説明

熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法

【課題】簡単な構成で製造が容易でありながら、加熱部の熱を容器へ効果的に熱伝導させることができ、大重量の薬品入り容器を頻繁に交換する場合でも熱伝導効率がほとんど低下せず、また、クリーンルーム内での使用が可能な熱伝導シートを提供する。
【解決手段】加熱部21と、これに加熱される容器との隙間に介在させる熱伝導シート3であって、金属薄膜材を、所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させた後、該金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、金属薄膜材どうしが連続又は接触する伝熱経路と、該伝熱経路の間に散在する微少間隙部とを形成した複数の熱伝導基材30を備え、これら熱伝導基材30を、前記容器の接触面形状に対応する形状に配置し、これら熱伝導基材30の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材40により被覆した構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム型の金属製容器に入れた薬品を容器ごと加熱する場合に、容器と加熱部との隙間を埋めて熱伝導性を良好にすることができる熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法に関し、特に、クリーンルーム内において、半導体又は液晶基板等の電子部品を洗浄するための薬品を加熱する場合に好適な熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体又は液晶基板等の電子部品の製造過程では、これら電子部品に付着した微細な異物を除去すべく、クリーンルーム内において薬品洗浄を行っている。例えば、半導体又は液晶基板の薬品洗浄では、100kg〜200kgの液体状の薬品を容器に入れて用いている。薬品は、容器から洗浄装置へ移液する必要があるが、常温下で容器内の薬品が固化又は高粘性化しないようにするため、薬品を容器ごと加熱して液状又は低粘性を保ち、容器内の薬品の移液を容易にしていた。
【0003】
また、薬品を用い、半導体又は液晶基板を洗浄又は有機被膜の除去を行う場合には、有機アミン類、ラクトン類、カーボネート類又は酸類等の薬品を交換して使用するため、頻繁な容器の入れ替えを容易にすべく、薬品を入れた金属製の容器をベースヒータの上に載置して加熱していた。この場合、金属製の容器の底面と、ベースヒータの載置面とを互いに一致し合う鏡面形状に加工し、熱伝導効率の向上を図っていた。
【特許文献1】特開2005−303240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の薬品の加熱方法では、金属製の容器の底面と、ベースヒータの載置面とを互いに一致し合う鏡面形状に加工したとしても、加工の際における金属の冷却に生じる歪みによって、鏡面形状に誤差が生じてしまい、容器をベースヒータの上に載置したときに、容器の底部とベースヒータの載置面との間に部分的な数mmの隙間が生じてしまう場合があった。このような隙間には、熱伝導率が極めて低い空気が介在するため、ベースヒータから容器への熱伝導を大きく妨げ、容器内の薬品を所定の温度まで加熱するために時間が掛かるという問題があった。
【0005】
ここで、従来から電子機器に搭載されるCPU等の各種電子部品の温度制御を行うために熱伝導シートが用いられており、このような熱伝導シートを介在させることによって、容器の底部とベースヒータの載置面との部分的な隙間を埋めることも考えられる。例えば、特開2005−303240号(特許文献1)では、熱伝導性粒子を肉厚方向に配向させた状態で含有する構成の熱伝導シートが提案されている。この熱伝導シートによれば、熱伝導性粒子の連鎖によって肉厚方向に伸びる伝熱経路が形成され、肉厚方向に高い熱伝導性が得られる。
【0006】
ところが、100kg〜200kgもの大重量の薬品入り容器を熱伝導シート上に載置したならば、該熱伝導シートが潰されてしまい、別の薬品入り容器に交換したときに、この容器の底部とベースヒータの載置面との部分的な隙間を埋めることができないという問題がある。
【0007】
また、大重量の薬品入り容器を頻繁に入れ替える場合には、容器の底部との摩擦によって熱伝導シートが塵芥を発生させてしまい、半導体又は液晶基板の洗浄するクリーンルーム内で使用することができないという問題もある。
【0008】
特に、特開2005−303240号の熱伝導シートは、その構成が極めて複雑であり、化学メッキ法、スパッタリング法などによって、芯粒子の表面に高熱伝導性材料を被覆する工程、及び、シート成形材料の肉厚方向に平行磁場を作用させて、該シート成形材料の肉厚方向に熱伝導性粒子が並ぶよう配向させる工程が必要となり、その製造に多大な手間と時間、費用を要するという問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で製造が容易でありながら、加熱部の熱を容器へ効果的に熱伝導させることができ、大重量の薬品入り容器を頻繁に交換する場合でも熱伝導効率がほとんど低下せず、また、クリーンルーム内での使用が可能な熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導基材は、加熱部と、これに加熱される容器との隙間に介在させる熱伝導基材であって、金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記金属薄膜材どうしが連続又は接触する伝熱経路と、該伝熱経路の間に散在する微少間隙部とを形成した構成としてある。
【0011】
