説明

熱交換器

【課題】熱交換器において、作動流体の気化成分を蒸発しやすくするとともに、非蒸発成分の油が作動流体中に溜まることなく熱交換器から流出しやすくすることを課題とする。
【解決手段】複数の第1プレート12が等間隔に積層され、その間に第1流体の流路13と作動流体と油を含む第2流体Bが流れる第2流体の流路14とが第1プレート12を挟んで交互に設けられた第1熱交換器11と、複数の第2プレート22が水平に対して傾斜を有して等間隔に積層され、その間に第1流体の流路23と第2流体の流路24とが第2プレート22を挟んで交互に設けられた第2熱交換器21とを有し、第1流体の流路13に連通する第1流出口16と第1流体の流路23に連通する第1流入口25とが接続され、第2流体の流路14に連通する第2流出口18と第2流体の流路24に連通する第2流入口27とが接続された熱交換器1Aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器に関し、特に小型の冷凍機、ヒートポンプ、ランキンサイクル機関に用いる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の冷凍機やヒートポンプのサイクルでは、装置を簡略化するために油分離器が装備されておらず、圧縮機を潤滑するための油は作動流体と一緒にサイクル内を移動する。サイクルの構成要素である蒸発器には、加熱物質が液体の場合、熱交換能力が高いプレート形熱交換器が使われることが多い。このプレート形熱交換器では、垂直に立てたプレートの伝熱面に沿って上方から液体が注入されるとき、蒸発する分だけ冷媒が供給される場合(もしくは、プレートの伝熱面積が十分に大きい場合)には、冷媒中の作動流体は蒸発し、液体成分は油のみ(正確には油が成分の多くを占める液体)が圧縮機にもどって接触しながら相対運動をする面の潤滑を行う。
しかし、プレート形熱交換器に流入する液体状態の作動流体が多い時には、作動流体が蒸発しきれずに、圧縮機に液体状態の作動流体が混入することになる。これを防ぐために、気化された作動流体のみ圧縮機に入るように、圧縮機と蒸発器の間にアキュームレータが挿入されるが、その場合には、アキュームレータで分離された油が圧縮機に戻るようにする仕組みが必要となる。
【0003】
冷凍機やヒートポンプのサイクルとは作動流体の向きが逆になるランキンサイクルの場合にも、同様のことが検討事項となる。ランキンサイクルの小型の機関では、システムの簡略化のために油分離器が取り付けられていない場合が多く、また、凝縮器から蒸発器に送液を行うポンプの効率を高めるために油を完全に分離することなく、油をある程度ポンプに供給する方法がとられる。こうして油はサイクル中を循環し、蒸発器には作動流体とともに油が流入する。
【0004】
液体の作動流体が冷凍機およびヒートポンプの圧縮機やランキンサイクル機関の膨張機に多量に混入することを防ぐために、図14に示すように、プレート511を垂直に設置したプレート式熱交換器500に対し、作動流体(液体の冷媒)を下方から流入させている(例えば、特許文献1参照。)。加熱流体との熱交換によって作動流体に対して設定した加熱が行われるときには、作動流体が蒸発し、その気体の流れによって、作動流体が蒸発した後の油成分の濃い液体(以下、油という。)がプレート511の壁面を伝わって上方に流れ、順当な油の移動が行なわれる。
しかしながら、起動時や、熱交換量が定常的な運転設計温度を下回るとき、作動流体の沸騰が活発でなくなって、蒸発して気体となった作動流体のせん断力によって油を上方に移動させる力より油の重力成分が勝るため、油の上方への移動が難しくなる。場合によっては、作動流体の蒸発液面に油が溜まって作動流体の蒸発が妨げられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−216754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱交換器において、作動流体を蒸発しやすくするとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器から流出しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の第1プレートが所定間隔に積層されて構成され、
前記複数の第1プレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが前記第1プレートを挟んで交互に設けられた第1熱交換器と、
複数の第2プレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層され、
前記複数の第2プレート間に第1流体の流路と第2流体の流路とが前記第2プレートを挟んで交互に設けられた第2熱交換器とを有し、
前記第1熱交換器の第1流体の流路に連通する第1流出口と前記第2熱交換器の第1流体の流路に連通する第1流入口とが接続され、
前記第1熱交換器の第2流体の流路に連通する第2流出口と前記第2熱交換器の第2流体の流路に連通する第2流入口とが接続された熱交換器を提供する。
【0008】
また本発明は、複数の第1プレートが所定間隔に積層されて構成され、前記第1プレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが前記第1プレートを挟んで交互に設けられた第1熱交換器と、
複数の第2プレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層され、
前記第2プレート間に第1流体の流路と第2流体の流路とが前記第2プレートを挟んで交互に設けられた第2熱交換器とを有し、
前記第1熱交換器の第1流体の流路と前記第2熱交換器の第1流体の流路とがそれぞれに直接連通され、前記第1熱交換器の第2流体の流路と前記第2熱交換器の第2流体の流路とがそれぞれに直接連通されていて、
前記連通するそれぞれの第1熱交換器の第1流体の流路と第2熱交換器の第1流体の流路とを合わせた流路長が等しく、
前記連通するそれぞれの第1熱交換器の第2流体の流路と第2熱交換器の第2流体の流路とを合わせた流路長が等しい熱交換器を提供する。
【0009】
さらに本発明は、らせん状に形成された連続面を有する複数のプレートが等間隔に垂直方向に積層されて構成され、
前記複数のプレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが交互に設けられ、
前記第1流体の流路の一方側に連通する第1流体が流入する第1流入口と前記第1流体の流路の他方側に連通する第1流体が流出する第1流出口と、
前記第2流体の流路の一方側に連通する第2流体が流入する第2流入口と前記第2流体の流路の他方側に連通する第2流体が流出する第2流出口とを有する熱交換器を提供する。
【0010】
本発明の第2熱交換器を有する熱交換器は、第2熱交換器の複数の第2プレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔、例えば等間隔に積層されていることから、作動流体が蒸発した油はその質量の一部が第2プレートの傾斜した壁面(伝熱面)に支えられるため、少ない移動力で第2プレートの壁面を上昇させることが可能になる。よって、作動流体が気化した気体のせん断力によって、作動流体が蒸発した油は第2プレートの壁面を伝って上方に移動しやすくなる。
また、本発明のらせん状に形成された連続面を有する複数のプレートで構成された熱交換器は、複数のプレートが水平に対して傾斜を有して等間隔に積層されていることから、作動流体が蒸発した油はその質量の一部がプレートの傾斜した壁面(伝熱面)に支えられるため、少ない移動力でプレートの壁面を上昇させることが可能になる。よって、作動流体が気化した気体のせん断力によって、作動流体が蒸発した油はプレートの壁面を伝って上方に移動しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換器は、作動流体が蒸発しやすくなるとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器から流出しやすくなる。このため、本発明の熱交換器を備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクル機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態(第1実施形態)の概略構成を示した斜視図である。
【図2】第1実施形態の第1熱交換器を示した断面図であり、(1)は第1流体の流入、流出口を通る断面図、(2)は第2流体の流入、流出口を通る断面図である。
【図3】第1実施形態の第2熱交換器を示した断面図であり、(1)は第1流体の流入、流出口を通る断面図、(2)は第2流体の流入、流出口を通る断面図、(3)は連絡流路の変形例の拡大断面図である。
【図4】本発明の熱交換器に係る好ましい第2実施形態の概略構成を示した斜視図である。
