説明

熱交換器およびボイラ給水システム

【課題】三つ以上の各流路を流れる流体間で熱交換を行うことが可能であって、熱交換効率の高い熱交換器を提供する。
【解決手段】第1流体が流動するシェル1の内部に、第2流体が流動する伝熱管2を収容して、第1流体と第2流体との間での熱交換を行わせる熱交換器であって、伝熱管2を、外管2aに内管2bを挿通した多重管に構成し、外管2aと内管2bとの間に形成された最外流路に第2流体を流動させると共に、内管2bの内部に第1流体を流動させ、外管2aと内管2bとの間に形成された最外流路を流動する第2流体が、外管2aの外側を流動する第1流体と、内管2b内を流動する第1流体とによって内外から熱交換されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の冷却や加熱などに利用される熱交換器およびそれを用いたボイラ給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の代表的なものとして多管式熱交換器があり、この多管式熱交換器は、大径の胴管(シェル)の内部に、多数本の小径の伝熱管(チューブ)を収容して、胴管内を流れる流体と伝熱管内を流れる流体との間で熱交換を行わせるものであり、シェルアンドチューブ式熱交換器とも呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−111278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記多管式の熱交換器においては、伝熱管として単純な円管が用いられており、伝熱管の単位長さ当たりの伝熱面積が管径によって一義的に定まることになり、大きい熱交換容量を得るためには伝熱管の数を増やしたり、伝熱管の長さを長くする必要があり、熱交換器全体の大型化を招く一因となるものであった。
【0005】
更に、従来の多管式熱交換器では、胴管の入口から胴管内を経由して胴管の出口に至る流路と、伝熱管の入口から伝熱管内を経由して伝熱管の出口に至る流路の二つの流路を流れる流体間でしか熱交換を行うことができず、三つ以上の各流路を流れる流体間で熱交換を行うといったことができなかった。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、三つ以上の各流路を流れる流体間で熱交換を行うことが可能であって、高い熱交換効率を確保し、大型化することなく大容量の熱交換を行うことができる熱交換器およびそれを用いたボイラ給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明の熱交換器は、第1流体が流動するシェルの内部に、第2流体が流動する複数の伝熱管を収容して、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う熱交換器であって、前記伝熱管を、外側の管に内側の管を挿通して内外方向に複数流路が形成される多重管とし、前記多重管内の前記複数流路の最も外側に形成される最外流路に前記第2流体を流動させると共に、前記最外流路よりも内側に形成される内側流路に第1流体を流動させる。
【0009】
前記第1流体を流動させる前記内側流路は、前記最外流路と隣合う直近の流路であるのが好ましいが、最外流路との間に別の流路が介在してもよい。
【0010】
本発明の熱交換器によると、シェルの内部に収容される伝熱管は、複数流路が形成された多重管であるので、シェル内部の流路と多重管内の複数流路との三つ以上の各流路を流動する流体間で熱交換を行うことができ、第1流体が流動するシェルの内部に収容された多重管の最外流路を流動する第2流体は、多重管の外側を流動する第1流体と、多重管の内側流路を流動する第1流体とによって内外から熱交換されることになり、大きい伝熱面を介して効率よく熱交換される。
【0011】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記多重管が、外管に内管を挿通した二重管であって、前記外管と内管との間に形成される流路を前記最外流路とし、前記内管内部を前記内側流路としている。
【0012】
この実施態様によると、二重管の外管と内管との間に形成される流路である最外流路を流れる第2流体は、二重管の外側を流動する第1流体と、内側流路である内管内部を流れる第1の流体とによって挟まれて内外から熱交換されることになり、大きい伝熱面を介して効率よく熱交換される。
【0013】
(3)本発明の別の実施態様では、前記外管が円管であり、前記外管に挿通される前記内管は、その管壁の伝熱面積を拡張させた伝熱面積拡張管である。
【0014】
伝熱面積拡張管は、管壁に伝熱フィンを設けて伝熱面積を拡張させたフィン付管であってもよいし、管壁を、例えば、周方向複数箇所で放射状に伸張させて伝熱面積を拡張した異形断面管などであってもよい。
【0015】
この実施態様によると、二重管における内管の伝熱面積が一層大きいものとなり、さらに効率の良い熱交換を行うことができる。
【0016】
(4)本発明の別の実施態様では、前記外管および内管が円管であり、前記外管と内管との間に形成される環状の流路には、管壁の伝熱面積を拡張させた伝熱面積拡張管を挿通している。
【0017】
この実施態様によると、外管と内管との間に形成される環状の流路で流動する流体の熱を、伝熱面積拡張管を介して効率よく外管および内管に伝達することができる。
【0018】
(5)本発明の更に別の実施態様では、前記伝熱管は、前記内管が前記外管に比べて管軸方向に長く、管軸方向の中央の二重管部分と、管軸方向の両端で前記二重管部分から内管がそれぞれ突出する内管部分とを有し、前記シェルは、前記二重管部分を収容すると共に、前記第1流体の流入口および流出口を有する第1シェルと、管軸方向の一端側の前記内管部分を収容すると共に、前記外管と内管との間に形成される流路へ前記第2流体を流入させる第2シェルと、管軸方向の他端側の前記内管部分を収容すると共に、前記外管と内管との間に形成される流路から前記第2流体が流出する第3シェルと、前記内管の一端側開口が臨み内管へ第1流体を流入させる第4シェルと、前記内管の他端側開口が臨み内管から第1流体が流出する第5シェルとを備えている。
