説明

熱交換器およびそれを用いたヒートポンプ給湯機

【課題】熱交換器の配管長さを延伸することなく、熱交換性能に優れた管式の熱交換器を提供する。
【解決手段】内部に流体A2が流れる第1の管3と、前記第1の管3内に配設され内部に流体B4が流れる複数の第2の管5と、前記第1の管3の外周に配設し、内部に流体B4が流れる第3の管7とを備え、前記第1の管3の外周に凹部8aを設け、前記凹部8aに前記第3の管7を配設するとともに、前記第3の管7の長手方向の軸中心を、前記第1の管3の外周よりも内方側に配設したことを特徴とするもので、第1の管3の外周で第3の管を包含する形態となり密着する面積をさらに増加することができ、高効率化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調、給湯等の機器、特にヒートポンプ式の給湯機などにおいて、水等の流体と冷媒等の2つの流体が熱交換するための熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、内部に冷媒用流路が形成された冷媒管と、内管の外側に設けられ内管との間に水用流路が形成された水管とから構成された2重管を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4、図5は、特許文献1に記載された従来の熱交換器を示すものである。
【0004】
図4、5で示すように、この熱交換器101は2重管式の熱交換器であり、内部に冷媒用流路102が形成された冷媒管103と、冷媒管103の外側に設けられ、冷媒管103との間に水用流路104が形成された銅製の水管105とから構成され、本実施の形態の場合には冷媒管103が2本設けられている。冷媒管103は、銅製の二酸化炭素が流れる管106と、二酸化炭素が流れる管106の外周に設けられた銅製の漏洩検知管107とから構成され、二酸化炭素が流れる管106を拡管するか、或いは、漏洩検知管107を縮管することにより、二酸化炭素が流れる管106と漏洩検知管107は密着されている。
【0005】
また、漏洩検知管107の内面には、配管方向に沿って多数の漏洩検知溝108が形成されており、漏洩検知溝108内には空気層が形成されている。さらに、漏洩検知溝108は外部に設けられた漏洩検知センサー(図示せず)に接続されており、冷媒管103又は水管105から漏洩した冷媒又は水は漏洩検知溝108を介して外部の漏出し、前記漏洩検知センサーにより検知されるようになっている。
【0006】
以上のように構成された熱交換器について、以下その動作を説明する。
【0007】
熱交換器101は、冷媒管103と水管105の2重管により形成され冷媒管103の外周が水と、冷媒と水とが熱伝導性の良い銅製で且つ密着された二酸化炭素が流れる管106と漏洩検知管107を介して熱交換されるようになっているため、冷媒管103が水との接触面積が大きくとれ、熱交換効率を向上させることできる。
【0008】
また、例え、腐食等により二酸化炭素が流れる管106や漏洩検知管107に孔や亀裂が生じ、冷媒や水が漏洩したとしても、その漏洩を漏洩検知溝108を介して確実に検知することができ、さらに、冷媒と水との間には二酸化炭素が流れる管106と漏洩検知管107により2重に境界壁が形成されており、いずれか一方に孔や亀裂等の欠陥が発生したしても、冷媒と水が互いに混入し合うおそれがない。
【0009】
したがって、熱交換器101の信頼性を高く維持することができる。また、熱交換器101が2重管式となっているため、曲げ加工が容易にでき、製造コストの低減化が可能となると共に、コンパクト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−69620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成では、熱交換器101の性能に限度があり、性能を向上させるためには、冷凍サイクルにおいて圧縮機(図示せず)の冷媒循環量を増加させ、さらに熱交換器101の配管長さを延長する等の手法により、熱交換器101の配管の管内面積を大きくして性能を向上させなければならなかった。
【0012】
このような手法では、熱交換器101の大きさが大きくなってしまい、ひいては、ヒートポンプ式給湯機の場合であると設置スペースが大きくなってしまうという課題を有していた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、熱交換器の管長を延長させることなく熱交換性能を向上させることができる管式の熱交換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の熱交換器は、内部に流体Aが流れる第1の管と、前記第1の管内に配設され内部に流体Bが流れる複数の第2の管と、前記第1の管の外周に配設し、内部に流体Bが流れる第3の管とを備え、前記第1の管の外周に凹部を設け、前記凹部に前記第3の管を配設するとともに、前記第3の管の長手方向の軸中心を、前記第1の管の外周よりも内方側に配設したことを特徴とするもので、第1の管の外周で第3の管を包含する形態となり密着する面積をさらに増加することができ、高効率化が図られる。