上記構成からなる本発明の熱伝導基材は、大重量の薬品入り容器と加熱部との間に介在させると、容器からの荷重を受けて微少間隙部が潰れ、容器及び加熱部の各接触面形状に追従してその肉厚方向に変形する。これにより、容器及び加熱部の各接触面の隙間が埋まるとともに、金属薄膜材によって形成された伝熱経路がより密となり、加熱部の熱を容器へ効果的に熱伝導させることができる。
【0012】
ここで、本熱伝導基材の「所定肉厚」とは、容器及び加熱部の各接触面の隙間寸法に、潰し代(しろ)を加えた厚さをいう。該潰し代は、本熱伝導基材が容器の荷重を受けたときに潰れて、容器及び加熱部の各接触面の隙間を埋めるための余剰肉厚である。
【0013】
好ましくは、前記金属薄膜材を、所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させた後、該金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記伝熱経路及び前記微少間隙部を形成した構成とする。
【0014】
このような構成によれば、金属薄膜材を所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させたことにより、本熱伝導基材に形成される伝熱経路及び微少間隙部をより均一な分布で散在させることができる。これにより、本熱伝導基材の熱伝導効率を均一化することができるとともに、後述する弾性部材を用いた復元性も均一化することができる。
【0015】
ここで、金属薄膜材を繰り返し規則的に折り曲げ変形させる「所定方向」とは、縦、横又は斜め方向の種々の方向が含まれ、例えば、次に述べるように「最終的に形成される前記シート状基材の肉厚方向」に向かって、山折りと谷折りを繰り返すように折曲変形させるとよい。
【0016】
好ましくは、前記金属薄膜材を、最終的に形成される前記熱伝導基材の肉厚方向に向かって、山折りと谷折りとを繰り返すように折り曲げ変形させた後、該金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記伝熱経路及び前記微少間隙部を形成した構成とする。
【0017】
このような構成によれば、金属薄膜材どうしが連続又は接触してなる伝熱経路が、本熱伝導基材の肉厚方向に形成されやすくなり、該肉厚方向の熱伝導効率の向上を図ることができる。また、大重量の薬品入り容器から荷重を受けたときに、本熱伝導シートの各部がその肉厚方向に潰れやすくなり、容器及び加熱部の各接触面形状により良好に追従して変形可能となる。
【0018】
好ましくは、前記金属薄膜材を複数枚重ね合わせた後、これら金属薄膜材に前記折り曲げ変形又は前記押し固めの処理を施した構成とする。
【0019】
このような構成によれば、金属薄膜材を複数枚重ね合わせることにより、本熱伝導基材の強度と耐久性とを向上させることができる。また、該金属薄膜材どうしが連続又は接触して形成される伝熱経路が増大し、熱伝導効率の向上を図ることもできる。
【0020】
好ましくは、前記微少間隙部に、耐熱性及び復元性を有する弾性部材を介在させた構成とする。
【0021】
このような構成によれば、弾性部材によって本熱伝導基材に肉厚方向の復元性が付与されるので、寸法誤差や歪みの位置が異なる数種類の薬品入り容器を交換して加熱する場合でも、これら容器と加熱部の各接触面の隙間を埋めることができ、熱伝導効率をほとんど低下させることもない。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導シートは、上述したいずれかの熱伝導基材を備えた熱伝導シートであって、複数の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に配置し、これら熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆した構成としてある。
【0023】
このような構成によれば、金属薄膜材からなる熱伝導基材が、熱伝導性を有するシート材によって大重量の薬品入り容器と非接触となるので、該容器を頻繁に交換する場合でも、該容器との摩擦による金属微粒子等の塵埃の発生を防止することができ、クリーンルーム内での使用が可能となる。
【0024】
また、熱伝導基材をクリーンルーム外で製造した場合でも、該熱伝導基材に付着した塵埃等がクリーンルーム内に拡散することを防止できる。さらに、シート材が熱伝導基材の熱伝導効率を低下させることもほとんどない。
【0025】
ここで、「容器の接触面」とは、加熱装置の加熱部が接触される面をいい、例えば、容器の底面や側面等が含まれる。また、「熱伝導性を有するシート材」としては、例えば、シリコン、ウレタン等の樹脂テープ、樹脂シート、又はこれら樹脂をアルミ等の金属製テープ、シートの表面に積層処理したものを用いることができる。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導シートは、上述したいずれかの熱伝導基材を備えた熱伝導シートであって、長尺の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に変形させ、該熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆した構成としてある。
【0027】
このような構成によれば、単一の熱伝導基材を容器の接触面形状と対応する形状とし、加熱部の熱を容器の接触面に効果的に熱伝導させることが可能となる。なお、複数の熱伝導基材を並べる手間がかからないので、より効率よく所望の形状に変形させることができる。
