバーガラス80aのピンホールを通過する照明光ILの開口絞り41上での強度分布が計測される。ここで、開口絞り41の位置は投影光学系PLの瞳面及び照明系IOPの瞳面の位置と光学的に共役であるため、照明光ILの強度分布を計測することは瞳輝度分布を計測することに等しい。
【0048】
なお、カバーガラス80aの上面には、ピンホールとの位置関係が既知の位置合わせマーク(不図示)が設けられている。位置合わせマークは、ステージ座標系上でのピンホールの位置、すなわち輝度分布計測器80の位置を較正するために用いられる。
【0049】
ウエハステージWST(すなわち輝度分布計測器80)をXY二次元方向に移動させて、上述の計測を行うことにより、被照射面(第2面)上の複数点に関する瞳輝度分布が計測される。瞳輝度分布の計測についてはさらに後述する。
【0050】
図1に戻り、投影ユニットPUの鏡筒40の側面には、ウエハWに形成されたアライメントマーク及び基準マークを検出するアライメント系ASが設けられている。アライメント系ASとしては、例えばハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光によりマークを照明して検出し、検出されたマークの像(画像)を画像処理することによってマークの位置を計測する画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。
【0051】
露光装置100では、不図示であるが、レチクルステージRSTの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書等に開示される、露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント系が設けられている。レチクルアライメント系の検出信号は、主制御装置20に供給される。
【0052】
前記制御系は、図1中、主制御装置20によって主に構成される。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等から構成され、装置全体を統括して制御する。また、主制御装置20には、例えばハードディスクから成る記憶装置42、キーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含む入力装置45,CRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置44、及びCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto-optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記憶媒体のドライブ装置46が、外付けで接続されている。さらに、主制御装置20は、LAN918に接続されている。
【0053】
記憶装置42には、投影光学系PLによってウエハW上に投影される投影像の結像状態が最適(例えば収差又は線幅が許容範囲内)となる照明光源形状(瞳輝度分布)に関する情報、これに対応する照明系IOP、特に空間光変調器3Sのミラー要素SEの制御情報、及び投影光学系PLの収差に関する情報等が格納されている。
【0054】
ドライブ装置46には、後述するように照明光源形状を調整するための処理プログラム等が格納された情報記憶媒体(以下の説明では便宜上CD−ROMとする)がセットされている。なお、これらのプログラムは記憶装置42にインストールされていても良い。主制御装置20は、適宜、これらのプログラムをメモリ上に読み出す。
【0055】
また、主制御装置20は、図4に示されるように、クリーンルーム内に設置された露光装置100が含まれるリソグラフィシステム912の他の露光装置922、922、及びリソグラフィシステム912を統括管理する上位コンピュータ920に、LAN918を介して接続されている。上位コンピュータ920は、ローカルエリアネットワーク(LAN)926を介してクリーンルーム外のサーバ930に接続されている。該リソグラフィシステム912とサーバ930とは、半導体工場内に構築された社内LANシステム1000の一部をそれぞれ構成している。
【0056】
露光装置100では、通常のスキャナと同様に、ウエハ交換、レチクル交換、レチクルアライメント、アライメント系ASのベースライン計測並びにウエハアライメント(EGA等)等の準備作業の後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。詳細説明は省略する。
【0057】
次に、本実施形態の露光装置100における空間光変調ユニット3(空間光変調器3S)を用いた照明光源形状(瞳輝度分布)の設定処理について説明する。
【0058】
図5には、露光装置100の初期調整時(起動時)における照明光源形状の設定に関する主制御装置20(内のCPU)の処理アルゴリズムを概略的に示すフローチャートが示されている。
【0059】
最初のステップ202では、照明光源に関する初期設定を行う。具体的には、主制御装置20は、記憶装置42に記憶された照明光源形状(瞳輝度分布)に関する情報、これに対応する照明系IOP、空間光変調器3Sのミラー要素SEの制御情報、及び投影光学系PLの収差に関する情報等を読み出す。ここで、照明光源形状に関する情報には、その目標である目標照明光源形状(以下、適宜、目標とも表記する)Ψが含まれる。目標照明光源形状Ψは、照明瞳面内の2次元座標ξ,ηの関数Ψ(ξ,η)として表現される。ミラー要素SEの制御情報には、ミラー要素SEの角度に対する反射光の強度情報等のミラー特性情報が含まれる。主制御装置20は、これらの基本情報に従って、照明系IOPの構成各部(光源1、空間光変調器3S等)を起動する。
