説明

熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置

【課題】有機廃棄物の熱分解により発生する熱分解ガスの温度の低下を防止する。
【解決手段】有機物処理装置100が、原料有機物を熱分解装置1にて熱分解し、その際に発生した熱分解ガスを処理する酸化触媒装置2及び中和洗浄装置3を具えており、熱分解装置1が、熱分解装置1内のセラミックス層28の下方に配置され、熱分解装置1内で熱分解により発生した熱分解ガスを熱分解装置1内に溜まった材料層の全面にわたって通過させる分解ガス通過管61を有しており、分解ガス導入管61の側面もしくは下面に、分解ガス導入管61によって導入された熱分解ガスをセラミックス層28に向けて吹き出させるための分解ガス吹出口62が形成されている。また、熱分解装置1の上部に熱分解装置1内部の熱分解ガスの圧力調整を行なうための大気開放された圧力調整部51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物を熱分解する際に発生したガスを処理するための熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機廃棄物の処理は、焼却炉にて廃棄物を焼却することが一般的に行われている。しかしながら、このような方法では、焼却時にダイオキシンや二酸化炭素を発生させるため、最近では熱分解反応を用いて有機廃棄物の処理がなされるようになっている。都市ごみなどに代表される有機廃棄物を還元雰囲気下で熱分解することによって、廃棄物を完全燃焼させて、ダイオキシンや炭酸ガスの発生を抑制するようにした有機廃棄物の処理装置や、さらには、この熱分解工程で生じる熱や、水、発生したガスの冷却によって生じた木酢液等の資源を再利用するシステムが、数多く開発されている。
【0003】
特開2004−307237号公報(特許文献1)には、このような熱分解反応を用いて有機廃棄物を処理してセラミックスを生成する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−307237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、熱分解反応を用いたこのような有機物処理装置では、原料有機物を炭化物とガス成分とに分解して、炭化物からセラミックスを生成する一方で、ガス成分を触媒酸化装置を用いて酸化させたり、酸化させたガスをアルカリ中和洗浄装置を用いて中和洗浄する処理を行っているものもある。
【0006】
しかしながら、このような熱分解装置では、熱分解処理によって発生した熱分解ガスの温度の低下が問題となっている。これは、熱分解ガスを触媒酸化装置を用いて酸化させる際に、触媒酸化装置の触媒の機能が低下して、触媒の寿命が短くなるためである。一方、触媒酸化装置で酸化させたガスをアルカリ中和洗浄装置に導入する際には、導入するガスの温度を低くしてアルカリ中和洗浄装置にかかる負荷を軽減させるのが好ましい。このよな課題に加えて、熱分解を利用することにより炭酸ガスの発生を抑制した上で、熱分解の工程で生じる熱エネルギを有効に利用する必要性が近年益々高まっている。
【0007】
上記のような課題に鑑みて、本発明は、有機廃棄物の熱分解により発生する熱分解ガスを触媒酸化装置やアルカリ中和洗浄装置で処理する際のこれらの装置へ負荷を軽減できる熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る熱分解装置は、原料有機物を熱分解させるための熱分解装置であって、原料有機物の熱分解により熱分解装置内に形成される材料層(例えば、実施形態におけるセラミックス層28)に含まれる無機物に酸素を結合させて無機酸化物(セラミックス)を生成するためのセラミックス生成手段(例えば、実施形態における空気導入管65、空気導入口66、ファン34)と、熱分解装置内の材料層の下方に配置され、熱分解装置内での熱分解により発生した熱分解ガスを熱分解装置内に溜まった材料層の全面にわたって通過させる分解ガス通過手段(例えば、実施形態における分解ガス通過管61)と、を有しており、分解ガス通過手段に熱分解装置内の上方に溜まった熱分解ガスを導入するよう構成されている。
【0009】
また、上記構成の熱分解装置において、熱分解装置の上部と分解ガス通過手段とを連通させる分解ガス導入手段(例えば、実施形態における分解ガス導入管63,68、ファン33)が設けられており、熱分解装置内の上方に溜まった熱分解ガスが、分解ガス導入手段に吸い込まれて分解ガス導入手段を通して分解ガス通過手段に導入されることにより、材料層を通過するよう構成されているのが好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の熱分解装置において、分解ガス通過手段が格子状に形成された管状部材から成り、分解ガス通過手段の側面もしくは下面に、分解ガス導入手段によって導入された熱分解ガスを材料層に向けて吹き出させるための分解ガス吹出口が形成されているのが好ましい。
【0011】
また、上記構成の熱分解装置において、熱分解装置内部の熱分解ガスの圧力調整を行なうための大気開放された圧力調整手段(例えば、実施形態における圧力調整部51)が設けられているのが好ましい。
【0012】
さらに、上記構成の熱分解装置において、熱分解装置に熱媒体を供給する熱媒体供給管路と、熱媒体供給管路に接続され、熱分解装置で発生する熱分解ガスと熱媒体との熱交換が行われる熱交換管路と、熱交換管路に接続され、熱交換管路で熱交換した熱媒体を熱供給対象(例えば、温水プール、暖房、融雪装置)に送出することにより熱分解装置内部の熱を熱供給対象に供給し得る熱供給管路と、を有する熱供給システムを具えていてもよい。