【0028】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導基材の製造方法は、加熱部と、これに加熱される容器との隙間に介在させる熱伝導基材の製造方法であって、金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚をもたせ、前記金属薄膜材どうしが連続又は接触する伝熱経路と、該伝熱経路の間に散在する微少間隙部とを形成する押し固め工程を含むようにしてある。
【0029】
このような方法によれば、金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めるといった極めて簡単な工程で容易に製造することができる。また、本製造方法により製造した熱伝導シートは、上述したように、加熱部の熱を容器へ効果的に熱伝導させることができる。
【0030】
好ましくは、前記押し固め工程の前に、前記金属薄膜材を、所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させる折り曲げ工程を含むようにする。より好ましくは、前記折り曲げ工程として、前記金属薄膜材を、最終的に形成される前記熱伝導基材の肉厚方向に向かって、山折りと谷折りとを繰り返すように折り曲げ変形させるようにする。
【0031】
このような方法によれば、簡単な折り曲げ工程を追加するだけで、熱伝導基材に形成される伝熱経路及び微少間隙部をより均一な分布で散在させることができる。これにより、本熱伝導基材の熱伝導効率及び復元性の均一化を図ることができる。
【0032】
好ましくは、前記押し固め工程又は前記折り曲げ工程の前に、前記金属薄膜材を複数枚重ね合わせる工程を含むようにする。
【0033】
このような方法によれば、金属薄膜材を複数枚重ね合わせるだけで、本熱伝導基材の強度と耐久性とを向上させることができる。また、該金属薄膜材どうしが連続又は接触して形成される伝熱経路が増大し、熱伝導効率の向上を図ることもできる。
【0034】
好ましくは、前記折り曲げ工程の後に、前記金属薄膜材の折り曲げ部分相互間に耐熱性及び復元性を有する弾性部材を散布する工程を含むようにする。
【0035】
このような方法によれば、折り曲げ工程を経た金属薄膜材に弾性部材を散布するといった簡単な工程を追加するだけで、本熱伝導基材に肉厚方向の復元性が付与される。これにより、寸法誤差や歪みの位置が異なる数種類の薬品入り容器を交換して加熱する場合でも、これら容器と加熱部の各接触面の隙間を埋めることができ、熱伝導効率をほとんど低下させることもない。
【0036】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述したいずれかの熱伝導シートの製造方法であって、複数の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に配置する配置工程と、これら熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆する被覆工程と、を含むようにしてある。
【0037】
このような方法によれば、金属薄膜材からなる熱伝導基材が、熱伝導性を有するシート材によって大重量の薬品入り容器と非接触となるので、該容器を頻繁に交換する場合でも、該容器との摩擦による金属微粒子等の塵埃の発生を防止することができ、クリーンルーム内での使用が可能となる。
【0038】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述したいずれかの熱伝導シートの製造方法であって、長尺の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に変形させる変形工程と、該熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆する被覆工程と、を含むようにしてある。
【0039】
このような方法によれば、単一の熱伝導基材を容器の接触面形状と対応する形状とし、加熱部の熱を容器の接触面に効果的に熱伝導させることが可能となる。なお、複数の熱伝導基材を並べる手間がかからないので、より効率よく所望の形状に変形させることができる。
【0040】
好ましくは、前記被覆工程の前に、前記配置工程又は前記変形を経た前記熱伝導基材をプレスして圧延するプレス工程を含むようにする。
【0041】
このような方法によれば、配置工程又は変形工程を経た一又は複数の熱伝導基材を、圧延させて最終的な肉厚にし、また、熱伝導基材どうしの隙間を減少させ、熱伝導基材どうしを互いに結合させ、その後の被覆工程の処理を行いやすくすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法によれば、加熱部の熱を容器へ効果的に熱伝導させることができ、大重量の薬品入り容器を頻繁に交換する場合でも熱伝導効率がほとんど低下せず、また、クリーンルーム内での使用が可能となる。また、本熱伝導基材及び熱伝導シートは、極めて簡単な構成であり、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
まず、本発明の第1実施形態に係る熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法について、図1〜4及び図7を参照しつつ説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの使用状態を示す部分断面側面図である。図2は、上記熱伝導シートを示す部分断面平面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る熱伝導基材の製造方法を説明するための概念図であり、同図(a)は本熱伝導基材となる金属薄膜材料、同図(b)は該金属薄膜材の折り曲げ工程、同図(c)は金属薄膜材の押し固め工程を示すものである。図4は、本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの製造方法における、上記熱伝導基材の配置工程を示す平面図である。図7は本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0045】