【図5】第2実施形態の第2熱交換器を示した断面図であり、(1)は第1流体の流入、流出口を通る断面図、(2)は第2流体の流入、流出口を通る断面図、(3)は連絡流路の変形例の拡大断面図である。
【図6】第2実施形態の第2熱交換器を示した横断面図であり、(1)は第1流体の流路の横断面図、(2)は第2流体の流路の横断面図、(3)は部分横断面図および(4)は(3)図のX−X’線断面図である。
【図7】本発明の熱交換器に係る好ましい第3実施形態を示した図面であり、(1)は概略構成を示した斜視図であり、(2)は要部拡大断面図である。
【図8】本発明の熱交換器に係る好ましい第4実施形態の概略構成を示した斜視図である。
【図9】本発明の熱交換器に係る好ましい第5実施形態の概略構成を示した斜視図である。ある。
【図10】本発明の熱交換器に係る好ましい第6実施形態の熱交換器の熱交換部分の要部を示した図面であり、(1)はプレートの構成を示した平面図、(2)はプレートの構成を示した正面図である。
【図11】第6実施形態の熱交換器の上部の流路を示した図面であり、(1)はR−R’線上部断面図、(2)は上部壁の平面図および(3)は側面の部分展開断面図である。
【図12】本発明の熱交換器を備えた冷凍機(ヒートポンプ)の一例を示したブロック図である。
【図13】本発明の熱交換器を備えたランキンサイクル機関の一例を示したブロック図およびT−s線図である。
【図14】従来の熱交換器に係るプレート式熱交換器を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第1実施形態を、図1ないし図3を参照して以下に説明する。なお、図1は主に各プレートの概略構成を示した。
【0014】
図1に示すように、熱交換器1(1A)は、第1熱交換器11(11A)と第2熱交換器21(21A)を備える。
【0015】
図2に示すように、第1熱交換器11Aは、複数の第1プレート12が所定間隔に積層され垂直に配設されたものからなる。この第1プレート12間の間隔は等間隔が好ましいが、例えば外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。また、第1プレート12の数は、例えば熱交換容量に応じて決定される。複数の第1プレート12の伝熱面は、凹凸が形成されていても、平面状に形成されていてもよいが、伝熱性を高めるためやプレートの強度を高めるために凹凸形状に形成されていることが好ましい。この凹凸形状は、種々の構成をとることが可能であり、凹部の断面形状として矩形、V字形状、U字形状等が挙げられるが、その他の形状、または複数種の形状を組み合わせたものでもよい。なお、凸部の形状は凹部の形状を反転させた形状としてもよい。また、凹凸形状を平面視した形状としては、例えば凸部(凹部)の形状として、V字形状、U字形状、流体を流そうとする方向に沿わせた形状等が挙げられるが、その他の形状、または複数種の形状を組み合わせたものでもよい。例えば、流体が流路内の全域にわたって均一に流れるような形状が好ましい。
【0016】
各第1プレート12間には、外周部に後述する流路を区画する封止部19が設けられている。この封止部19には、例えばシール材が用いられ、第1プレート12間を押し圧することで、各第1プレート12同士が封止部19を介して密着される。なお、上記封止部19を接合部材で構成し、溶接、ろう付け等の接合手段によって接合させることも可能である。
【0017】
第1プレート12間には、第1流体Aが流れる第1流体の流路13と作動流体と油を含む第2流体Bが流れる第2流体の流路14とが第1プレート12を挟んで交互に設けられている。また、第1プレート12には、第1流体の流路13に後述する連絡流路を介して連通する第1流入口15と第1流出口16とを有する。さらに第2流体の流路14に後述する連絡流路を介して連通する第2流入口17と第2流出口18とを有する。
第1流入口15は、最も外側の第1プレート12の長手方向の例えば上部に設けられ、第1流出口16は、第1流入口15に対向してその第1プレート12の長手方向の下部に設けられている。または、第1流入口15の対角方向でその第1プレート12の長手方向の下部に設けられていてもよい。また、第2流入口17は、最も外側の第1プレート12の長手方向の例えば下部で第1流入口15とは異なる位置に設けられている。第2流出口18は、第2流入口17に対向してその第1プレート12の長手方向の上部で第1流出口16とは異なる位置に設けられている。または第2流入口17の対角方向で第1流出口16とは異なる位置で第1プレート12の長手方向の上部に設けられていてもよい。
さらに、第1流入口15、第1流出口16、第2流入口17および第2流出口18は、一方側の第1プレート12の面もしくは他方側の第1プレート12の面のいずれか一方または両方に設けてもよく、または一部を一方側の第1プレート12の面に設け、残りを他方側の第1プレート12の面に設けてもよい。
【0018】
第1熱交換器11Aでは、第1流入口15は、連絡流路31を介して各第1流体の流路13上部に接続する。また第1流出口16は、連絡流路32を介して各第1流体の流路13下部に接続する。第2流入口17は、連絡流路33を介して各第2流体の流路14下部に接続する。また第2流出口18は、連絡流路34を介して各第2流体の流路14上部に接続する。各連絡流路31ないし34は、それぞれ、第1プレート12に形成された開口部35ないし38と、第1プレート12に両面で密着していて開口部35ないし38の周囲にそれぞれに形成されたシール部材39とからなる。
【0019】
図3(1)、(2)に示すように、第2熱交換器21Aは、複数の第2プレート22の伝熱面となる壁面が水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層されたものからなる。その積層数は第1プレート12の積層数と異なってもよい。この第2プレート22間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。また、第2プレート22の数は、例えば所望の熱交換容量に応じて決定される。各第2プレート22の水平に対する傾斜角度は、45度以下であり、好ましくは壁面にある油の重力の壁面方向の分力が油の重力の1/2以下となる30度以下であり、より好ましくは油の重力の壁面方向の分力が油の重力のおよそ1/4以下となる15度以下である。ただし、各第2流体の流路24において作動流体の液界面が得られるような傾斜角度とする必要があるため、傾斜角度の下限は、第2プレート22の間隔および第2流体の流路24の流路長(同一流路内の開口部47中心と開口部48中心間の距離)によって制限される。最下層の第2流体の流路24の底面から最上層の第2流体の流路24の底面までの距離をH(m)、第2流体の流路24の流路長をL(m)、第2流体の流路24の水平に対する傾斜角度をθ(°)としたときに、tanθ>H/Lを満たしていればよい。上記傾斜角度は、第2プレート22の上面中央における流体の流れ方向の水平に対する傾斜角度をいう。以下、プレートの傾斜角度は上記同様である。
【0020】
また複数の第2プレート22の伝熱面は、凹凸が形成されていても、平面状に形成されていてもよいが、伝熱性を高めるためやプレートの強度を高めるために凹凸形状に形成されていることが好ましい。この凹凸形状は、種々の構成が可能であり、凹部の断面形状として矩形、V字形状、U字形状等が挙げられるが、その他の形状、または複数種の形状を組み合わせたものであってもよい。なお、凸部の形状は凹部の形状を反転させた形状となる。また、凹凸形状を平面視した形状としては、例えば凸部(凹部)の形状として、V字形状、U字形状、流体を流そうとする方向に沿わせた形状等が挙げられるが、その他の形状、または複数種の形状を組み合わせたものであってもよい。例えば、流体が流路内の全域にわたって均一に流れるような形状が好ましい。
【0021】
各第2プレート22間には、外周部に各流路を区画する封止部29が設けられている。この封止部29には、例えばシール材が用いられ、第2プレート22間を押し圧することで、第2プレート22間が封止部29に密着される。なお、上記封止部29を接合部材で構成し、溶接、ろう付け等の接合手段によって接合させることも可能である。
【0022】
各第2プレート22間には、第1流体Aが流れる第1流体の流路23と第2流体Bが流れる第2流体の流路24とが第2プレート22を挟んで交互に設けられている。また、第2プレート22には、第1流体の流路23と後述する連絡流路を介して連通する第1流入口25と第1流出口26とを有する。さらに第2流体の流路24と後述する連絡流路を介して連通する第2流入口27と第2流出口28とを有する。
第1流入口25は、最も外側の第2プレート22の長手方向の例えば上部に設けられ、第1流出口26は、第1流入口25に対向してその第2プレート22の長手方向の下部に設けられている。または、第1流入口25の対角方向でその第2プレート22の長手方向の下部に設けられている。また、第2流入口27は、最も外側の第2プレート22の長手方向の例えば下部で第1流入口25とは異なる位置に設けられる。第2流出口28は、第2流入口27に対向してその第2プレート22の長手方向の上部で第1流出口26とは異なる位置に設けられている。または第2流入口27の対角方向で第1流出口26とは異なる位置のその第2プレート22の長手方向の上部に設けられている。
