説明

熱交換器

【課題】 コア部の剛性を確保しながら、熱歪みを吸収することができる熱交換器を提供する。
【解決手段】 熱媒体が流れる複数のチューブ2と、チューブ2の外表面に接合されて熱媒体の熱交換を促進するフィン3とを有するコア部4と、チューブ2の長手方向両端部にてチューブ2の長手方向と直交する方向に延びてチューブ2と連通するヘッダタンク5と、コア部4の端部にてチューブ2の長手方向と略平行に配置され、コア部4から熱が伝わるとともに、両端部がヘッダタンク5に支持されたインサート6とを設け、ヘッダタンク5に、チューブ2が固定されるコアプレート5aと、コアプレート5aとともにタンク内空間を構成するタンク本体5bとを設け、インサート6の両端部をタンク内空間の外側に配置し、インサート6を、長手方向には可動に、長手方向と直交する方向には非可動にヘッダタンク5に嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するもので、車両用エンジン等の内燃機関の冷却水を冷却するいわゆるマルチフロー型のラジエータに適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来より、マルチフロー型のラジエータは、図9に示すように、複数のチューブJ2およびこれらのチューブJ2の外表面に接合されたフィンJ3を有するコア部J4と、複数のチューブJ2と連通するヘッダタンクJ5と、コア部J4の端部に配置されてコア部J4を補強するインサートJ6とを備えている。
【0003】
また、ヘッダタンクJ5は、チューブJ2が接合されたコアプレートJ5aおよびタンク内空間を構成するタンク本体J5bから構成されている。そして、チューブJ2およびインサートJ6は、ヘッダタンクJ5に挿入された状態でろう接によりコアプレートJ5a接合されている。
【0004】
このようなラジエータにおいて、チューブJ2に流れる冷却水の温度が変化したときに、冷却水の影響を直接受けるチューブJ2と、間接的にしか影響を受けないインサートJ6では熱膨張量が異なる。
【0005】
したがって、温度差によるチューブJ2とインサートJ6との熱膨張量の違いにより、インサートJ6に隣接するチューブJ2とコアプレートJ5aとの根付部(接合部)に熱歪みに伴う熱応力が発生しやすい。このため、温度が繰り返し変化して熱応力が繰り返して変化すると、根付部近傍のチューブJ2が破断するという問題があった。
【0006】
これに対し、インサートの一部をU字状等のスプリング構造にして、チューブの熱歪みを低減させるとともにコア部の剛性低下を抑制する熱交換器の熱歪み防止構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2927711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱歪み防止構造では、熱歪みがスプリング構造部に集中してしまい、スプリング構造部が破損するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、コア部の剛性を確保しながら、熱歪みを吸収することができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、熱媒体が流れる複数のチューブ(2)と、チューブ(2)の外表面に接合されて熱媒体の熱交換を促進するフィン(3)とを有するコア部(4)と、チューブ(2)の長手方向両端部にてチューブ(2)の長手方向と直交する方向に延びてチューブ(2)と連通するヘッダタンク(5)と、コア部(4)の端部にてチューブ(2)の長手方向と略平行に配置され、コア部(4)から熱が伝わるとともに、両端部がヘッダタンク(5)に支持されたインサート(6)とを備え、ヘッダタンク(5)は、チューブ(2)が固定されるコアプレート(5a)と、コアプレート(5a)とともにタンク内空間を構成するタンク本体(5b)とを有しており、インサート(6)の両端部は、タンク内空間の外側に配置されており、インサート(6)は、長手方向には可動に、長手方向と直交する方向には非可動にヘッダタンク(5)に嵌合されていることを第1の特徴としている。
【0010】
このように、インサート(6)を、熱歪みが発生する方向であるインサート(6)長手方向には可動にし、インサート(6)長手方向と直交する方向には非可動にすることで、熱歪みが発生する際に、インサート(6)が動いてチューブ(2)とコアプレート(5a)との接合部位(根付部)に熱応力が集中するのを防止することができる。一方、熱歪み発生方向に対して直交する方向には、インサート(6)が動かないように構成されているため、コア部(4)の強度を保つことができる。したがって、コア部(4)の剛性を確保しながら、熱歪みを吸収することが可能となる。
【0011】
具体的には、ヘッダタンク(5)とインサート(6)との嵌合部を、ヘッダタンク(5)に設けられた貫通孔(5f、12a)にインサート(6)の端部を挿入する差込構造とする。このとき、ヘッダタンク(5)およびインサート(6)の嵌合部は、ろう付け防止構造とする。これにより、インサート(6)を、長手方向には可動に、長手方向と直交する方向には非可動にヘッダタンク(5)に嵌合させることができる。
【0012】
このとき、貫通孔(5f、12)を、チューブ(2)の長手方向と垂直となる面に形成してもよい。これにより、チューブ(2)の伸長に伴って、インサート(6)に対してヘッダタンク(5)を稼動させることができ、インサート(6)に熱応力が集中することを抑制することができる。
【0013】
