説明

熱により活性化可能なポリウレタンシート

シートの30質量%超が、熱により活性化可能なポリウレタンから成る層(略してPU層と呼ぶ)を含むことを特徴とする、2の支持体を接着するためのシートの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30質量%超が、熱により活性化可能なポリウレタンから成る1の層(略してPU層と呼ぶ)を含むことを特徴とする、2の支持体を接着するためのシートの使用に関する。
【0002】
自動車工業、および家具工業においてはしばしば、成形部材をラミネートで、例えばプラスチックシートで貼り合わせる。この際、成形部材、および/または貼り合わせるシートを接着剤で被覆し、かつ一般的には圧力の適用下で、または深絞り成形工程における減圧下で、両方の部材を引き続き互いに接着させる。
【0003】
DE−A10000656、DE−A10001777、DE−A10330748、またはEP−A1598382より、熱により活性化可能なポリウレタンは公知である。これは、カルボジイミドを含むポリウレタン接着剤である。記載されたポリウレタン接着剤の場合、貼り合わせされた成形部材の製造業者ではなく、貼り合わせシートの製造業者において貼り合わせシートの被覆を行えることが、すでに有利である。こうして得られたポリウレタン接着剤で被覆されたシートはロールの形で輸送することができ、かつ使用者において保管することができる。貼り合わせの際に、ポリウレタン接着剤の耐ブロッキング性の被覆を熱によって活性化する、すなわちその被覆を粘着性にし、貼り合わせ工程を実施することができる。
【0004】
貼り合わせされた成形部材の製造業者は、異なる成形部材および適用のために、一般的に様々な貼り合わせシートを必要としており、その上このような企業では接着剤で被覆されたシートの他に、一般的に被覆されていないシートもまた必要とされている。従って製造業者は、各自の手法をいつでも実行できるようにするためには、多数の被覆されたシートと、被覆されていないシートをストックしなければならない。従って、方法のさらなる簡便化、とりわけ貯蔵保持の範囲に影響を与える簡便化が望まれる。
【0005】
従って本発明の課題は、とりわけ貼り合わせた成形部材が良好な工業的適用特性、例えば成形部材への貼り合わせシートの非常に良好な接着を有するのが望ましい、成形部材を貼り合わせるための簡便な方法であった。
【0006】
これに従って冒頭で定義された使用が判明した。本方法に適するシートもまた判明した。
【0007】
使用されるシートは、30質量%超が熱により活性化可能なポリウレタンから成る1の層(略してPU層と呼ぶ)を含む。
【0008】
ポリウレタンに関して
PU層は基本的な成分として、熱により活性化可能な異なるポリウレタンの混合物でもあり得る、熱により活性化可能なポリウレタンを結合剤として含む。
【0009】
考慮されるのは好適には、主にポリイソシアナート、とりわけジイソシアナート、および反応対象としてポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、またはそれらの混合物から構成されているポリウレタンである。
【0010】
好適にはこのポリウレタンは少なくとも40質量%が、特に好ましくは少なくとも60質量%、および極めて特に好ましくは少なくとも80質量%が、ジイソシアナート、ポリエーテルジオール、および/またはポリエステルジオールから構成されている。
【0011】
好ましくはこのポリウレタンは、ポリウレタンに対して10質量%より多く、特に好ましくは30質量%超、とりわけ40質量%超、または50質量%超、極めて特に好ましくは60質量%超の量でポリエステルジオールを含む。
【0012】
とりわけ、ポリエステルジオールをポリエーテルジオールとの混合物で使用する場合には合成成分としてポリエステルジオールを使用し、好適にはポリエステルジオールとポリエーテルジオールとの混合物の少なくとも50mol%が、特に好ましくは少なくとも80mol%、極めて特に好ましくは100mol%が、ポリエステルジオールである。
【0013】
好適にはこのポリウレタンは30℃超の融点、とりわけ40℃超、特に好ましくは50℃超、または60℃超、または70℃超の融点を有する。一般的にその融点は150℃より高くなく、とりわけ100℃より高くない。従ってこの融点はとりわけ、30〜150℃の範囲、特に好ましくは40〜150℃の範囲、および極めて特に好ましくは30〜100℃、およびとりわけ50〜80℃である。
【0014】
このポリウレタンは、好適には20J/gより高い溶融エンタルピーを有する。
【0015】
その際、融点と溶融エンタルピーの測定を、示差走査熱量測定法によって行う。
【0016】
測定前に強制空気循環乾燥棚内で40℃、72時間乾燥された、厚さ200μmのポリウレタン被膜について測定を行う。測定の準備のために約13mgのポリウレタンを小皿に満たす。小皿を閉鎖し、試料を120℃に加熱し、20K/分で冷却し、かつ20時間20℃で温度処理する。こうして準備された試料を、20K/分で加熱しながらDIN53765に準拠したDSC法で測定する。溶融温度として、DIN53765に準拠してピーク温度を求め、溶融エンタルピーをDIN53765の図4にあるように測定する。
【0017】
総じてこのポリウレタンは好適には
a)ジイソシアナート、
b)
b1)ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%、500〜5000g/molの分子量を有するジオールと
b2)ジオール(b)の全量に対して0〜90mol%、60〜500g/molの分子量を有するジオールと
から成るジオール、
c)少なくとも1のイソシアナート基、または少なくとも1のイソシアナート基に対して反応性の基を有し、その上ポリウレタンの水分散性に影響をもたらす少なくとも1の親水基、または潜在的な親水基を有する、モノマー(a)と(b)により異なるモノマー
d)アルコールのヒドロキシル基、第一級、または第二級のアミノ基、またはイソシアナート基である反応性の基を有する、場合によってはモノマー(a)〜(c)により異なるさらなる多価の化合物、および
e)アルコールのヒドロキシル基、第一級、または第二級のアミノ基、またはイソシアナート基である1の反応性の基を有する、場合によってモノマー(a)〜(d)により異なるさらなる1価の化合物、
から構成されている。
【0018】
モノマー(a)としてとりわけ挙げられるのは、ジイソシアナートX(NCO)2[式中、Xは4〜15の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15の炭素原子を有する環式脂肪族の、または環式芳香族の炭化水素基、または7〜15の炭素原子を有する芳香脂肪族の炭化水素基を表す]である。このようなジイソシアナートの例は、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランスの、シス/シスの、およびシス/トランスの異性体、ならびにこれらの化合物からなる混合物である。
