説明

熱伝導性背面プレートを備えるOLEDディスプレイ

【課題】寿命の長いOLEDディスプレイを提供すること。
【解決手段】基板(22)と;その基板上に形成された第1の電極と、第1の電極(30)の上に位置する1つ以上のOLED発光層(32)と、そのOLED発光層の上に位置する第2の電極(34)とを備える1つ以上のOLED発光素子;第2の電極の上方に位置する封止用カバー(12);及び上記封止用カバーまたは上記基板の外面上に延在しそこに熱伝導性接着剤(26)で接着された実質的に平坦な熱伝導性背面プレート(20)を含んでなり、この背面プレートの熱伝導率が上記基板(22)または上記カバー(12)の熱伝導率よりも大きく、かつ、上記熱伝導性接着剤(26)の熱伝導率が、0.2W/mKよりも大きいか、この熱伝導性接着剤が付着する上記カバーまたは上記基板の熱伝導率以上である、OLEDディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置に関する。より詳細には、本発明は、有機発光ディスプレイ装置内部での発熱に起因する局所的な老化を減らすことに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ装置は、一般に、基板上に形成された第1の電極と、その第1の電極の上に位置する1つ以上のOLED発光層と、そのOLED発光層の上に位置する第2の電極とを含む1つ以上のOLED発光素子、及びその第2の電極の上方に位置していて基板に固定された封止用カバーを備えている。このようなディスプレイ装置は、カバーを通して発光素子を見ることが想定されているトップ・エミッション型および/または基板を通して発光素子を見ることが想定されているボトム・エミッション型にすることができる。したがってボトム・エミッション型OLEDデバイスでは、基板が非常に透明でなくてはならず、トップ・エミッション型OLEDデバイスでは、カバーが非常に透明でなくてはならない。
【0003】
OLEDデバイスに適した基板と封止用カバーを構成する際には多彩な材料を使用できる。OLED用基板にとって望ましい材料の特性および/または性質は、低コストで、非常に平坦で、熱膨張係数(CTE)が小さく、多彩な環境ストレス下で強度と安定性が大きく、非導電性である(または、OLEDと接触する基板表面を非導電性材料で被覆できる)というものである。基板の上に堆積させて形成するいかなる電気回路も短絡しないよう、基板を形成する材料は非導電性であることが重要であるため、このような基板に最もよく用いられる材料は、ガラス(一般にホウケイ酸ガラス)である。というものこの材料は透明で、非常に安定で、低コストで製造でき、半導体材料と有機材料を堆積させて処理するのに適した非常に滑らかな表面を持っているからである。他の基板材料も従来技術で知られており、例えばセラミック、プラスチック、金属(ステンレス鋼)がある(Yamazakiらの「発光ELディスプレイ装置」という名称のアメリカ合衆国特許第6,641,933 B1号を参照のこと)。しかし金属は導電性であるため、使用する際には非導電性の絶縁層を追加する必要がある。金属基板は、一般にCTEが比較的大きいため、基板の上に堆積させるあらゆる材料に応力を発生させる可能性がある。金属とガラスも、例えばイーストマン・コダック社がデモンストレーションして販売している製品のOLED封止カバーで用いられている。しかし製品内で実際に使用する際には、例えば衝撃に対する抵抗力、環境からの保護、取り付け能力を付与するため、基板および/またはカバーをさらに保護したり、基板および/またはカバーに追加の特徴を設けたりすることがしばしば必要とされる。
【0004】
有機発光ダイオードから効率的な高輝度ディスプレイを作ることができる。しかしディスプレイが高輝度モードで動作している間に発生する熱がディスプレイの寿命を制限する可能性がある。なぜならOLEDディスプレイ内の発光材料は、高い温度で使用するほど劣化が早いからである。OLEDディスプレイの全体的な明るさを維持することは重要であるが、ディスプレイ内部の局所的な劣化を避けることのほうがはるかに重要である。ヒトの視覚系は、ディスプレイの明るさの違いに非常に敏感である。したがってユーザーは、ただちに均一性の違いに気づく。OLEDディスプレイにおける均一性の局所的な差は、ディスプレイ上に静的パターンを表示する結果として起こる可能性がある。例えばグラフィック・ユーザー・インターフェイスは、一定の場所に明るいアイコンを表示し続けることがしばしばある。このような局所的パターンによってOLEDディスプレイの局所的老化が起こるだけでなく、ディスプレイに局所的な熱いスポットも生じることになる。そのためその局所的パターン内の発光素子がさらに劣化する。ガラス支持体とプラスチック支持体は、ディスプレイが作動しているときに基板全体を均一な温度にするほどの熱伝導性はなかろう。したがって熱管理技術が改善されると、有機ディスプレイ装置の予想寿命が大きく延びる可能性がある。