【0019】
前記各シェルは、前記二重管部分の端部や前記内管部分の端部を支持する管板や仕切り板などによって気密に区画されるのが好ましい。
【0020】
この実施態様によると、複数の伝熱管の二重管部分を収容する第1シェルには、流入口から第1流体が流入して第1シェル内を流動して流出口から流出し、前記二重管の内管には、第4シェルから第1流体が流入して内管を流動して第5シェルに流出する一方、前記二重管部分の内管と外管との間に形成される流路には、第2シェルから第2流体が流入して内管と外管との間に形成される流路を流動して第3シェルへ流出する。したがって、第2流体が、二重管の内管と外管との間に形成される流路を流動する際に、第2流体は、二重管の内管を流動する第1流体と外管の外側を流動する第1流体とによって内外から効率的に熱交換が行われる。
【0021】
(6)本発明の別の実施態様では、前記第1流体よりも高温の前記第2流体を、前記第2シェルから前記外管と内管との間に形成される流路へ流入させて第3シェルから流出させる一方、前記第1シェルの前記流入口から該第1シェル内を経由して前記流出口へ至る流路および前記第4シェルから前記内管を経由して前記第5シェルへ至る流路の二つの流路の内のいずれか一方の流路に、第1流体としての水を流入させて温水を流出させ、他方の流路に、第1流体としての水を流入させて蒸気を流出させるようにしている。
【0022】
この実施態様によると、外管と内管との間に形成される流路を流れる高温の第2流体と、外管の外側または内管を流れる第1流体としての水との間接熱交換によって第2流体を冷却すると共に、水を加熱して温水を生成する一方、前記第2流体と、内管または外管の外側を流れる第1流体としての水との間接熱交換によって第2流体を冷却すると共に、水を加熱して蒸気を生成することができる。
【0023】
(7)本発明のボイラ給水システムは、原動機の動力によって駆動される圧縮機と、ボイラへの給水路または前記ボイラへの給水を貯留するタンクへの給水路に設けられて、前記ボイラまたは前記タンクへの給水が前記第1流体として供給される一方、前記給水と間接熱交換して冷却される被冷却流体が、前記圧縮機から前記第2流体として供給される本発明に係る熱交換器とを備えている。
【0024】
本発明のボイラ給水システムによると、原動機の動力によって駆動される圧縮機からの圧縮空気等の被冷却流体を、ボイラまたはタンクへの給水によって冷却するので、圧縮機で発生する圧縮熱を回収してボイラ給水を予熱することができ、ボイラの燃料消費を削減することができる。
【0025】
しかも、高い熱交換効率の本発明の熱交換器によって、ボイラまたはタンクへの給水と圧縮機からの圧縮空気等の被冷却流体との間で熱交換を行うので、圧縮熱の回収率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明の熱交換器によれば、伝熱管における単位長さあたりの伝熱面積が大きく、効率の高い熱交換を行うことができ、大型化することなく大容量の熱交換を行うことが可能となると共に、三つ以上の各流路を流動する流体間で熱交換を行うことができる。
【0027】
また、本発明のボイラ給水システムによれば、圧縮機で生じる圧縮熱を、本発明の熱交換器によって効率的に回収してボイラの給水を予熱してボイラの燃料消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の一実施形態の熱交換器の縦断側面図である。
【図2】図2は図1の伝熱管の一方の端部付近を拡大した縦断側面図である。
【図3】図3は図2のa-a線に沿う断面図である。
【図4】図4は伝熱管の一方の端部の斜視図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態の伝熱管の図4に対応する斜視図である。
【図6】図6は本発明の他の実施形態の図2に対応する縦断側面図である。
【図7】図7は図6のb−b線に沿う断面図である。
【図8】図8は本発明の更に他の実施形態の熱交換器の図1に対応する縦断側面図である。
【図9】図9は本発明の一実施形態のボイラ給水システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る熱交換器の縦断側面図であり、図2は、図1の伝熱管2の一方の端部付近を拡大した縦断側面図であり、図3は、図2のa−a線に沿う断面図であり、図4は、伝熱管の一方の端部を示す斜視図である。なお、伝熱管2の両端部は、対称な構造であるので、図2〜図4では、一方の端部である図1の圧縮空気流入シェル1B側の端部を示している。
【0031】
この実施形態の熱交換器は、例えば、後述のボイラ給水システムに使用されるものであって、高温の圧縮空気を冷却水で冷却するものである。
【0032】
この熱交換器は、基本的には、図1に示すように、円管状の大径のシェル(胴管)1の内部に、小径の多数本の伝熱管2を収容し、シェル1に供給される第1流体としての冷却水と、伝熱管2を流動する第2流体としての高温の圧縮空気との間で熱交換を行う多管式の熱交換器である。シェル1は、円管状に限らず、直方体状やその他の形状であってもよい。
【0033】
前記シェル1は、直線状の伝熱管2を収容する第1シェルとしての熱交換シェル1Aと、その両端に第1,第2管板3,4を介してそれぞれ連設される短胴の第2シェルとしての圧縮空気流入シェル1B及び第3シェルとしての圧縮空気流出シェル1Cと、圧縮空気流出シェル1Cの外端に第3管板5を介して連設される第4シェルとしての冷却水流入シェル1Dと、圧縮空気流入シェル1Bの外端に第4管板6を介して連設される第5シェルとしての冷却水流出シェル1Eとを備えている。
【0034】
熱交換シェル1Aの両端近くの上部には、矢符F1で示すように冷却水が流入する第1冷却水入口7iと、熱交換シェル1A内を流動して熱交換した冷却水が矢符F2で示すように流出する第1冷却水出口7eとがそれぞれ設けられている。熱交換シェル1Aでは、該シェル1A内を流動する冷却水と、伝熱管2内を流動する高温の圧縮空気との間で熱交換を行う。