【0013】
また、上記構成の熱分解装置において、熱供給対象が、蒸気タービン(発電)、温水プール、温室、暖房、融雪装置等であるのが好ましい。
【0014】
さらに、前記課題を解決するために本発明に係る有機物処理装置は、熱分解装置と、熱分解装置における熱分解によって発生した熱分解ガスを処理するためのガス処理装置と、を具える有機物処理装置であって、ガス処理装置が、熱分解装置で熱分解したガス成分を酸化させる手段(例えば、実施形態における触媒酸化装置2)と、酸化させる手段にガス管路(例えば、実施形態におけるダクト13b)を介して連通し酸化させたガスを中和洗浄する手段(例えば、実施形態における乾溜ガス洗浄スクラバ17)とを具えており、ガス管路と分解ガス通過手段とを連通させる酸化ガス導入手段が設けられており、ガス処理装置により酸化処理された熱分解ガスが、酸化ガス導入手段に吸い込まれて酸化ガス導入手段を通して分解ガス通過手段に導入されることにより、材料層を通過するよう構成されている。
【0015】
また、上記構成の有機物処理装置において、熱分解装置の下部に、材料層に生成したセラミックスを熱分解装置の外に出すためのセラミックス取出口が形成されており、熱分解装置外部におけるセラミックス取出口周辺に、セラミックス回収箱52(図3参照)に溜まったセラミックスが飛散するのを防止するためのセラミックス吸引手段(例えば、実施形態における吸引ファン54)が設けられているのが好ましい。また、このセラミックス吸引手段は、セラミックス回収箱52に溜まったセラミックスを回収するためのものであってもよい。
【0016】
さらに、上記構成の有機物処理装置において、ガス管路もしくは中和洗浄する手段に、空気を取り入れるための大気開放された空気取入手段(例えば、実施形態における空気取入部55)が設けられているのが好ましい。
【0017】
また、前記課題を解決するために本発明に係る有機物処理装置に設けられた熱供給システムは、熱分解装置及び酸化させる手段の少なくとも一方に熱媒体を供給する熱媒体供給管路と、熱媒体供給管路に接続され、熱分解装置で発生する熱分解ガス及び酸化させる手段に導入される熱分解ガスの少なくとも一方と熱媒体との熱交換が行われる熱交換管路と、熱交換管路に接続され、熱交換管路で熱交換した熱媒体を熱供給対象(例えば、温水プール、暖房、融雪装置)に送出することにより熱分解装置内部及び酸化させる手段内部の少なくとも一方の熱を熱供給対象に供給し得る熱供給管路と、を具える。
【0018】
また、上記構成の有機物処理装置において、熱交換管路が熱分解装置に設けられた分解装置側熱交換管路であり、分解装置側熱交換管路において、熱分解装置内の熱分解により発生する熱分解ガスと熱媒体との熱交換が行われるのが好ましい。
【0019】
さらに、上記構成の有機物処理装置において、熱交換管路が酸化させる手段に設けられた酸化装置側熱交換管路であり、酸化装置側熱交換管路において、熱分解装置から酸化させる手段に導入される熱分解ガスと熱媒体との熱交換が行われてもよい。
【0020】
また、上記構成の有機物処理装置において、熱供給対象が、蒸気タービン(発電)、温水プール、温室、暖房、融雪装置等であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置によれば、有機物処理装置を構成する熱分解装置内での熱分解により発生した熱分解ガスを熱分解装置内に溜まった材料層に通過させる分解ガス通過手段が設けられている。分解ガス通過手段は、導入された熱分解ガスが材料層の全面にわたって通過するよう構成されている。このような構成により、熱分解装置内の熱分解ガスが材料層を通過する際に、汚染されている熱分解ガスに含まれている炭化水素系のガスがろ過されて炭化水素成分の少ない清浄な熱分解ガスを熱分解装置の下流側に設けられたガス処理装置に導入することができる。これにより、ガス処理装置が熱分解ガスを処理する際の負荷を軽減することができる。また、高温で熱分解が行われているセラミック等を通過することで熱分解ガスの温度が上がり、ガス処理装置を構成する触媒酸化装置の触媒の機能を高め、触媒の寿命を上げることができる。
【0022】
特に、熱分解ガスの上部と分解ガス通過手段とを連通させる分解ガス導入手段を熱分解装置に設けることで、熱分解装置内の上方に溜まった熱分解ガスを当該分解ガス導入手段を通して分解ガス通過手段に導入して、材料層に通過させることが可能である。また特に、分解ガス通過手段を格子状に形成した上で分解ガス通過手段に分解ガス吹出口を設ければ、材料層の全面にわたって熱分解ガスを通過させることが可能であり、材料層の一部にのみ熱分解ガスを通過させる場合よりも、より多くのセラミックを熱分解ガスの温度を上げるのに利用できるため、効果的に熱分解ガスの温度を上げることができる。
【0023】
また、熱分解装置が、原料有機物の熱分解により内部に発生する熱分解ガスの圧力調整を行なうための大気開放された圧力調整手段を有する。このため、通常は負圧の状態である熱分解装置の内圧が、大気圧よりも高まった場合には、熱分解装置内部のガスが圧力調整手段を通して外部に排出される。従って、熱分解装置内の温度が上昇することで原料が引火した場合であっても、圧力調整手段が安全弁として機能するため、ガスの急激な熱膨張による爆発を防止することが可能である。
【0024】