図1において、1は金属製の薬品入り容器であり、容器本体10の側面外周に略円筒状のスカート部12を装着した構成となっている。容器本体10内には、例えば、半導体又は液晶基板を洗浄するための薬品が約50kg〜500kg程度の範囲内で貯留されることがある。このような大重量の容器本体10は、スカート部12によって支持されて水平に静置可能となっている。また、容器本体10は、鏡面形状に加工した底部11を有している。
【0046】
2は加熱装置であり、ステンレス製の基台20上に設けたベースヒータ(加熱部)21と、上下一対のバンドヒータ22,23とを備えた構成となっている。ベースヒータ21は、上述した容器本体10の底部11に対応する鏡面形状の載置面(接触面)21aを有しており、容器本体10の底部11を加熱する。一方、各バンドヒータ22,23は、スカート部12に巻き付けられ、該スカート部12を介して容器本体10の胴部を加熱する。
【0047】
本実施形態では、ベースヒータ21として電気加熱パンを用いており、また、各バンドヒータ22,23としてパネル電気ヒータを用いている。なお、加熱部としての各バンドヒータ22,23は、容器1の胴部に接触した状態で加熱可能なものであれば、その形態はバンド状に限定されるものではなく、パネル状又はひも状等の種々形態のヒータを適用することができる。
【0048】
ここで、容器1のスカート部12内にベースヒータ21が収まるように、該容器1を基台20上に載置すると、容器本体10の底部11がベースヒータ21の載置面21aに接触し、該ベースヒータ21の熱が底部11に熱伝導して、容器本体10内の薬品が加熱されるようになっている。
【0049】
ところが、上述のように容器本体10がスカート部12に支持されているので、容器1に個体差が生じた場合は、容器本体10の底部11が、ベースヒータ21の載置面21aから浮いた状態となり、両者間に数mmの隙間L1が生じてしまうことがあった。そこで、本実施形態では、このような隙間L1に熱伝導シート3を介在させて、該隙間L1を埋めている。
【0050】
図2に示すように、本実施形態に係る熱伝導シート3は、主として、ベースヒータ21の載置面21aの形状に対応して格子状に配置した複数の熱伝導基材30,30,30…を、熱伝導性の高いシート材40により被覆した構成となっている。該熱伝導シート3の肉厚は、容器1の個体差等により異なる隙間L1の最大値よりも約2〜3mm厚くしてある。例えば、薬品入り容器1の重量が250kgの場合、熱伝導シート3としては、直径400mm、中心部の肉厚8〜10mm、外周部の肉厚6〜8mmのものを使用する。
【0051】
このような熱伝導シート3を構成する個々の熱伝導基材30は、図3(a)に示すような金属薄膜材31によって形成してある。熱伝導基材30を形成するための金属薄膜材31は、熱伝導性の良好な金属製を用いることが好ましい。例えば、銀(熱伝導度=428W/m・K)、銅(熱伝導度=403W/m・K)又はアルミニウム(熱伝導度=236W/m・K)の薄膜材を用いることが好ましい。本実施形態では、低コストを考慮し、金属薄膜材31としてアルミニウム箔を採用している。
【0052】
なお、金属薄膜材31として、比較的熱伝導性の低い、真鍮(熱伝導度=108W/m・K)、鉄(熱伝導度=83W/m・K)、鉛(熱伝導度=36W/m・K)の薄膜材を用いることも可能であるが、効果的に容器1内の薬品を加熱するためには、熱伝導度=200W/m・K以上の金属材料からなる薄膜材を用いることが好ましい。
【0053】
本実施形態では、金属薄膜材31として、膜厚15μmのアルミ箔を3枚重ねして使用している。これにより、熱伝導基材30及び最終的な熱伝導シート3の強度と耐久性を向上させている。但し、金属薄膜材31の膜厚が厚すぎると、熱伝導基材30が容器1から荷重を受けたときに追従変形する柔軟性が低下してしまう。一方、金属薄膜材31の膜厚が薄すぎると、熱伝導基材30が容器1から荷重を受けたときに破断しやすく、伝熱性も低下してしまう。また、クッション性が損なわれて追従変形しにくくなる。このため、金属薄膜材31の一枚あたりの膜厚は、5μm〜1mm程度が好ましい。
【0054】
以下、熱伝導基材30、及びこれを用いた熱伝導シート3を製造するための各工程について、図3、4及び図7を参照しつつ説明する。
【0055】
[金属薄膜材の折り曲げ工程]
まず、図3(b)及び図7のステップS1に示すように、連続して平坦なシート状の金属薄膜材31(図3(a)参照)を、最終的に形成される熱伝導基材30(同図(c)参照)の肉厚方向に向かって、約8cm程度の幅で山折り31aと谷折り31bとを繰り返すように、全体にわたって折り曲げ変形させる。
【0056】
[金属薄膜材の押し固め工程]
次いで、図3(c)及び図7のステップS2に示すように、折り曲げ変形させた金属薄膜材31(図3(b)参照)を、10kgf/cm〜50kgf/cm程度の力で、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とする。これにより、本実施形態の熱伝導基材30が形成される。
【0057】
このような熱伝導基材30の内部には、図3(c)の部分拡大図に示すように、金属薄膜材31どうしが連続又は接触する伝熱経路32a,32a,32a…と、該伝熱経路32aの間に散在する微少間隙部32b,32b,32b…とが形成される。伝熱経路32aは、ベースヒータ21の熱を容器本体10の底部11に熱伝導させる経路となり、また、微少隙間部32bは、熱伝導基材30が容器1からの荷重を受けたときに追従変形するための柔軟性に寄与している。
【0058】