【0035】
圧縮空気流入シェル1Bの上部には、第2流体として高温の圧縮空気が矢符F3で示すように流入する圧縮空気入口8iが設けられており、圧縮空気流出シェル1Cの上部には、冷却後の圧縮空気が矢符F4で示すように流出する圧縮空気出口8eが設けられている。
【0036】
冷却水流入シェル1Dは、管軸方向の一方側(図1の左方側)が縮径した漏斗形状をなしており、その縮径した端部は、第1流体として冷却水を矢符F5で示すように流入させる第2冷却水入口9iとなっている。冷却水流出シェル1Eは、管軸方向の他方側(図1の右方側)が縮径した漏斗形状をなしており、その縮径した端部は、冷却水を矢符F6で示すように流出させる第2冷却水出口9eとなっている。
【0037】
この実施形態の熱交換器が使用される後述のボイラ給水システムでは、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから流入する冷却水が、熱交換シェル1A内を流動して第1冷却水出口7eから流出した後、再び、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから流入し、伝熱管2内を流動して冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから流出する。
【0038】
この実施形態の伝熱管2は、銅製の円管からなる外管2aに、外管2aよりも管軸方向に長い銅製の内管2bを挿通した二重管に構成されており、管軸方向の中央が二重管部分となり、管軸方向の両端が、外管2aから内管2bが突出した内管部分となっている。なお、外管2a及び内管2bの材質は、銅に限らず、流体の特性や条件などに応じて、鋼、ステンレス、チタン等の他の金属材料を選択することができる。
【0039】
内管2bの外管2a内に挿通される部分は、図3及び図4に示されるように、その管壁が、周方向複数箇所(この例では六ケ所)で放射状に広げられて伝熱面積を拡張させた花弁状の伝熱面積拡張管2b1となっている。内管2bの外管2aから突出した両端部分は、図2及び図4に示されるように、外管2aより小径の円管2b2と、この円菅2b2の部分と大径の伝熱面積拡張管2b1の部分とを滑らかに繋ぐテーパー管2b3となっている。
【0040】
この実施形態では、内管2bは、その伝熱面積拡張管2b1の部分の六ヶ所の各外周頂部が外管2aの内周面に接触するように外管2aに挿通支持されているが、内管2bは外管2aの内周面に接触していなくてもよい。なお、内管2bにおける伝熱面積拡張管2b1の花弁状の外周頂部は、六つに限ることはなく、要求される熱交換容量等に応じて任意に選択すればよい。また、伝熱面積拡張管2b1は、花弁状に限らず、例えば、外壁にフィンを設けて伝熱面積を拡張させたフィン付管としてもよい。また、内管2bは、三角形、矩形、多角形、楕円形等の他の異形断面管としてもよい。
【0041】
伝熱管2の内管2bの両端は、図1に示すように、第3,第4管板5,6にそれぞれ気密に挿通支持されており、内管2bの両端の各開口が、冷却水流入シェル1Dと冷却水流出シェル1Eとにそれぞれ臨んでいる。すなわち、冷却水流入シェル1Dと冷却水流出シェル1Eとが、内管2bを介して連通されており、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから流入する冷却水が、内管2bの内部を流動して冷却水流出シェル1Eに流出して第2冷却水出口9eから排出される。
【0042】
伝熱管2の中央の二重管部分が、熱交換シェル1A内に収容されて、外管2aの両端が第1,第2管板3,4に気密に挿通支持されており、伝熱管2の両端の内管部分が、圧縮空気流入シェル1Bと圧縮空気流出シェル1Cとに収容されている。圧縮空気流入シェル1Bと圧縮空気流出シェル1Cとは、最外流路としての外管2aと内管2bとの間に形成される流路を介して連通されている。圧縮空気流入シェル1Bの圧縮空気入口8iから流入する高温の圧縮空気が、外管2aと内管2bとの間に形成される流路を流動して圧縮空気流出シェル1Cから流出して圧縮空気出口8eから排出される。
【0043】
冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iは、管軸方向(図1の左右方向)の一方側(図1の左方側)に設けられ、冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eは、管軸方向の他方側(図1の右方側)に設けられており、第2冷却水入口9iから流入する冷却水は、伝熱管2の内管2bの内部を管軸方向の一方側から他方側に向かって流動する。
【0044】
これに対して、圧縮空気流入シェル1Bの圧縮空気入口8iは、管軸方向の前記他方側に設けられ、圧縮空気流出シェル1Cの圧縮空気出口8eは、管軸方向の前記一方側に設けられており、圧縮空気入口8iから流入する高温の圧縮空気は、外管2aと内管2bとの間に形成される流路を管軸方向の前記他方側から前記一方側に向かって流動する。すなわち、内管2bの内部を流れる冷却水と、外管2aと内管2bとの間に形成される流路を流れる圧縮空気とは、対向流となっている。なお、冷却水と圧縮空気とが同一方向に流れる並流式としてもよい。
【0045】
この実施形態の熱交換器では、圧縮空気流入シェル1Bの圧縮空気入口8iから流入した高温の圧縮空気は、図3に示すように伝熱管2における外管2aと内管2bとの間において周方向六ヶ所で区画形成された流路rを通って圧縮空気流出シェル1Cに向かって流動する。このとき、高温の圧縮空気は、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから流入して熱交換シェル1A内を流動して第1冷却水出口7eへ向かう外管2aの周囲の冷却水と、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから流入して内管2b内部を流動して第2冷却水出口9eへ向かう冷却水とによって内外から冷却される。
【0046】