【0019】
このようなジイソシアナートは、市販で手に入る。
【0020】
これらのイソシアナートの混合物として特に、ジイソシアナトトルエンとジイソシアナート−ジフェニルメタンとのその都度の構造異性体の混合物が重要であり、とりわけ80mol%の2,4−ジイソシアナトトルエンと、20mol%の2,6−ジイソシアナトトルエンとから成る混合物が適している。さらには、芳香族イソシアナート、例えば2,4−ジイソシアナトトルエン、および/または2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族の、または環式脂肪族のイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナート、またはIPDIとの混合物が特に有利であり、この際脂肪族のイソシアナートと芳香族のイソシアナートとの好ましい混合比率は、4:1〜1:4である。
【0021】
ポリウレタンの合成のために、遊離イソシアナート基の他にさらなるキャップトトイソシアナート基、例えばウレトジオン基を有する、前述のイソシアナート以外の化合物もまた使用することができる。
【0022】
良好な被膜形成および弾性という観点では、ジオール(b)としてとりわけ、約500〜5000の分子量、好適には1000〜3000g/molの分子量を有する、比較的高分子のジオール(b1)が考慮される。これはこの際、数平均モル質量Mnである。Mnは、末端基の数(OH数)の測定によって得られる。
【0023】
ジオール(b1)とは、例えばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、62〜65ページより公知であるポリエステルポリオールである。好ましくは、二価のアルコールと二価のカルボン酸との反応により得られるポリエステルポリオールを使用する。遊離ポリカルボン酸の代わりに、相応するポリカルボン酸無水物、または低級アルコールの相応するポリカルボン酸エステル、またはこれらの混合物を、ポリエステルポリオールの製造のために使用することもできる。このポリカルボン酸は、脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族、芳香族、またはヘテロ環式であることができ、かつ場合によっては、例えば塩素原子によって置換されている、および/または不飽和であることができる。これに対する例として挙げられるのは、コルク酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体の脂肪酸である。好ましくは、一般式HOOC−(CH2)y−COOHのジカルボン酸[式中yは1〜20の数、好ましくは2〜20の整数である]であり、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカンジカルボン酸である。
【0024】
多価のアルコールとしては例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、さらにはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが考慮される。好ましくは、一般式HO−(CH2)x−OH[式中、xは1〜20の数、好ましくは2〜20の整数である]のアルコールである。これに対する例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、およびドデカン−1,12−ジオールである。さらに好ましいのは、ネオペンチルグリコールである。
【0025】
さらに場合によっては、例えばホスゲンと、ポリエステルポリオールのための合成成分として挙げられた低分子のアルコールの余剰量との反応によって得ることができるポリカルボナート−ジオールもまた、考慮される。
【0026】
場合によってはラクトンベースのポリエステルジオールも併用することができ、この際該ポリエステルジオールはラクトンのホモポリマー、またはコポリマーであり、好ましくは、適切な二官能性の開始剤分子への、末端位にヒドロキシ基を有するラクトンの付加生成物である。ラクトンとして好ましくは、一般式HO−(CH2)z−COOH[式中、zは1〜20の数であり、かつメチレン単位のH原子がC1〜C4のアルキル基によっても置換されていることができる]の化合物から誘導されるラクトンが考慮される。その例は、e−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、g−ブチロラクトン、および/またはメチル−e−カプロラクトン、ならびにこれらの混合物である。適切な開始剤成分は例えば、先にポリエステルポリオールのための合成成分として挙げた低分子の二価のアルコールである。e−カプロラクトンの相応する重合体が特に好ましい。低級のポリエステルジオール、またはポリエーテルジオールもまた、ラクトン重合体の製造のための開始剤として使用することができる。ラクトン重合体の代わりに、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の、相応する化学的に等価の重縮合体もまた使用することができる。
【0027】
ポリエーテルジオールはとりわけ、例えばBF3の存在下で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、またはエピクロルヒドリンの、自身の重合によって、または場合により混合物で、または順次、アルコールやアミンのような反応性のある水素原子を有する開始剤成分、例えば水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、またはアニリンへの、これらの化合物の付加によって得られる。特に好ましくは、240〜5000の、およびとりわけ500〜4500の分子量のポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフランである。
【0028】
b1)には、20質量%未満、エチレンオキシドから成るポリエーテルジオールのみが該当する。少なくとも20質量%エチレンオキシドを有するポリエーテルジオールは、親水性のポリエーテルジオールであり、これはモノマーc)に属する。
【0029】
場合によっては、好ましくは2の末端位のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシオレフィン、例えばα,−ω−ジヒドロキシポリブタジエン、α,−ω−ジヒドロキシポリメタクリルエステル、またはα,−ω−ジヒドロキシポリアクリルエステルもまた、モノマー(c1)として併用することができる。このような化合物は例えば、EP−A622378より公知である。さらなる適切なポリオールは、ポリアセタール、ポリシロキサン、およびアルキド樹脂である。
【0030】