ここで、上述した折り曲げ工程(ステップS1)において、金属薄膜材31を、最終的に形成される熱伝導基材30の肉厚方向に向かって、山折り31aと谷折り31bとを繰り返すように折り曲げ変形させたことにより、熱伝導基材30の全体にわたって、伝熱経路32a及び微少隙間部32bが均一に分布して形成されやすくなる。また、伝熱経路32aが、熱伝導基材30の肉厚方向に形成されやすくなるので、該肉厚方向の熱伝導効率が向上する。
【0059】
[熱伝導基材の配置工程]
次いで、図4及び図7のステップS3に示すように、ベースヒータ21の載置面21a上において、複数個の熱伝導基材30,30,30…を、容器本体10の底部11の接触面形状、又はベースヒータ21の載置面21a形状に対応する形状に配置する。本実施形態では、複数個の熱伝導基材30,30,30…を、互いに上下で格子状に配置して、底部11の接触面形状等に対応する形状にしている。このように格子状に積層する場合は、各熱伝導基材30をなるべく緻密に配置し、互いの隙間を小さくすることが好ましい。
【0060】
[熱伝導基材のプレス工程]
次いで、図4及び図7のステップS4に示すように、載置面21aに上述した各熱伝導基材30を配置したまま、大重量の薬品入り容器1をベースヒータ21に載置し、各熱伝導基材30を容器本体10の底部11によりプレスする。これにより、各熱伝導基材30が押し潰されて、格子状に積層した箇所が結合するとともに、載置面21aの面方向に圧延される。この結果、各熱伝導基材30が円盤状に一体化し、次の被覆工程の処理が行いやすくなる。
【0061】
また、本プレス工程を経た各熱伝導基材30の肉厚は、容器1とベースヒータ21の隙間L1(図1参照)の最大値に、潰し代(しろ)を加えた厚さとする。本実施形態では、各熱伝導基材30の肉厚を、隙間L1の最大値よりも2〜3mm程度厚くなるようにしてある。
【0062】
[熱伝導基材の被覆工程]
最後に、図2及び図7のステップS5に示すように、プレスして一体化した各熱伝導基材30をシート材40により被覆することにより、本実施形態に係る熱伝導シート3が完成する。
【0063】
シート材40としては熱伝導性の高いものが好ましく、例えば、シリコーン又はウレタンを用いることができる。また、シート材40により、少なくとも各熱伝導基材30の表面(容器1の底部11と接触する側の面)を被覆すれば、各熱伝導基材30と容器1の底部11とが接触することによる塵埃の発生を防止することができ、本熱伝導シート3をクリーンルームで使用することが可能となる。
【0064】
本実施形態では、シート材40として、表面を樹脂加工したアルミ製テープを用いている。このようなアルミ製テープを用いた場合、テープ裏面の粘着剤は金属よりも熱伝導性が劣るため、テープどうしをなるべく積層させないようにする。また、各熱伝導基材30の全体をアルミ製テープで密閉被覆する場合は、テープ貼付時に内部の空気をできる限り排出することが望ましい。
【0065】
以上のようなステップS1〜S5を経て製造された本実施形態に係る熱伝導シート3によれば、該熱伝導シート3を、大重量の薬品入り容器1とベースヒータ21との間に介在させると、容器1からの荷重を受けて、各熱伝導基材30の微少間隙部32bが潰れ、本熱伝導シート3が、容器本体10の底部11の接触面形状、及びベースヒータ21の載置面21a形状に追従してその肉厚方向に変形する。これにより、容器1とベースヒータ21の隙間L1が埋まるとともに、各熱伝導基材30の伝熱経路32aがより密となり、ベースヒータ21の熱を容器1へ効果的に熱伝導させることができる。
【0066】
また、本熱伝導シート3によれば、金属薄膜材31からなる熱伝導基材30が、熱伝導性の高いシート材40によって大重量の薬品入り容器1と非接触となるので、該容器1を頻繁に交換する場合でも、該容器1との摩擦による金属微粒子等の塵埃の発生を防止することができ、クリーンルーム内での使用が可能となる。
【0067】
さらに、熱伝導基材30をクリーンルーム外で製造した場合でも、該熱伝導基材30に付着した塵埃等がクリーンルーム内に拡散することを防止できる。さらに、シート材40が熱伝導基材30の熱伝導効率をほとんど低下させることもない。
【0068】
一方、本実施形態に係る熱伝導基材30及び熱伝導シート3の製造方法によれば、金属薄膜材31の折り曲げ、押し固め、及び熱伝導基材30の配置、プレス、被覆(図7のステップS1〜S5参照)といった簡単な工程により、上述の熱伝導基材30及び熱伝導シート3を製造することができる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態に係る熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法について、図5、6及び図8を参照しつつ説明する。
【0070】
図5は、本発明の第2実施形態に係る熱伝導基材の製造方法を説明するための概念図であり、同図(a)は本熱伝導基材となる金属薄膜材料、同図(b)は該金属薄膜材の折り曲げ工程及び弾性部材の拡散工程、同図(c)は金属薄膜材の押し固め工程を示すものである。図6は、本発明の第2実施形態に係る熱伝導シートの製造方法における、上記熱伝導基材の変形工程を示す平面図である。図8は、本発明の第2実施形態に係る熱伝導シートの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0071】
本実施形態では、図5(c)に示すように、熱伝導基材30の内部に散在する微少間隙部32b,32b,32b…に、耐熱性及び復元性を有する弾性部材33,33,33…を介在させた構成としてある。また、図6に示すように、該熱伝導基材30を単一帯状の長尺体とし、これを螺旋状に変形させることにより、図1に示す容器本体10の底部11の接触面形状、又はベースヒータ21の載置面21a形状に対応する形状にしている。