この場合、外管2aの周面と内管2bの周面とがそれぞれ伝熱面として機能し、かつ、断面が花弁状に形成された伝熱面積拡張管2b1の周面積が著しく大きいものとなっているために、伝熱管2における単位長さあたりの伝熱面積が、外管2aと同径の単管で構成された旧来の伝熱管の伝熱面積に比べて、例えば、2倍程度大きくなり、小型でありながら効率の高い熱交換が可能となる。
【0047】
また、本発明の他の実施形態として、内管2bの伝熱面積拡張管2b1の部分における外管2aの内周面との接触面積を、図3に比べて大きくすることによって、接触箇所を介して外管2aと内管2bとの間で熱交換が行われることになり、外管2aと内管2bとの温度差が少なくなり、外管2aと内管2bとの間の流路を流れる高温の圧縮空気を内外から均一に冷却することができる。
【0048】
なお、この熱交換器の組立てに際しては、例えば、先ず、第1冷却水入口7i及び第1冷却水出口7eを溶接済みの熱交換シェル1Aの両端開口に第1,第2管板3,4を連結し、これら管板3,4に亘って外管2aを挿通して溶接固定する。次に、第1,第2管板3,4の外側に、圧縮空気入口8iを溶接済みの圧縮空気流入シェル1Bと圧縮空気出口8eを溶接済みの圧縮空気流出シェル1Cを連結した上で、外管2aの一端から内管2bを挿入する。次に、圧縮空気流入シェル1Bと圧縮空気流出シェル1Cの外端に第4管板6,第3管板5を溶接固定すると共に、外管2aに挿通支持された内管2bの両端部を、第3,第4管板5,6にそれぞれ挿通連結する。最後に、第3,第4管板5,6の外側に冷却水流入シェル1Dと冷却水流出シェル1Eをそれぞれ溶接固定する。なお、熱交換器の組立ては、溶接固定に限らず、ロウ付けや管を広げて圧着させる拡管などによって固定してもよい。
【0049】
伝熱管2を組立てる工程において、内管2bを外管2aに挿通する際、小径の円管2b2の部分を外管2aの一端から容易に挿入することができると共に、そのまま内管2bを圧入してゆくことで、伝熱面積拡張管2b1の部分をテーパー管2b3の部分で円滑に外管2aの内周に案内することができ、更に、伝熱面積拡張管2b1の部分における各外周頂部が外管2aの内周面に接触して内管2bと外管2aとが容易に同心状となるように組立てることができる。
【0050】
この実施形態では、内管2bにおける伝熱面積拡張管2b1は、その周方向六ケ所の各外周頂部が管軸方向に沿って直線状に形成されたけれども、本発明の他の実施形態として、図5に示すように、内管2bにおける伝熱面積拡張管2b1は、その周方向六ケ所の各外周頂部を、管軸方向に沿って緩い螺旋状に形成して、内管2bの伝熱表面に滞留する流体の流動を促進して、伝熱効率を向上させるようにしてもよい。なお、内管2bにおける伝熱面積拡張管2b1の各外周頂部は、図5に比べて、管軸方向に沿って急峻な螺旋状に形成してもよい。
【0051】
この実施形態では、二重管の内管2bを、花弁状の伝熱面積拡張管2b1としたけれども、本発明の他の実施形態として、内管2bを外管2aと同心に挿通した円管とし、外管2aと内管2bとの間に形成された環状流路に高温の圧縮空気を流動させて内外から冷却するようにしてもよい。この場合でも、単管の伝熱管を用いて外周からのみ冷却する場合に比べて効率の高い熱交換を行うことができる。
【0052】
本発明の他の実施形態として、熱交換シェル1A内の外管2aから圧縮空気流入シェル1Bまたは圧縮空気流出シェル1Cへ突出する内管2bの端部を、折り返して再び熱交換シェル1A内の外管2aに挿通させる、すなわち、内管2bの端部を折り返して内管2bを連続させるようにしてもよい。
【0053】
この実施形態では、第1流体を水、第2流体を圧縮空気としたけれども、第1流体を圧縮空気、第2流体を水としてもよく、あるいは、第1流体または第2流体を、蒸気、油、その他の流体としてもよい。
【0054】
この実施形態では、外管2aに内管2bを挿通した二重管としたけれども、本発明の他の実施形態として、内管を外管とし、その内側に更に内管を挿通した三重管あるいはそれ以上の多重管としてもよい。この場合、多重管内に形成される複数の流路内の少なくともいずれか一つの流路には、前記第1流体および前記第2流体以外の別の流体を流動させるようにしてもよい。また、多重管を構成する各管は、円管に限らず、フィン付管、各種の異形断面管としてもよい。
【0055】
また、流路を流動する流体は、流路内で状態変化、例えば、水から水蒸気に状態変化してもよい。
【0056】
例えば、高温の圧縮空気を、圧縮空気流入シェル1Bから外管2aと内管2bとの間に形成される流路へ流入させて圧縮空気流出シェル1Cから流出させる一方、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから冷却水を流入させて熱交換シェル1内で圧縮空気と熱交換させて第1冷却水出口7eから温水を流出させ、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから冷却水を流入させて内管2bを流動させて圧縮空気と熱交換させて冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから水蒸気を流出させる、すなわち、水蒸気を生成するようにしてもよい。なお、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから冷却水を流入させて第1冷却水出口7eから水蒸気を流出させ、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから冷却水を流入させて冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから温水を流出させるようにしてもよい。
【0057】
(実施形態2)
図6及び図7は、本発明の他の実施形態に係る熱交換器の図2及び図3に対応する断面図であり、上述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0058】