また、本発明に係る有機物処理装置は、熱分解装置と、熱分解装置における熱分解によって発生した熱分解ガスを処理するためのガス処理装置とで構成され、ガス処理装置を構成するガス成分を酸化させる手段とガスを中和洗浄する手段とがガス管路で連通している。そして、このガス管路と分解ガス通過手段とを連通させる酸化ガス導入手段が設けられている。このような構成により、ガス処理装置により酸化処理された熱分解ガスの一部を、当該酸化ガス導入手段を通して分解ガス通過手段に導入することができる。これにより、酸化処理された高温の熱分解ガスが熱分解装置に導入され、熱分解装置内の温度を高めることで熱分解装置内で行われる熱分解を促進することが可能である。
【0025】
さらに、熱分解装置の下部のセラミックス取出口周辺に、セラミックス回収箱52(図3参照)に溜まったセラミックスが飛散するのを防止するためのセラミックス吸引手段が設けられている。このため、セラミックス回収時のセラミックスの粉塵の舞い上がりが抑えられ、セラミックスの回収作業に従事する作業者の作業環境を改善することができる。また、セラミックス吸引手段を使用すればセラミックス回収箱52に溜まったセラミックス粉を吸引して所望の場所に回収することもできる。
【0026】
また、ガス処理装置を構成するガス成分を酸化させる手段とガスを中和洗浄する手段とを連通するガス管路、もしくは中和洗浄する手段の上部に、中和洗浄する手段に空気を導入するための大気開放された空気取入手段が設けられているため、中和洗浄する手段内部を流れる乾留ガスが冷却される。これにより、中和洗浄する手段で使用されるアルカリ中和洗浄剤に溶解する熱分解ガスの溶解率を上げることができる。さらには、空気取入手段を通って中和洗浄する手段内に導入された外気によって乾留ガスを希釈することができる。これにより、中和洗浄する手段におけるアルカリ中和洗浄の負荷を軽減させる上、脱臭されたガスを中和洗浄する手段の外部に排気することができる。
【0027】
また、本発明の熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置に熱供給システムを設けることにより、蒸気タービン(発電)、暖房といった熱供給対象に熱を供給するために、本発明の有機物処理装置における熱分解で発生する熱を有効に利用することで、エネルギの無駄使いを無くして省エネルギに貢献し得る。また、熱供給対象に熱を供給するための熱源として、有機廃棄物の熱分解によって発生する熱を利用することで、燃料を燃焼させた場合とは異なり炭酸ガスが発生せず、環境に配慮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の有機物処理装置の概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の有機物処理装置を構成する熱分解装置の概略図を示す。
【図3】図3は、本発明の有機物処理装置を構成する熱分解装置等の概略図を示す。
【図4】図4は、上記熱分解装置に設けられた空気導入管周辺を表す平面図である。
【図5】図5(a)は、上記空気導入管の平面図で、図5(b)は、その側面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して本発明の熱分解装置及びこれを具えた有機物処理装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
図1に、本発明に係る有機物処理装置の一実施例の概略図を示す。
【0031】
本実施例では、ごみ等の産業廃棄物を原料有機物として有機物処理を行い、原料中に含まれる無機物からセラミックスを生成する。なお、原料として産業廃棄物に限らず、蓄糞等どのようなものであってもよい。
【0032】
本実施例に係る有機物処理装置100は、熱分解装置1と、熱分解装置1内で発生した熱分解ガスを酸化触媒を使用して酸化する触媒酸化装置2と、酸化触媒で処理後の残留ガスを中和するアルカリ中和洗浄装置3と、アルカリ中和洗浄装置3における中和洗浄処理工程で出た排水を真空状態で固体成分と液体成分とに分離する固液分離装置4と、を具える。
【0033】
原料投入口から投入された原料は、熱分解装置1において熱分解されて、炭化物とガス成分とに分離される。熱分解装置1では、この炭化物を更に酸化処理して、セラミックスを生成する。一方、熱分解装置1で分離したガス成分は、酸化触媒装置2、中和洗浄装置3、及び固液分離装置4の順で処理を行い、固液分離装置4で分離した固体成分を熱分解装置1に投入して熱分解装置1で再利用するようにしている。
【0034】
図2に、熱分解装置1の概略図を示す。
【0035】
熱分解装置1は、上部に原料投入口11と、下部にセラミックス取出口12と、反応ガス(熱分解ガス)収集用開口13とを具える。なお、原料投入口11及びセラミックス取出口12は、これらを閉じることによって、熱分解装置1内を気密に保ち得るように構成されている。反応ガス収集用開口13は、ダクト13aを介して触媒酸化装置2と連通しており、熱分解装置1内で発生した熱分解ガスは、ダクト13aを介して触媒酸化装置2に導入され、この触媒酸化装置2において酸化触媒を用いて熱分解ガスを酸化する処理が行われる。
【0036】
次に、熱分解装置1におけるセラミックス生成工程を説明する。
【0037】
熱分解装置1の稼働初期工程において、原料投入口11から原料となる有機廃棄物を投入し、原料投入口11及びセラミックス取出口12を閉じて密閉する。熱分解装置内の温度は、ファン31によって熱分解装置1内に送られるヒータ14からの熱、又は原料自身の有する熱量を消費することによって上昇する。
【0038】
熱分解装置1内の温度は、ヒータ14の熱によって400℃以上に上昇しているため、熱分解装置1内で原料の熱分解が開始する。原材料としては、例えば、紙、木、ビニル類(塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等を材料とするもの)、食品残渣、畜糞、人糞等が好適である。
【0039】