【0072】
以下、本実施形態に係る熱伝導基材30、及びこれを用いた熱伝導シートを製造するための各工程について、図5、6及び図8を参照しつつ説明する。
【0073】
[金属薄膜材の折り曲げ工程]
まず、図5(b)及び図8のステップS11において、上述した第1実施形態と同様に、連続して平坦なシート状の金属薄膜材31(図5(a)参照)を、最終的に形成される熱伝導基材30(同図(c)参照)の肉厚方向に向かって、約8cm程度の幅で山折り31aと谷折り31bとを繰り返すように、全体にわたって折り曲げ変形させる。
【0074】
[弾性部材の散布工程]
次いで、図5(b)及び図8のステップS12に示すように、金属薄膜材31の各谷折り31bの相互間に、耐熱性及び復元性を有する弾性部材33,33,33…を散布する。ここで、弾性部材33としては、耐熱性が高く、反発弾性率が小さく、圧縮永久歪の小さい粒状のゴムが好ましい。
【0075】
すなわち、弾性部材33は、ベースヒータ21の熱に耐える程度の耐熱性が必要である。また、弾性部材33は、大重量の薬品入り容器1の荷重を吸収するために反発弾性率が小さい必要がある。さらに、弾性部材33は、大重量の薬品入り容器1を除去したときに、熱伝導基材30が元の肉厚に復元する程度の復元力を得るため、圧縮永久歪が小さい必要がある。種々の材料で実験を行った結果、120℃以上の温度で連続使用した場合に安全が確保できる程度の耐熱性、10〜80%の反発弾性率、10〜70%の圧縮永久歪を有するゴム材料が好ましいことが分かった。
【0076】
これに加え、弾性部材33は、熱伝導基材30の熱伝導性を阻害するものであってはならず、良好な熱伝導性を有する必要もある。このような弾性部材33として、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴムを用いることができる。フッ素ゴムは、耐熱性200℃、反発弾性率10%、圧縮永久歪20〜40%である。一方、シリコーンゴムは、耐熱性180℃、反発弾性率25〜80%、圧縮永久歪10〜50%である。本実施形態では、弾性部材33として、低コストのシリコーンゴムを採用している。
【0077】
[金属薄膜材の押し固め工程]
次いで、図5(c)及び図8のステップS13において、上述した第1実施形態と同様に、折り曲げ変形させて弾性部材33を散布した金属薄膜材31(図5(b)参照)を、10kgf/cm〜50kgf/cm程度の力で、不規則に細かく折れ曲がるように押し固め、所定の肉厚を有する単一帯状の長尺体とする。これにより、本実施形態の熱伝導基材30が形成される。
【0078】
このような熱伝導基材30の内部には、図5(c)の部分拡大図に示すように、伝熱経路32aと微少間隙部32bとがほぼ均等に分布して形成され、微少間隙部32bには、弾性部材33が介在される。これにより、熱伝導基材30は、微少隙間部32bによる柔軟性に加え、弾性部材33による復元性を発揮することとなる。
【0079】
[熱伝導基材の変形工程]
次いで、図6及び図8のステップS14に示すように、単一帯状の長尺体である本熱伝導基材30を螺旋状に変形させ、容器本体10の底部11の接触面形状、又はベースヒータ21の載置面21a形状に対応する形状に整形する。このような変形工程は、第1実施形態の如く、必ずしもベースヒータ21の載置面21a上において行う必要はないが、載置面21a上で変形させると、本熱伝導基材30を適切な大きさ、形状にしやすい。
【0080】
ここで、本実施形態の如く、単一帯状の長尺体である本熱伝導基材30を螺旋状に変形させる場合は、熱伝導基材30の巻回する部分どうしの間隔をできるだけ小さく緻密にし、熱伝導面のロスを少なくする。
【0081】
なお、本実施形態では、熱伝導基材30を単一帯状の長尺体としたが、上述した第1実施形態の如く、複数の帯状の熱伝導基材30,30,30…を螺旋状に配置させて、容器本体10の底部11の接触面形状、又はベースヒータ21の載置面21a形状に対応する形状にしてもよい。
【0082】
[熱伝導基材のプレス工程]
次いで、図6及び図8のステップS15に示すように、上述した螺旋状の熱伝導基材30をベースヒータ21の載置面21aに載置する。そして、該ベースヒータ21に大重量の薬品入り容器1を載置し、熱伝導基材30を容器本体10の底部11によりプレスする。これにより、螺旋状の熱伝導基材30が押し潰されて、載置面21aの面方向に圧延されるとともに、該熱伝導基材30の巻回する部分どうしが密に接合する。この結果、本熱伝導基材30が、容器本体10の底部11の接触面形状、又はベースヒータ21の載置面21a形状に対応する円盤状となる。
【0083】
[熱伝導基材の被覆工程]
最後に、図8のステップS16に示すように、プレスして円盤状となった本熱伝導基材30をシート材40(図2参照)により被覆することにより、本実施形態に係る熱伝導シート(図示せず)が完成する。第1実施形態と同様に、シート材40として表面を樹脂加工したアルミ製テープを用いている。これにより、本熱伝導基材30と容器1の底部11とが接触することによる塵埃の発生を防止することができ、本熱伝導シートをクリーンルームで使用することが可能となる。
【0084】
以上のようなステップS11〜S16を経て製造された本実施形態に係る熱伝導シートによれば、弾性部材33によって、熱伝導基材30及びこれを備えた熱伝導シートに肉厚方向の復元性が付与されるので、寸法誤差や歪みの位置が異なる数種類の薬品入り容器1を交換して加熱する場合でも、これら容器1と該ベースヒータ21との隙間L1を埋めることができ、熱伝導効率をほとんど低下させることがない。
【0085】