【0015】
また、複数本の第2の管の外壁と第1の管の内壁の両方から流体Aを加熱することできるので、流体Aと接する伝熱面積が増加することとなり、高効率化が図られる。
【0016】
さらに、流体Aに対する第2の管の外壁、第1の管の内壁における熱流束を小さく抑えることができるので、流体Aが水の場合、第2の管の外壁近傍、第1の管の内壁近傍での水温の局所的な急上昇が抑えられ、壁面近傍で流速が遅い部分での水温の上昇によるカルシウムの析出を極力抑制して、壁面への付着を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱交換器の管長を延長させることなく熱交換性能を向上させることができる管式の熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における熱交換器の斜視図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】従来を示す熱交換器の上面図
【図4】図6のB−B断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、内部に流体Aが流れる第1の管と、前記第1の管内に配設され内部に流体Bが流れる複数の第2の管と、前記第1の管の外周に配設し、内部に流体Bが流れる第3の管とを備え、前記第1の管の外周に凹部を設け、前記凹部に前記第3の管を配設するとともに、前記第3の管の長手方向の軸中心を、前記第1の管の外周よりも内方側に配設したことを特徴とするもので、第1の管の外周で第3の管を包含する形態となり密着する面積をさらに増加することができ、高効率化が図られる。
【0020】
また、複数本の第2の管の外壁と第1の管の内壁の両方から流体Aを加熱することできるので、流体Aと接する伝熱面積が増加することとなり高効率化が図られる。
【0021】
さらに、流体Aに対する第2の管の外壁、第1の管の内壁における熱流束を小さく抑えることができるので、流体Aが水の場合、第2の管の外壁近傍、第1の管の内壁近傍での水温の局所的な急上昇が抑えられ、壁面近傍で流速が遅い部分での水温の上昇によるカルシウムの析出を極力抑制して、壁面への付着を抑えることができる。
【0022】
第2の発明は、流体Aと流体Bとは対向流となるように構成したことを特徴とする流体Aと流体Bを対向流としたことにより、流体Aと流体Bの平均的な温度差を大きくして熱交換量を大きくでき、高効率化が図られる。
【0023】
第3、4の発明は、流体Aを水とし、流体Bを二酸化炭素としたもので、ヒートポンプ給湯機用の水−冷媒熱交換器として使用することで、高いヒートポンプ効率を得ることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における熱交換器の要部を示す一部を切除した斜視図である。図2は、同実施の形態1における図1のA−A線による断面図である。
【0026】
図1から図2において、熱交換器1(図示せず)は二重管式であり、内部を水(流体A)2が流れる銅製の本発明の第1の管である水管3と、水管3と同様に銅製であって、水管3内に配設され、内部を冷媒である二酸化炭素(流体B)4が流れる第2の管である2本の冷媒管5をから構成されている。
【0027】
水管3の外周方向には離間し管軸方向に延びる所定深さの凹部8を3カ所設けており、内部に冷媒である二酸化炭素4が流動する銅製の3本の外管7が凹部8と熱的に密着した構成である。
【0028】
この時、凹部8の凹みR形状は、外管7の外径Rに合致させることで、外管7と水管3の密着する面積を多くすることができる。そして、外管7の管の長手方向の中心軸は、水管3の外周よりも内方側に配置されており、水管3の外周で外管7を包含する形態となっている。
【0029】
冷媒管5は、周知の如く二酸化炭素が流れる管6aと二酸化炭素が流れる管6aの外周に設けられた漏洩検知管6bとから構成されている。二酸化炭素が流れる管6aと漏洩検知管6bは二酸化炭素が流れる管6aを拡管するか、あるいは、漏洩検知管6bを縮管することにより密着一体化されているものである。
【0030】
そして、冷媒管5は、図1に示す如く互いに螺旋状にねじり合わされ、その螺旋の中心が、水管3の軸心とほぼ同軸となるように水管3に内包されている。したがって、水管3内において、冷媒管5との間を水2が流動する。しかもその流れは、冷媒管5の螺旋に沿った旋回流となる。
【0031】
さらに、水管3の両端、および冷媒管5の両端には、それぞれ流入口3a(図示せず)、5a(図示せず)と流出口3b(図示せず)、5b(図示せず)が設けられており、冷媒管5の冷媒である二酸化炭素4の流入口5a、流出口5bと、水管3の水2の流入口3
a、流出口3bは、各々の流れが対向するように方向付けて設けられている。
【0032】
以上のように構成された熱交換器について、以下その動作を説明する。
【0033】
まず、冷媒管5と外管7の内部を冷媒である二酸化炭素4が流動し、水管3と冷媒管5との間の環状部を水2が対向して流れ、二酸化炭素が流れる管6aと漏洩検知管6bの二重壁を介して冷媒である二酸化炭素4と水2が熱交換する。さらに、外管7から水管3の壁を通じて冷媒である二酸化炭素4と水が熱交換する。