この実施形態では、伝熱管2の内管2bを単なる円管に構成するとともに、外管2aと内管2bと間に形成される環状流路に、外管2aの内周面と内管2bの外周面とに接触する花弁状の伝熱面積拡張管2cを挿通させたものである。
【0059】
なお、伝熱面積拡張管2cは、外管2aの内周面および内管2bの外周面の少なくともいずれか一方と接触していればよい。
【0060】
この伝熱管2では、外管2aと内管2bと間に形成される環状流路、すなわち、伝熱面積拡張管2cの内外に第2流体としての高温の圧縮空気を流動させる一方、外管2aの外の熱交換シェル1A内及び内管2b内に第1流体としての冷却水を流動させる。その他の構成は、上述の実施形態1と同様である。
【0061】
この実施形態によると、外管2aと内管2bとの環状流路で流動する高温の圧縮空気の熱を、伝熱面積拡張管2cを介して効率よく外管2a及び内管2bに伝達して外管2aの外側及び内管2bの内部の冷却水との間で効率的な熱交換が可能となる。
【0062】
(実施形態3)
図8は、本発明の更に他の実施形態に係る熱交換器の図1に対応する縦断側面図であり、上述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0063】
この実施形態の熱交換器は、一端側が第7管板16で閉塞された第1シェルとしての熱交換シェル1Aの他端側に、圧縮空気流入/流出シェル1Fと冷却水流入/流出シェル1Gとを、第5,第6管板11,12を介して順次連設して構成され、更に、冷却水流入/流出シェル1Gを第8管板17によって閉塞している。熱交換シェル1Aの内部には、中間仕切り板10が設けられて、シェル内に横U字状の流路が形成され、屈曲したU字状の二重管構造の伝熱管2が横U字状の流路に沿って収容されている。各伝熱管2の外管2aの両端部が、第5管板11に気密に挿通支持されると共に、内管2bの両端部が、第6管板12に気密に挿通支持されている。
【0064】
熱交換シェル1Aの一端側の下部及び上部には、横U字状の流路の両端部に臨むように第1冷却水入口7iと第1冷却水出口7eが設けられている。圧縮空気流入/流出シェル1Fの内部、および、冷却水流入/流出シェル1Gの内部もそれぞれ中間仕切り板13,14で気密に区画されている。圧縮空気流入/流出シェル1Fの各区画に圧縮空気入口8iと圧縮空気出口8eをそれぞれ形成するとともに、冷却水流入/流出シェル1Gの各区画に第2冷却水入口9iと第2冷却水出口9eをそれぞれ形成している。
【0065】
すなわち、圧縮空気流入/流出シェル1Fの内部は、中間仕切り板13によって、第2流体として高温の圧縮空気が流入する第2シェルとしての圧縮空気流入シェルと、冷却後の圧縮空気が流出する第3シェルとしての圧縮空気流出シェルとに上下に区画され、冷却水流入/流出シェル1Gの内部は、中間仕切り板14によって第1流体として冷却水が流入する第4シェルとしての冷却水流入シェルと冷却水が流出する第5シェルとしての冷却水流出シェルとに上下に区画されている。
【0066】
この実施形態の熱交換器では、高温の圧縮空気が、圧縮空気流入/流出シェル1Fの圧縮空気入口8iから流入して屈曲された長い伝熱管2の内管2aと外管2bとの間に形成される流路を流動する間に、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから流入して外管2aの周囲を流動する冷却水と、冷却水流入/流出シェル1Gの第2冷却水入口9iから流入して内管2bの内部を流動する冷却水とによって内外から冷却される。この場合、内管2bの屈曲範囲を単なる円管とし、直線範囲において内管2bを上述の伝熱面積拡張管に構成することで、伝熱管2の屈曲加工が容易となる。
【0067】
この実施形態によると、長い伝熱管2を収容した高容量の熱交換器をコンパクトに構成することができる。また、伝熱管2を蛇行状に屈曲させて冷却流路の長さをさらに長大化することで一層容量の大きい熱交換器を構成することができる。
【0068】
(実施形態4)
次に、上述の本発明に係る熱交換器を用いたボイラ給水システムについて説明する。
【0069】
図9は、本発明の一実施形態に係るボイラ給水システムを備える蒸気システムの一例を示す概略図である。
【0070】
この蒸気システム20は、ボイラ21と、このボイラ21からの蒸気を用いて動力を発生する原動機としてのスチームモータ22と、このスチームモータ22の動力によって駆動される第1,第2圧縮機23,24とを備えている。この実施形態では、スチームモータ22と第1,第2圧縮機23,24とは、仮想線で示されるように、一つのユニット25として構成されているが、一つのユニットとして構成されていなくてもよい。また、第1,第2圧縮機23,24は、スチームモータ22によって駆動されるけれども、スチームモータ22に代えて電動モータや他の原動機によって駆動されてもよい。
【0071】
ボイラ21へは、後述のボイラ給水システム45を構成する給水タンク26から給水され、ボイラ21へ給水された水は、ボイラ21で加熱されて蒸気となり、第1蒸気ヘッダ27を介して蒸気を利用する各種の負荷機器28へ供給される。
【0072】
この種の負荷機器28の一つとして、上述のスチームモータ22がある。スチームモータ22へは、第1蒸気ヘッダ27からの蒸気が、給蒸路29を介して供給される。第1蒸気ヘッダ27からスチームモータ22への給蒸路29には、給蒸弁30が設けられる。この給蒸弁30の開閉または開度を調整することで、スチームモータ22の作動の有無または出力を調整できる。
【0073】
スチームモータ22は、供給される蒸気によって回転駆動力を得る装置であるが、スチームモータ22において、蒸気は膨張して減圧される。従って、スチームモータ22は、第1,第2圧縮機23,24の駆動源としてだけでなく、減圧弁としても機能する。これによって、スチームモータ22で使用された後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として、各種の負荷機器(図示省略)において、そのまま利用することもできる。このため、スチームモータ22で使用した後の蒸気は、排蒸路31を介して第2蒸気ヘッダ32へ供給され、この第2蒸気ヘッダ32の蒸気が、各種の負荷機器へ供給される。排蒸路31には、スチームモータ22への蒸気の逆流を防止する逆止弁33が設けられる。