【0005】
有機発光ディスプレイ装置から熱を除去する1つの方法が、「高輝度の有機発光ダイオード・ディスプレイで使用するための熱除去システム」という名称のアメリカ合衆国特許第6,265,820号に記載されている。この'820号特許には、有機発光ダイオード・ディスプレイで使用するための熱除去システムが記載されている。熱除去システムは、有機発光ディスプレイ装置から発生する熱を散逸させる熱散逸組立体と、頂部にある有機発光ディスプレイ装置から熱散逸組立体へと熱を移動させる伝熱組立体と、有機発光ディスプレイ装置を冷却する冷却組立体を備えている。'820号特許のシステムはOLEDの用途で熱を除去する手段を提供するが、その効率は、ガラス基板が存在しているために限られている。なぜならOLEDデバイスが発生させる熱を除去するにはその熱をガラス基板を通じて移動させねばならないが、ガラス基板は熱伝導率が小さいからである。さらに、'820号特許に記載されている構造は複雑であり、多数の層と、デリケートなOLED層と接触する特別な伝熱材料が必要とされる。この構造は、取り付けと保護に関する実際的な要求にも応えていない。
【0006】
Shieらの「固体発光デバイス・パッケージのための熱散逸構造」という名称のアメリカ合衆国特許第6,480,389号には、無機LEDを冷却するための熱散逸構造が記載されている。この構造は、密封されたハウジングに熱散逸冷却流体が充填されていて、そのハウジングの中に、金属基板から直立した金属壁の内部にある金属製基板に取り付けた少なくとも1つのLEDチップが収容されていることを特徴とする。このような構成は複雑であって流体が必要とされ、OLEDなどのエリア発光体には適していない。
【0007】
ヒート・シンクも集積回路産業でよく知られていて、大きな集積回路を冷却するのに使用される。このようなヒート・シンクは一般に厚く、ディスプレイには適していない。なぜならディスプレイでは厚さを薄くすることが重要な1つの目標だからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の1つの目的は、OLEDディスプレイ内の熱分布をより均一にするとともに、OLEDディスプレイ装置からの熱除去を最適化して、ディスプレイの寿命を延ばすことである。本発明のさらに別の目的は、基板またはカバーを環境ストレスや物理的損傷から保護し、ディスプレイを取り付けるための特徴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によると、OLEDディスプレイは、基板と;その基板上に形成された第1の電極と、第1の電極の上に位置する1つ以上のOLED発光層と、そのOLED発光層の上に位置する第2の電極とを備える1つ以上のOLED発光素子と;第2の電極の上方に位置する封止用カバーと;封止用カバーまたは基板の外面上に延在しそこに熱伝導性接着剤で接着された実質的に平坦な熱伝導性背面プレートとを含んでなり、この背面プレートの熱伝導率が基板またはカバーの熱伝導率よりも大きく、かつ、熱伝導性接着剤の熱伝導率が、0.2W/mKよりも大きいか、この熱伝導性接着剤が付着するカバーまたは基板の熱伝導率以上である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明の一実施態様によるトップ・エミッション型OLEDディスプレイの概略図である。
【図1b】本発明の別の一実施態様によるトップ・エミッション型OLEDディスプレイの概略図である。
【図2】従来技術で知られているOLEDの熱流を示す図である。
【図3】図1に示したトップ・エミッション型OLEDディスプレイの熱流を示す図である。
【図4a】本発明の一実施態様によるボトム・エミッション型OLEDディスプレイの概略図である。
【図4b】本発明の別の一実施態様によるボトム・エミッション型OLEDディスプレイの概略図である。
【図4c】本発明の別の一実施態様によるボトム・エミッション型OLEDディスプレイの概略図である。
【図5】図4に示したボトム・エミッション型OLEDディスプレイの熱流を示す図である。