【0034】
外管7の長手方向の中心軸は、水管3の管の外周よりも内方側に、水管3の凹部8aによって包含された構成であるので、2本の冷媒管5の外壁と水管3の内壁の両方から水2を加熱することでき、水2と接する伝熱面積が大きく増加することとなり、高効率化が図られる。
【0035】
水管3の外周方向に離間し管軸方向に延びる所定深さの凹部8の凹みR形状は、外管7の外径Rに合致させることで、外管7と水管3がより密着することとなり更なる高効率化が図られる。
【0036】
また、水2に対する冷媒管5の外壁、水管3の内壁における熱流束を小さく抑えることができるので、冷媒管5の外壁近傍、水管3の内壁近傍での水温の局所的な急上昇が抑えられ、壁面近傍で流速が遅い部分での水温の上昇によるカルシウムの析出を極力抑制して、壁面への付着を抑えることができる。
【0037】
また、この形態のものは、比較的製造設備が高価な炉中ロウ付け工法ではなく、比較的製造設備が安価なかしめ工法で製造することができる。
【0038】
ここで、冷媒である二酸化炭素4と水2の間において、漏洩検知管6bの内面に漏洩検知溝(図示せず)があり冷媒である二酸化炭素4と水2が漏洩検知溝を介して漏出し、検知センサー(図示せず)にて検知可能なように構成されていることで、安全性を確保する二重壁を備えつつ十分な接触面積を確保するため高い熱伝導性を得る。
【0039】
さらに、冷媒管5、外管7内の冷媒である二酸化炭素4と水管3の水2が対向流となっているため、効率のよい熱交換を実現することができ、ヒートポンプ給湯機用の水冷媒熱交換器として使用することで、高いヒートポンプ効率を得ることができる。
【0040】
そして、2本の冷媒管5を互いに螺旋状にねじり合わせて水管3内の水2全体を旋回流にすることにより、水2の流れを乱流攪乱し、水管3の水2に冷媒である二酸化炭素4の熱が拡散される。
【0041】
さらに、外管7が水管3の外周にロウ付け密着していることにより、水2に対し冷媒管5の外壁と水管3の内壁の両方から水を加熱することでき高効率化が図られるとともに、水2に対する冷媒管5の外壁、水管3の内壁における熱流束を小さく抑えることができる。
【0042】
従って、冷媒管5の外壁近傍、水管3の内壁近傍での水温の局所的な急上昇が抑えられ、壁面近傍で流速が遅い部分での水温の上昇によるカルシウムの析出を極力抑制され、冷媒管5の外壁、水管3の内壁への付着を抑えることができる。
【0043】
尚、本発明の実施の形態1では、冷媒管5の本数を3本としているが、2本もしくは4本以上でも同様な効果を得られる。
【0044】
尚、本発明の実施の形態1では、冷媒管5、水管3、外管7は銅製だが、真ちゅう、SUS、耐食性を持った鉄、アルミ合金等でも同様な効果を得られる。
【0045】
尚、本発明の実施の形態1では、冷媒管5内、外管7を流通する冷媒を冷媒である二酸化炭素としたが、R410A等の冷媒でも同様な効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる熱交換器は、管長を長くして内管の伝熱面積を増加させることなく、熱交換器の熱交換性能を向上させることができるもので、冷媒である二酸化炭素を用いた超臨界ヒートポンプ式給湯器や、暖房用ブラインを加熱する超臨界ヒートポンプ装置、さらには、家庭用、業務用の空気調和機、あるいはヒートポンプによる乾燥機能を具備した洗濯乾燥機、穀物貯蔵倉庫等のヒートポンプ機器の他に、燃料電池等の熱交換用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 熱交換器
2 水(流体A)
3 水管(第1の管)
4 二酸化炭素(流体B)
5 冷媒管(第2の管)
6a 管
6b 漏洩検知管
7 外管(第3の管)
8a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体Aが流れる第1の管と、前記第1の管内に配設され内部に流体Bが流れる複数の第2の管と、前記第1の管の外周に配設し、内部に流体Bが流れる第3の管とを備え、前記第1の管の外周に凹部を設け、前記凹部に前記第3の管を配設するとともに、前記第3の管の長手方向の軸中心を、前記第1の管の外周よりも内方側に配設したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
流体Aと流体Bとは対向流となるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
流体Aを水、流体Bを二酸化炭素としたことを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器を搭載したヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261614(P2010−261614A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110562(P2009−110562)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】