【0074】
第1蒸気ヘッダ27と第2蒸気ヘッダ32とは、バイパス弁35が設置されたバイパス路34を介して接続される。バイパス弁35は、好適には自力式の減圧弁とされ、第2蒸気ヘッダ32内の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整される。このようなバイパス路34を設けておけば、第2蒸気ヘッダ32の負荷機器へ安定して蒸気を供給することができる。例えば、給蒸弁30を閉じてスチームモータ22を停止させた状態でも、第2蒸気ヘッダ32から負荷機器へ蒸気を供給することができる。
【0075】
スチームモータ22は、好適にはスクリュ式スチームモータであり、スクリュ式スチームモータは、互いにかみ合うスクリュロータとロータケーシングとの間に蒸気が導入され、その蒸気によってスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張させて減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る。
【0076】
スチームモータ22の動力によって駆動される第1,第2圧縮機23,24は、2段型のドライオイルフリースクリュ式の空気圧縮機である。ドライオイルフリースクリュ式の空気圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータとロータケーシングとの間に空気を吸入して、スクリュロータの回転によって空気を圧縮して吐出するものであって、空気に油が混入しない機構となっている。なお、圧縮機は、2段に限らず、単段あるいは3段以上の多段であってもよく、また、ドライオイルフリーでなくてもよい。
【0077】
各圧縮機23,24とスチームモータ22との間には、スチームモータ22からの軸動力を各圧縮機23,24へ伝達するための歯車列を収納したギヤボックス36が設けられている。このギヤボックス36の下部は、潤滑油が溜まる油溜り部63となっている。
【0078】
この油溜り部63と、油溜り部63からの潤滑油を冷却する油冷却用熱交換器39との間には、循環流路64が設けられている。この実施形態では、油冷却用熱交換器39は、プレート式の熱交換器を使用しているが、上述の本発明の熱交換器を使用してもよい。
【0079】
潤滑油の循環流路64は、ギヤボックス36の油溜り部63から油冷却用熱交換器39への往き流路64aと、油冷却用熱交換器39から油溜り部63への戻り流路64bとを備えている。
【0080】
往き流路64aには、送油ポンプ37が設置されており、この送油ポンプ37と油冷却用熱交換器39との間の往き流路64aには、油冷却用熱交換器39を経由することなく戻り流路64bに連結する分岐流路64cが設けられており、往き流路64aの分岐部分に、三方弁38が設置されている。
【0081】
油冷却用熱交換器39からの戻り流路64bは、途中で分岐されて第2圧縮機24及び第1の圧縮機23の各軸受け部等を経由してギヤボックス36の油溜り部63に戻る第1戻り流路64b−1と、スチームモータ22の軸受け部や歯車部等を経由してギヤボックス36の油溜り部63に戻る第2戻り流路64b−2とになっている。
【0082】
ギヤボックス36の油溜り部63と送油ポンプ37との間の往き流路64aには、潤滑油の温度を検出する第1温度センサ41が設置されており、この第1温度センサ41によって検出された潤滑油の温度に基づいて、三方弁38による潤滑油の分流比を制御して潤滑油の温度を調整している。すなわち、三方弁38は、送油ポンプ37からの潤滑油を、往き流路64a側の油冷却用熱交換器39と、分岐流路64c側の戻り流路64bとに分流するものであり、この三方弁38の分流比を制御することによって、分岐流路64cを介して戻り流路64b側に分流された高温の潤滑油と、油冷却用熱交換器39によって冷却された低温の潤滑油との混合割合が制御されて潤滑油の温度が調整される。温度が調整された潤滑油は、第1,第2戻り流路64b−1,64b−2を介して各圧縮機24,23及びスチームモータ22に供給される。
【0083】
第1圧縮機23は、吸込口から吸込んだ空気を圧縮して中間流路42に吐出する。中間流路42に吐出された高温の圧縮空気は、空気冷却用第1熱交換器43によって冷却されて第2圧縮機24に供給される。第2圧縮機24は、空気冷却用第1熱交換器43で冷却された圧縮空気を吸込み口から吸込んで更に圧縮して吐出流路62に吐出する。吐出流路62に吐出された高温の圧縮空気は、空気冷却用第2熱交換器44によって冷却され、図示しない各種の圧縮空気利用機器へ供給される。
【0084】
この実施形態では、空気冷却用第1熱交換器43及び空気冷却用第2熱交換器44として、本発明に係る熱交換器、具体的には、上述の実施形態1の熱交換器を使用している。
【0085】
次に、本発明の一実施形態に係るボイラ給水システム45について説明する。この実施形態のボイラ給水システム45は、ボイラ21への給水を貯留する給水タンク26と、この給水タンク26への給水を貯留する補給水タンク46と、この補給水タンク46から給水タンク26への給水を用いて圧縮空気及び潤滑油の冷却を図る上述の各熱交換器39,43,44とを主要部として備えている。なお、各熱交換器39,43,44は、通常、前記ユニット25の一部として構成される。
【0086】
給水タンク26は、ボイラ21への給水を貯留すると共に、負荷機器28などからドレンが回収される。図9では、第1蒸気ヘッダ27からの蒸気を利用する負荷機器28と、第2蒸気ヘッダ32からの蒸気を利用する負荷機器(図示省略)からのドレンが、ドレン回収路47を介して給水タンク26に回収される。
【0087】
補給水タンク46は、給水タンク26への給水を貯留すると共に、軟水装置48及び脱酸素装置49を介して補給水路50から水が供給可能とされる。脱気された軟水が空気と接触することで、再び酸素が溶け込むのを防止するために、給水タンク26及び補給水タンク46の水面には、ビーズ51,51…が一面に浮かべられる。