さらに、第1流入口25、第1流出口26、第2流入口27および第2流出口28は、第2熱交換器21Aの上面側の第2プレート22もしくは底面側の第2プレート22のどちら側に設けてもよく、または一部を上面側、その他を下面側の第2プレート22に設けてもよい。
【0023】
第2熱交換器21Aでは、第1流入口25は、連絡流路41を介して各第1流体の流路23上部に接続する。また第1流出口26は、連絡流路42を介して各第1流体の流路23下部に接続する。第2流入口27は、連絡流路43を介して各第2流体の流路24下部に接続する。また第2流出口28は、連絡流路44を介して各第2流体の流路24上部に接続する。各連絡流路41ないし44は、それぞれ、第1プレート12に形成された開口部45ないし48と、第1プレート12に両面で密着していて開口部45ないし48の周囲にそれぞれに形成されたシール部材49とからなる。
なお、各連絡流路41ないし44の入口および出口となる開口部45ないし48は、上記封止部29で区画される第1流体の流路23および第2流体の流路24の外側に設けられることが好ましい。すなわち、開口部45ないし48の周囲に設けられるシール部材49は、封止部29の外側に配置される。このようにシール部材49が配置されることで、封止部29内を流れる流体(例えば第1流体A)とシール部材49内を流れる流体(例えば第2流体B)が、たとえどちらか一方のシール部材のシール機能が劣化したとしても、混合することが防げる。
上述の各連絡流路31ないし34、41ないし44は、例えば、プレート間にシール部材39、49を設置してプレート間を押し圧することで固定されている。または、プレート間に接合材料を溶接やろう付け等によって接合させて、各連絡流路31ないし34、41ないし44を形成することもできる。
【0024】
また図3(3)に示すように、上記各連絡流路44の出口となる開口部48(48out)またはその近傍には、その下部の第2流体の流路24内に連絡流路44から油が流れ込まないようにするために、ひさし状の突設部61が設けられることが好ましい。この突設部61は、下り勾配を有し、第2流体の流路24を塞ぐことなく、上記第2流体の流路24の出口となる別の開口部48(48out)上方にかかるように形成されることが好ましい。これによって、連絡流路44から流れ出た油は、その下部の第2流体の流路24内に流れ込むことなく上記突設部61を伝って別の連絡流路44へ流れ落ちる。また、上記突設部61によって、第2流体の流路24および別の連絡流路44の入口となる開口部48in(上記第2流体の流路24の開口部48outと同一)が塞がれていないので、第2流体の流路24内で蒸発した作動流体(気体)は、突設部61に遮られることなく、各連絡流路44を通じて第2流出口28(前記図3(2)参照)に導かれる。
上記構成によって、各第2流体の流路24内で蒸発して気体となった作動流体および作動流体が蒸発した後に残された油が円滑に連絡流路44を伝って第2流出口28に流れるようにできる。
【0025】
さらに図1に示すように、上記第1流出口26と第1流入口15とが第1接続管51によって接続され、上記第2流出口18と第2流入口27とが第2接続管52によって接続されている。
したがって、第1接続管51によって第1熱交換器11の第1流体の流路13と第2熱交換器21の第1流体の流路23とが連通され、第2接続管52によって第1熱交換器11の第2流体の流路14と第2熱交換器21の第2流体の流路24とが連通されている。
【0026】
次に、上述の熱交換器1に流入される第1流体Aおよび第2流体Bの流れを説明する。
第1流体Aは、例えば水、空気、もしくはそれらを温めたものであり、第2流体Bは、例えば作動流体と潤滑油(以下、油ともいう。)を含む流体であり、熱交換器1に入るときは、ランキンサイクルの場合は液体であり、冷凍機やヒートポンプの場合は液体と気体の二相状態である。少なくとも、第1流体Aより第2流体Bのほうが低温になっている。また上記作動流体としては、アンモニア、炭化水素(例えば、イソブタン、プロパン等)、二酸化炭素、フルオロカーボン系材料等が挙げられる。なお、オゾン層破壊対策上、いわゆる特定フロンは除き、地球温暖化対策上、いわゆる代替フロンも除くことが好ましいが、フルオロカーボン系の材料の場合、オゾン層破壊係数が0であり、地球温暖化係数が低いものであれば使用される。これらは一例であり、他の作動流体を用いることもできる。また潤滑油としては、水素精製基油、水素化分解基油、化学合成基油ポリアルファオレフィン、ポリエールエステル等の基油(ベースオイル)が用いられ、これらの基油には、通常、油性向上剤、極圧剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、さび止め剤、消泡剤等の添加剤が含まれる。これらは一例であり、他の基油や添加剤を用いることもできる。
【0027】
上記第1流体Aは、第2熱交換器21Aの第1流入口25からそれぞれの連絡流路41を通じて各第1流体の流路23内に導かれる。そして各第1流体の流路23内からそれぞれの連絡流路42を通じて第1流出口26に導かれ、さらに第1接続管51を通じて第1熱交換器11Aの第1流入口15よりそれぞれの連絡流路31を通って各第1流体の流路13内に導かれる。そしてそれぞれの連絡流路32を通って第1流出口16から出る。なお、第1流体Aは、第1流体の流路23内、第1接続管51内および第1流体の流路13内を満たした状態で流れる。
【0028】
一方、作動流体と油を含む第2流体Bは、第1熱交換器11Aの第2流入口17からそれぞれの連絡流路33を通じて各第2流体の流路14内に導かれる。そして各第2流体の流路14内からそれぞれの連絡流路34を通じて第2流出口18に導かれ、さらに第2接続管52を通じて第2熱交換器21Aの第2流入口27よりそれぞれの連絡流路43を通って各第2流体の流路24内に導かれる。そしてそれぞれの連絡流路44を通って第2流出口28から出る。また、上述の突設部61が形成されていることによって、連絡流路44内を流れ出た油は、その下部の第2流体の流路24内入り込むことなく、次に連絡流路44に導かれる。これによって、各第2流体の流路24の壁面を伝って上昇してきた油は効率よく第2流出口28に導かれる。
【0029】
第1流体Aは、第2熱交換器21Aにおいて、第1流体の流路23を流れるとき第2プレート22を介して隣接する第2流体の流路24を流れる第2流体Bとの間で熱交換がなされ、冷やされる。同様に、第1熱交換器11Aにおいて、第1流体の流路13を流れるとき第1プレート12を介して隣接する第2流体の流路14を流れる第2流体Bとの間で熱交換がなされ、さらに冷やされる。
【0030】
一方、熱交換された第2流体Bは、加熱され、例えば、第1熱交換器11Aにおいて、第2流体の流路14内で作動流体が加熱され、第2熱交換器21Aの第2流体の流路24内で作動流体が沸騰し気化され、壁面に沿った上昇方向に圧力を得る。そしてその気体の壁面におけるせん断力によって蒸発されない油(油が成分の多くを占める液体)が第2プレート22の壁面を伝って上昇し、それぞれの連絡流路44を通って第2流出口28から出て、油は潤滑油として使用する機器(例えば圧縮機もしくは膨張機)に戻される。このとき、作動流体は気化した状態で上記機器に戻される。
【0031】
上記熱交換器1Aは、第2熱交換器21の第2プレート22を傾斜させて設置したことにより、油の質量をm、重力加速度をg、第2プレート22の水平に対する傾斜角度をθとすると、油にかかる重力mgのうち壁面に対する垂直方向成分mgcosθが壁面によって支えられるので、壁面に対する平行方向成分がmgsinθとなって小さくなる。一方、従来の熱交換器では、壁面に対する平行方向成分が油にかかる重力mgとなるため、油を上昇させるには重力mgより大きな力が必要となっていた。
このように第2熱交換器21では、油を上昇させる力が少なくてすむので、作動流体の気体成分の壁面とのせん断力によって油は壁面を伝って上昇しやすくなる。
また、作動流体の蒸発液面が大きくなるので、作動流体が蒸発しやすくなる。
【0032】
さらに、上記第2熱交換器21では、第2流体Bの液面から第2流出口28までの間は、第1流体の流路23を流れる第1流体Aとの間で熱交換が行われ、第2流体Bの作動流体、油等が加熱される。これにより、作動流体Bの圧力が高まり、油の粘性が低減されるので、作動流体の気化成分が気化した状態で、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく第2熱交換器21から流出しやすくなる。よって、上述の熱交換器1を備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクルの機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、供給された油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