また、貫通孔(5f、12)を、コアプレート(5a)におけるタンク本体(5b)より外側の部位に設けてもよいし、タンク本体(5b)の長手方向端部に設けられて外側に向かって突出する突起部(12)に設けてもよい。
【0014】
また、本発明は、フィン(3)およびインサート(6)は、ろう材が被覆されていないベア材からなることを第2の特徴としている。
【0015】
これにより、フィン(3)とインサート(6)との接合部にはフィレットが形成されないため、インサート(6)に隣接するチューブ(2)の熱がインサート(6)に奪われにくくなる。このため、インサート(6)に隣接するチューブ(2)と、このチューブ(2)に隣接する他のチューブ(2)との温度差をより小さくすることができる。したがって、熱歪みをより小さくすることが可能となる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1および図2に基づいて説明する。本第1実施形態は、本発明に係る熱交換器を車両用エンジンを冷却したエンジン冷却水(熱媒体)と大気(空気)とを熱交換するラジエータ1に適用したものである。図1は本第1実施形態に係るラジエータ1の正面図で、図2(a)は本第1実施形態の要部を示す拡大図で、図2(b)は図2(a)のX方向からみたコアプレート5aとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【0018】
図1中、チューブ2はエンジン冷却水が流れる管であり、このチューブ2は、空気の流通方向(紙面垂直方向)が長径方向と一致するように扁平状に形成されているとともに、その長手方向が鉛直方向に一致するように水平方向に複数本平行に配置されている。
【0019】
また、チューブ2の両側の扁平面2a(図2参照)には波状に成形されたフィン3が接合されており、このフィン3により空気との伝熱面積を増大させてエンジン冷却水と空気との熱交換を促進している。なお、以下、チューブ2およびフィン3からなる略矩形状の熱交換部をコア部4と呼ぶ。
【0020】
ヘッダタンク5は、チューブ2の長手方向端部(本実施形態では、上下端)にてチューブ2の長手方向と直交する方向(本実施形態では、水平方向)に延びて複数のチューブ2と連通するもので、このヘッダタンク5は、チューブ2が挿入接合されたコアプレート5aと、コアプレート5aとともにタンク内空間を構成するタンク本体5bとを有して構成されている。なお、本第1実施形態では、コアプレート5aは金属(例えば、アルミニウム合金)製であり、タンク本体5bは樹脂製である。
【0021】
また、図2に示すように、コアプレート5aの縁部全周に設けられた凹状の溝部5cにゴム等の弾性材からなるパッキン(図示せず)を配置し、このパッキンにてタンク本体5bとコアプレート5aとの隙間を液密に密閉している。コアプレート5aの周縁部には爪部5dが立設されており、この爪部5dをタンク本体5bの外周縁に形成されたフランジにカシメ固定することによって、タンク本体5bはヘッダプレート5aに組み付けられている。
【0022】
ちなみに、タンク本体5bは、コアプレート5aの一部をタンク本体5bに押し付けるようにして塑性変形させることにより、コアプレート5aにカシメ固定されている。
【0023】
コア部4の両端部には、チューブ2の長手方向と略平行に延びてコア部4を補強するインサート6が設けられている。このインサート6は、チューブ2の扁平面2aと略平行な面を有してチューブ2の長手方向と略平行に延びるベース部6aと、ベース部6aに対して略直交する方向(本実施形態では、水平方向)に突出してチューブ2の長手方向と略平行に延びるリブ6bとを有している。インサート6において、リブ6bは、ベース部6aのうちベース部6aの長手方向と直交する方向両端側にそれぞれに設けられているため、インサート6の断面形状は、コア部4と反対側が開いた略コの字状断面となっている。また、インサート6はコア部4と接触しており、コア部4から熱が伝わるようになっている。
【0024】
ここで、コアプレート5aとインサート6との支持構造について説明する。
【0025】
本第1実施形態では、コアプレート5aの端部は、タンク本体5bより外側に延びている、すなわち、コアプレート5aとタンク本体5bとを組み付けた際に、コアプレート5aの端部が露出するようになっている。コアプレート5aの端部には、貫通孔5fが形成されている。この貫通孔5fは、ヘッダタンク5のチューブ2の長手方向とほぼ垂直となる面において、ヘッダタンク5の長手方向と直交する方向に向かって形成されている。
【0026】
インサート6のベース部6aは、コアプレート5aの溝部5cと対向するように屈曲した後、コアプレート5aの貫通孔5fに向けて端部(以下、インサート端部6cという)が延びており、インサート端部6cが貫通孔5fに挿入された状態で、コアプレート5aと嵌合するようになっている。すなわち、コアプレート5aとインサート6との嵌合部は、差込構造となっている。
【0027】
また、コアプレート5aとインサート6との嵌合部は、ろう付け防止構造になっている。具体的には、貫通孔5fの内壁部およびインサート端部6cの貫通孔5fに対応する部位は、それぞれろう材が削られている。これにより、コアプレート5aとインサート6との嵌合部がろう付けされないようになっている。
【0028】
なお、本第1実施形態では、母材であるチューブ2、フィン3、コアプレート5aおよびインサート6は全てアルミニウム合金であり、ろう接時の溶加材としてA4045等のアルミニウムを用いているので、チューブ2、フィン3、コアプレート5aおよびインサート6等の金属部品のうち、コアプレート5aとインサート6との嵌合部以外は、全てろう接にて接合されていることとなる。