また、本実施形態に係る熱伝導基材30及び熱伝導シートの製造方法によれば、折り曲げ工程を経た金属薄膜材31に弾性部材33を散布するといった簡単な工程を追加するだけで、本熱伝導基材30に肉厚方向の復元性を付与することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、熱伝導基材30を単一帯状の長尺体としているので、第1実施形態のように、複数の熱伝導基材30,30,30…を並べる手間がかからないので、より効率よく所望の形状に変形させることができる。また、熱伝導基材30の厚さも均一にすることができる。
【0087】
なお、本発明の熱伝導基材、熱伝導シート及びこれらの製造方法は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、容器本体10の底部11とベースヒータ21の載置面21aとの隙間L1を埋めるために、本熱伝導シート3を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、容器1の胴部とバンドヒータ22,23との隙間に本熱伝導シート3を介在させて熱伝導効率を向上させることもできる。
【0088】
すなわち、本発明の熱伝導シート3(熱伝導基材30)は、加熱部と容器との隙間であれば、場所を問わず使用することができる。また、塵埃の発生が問題とならない場合は、シート材40で被覆しない熱伝導基材30を直接、加熱部と容器との隙間に介在させて使用してもよい。
【実施例1】
【0089】
図1に示す構成と同様の装置を用いて、固体の薬品が融解するまでに要する加熱時間を測定した。常温固体薬品として、エチレンカーポネート(比重1.3、比熱0.363cal/g(50℃)、融解熱34.8cal/g、融点36,4℃)を用いた。該薬品200kg入りの容器の底部をベースヒータ(0.8kW)の上に載置するとともに、該容器の胴部に上下2枚のバンドヒータ(1.2kW)を巻き、常温(25℃)の雰囲気下で加熱を開始した。そして、容器内の温度を測定し、薬品が全て溶解した時点を融解完了として、加熱開始から融解完了までの時間を測定した。
【0090】
この結果、上述した第2実施形態と同様の本熱伝導シートを、容器底部とベースヒータとの隙間L1に介在させて加熱した場合は、加熱開始から融解完了までに約8時間を要した。但し、本実施例において、容器の底部鏡面下端とベースヒータの中心部とにおける隙間L1は約4mmであり、約6mmの肉厚の熱伝導シートを使用した。なお、使用した200kg入り容器の、スカート下端と底部鏡面下端のギャップは17.6mmであった。
【0091】
一方、上記と全く同じ条件で、本熱伝導シートを、容器底部とベースヒータとの間に介在させないで加熱した場合は、加熱開始から融解完了までに約22時間を要した。
【実施例2】
【0092】
上述した実施例1と全く同じ条件で、上述した第2実施形態と同様の本熱伝導シートを、容器底部とベースヒータとの間に介在させ、19本の異なる200kg入り容器を、順番に載せ替える作業を19回繰り返した。その後、本熱伝導シート上に、実施例1で使用した同一の200kg入り容器を載置して、加熱開始から融解完了までの時間を測定した。
【0093】
この結果、加熱開始から融解完了までに要した時間は、実施例1と同様に約8時間であった。但し、本実施例で載せ替えを行った19本の容器のスカート下端と底部鏡面下端とのギャップの固体差を測定したところ、最大20.6mm、最小16.3mm、平均18.5mmであり、最大高さと最小高さの差は4.3mmであった。
【0094】
以上のように、本熱伝導シートを用いて薬品入り容器を加熱すると、これを用いない場合と比較して、加熱開始から融解完了までに要する時間が大幅に短縮されることが明らかとなった。すなわち、本熱伝導シートを用いると、ベースヒータから容器底部への熱伝達性を飛躍的に向上させることができる。
【0095】
また、スカート下端と底部鏡面下端とのギャップが異なる数種の容器を繰り返し載せ替えて使用する場合に、本熱伝導シートが一旦押し潰されたとしても、その肉厚方向に復元して、寸法の異なる隙間L1を埋めることができ、その熱伝達性が損なわれないことが明らかとなった。
【0096】
したがって、例えば、化学品を扱う工場、とりわけ半導体又は液晶基板等の電子部品を製造する工場において、容器を直接加熱して薬品を使用する場合に、本熱伝導シートを用いると、薬品の加熱に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの使用状態を示す部分断面側面図である。
【図2】上記熱伝導シートを示す部分断面平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る熱伝導基材の製造方法を説明するための概念図であり、同図(a)は本熱伝導基材となる金属薄膜材料、同図(b)は該金属薄膜材の折り曲げ工程、同図(c)は金属薄膜材の押し固め工程を示すものである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの製造方法における、上記熱伝導基材の配置工程を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る熱伝導基材の製造方法を説明するための概念図であり、同図(a)は本熱伝導基材となる金属薄膜材料、同図(b)は該金属薄膜材の折り曲げ工程及び弾性部材の拡散工程、同図(c)は金属薄膜材の押し固め工程を示すものである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る熱伝導シートの製造方法における、上記熱伝導基材の変形工程を示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る熱伝導シートの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る熱伝導シートの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1 容器