【図6】本発明の一実施態様による熱伝導性背面プレートの一実施態様についての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1aには、本発明の一実施態様によるトップ・エミッション型OLEDディスプレイの側面図が示してある。このOLEDディスプレイは、基板22と、基板上に形成された第1の電極30と、第1の電極30の上に位置する1つ以上のOLED発光層32と、OLED発光層32の上に位置する第2の電極34とをそれぞれが備える1つ以上のOLED発光素子、ギャップ24、第2の電極34の上方に位置して基板22に固定されている封止用カバー12、熱伝導性接着剤26、及び熱伝導性接着剤26によって基板22に接着された熱伝導性背面プレート20を備えている。背面プレート20は実質的に平坦であり、基板22の外面全体に延在している。図1bに示した別の実施態様では、実質的に平坦な熱伝導性背面プレート20が、基板22の側部にも延在し、OLEDディスプレイの縁部を保護している。接着剤は、基板22の側部にまで延在してもしなくてもよい。図1aと図1bに示したようなトップ・エミッション型構造では、封止用カバー12はできるだけ透明でなくてはならない。
【0012】
個々のOLED発光素子は、独立した電極30によって制御され、薄膜トランジスタ(TFT)導体や他の電気部品(例えばキャパシタ)を利用した回路が存在する複数の非発光領域によって分離することができる。OLED素子は、従来技術で知られているように、パッシブ・マトリックス技術またはアクティブ・マトリックス技術を利用して制御すること、そしてOLED素子を個々に制御してOLEDディスプレイ内のある領域が光を出し、別の領域は光を出さないようにすることができる。
【0013】
トップ・エミッション型OLEDディスプレイは透明な材料(例えばガラス)で形成した封止用カバー12で封止し、OLED素子から出る光がそのディスプレイから出ていけるようにする。封止用カバー12は、トップ・エミッション型OLEDディスプレイを環境中の水分や汚染物から保護する。OLED素子と封止用カバーの間のスペースは、例えば空気、不活性ガス、ポリマー緩衝層で埋めることができる。ボトム・エミッション型OLEDディスプレイも同様に封止されるが、光が基板を通じて出ていくため、基板が透明で、カバーが不透明になっている必要がある。
【0014】
OLED発光層32は、第1の電極30と第2の電極34の間に挟まれた薄い有機層の積層体を含むよく知られている基本的なOLEDセル構造を利用して形成することができる。有機層は、一般に、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層を備えている。基板22とカバー12は、一般に、厚さが例えば700μmのホウケイ酸ガラスでできている。あるいはOLED材料の分解を阻止する障壁層を有するプラスチック材料を使用することもできる。しかしそのような材料だと、今日使用されているガラス材料と同程度にOLEDデバイスを保護することはない。
【0015】
熱伝導性接着剤26が従来技術で知られており、例えば両面熱伝導性テープやエポキシなどがある。本発明の目的では、熱伝導性であると考えられる、熱伝導率が0.2W/mKよりも大きな接着剤か、基板またはカバーの少なくとも一方の熱伝導率よりも大きな熱伝導率の接着剤が必要とされる。このような材料は、さまざまな方法で付着させることができる。例えば、物理的付着、液体コーティング、スプレーなどの方法がある。熱伝導性背面プレート20は、例えば、Al、Cu、Ag、Fe、Cr、Mgなどの金属、その合金、ステンレス鋼で構成することができる。背面プレート20は、例えば打ち抜き、鋳造、圧延、または従来技術で知られている他の手段であらかじめ成形してOLEDディスプレイをうまく覆う形状にすることと、OLEDディスプレイの縁部を覆うことができる。熱伝導性背面プレート20は、OLEDディスプレイを取り付けやすくするために穴や突起(ネジが切られている場合と切られていない場合がある)といった位置決め用の特徴を備えることができる。例えばネジが切られた小さな取り付け穴を長方形のOLEDデバイスの四隅に設けることができる。実際には、熱伝導性背面プレート20は、封止用カバー12または基板22とできるだけ熱接触していなければならない。本発明のようなフラット-パネル・ディスプレイはできるだけ薄くしなくてはならないため、熱伝導性背面プレート20はできるだけ薄くしなくてはならない。厚さは1000μm未満であることが好ましく、500μm未満であることがより好ましい。出願人は、300μmの熱伝導性金属背面プレートを用いるとよい結果が得られることを明らかにした。