【0060】
次のステップ204では、光源1から射出される光ビームLBのビーム断面内の強度分布(ビーム形状とも表記する)を計測する。主制御装置20は、ビーム形状検出部D1を用いて、ビームスプリッタBS1により反射される光ビームLBを検出する。その結果より、ビーム形状Φの計測結果(〈Φ〉と表記する)が得られる。
【0061】
次のステップ205では、後述するステップ208で行われる照明光源形状の計測において計測され得る最も目標照明光源形状Ψに近い照明光源の形状(以下、理想照明光源形状とも呼ぶ)を予測(算出)する。具体的には、主制御装置20は、前述のステップ202において設定された空間光変調器3Sのミラー要素SEのミラー特性情報、照明光学系の収差情報、及び輝度分布計測器80の特性(例えば集光レンズの収差など)等に基づいて、照明系IOPにより実際に再現され、輝度分布計測器80で計測され得る目標Ψに最も近い照明光源形状(理想照明光源形状)Ψを予測(算出)する。すなわち、現実の露光装置で輝度分布計測器80等により計測される照明光源の形状(瞳輝度分布)は、ミラー要素SEのミラー特性、照明光学系の収差、輝度分布計測器80の特性などに起因する設定誤差、計測誤差があり、目標Ψからずれた形状となる。そこで、主制御装置20は、ミラー要素SEのミラー特性情報、照明光学系の収差情報、及び輝度分布計測器80の特性などに基づいて、理想照明光源形状Ψを求めてメモリに記憶する。
【0062】
次のステップ206では、照明光源の設定を行う。主制御装置20は、空間光変調器3Sのミラー要素SEの制御情報に基づいて、強度分布〈Φ〉を有する光ビームLBが空間光変調器3S、フライアイレンズ5等を介して照明瞳面上に形成する強度分布、すなわち照明光源形状Ψがその目標Ψを再現する様に、ミラー要素SEの制御パラメータを決定する。主制御装置20は、決定した制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御し、目標照明光源形状を再現するべく、照明光源形状を設定する。ここで、再現すると表現しているのは、バーチャルな情報である目標照明光源形状を基に、目標照明光源形状に極力近い実際の照明光源形状を設定することになり、結果として実空間で目標照明光源形状にほぼ一致した照明光源形状が再現されるからである。本明細書では、かかる意味で再現するという表現を用いている。
【0063】
次のステップ208では、照明光源形状Ψを計測する。主制御装置20は、計測に先立って、輝度分布計測器80の位置を較正する。ここで、主制御装置20は、ウエハステージWSTを駆動して、ウエハステージWSTに搭載された輝度分布計測器80をアライメント系ASの直下に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系ASを用いて、輝度分布計測器80に設けられた位置合わせマーク(不図示)を検出し、その検出結果と検出時の干渉計システム18の計測結果とを用いてステージ座標系上での輝度分布計測器80の正確な位置を求める。その結果に従って、主制御装置20は、ウエハステージWSTを駆動して、輝度分布計測器80(カバーガラス80a上の開口)を光軸AX上に正確に位置決めする。これと同時に、主制御装置20は、焦点位置検出系(60a、60b)を用いてカバーガラス80aの面位置及び傾斜を計測し、ウエハステージWSTをフォーカス・レベリング制御して、カバーガラス80aの上面を結像点(像面)に位置決めする。
【0064】
較正が終わると、主制御装置20は、照明光源形状Ψの本計測を開始する。ステップ206において設定された照明光源(二次光源)から照明光ILが射出され、図3に示されるように、照明系IOP及び投影光学系PLを介して像面上に集光される。これにより、照明光ILが、カバーガラス80a上の開口を通り、集光レンズ80bを介して、受光部80c内の受光素子によって受光される。受光素子(2次元CCD等)は、照明光ILのその断面内での光強度分布を検出する。これにより、照明光源形状Ψの計測結果〈Ψ〉が得られる。なお、計測結果〈Ψ〉は、照明光源形状Ψと同様に、照明瞳面内の3次元(輝度)座標ξ,ηの関数〈Ψ(ξ,η)〉として表現される。
【0065】
主制御装置20は、照明光源形状Ψ(ξ,η)の計測結果〈Ψ(ξ,η)〉を、例えば上位コンピュータ920又はサーバ930に転送する。なお、厳密には、照明光源形状(瞳輝度分布)は瞳面座標系上の離散点について計測されるため、計測結果〈Ψ(ξ,η)〉は離散データとして表される。
【0066】
なお、本実施形態の露光装置100では、投影光学系PLを介して照明光ILを検出するため、照明光源形状(瞳輝度分布)の計測結果には、原理上、投影光学系PLの収差等に起因する計測誤差も含まれる。しかし、本実施形態では、特に断らない限り、投影光学系PLの収差等に起因する光学的な誤差はない、あるいはステップ202において読み出された収差及び透過率に関する情報を用いて補正されているものとする。
【0067】
次のステップ209では、ステップ206において再現された照明光源形状と目標との一致度合を評価する。ここでは、前述のステップ205において求めた理想照明光源形状Ψが評価の基準として用いられる。すなわち、主制御装置20は、計測結果〈Ψ〉の理想照明光源形状Ψからのずれ、例えばRMS誤差を求め、そのRMS誤差の値と閾値(ステップ202において定められているものとする)との大小を比較する。なお、このステップ209における評価方法については、さらに後述する。
【0068】
そして、次のステップ210では、評価結果が良好であるか否かを判断する。そして、RMS誤差が閾値より小さく、十分な精度で、目標照明光源形状Ψが再現されている場合、すなわち評価結果が良好な場合には、本ルーチンの処理(一連の照明光源形状の設定及び調整処理)を終了する。