上記燃焼、及び熱分解によって発生した熱分解ガスは、煙状となり、反応ガス収集用開口13からダクト13aを介して触媒酸化装置2に流れていく。
【0040】
熱分解装置1は密閉されているため内部が還元雰囲気に保たれており、熱分解装置1内の温度が上昇しても、原料が発火することはない。
【0041】
すなわち、熱分解装置1内では、原料として投入した有機物自らの有する熱量を利用して熱分解が行われる。熱分解が進むと、熱分解によって生じる乾溜ガスと蒸気はタールとして装置内壁に付着し、積層後炭化し、剥離して未処理層24の上に落下する。
【0042】
未処理層24の熱分解が進むと、未処理層24は乾燥層25となり、乾燥層25の表面から乾燥に伴う蒸気が発生する。
【0043】
乾燥層25の熱分解が更に進むと、乾燥層25から乾溜ガスが発生して、原料中に含まれている炭素成分及び微量の無機成分以外の成分がガスとして蒸散する。乾燥層25に残った炭素成分は、熱分解装置1の下部に溜まり炭化層26を形成する。炭化層26の熱分解が更に進むと、この炭素成分もガスとなって蒸散して、最終的に、原料中に含まれている無機成分のみが残留し、灰化層27が形成される。ここで、炭化層26と灰化層27との間に微量の酸素を送り込む(図3の空気導入管65を参照)と、この無機成分が微量の酸素と結合して、無機酸化物、つまりセラミックス28粉末として熱分解装置1の底部に残留することになる。このセラミックス28は熱分解装置1の下部あるいは底部に設けたセラミックス取出口12から出して、様々な用途において利用する。
【0044】
セラミックス取出口12の直下には、セラミックス回収箱52が設置されており(図3参照)、セラミックス取出口12を通って熱分解装置1から落下するセラミックス粉を貯留することができる。また、セラミックス回収箱52からは、セラミックス回収用のセラミックス回収管53(図3参照)が所望の場所に向けて延びている。セラミックス回収管53には、後述するように、セラミックス回収箱52に溜まったセラミック粉が飛散するのを防止するための吸引ファン54が設けられている。
【0045】
次に、上述のセラミックス生成工程に伴って発生するガスの処理工程について説明する。
【0046】
熱分解により発生した熱分解ガスは、反応ガス収集用開口13からダクト13aを介して触媒酸化装置2に導入される。触媒酸化装置2に導入された熱分解ガスは、触媒ケース15を通り、ここで炭化水素系のガスが酸化され、二酸化炭素と水になる。この触媒酸化工程により、上記熱分解工程で発生した熱分解ガスは約9割程度減少し、上記触媒酸化で処理した後の残留ガスは、塩素や硫黄、窒素といった元素を含むガスになる。酸化触媒としては、Pt、Cr、Cu、Mn等の金属、又はAl等の酸化金属等を用いることができる。
【0047】
次いで、これらの残留ガスはダクト13bを介してアルカリ中和洗浄装置3に送られ、中和洗浄される。アルカリ中和洗浄装置3は、乾溜ガス洗浄スクラバ17と、循環ボックス18と、薬液注入タンク19とから成る。熱分解装置1で発生した熱分解ガスを触媒酸化装置2を通してからアルカリ中和洗浄装置に送るようにしたのは、アルカリ中和洗浄の前に触媒酸化処理により熱分解ガスを大幅に減少させることで、アルカリ中和洗浄装置3にかかる負荷を軽減した方が、ガス処理の効率がよいためである。薬液注入タンク19からアルカリ中和洗浄剤が循環ボックス18に導入され、前記循環ボックス18を介して乾溜ガス洗浄スクラバ17に設けられているシャワー式散水器16から散水される。散水され、アルカリ洗浄工程に供されたアルカリ中和洗浄剤は、前記スクラバ17の底部に溜まり、再度循環ボックス18に戻された後、再び前記散水器18から散水され、アルカリ中和洗浄装置3内を循環する。好ましいアルカリ中和洗浄剤としては、苛性ソーダ等が挙げられる。この中和洗浄工程で、塩素や硫黄、窒素といった元素を含有するガス、すなわち酸性ガスが中和され、水や塩等が生成される。
【0048】
アルカリ中和洗浄処理3で使用した排水は、循環ボックス18から固液分離装置4に送られ、固液分離される。繰り返し使用するために排水を定期的に固液分離装置4に送り、新しいアルカリ中和洗浄剤を使用することによって、アルカリ中和洗浄装置3の洗浄効率を上げることができる。
【0049】
固液分離装置4は、真空タンク内に配置した蒸散部20と、蒸留部21とからなる。中和洗浄装置3から送られてきた排水は、蒸散部20において蒸散させることによって、ガスと固形分を含む液体になる。ガスは更に蒸留部21へ送られた後に図示しないクーリングタワーを通ることによって冷却されて蒸留水となり、中和洗浄装置3の循環ボックス18にリサイクルして再利用する。固形分を含む液体は、更に液体と固体に分離し、固体は熱分解装置1へ戻して、新たな原材料と共に再度熱分解される。液体は、固液分離装置4の蒸散部20に戻され、中和洗浄装置3から送られてくる排水と共に再度蒸散・蒸留されて固液分離される。なお、このように分離した液体を、蒸留して冷却した後、アルカリ中和洗浄装置3に戻し、アルカリ中和洗浄剤と共にアルカリ中和洗浄工程で再利用される。従って、排水は、装置外に出ることがない。
【0050】
ここで、有機物処理装置100の構造について、図3乃至図5を参照してさらに詳しく説明する。
【0051】
図3に示すように、熱分解装置1の側面上部には、水平に突出する圧力調整部51が設けられている。この圧力調整部51は、管状の部材であり、熱分解装置1の内部をその外部に対して大気開放するよう構成されている。触媒酸化装置2とアルカリ中和洗浄装置3とを連通するダクト13bに設置されているファン32(図1参照)により、熱分解装置1内で発生する熱分解ガスが触媒酸化装置2に向けて引かれるため、熱分解装置1内部は負圧となる。しかしながら、外気が圧力調整部51を通して熱分解装置1に導入されるため、熱分解装置1内部の圧力は、通常はほぼ大気圧に近い負圧に保たれる。特に、圧力調整部51は、熱分解装置1の内圧が上昇した場合の安全弁として有用であり、熱分解装置1内の温度が上昇することで原料が引火した場合であっても、熱分解ガスを圧力調整部51を通して外部に逃がすことで熱分解ガスの急激な熱膨張による爆発を防止することが可能である。
