説明

熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム

【課題】 容器内部に収納された物品の製品説明のラベルに加工されて容器外壁面に貼着され、遮熱性に優れた熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムを提供すること。
【解決手段】 原料のポリエステル樹脂が、ジカルボン酸(a)成分由来の単位として、非脂環式ジカルボン酸(a1)成分、脂環式ジカルボン酸(a2)、および/または、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の繰り返し単位を主成分として有し、ジオール(b)成分由来の単位として、非脂環式ジオール(b1)、脂環式ジオール(b2)成分由来の繰り返し単位を含み、かつ、(a2)、(a3)および/または(b2)成分由来の繰り返し単位を、ポリエステル系樹脂に対し合せて少なくとも30モル%を含む特殊ポリエステル系樹脂(A)を含んでなるものであり、発泡フィルムは、密度が0.01〜1.2g/cmであり、かつ、80℃の温水に10秒間浸漬し、その直後に23℃の水中に30秒間浸漬した後の主収縮方向の最大熱収縮率が10%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系熱収縮性フィルムに関する。さらに詳しくは、容器内部に収納された物品の製品説明のラベルに加工されて容器外壁面に貼着され、容器内部に収納された物品と外界との間の熱伝導を遮って熱が直接手に伝わらないようにする、熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム、この熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料用容器として、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)ボトル(瓶)に加えて、アルミニウムや鋼などの金属薄板製ボトル(瓶状缶)が増加しつつある。これらボトルや瓶状缶に収納した製品の商品名や商品説明文は、ボトルなどの外壁面に直接印刷するのは困難なので、あらかじめ印刷した筒状の熱収縮性フィルム(熱収縮性ラベル)を準備し、この筒状熱収縮性フィルムを被せ、熱収縮させてボトル外壁面に密着させる方法が採用されている。
【0003】
これら飲料用容器の中でもアルミニウム製ボトル、鋼製ボトルは、内部に収納した物品が視認できない反面、紫外線などの有害光線を透過しないので、収納した物品を変質しないという利点がある。さらに、アルミニウムや鋼などの熱伝導率がPETに比べ高いため、アルミニウム製、鋼製ボトル入り製品を店舗の冷蔵ケースに並べた場合、および自動販売機のストック部に製品を補充した場合、短時間で製品の冷却・加熱が可能であるという利点もある。反面、熱伝導率が高いため、製品説明用の通常の熱収縮性ラベルでは、過冷または過熱のためにボトル外壁面を把持できないという欠点や、夏季に十分に冷却された清涼飲料水などの製品が、瓶状缶の熱伝導率が高いために、短時間で温くなってしまうという欠点がある。これらの欠点を解決するため、ボトル外壁面と熱収縮性ラベルの間に不織布を挟む方法や、熱収縮性ラベルの印刷インクに空隙を形成する方法が採用されている。しかし、これらの方法では、断熱効果が十分でないばかりでなく、コストも上昇するという欠点がある。
【0004】
熱収縮性ラベルに衝撃吸収性を付与するために、気泡または空洞を設けた熱収縮性フィルムが提案されている。具体的には、例えば、非相溶性樹脂同士のブレンド物からシートを調製し、このシートを延伸することにより、親和性の低い樹脂同士の境界(または界面)に空隙または空洞を形成する方法(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)、ガス押出発泡成形による方法(特許文献5参照)などがある。しかしながら、非相溶性樹脂同士のブレンド物からのシートを延伸する方法では、空洞含有率が低く、断熱効果の点で不十分であるという欠点があった。また、ガス押出発泡成形法では、空洞(発泡セル)の径が大きくかつ不均一であるため、フィルム表面の凹凸が激しくなり、外観が劣るばかりでなく、商品名や製品説明文などが印刷できないという欠点があった。
【特許文献1】特公平7−33063号公報
【特許文献2】特開平5−111960号公報
【特許文献3】特開平7−53756号公報
【特許文献4】特開2002−36356号公報
【特許文献5】特開2003−26843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術にあった諸欠点を解消したフィルムを提供することを目的として鋭意検討した結果、完成されたものである。すなわち、本発明の目的は、次のとおりである。
1.空洞(発泡セル)の径が小さく均一で、比重が小さく、断熱効果・衝撃吸収性が十分な熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムを提供すること。
2.外観が美麗で、商品名や製品説明文などを美麗に印刷可能で、熱収縮性ラベル、工業用部品などを包装、結束、被覆するための資材として好適な、熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するために、本発明では、 熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムであって、
原料のポリエステル系樹脂が、以下に記載の(1)および/または(2)を満足し、かつ、ポリエステル系樹脂に対して、以下に記載の脂環式成分由来の単位を合わせて少なくとも15モル%含む特殊ポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系樹脂組成物であり、
発泡フィルムは、密度が0.01〜1.2g/cmであり、かつ、80℃の温水に10秒間浸漬し、その直後に23℃の水中に30秒間浸漬した後の主収縮方向の最大熱収縮率が10%以上であることを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
(1)ジカルボン酸(a)成分由来の単位として、非脂環式ジカルボン酸(a1)成分由来の繰り返し単位、脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の繰り返し単位、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の繰り返し単位のうち、少なくとも一種の単位を有する。