【0016】
電圧を第1の電極30と第2の電極34の間に印加すると、正孔と電子が注入されて有機発光層32に輸送されることにより、電流が有機発光層32に流れ、有機発光層32の発光領域40で正孔と電子が再結合し、OLEDデバイスから光が出る。有機発光層32に注入された全エネルギーが光に変換されるわけではなく、かなりのエネルギーが熱に変換されるため、OLEDデバイスの温度が上昇する。この温度上昇によってOLED材料が劣化して効率が低下するため、光に変換されるエネルギーが少なくなる。
【0017】
作動中は、OLED素子が(例えば発光領域40から)光を出すことによって発熱する。さらに、熱の一部は、非発光領域にある回路(図示せず)から発生する。しかしOLED素子が出す熱よりは少ない。それぞれのOLED発光素子に与えられるパワーが異なると、ディスプレイの内部に局所的なホット・スポットが形成されることになろう。その局所的なホット・スポットにより、発光層32の個々のOLED材料の劣化の程度が異なってくる可能性があるため、ディスプレイの寿命が短くなる。基板22または封止用カバー12と熱接触する熱伝導性背面プレート20を用いると、熱管理が改善される。それについて以下にさらに詳しく説明する。
【0018】
出願人は、OLEDディスプレイの内部と本発明のさまざまな実施態様の内部における熱流を分析するための多彩なモデルを開発した。図2に従来のOLEDディスプレイの熱モデルを示してある。このモデルは左縁部を中心として対称になっているため、この図と以下の図では右半分の最も左側の部分を図示してある。この構造では、ガラス基板22(厚さ700μm)をガラス・カバー12(やはり厚さ700μm)で封止する。基板22と封止用カバー12の間のギャップ24がこれら2つの要素を隔てている。エネルギーを加えると点50の温度が60℃まで上昇する。図2で同じ模様の領域は、温度がほぼ同じになっている範囲を表わす。図2に示した基板22とカバー12の最も右側にある等温範囲52の温度は29℃である。
【0019】
図3には、本発明の一実施態様によるトップ・エミッション型OLEDディスプレイの熱モデルが示してある。この構造では、ガラス基板22(厚さ700μm)を封止用ガラス・カバー12(やはり厚さ700μm)で封止する。図2のモデルと同じ量のエネルギーをカバー12とガラス基板22の間にある点50に加える。基板22と熱伝導率が同じ熱伝導性接着剤26により、(熱伝導率が基板22の熱伝導率がよりも実質的に大きい)熱伝導性背面プレート20を基板22に接着させる。加えられたエネルギーによって点50の温度は40℃までしか上昇しない。図2におけるのと同様、図3で同じ模様の領域は、温度がほぼ同じになっている範囲を表わす。図2と図3を比較してわかるように、本発明のこの実施態様では、OLEDデバイスの点50における温度が有意に低い。熱伝導性背面プレートは、熱は散逸させないが、熱を加えた点50から熱を移動させ、基板22全体により均等に熱を分布させることで、点50における局所的な発熱を少なくする。
【0020】
図4aと図4bには、本発明の別の実施態様におけるボトム・エミッション型OLEDディスプレイの側面図が示してある。このOLEDディスプレイは、基板22と、基板上に形成された第1の電極30と、第1の電極30の上に位置する1つ以上のOLED発光層32と、OLED発光層32の上に位置する第2の電極34とを備える1つ以上のOLED発光素子、第2の電極34の上方に位置して基板22に固定されている封止用カバー12、熱伝導性接着剤26、及び熱伝導性接着剤26によって封止用カバー12に接着された実質的に平坦な熱伝導性背面プレート20を備えている。図4bに示した別の一実施態様では、実質的に平坦な熱伝導性背面プレート20が封止用カバー12の側部まで延びていて、OLEDディスプレイの縁部を保護している。熱伝導性接着剤26も封止用カバーの側部に沿って延びることで熱接触を改善することが好ましい。図4cに示してあるように、背面プレート20を基板22の側部に沿って延ばすこともできる。すると基板の側部が効果的に封止される。
【0021】
ボトム・エミッション型OLEDディスプレイもトップ・エミッション型と同様に作動するが、光がカバーではなく基板を通過するという違いがある。したがってボトム・エミッション型OLEDディスプレイの場合には、基板22が透明でなければならない一方で、封止用カバー12は不透明にすることができる。
【0022】