【0052】
熱分解装置1の下部には、原料有機物の熱分解により内部に生成する無機物に空気中の酸素を結合させて無機酸化物(セラミックス)を生成するために、外部の空気を熱分解装置1の内部に送り込むための空気導入口66が略等間隔に複数形成されている。空気導入口66には、熱分解装置1の外部に通じる空気導入管65が接続されており、空気導入管65にはファン34が設置されている。このような構成により、ファン34を作動させることで、外部の空気を空気導入口66を介して熱分解装置1内に送り込むことが可能である。
【0053】
ファン34の作動により空気導入管65に導入された空気は、複数の空気導入口66を介して熱分解装置1内の下部に入り、上方に流れ、セラミック層28、灰化層27、炭化層26、乾燥層25及び未処理層24の順にこれらの層を通過する。空気導入口66を複数設けることで、熱分解装置1の外部から空気導入口66を介して導入された空気がこれらの層の全面にわたって均一に通過するため、セラミックスが生成する場所に偏りがなく均質なセラミックスが一様に生成し、結果として生成するセラミックスの純度を高めることができる。
【0054】
また、熱分解装置1内の下部であって、材料層(セラミックス層28)の下方には、熱分解装置1内に溜まった材料層に熱分解ガスを通過させるための分解ガス通過管61が設けられている。図4の平面図、図5(a)の平面図及び図5(b)の側面図に示すように、この分解ガス通過管61は、熱分解装置1内の下部に平面視格子状に配置された複数の管状部材61,61,・・・から成り、熱分解装置1内の下部に溜まった無機物(灰化層27)に熱分解ガスを通過させるよう構成されている。この分解ガス通過管61の側部もしくは下部には、分解ガス通過管61内を流れる空気を無機物に噴射するための略円形の分解ガス吹出口62が複数箇所形成されている。
【0055】
分解ガス通過管61は、外径約50mmの管が紙面横方向に4本、縦方向に6本、200mm程度の等間隔で並んだ円形の分解ガス通過管61と、横方向に2本設けられた断面矩形状の分解ガス通過管61とからなる1組の分解ガス導入管が、熱分解装置1内に左右設置されたもので構成される。分解ガス吹出口62は、2mm程度の径を有しており、250mm程度の間隔で計120個程度設けられている。なお、分解ガス通過管61及び分解ガス吹出口62の寸法、数は、必ずしもこれらの寸法に限られない。分解ガス通過管61は、例えば、ステンレス鋼、又は配管用炭素鋼を材質とするのが好ましい。また、分解ガス通過管61は、上記のように縦横に形成された格子状に限らず、横方向にのみ形成したものや、縦方向にのみ形成したものであってもよい。
【0056】
図4に示すように、熱分解装置1の外部には、複数の分解ガス導入管68,68が設置されている。それぞれの分解ガス導入管68は、熱分解装置1内に左右1組設置された分解ガス通過管61のそれぞれと、耐熱レンガ等で構成された熱分解装置1の壁部の中を通って連通している(熱分解装置1の壁部の中を通る分解ガス導入管68を、図4において各々点線で示す)。
【0057】
複数の分解ガス導入管68,68の上流側は、合流して一本の導入管となり、さらにその上流側には、図3に示すファン33が設置されている。さらに、ファン33の上流側は、分解ガス導入管63を介して熱分解装置1の上面に形成された開口67に接続される一方で、酸化ガス導入管64を介して触媒酸化装置2の下流側のダクト13bにも接続されている。また、導入管63,64内を流れる熱分解ガスの温度が外気により低下するのを防止するため、ガス導入管63,64の外側は、いずれも保温、断熱のための断熱材(図示せず)で覆われている。なお、図3に示すように、ファン33の上流側を、熱分解装置1の上面及びダクト13bの双方に接続してもよいし、熱分解装置1の上面及びダクト13bのうちのいずれか一方に接続してもよい。
【0058】
このような構成により、以下に説明するようにして分解ガス通過管61に熱分解ガスを流すことができる。このような構成においてファン33の作動により、熱分解装置1内上部に溜まっている、セラミックス層等24〜28と比較して温度の低い熱分解ガスが、開口67を通って分解ガス導入管63に導入される。そして、熱分解ガスは、分解ガス導入管63内を流れ、それぞれの分解ガス導入管68,68を経由して分解ガス通過管61に導入される。分解ガス通過管61を流れる熱分解ガスは、分解ガス吹出口62から外に吹き出されて上方に流れる。上方に流れる過程で、熱分解ガスは、下から順に、セラミック層28、灰化層27、炭化層26、乾燥層25及び未処理層24を通過する(これらの層24〜28は、図3には図示していない)。これらの層を通過した熱分解ガスは、開口67を介して再び分解ガス導入管63に導入されるか、又はダクト13aを通って触媒酸化装置2に導入される。このようにして熱分解ガスが材料層を通過することで、熱分解ガスが上記のような層を通過する過程で熱分解ガスに含まれている炭化水素系のガスがろ過される。このため、ダクト13aを通って炭化水素成分の少ない比較的清浄な熱分解ガスを触媒酸化装置2に導入することができ、触媒酸化装置2や乾留ガス清浄スクラバ17への負荷を軽減することができる。
【0059】