(2)ジオール(b)成分由来の単位として、非脂環式ジオール(b1)成分由来の単位、脂環式ジオール(b2)成分由来の繰り返し単位のうち、少なくとも一種の単位を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上に利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムは、優れた断熱効果、衝撃吸収性を発揮する。
2.本発明に係る熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムは、表面に凹凸が少なく美麗であるので、熱収縮性ラベルとして使用する際、商品名や製品説明用の印刷が極めて容易である。
3.本発明に係る熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムは、アルミニウム製ボトル、鋼製ボトルの熱収縮性ラベルとして使用する際、収納物が過冷または過熱されていても、断熱性に優れているので容易に把持できるし、冷却された収納物が短時間で温くなってしまうことがなく、加熱された収納物が短時間で温度が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する実施態様(構成要件)の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。本発明に係る熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムは、特殊なポリエステル樹脂(A)を含むポリエステル系樹脂組成物を原料樹脂とする。本発明において、特殊ポリエステル系樹脂(A)とは、ジカルボン酸(a)成分とジオール(b)成分とを重縮合させたポリエステル系樹脂であり、ジカルボン酸(a)成分由来の単位として、非脂環式ジカルボン酸(a1)成分由来の単位のほかに、脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の繰り返し単位、および/または、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の繰り返し単位を有し、ジオール(b)成分由来の単位として、非脂環式ジオール(b1)成分由来の単位のほかに、脂環式ジオール(b2)成分由来の繰り返し単位を有し、上記脂環式成分{(a2)成分、(a3)成分および(b2)成分}由来の単位を合わせて15モル%を含むポリエステル系樹脂をいう。
【0009】
ポリエステル系樹脂原料であるジカルボン酸(a)成分としての非脂環式ジカルボン酸(a1)としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4−フェニレンジオキシジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、および、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これら非脂環式ジカルボン酸類(a1)は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
【0010】
ポリエステル系樹脂原料である脂環式ジカルボン酸(a2)としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。中でも1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が、工業的に入手し易く好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸にはトタンス体とシス体との異性体があるが、トランス体がトタンス体とシス体との合計量に対して90モル%以上であると、得られるポリエステル系樹脂の耐熱性が高く好ましい。
【0011】
ポリエステル系樹脂原料であるジカルボン酸(a)成分としてのエステル形成性誘導体(a3)成分としては、上記脂環式ジカルボン酸(a2)成分のアルキルエステル、酸無水物、酸ハライドなどが好適であり、中でもアルキルエステルが好ましい。
【0012】
ポリエステル系樹脂の製造用原料として使用されるジカルボン酸(a)成分は、ジカルボン酸(a)成分全体に占める脂環式ジカルボン酸(a2)成分、および/または、そのエステル形成性誘導体(a3)成分の比率が、合計量で30モル%未満であると、得られる発泡シートの強度が低下する傾向がある。脂環式ジカルボン酸(a2)成分
に占める1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および/または、そのエステル形成性誘導体成分の比率が50モル%以上であることを「主成分」といい、より好ましいのは70モル%以上であり、とりわけ好ましいのは90モル%以上である。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および/または、そのエステル形成性誘導体成分には、トランス体とシス体の異性体があり、トランス異性体の比率が80モル%以上であるのが好ましく、中でも好ましいのは90モル%以上である。
【0013】
本発明者らの実験によれば、発泡シートの発泡セル径を均一にし、表面外観の優れた発泡シートを得るためには、特殊ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸(a)成分由来の単位としての脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の繰り返し単位、および/または、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の繰り返し単位を含むのが好ましいことが分かった。さらに、ジカルボン酸(a)成分と重縮合させるジオール(b)成分として、脂環式ジオール(b2)成分を含む場合には、脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の繰り返し単位、および/または、そのエステル形成性誘導体成分(a3)成分由来の単位と、後記する脂環式ジオール(b2)成分由来の単位との和、すなわち脂環式成分{(a2)成分、(a3)成分および(b2)成分}由来の単位の和を、特殊ポリエステル樹脂(A)に対する合計量として、少なくとも15モル%とすればよいことが分かった。特に、発泡剤としての超臨界流体を、押出機シリンダー途中から注入する場合に、上記脂環式成分由来の単位との和を少なくとも15モル%とすると、表面外観がとりわけ優れた発泡シートが得られることが分かった。