好ましくは、ジオールb1)の少なくとも30mol%、特に好ましくは少なくとも70mol%がポリエステルジオールである。特に好ましくは、ジオールb1)として完全にポリエステルジオールを使用する。
【0031】
ジオール(b)としてジオール(b1)の他に、60〜500、好適には62〜200g/molの分子量を有する低分子のジオール(b2)をさらに使用すれば、ポリウレタンの硬度と弾性モジュールを高めることができる。
【0032】
モノマー(b2)としては、とりわけポリエステルポリオールの製造のために挙げられた短鎖のアルカンジオールの合成成分を使用し、この際2〜12のC原子、および整数のC原子を有する非分枝状のジオール、ならびにペンタン−1,5−ジオール、およびネオペンチルグリコールが好ましい。
【0033】
ジオールb2)としては例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、さらにはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが考慮される。好ましくは、一般式HO−(CH2)x−OHのアルコール[式中、xは1〜20の数、好ましくは2〜20の整数である]である。これに対する例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン1,6−ジオール、オクタン1,8−ジオール、およびドデカン−1,12−ジオールである。さらに好ましくは、ネオペンチルグリコールである。
【0034】
好ましくはジオール(b1)の割合は、ジオール(b)の全量に対して10〜100mol%であり、かつモノマー(b2)の割合はジオール(b)の全量に対して0〜90mol%である。特に好ましくは、ジオール(b1)の比は、モノマー(b2)に対して0.1:1〜5:1、特に好ましくは0.2〜2:1である。
【0035】
ポリウレタンの水分散可能性を達成するために、このポリウレタンは、少なくとも1のイソシアナート基、または少なくとも1のイソシアナートに対して反応性の基を有し、かつその上ポリウレタンの水分散性に影響をもたらす少なくとも1の親水基、または親水基に移行することができる基を有する、好適には成分(a)、(b)、および(d)により異なるモノマー(c)を合成成分として含む。以降の文においては、「親水基または潜在的な親水基」は、「(潜在的な)親水基」と省略する。(潜在的な)親水基は、ポリマー主鎖の合成に役立つモノマーの官能基よりも、基本的にゆっくりイソシアナートと反応する。
【0036】
成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の全量における、(潜在的な)親水基を有する成分の割合を、(潜在的な)親水基のモル量がすべてのモノマー(a)〜(e)の全量に対して、30〜1000、好ましくは50〜500、および特に好ましくは80〜300mmol/kgであるように、一般的に測定する。
【0037】
(潜在的な)親水基とは、非イオン性、または好ましくは(潜在的な)イオン性親水基であることができる。
【0038】
非イオン性の親水基としてはとりわけ、好適には5〜100の、好ましくは10〜80のエチレンオキシド繰返単位を有するポリエチレングリコールエーテルが考慮される。ポリエチレンオキシド単位の含有率は一般的に、すべてのモノマー(a)〜(e)の全量に対して、0〜10質量%、好ましくは0〜6質量%である。
【0039】
非イオン性親水基を有する好ましいモノマーは、少なくとも20質量%のエチレンオキシドを有するポリエチレンオキシド−ジオール、ポリエチレンオキシドモノオール、ならびに末端位にエーテル化されたポリエチレングリコール基を有する、ポリエチレングリコールとジイソシアナートとから成る反応生成物である。このようなジイソシアナート、ならびにこれらの製造方法は、特許文献US−A3,905,929、およびUS−A3,920,598に記載されている。
【0040】
イオン性の親水基は、とりわけアニオン基、例えばアルカリ金属塩の形態での、またはアンモニウム塩の形態でのスルホン酸基、カルボキシラート基、およびリン酸基であり、ならびにカチオン基、例えばアンモニウム基、とりわけプロトン化された第三級アミノ基、または第四級アンモニウム基である。
【0041】
潜在的なイオン性の親水基はとりわけ、単純な中和反応、加水分解反応、または四級化反応により、前述のイオン性親水基に移行することができる親水基であり、例えばカルボン酸基、または第三級のアミノ基である。
【0042】
(潜在的な)イオン性モノマー(c)は、例えばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、311〜313ページ、および例えばDE−A1495745に詳しく記載されている。
【0043】
(潜在的な)カチオン性モノマー(c)としてはとりわけ、第三級アミノ基を有するモノマーが特に実地では重要であり、例えば、これらの第三級アミンのアルキル基とアルカンジイル単位が相互に独立して1〜6の炭素原子から成る、トリス−(ヒドロキシアルキル)−アミン、N,N’−ビス(ヒドロキシアルキル)−アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキル−ジアルキルアミン、トリス−(アミノアルキルアミン)−アミン、N,N−ビス(アミノアルキル)−アルキルアミン、N−アミノアルキル−ジアルキルアミンである。さらには、好適には2の末端位のヒドロキシル基を有し、第三級の窒素原子を有するポリエーテルが考慮され、該ポリエーテルは例えばアミン窒素に結合された2の水素原子を有するアミン、例えばメチルアミン、アニリン、またはN,N’−ジメチルヒドラジンのアルコキシ化によって通常の方法で手に入る。このようなポリエーテルは一般的に、500〜6000g/molのモル質量を有する。
【0044】
これらの第三級アミンは、酸、好ましくは強鉱酸、例えばリン酸、硫酸、塩酸、または無機強酸によって、または適切な四級化剤、例えばC1〜C6のアルキルハロゲン化物、またはベンジルハロゲン化物、例えば臭化物、または塩化物との反応によって、アンモニウム塩に移行することができる。
【0045】
(潜在的な)アニオン基を有するモノマーとしては通常、少なくとも1のアルコールのヒドロキシル基、または少なくとも1の第一級、または第二級アミノ基を有する、脂肪族の、環式脂肪族の、芳香脂肪族の、または芳香族のカルボン酸とスルホン酸が考慮される。好ましくは、US−A3,412,054にも記載されているように、とりわけ3〜10の炭素原子を有するジヒドロキシアルキルカルボン酸である。とりわけ一般式(c1
【化1】

[式中、R1、およびR2はC1〜C4のアルカンジイル(単位)を表し、かつR3はC1〜C4のアルキル(単位)を表し、およびとりわけジメチロールプロピオン酸(DMPA)が好ましい]の化合物である。
【0046】
さらには、相応するジヒドロキシスルホン酸、およびジヒドロキシホスホン酸、例えば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が適している。