さらに、約500℃〜約680℃の温度で熱分解及び無機物への酸素の結合が行われているセラミック層28等に熱分解ガスを通過させることで、熱分解ガスの温度を上げることが可能である。このように熱分解ガスの温度を上げることで、触媒酸化装置2における触媒の機能を高め、さらには触媒の寿命を上げることができる。これは、熱分解装置1で発生した熱分解ガスを燃焼処理するのではなく、触媒酸化装置2に導入して酸化処理を行うような構成となっている本処理装置にとって特に有用である。
【0060】
また、ファン33の作動により、触媒酸化装置2における触媒酸化工程で処理した後の酸化ガスとしての熱分解ガスの一部が、酸化ガス導入管64を通ってそれぞれの分解ガス導入管68,68に導入される。このようにして導入された熱分解ガスは、分解ガス導入管63を通って導入された熱分解ガスと同様に、分解ガス吹出口62から外に吹き出されて熱分解装置1内を上方に流れる。
【0061】
このため、触媒酸化装置2で処理した後の酸化残留ガスとしての熱分解ガスは、同様にセラミック層28、灰化層27、炭化層26、乾燥層25及び未処理層24の順にこれらの層を通過する。これらの層を通過した熱分解ガスは、開口67を介して分解ガス導入管63に導入されるか、又はダクト13aを通って触媒酸化装置2に導入される。
【0062】
酸化ガス導入管64に熱分解ガスの一部を導入することによって得られる効果は、触媒酸化装置2で処理された高温の熱分解ガスを熱分解装置1の側に送ることで熱分解装置1内の温度を高め、熱分解装置1内で行われる熱分解を促進し得ることである。
【0063】
また、熱分解装置1の下部あるいは底部に設けられたセラミックス取出口12の周辺には、粉塵吸引装置が設けられている。この粉塵吸引装置は、例えば、図3に示すように、セラミックス回収箱52から延びるセラミックス回収管53上に設けられている吸引ファン54であるのが好ましい。このような構成により、吸引ファン54を作動させればセラミックス回収箱52に堆積したセラミックス粉末が飛散するのを防止することができる。このため、熱分解装置1の周辺でセラミックスの回収作業に従事する作業者の作業環境を改善することができる。すなわち、本処理装置は、作業の安全性をも考慮したものとなっている。なお、吸引ファン54を作動させればセラミックス回収箱52に堆積したセラミックス粉末をセラミックス回収管53を通して所望の場所に回収することも可能である。
【0064】
また、図3に示すように、触媒酸化装置2とアルカリ中和洗浄装置3の乾留ガス洗浄スクラバ17とを連通させるダクト13bであって、酸化ガス導入管64よりも下流側には、上部に突出する空気取入部55が設けられている。この空気取入部55は、管状の部材で構成されており、ダクト13bの内部がその外部に対して開放されているため、ダクト13b内に外部の空気を導入させることができる。なお、空気取入部55を、ダクト13bに設ける代わりに乾留ガス洗浄スクラバ17の上部に設けてもよい。
【0065】
このような空気取入部55を設けることにより、以下のような2つの効果が得られる。すなわち、空気取入部55を介して乾留ガス洗浄スクラバ17内に外気を導入することで、乾留ガス洗浄スクラバ17内部の乾留ガスが冷却される。これにより、乾留ガス洗浄スクラバ17のシャワー式散水器16から散水されるアルカリ中和洗浄剤に溶解する乾留ガスの溶解率を上げることができる。このような溶解率の上昇のほか、もう1つの効果は、空気取入部55を通って乾留ガス洗浄スクラバ17内に導入された外気によって酸性の乾留ガスが希釈されることである。これにより、乾留ガス洗浄スクラバ17におけるアルカリ中和洗浄の負荷を軽減させる上、脱臭されたガスを乾留ガス洗浄スクラバ17の側面上部に設けられた排気部56から乾留ガス洗浄スクラバ17の外部に排気することができる。
【実施例2】
【0066】
ここで、図6を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の有機物処理装置100は、当該有機物処理装置100で発生する熱を外部の熱供給対象200に供給可能な熱供給システム70を具えている。本実施形態の熱分解装置1及び触媒酸化装置2の構成は、上記実施例1の熱分解装置1及び触媒酸化装置2と同じであるため、ここでは実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0067】
本発明に係る熱供給システム70は、管路71〜78から成る複数の管路を具えている。冷水導入管路71は、図示しない冷水供給源から供給される熱媒体としての冷水を導入する。冷水は、水道水、貯留水の他、熱供給対象200に供給された後に戻された循環水であってもよい。導入管路71からは、熱分解装置1の側に冷水を供給するための分解装置側供給管路72が一方に分岐して熱分解装置1の側に延びている一方で、触媒酸化装置2の側に冷却水を供給するための酸化装置側供給管路75が他方に分岐して触媒酸化装置2の側に延びている。
【0068】
分解装置側供給管路72から延びる分解装置側熱交換管路73は、熱分解装置1の外側を装置1の下部から上部に向かって螺旋状に巻かれている。熱交換管路73は、熱分解装置1内に発生する熱分解ガスと熱交換管路73内を流れる冷水との熱交換を行うよう設置されている。また、分解装置側熱交換管路73からは分解装置側戻し管路74が延びている。一方、酸化装置側供給管路75からは酸化装置側熱交換管路76が延びており、この熱交換管路76は、触媒酸化装置2の外側を装置2の下部から上部に向かって螺旋状に巻かれている。熱交換管路76は、酸化装置2に導入された熱分解ガスと熱交換管路76内を流れる冷水との熱交換を行うよう設置されている。また、分解装置側冷却管路73からは酸化装置側戻し管路77が延びている。さらに、戻し管路74及び戻し管路77は一本の管路78として合流する。この管路78は熱供給対象200に延びており、熱供給対象200に熱を供給するための熱供給管路78を成す。