【0029】
ちなみに、本第1実施形態では、チューブ2は、表面をろう材(溶加材)にクラッド(被覆)されたクラッド材であり、コアプレート5aは、コア部4側の面をろう材にクラッドされたクラッド材である。また、フィン3は、ろう材にクラッドされていない裸のアルミニウム系材料(以下、ベア材という)である。
【0030】
なお、図1中、冷却水流入口7aはエンジンのエンジン冷却水出口側に接続され、冷却水流出口7bはエンジンのエンジン冷却水入口側に接続される。ピン8はラジエータ1を車両ボディ側、つまり、図示しないキャリア(ラジエータサポート又はフロントエンドパネル)に組み付けるための突起部材であり、キャップ9は、加圧式のラジエータキャップであり、プラグ10はラジエータ1からエンジン冷却水を抜くためのドレン口を閉塞する栓である。
【0031】
次に、本第1実施形態に係るラジエータ1の製造方法の概略を述べる。
【0032】
フィン3、チューブ2およびインサート6を図2に示すように組み付け、インサート端部6cを貫通孔5fに挿入した後、ワイヤー等の治具によりその組み付けた状態を維持したまま、炉内で加熱してフィン3、チューブ2およびインサート6をろう接する。このとき、コアプレート5aの貫通孔5fの内壁部およびインサート端部6cの貫通孔5fに対応する部位のろう材がそれぞれ削られているので、コアプレート5aとインサート6との嵌合部がろう付けされることはない。
【0033】
そして、フィン3、チューブ2およびインサート6を組み付ける際には、フィン3を押し潰すように弾性変形させて、ろう付けにフィン3の厚みが小さくなってもフィン3とチューブ2との接触状態を維持することができるようにする。
【0034】
以上説明したように、コアプレート5aとインサート6との嵌合部を差込構造とするとともに、嵌合部のろう付けを防止することにより、熱歪みが発生する方向(インサート6の長手方向)にはインサート6を可動にし、熱歪み発生方向に対して垂直な方向にはインサート6を拘束することができる。このため、熱歪みが発生する際に、インサート6が動くことによりチューブ2とコアプレート5aとの根付部に熱応力が集中するのを防止することができる。一方、熱歪み発生方向に対して垂直方向には、インサート6が動かないように構成されているため、コア部4の強度を保つことができる。したがって、コア部4の剛性を確保しながら、熱歪みを吸収することが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態に比較して、ろう付け防止構造が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図3(a)は本第2実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、図3(b)は図3(a)のX方向からみたコアプレート5aとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。図3に示すように、本第2実施形態では、貫通孔5fとインサート端部6cとの間に、ベア材からなるカラー11が設けられており、貫通孔5fの内壁とインサート端部6cとが直接接触しないようになっている。
【0037】
これにより、コアプレート5aとインサート6との嵌合部がろう付けされるのを防止することができるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図4に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態に比較して、ろう付け防止構造が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図4(a)は本第3実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、図4(b)は図4(a)のX方向からみたコアプレート5aとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。図4に示すように、本第3実施形態の貫通孔5fは、ろう材がクラッドされた面(以下、ろう材面という)を外側にしたバーリング加工により形成されている。
【0040】
これにより、コアプレート5aのろう材面とインサート端部6cが接触しないようになっているとともに、インサート端部6cにおける貫通孔5fと対応する部位のろう材が削られているため、コアプレート5aとインサート6との嵌合部がろう付けされるのを防止することができる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0041】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図5に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態に比較して、ろう付け防止構造が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
図5(a)は本第4実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、図5(b)は図5(a)のX方向からみたコアプレート5aとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。図5に示すように、本第4実施形態のインサート端部6cは、ろう材面を内側にして折り曲げられた状態で貫通孔5fに挿入されている。