図5には、本発明の一実施態様によるボトム・エミッション型OLEDディスプレイの熱モデルが示してある。図2に示した従来モデルと同じ量のエネルギーを基板22の点50に加える。加えられたエネルギーによって点50の温度が43℃まで上昇する。図3におけるのと同様、同じ模様の領域は、温度がほぼ同じになっている範囲を表わす。熱伝導性背面プレートが熱を加えた点50から熱を移動させ、基板22全体により均等に熱を分布させることで、局所的な発熱を少なくしていることがわかる。図2、図3、図5を比較してわかるように、本発明の熱伝導性接着剤26と熱伝導性背面プレート20を用いると、OLEDデバイスの点50における温度が有意に低下する。
【0023】
本発明に関して説明したように、両方の場合(図3と図5)において、基板22または封止用カバー12と熱接触させて接着した熱伝導性背面プレート20を用いることで、基板およびカバーの局所的な発熱と、これらと密に熱接触するように堆積させた発光材料の局所的な発熱が有意に低下する。発熱の低下は、発光材料の老化を減らす好ましい効果を有する。このモデル作成作業は、市販されている従来のモデル作成ツールを用いて実施する。
【0024】
出願人は、この明細書に記載した熱伝導性接着剤と熱伝導性背面プレートを用いることにより、OLEDの作動に伴う発熱が減少することを実験的に証明した。この実験は、この明細書に記載したようにして材料をOLEDに付着させ、そのOLEDを熱から保護されたチェンバー内で作動させることによって行なった。熱イメージング・カメラと熱電対を使用し、OLEDデバイスのカバー、基板、熱伝導性背面プレートの温度をさまざまな作動条件下で測定した。熱伝導率が0.2W/mKよりも大きい(0.4W/mKよりも大きいことが好ましく、1.0W/mKよりも大きいことが最も好ましい)接着剤を用いると、熱伝導率が0.176W/mKである相対的に非熱伝導性である接着剤を用いた場合よりも局所的な発熱が減少した。最良の結果は、背面プレートを接着させた基板またはカバーと熱伝導率が少なくとも同じである熱伝導性接着剤を用いたときに得られた。
【0025】
本発明では、集積回路で用いられている従来のヒートシンクとは異なり、フラット・パネル・ディスプレイの外面に接着されていてその外面全体に広がっているが、熱の散逸が主たる目的ではない実質的に平坦な背面プレートを使用する。このように実質的に平坦な背面プレートは、両面を平坦で滑らかにすることができる。あるいは望むのであれば、背面プレートの一方の面を波型にして表面積を大きくすることで、熱伝導性背面プレートが熱を環境に逃がす能力を増大させる。図6には、1つの面が波型になった熱伝導性背面プレート20が示してある。この場合には、熱伝導性背面プレート20の厚さが一定でない。波型表面により、熱伝導性背面プレート20から周囲環境への熱伝導を改善することができる。しかし好ましい実施態様によれば、実質的に平坦な背面プレートは、デバイスの全体的な厚さを最少にするため、図1と図4に示したように両面が平坦である。
【0026】
基板22または封止用カバー12のサイズ、熱伝導性背面プレート20の厚さ、材料の相対的熱膨張係数(CTE)がどのような値であるかに応じ、基板/封止用カバーと熱伝導性背面プレートの間で熱に関係した膨張が適合しないという問題に遭遇する可能性がある。この問題は、面の間で移動できる熱伝導性接着剤を用いることによって改善できる。
【0027】
本発明によれば、基板22または封止用カバー12は、堅固でも可撓性があってもよい。さらに、これらと合わせて使用する熱伝導性背面プレートも可撓性のあるものにできる。金属またはガラスからなる適度に薄い層をカバーまたは基板で使用することができる。特に、可撓性のあるプラスチックを使用できる。可撓性のあるプラスチック材料だと環境中のガスまたは液体からOLEDディスプレイが効果的に保護されないため、熱伝導性背面プレート20にはOLEDディスプレイを環境から保護する追加保護部材を設けるとよい。環境に対する障壁層を有する可撓性プラスチック基板が提案されてきた。しかしこのような複合基板は、プラスチック基板の縁部から環境汚染物の侵入を相変わらず受けやすい。上に説明したように、本発明の熱伝導性背面プレートは、基板および/またはカバーの縁部も封止できるため、環境からもうまく保護することができる。
【0028】
熱は、熱伝導性背面プレート20と、例えばディスプレイの縁部で熱接触している従来のヒートシンクとを用いて本発明のOLEDディスプレイから除去することもできる。電気製品の内部で使用するとき、その電気製品を熱伝導性背面プレートと熱接触させて外部ヒートシンクにすることができる。