【0069】
この一方、評価結果が良好でない場合には、ステップ212に移行する。本実施形態では、ステップ212及び213において、調整処理の選択が行われる。
【0070】
ステップ212では、照明光源形状の調整処理の選択が第1回目であるか否かを判断する。この場合、第1回目であるため、このステップ212における判断は肯定され、ステップ214に移行する。
【0071】
ステップ214では、ビーム形状Φの推定(演算処理)を行う。ここで、ビーム形状Φは、すでにステップ204において計測されている。しかし、ビーム形状検出部D1は、空間光変調器3Sのミラー要素SEに入射する光ビームLBそのものを検出してはいない。このため、空間光変調ユニット3(プリズム3P)内で生じる光軸のずれ、あるいはビーム形状検出部D1の検出誤差等により、正確な計測結果〈Φ〉が得られていないおそれがある。そこで、主制御装置20は第1回目の調整処理の選択においては、ビーム形状Φの推定(演算処理)を、最初に行うべく、他に優先して選択することとしている。
【0072】
ビーム形状の推定が終了すると、ステップ206に戻る。主制御装置20は、ビーム形状の推定結果(《Φ》と表記する)を用いて、強度分布《Φ》を有する光ビームLBにより形成される照明光源形状Ψが目標Ψを再現する様に、ミラー要素SEの制御パラメータを再決定する。主制御装置20は、決定された制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御し、目標照明光源形状を再現するべく、照明光源形状を再設定する。
【0073】
一方、第2回目以降の調整処理の選択の場合、ステップ212における判断は否定され、ステップ213に進む。ステップ213では、調整処理の選択が第m回目未満であるか否かを判断する。そして、調整処理の選択が第m回目未満(通常、mは3、4、5等に設定される)である場合には、ステップ213における判断が肯定され、ステップ218に移行し、照明光源の設定の最適化を行う。一方、調整処理の選択が第m回目になると、ステップ213における判断は否定され、ステップ216に移行する。m回の設定の根拠については、後述する。
【0074】
ステップ216では、ミラー特性、すなわち空間光変調器3Sのミラー要素SEの角度に対する反射光の強度等の推定(演算処理)を行う。ここで、ミラー特性は、すでにステップ202において設定されている。しかし、必ずしも、設定通りの性能が得られているとは限らないので、ミラー特性の推定を行うことは必要である。
【0075】
ミラー特性の推定が終了すると、先と同様にステップ206に戻り、主制御装置20は、ミラー特性の推定結果を用いて、先と同様にして、照明光源形状を再現すべく、照明光源形状を再設定する。すなわち、主制御装置20は、ミラー特性の推定結果を用いて、強度分布《Φ》(《Φ》が得られていない場合〈Φ〉)を有する光ビームLBにより形成される照明光源形状Ψがその目標Ψを再現する様に、ミラー要素SEの制御パラメータを再決定し、決定された制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御する。
【0076】
ミラー特性の推定は、後述する照明光源の設定の最適化に比べて、処理時間が長いので、調整処理の選択において、主制御装置20は、後述する照明光源設定の最適化の処理を優先して選択することとしている。また、ミラー特性はすでにステップ202において設定されているため、ミラー特性の推定を実行しない場合であっても、数回程度、照明光源設定の最適化を繰り返すことは有意義である。このため、上述のmを3,4,5等に設定することとしている。
【0077】
さて、ステップ213における判断が肯定された場合には、ステップ218に移行し、照明光源の設定の最適化を行う。
【0078】
ここで、調整処理の繰り返しサイクルにおいて、ステップ206では、ビーム形状Φの計測結果〈Φ〉若しくは推定結果《Φ》、又は初期設定若しくは推定されたミラー特性等に基づいて、照明光源形状Ψが再現される。
【0079】
ステップ218では、主制御装置20は、再現される照明光源形状Ψ(ステップ208において得られる計測結果〈Ψ〉)が、目標Ψに一致するように、ミラー要素SEの制御パラメータを微調整することで、照明光源の設定を最適化する。すなわち、主制御装置20は、最適化された制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御し、照明光源形状を再現する。
【0080】
通常、このステップ218では、時間を掛けて、空間光変調器3Sの複数のミラー要素SEの傾斜等の微調整が繰り返し、順次行われるので、ステップ218の処理が終わり、ステップ208に戻った場合には、ステップ209,210で評価結果が良好となって、処理が終了する。
【0081】
ただし、再度、ステップ210における判断が否定された場合には、上記と同様の処理が、ステップ210の判断が肯定されるまで、繰り返される。
【0082】
このように、図5のフローチャートに従う照明光源形状(瞳輝度分布)の設定処理では、調整処理の選択が何回目かに応じて予め定められた優先度に応じて適切な調整処理が選択されるため、効率的にかつ正確に照明光源の形状を初期設定することが可能となる。
【0083】
図6には、露光装置100の稼働中、特にアイドル時、ロット先頭時等における照明光源形状の設定処理に関する主制御装置20(内のCPU)の処理アルゴリズムを概略的に示すフローチャートが示されている。前提条件として、露光装置100の起動時(初期調整時)に、前述の照明光源形状の設定処理が行われているものとする。すなわち、ステップ206において照明光源形状が設定済みであり、またステップ202における照明光源に関する初期設定が行われ、目標照明光源形状Ψ、ミラー特性情報等が取得済みであるものとする。