【0088】
補給水タンク46には、水位検出器52が設けられる。この水位検出器52による検出信号に基づいて脱酸素装置49を制御することで、補給水タンク46内の水位は設定範囲に維持される。補給水タンク46の水は、第1給水路53と第2給水路54とを介して、給水タンク26へ給水可能とされる。
【0089】
先ず、第1給水路53を介した給水について説明する。補給水タンク46と給水タンク26とは、逆止弁55を備えた第1給水路53を介して接続される。第1給水路53の逆止弁55は、補給水タンク46から給水タンク26への給水は許容するが、給水タンク26から補給水タンク46への逆流は防止する。補給水タンク46から第1給水路53を介した給水タンク26への給水は、補給水タンク46と給水タンク26との水頭圧差により行われる。
【0090】
次に、第2給水路54を介した給水について説明する。補給水タンク46と給水タンク26とは、熱交給水ポンプ56、上述の油冷却用熱交換器39、空気冷却用第2熱交換器44及び空気冷却用第1熱交換器43を順に備えた第2給水路54を介して接続される。各熱交換器39,44,43には、補給水タンク46からの冷却水が供給される一方、この冷却水と間接熱交換して冷却しようとする被冷却流体がそれぞれ供給される。この被冷却流体は、この実施形態では、油冷却用熱交換器39では、上述のようにギヤボックス36の油溜り部63からの潤滑油とされ、空気冷却用第2熱交換器44では、第2圧縮機24で圧縮された高温の圧縮空気とされ、空気冷却用第1熱交換器43では、第1圧縮機23で圧縮された高温の圧縮空気とされる。
【0091】
この実施形態では、空気冷却用第1,第2熱交換器43,44として、上述の図1に示される熱交換器が使用されている。
【0092】
すなわち、空気冷却用第2熱交換器44では、図1に示される熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから油冷却用熱交換器39を経由した、例えば、25℃程度の給水が第1流体として流入し、熱交換シェル1A内で伝熱管2内の高温の圧縮空気(第2流体)と熱交換した後、第1冷却水出口7eから流出する。更に、この流出した給水が、再び、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから流入して伝熱管2の内管2bを流動し、外管2aと内管2bとの間に形成される流路の高温の圧縮空気と熱交換して、例えば、45℃程度まで昇温された後、冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから流出し、空気冷却用第1熱交換器43へ供給される。
【0093】
また、空気冷却用第2熱交換器44では、図1に示される圧縮空気流入シェル1Bの圧縮空気入口8iから第2圧縮機24で圧縮された、例えば、250℃程度の高温の圧縮空気が第2流体として流入し、伝熱管2の外管2aと内管2bとの間に形成される流路を流動してその内外の冷却水と熱交換して、例えば、55℃程度まで冷却された後、圧縮空気流出シェル1Cの圧縮空気出口8eから流出して各種の圧縮空気利用機器へ供給される。
【0094】
空気冷却用第1熱交換器43では、空気冷却用第2熱交換器44の冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから流出した、例えば、45℃程度の冷却水が、熱交換シェル1Aの第1冷却水入口7iから流入し、熱交換シェル1A内で伝熱管2内の高温の圧縮空気と熱交換した後、第1冷却水出口7eから流出する。更に、この流出した冷却水が、再び、冷却水流入シェル1Dの第2冷却水入口9iから流入して伝熱管2の内管2bを流動し、外管2aと内管2bとの間に形成される流路の高温の圧縮空気と熱交換して、例えば、65℃程度まで昇温された後、冷却水流出シェル1Eの第2冷却水出口9eから流出し、給水タンク26へ供給される。
【0095】
また、空気冷却用第1熱交換器43では、圧縮空気流入シェル1Bの圧縮空気入口8iから第1圧縮機23で圧縮された、例えば、250℃程度の高温の圧縮空気が流入し、伝熱管2の外管2aと内管2bとの間に形成される流路を流動して冷却水と熱交換して、例えば、60℃程度まで冷却された後、圧縮空気流出シェル1Cの圧縮空気出口8eから流出して第2圧縮機24に供給される。
【0096】
以上のようにして、第1,第2圧縮機23,24からの圧縮空気は、空気冷却用第1,第2熱交換器43,44にて冷却され、各種の圧縮空気利用機器へ送られる一方、補給水タンク46からの給水は、油冷却用熱交換器39及び空気冷却用第1,第2熱交換器43,44で潤滑油及び高温の圧縮空気とそれぞれ熱交換されて加熱昇温され、給水タンク26へ供給される。すなわち、第1,第2圧縮機42,43で生じる圧縮熱によって給水タンク26への給水を予熱している。
【0097】
補給水タンク46から各熱交換器39,44,43への給水量は、補給水タンク46から第2給水路54を介した給水タンク26への給水量でもあるが、この給水量は、インバータポンプにより変更可能とされる。具体的には、補給水タンク46から油冷却用熱交換器39へ至る第2給水路54に設けられた熱交給水ポンプ56は、インバータ57により回転数を制御可能とされており、回転数を変更されることで各熱交換器39,44,43への給水量が調整される。
【0098】
補給水タンク46から各熱交換器39,44,43への給水量は、空気冷却用第2熱交換器44からの圧縮空気の温度に基づいて調整される。この実施形態では、空気冷却用第2熱交換器44から各種の圧縮空気利用機器へ供給される圧縮空気の温度を第2温度センサ58で検出し、その検出温度に基づいて、温度調節器59が、インバータ57を介して熱交給水ポンプ56の回転数を制御する。具体的には、空気冷却用第2熱交換器44からの圧縮空気を設定温度に維持するように、第2温度センサ58による検出温度に基づき、温度調節器59及びインバータ57によって熱交給水ポンプ56が制御されて、補給水タンク46から各熱交換器39,44,43へ供給される水量が調整される。なお、給水タンク26および補給水タンク46には、それぞれ、所定以上の水を外部へあふれさせるためのオーバフロー路60,61が設けられている。