【0047】
その他には、DE−A3911827より公知の、500超〜10000g/molの分子量を有し、少なくとも2のカルボキシル基を有する、ジヒドロキシ化合物が適している。これらの化合物は、重付加反応において2:1〜1.05:1のモル比での、ジヒドロキシ化合物と、テトラカルボン酸二無水物、例えばピロメリット酸二無水物、またはシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物との反応によって得られる。ジヒドロキシ化合物としてはとりわけ、連鎖延長剤として引き合いに出されるモノマー(b2)、ならびにジオール(b1)が適している。
【0048】
イソシアナートに対して反応性のアミノ基を有するモノマー(c)としては、アミノカルボン酸、例えばリシン、β−アラニン、またはDE−A2034479に挙げられている、α,β−不飽和カルボン酸、またはスルホン酸への、脂肪族のジ第一級ジアミンの付加生成物が考慮される。
【0049】
このような化合物は、例えば式(c2
【化2】

[式中、R4とR5は相互に独立してC1〜C6のアルカンジイル単位、好ましくはエチレンを表し、
かつXはCOOH、またはSO3Hを表す]
に従っている。
【0050】
式(c2)の特に好ましい化合物は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸、ならびにN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、もしくは相応するアルカリ塩であり、この際Naが対イオンとして特に好ましい。
【0051】
さらに特に好ましくは、例えばDE−B1954090に記載されている、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸への、前述の脂肪族ジ第一級ジアミンの付加生成物である。
【0052】
潜在的なイオン性の基を有するモノマーを使用する場合、イオン性の形態へのこれらの移行を、イソシアナート重付加の前に、該重付加の間に、しかしながら好適には該重付加後に行うことができる。と言うのもイオン性モノマーは、反応混合物にしばしば非常に難溶性であるからである。中和剤は例えば、アンモニア、NaOH、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン(TIPA)、またはモルホリン、もしくはその誘導体である。特に好ましくは、対イオンとしてアルカリイオンまたはアンモニウムイオンを有する塩の形態でのスルホン酸基、またはカルボキシラート基である。
【0053】
モノマー(a)〜(c)によって異なり、かつ場合によってはポリウレタンの成分でもあるモノマー(d)は、一般的に架橋、または連鎖延長に役立つ。モノマー(d)は、一般的に二価以上の非フェノールのアルコール、2またはそれ以上の第一級、および/または第二級のアミノ基を有するアミン、ならびに1または複数のアルコールのヒドロキシル基の他に1または複数の第一級および/または第二級のアミノ基を有する化合物である。
【0054】
確実な分枝度の、または架橋度の調整に役立てることができる2より大きい価数を有するアルコールは、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、または糖である。
【0055】
さらには、ヒドロキシル基の他にさらなるイソシアナート反応性の基を有するモノアルコール、例えば1または複数の第一級および/または第二級アミノ基を有するモノアルコール、例えばモノエタノールアミンが考慮される。
【0056】
2またはそれ以上の第一級、および/または第二級のアミノ基を有するポリアミンは、とりわけ連鎖延長もしくは架橋が水の存在下で起こるのが望ましい時に使用する。と言うのも、アミンは通常、アルコールまたは水よりも速くイソシアナートと反応するからである。これは、架橋されたポリウレタンの、または高いモル質量を有するポリウレタンの水分散が所望される場合にしばしば必要となる。このような場合には、イソシアナート基を有するプレポリマーを製造し、これを素早く水に分散させ、かつ引き続き複数のイソシアナート反応性のアミノ基を有する化合物の添加によって連鎖延長または架橋させる。
【0057】
これに適したアミンは、第一級および第二級のアミノ基の群から選択される少なくとも2のアミノ基を含む、一般的に32〜500g/mol、好適には60〜300g/molのモル質量の範囲の多官能性アミンである。これに対する例は、ジアミン、例えばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、またはトリアミン、例えばジエチレントリアミン、または1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンである。
【0058】
これらのアミンはまた、ブロック形態、例えば相応するケチミン(例えばCA−A1129128参照)、ケタジン(例えばUS−A4,269,748参照)、またはアミン塩(US−A4,292,226参照)の形態でも使用することができる。例えばUS−A4,192,937で使用されるオキサゾリジンもまた、本発明によるポリウレタンの製造のためプレポリマーの連鎖延長に使用することができるキャップトポリアミンである。このようなキャップトポリアミンの使用の際、これらを一般的に水の不存在下でプレポリマーと混合し、かつこの混合物を引き続き分散水、または分散水の一部と混合し、加水分解的に相応するポリアミンを遊離させる。
【0059】
好ましくはジアミンとトリアミンとの混合物を使用し、特に好ましくは、イソホロンジアミン(IPDA)と、ジエチレントリアミン(DETA)との混合物である。
【0060】
このポリウレタンは、少なくとも2のイソシアナート反応性のアミノ基を有するポリアミンを、成分(b)および(d)の全量に対して好ましくは1〜30mol%、特に好ましくは4〜25mol%、モノマー(d)として含む。
【0061】
同様の目的のためにモノマー(d)として二価より大きいイソシアナートをモノマー(d)として使用することもできる。市販の化合物は例えば、イソシアヌラート、またはヘキサメチレンジイソシアナートのビウレットである。
【0062】
場合により併用するモノマー(e)はモノイソシアナート、モノアルコール、およびモノ第一級アミン、およびモノ第二級アミンである。一般的にその割合は、モノマーの全モル量に対して最大10mol%である。これらの単官能性化合物は通常、さらなる官能基、例えばオレフィン基、またはカルボニル基を有し、かつポリウレタンの分散もしくは架橋、またはさらなるポリマー類似反応を可能にする、ポリウレタンへの官能基の導入に役立つ。これに対しては、モノマー、例えばイソプロペニル−a,a−ジメチルベンジルイソシアナート(TMI)、およびアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート、またはヒドロキシエチルメタクリラートが考慮される。