【0084】
最初のステップ302では、目標照明光源形状Ψを再現すべく、ビーム形状を調整する。
【0085】
次のステップ304では、前述のステップ204と同様に、光源1から射出される光ビームLBのビーム断面内の強度分布(ビーム形状)を、計測する。具体的には、主制御装置20は、ビーム形状検出部D1を用いて、ビームスプリッタBS1により反射される光ビームLBを検出する。この結果より、ビーム形状Φの計測結果〈Φ〉が得られる。
【0086】
次のステップ306では、照明光源形状Ψを計測する。ここで、前述した露光装置100の起動時(初期調整時)における設定処理では、正確であることが要求されるため、照明光源形状の計測には、輝度分布計測器80が用いられたが、露光装置100の稼働中における設定処理では、短時間での装置の回復が要求されるため、照明系IOP内に設けられた照明瞳分布計測部D2が用いられる。主制御装置20は、照明瞳分布計測部D2を用いて、ビームスプリッタBS2により反射される照明光ILを検出する。この結果より、照明光源形状Ψの計測結果〈Ψ〉が得られる。計測結果〈Ψ〉は、上位コンピュータ920又はサーバ930に転送される。
【0087】
次のステップ308では、前述のステップ209と同様にして、照明光源形状と目標との一致度合を評価する。このステップ308における具体的処理内容については、さらに後述する。
【0088】
そして、次のステップ310では、評価結果が良好であるか否かを判断する。そして、評価結果が良好な場合には、本ルーチンの処理(一連の照明光源形状の設定及び調整処理)を終了する。
【0089】
この一方、評価結果が良好でない場合には、ステップ312に移行する。本実施形態では、ステップ312、314、及び318において、調整処理の選択が行われる。
【0090】
ステップ312では、照明光源形状の調整処理の選択が第1回目であるか否かを判断する。この場合、第1回目であるため、このステップ312における判断は肯定され、ステップ302に戻る。ここで、例えば前述のステップ304において計測した計測結果〈Φ〉を用いてビーム形状の異常の有無を判断し、ビーム形状の異常が検知された場合のみ、ステップ302に戻ることとしても良いが、ここでは、調整処理の選択が第1回目である場合には、無条件に、ステップ302に戻り、ビーム形状の調整を行うこととした。すなわち、第1回目の調整処理においては、ビーム形状の調整を他に優先して選択することとした。
【0091】
なお、ビーム形状の異常の検知は、一例として次のようにして行うことができる。すなわち、主制御装置20は、例えば、計測結果〈Φ〉を、露光装置100の起動時の設定処理において計測されたビーム形状と比較する。例えば光ビームLBの光軸がずれた場合、計測結果〈Φ〉の分布がシフトすること、あるいはその積分値が小さくなることから、ビーム形状の異常が検知される。
【0092】
一方、第2回目以降の調整処理の選択の場合、ステップ312における判断は否定され、ステップ314に進む。ステップ314では、調整処理の選択が第n回目未満であるか否かを判断する。そして、調整処理の選択が第n回目未満(通常、nは3、4、5等に設定される)である場合には、ステップ314における判断は肯定され、ステップ316に移行する。n回の設定の根拠については、後述する。
【0093】
ステップ316では、照明光源の設定の最適化を行う。ステップ316では、主制御装置20は、ステップ306において得られた照明光源形状Ψの計測結果〈Ψ〉、ビーム形状Φの計測結果〈Φ〉、初期設定されたミラー特性等に基づいて、照明光源形状Ψが目標Ψに一致するように、ミラー要素SEの制御パラメータを微調整する。これにより、照明光源の設定を最適化する。ただし、このステップ316の照明光源の設定の最適化は、前述のステップ218の処理と異なり、短い処理時間で精度の良い処理アルゴリズムである。そこで、調整処理の選択において、主制御装置20は、ビーム形状の調整に次いで優先して選択することとしている。また、ステップ316の照明光源の設定の最適化は、照明光源形状が再設定されるので数回程度、繰り返すことは有意義である。このため、上述のnを3,4,5等に設定することとしている。
【0094】
一方、調整処理の選択が第n回目になり、ステップ314における判断が否定された場合には、ステップ318に移行し、ビーム形状の推定及び/又はミラー特性の推定を選択したか否かを判断する。ビーム形状の推定(ステップ214)とミラー特性の推定(ステップ216)は、既に、露光装置100の起動時に少なくとも1回行われている。そこで、他の調整処理(この場合、ステップ316の照明光源の設定の最適化の(n−2)回の繰返し)を行ってもステップ310における評価結果が良好とならない場合にのみ、ビーム形状の推定及び/又はミラー特性の推定を選択することとしている。
【0095】
そして、ステップ318における判断が否定された場合には、ステップ320に移行する。ステップ320では、前述のステップ214と同様のビーム形状の推定及び/又はステップ216と同様のミラー特性の推定を行い、ビーム形状の推定及び/又はミラー特性の推定が終了すると、ステップ322に進む。
【0096】
ステップ322では、ビーム形状及び/又はミラー特性の推定結果を用いて、照明光源を再設定する。具体的には、主制御装置20は、上記の推定結果を用いて、前述のステップ206と同様に、照明光源形状Ψがその目標Ψを再現する様に、ミラー要素SEの制御パラメータを再決定する。そして、主制御装置20は、決定された制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御し、照明光源形状を再現する。