【0043】
これにより、インサート6のろう材面と貫通孔5fの内壁面が接触しないようになっているとともに、貫通孔5fの内壁面のろう材が削られているため、コアプレート5aとインサート6との嵌合部がろう付けされるのを防止することができる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0044】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図6に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第1実施形態に比較して、インサート6をタンク本体5に嵌合させる点が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図6(a)は本第5実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、図6(b)は図6(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。図6に示すように、タンク本体5bの長手方向端部には、タンク本体5bの外側に向かって突出する突起部12が設けられている。突起部12は樹脂からなり、タンク本体5bと一体に成形されている。
【0046】
突起部12には、貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aは、インサート端部6cが貫通孔5fに挿入された状態でコアプレート5aと嵌合するように構成されている。
【0047】
このように、インサート端部6cを樹脂製のタンク本体5bの突起部12に嵌合させることにより、インサート6とタンク本体5bとの嵌合部がろう付けされるのを防止することができるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0048】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図6に基づいて説明する。本第6実施形態は、上記第5実施形態に比較して、タンク本体5bを金属製とした点が異なるものである。上記第5実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本第6実施形態では、タンク本体5bおよび突起部12は金属(例えば、アルミニウム合金)からなり、突起部12はタンク本体5bと一体に成形されている。また、タンク本体5bとインサート6との嵌合部、すなわち、貫通孔12aの内壁部およびインサート端部6cの貫通孔12aに対応する部位は、それぞれろう材が削られている。
【0050】
このように、インサート6をタンク本体5bの突起部12に嵌合させるとともに、タンク本体5bとインサート6との嵌合部のろう材を削り、ろう付けを防止することにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0051】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図7および図8に基づいて説明する。本第7実施形態は、上記第1実施形態に比較して、フィン3およびインサート6の両方にベア材を用いた点が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図7はチューブおよびインサートの温度について従来技術と本第7実施形態とを比較した棒グラフで、図8は本第7実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図である。なお、図8において、インサート6と隣接するチューブを第1のチューブ2Aといい、第1のチューブ2Aに隣接するチューブを第2のチューブ2Bといい、第2のチューブ2Bに隣接するチューブを第3のチューブ2Cという。
【0053】
ところで、従来、チューブJ2もしくはインサートJ6(ベース部J6a)とフィンJ3との接合部には、図9の黒塗り部に示されるようなフィレット(溶加材の固まり)が形成され、強固にろう接されている。このため、図7に示すように、第1のチューブJ2Aの熱がインサートJ6に奪われやすく、第1のチューブJ2Aと第2のチューブJ2Bとの温度差が大きくなる。
【0054】
これに対し、本第7実施形態では、上記第1実施形態と同様の構成を有し、インサート6にベア材を用いている。このため、図8に示すように、フィン3とインサート6との接合部にフィレットが形成されない。これにより、第1のチューブ2Aの熱がインサート6に奪われにくくなるため、図7に示すように、第1のチューブ2Aと第2のチューブ2Bとの温度差をより小さくすることができる。したがって、熱歪みをより小さくすることが可能となる。
【0055】
(他の実施形態)
なお、ヘッダタンク5とインサート6との嵌合部のろう付けを防止するために、上記第1〜第3および第6実施形態ではインサート端部6cにおける貫通孔5f、12aに対応する部位のろう材を削り、上記第4実施形態ではインサート端部6cをろう材面を内側にして折り曲げたが、これらに限らず、例えば、インサート端部6cの貫通孔5f、12aに対応する部位にろう付け抑制剤を塗布してもよい。
【0056】
また、フィン3にクラッド材を用い、インサート6にベア材を用いてもよい。これにより、フィン3とインサート6はろう付けされるが、ヘッダタンク5とインサート6との嵌合部がろう付けされることはないため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0057】