【0063】
ポリウレタン化学の分野では、ポリウレタンの分子量を、相互に反応性のモノマー成分の選択によって、ならびに1分子あたりの反応性官能基の数の相加平均の選択によって調整できることは、一般的に公知である。
【0064】
通常、成分(a)〜(e)、ならびにその都度のそれらのモル量を、A:B
A イソシアナート基のモル量、および
B ヒドロキシル基のモル量と、イソシアナートと付加反応で反応することができる官能基のモル量との和、
の比が0.5:1〜2:1、好ましくは0.8:1〜1.5、特に好ましくは0.9:1〜1.2:1である。極めて特に好ましくはA:Bの比は可能な限り1:1に近い。
【0065】
使用されるモノマー(a)〜(e)は、イソシアナートと付加反応で反応することができる、平均で通常1.5〜2.5、好ましくは1.9〜2.1、特に好ましくは2.0の、イソシアナート基もしくは官能基を有する。
【0066】
ポリウレタンの製造のための成分(a)〜(e)の重付加を、好適には最大180℃の、好ましくは最大150℃の反応温度で常圧下、または自然発生圧力下で行う。
【0067】
ポリウレタンの製造、もしくは水性ポリウレタン分散液の製造は、当業者には公知である。
【0068】
PU層のさらなる成分
PU層は熱により活性化可能なポリウレタン、もしくは熱により活性化可能な異なるポリウレタンの他に、さらなる成分を含むことができる。
【0069】
PU層は熱により活性化可能なポリウレタンの他に、さらなるポリマーを結合剤として含むことができる。
【0070】
さらなるポリマーとは、とりわけエチレン不飽和化合物(モノマー)のラジカル重合によって得られるポリマーであることができる。
【0071】
このポリマーは、好適には少なくとも40質量%が、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%が、いわゆる主モノマーから成る。
【0072】
この主モノマーは、C1〜C20のアルキル(メタ)アクリラート、最大20のC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、最大20のC原子を有する芳香族ビニル、エチレン不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、1〜10のC原子を含むアルコールのビニルエーテル、2〜8のC原子と1または2の二重結合を有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物である。
【0073】
例えばC1〜C10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル−メタクリラート、メチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、エチルアクリラート、および2−エチルヘキシルアクリラートが挙げられる。
【0074】
とりわけ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物もまた適している。
【0075】
1〜20のC原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベルサチック酸(Versaticsaeure)ビニルエステルおよび酢酸ビニルである。
【0076】
ビニル芳香族化合物としては、ビニルトルエン、a−メチルスチレン、およびp−メチルスチレン、a−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、および好適にはスチレンが考慮される。ニトリルの例は、アクリルニトリル、およびメタクリルニトリルである。
【0077】
ハロゲン化ビニルは、塩素、フッ素、または臭素で置換されたエチレン不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル、および塩化ビニリデンである。
【0078】
ビニルエーテルとして挙げられるのは例えば、ビニルメチルエーテル、またはビニルイソブチルエーテルである。好ましくは1〜4のC原子を含むアルコールのビニルエーテルである。
【0079】
2〜8のC原子と、1または2のオレフィン二重結合を有する炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、およびクロロプレンが挙げられるだろう。
【0080】
主モノマーとしては好ましくは、C1〜C10のアルキルアクリラートとアルキルメタクリラート、とりわけC1〜C8のアルキルアクリラートとアルキルメタクリラート、および芳香族ビニル、とりわけスチレン、およびこれらの混合物である。
【0081】
極めて特に好ましくは、メタクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ヘキシルアクリラート、オクチルアクリラート、および2−エチルヘキシルアクリラート、スチレン、ならびにこれらのモノマーの混合物である。
【0082】
主モノマーの他に、ポリマーはさらなるモノマー、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、またはホスホン酸基を有するモノマーを含むことができる。好ましくはカルボン酸基である。例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、またはフマル酸が挙げられるだろう。
【0083】
さらなるモノマーはまた例えば、ヒドロキシル基を含むモノマー、とりわけC1〜C10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミドである。
【0084】
さらなるモノマーとしては、これに加えてフェニルオキシエチルグリコールモノ−(メタ)アクリラート、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、アミノ−(メタ)アクリラート、例えば2−アミノエチル−(メタ)アクリラートが挙げられるだろう。
【0085】
さらなるモノマーとしては、架橋するモノマーも挙げられるだろう。
【0086】
好ましいポリマーは少なくとも40質量%が、とりわけ少なくとも60質量%、および極めて特に好ましくは少なくとも80質量%が、C1〜C20の、とりわけC1〜C10のアルキル(メタ)アクリラートから、またはビニルエステル、とりわけ酢酸ビニルから、またはビニルエステル、とりわけ酢酸ビニルと、エチレンとの混合物から成る。
【0087】
従って、場合によっては熱により活性化可能なポリウレタンとの混合物でPU層に使用される好ましいポリマーは、ポリアクリラート、ポリ酢酸ビニル、またはエチレン/酢酸ビニルのコポリマー、または他の熱により活性化できないポリウレタンである。
【0088】