【0069】
なお、管路71〜78の材質は、これらの管路71〜78内を流れる熱媒体(流体)の温度に耐え得るような金属であるが、特に、熱交換が行われる分解装置側熱交換管路73及び酸化装置側熱交換管路76は、装置側から管路側に効率よく熱を移動させる必要性から金属の中でも熱伝導率が高い銅管で構成するのが好適である。
【0070】
また、本実施例は図6に示すように、熱交換管路を熱分解装置1及び触媒酸化装置2の双方に設置することで、熱分解装置1及び触媒酸化装置2双方の熱分ガスの熱を利用する構成であるが、熱供給システムの構成はこれに限らない。すなわち、熱分解装置1及び触媒酸化装置2のうちいずれか一方のみに熱交換管路を設けることで、熱交換管路を設けた方の装置内部の熱分解ガスの熱を利用して、熱供給対象200に熱を供給することも可能である。
【0071】
さらに、上記の構成では、熱交換管路73,76は、それぞれ熱分解装置1及び触媒酸化装置2の外側に巻かれていたが、当該管路73,76は、このような構成に限られず、それぞれ熱分解装置1及び触媒酸化装置2の内部に設置してもよい。このような場合には、管路が熱分解ガスに直接曝されるため、装置の外部に管路を設置する場合と比較して、耐熱性が高く且つ耐腐食性が良好な管路を使用することを要する。
【0072】
本実施例では、上記のようにして熱分解装置1及び触媒酸化装置2に配設された管路を利用し、以下のようにして熱供給対象200に熱を供給する。
【0073】
まず、水道水等の冷水が、有機物分解装置100の外部から冷水導入管路71に導入される。導入された冷水は、分岐する管路により、分解装置側供給管路72及び酸化装置側供給管路75にそれぞれ流入する。そして、分解装置側供給管路72を流れる冷水は、分解装置側熱交換管路73に流入する。分解装置側熱交換管路73では、冷水と熱分解装置1内の熱分解ガスとの間で熱交換が行われ、冷水の温度が上昇する(温水となる)。熱交換を終えて温度上昇した分解装置側熱交換管路73の水(温水)は、分解装置側戻し管路74を流れる。
【0074】
一方、酸化装置側供給管路75を流れる冷水は、酸化装置側熱交換管路76に流入する。酸化装置側熱交換管路76では、冷水と触媒酸化装置2に導入された熱分解ガスとの間で熱交換が行われ、冷水の温度が上昇する(温水となる)。熱交換を終えた酸化装置側熱交換管路76の温水は、酸化装置側戻し管路77を流れる。
【0075】
戻し管路74,77をそれぞれ流れる温水は、合流して熱供給管路78を流れ、熱供給管路78に接続された熱供給対象200に供給される。このようにして、熱分解装置1内に発生した熱分解ガス及び触媒酸化装置2内に導入された熱分解ガスの熱を熱供給対象200に供給することができる。
【0076】
なお、熱供給対象200として、例えば、蒸気タービン(発電)、温水プール、温室、融雪装置等が挙げられるが、熱分解装置1内に発生した熱分解ガス及び触媒酸化装置2内に導入された熱分解ガスの熱を利用し得るものであれば、熱供給対象200はこれらに限定されない。
【0077】
また、上記の説明では、熱供給対象200に熱を供給するための熱媒体を温水として説明したが、当該熱媒体は温水に限られず、蒸気、又は温風であってもよい。熱供給システム70に適宜給水ポンプを設けて熱媒体を加圧した上で、熱分解装置1及び触媒酸化装置2内の熱分解ガスの温度を調節することにより熱交換管路73,76で高温の蒸気を発生させ、発生した蒸気を熱供給対象200に送気することが可能である。さらに、戻し管路74,77及び熱供給管路78内の蒸気の湿度を調節して乾燥させた上で管路74,77,78に送風ファンを設置すれば、乾いた温風を熱供給対象に供給することも可能である。なお、温水は、温水プール、温室、暖房、融雪装置等に供給可能である。一方、温風は、温室、暖房、融雪装置等に供給可能であり、蒸気は、蒸気タービン(発電)に供給可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 熱分解装置
2 酸化触媒装置(ガス処理装置)
3 アルカリ中和洗浄装置(ガス処理装置)
4 固液分離装置
12 セラミックス取出口
13a ダクト
13b ダクト(ガス管路)
16 シャワー式散水器
17 乾溜ガス洗浄スクラバ
24 未処理層(材料層)
25 乾燥層(材料層)
26 炭化層(材料層)
27 灰化層(材料層)
28 セラミックス層(材料層)
33 ファン(分解ガス導入手段)
34 ファン(セラミックス生成手段)
51 圧力調整部(圧力調整手段)
52 セラミックス回収箱
53 セラミックス回収管
54 吸引ファン(セラミックス回収手段)
55 空気取入部(空気取入手段)
61 分解ガス通過管(分解ガス通過手段)
62 分解ガス吹出口
63 分解ガス導入管(分解ガス導入手段)
64 酸化ガス導入管(酸化ガス導入手段)
65 空気導入管(セラミックス生成手段)
66 空気導入口(セラミックス生成手段)
67 開口
68 分解ガス導入管(分解ガス導入手段)
70 熱供給システム
71 冷水導入管路
72 分解装置側供給管路
73,76 熱交換管路
74,77 戻し管路
75 酸化装置側供給管路
78 熱供給管路
100 有機物処理装置
200 熱供給対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料有機物を熱分解させるための熱分解装置であって、