【0029】
(例えば金属でできている場合の)熱伝導性背面プレートは導電性にもなりうるため、OLEDディスプレイからの、またはOLEDディスプレイへの電磁放射を減らすのに用いることもできる。導電性背面プレートをグラウンドに接続することにより、ディスプレイからの、またはディスプレイの近くにある電気素子からの電磁干渉を減らすことができる。
【符号の説明】
【0030】
12 封止用カバー
20 熱伝導性背面プレート
22 基板
24 ギャップ
26 熱伝導性接着剤
30 第1の電極
32 OLED発光層
34 第2の電極
40 発光領域
50 エネルギー注入点
52 等温範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基板と;
b)該基板上に形成された第1の電極と、該第1の電極の上に位置する1つ以上のOLED発光層と、該OLED発光層の上に位置する第2の電極とを備える1つ以上のOLED発光素子と;
c)該第2の電極の上方に位置する封止用カバーと;
d)該封止用カバーまたは該基板の外面上に延在しそこに熱伝導性接着剤で接着された実質的に平坦な熱伝導性背面プレートとを含んでなり、該背面プレートの熱伝導率が該基板または該カバーの熱伝導率よりも大きく、かつ、該熱伝導性接着剤の熱伝導率が0.2W/mKよりも大きいことを特徴とするOLEDディスプレイ。
【請求項2】
上記熱伝導性背面プレートが金属でできている、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項3】
上記金属に、アルミニウム、銀、銅、鉄、クロム、マグネシウムを含むグループの中の1つ以上の元素、またはアルミニウム、銀、銅、鉄、クロム、マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む合金が含まれる、請求項2に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項4】
上記金属がステンレス鋼である、請求項2に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項5】
上記熱伝導性背面プレートが、上記封止用カバーおよび/または上記基板の側部に延びている、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項6】
上記接着剤が、上記熱伝導性背面プレートを、上記封止用カバーおよび/または上記基板の側部に接着させる、請求項5に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項7】
電気製品の内部に組み込まれており、上記熱伝導性接着剤がその電気製品と熱的に接触している、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項8】
上記熱伝導性接着剤が、接着テープとエポキシを含むグループの中の1つである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項9】
上記熱伝導性接着剤が液体として付着される、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項10】
上記熱伝導性接着剤が、上記基板または上記封止用カバーの表面にスプレーされる、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項11】
上記熱伝導性背面プレートが電磁干渉を減少させる、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項12】
トップ・エミッション型ディスプレイであり、上記熱伝導性背面プレートが上記基板に付着している、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項13】
ボトム・エミッション型ディスプレイであり、上記熱伝導性背面プレートが上記封止用カバーに付着している、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項14】
上記熱伝導性背面プレートが取り付けるための特徴を有する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項15】