ポリマーの製造は、好ましい実施形態においてはエマルション重合によって行われ、従ってこれはエマルション重合体である。
【0089】
しかしながらこの製造は例えば、溶液重合および引き続いた水への分散によっても行うことができる。
【0090】
このPU層は全体で、全成分の合計に対して少なくとも30質量%が、好適には少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%、とりわけ少なくとも70質量%、もしくは少なくとも90質量%が、熱により活性化可能なポリウレタンから成る。
【0091】
特別な実施形態においては、PU層はポリウレタンの他に結合剤としてさらなるポリマーを含まない。
【0092】
PU層のさらなる成分とは、とりわけ架橋剤であることができる。
【0093】
好適にはPU層は、ポリウレタンのための少なくとも1の架橋剤を含む。
【0094】
架橋剤としてはとりわけ、化学的なブロックトイソシアナート、シラン基を含む化合物、とりわけカプセル化されたシラン基を含む化合物、カプセル化されたイソシアナート、カプセル化されたウレタンジオール、ビウレット、またはアロファナート、または特に好ましくはカルボジイミド基を有する化合物である。
【0095】
架橋剤はポリウレタンに結合されていることができ、その場合架橋剤は自己架橋するポリウレタンであるが、ポリウレタン中に溶解されている、または分散されている化合物でもあり得る。
【0096】
好適にはPU層は100gのポリウレタンに対して、0.0001〜0.1molの、好適には0.0005〜0.1mol、特に好ましくは0.001〜0.1molのカルボジイミド基を含む。とりわけカルボジイミド基の含有量は0.05mol/100gのポリウレタンより多くない。
【0097】
カルボジイミド基は、一般構造式−N=C=N−を有する。
【0098】
カルボジイミド基(略してカルボジイミド)を有する適切な化合物は一般的に、平均で1〜20、好適には1〜15、特に好ましくは2〜10のカルボジイミド基を含む。
【0099】
カルボジイミドの数平均モル質量Mnは、好適には100〜10000、特に好ましくは200〜5000、および極めて特に500〜2000g/molである。
【0100】
数平均分子量は、ジイソシアナートの末端基分析(すなわちカルボジイミド形成によるイソシアナート基の消費量、下記参照)によって測定するか、または末端基分析が不可能な場合は、ゲル透過クロマトグラフ(ポリスチレン標準、溶離剤としてTHF)によって測定する。
【0101】
カルボジイミド基は容易な方法で、2のイソシアナート基から二酸化炭素を脱離して得られる:
【化3】

【0102】
ポリイソシアナート、もしくはジイソシアナートから出発して、複数のカルボジイミド基、および場合によってはイソシアナート基、とりわけ末端位のイソシアナート基を有するカルボジイミドがこうして得られる。
【0103】
ジイソシアナートとして考慮されるのは例えば、ジイソシアナートX(NCO)2、[式中、Xは4〜12の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15の炭素原子を有する環式脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基、または7〜15の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基を表す]である。このようなジイソシアナートの例は、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランスの、シス/シスの、シス/トランス異性体、ならびにこれらの化合物から成る混合物である。
【0104】
特に好ましいのは、TMXDIである。
【0105】
末端位のイソシアナート基によって、カルボジイミド基を容易に親水性に、例えばアミノ酸またはヒドロキシ酸との反応によって変性することができる。親水性に変性されたカルボジイミドは当然、水性接着剤もしくは親水性ポリマーベースの接着剤とより容易に混合することができる。
【0106】
同様に容易にカルボジイミドは、イソシアナート基をポリマーの反応基、例えばアミノ基、またはヒドロキシル基と反応させることによって、ポリマーに結合されていることができる。
【0107】
従ってPU層は、カルボジイミドを例えば添加剤として、または結合された形態で、例えばポリウレタンへの、またはラジカル重合ポリマーへの結合によって含むことができる。
【0108】
PU層は好適には、相互にまたはカルボジイミド基と架橋反応をすることができるさらなる反応基を含む。
【0109】
考慮されるのは、例えばカルボキシル基、またはカルボキシラート基である。これらの反応性の基は好適には0.0001〜0.5mol、特に好ましくは0.0005〜0.5mol/100gポリウレタンである。
【0110】
カルボキシル基はまた、エステル交換反応によっても形成することができ、その結果ポリウレタン中にカルボキシル基の含有量が当初無くても架橋が起こる。
【0111】
PU層はさらなる添加剤、例えば湿潤剤、消泡剤、被膜形成助剤、増粘剤、チキソトロピー剤(例えば熱分解法シリカ)、または可塑剤、またはその他の助剤を含むことができる。
【0112】
シート全体に関して
本発明によるシートは、好ましい実施形態においてはPU層のみから成ることができる。この場合PU層は、自立した、引張強さのある被膜を形成するために充分な厚さを有さなければならない。シートの製造のためにポリウレタンを、場合によってはさらなる結合剤、または助剤とともに公知の方法で被膜化することができる。このために水性ポリウレタンから出発し、これをさらなる結合剤および添加剤と撹拌混合し、この水性組成物を不粘着性被覆(シリコーン紙またはシリコーンで被覆されたシート)が備えられている基板上にブレード塗布し、乾燥させる。得られた被膜は自立しており、かつ基板から除去することができる。
【0113】
本発明によるシートはまた、複層で形成されていることができる。とりわけ、このシートは2のPU層と、その間に存在する1の担体層とから成ることができる。PU層は外側にあり、かつ使用の際に支持体に対して両面の片側でその都度接着し、その結果接着されるべき支持体は他方、シートを介して相互に付着する。
【0114】
担体シートとしては任意のシートが考慮され、例えば繊維の担体、例えば繊維織布、または皮革、好ましくはポリマーシートである。
【0115】
本発明によるシートは、前述のあらゆる実施形態において場合により片面、または両面で接着剤、例えば通常の感圧接着剤によって、またポリウレタンの感圧接着剤によっても被覆されていることができる。
【0116】
本発明によるシートは、片面、または場合により両面で(剥離可能な)剥離ライナー、すなわち不粘着層、例えばシリコーン処理された紙、またはシリコーン処理されたシートでコートされていることができる。剥離ライナーは使用の前に除去する。
【0117】