原料有機物の熱分解により前記熱分解装置内に形成される材料層に含まれる無機物に酸素を結合させて無機酸化物(セラミックス)を生成するためのセラミックス生成手段と、前記熱分解装置内の前記材料層の下方に配置され、前記熱分解装置内での熱分解により発生した熱分解ガスを前記熱分解装置内に溜まった前記材料層の全面にわたって通過させる分解ガス通過手段と、を有しており、
前記分解ガス通過手段に前記熱分解装置内の上方に溜まった熱分解ガスを導入するよう構成されていることを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
前記熱分解装置の上部と前記分解ガス通過手段とを連通させる分解ガス導入手段が設けられており、
前記熱分解装置内の上方に溜まった熱分解ガスが、前記分解ガス導入手段に吸い込まれて前記分解ガス導入手段を通して前記分解ガス通過手段に導入されることにより、前記材料層を通過するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記分解ガス通過手段が格子状に形成された管状部材から成り、
前記分解ガス通過手段の側面もしくは下面に、前記分解ガス導入手段によって導入された熱分解ガスを前記材料層に向けて吹き出させるための分解ガス吹出口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱分解装置。
【請求項4】
前記熱分解装置内部の熱分解ガスの圧力調整を行なうための大気開放された圧力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱分解装置。
【請求項5】
前記熱分解装置に熱媒体を供給する熱媒体供給管路と、
前記熱媒体供給管路に接続され、前記熱分解装置で発生する熱分解ガスと前記熱媒体との熱交換が行われる熱交換管路と、
前記熱交換管路に接続され、前記熱交換管路で熱交換した前記熱媒体を熱供給対象に送出することにより前記熱分解装置内部の熱を前記熱供給対象に供給し得る熱供給管路と、
を有する熱供給システムを具えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記熱供給対象が、蒸気タービン(発電)、温水プール、温室、暖房、融雪装置等であることを特徴とする請求項5に記載の熱分解装置。
【請求項7】
前記熱分解装置と、前記熱分解装置における熱分解によって発生した熱分解ガスを処理するためのガス処理装置と、を具える有機物処理装置であって、
前記ガス処理装置が、前記熱分解装置で熱分解したガス成分を酸化させる手段と、前記酸化させる手段にガス管路を介して連通し前記酸化させたガスを中和洗浄する手段とを具えており、
前記ガス管路と前記分解ガス通過手段とを連通させる酸化ガス導入手段が設けられており、
前記ガス処理装置により酸化処理された熱分解ガスが、前記酸化ガス導入手段に吸い込まれて前記酸化ガス導入手段を通して前記分解ガス通過手段に導入されることにより、前記材料層を通過するよう構成されていることを特徴とする有機物処理装置。
【請求項8】
前記熱分解装置の下部に、前記材料層に生成したセラミックスを前記熱分解装置の外に出すためのセラミックス取出口が形成されており、
前記熱分解装置外部における前記セラミックス取出口周辺に、セラミックス吸引手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の有機物処理装置。
【請求項9】
前記ガス管路もしくは前記中和洗浄する手段に、空気を取り入れるための大気開放された空気取入手段が設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機物処理装置。
【請求項10】
前記熱分解装置及び前記酸化させる手段の少なくとも一方に熱媒体を供給する熱媒体供給管路と、
前記熱媒体供給管路に接続され、前記熱分解装置で発生する熱分解ガス及び前記酸化させる手段に導入される熱分解ガスの少なくとも一方と前記熱媒体との熱交換が行われる熱交換管路と、
前記熱交換管路に接続され、前記熱交換管路で熱交換した前記熱媒体を熱供給対象に送出することにより前記熱分解装置内部及び前記酸化させる手段内部の少なくとも一方の熱を前記熱供給対象に供給し得る熱供給管路と、
を有する熱供給システムを具えることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の有機物処理装置。
【請求項11】
前記熱交換管路が前記熱分解装置に設けられた分解装置側熱交換管路であり、
前記分解装置側熱交換管路において、前記熱分解装置内の熱分解により発生する熱分解ガスと前記熱媒体との熱交換が行われることを特徴とする請求項10に記載の有機物処理装置。
【請求項12】
前記熱交換管路が前記酸化させる手段に設けられた酸化装置側熱交換管路であり、
前記酸化装置側熱交換管路において、前記熱分解装置から前記酸化させる手段に導入される熱分解ガスと前記熱媒体との熱交換が行われることを特徴とする請求項10に記載の有機物処理装置。
【請求項13】
前記熱供給対象が、蒸気タービン(発電)、温水プール、温室、暖房、融雪装置等であることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の有機物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−17702(P2010−17702A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112818(P2009−112818)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507002790)
【出願人】(595030712)
【出願人】(508179567)
【出願人】(508179578)
【Fターム(参考)】