【0033】
次に、本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第2実施形態を、図4ないし図6を参照して以下に説明する。なお、図6において、2点鎖線で示す第2プレート22は、実線で示した第2プレート22の上方に対向する別の第2プレート22である。
【0034】
図4に示すように、熱交換器1(1B)は、第1熱交換器11(11B)と第2熱交換器21(21B)を備える。
第1熱交換器11(11B)は、前述した第1実施形態の第1熱交換器11(11A)と同様の構成を有する。よって、図4には図1と同様な構成部品には同一符号を付与した。
【0035】
図5(1)、(2)および図6(1)、(2)に示すように、第2熱交換器21(21B)は、前述の第1実施形態の第2熱交換器21Aにおいて、各第1流体の流路23の流路長(同一流路内の開口部45中心と開口部46中心間の距離)と各第2流体の流路24の流路長(同一流路内の開口部47中心と開口部48中心間の距離)とが同等の長さに形成されていて、第1流体の流路23と第2流体の流路24とが順にずらされている点が異なるだけで、その他の構成は第1実施形態の第2熱交換器21Aと同様である。したがって、第2流体の流路24内の第2流体Bの液面と同一流路内の一方の流路端(例えば下端)との距離が同等の長さを有する。また図5(3)に示すように、各連絡流路44は、その内部に第2流体の流路24の壁面を伝わって上昇してきた油が溜まらないように、開口部48in(入口)よりの開口部48out(出口)方向に下るように底面SLが形成されていることが好ましい。
【0036】
さらに、図6(3)、(4)に示すように、第2流体の流路24内における連絡流路44の開口部48out(出口)から別の連絡流路44の開口部48in(入口)に向かう経路には、下り勾配の油連絡流路63が形成されていることが好ましい。この油連絡流路63は、第2流体の流路24内を上昇してきた気体の作動流体や液体の油が別の連絡流路44の入口である上記開口部48inに流入するのを妨げないように形成されることが好ましい。具体的には、油連絡流路63は、第2流体の流路24上でその流路の上面の上部に設けられた開口部48inの下端からその流路の下面の上部に設けられた開口部48outに向かって下る傾斜面を有する。もしくは水平面であってもよい。この油連絡流路63の流路断面は、U字状、V字状、逆台形状、方形状、などの形状を有することが好ましい。また油連絡流路63は、開口部48inに向かうにしたがって流路幅および下部側の第2プレート22との接続面が細くなるように、封止部29側に偏って形成されている。例えば、開口部48inにおける油連絡流路63の流路幅は、開口部48inの周長の1/4ないし1/3程度に接続する長さに形成されている。これによって、油連絡流路63は上記開口部48outから流出される油を受け止めて上記開口部48inに向かって流すとともに、第2流体の流路24内を上昇してきた油が上記開口部48inに向かって流れるのを妨げない。したがって、開口部48outから開口部48inに向かって油が流れ易くなるとともに、第2流体の流路24内を上昇してきた油も開口部48inに向かって流れ易くなる。
よって、第2流体の流路24内を上昇してきた油は、滞ることなく油連絡流路63を介して各連絡流路44を伝って第2流出口28から外部に出る。同時に第2流体の流路24内を上昇してきた気体の作動流体も各連絡流路44を伝って第2流出口28から外部に出る。
【0037】
また、上記第2熱交換器21Bの動作は第1実施形態の第2熱交換器21Aと同様である。よって、図5、図6には図3と同様な構成部品には同一符号を付与した。
【0038】
本発明の熱交換器1Bでは、上述の第1実施形態の熱交換器1Aと同様な作用効果が得られるとともに、以下の作用効果が得られる。すなわち、第2プレート22の各第1流体の流路23の流路長と各第2流体の流路24の流路長とが同等の長さに形成されていて、第2流体の流路24内の第2流体Bの液面と同一流路内の流路端(上端および下端)との距離が同等の長さを有している。そして各第2流体の流路24を流れる第2流体Bの液面は、同一平面で水平になっている。そのため、第2流体の流路24内の第2流体Bは、各流路において液面の高さが同等になり、第1流体Aと第2流体Bとの熱交換面積が各流路で均等になるので熱交換がほぼ均等に行われるようになって、各流路内の分圧がほぼ同等になる。よって、気体の分圧に差異が生じにくくなり、各第2流体の流路24では、その壁面を油成分が均等にかつ円滑に伝わって第2流出口28方向から出るようになる。
また、作動流体の蒸発液面が大きくなるので、作動流体が蒸発しやすくなる。
【0039】
しかも、第2流体Bの液面から第2流出口28までの間は、各第2流体の流路24ともに均等な長さになっているので、第1流体の流路23を流れる第1流体Aとの間で熱交換が行われ、各流路ともに気化した作動流体、油等が均等に加熱される。これにより、各第2流体の流路24において、作動流体の圧力がほぼ均等に高まり、油の粘性がほぼ均等に低減されるので、作動流体の気化成分が気化した状態で、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく第2熱交換器21Bからさらに流出しやすくなる。よって、上述の熱交換器1Bを備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクルの機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、供給された油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
【0040】
次に、本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第3実施形態を、図7を参照して以下に説明する。
【0041】
図7に示すように、熱交換器1(1C)は、第1熱交換器11(11C)と第2熱交換器21(21C)を備える。
【0042】
第1熱交換器11Cは、複数の第1プレート12が所定間隔に積層されて垂直方向に配設されたものからなる。この第1プレート12間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。各第1プレート12の伝熱面(壁面)は、前記第1熱交換器11Aと同様な構成を採用することができる。
【0043】
第2熱交換器21Cは、複数の第2プレート22を水平に対して傾斜させて所定間隔に積層されたものからなる。この第2プレート22間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。各第2プレート22の水平に対する傾斜角度は、前記第1実施形態の第2熱交換器21Aの第2プレート22の傾斜角度を設定したのと同様な理由で、45度以下であり、好ましくは30度以下であり、より好ましくは15度以下である。
また各第2プレート22の伝熱面(壁面)は、前記第1実施形態の第2熱交換器21Aと同様な構成を採用することができる。
【0044】
第1プレート12間には、第1流体Aが流れる第1流体の流路13と作動流体と油を含む第2流体Bが流れる第2流体の流路14とが第1プレート12を挟んで交互に設けられている。第2プレート22間には、上記第1流体Aが流れる第1流体の流路23と上記第2流体Bが流れる第2流体の流路24とが第2プレート22を挟んで交互に設けられている。さらに、上記第1流体の流路13と第1流体の流路23とがそれぞれに連通されていて、上記第2流体の流路14と第2流体の流路24とがそれぞれに連通されている。さらにまた、各第1流体の流路13の流路長と各第2流体の流路14の流路長とが同等の長さに形成され、各第1流体の流路23の流路長と各第2流体の流路24の流路長とが同等の長さに形成されている。したがって、第1熱交換器11および第2熱交換器21の各流路の構成は、第1接続管51、第2接続管52で接続されていないことを除いて、第1実施形態の熱交換器1Aと同様である。
【0045】
各第1プレート12間および各第2プレート22間には、連続して流路を区画する封止部19が外周部に設けられている。この封止部19には、例えばシール材が用いられ、第1プレート12間および第2プレート22間を押し圧することで、第1プレート12間および第2プレート22間が封止部19を介して密着される。なお、上記封止部19を接合部材で構成し、溶接、ろう付け等の接合手段によって接合させることも可能である。
【0046】
また、最も外側の第1プレート12には、第1流体の流路13に後述する連絡流路を介して連通する第1流出口16と第2流入口17とを有する。
第1流出口16は、最も外側の第1プレート12の長手方向の例えば下部に設けられ、第2流入口17は、その第1プレート12の下部に第1流出口16に対向してその長手方向の下部に設けられている。
さらに、最も外側の第2プレート22には、第1流体の流路23に連通する第1流入口25と、第2流体の流路24に連通する第2流出口28とを有する。