感圧接着剤を有する被覆は、そのシートを後に使用する際、ポリウレタンの熱による活性化の前に既に当初から接着力を有し、かつ所望の位置で固定することができるという利点を有する。
【0118】
ポリウレタンの熱による活性化の際、ポリウレタンが溶融し、かつ感圧接着剤と混合され、その結果この場合ではポリウレタンを介した支持体の結合が行われる。
【0119】
しかしながら接着剤による被覆は、本発明の目的のためには必ずしも必要ではない。
【0120】
シートの厚さはとりわけ1μm〜3mm、特に好ましくは10μm〜500μm、極めて特に好ましくは10μm〜200μm、および特に好ましい実施形態においては30μm〜80μmである。
【0121】
このシートは、好適には(21℃で)0.3N/mm2超の、好ましくは1N/mm2超の、特に好ましくは10N/mm2超の引張強さを有する。
【0122】
このシートは熱により活性化可能である。熱により活性化可能とは、このシートが20℃で耐ブロッキング性である、すなわち粘着性ではないという特性であると理解される。より高い温度、とりわけ融点以上の温度への加熱により初めて、シートは粘着性になる、すなわちポリウレタンが溶融し、かつ接着剤として作用する。
【0123】
使用について
本発明によるシートを、とりわけ接着剤として、特に好ましくは貼り合わせ用接着剤として使用する。シートは接着剤として任意の支持体、例えば繊維、靴のソールなどに使用することができる。
【0124】
貼り合わせ用接着剤は、広面積の支持体を相互に、例えばラミネートを他のラミネートと、またはラミネートを成形部材と接合させる。
【0125】
この際ラミネートとは、10mm未満、とりわけ5mm未満、特に好ましくは0.5mm未満、極めて特に好ましくは3mm未満の厚さを有する任意の広面積の支持体と理解される。
【0126】
とりわけこれは、ポリマーシート、金属シート、合成繊維または天然繊維から成る不織布、被覆された、または被覆されていない紙、または木材から成るベニヤ、または模造木材(Holzimitat)であることができる。
【0127】
特に好ましいのは、ポリマーシート、例えばポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラートから成るシート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ塩化ビニル、ポリ酢酸エステル、または(熱により活性化できないポリウレタンから成る)ポリウレタンシートでもある。
【0128】
成形部材とは、任意の成形部材、例えば自動車内部部材、例えばダッシュボード、ドア内部ライニング、またはリアトランク、または家具または家具部材である。この成形部材はとりわけ木材またはプラスチック、例えばABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)であることができる。木材は例えば、中実の木材または合板であることができる。
【0129】
とりわけこれは、合成または天然繊維から成る、または結合剤によって成形部材に硬化されている木屑から成る成形部材であることができる。
【0130】
本発明によるシートは、好適には成形部材を任意のラミネートで貼り合わせるために使用され、その際
a)シートとラミネートを、このシートが成形部材とラミネートとの間に存在するように成形部材上に置き、
b)シートを例えば赤外線照射によって熱により活性化し、かつ
c)成形部材をラミネートで接着する。
【0131】
a)について
シートと貼り合わせるラミネートを別々に用意し、かつ切断する。このシートを接着前に既に切断(レーザーカット)、成形、または打ち抜き加工することもできる。
【0132】
シートとラミネートを既に接着より前に接合体に統合することもできる。基本的には本発明によるシートが成形部材に対して、ラミネートと成形部材との間に存在するように位置づける。
【0133】
別法としてはシートを事前に成形部材と統合するか、もしくはシートを既に成形部材に適合させるか、または貼り付けることができる。そうしてこのラミネートを後の任意の時点で供給し、かつシート上に置く。
【0134】
b)について
熱による活性化を、例えばIR照射、またはマイクロウェーブ照射によって行うことができる。場合によってはまた、成形部材を相応して加熱することもでき、この場合シートに接触しながら、熱が伝達される。
【0135】
本発明によるシートを、好適にはポリウレタンの融点(上記参照)以上の温度、特に好ましくは40〜150℃の温度に加熱する。本発明によるシートにおける温度は、好適には20〜200℃、特に好ましくは30〜180℃、およびとりわけ40〜150℃である。
【0136】
c)について
接着を好適には加圧下で行い、このために例えば接着されるべき部材を0.05〜5N/mm2でプレス加工することができる。
【0137】
別法として、接着を減圧(真空)下で深絞り成形工程においても行うことができる。
【0138】
この際、接着と同時に接着されるべきラミネートを場合によっては所望の形態にし、その結果成形部材の形態に適合されているようにする。
【0139】
上記の方法を、とりわけ連続的に実施することもできる。このために方法工程a)においてシートとラミネートを貯蔵ロールから連続的に巻出し、場合によっては一緒にし、かつ連続的に実施される工程において場合によっては切断するか、またはそうでなければ準備されたままで、かつ引き続き成形部材上に置き、かつ接着することができる。
【0140】
前述の方法を、2の作業工程で行うこともできる。第1の作業工程では本発明によるシートを、例えば加熱されたローラーまたはプレートを用いて接着されるべき支持体に施与する。その直後、またはかなり後にも(シートは貯蔵安定性である)行うことができる第2の作業工程では、第2の支持体との接着もしくは貼り合わせをポリウレタンの熱による活性化によって実施することができる。
【0141】
本発明による方法は、支持体の相互の接着のための、とりわけラミネートによる成形部材の貼り合わせのための簡便な方法である。接着剤を本発明によるシートの形態で任意の方法で使用することができるので、様々なシートの貯蔵保持を軽減することができる。事前の被覆および様々なシートの貯蔵は、もはや必要ではない。
【0142】
得られる生成物は、高い強度、および良好な機械的特性を有する。
【0143】
実施例
50μmの厚さのシートを製造した。このシートは以下の混合物の被膜化によって得た(水を含む、そのままの(telquel)質量部)。
実施例A:200質量部のLuphen(登録商標) D DS3585X、ポリエステルベースのポリウレタン
実施例B:150質量部のLuphen D DS3585X/50質量部のAcronal DS 3502、ポリアクリラート分散液
実施例C:150質量部のLuphen D DS3585X/50質量部のAirflex EP 17、エチレン/酢酸ビニルのコポリマー