取り付けるための上記特徴が、穴および/または突起を含む、請求項14に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項16】
上記穴および/または上記突起にネジが切られている、請求項15に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項17】
上記熱伝導性背面プレートの厚さが一定でない、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項18】
上記熱伝導性背面プレートの少なくとも1つの面が波型にされている、請求項17に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項19】
上記基板がプラスチックでできている、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項20】
上記基板が可撓性を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項21】
上記熱伝導性背面プレートが、上記カバーおよび/または上記基板の縁部を封止する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項22】
上記背面プレートが可撓性を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項23】
a)基板と;
b)該基板上に形成された第1の電極と、該第1の電極の上に位置する1つ以上のOLED発光層と、該OLED発光層の上に位置する第2の電極とを備える1つ以上のOLED発光素子と;
c)該第2の電極の上方に位置する封止用カバーと;
d)該封止用カバーまたは該基板の外面上に延在しそこに熱伝導性接着剤で接着された実質的に平坦な熱伝導性背面プレートとを含んでなり、該背面プレートの熱伝導率が該基板または該カバーの熱伝導率よりも大きく、かつ、該熱伝導性接着剤の熱伝導率が、該熱伝導性接着剤が付着する該カバーまたは該基板の熱伝導率以上であることを特徴とするOLEDディスプレイ。
【請求項24】
上記熱伝導性背面プレートが金属でできている、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項25】
上記熱伝導性背面プレートが、上記封止用カバーおよび/または上記基板の側部に延びている、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項26】
上記接着剤が、上記熱伝導性背面プレートを、上記封止用カバーおよび/または上記基板の側部に接着させる、請求項25に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項27】
トップ・エミッション型ディスプレイであり、上記熱伝導性背面プレートが上記基板に付着している、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項28】
ボトム・エミッション型ディスプレイであり、上記熱伝導性背面プレートが上記封止用カバーに付着している、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項29】
上記基板がプラスチックでできている、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項30】
上記基板が可撓性を持つ、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項31】
上記熱伝導性背面プレートが、上記カバーおよび/または上記基板の縁部を封止する、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項32】
上記背面プレートが可撓性を持つ、請求項23に記載のOLEDディスプレイ。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−204692(P2011−204692A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149025(P2011−149025)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【分割の表示】特願2007−500951(P2007−500951)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】