第1流入口25は、最も外側の第2プレート22の長手方向の例えば上部に設けられ、第2流出口28は、第1流入口25に対向して長手方向の上部に設けられている。
【0047】
次に、上述の熱交換器1Cに流入される第1流体Aおよび第2流体Bの流れを説明する。
第1流体Aは第1実施形態で説明したような流体が挙げられ、第2流体Bは第1実施形態で説明したような作動流体と潤滑油を含む流体である。
第2流体Bより温度が高い第1流体Aが第1流入口25から連絡流路41(図示しないが前記図5の連絡流路41と同様。)を通じて各第1流体の流路23内に導かれ、さらに第1熱交換器11Cの各第1流体の流路13に導かれ、連絡流路32(図示しないが前記図2の連絡流路32と同様。)を通って第1流出口16から出る。
【0048】
一方、作動流体と油を含む第2流体Bは、第2流入口17から連絡流路33(図示しないが前記図2の連絡流路33と同様。)を通じて第2流体の流路14内に導かれ、さらに第2流体の流路24内に導かれて、連絡流路44(図示しないが前記図5の連絡流路44と同様。)を通って第2流出口28から出る。
【0049】
第1流体Aは、第2熱交換器21Cの第1流体の流路23を流れるとき、第2プレート22を介して隣接する第2流体の流路24を流れる第2流体Bとの間でも熱交換がなされ、冷やされる。同様に、第1熱交換器11Cの第1流体の流路13を流れるとき、プレート12を介して隣接する第2流体の流路14を流れる第2流体Bとの間で熱交換がなされ、さらに冷やされる。
【0050】
一方、熱交換された第2流体Bは加熱され、例えば、第1熱交換器11Cの第2流体の流路14内で作動流体が加熱され、第2熱交換器21Cの第2流体の流路24内で作動流体が沸騰、気化され、その気体によって、蒸発されない油(油が成分の多くを占める液体)が第2プレート22の壁面を伝って上昇し、連絡流路44を通って第2流出口28から出て、油は潤滑油として使用する機器に戻される。
【0051】
本発明の熱交換器1Cでは、第1プレート12間および第2プレート22間に形成された流路内の流体は、第1流体Aおよび第2流体Bともに流路長が同等になり、第2流体の流路24内の第2流体Bの液面と同一流路内の流路端との距離が同等の長さになっている。このため、第1流体Aと第2流体Bとの熱交換面積が各流路で均等になるので熱交換が均等に行われるようになり、各流路内の分圧が同等になる。よって、気体の分圧に差異が生じにくくなり、各流路ともに油成分が均等にかつ円滑に第2流体の流路24の壁面上を伝わり第2流出口28方向から出るようになる。
また、作動流体の蒸発液面が大きくなるので、作動流体が蒸発しやすくなる。
しかも、第2流体の流路14の幅(第1プレート12間の間隔)より第2流体の流路24の幅(第2プレート22間の間隔)のほうが狭く形成されているので、第2流体の流路24の幅が第2流体の流路14の幅と同等に形成されている構成よりも第2流体の流路24内の第2流体Bの流速が速くなる。そして油を移動させる気体のせん断力は流速に比例して大きくなるので、油を上昇方向により移動させ易くなる。
よって、作動流体の気化成分が蒸発しやすくなるとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器1Cから流出しやすくなる。このため、熱交換器1Cを備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクルの機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
【0052】
次に、本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第4実施形態を、図8を参照して以下に説明する。
【0053】
図8に示すように、熱交換器1(1D)は、第1熱交換器11(11D)と第2熱交換器21(21D)を備える。
第1熱交換器11Dは、前述した第1実施形態の第1熱交換器11Aの各第1プレート12を所定間隔に積層して水平に配設した以外、前記第1実施形態の第1熱交換器11Aと同様に構成されている。この第1プレート12間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。
なお、図示例では、第1流入口15、第1流出口16、第2流入口17および第2流出口18は、第1熱交換器11Dの最も上面に配置された第1プレート12に設けられているが、第1流出口16および第2流入口17を最も下面に配置された第1プレート12に設けてもよい。このように配置することで、第1流体Aおよび第2流体Bの流れがより円滑になる。
さらに、第1流入口15、第1流出口16、第2流入口17および第2流出口18は、前述の例のように第1流入口15および第2流出口18、第1流出口16および第2流入口17を対にして同一の第1プレート12面上に配置しなくてもよく、流体の流れに対する位置関係以外には制約を受けない。したがってさまざまな配置が可能である。
【0054】
この熱交換器1Dでは、第2熱交換器21(21D)が前述した第2実施形態の第2熱交換器21Bと同様に構成されている。したがって、各第1流体の流路23の流路長と各第2流体の流路24の流路長とが同等の長さに形成され、第2流体の流路24内の第2流体Bの液面と同一流路内の流路端との距離が同等の長さになっているので、動作、作用効果が第2実施形態の熱交換器1Bと同様になる。それとともに、以下の作用効果が得られる。すなわち、第1熱交換器11Dの各第1プレート12が水平かつ平行に配置されているので、第1熱交換器11Dと第2熱交換器21Dとを接続する第1接続管51、第2接続管52の長さをでき得る限り短く設定することで、前述の熱交換器1Bよりも設置容積の小さい構成とすることができる。
【0055】
次に、本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第5実施形態を、図9を参照して以下に説明する。
【0056】
図9に示すように、熱交換器1(1E)は、第1熱交換器11(11E)と第2熱交換器21(21E)を備える。
【0057】
第1熱交換器11Eは、複数の第1プレート12が所定間隔に積層されて水平方向に配設されたものからなり、各流路長を同一とするために端部の形状に違いはあるものの前述の第4実施形態の第1熱交換器11Dと同様である。この第1プレート12間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。また、各第1プレート12の伝熱面(壁面)は、前記第1実施形態の第1熱交換器11Aと同様な構成を採用することができる。
【0058】
第2熱交換器21Eは、複数の第2プレート22を水平に対して傾斜させて所定間隔に積層されたものからなり、各流路長を同一とし、第2流体の流路24内の第2流体Bの液面と第1流体の流路23を含めた同一流路内の流路端との距離を同等の長さにするために第1熱交換器11E側の形状に違いはあるものの前述の第3実施形態の第2熱交換器21Cと同様な構成である。第2プレート22間の間隔は等間隔が好ましいが、外部の熱の影響を受ける可能性がある場合には、最も外側の流路を形成するプレート間隔を変えて設定してもよい。
各第2プレート22の水平に対する傾斜角度は、前記第1実施形態の第2熱交換器21Aの第2プレート22の傾斜角度を設定したのと同様な理由で、45度以下であり、好ましくは30度以下であり、より好ましくは15度以下である。
各第2プレート22の伝熱面(壁面)は、前記第1実施形態の第2熱交換器21Aと同様な構成を採用することができる。
【0059】
また、第1プレート12間には、第1流体Aが流れる第1流体の流路13と作動流体と油を含む第2流体Bが流れる第2流体の流路14とが第1プレート12を挟んで交互に設けられている。第2プレート22間には、上記第1流体Aが流れる第1流体の流路23と上記第2流体Bが流れる第2流体の流路24とが第2プレート22を挟んで交互に設けられている。さらに、上記第1熱交換器11Eの第1流体の流路13と上記第2熱交換器21Eの第1流体の流路23とがそれぞれに連通されていて、上記第1熱交換器11Eの第2流体の流路14と上記第2熱交換器21Eの第2流体の流路24とがそれぞれに連通されている。さらにまた、各第1流体の流路13の流路長と各第1流体の流路23の流路長とを合わせた長さと、各第2流体の流路14の流路長と各第2流体の流路24の流路長とを合わせた長さとが同等の長さに形成されている。これによって、各流路における熱交換容量をほぼ同等にすることができる。
なお、各第1流体の流路13と各第2流体の流路14との間で熱交換容量が十分に確保されている場合には、必ずしも流路長が同等の長さに形成される必要はない。
【0060】
各第1プレート12間および各第2プレート22間には、連続して各流路を区画する封止部(図示せず)が外周部に設けられている。この封止部には、例えばシール材が用いられ、第1プレート12間および第2プレート22間を押し圧することで、第1プレート12間および第2プレート22間が封止部を介して密着される。なお、上記封止部を接合部材で構成し、溶接、ろう付け等の接合手段によって接合させることも可能である。