【0097】
一方、上述のステップ318における判断が肯定された場合、すなわちビーム形状の推定及び/又はミラー特性の推定の選択を既に行っている場合には、露光装置を停止させないまま行える処理はすべて選択済みであるため、最後の選択肢としてメンテナンスを選択するため、ステップ324に移行し、オペレータに空間光変調ユニット3の空間光変調器3Sのメンテンナンスの必要性を通知する。この通知は、一例として表示装置44の表示画面に「SLMのメンテナンスが必要です」と表示するとともに、不図示のスピーカから同内容を音声にて発することで行われる。通知後、ステップ326に進んで、再開(再起動)の指示がなされるのを待つ。なお、空間光変調器3Sのメンテナンスは、露光装置100を停止させて行うため、長い処理時間を要する。そこで、主制御装置20は、その他の処理をすべて試みた結果、それでも所望の光源形状を得られなかった場合に、最後に選択することとしている。
【0098】
上記の表示及び音声による通知を受けたオペレータにより露光装置100が一旦停止され、空間光変調器3Sのミラー要素SEの検査が行われる。検査の終了後、オペレータにより露光装置100の再起動が指示される。これにより、ステップ326における判断が肯定され、ステップ328に移行する。
【0099】
ステップ328では、再起動後、ミラー特性のキャリブレーション及び照明光源の再設定を行う。具体的には、主制御装置20は、露光装置100を再起動するとともに、ミラー要素SEの特性のキャリブレーションを行い、このキャリブレーションの結果に基づいてステップ206と同様にしてミラー要素SEの制御パラメータを決定する。主制御装置20は、決定された制御パラメータに従って、空間光変調器3S(ミラー要素SEの傾斜等)を制御し、照明光源形状を再現する。
【0100】
ステップ328の処理の終了後、ステップ306に戻り、以後、ステップ310における判断が肯定されるまで、上述の処理を繰り返す。
【0101】
このように、図6のフローチャートに従う照明光源形状(瞳輝度分布)の設定処理では、短い時間で正確に調整可能な調整方法が優先して選択されるため、露光装置100の稼働中であっても、スループットを殆ど低下させることなく効率的に照明光源を調整することが可能となる。
【0102】
次に、上述のステップ209の照明光源形状の評価ステップの具体的処理内容について、図7(A)〜図7(F)に基づいて説明する。
【0103】
前提として、ステップ202の照明光源に関する初期設定において、一例として図7(A)に模式的に示されるような目標照明光源形状Ψ(すなわちξ,ηの関数Ψ(ξ,η))が設定されているものとする。また、ステップ205において、図7(B)に示されるような理想照明光源形状Ψ(ξ,η)が予測されているものとする。この図7(B)の理想照明光源形状は、ミラー要素SEのミラー特性、照明光学系の収差等の照明光源の固有の特性、及び輝度分布計測器80の特性などに起因して、照明光源形状の輪郭がぼけるなどの図7(A)の目標から変化している。以下では、理想照明光源形状Ψの目標Ψからの変化として、照明光源形状の輪郭のぼけが生じているものとして説明を行う。
【0104】
本実施形態では、理想照明光源形状Ψを評価の基準として用いることにより、照明光源の固有の特性、及び輝度分布計測器80の特性などを考慮した照明光源形状の正確な評価が可能となる。
【0105】
図7(C)には、ステップ208で計測された照明光源形状の計測結果〈Ψ(ξ,η)〉が示されている。この例では、上述の輪郭のぼけに加えて、大きさの異なる複数の欠落点(黒い点)が現れている。
【0106】
主制御装置20は、照明光源形状の計測結果〈Ψ(ξ,η)〉と理想形状Ψ(ξ,η)との差ΔΨ(ξ,η)(=〈Ψ(ξ,η)〉−Ψ(ξ,η))を求める。ここで、主制御装置20は、照明光源の形状〈Ψ(ξ,η)〉と理想形状Ψ(ξ,η)との重心又は外形(重心と外形とが一致する場合は両者)を一致させて、差ΔΨ(ξ,η)を求める。
【0107】
図7(D)には、求められた差ΔΨ(ξ,η)が示されている。差ΔΨ(ξ,η)には、理想形状Ψ(ξ,η)を評価の基準として用いたことにより、照明光源の固有の特性に由来する輪郭のぼけが取り除かれ、上述の複数の欠落点(黒い点)のみが残っている。
【0108】
ただし、複数の欠落点には、通常、計測誤差(ノイズ)に由来する欠落点も含まれる。そこで、主制御装置20は、さらに、差ΔΨ(ξ,η)を一定の領域について畳み込み積分する。次の積分公式において、重みw(ξ,η)として、例えば図7(D)に示される円形領域c1、c2のように中心点から一定の半径内の領域について一定の振幅を有する分布関数を採用する。
dΨ(ξ,η)=∫w(ξ−ξ’,η−η’)ΔΨ(ξ’,η’)dξ’dη’
【0109】
なお、計測結果〈Ψ(ξ,η)〉及び目標Ψ(ξ,η)は2次元座標ξ,η内の複数の離散点(ピクセル)上の離散値(ピクセル値)を用いて表現されているため、一定範囲内のピクセル値の平均(移動平均)を用いて中心ピクセル上でのピクセル値が与えられる。これにより、図7(E)に示されるように、畳み込み積分dΨ(ξ,η)から、計測誤差(ノイズ)に由来する失点が取り除かれる。
【0110】
主制御装置20は、畳み込み積分dΨ(ξ,η)の自乗平均、すなわち計測結果〈Ψ〉と理想形状ΨとのRMS誤差を求め、これを照明光源の評価の指標とする。すなわち、前述の通り、指標の値が閾値(ステップ202において定められているとする)より小さい場合、主制御装置20は、十分な精度で、目標とする照明光源形状Ψが再現されていると判断して、照明光源形状の設定(又は再設定)処理を終了する。RMS誤差の値が閾値より大きい場合、主制御装置20は、ステップ212に移行して、照明光源形状の調整処理を実行する。