【0014】
ジオール(b)成分としての非脂環式ジオール(b1)成分としては、炭素数2〜6のアルキレンジオール類、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの脂肪族ジオール類、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’
−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら他のジオール(b1)成分は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
【0015】
ジオール(b)成分としての脂環式ジオール(b2)成分としては、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,2,1,0]デカン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどが挙げられる。中でも好ましいのは、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、反応性が高く高重合度で、ガラス転移点の高いポリエステル系樹脂が得られるので、とりわけ好ましい。脂環式ジオール(b1)に占める1,4−シクロヘキサンジメタノールの比率が50モル%以上であることを「主成分」であるといい、より好ましいのは70モル%以上であり、とりわけ好ましいのは90モル%以上である。また、1,4−シクロヘキサンジメタノールには、トランス体とシス体の異性体があり、トランス異性体の比率が60モル%以上であるのが好ましく、中でも好ましいのは65モル%以上である。
【0016】
特殊なポリエステル樹脂(A)に占める脂環式ジオール(b2)成分は、前記した脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の単位、および/または、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の単位を勘案して決定することができる。全ジオール(b)成分に対する脂環式ジオール(b2)成分は80モル%以上が好ましく、さらに好ましいのは90モル%以上であり、とりわけ好ましいのは95モル%以上である。また、ジオール(b)成分には、炭素数2〜10のアルキレンジオール成分を0.05〜20モル%含ませるのが好ましい。炭素数2〜10のアルキレンジオール成分の量が20モル%より多いと、特殊ポリエステル系樹脂(A)の融点が低く耐熱性が劣る傾向となり、炭素数2〜10のアルキレンジオール成分の量が0.05モル%より少ないとポリマー末端酸価が40以下のものが得にくく、いずれも好ましくない。アルキレンジオール成分は、上記範囲内で好ましいのは10モル%以下、さらに好ましいのは5モル%以下である。炭素数2〜10のアルキレンジオールのうち、入手のし易さの観点から炭素数2〜4のものが好適である。
【0017】
特殊なポリエステル系樹脂(A)を製造する際に、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上記ジカルボン酸(a)成分、上記ジオール(b)成分の外に、少量の他の共重合成分を、例えば、二官能のオキシカルボン酸成分、三官能以上の多官能成分を使用することができる。二官能のオキシカルボン酸成分としては、例えば、グリコール酸、乳酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、および、これらの水酸基をアルコキシ化したアルコキシカルボン酸などが挙げられる。三官能以上の多官能成分としては、例えば、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステルなどが挙げられる。三官能以上の多官能成分は、ポリエステル樹脂の溶融粘度を調整し、成形性を高めるために有用である。
【0018】
上記特殊なポリエステル系樹脂(A)は、従来から知られている重縮合法、すなわち、直接重合法またはエステル交換法などにより、回分式または連続式によって製造することができる。重縮合する際、ポリアルキレングリコールや前記した任意の共重合成分は、重縮合反応過程の任意の段階で添加することができる。また、あらかじめ上記ジカルボン酸(a)成分と上記ジオール(b)成分とから低重合度のオリゴマーを製造し、このオリゴマーに、ポリアルキレングリコールや前記した任意の共重合成分を加え、重縮合させて製造することもできる。
【0019】
上記特殊なポリエステル系樹脂(A)を製造する際には、従来から知られている触媒を使用することができる。触媒としては、リン化合物や金属系化合物などが挙げられる。リン化合物としては、例えば、正リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、これらのエステル類、有機酸塩などが挙げられ、金属系化合物としては、例えば、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、コバルトなどの有機酸塩や有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
【0020】
上記特殊なポリエステル系樹脂(A)は、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒(重量比で1対1)中で、30℃の温度で測定した固有粘度が、0.4〜1.5dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.4dl/g未満であると、特殊なポリエステル系樹脂(A)は機械的特性が劣る傾向となり、また1.5dl/gを超えると成形が困難となる場合があるため、いずれも好ましくない。固有粘度は上記範囲の中では、0.6〜1.3dl/gが特に好ましい。
【0021】