2 加熱装置
3 熱伝導シート
10 容器本体
11 底部
12 スカート部
20 基台
21 ベースヒータ(加熱部)
21a 載置面(接触面)
22,23 バンドヒータ(加熱部)
30 熱伝導基材
31 金属薄膜材
31a 山折り部
31b 谷折り部
32a 伝熱経路
32b 微少間隙部
33 弾性部材
40 シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部と、これに加熱される容器との隙間に介在させる熱伝導基材であって、
金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記金属薄膜材どうしが連続又は接触する伝熱経路と、該伝熱経路の間に散在する微少間隙部とを形成したことを特徴とする熱伝導基材。
【請求項2】
前記金属薄膜材を、所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させた後、該金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記伝熱経路及び前記微少間隙部を形成したことを特徴とする請求項1記載の熱伝導基材。
【請求項3】
前記金属薄膜材を、最終的に形成される前記熱伝導基材の肉厚方向に向かって、山折りと谷折りとを繰り返すように折り曲げ変形させた後、該金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚とすることにより、前記伝熱経路及び前記微少間隙部を形成したことを特徴とする請求項2記載の熱伝導基材。
【請求項4】
前記金属薄膜材を複数枚重ね合わせた後、これら金属薄膜材に前記折り曲げ変形又は前記押し固めの処理を施したことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の熱伝導基材。
【請求項5】
前記微少間隙部に、耐熱性及び復元性を有する弾性部材を介在させたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の熱伝導基材。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の熱伝導基材を備えた熱伝導シートであって、
複数の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に配置し、これら熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆したことを特徴とする熱伝導シート。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか記載の熱伝導基材を備えた熱伝導シートであって、
長尺の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に変形させ、該熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆したことを特徴とする熱伝導シート。
【請求項8】
加熱部と、これに加熱される容器との隙間に介在させる熱伝導基材の製造方法であって、
金属薄膜材を、不規則に細かく折れ曲がるように押し固めて所定の肉厚をもたせ、前記金属薄膜材どうしが連続又は接触する伝熱経路と、該伝熱経路の間に散在する微少間隙部とを形成する押し固め工程を含むことを特徴とする熱伝導基材の製造方法。
【請求項9】
前記押し固め工程の前に、前記金属薄膜材を、所定方向に繰り返し規則的に折り曲げ変形させる折り曲げ工程を含むことを特徴とする請求項8記載の熱伝導基材の製造方法。
【請求項10】
前記折り曲げ工程として、前記金属薄膜材を、最終的に形成される前記熱伝導基材の肉厚方向に向かって、山折りと谷折りとを繰り返すように折り曲げ変形させることを特徴とする請求項9記載の熱伝導基材の製造方法。
【請求項11】
前記押し固め工程又は前記折り曲げ工程の前に、前記金属薄膜材を複数枚重ね合わせる工程を含むことを特徴とする請求項8〜10いずれか記載の熱伝導基材の製造方法。
【請求項12】
前記折り曲げ工程の後に、前記金属薄膜材の折り曲げ部分相互間に耐熱性及び復元性を有する弾性部材を散布する工程を含むことを特徴とする請求項9〜11いずれか記載の熱伝導基材の製造方法。
【請求項13】
請求項6又は7記載の熱伝導シートの製造方法であって、
複数の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に配置する配置工程と、
これら熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする熱伝導シートの製造方法。
【請求項14】
請求項6又は7記載の熱伝導シートの製造方法であって、
長尺の前記熱伝導基材を、前記容器の接触面形状に対応する形状に変形させる変形工程と、
該熱伝導基材の少なくとも前記容器と接触する側を、熱伝導性を有するシート材により被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする熱伝導シートの製造方法。
【請求項15】
前記被覆工程の前に、前記配置工程又は前記変形を経た前記熱伝導基材をプレスして圧延するプレス工程を含むことを特徴とする請求項13又は14記載の熱伝導シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−207846(P2007−207846A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22449(P2006−22449)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】