【0111】
なお、いわゆる変形照明などでは、照明光源形状(瞳輝度分布)は、照明瞳面内の一定の領域のみについて振幅を有する。そこで、例えば、図7(F)に示されるような評価マップを導入しても良い。この評価マップでは、変形照明の光源形状に対応する領域e2で大きな重みが、その他の領域e1,e3では小さい重みが割り当てられている。評価マップを用いてRMS誤差を求めることにより、個別の照明光源形状に応じた評価が可能となる。
【0112】
なお、領域e1,e2,e3毎に、照明光源形状を評価することとしても良い。この場合、RMS誤差に対する重みを一定とし、閾値を領域ごとに定めることとしても良い。また、畳み込み積分(移動平均)の領域が、評価マップ上の異なる領域をまたぐ場合、そのまたぐ領域を積分領域(平均領域)から除外することもできる。また、評価の指標としてRMS誤差に限らず、dΨ(ξ,η)の最大と最小の差(振幅)あるいはばらつき等を採用することも可能である。
【0113】
上述のステップ308における処理は、評価の対象が、ステップ306において、照明瞳分布計測部D2を用いて計測された照明光源形状Ψの計測結果〈Ψ〉となる点を除けば、上で詳述したステップ209における処理と同様である。このステップ308では、上述の照明瞳分布計測部D2で計測され得る目標Ψに最も近い照明光源形状(Ψとする)を、前述と同様にして、ただし輝度分布計測器80の特性の代わりに照明瞳分布計測部D2の特性を用いて、求め、その照明光源形状Ψを評価の基準としても良いし、ステップ209と同じ理想照明光源形状Ψを評価の基準としても良い。
【0114】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、照明光源の形状の目標Ψに基づいて設定された照明光源の形状Ψが計測され(ステップ208又はステップ306)、照明光源の形状の計測結果〈Ψ〉と照明光源の形状の目標Ψから予測される理想照明光源形状ΨとのずれΔΨを照明光源の面内について移動平均してずれの分布が求められ、求められたずれの分布dΨを用いて照明光源の形状の目標に対する一致度が評価される(ステップ209又はステップ308)。これにより、照明光源の形状の目標に対する一致度を正確に評価することが可能になる。また、主制御装置20により、この評価結果に基づいて、適切な調整アルゴリズムに従って照明光源の形状が調整され、目標を正確に再現した照明光源の形成又は調整が行われる。そして、その照明光源からの照明光ILでパターンが形成されたレチクルRを照明し、照明されたレチクルRからの光を投影光学系PLに通してウエハW上にレチクルRのパターンの像を形成する。これによって、ウエハW上にレチクルRのパターンを正確に転写することが可能になる。
【0115】
なお、上記実施形態では、上述のステップ205において、照明光源形状の評価の基準に用いられる理想照明光源形状Ψを求める場合について例示したが、これに限らず、評価の基準は、評価時までに求められていれば良い。従って、例えば、ステップ202の初期設定時に、理想照明光源形状Ψを求めるようにしても良い。また、上述のステップ205において、照明光源形状の評価の基準となる理想照明光源形状を求める際には、これに先立ってステップ204においてビーム形状の計測が行われているので、この計測結果をさらに考慮して、照明光源形状の評価の基準を求めても良い。さらに、輝度分布計測器80等の計測器の特性が照明光源形状の計測結果〈Ψ〉に与える影響が小さい場合には、評価の基準を求める際に、計測器の特性を必ずしも考慮しなくても良い。この場合には、照明光源形状の計測において計測され得る最も目標照明光源形状Ψに近い照明光源の形状を予測することは、ステップ206において設定され得る最も目標照明光源形状Ψに近い照明光源の形状を予測することと実質的に同じである。
【0116】
なお、図7(D)、図7(E)、及び図7(F)を用いて説明した具体的な評価手法は、一例に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。計測されるべき照明光源の形状を、少なくとも空間光変調器3Sの特性を考慮して照明光源の目標に基づいて予測し、照明光源の計測結果と予測の結果とのずれに基づいて、照明光源の形状の目標に対する一致度合を評価すれば良い。
【0117】
なお、上記実施形態では、図5、図6のフローチャートから明らかなように、主制御装置20がソフトウェアプログラムに従った処理を実行することで、予測装置、評価装置、及び調整装置が実現される場合について説明したが、これに限らず、ソフトウェアプログラムに従った処理と実質的に等価な処理を、他のコンピュータ又はハードウェアなどに実行させる構成を採用しても良い。
【0118】
また、上記実施形態では、ウエハステージWST上に設けられた輝度分布計測器80を用いてウエハ面上で瞳輝度分布を計測する構成を採用したが、輝度分布計測器80をレチクルステージRST上に設け、レチクルのパターン面上で瞳輝度分布を計測する構成を採用することもできる。この場合、瞳輝度分布の計測結果に投影光学系PLの光学特性の効果が含まれないため、瞳輝度分布を精密に計測する上で好適である。
【0119】
なお、上記実施形態では1つの空間光変調ユニット(空間光変調器)を用いたが、これに限らず、複数の空間光変調ユニット(空間光変調器)を用いることも可能である。複数の空間光変調ユニットを用いた露光装置向けの照明光学系として、例えば米国特許出願公開第2009/0109417号明細書および米国特許出願公開第2009/0128886号明細書に開示される照明光学系を採用することができる。
【0120】