【0061】
また、最も上面の第1プレート12の第2プレート22とは反対側端部には、各第1流体の流路13に、連絡流路(図示しない)を介して連通する第1流出口16と、連絡流路(図示しない)を介して連通する第2流入口17を有する。これらの第1流出口16と第2流入口17とは第1プレート12の端部に対向して設けられている。
さらに、最も下面の第2プレート22の第1プレート12とは反対側端部には、各第1流体の流路23に連絡流路(図示しないが前記図5の連絡流路41と同様。)を介して連通する第1流入口25と、各第2流体の流路24に連絡流路(図示しないが前記図5の連絡流路44と同様。)を介して連通する第2流出口28を有する。これらの第1流入口25と第2流出口28とは第2プレート22の端部に対向して設けられている。
【0062】
上述の熱交換器1Eに流入される第1流体Aおよび第2流体Bの流れる経路は、前述した第3実施形態の熱交換器1Cと同様である。
【0063】
本発明の熱交換器1Eでは、前記第3実施形態の熱交換器1Cと同様なる作用効果が得られることから、作動流体の気化成分が蒸発しやすくなるとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器1Eから流出しやすくなる。このため、熱交換器1Eを備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクルの機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
【0064】
さらに、第1流体の流路23および第2流体の流路24における作動流体の蒸発液面をでき得る限り第1熱交換器11E側に近い位置に生じるようにすることにより、第2流体の流路24において作動流体が蒸発してなる気体の流路を長く確保することができる。このため、作動流体が蒸発してなる気体は、第1流体Aとの熱交換が十分に行えるので十分に加熱され、圧縮機もしくは膨張器に達するまで、気体状態を保つことが容易に可能になる。よって、液体状態の作動流体による圧縮機もしくは膨張器の損傷を大幅に低減することができる。
また第1熱交換器11Eの各第1プレート12が水平かつ平行に積層されていることから、各流路における各流体の移動が円滑に行われるようになる。これは、各流体が水平方向に移動するためである。
【0065】
上記各実施形態の第1熱交換器11において、各第1流体の流路13、各第2流体の流路14は、各第1プレート12に設けた開口部35ないし38に近づくにつれて流路を細めて、開口部35ないし38の大きさに近づくように封止部19を配置することが好ましい。同様に、上記各実施形態の第2熱交換器21において、各第1流体の流路23、各第2流体の流路24は、各第2プレート22に設けた開口部45ないし48に近づくにつれて流路を細めて、開口部45ないし48の大きさに近づくように封止部29を配置することが好ましい。このように封止部19、29を配置することにより、各流体の流入、流出がより円滑になる。
また、流路のプレート間隔を等間隔としたが、第1流体Aと第2流体Bの熱容量に応じて、第1流体の流路13、23のプレート間隔と、第2流体の流路14、24のプレート間隔を異なる間隔としてもよい。
【0066】
さらに、第3実施形態、第5実施形態の熱交換器1C、1Eにおいて、第2プレート22間の間隔が狭すぎる場合、壁面に対する流体摩擦が大きくなる。したがって、上記間隔は、第1流体Aおよび第2流体Bの壁面に対する摩擦が各流体の流れを阻害しないような間隔に形成されていることが好ましい。
【0067】
上述の熱交換器1は、従来のプレートを垂直に配設した構成のプレート式熱交換器の熱交換容量と同等となるように、第1熱交換器11と第2熱交換器21の熱交換容量を考慮して、それぞれの機器の大きさが決定される。しかも、前述したように、第2熱交換器21の第2プレート22の傾斜角度を考慮して、作動流体の気化成分を蒸発しやすくするとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器1から流出しやすくしている。したがって、単に従来の熱交換器をそのまま2台用い、1台はプレートが垂直になるように設置し、もう1台はプレートが傾斜するように設置したものとは異なるものである。
【0068】
次に、本発明の熱交換器に係る好ましい一実施形態としての第6実施形態を、図10および図11を参照して以下に説明する。
【0069】
図10および図11に示すように、熱交換器2は、らせん状に形成された連続面を有する複数のプレート112が等間隔に積層されて垂直方向に配設されたものからなる。各プレート112の壁面の水平に対する傾斜角度は、45度以下であり、好ましくは30度以下であり、より好ましくは15度以下である。これらの傾斜角度としたのは、前記第1実施形態で説明した理由による。上記壁面の傾斜角度は、らせん面の幅方向の中央でらせん方向に測定される傾斜角度とする。
各プレート112間には、第1流体Aが流れる第1流体の流路113と作動流体と油を含む第2流体Bが流れる第2流体の流路114とがプレート112を挟んで交互にらせん状に設けられている。
【0070】
上記第1流体の流路113と第2流体の流路114は、各プレート112のそれぞれの内周および外周に接合された内壁131および外壁132と各プレート112によって形成されている。これによって、各プレート112間の内周および外周の各側面は内壁131および外壁132によって密閉される。この内壁131、外壁132は、各プレート112間を密閉するものであれば、いかなる形状であってもよい。例えば、内壁131はプレート112内周に合わせた円筒状に形成され、外壁132は各プレート112の外周に合わせた円筒状に形成され、各プレート112の内周および外周に設けた図示しないシール部材によって内壁131、外壁132に密着する構成であってもよい。または、各プレート112間において、内壁131、外壁132は、らせん状に形成されていて、各プレート112間の内周側が内壁131により封止され、各プレート112間の外周側が外壁132により封止されている構成であってもよい。
【0071】
各プレート112の上部には、上記プレート112の外周よりも大きな上部壁133が設けられている。この上部壁133は、第1流体の流路113の一方側(例えば上端)を密閉し、第2流体の流路114上に開口部134を有し、上記内壁131、外壁132に接合されている。
上部壁133の上面は、第1流体の流路113上の部分が外側に向かって、緩やかに下る傾斜面となっていることが好ましい。また、第2流体の流路114の出口付近は滑らかな面に形成されていることが好ましい。これらにより、第2流体の流路114から出てきた油が上部壁133の上面を伝って外側方向に流れやすくなる。
第2流体の流路114の出口上方の上部壁133上には、隣接する開口部134内に油が流れ落ちないように、堰135が半径方向に形成されている。これにより、第2流体の流路114から出てきた油が堰135を伝って上部壁133の外周方向により流れやすくなっている。
【0072】
上部壁133には、第2流体Bの出口となる第2流出口118が設けられている。第2流出口118は、作動流体の気化成分によって油が外部に流出しやすい位置に形成されることが好ましい。例えば、上部壁133の外周部で、それぞれの第2流体の流路114に連続する連絡流路121の底面を構成する第1流体の流路113上の上部壁133部分より外側で堰135の近傍に設けられている。また、第2流出口118の出口は下向きに形成されている。このため、堰135を伝ってきた油は、第2流出口118から流出しやすくなる。
【0073】
上記上部壁133上には、上部壁133の上面を底面とする第2流体Bの連絡流路121が密閉構造に形成される第1容器136が設けられている。この第2流体Bの連絡流路121は、主に第2流体Bの気体成分の流路となる。さらに、第1容器136上には第1流体Aの連絡流路122を密閉構造に形成する第2容器137が設けられている。この第2容器137の底部から各第1流体の流路113に通じる連絡配管138が形成され、第2容器137の上部には、第1流体Aが流入される第1流入口115が設けられている。
【0074】
一方、各プレート112の下部は下部壁139が接合され、さらに下部壁139は上記内壁131、外壁132の下部側に接合されている。下部壁139には、第1流体の流路113に連通する第1流出口116と、第2流体の流路114に連通する第2流入口117とを有する。図示はしていないが、第2流入口117と第2流体の流路114との間に第2流体Bの液貯蔵部を設け、各第2流体の流路114に第2流体Bが均等に流入しやすくすることが好ましい。
【0075】
上述したように、第1、第2流入口115、117、第1、第2流出口116、118を除き、各プレート112間は密閉されている。なお、各プレート112間が密閉状態になる構成であれば、上記構成に限定されない。