同様に、ヘッダタンク5とインサート6との嵌合部のろう付けを防止するために、上記第1、第4および第6実施形態ではインサート端部6cにおける貫通孔5f、12aに対応する部位のろう材を削り、上記第2実施形態では貫通孔5fとインサート端部6cとの間にベア材のカラー11を設け、上記第3実施形態では貫通孔5fをバーリング加工により形成したが、これらに限らず、例えば、貫通孔5f、12aの内壁にろう付け抑制剤を塗布してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態に係るラジエータ1の正面図である。
【図2】(a)は第1実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、(b)は(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【図3】(a)は第2実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、(b)は(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【図4】(a)は第3実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、(b)は(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【図5】(a)は第4実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、(b)は(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【図6】(a)は第5および第6実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図で、(b)は(a)のX方向からみたタンク本体5bとインサート6との嵌合部を示す拡大平面図である。
【図7】チューブおよびインサートの温度について従来技術と第7実施形態とを比較した棒グラフである。
【図8】第7実施形態に係るラジエータ1の要部を示す拡大図である。
【図9】従来のラジエータの要部を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0059】
1…ラジエータ(熱交換器)、2…チューブ、3…フィン、4…コア部、5…ヘッダタンク、5a…コアプレート、5b…タンク本体、5f、12a…貫通孔、6…インサート、12…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流れる複数のチューブ(2)と、前記チューブ(2)の外表面に接合されて前記熱媒体の熱交換を促進するフィン(3)とを有するコア部(4)と、
前記チューブ(2)の長手方向両端部にて前記チューブ(2)の長手方向と直交する方向に延びて前記チューブ(2)と連通するヘッダタンク(5)と、
前記コア部(4)の端部にて前記チューブ(2)の長手方向と略平行に配置され、前記コア部(4)から熱が伝わるとともに、両端部が前記ヘッダタンク(5)に支持されたインサート(6)とを備え、
前記ヘッダタンク(5)は、前記チューブ(2)が固定されるコアプレート(5a)と、前記コアプレート(5a)とともにタンク内空間を構成するタンク本体(5b)とを有しており、
前記インサート(6)の両端部は、前記タンク内空間の外側に配置されており、
前記インサート(6)は、長手方向には可動に、前記長手方向と直交する方向には非可動に前記ヘッダタンク(5)に嵌合されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ヘッダタンク(5)と前記インサート(6)との嵌合部は、前記ヘッダタンク(5)に設けられた貫通孔(5f、12a)に前記インサート(6)の端部を挿入する差込構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記貫通孔(5f、12a)は、前記チューブ(2)の長手方向に垂直な面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記ヘッダタンク(5)および前記インサート(6)の前記嵌合部は、ろう付け防止構造になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記コアプレート(5a)の長手方向端部は、前記タンク本体(5b)より外側に延びており、
前記貫通孔(5f)は、前記コアプレート(5a)における前記タンク本体(5b)より外側の部位に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記タンク本体(5b)の長手方向端部には、外側に向かって突出する突起部(12)が設けられており、
前記貫通孔(12)は、前記突起部(12)に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記フィン(3)および前記インサート(6)は、ろう材が被覆されていないベア材からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−24334(P2007−24334A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202807(P2005−202807)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】