また、上記実施形態では、二次元的に配列されたミラー要素の傾斜を独立に制御する空間光変調器を採用したが、そのような空間光変調器として、例えば欧州特許出願公開第779530号明細書、米国特許第6,900,915号明細書、並びに米国特許第7,095,546号明細書等に開示される空間光変調器を採用することができる。
【0121】
また、空間光変調器として、さらにミラー要素の高さを独立に制御する空間光変調器を採用することも可能である。そのような空間光変調器として、例えば米国特許第5,312,513号明細書、並びに米国特許第6,885,493号明細書に開示される空間光変調器を採用することができる。さらに、上述の空間光変調器を、例えば米国特許第6,891,655号明細書、あるいは米国特許出願公開第2005/0095749号明細書の開示に従って変形することも可能である。
【0122】
また、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0123】
また、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも本発明を適用できる。また、例えば米国特許第7,589,822号明細書などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置にも本発明は適用が可能である。
【0124】
また、上記実施形態では、露光装置100が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、例えば欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、米国特許第6,952,253号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0125】
また、上記実施形態の露光装置を含み本発明に係る露光装置の投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0126】
また、上記実施形において、米国特許出願公開第2006/0170901号明細書や米国特許出願公開第2007/0146676号明細書に開示される、いわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。
【0127】
また、露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0128】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)を、露光装置100として採用することができる。
【0129】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置を、露光装置100として採用することができる。
【0130】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0131】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0132】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態のリソグラフィシステムの一部を構成する露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態のリソグラフィシステムの一部を構成する露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上説明したように、本発明の照明光源評価方法は、照明光源の形状を評価するのに適している。また、本発明の照明光源調整方法は、照明光源の形状を調整するのに適している。また、本発明の露光方法及び露光装置は、照明光源からの照明光で物体を露光するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法及びリソグラフィシステムは、半導体素子又は液晶表示素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0134】
1…光源、2…ビームエキスパンダ、3S…空間光変調器、4…リレー光学系、5…フライアイレンズ、6…コンデンサ光学系、7…照明視野絞り、8…結像光学系、9…折曲ミラー、20…主制御装置、80…輝度分布計測器、100…露光装置、IOP…照明系、PL…投影光学系、PU…投影ユニット、R…レチクル、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム源からのビームを用いて光学部材によって照明光路上の所定面に形成される照明光源の形状を評価する照明光源評価方法であって、
目標に基づいて前記所定面に形成された前記照明光源の形状を計測することと;
前記計測されるべき照明光源の形状を、少なくとも前記光学部材の特性を考慮して前記目標に基づいて予測することと;
前記計測の結果と前記予測の結果とのずれに基づいて、前記照明光源の形状の目標に対する一致度合を評価することと;を含む照明光源評価方法。
【請求項2】
前記予測することでは、前記照明光源の形状の計測に用いられる計測装置の特性をさらに考慮して前記計測されるべき照明光源の形状を、予測する請求項1に記載の照明光源評価方法。
【請求項3】
前記評価することでは、前記ずれを前記所定面内における前記照明光源が形成された範囲内の少なくとも一部の領域について移動平均して前記ずれの分布を求め、該ずれの分布を用いて前記一致度合いを評価する請求項1又は2に記載の照明光源評価方法。
【請求項4】
前記評価することでは、前記ずれの分布を、前記所定面内における前記照明光源が形成された範囲内についての重み分布を用いて重み付き平均し、該重み付き平均の結果を用いて前記一致度合いを評価する請求項3に記載の照明光源評価方法。