【0099】
この実施形態では、補給水タンク46には、比較的低温の原水のみが供給される。つまり、ドレンや、各熱交換器39,44,43を通過後の水は、補給水タンク46ではなく給水タンク26へ供給されるので、補給水タンク46の水温を上昇させることはない。このような比較的低温の水を各熱交換器39,44,43において被冷却流体の冷却水として用いることで、冷却水量を最小限に抑えることができる。また、ドレンの回収率が比較的高い場合にも、各圧縮機23,24の廃熱を給水タンク26への補給水で効果的に回収することができる。
【0100】
この実施形態では、給水タンク26への給水を用いて各圧縮機23,24の圧縮熱を回収したけれども、本発明の他の実施形態として、ボイラ21への給水を用いて各圧縮機23,24の圧縮熱を回収するようにしてもよい。
【0101】
この実施形態では、空気冷却用第2熱交換器44からの圧縮空気の温度を設定温度に維持するように制御したけれども、本発明の他の実施形態として、給水の温度を設定温度に維持するように制御してもよく、例えば、空気冷却用第1熱交換器43の後段の給水の温度を設定温度に制御するようにしてもよい。
【0102】
本発明の他の実施形態として、スチームモータ22の軸封部から漏れる蒸気から熱を回収するようにしてもよく、例えば、空気冷却用第1熱交換器43の後段に熱交換器を設置し、スチームモータ22の漏れ蒸気によってボイラの給水を加熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 シェル
1A 熱交換シェル(第1シェル)
1B 圧縮空気流入シェル(第2シェル)
1C 圧縮空気流出シェル(第3シェル)
1D 冷却水流入シェル(第4シェル)
1E 冷却水流出シェル(第5シェル)
2 伝熱管
2a 外管
2b 内管
2b1 伝熱面積拡張管
2b2 円管
2b3 テーパー管
r 流路
21 ボイラ
22 スチームモータ
23,24 第1,第2圧縮機
26 給水タンク
39 油冷却用熱交換器
43,44 空気冷却用第1,第2熱交換器
46 補給水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流動するシェルの内部に、第2流体が流動する複数の伝熱管を収容して、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う熱交換器であって、
前記伝熱管を、外側の管に内側の管を挿通して内外方向に複数流路が形成される多重管とし、前記多重管内の前記複数流路の最も外側に形成される最外流路に前記第2流体を流動させると共に、前記最外流路よりも内側に形成される内側流路に第1流体を流動させる、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記多重管が、外管に内管を挿通した二重管であって、前記外管と内管との間に形成される流路を前記最外流路とし、前記内管内部を前記内側流路とした、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記外管が円管であり、前記外管に挿通される前記内管は、その管壁の伝熱面積を拡張させた伝熱面積拡張管である、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外管および内管が円管であり、
前記外管と内管との間に形成される環状の流路には、管壁の伝熱面積を拡張させた伝熱面積拡張管を挿通してある、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱管は、前記内管が前記外管に比べて管軸方向に長く、管軸方向の中央の二重管部分と、管軸方向の両端で前記二重管部分から内管がそれぞれ突出する内管部分とを有し、
前記シェルは、前記二重管部分を収容すると共に、前記第1流体の流入口および流出口を有する第1シェルと、管軸方向の一端側の前記内管部分を収容すると共に、前記外管と内管との間に形成される流路へ前記第2流体を流入させる第2シェルと、管軸方向の他端側の前記内管部分を収容すると共に、前記外管と内管との間に形成される流路から前記第2流体が流出する第3シェルと、前記内管の一端側開口が臨み内管へ第1流体を流入させる第4シェルと、前記内管の他端側開口が臨み内管から第1流体が流出する第5シェルとを備える、
請求項2ないし4のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1流体よりも高温の前記第2流体を、前記第2シェルから前記外管と内管との間に形成される流路へ流入させて第3シェルから流出させる一方、
前記第1シェルの前記流入口から該第1シェル内を経由して前記流出口へ至る流路および前記第4シェルから前記内管を経由して前記第5シェルへ至る流路の二つの流路の内のいずれか一方の流路に、第1流体としての水を流入させて温水を流出させ、他方の流路に、第1流体としての水を流入させて蒸気を流出させる、
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
原動機の動力によって駆動される圧縮機と、
ボイラへの給水路または前記ボイラへの給水を貯留するタンクへの給水路に設けられて、前記ボイラまたは前記タンクへの給水が前記第1流体として供給される一方、前記給水と間接熱交換して冷却される被冷却流体が、前記圧縮機から前記第2流体として供給される前記請求項1ないし6のいずれかに記載の熱交換器と、
を備えることを特徴とするボイラ給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−63067(P2012−63067A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207243(P2010−207243)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】