また上記プレート112間隔は等間隔としたが、第1流体Aと第2流体Bの熱容量に応じて、第1流体の流路113のプレート間隔と、第2流体の流路114のプレート間隔を異なる間隔としてもよい。
【0076】
さらに、第2容器137の底面は、連絡配管138の入口に向かって緩やかな下り勾配が形成されていることが好ましい。これによって、第1流体Aが連絡配管138内に流れ込みやすくなる。同様に、上部壁133の上面は、第2流出口118に向かって緩やかな下り勾配が形成されていることが好ましい。これによって、第2流体Bの油が第2流出口118に流れ込みやすくなる。
【0077】
次に、上述の熱交換器2に流入される第1流体Aおよび第2流体Bの流れを説明する。
第1流体Aは、前述の第1実施形態で説明したものと同様な流体(例えば、水、空気、温水、温められた空気等)であり、第2流体Bは、前述の第1実施形態で説明したものと同様な作動流体と潤滑油を含む流体である。
第1流体Aは、第1流入口115から連絡流路122、連絡配管138を通って各第1流体の流路113内に導かれる。そして第1流体の流路113内より第1流出口116から出る。
一方、第2流体Bは、各第2流入口117から各第2流体の流路114内に導かれる。そして第2流体の流路114内より連絡流路121を通って第2流出口118から出る。
【0078】
第1流体Aは、第1流体の流路113を流れるとき、プレート112を介して隣接する第2流体の流路114を流れる第2流体Bとの間で熱交換がなされ、冷やされる。
一方、熱交換された第2流体Bは加熱され、例えば、第2流体の流路114内で作動流体が沸騰されてさらに気化され、その気体のせん断力によって、蒸発されない油(油が成分の多くを占める液体)がプレート112の壁面(上面)を伝って上昇し、作動流体の気体とともに第2流出口118から出る。
【0079】
本発明の熱交換器2では、プレート112間に形成された各第1流体の流路113および各第2流体の流路114ともに流路長が同等になり、各流路における第1流体Aと第2流体Bとの熱交換面積がほぼ均等になるので、どの流路でもほぼ同等に熱交換が行われ、各流路内の分圧がほぼ同等になる。よって、流体および気体の分圧に差異が生じにくくなり、各流路ともに油成分が均等にかつ円滑に第2流体の流路114を伝わり第2流出口118方向から出るようになる。
また、第2流体の流路114が傾斜していることから、作動流体の蒸発液面が大きくなるので、作動流体が蒸発しやすくなる。
これにより、熱交換器2は、作動流体の気化成分が蒸発しやすくなるとともに、非蒸発成分(油)が作動流体中に溜まることなく熱交換器2から流出しやすくなるので、この熱交換器2を備えたヒートポンプや冷凍機の圧縮機やランキンサイクルの機関の膨張機では、作動流体は気体の状態で供給され、油によって潤滑が滞りなく行なわれるので、圧縮機や膨張機の寿命が延ばすことができる。
さらに、プレート112がらせん状に形成されていることから、熱交換容量を同一とした場合、上述の熱交換器1よりも設置容積を縮小することができ、装置の小型化が図れる。
【0080】
次に、上記第2プレート22、プレート112の壁面の水平に対する傾斜角度について説明する。以下の説明では、第2プレート22について説明するが、プレート112も第2プレート22と同様である。ただし、プレート112の傾斜角度は、前述したように、らせん面の幅方向の中央でらせん方向に測定される傾斜角度とする。
【0081】
第2プレート22の壁面の水平に対する傾斜角度は、上述したように、45度以下であり、好ましくは30度以下であり、より好ましくは15度以下である。
一方、第2プレート22の壁面の水平に対する傾斜角度が小さすぎると、第2熱交換器21の各第2流体の流路24内に作動流体液面が現れるようにして油を第2プレート22の壁面を伝わせるようにするために、第2熱交換器21の長さを非常に長くする必要があり、小型のヒートポンプや冷凍機に適用することが難しくなる。また第1実施形態の熱交換器1Aでは、各第2流体の流路24の流路長が異なるため、短い流路長の流路では第1流体Aと第2流体Bとの熱交換が不十分となり、各流路において熱交換量が異なることになる。すなわち、流路によって、十分に熱交換された流体と十分に熱交換されない流体が生じるため、短い流路では作動流体が気化する量が少なくなる場合もある。そのため、各流路で油の移動量にばらつきを生じることがある。
一方、第2プレート22の水平に対する傾斜角度が大きすぎると、油にかかる重力の壁面方向成分の力が大きくなり、作動流体が気化した気体のせん断力によって油を上昇させることが難しくなる場合がある。
よって、第2プレート22の水平に対する傾斜角度は上記範囲に設定される。なお、傾斜角度が小さくなるほど油が伝わり易くなるが、各第2流体の流路24に第2流体B(作動流体)の液界面が生じるように、かつ第2熱交換器21の長さが長すぎないように、熱交換器1が適用される機器に応じて傾斜角度の下限は設定される。
【0082】
次に、上記実施形態の変形例について以下に説明する。
第1の変形例は、上述した第2実施形態の第1熱交換器11B上に、第2熱交換器21Bの代わりに上述した第6実施形態の熱交換器2を設ける構成である。この構成では、熱交換器下面の設置面積を第6実施形態の熱交換器2より小さくすることができる。また、熱交換器下部の設置面積を第2実施形態の熱交換器1Bと同等にして、第2熱交換器21Bより小型にすることが可能となる。
【0083】
第2の変形例は、上述した第1実施形態の第2熱交換器21Bのみを用いて熱交換器1を構成するものである。この構成であっても、本発明の目的である第2プレート22の壁面の油の移動を円滑にすることが可能となる。この構成では、第1流体Aと第2流体Bとの熱交換容量を確保するとともに、流路内に第2流体Bの液面が生じるように、流路を長くする必要がある。このため、熱交換器の長さが長くなるが、この長さが許容できる場合には、熱交換器を第2熱交換器21Bのみの構成とすることは、装置構成が簡単になり好ましい。
【0084】
第3の変形例は、熱交換器1の各実施形態において、各プレートの形状は、矩形に限定されることはなく、矩形で角部に丸みが形成されている形状、円形状、長円形状、多角形状等、種々の形状を採用することがでる。これらの形状は、設置場所等によって、適宜選択される。また、流路の形状も、種々の形状に構成することができる。
【0085】
次に、本発明の熱交換器の適用例として、冷凍機に適用した一例を図12によって、ランキンサイクルの機関に適用した一例を図13によって説明する。
【0086】
まず、冷凍機に適用した一例を説明する。なお、ヒートポンプに適用した場合も冷凍機と同様になる。
図12に示すように、冷凍機200は、作動流体が、圧縮機201、凝縮器202、膨張器203、蒸発器204の順に循環し、再び圧縮機201に戻る熱サイクルを有する。
具体的には、作動流体は、油を含む作動流体であり、この作動流体には、アンモニア、炭化水素、二酸化炭素、フルオロカーボンン系材料等の材料が用いられる。なお、フルオロカーボンン系材料は、前述したように、オゾン層破壊係数が0であり、地球温暖化係数が低い材料が好ましい。
上記圧縮機201は作動流体を断熱圧縮して凝縮器202に送る。
凝縮器202では、作動流体が持つ熱を放熱させることで作動流体を冷却する。冷やされた作動流体は膨張器203に送られる。
膨張器203は、例えば膨張弁で構成されていて、作動流体は断熱膨張によって膨張してさらに冷やされる。膨張器としては他にキャピラリーチューブ、あるいは圧縮機とほぼ同様の構成を持ち、圧縮とは逆の膨帳作用を行わせる膨張機を使用する場合もある。膨張後の作動流体の状態は液体と気体の二相状態である。その冷却された作動流体は、蒸発器204に送られる。
蒸発器204に移動した作動流体は熱交換によって加熱される。この加熱された作動流体は、再び圧縮機201に送られ、再び圧縮される。
【0087】
本発明の熱交換器1および2は、上記蒸発器204に適用することができる。以下、この蒸発器204に熱交換器1を適用した場合について説明する。なお、熱交換器2を適用した場合でも、熱交換器1と同様の動作が行われる。
【0088】
蒸発器204に適用した熱交換器1では、作動流体は加熱され沸騰し蒸発される。ここでは、第2流体Bの作動流体には上述したアンモニア、炭化水素、二酸化炭素、フロン等を用いる。なお、二酸化炭素、フロン等を用いる場合、地球温暖化対策として系を閉塞系とし、回収できるようにすることが好ましい。作動流体が蒸発すると作動流体中に存在していた蒸発しない油が残される。この油は、作動流体が蒸発してなる気体によって、第2プレート22の壁面上を伝って上昇し、圧縮機201に送給される。同時に圧縮機201には、気体状態の作動流体が送給される。上記作動流体が蒸発した後は、第2流体の流路24は、第1流体Aとの熱交換によって加熱されるので、そこを流れる気化した作動流体は、凝縮を起こすことなく、気体の状態で第2流体の流路24中を移動することができる。ここでの第1流体Aには、水または空気を用い、より好ましくは温水、水蒸気、加熱された空気等を用いる。
【0089】