【請求項5】
前記重み分布として、前記ずれの分布の振幅の大きな前記所定面内の領域について大きな重みを有する分布を用いる請求項4に記載の照明光源評価方法。
【請求項6】
前記評価することでは、前記所定面内の前記照明光源が形成された範囲内の一部の領域について前記一致度合いを評価する請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明光源評価方法。
【請求項7】
前記評価することでは、前記計測の結果として得られる前記照明光源の形状と前記予測の結果として得られる前記照明光源の形状との重心及び外形の少なくとも一方を一致させて、前記ずれを求める請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明光源評価方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明光源評価方法を利用して前記照明光源の形状を評価することと;
前記評価結果に基づいて、前記照明光源の形状を調整することと;を含む照明光源調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載の照明光源調整方法により調整された照明光源からの照明光で物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法。
【請求項10】
前記照明光源からの照明光で被投影物体を照明し、照明された被投影物体からの光を投影光学系に通して前記物体上に前記被投影物体の像を形成する請求項9に記載の露光方法。
【請求項11】
前記所定面は、前記投影光学系の開口絞りの位置と光学的に共役な位置または該共役な位置の近傍である請求項10に記載の露光方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の露光方法を用いて、物体上にパターンを形成することと;
前記パターンが形成された前記物体を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記物体の表面に形成することと;
前記マスク層を介して前記物体の表面を加工することと;を含むデバイス製造方法。
【請求項13】
ビーム源からのビームを用いて照明光源を形成し、該照明光源からの照明光により物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光装置であって、
前記照明光源をその瞳面及びその共役面に形成する光学部材をその内部に有し、前記照明光源からの照明光を前記物体に向けて射出する光学系と;
前記照明光源の形状を計測する計測装置と;
少なくとも前記光学部材の特性を考慮して目標に基づいて前記計測されるべき照明光源の形状を予測する予測装置と;
前記計測装置を用いて前記照明光源の形状を計測するとともに、該計測の結果と前記予測の結果とのずれに基づいて、前記照明光源の形状の前記目標に対する一致度合を評価する評価装置と;を備える露光装置。
【請求項14】
前記予測装置は、前記計測装置の特性をさらに考慮して前記計測されるべき照明光源の形状を、予測する請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記評価装置は、前記ずれを前記照明光源が形成された面内における前記照明光源が形成された範囲内の少なくとも一部の領域について移動平均して前記ずれの分布を求め、該ずれの分布を用いて前記一致度合いを評価する請求項13又は14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記評価装置は、前記ずれの分布を、前記照明光源が形成された範囲内についての重み分布を用いて重み付き平均し、該重み付き平均の結果を用いて前記一致度合いを評価する請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記評価装置は、前記重み分布として、前記ずれの分布の振幅の大きな前記所定面内の領域について大きな重みを有する分布を用いる請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記評価装置は、前記照明光源が形成された面内における前記照明光源が形成された範囲内の一部の領域について前記一致度合いを評価する請求項13〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項19】
前記評価装置は、前記計測の結果として得られる前記照明光源の形状と前記予測の結果として得られる前記照明光源の形状との重心及び外形の少なくとも一方を一致させて、前記ずれを求める請求項13〜18のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項20】
前記評価結果に基づいて、光学部材を介して前記照明光源の形状を調整する調整装置をさらに備える請求項13〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
請求項13〜20のいずれか一項に記載の露光装置と;
前記露光装置を管理する上位装置と;を備えるリソグラフィシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−99685(P2012−99685A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247045(P2010−247045)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】