実施例D:200質量部のLuphen D DS3585X/7質量部のBasonat DS 3582(カルボジイミド架橋剤)
実施例E:150質量部のLuphen D DS3585X/50質量部のAcronal DS 3502/5質量部のBasonat DS 3582
実施例F:150質量部のLuphen D DS3585X/50質量部のAirflex EP 17/5質量部のBasonat DS 3582
【0144】
これらの無担体のポリウレタン被膜を使用して、PVC貼り合わせシートを用いてMDF板から接合体を製造し、この際市販の貼り合わせプレス機で本発明によるPUシートをMDF板上に、かつその上にPVCシートを置き、かつ45秒間95℃で(上部チークプレート(Pressbacke)の温度)貼り合わせた。
【0145】
得られた接着性の品質を試験するために、冷却された積層体を温度上昇させる加熱試験で試験した。このためにMDF/PVC積層体を加熱棚に垂直に入れ、1kgの質量をPVCシートの上方自由末端に対して180゜の角度が生じるように吊るし、かつ炉を30分/5℃の段階で加熱した。評価されるのは、PVCシートが加重下で、および増加する熱負荷において、MDF板からどれくらい剥がれるかということである(移動距離(Ablaufstrecke))。記載されているのは、移動距離が最大20mmの際の温度である。
実施例A:40℃
実施例B:50℃
実施例C:60℃
実施例D:55℃
実施例E:55℃
実施例F:75℃
【0146】
すべての場合において、PVCシートとMDF板との良好な接着が得られた。カルボジイミド架橋の肯定的な効果を認めることができる。
【0147】
さらには、自動車内部構造において貼り合わせのために使用される軟質PVCシートを、ABSの試験体と接着させた。ABSは、ドア側面部材の製造のための典型的なプラスチックである。平面プレスでの活性化温度は、約80℃であった。貼り合わせ圧力は0.5bar。プレス時間は1分。ABSの試験体を約70℃の温度に予熱し、本発明によるシートをABSと軟質PVCシートとの間に置き、かつその後上記のプレス条件でプレス加工した。
【0148】
90の軟質PVCシートの剥離角度で、かつ90℃で実施した相応する剥離試験において、以下の値を測定した。
実施例D:15N/5cm
実施例E:18N/5cm
実施例F:21N/5cm
【0149】
これらの値は、これまでの通常の貼り合わせ用接着剤によっても達成される範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2の支持体を接着するためのシートの使用において、前記シートの30質量%超が、熱により活性化可能なポリウレタンから成る1の層(略してPU層と呼ぶ)を含むことを特徴とする、2の支持体を接着するためのシートの使用。
【請求項2】
前記ポリウレタンの60質量%超が、ジイソシアナート、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、またはそれらの混合物から選択される合成成分から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリウレタンの10質量%超が、ポリエステルジオールから構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリウレタンが30〜150℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記PU層がポリウレタンのための架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記PU層が、100gのポリウレタンに対して0.0001〜0.1molのカルボジイミド基を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記PU層が、ポリウレタンの他に場合によってはさらなるポリマーの結合剤、例えばラジカル重合によって得られるポリマー、および助剤、例えば湿潤剤を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記シートがPU層から成り、かつPU層が場合によっては片面で、または両面で感圧接着剤またはプライマー、またはその両方により被覆されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記シートが2のPU層とその間に存在する担体層とから成り、かつ外側にあるPU層が場合によっては感圧接着剤、またはプライマーによって被覆されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記シートの厚さが1μm〜3mmであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記シートを貼り合わせ用接着剤として使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
成形部材を任意のラミネートで貼り合わせるための方法において、
a)請求項1から10までのいずれか1項に記載のシートと、貼り合わせるラミネートを、前記シートが成形部材とラミネートとの間に存在するように成形部材上に置き、
b)前記シートを、例えば赤外線照射によって熱により活性化し、かつ
c)前記成形部材をラミネートと接着させる
ことを特徴とする、成形部材を任意のラミネートで貼り合わせるための方法。
【請求項13】
前記方法を連続的に実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法を、減圧下、例えば深絞り成形工程において、または高められた圧力下で実施することを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用、または方法によって得られる製品、とりわけ貼り合わせされた成形部材。
【請求項16】
シートにおいて、請求項1から7までのいずれか1項に記載のPU層から成り、かつこのPU層が場合によっては片面で、または両面で感圧接着剤またはプライマー、またはその両方により被覆されていることを特徴とする、シート。
【請求項17】
シートにおいて、請求項1から7までのいずれか1項に記載の2のPU層と、その間に存在する担体層とから成り、かつ外側にあるPU層が場合によっては感圧接着剤または1のプライマー、またはその両方により被覆されていることを特徴とする、シート。

【公表番号】特表2009−536234(P2009−536234A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508357(P2009−508357)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054339
【国際公開番号】WO2007/128789
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】