上記冷凍機200では、本発明の熱交換器1を蒸発器204に適用したことにより、作動流体が蒸発した油は、気化された作動流体のせん断力によって、第2プレート22の壁面を伝って押し上げられやすくなるので、その油は第2プレート22の壁面を上部の第2流出口18方向に伝いやすくなる。その際、蒸発した作動流体の気体は第2流体の流路24を上昇する際に、さらに熱交換によって加熱されるので、気体のせん断力が増し、油を押し上げる力が高められる。このため、油は圧縮機201方向にさらに送給されやすくなる。なお、冷凍機の場合には、作動流体は膨張器を経て気体と液体の二相状態になるので、前述した第2熱交換器21Bのみを用いることが好ましい。
【0090】
次に図13に示すように、ランキンサイクル機関300は、圧縮機(例えばポンプ)301で断熱圧縮(圧力P1から圧力P2まで加圧し、温度T1から温度T2に加熱)させ加熱した作動流体を蒸発器302(加熱器)に移動する。
蒸発器302により作動流体を加熱(等圧加熱して等圧蒸発させた後にさらに等圧加熱)(熱量Q1を吸熱し温度T2から温度T3に加熱)して蒸気を生成し、その蒸気となった作動流体は膨張機303(例えば、ピストン式膨張機、スクロール式膨張機、スクリュー式膨張機等の容積式膨張機)に移動する。
膨張機303では、作動流体(蒸気)を断熱膨張(温度T3から温度T4になる)させて熱エネルギーを動力に変換させた後、作動流体は凝縮器304に移動する。
凝縮器304では、作動流体(蒸気)から放熱させて周囲を加熱するとともに、熱交換によって作動流体を冷却(熱量Q2を放熱させ、温度T4から温度T1に冷却)することで、作動流体は凝縮されて液体に戻り、その作動流体が圧縮機301に戻る。
【0091】
本発明の熱交換器1および2は、上記蒸発器302に適用することができる。以下、この蒸発器302に熱交換器1を適用した場合を説明する。なお、熱交換器2でも、熱交換器1と同様の動作が行われる。
【0092】
熱交換器1では、作動流体は加熱され沸騰し蒸発される。ここでは、第2流体Bの作動流体には上述したアンモニア、炭化水素、二酸化炭素、フルオロカーボン系材料等を用いる。なお、フルオロカーボン系材料を用いる場合、地球温暖化対策として、作動流体の循環を閉塞系とし、外部に漏れないようにして回収できるようにすることが好ましい。
作動流体が蒸発すると作動流体中に存在していた蒸発しない油が残される。この油は、作動流体が蒸発してなる気体のせん断力よって、第2プレート22の壁面上を伝って上昇し、膨張機303に送給される。同時に膨張機303には、気体状態の作動流体が送給される。作動流体の蒸発液面上の第2流体の流路24も、第1流体Aとの熱交換によって加熱されるので、気化した作動流体は、さらに加熱されて凝縮を起こすことなく気化状態で第2流体の流路24中を上昇移動することができる。ここでの第1流体Aには、水、空気を用い、より好ましくは温水、水蒸気、加熱された空気等を用いる。
なお、作動流体の液面が第2流体の流路24の上部に近い場合、すなわち、第2流体の流路24で気化した作動流体にさらなる加熱がない場合は、T−s線図において飽和蒸気線から断熱膨張を行う(点線の矢印で示す経路)ことに相当する。
【0093】
上記ランキンサイクル機関300では、蒸発器302に本発明の熱交換器1を適用したことにより、作動流体が蒸発した後に残された油は、気化された作動流体のせん断力によって、第2プレート22の壁面を伝って押し上げられやすくなる。このため、油は第2プレート22の壁面を上部の第2流出口18方向に伝いやすくなる。その際、作動流体の気体は第2流体の流路24を上昇する際に、さらに熱交換によって加熱されるので、気体のせん断力が増し、油を押し上げる力が高められる。このため、油は膨張機303方向に送給されやすくなる。
【0094】
よって、本発明の熱交換器1または2を備えた冷凍機(またはヒートポンプ)200の圧縮機201やランキンサイクル機関300の膨張機303では、作動流体は気体の状態で供給されるとともに、油が滞りなく供給される。このため、その油による潤滑が継続して行なわれるので、圧縮機201や膨張機303の寿命が延ばすことができる。また、液体の状態で作動流体が圧縮機201や膨張機303に供給されないので、液体の作動流体による圧縮機201や膨張機303の損傷を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0095】
1(1A,1B,1C,1D,1E),2 熱交換器
11 第1熱交換器
12 第1プレート
13,23,113 第1流体の流路
14,24,114 第2流体の流路
15,25,115 第1流入口
16,26,116 第1流出口
17,27,117 第2流入口
18,28,118 第2流出口
21 第2熱交換器
22 第2プレート
51 第1接続管
52 第2接続管
112 プレート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1プレートが所定間隔に積層されて構成され、
前記複数の第1プレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが前記第1プレートを挟んで交互に設けられた第1熱交換器と、
複数の第2プレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層され、
前記複数の第2プレート間に第1流体の流路と第2流体の流路とが前記第2プレートを挟んで交互に設けられた第2熱交換器とを有し、
前記第1熱交換器の第1流体の流路に連通する第1流出口と前記第2熱交換器の第1流体の流路に連通する第1流入口とが接続され、
前記第1熱交換器の第2流体の流路に連通する第2流出口と前記第2熱交換器の第2流体の流路に連通する第2流入口とが接続された熱交換器。
【請求項2】
前記第2熱交換器は、前記第2熱交換器の各第1流体の流路の流路長と前記第2熱交換器の各第2流体の流路の流路長とが同等の長さに形成されていて、各第2流体の流路内における第2流体の液面と同一流路内の一方の流路端との距離が同等の長さを有する請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
複数のプレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層され、
前記複数のプレート間に第1流体の流路と第2流体の流路とが前記プレートを挟んで交互に設けられ、
前記第1流体の流路の一方側に連通する第1流体が流入する第1流入口と前記第1流体の流路の他方側に連通する第1流体が流出する第1流出口と、
前記第2流体の流路の一方側に連通する第2流体が流入する第2流入口と前記第2流体の流路の他方側に連通する第2流体が流出する第2流出口とを有する熱交換器。
【請求項4】
複数の第1プレートが所定間隔に積層されて構成され、前記第1プレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが前記第1プレートを挟んで交互に設けられた第1熱交換器と、
複数の第2プレートが水平に対して傾斜を有して所定間隔に積層され、
前記第2プレート間に第1流体の流路と第2流体の流路とが前記第2プレートを挟んで交互に設けられた第2熱交換器とを有し、
前記第1熱交換器の第1流体の流路と前記第2熱交換器の第1流体の流路とがそれぞれに直接連通され、前記第1熱交換器の第2流体の流路と前記第2熱交換器の第2流体の流路とがそれぞれに直接連通されていて、
前記連通するそれぞれの第1熱交換器の第1流体の流路と第2熱交換器の第1流体の流路とを合わせた流路長が等しく、
前記連通するそれぞれの第1熱交換器の第2流体の流路と第2熱交換器の第2流体の流路とを合わせた流路長が等しい熱交換器。
【請求項5】
前記複数の第1プレートが水平と平行に積層されている請求項1または4記載の熱交換器。
【請求項6】
らせん状に形成された連続面を有する複数のプレートが等間隔に垂直方向に積層されて構成され、
前記複数のプレート間に第1流体の流路と作動流体と油を含む第2流体が流れる第2流体の流路とが交互に設けられ、
前記第1流体の流路の一方側に連通する第1流体が流入する第1流入口と前記第1流体の流路の他方側に連通する第1流体が流出する第1流出口と、
前記第2流体の流路の一方側に連通する第2流体が流入する第2流入口と前記第2流体の流路の他方側に連通する第2流体が流出する第2流出口とを有する熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−189261(P2012−189261A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53287(P2011−53287)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省、「地域イノベーション創出研究開発事業(工場低温廃熱を有効活用した可搬型小型発電システムの研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000192383)アルバック理工株式会社 (26)
【Fターム(参考)】