上記特殊なポリエステル系樹脂(A)を原料として発泡フィルムとする際には、本発明の目的および効果を損なわない限り、他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、各種の樹脂添加剤などを、必要に応じた量配合することができる。
【0022】
他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアミド6やポリアミド66などのポリアミド類、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートや1,4−ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどポリエステル系樹脂、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテルや変性ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、およびこれらの混合物などが挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、およびこれらの混合物であり、中でも特に好ましいのはポリカーボネートである。
【0023】
熱可塑性エラストマーとしては、水添スチレン−イソプレン系、水添スチレン−ブタジエン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、エチレン−プロピレン系エラストマーなどのポリオレフィンエラストマー、ポリエーテルアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどが挙げられる。
【0024】
上記特殊なポリエステル系樹脂(A)に対する、他の熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーの配合量は、原料樹脂組成物全体に対して、1〜60質量%の範囲、好ましくは1〜50質量%の範囲で選ぶことができる。
【0025】
原料樹脂に配合できる樹脂添加剤としては、例えば、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機充填材、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、パラフィンオイルなどの可塑剤、フッ素樹脂パウダー、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤などが挙げられる。
【0026】
本発明に係る熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムは、上記特殊なポリエステル系樹脂(A)を含む樹脂組成物を原料としてシート状に成形して、発泡および延伸させたものである。シートを発泡させるには、上記原料樹脂組成物に、以下に記載する発泡剤や発泡助剤や発泡核剤を配合する方法に拠ることができる。これら発泡剤などを配合する方法としては、(1)上記原料樹脂組成物にあらかじめドライブレンドする方法、(2)原料樹脂組成物を押出機で溶融させ、押出機などで溶融混練している途中で混合または注入する方法、などに拠ることができる。なお、上記(1)の方法と上記(2)の方法を組み合わせることもできる。上記(1)の方法によるときは主に後記する(x)の発泡剤を使用するのが好ましく、上記(2)の方法によるときは主に後記する(y)の発泡剤を使用するのが好ましい。なお、発泡助剤や発泡核剤は、あらかじめ原料樹脂に混練することもできる。
【0027】
発泡剤としては、(x)炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどの無機塩、クエン酸ナトリウムなどの有機塩、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾンカルボンアミドなどのアゾ化合物およびその塩、5−フェニルテトラゾールなどのテトラゾール化合物およびその塩などの常温で固体のもの、(y)窒素、炭酸ガス、アルゴン、ネオン、ヘリウムなどの不活性ガス、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの飽和炭化水素、テトラフロロエタン、各種フロン類等のハロゲン化炭化水素などの常温で気体または液体のものが挙げられる。発泡剤は一種に限らず、二種以上を併用することもできる。
【0028】
不活性ガスは、通常の気体状態でもよいが、超臨界状態で使用するのが好ましい。超臨界状態とは、臨界温度、臨界圧力以上の状態を意味する。例えば、二酸化炭素の場合の超臨界状態とは、温度30℃以上で圧力は7.4MPa以上の状態であり、窒素の場合の超臨界状態とは、温度−146℃で3.4MPa以上の状態をいう。超臨界状態の不活性ガスは、液体状態のものよりも粘性が低く、かつ、樹脂成分への拡散が高いという特性を有し、また通常の気体状態よりも密度が高いことから、不活性ガスを大量にかつ迅速に溶融樹脂に溶解させることができ、微細で均一な発泡セルが得られ易いので好ましい。溶融樹脂に溶解させる不活性ガスの量は、発泡シートの発泡倍率、空洞含有率、平均セル径などに影響するので、発泡シートを商業的に製造する際には、あらかじめ実験によって最適条件を確認し、製造条件を設定するのが好ましい。
【0029】
発泡助剤や発泡核剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウムなどの炭酸塩、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの酸化物などに代表される無機化合物や、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、カプリル酸ナトリウム、ミスチリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸ナトリウム、イソフタル酸ナトリウム、フタル酸ナトリウムなどに代表される有機化合物などが挙げられる。これら発泡助剤や発泡核剤は、一種に限らず、二種以上を併用することもできる。
【0030】
上記(1)の方法または(2)の方法によって発泡シートを製造するには、熱可塑性樹脂から発泡シートを製造する従来から知られている押出成形法、カレンダー成形法によることができる。中でも、工業的には押出成形法によるのが好適である。押出発泡成形法によるときの押出機には特に制約はなく、一軸押出機、二軸押出機、またはこれらを直列に組み合わせたタンデム型押出機などのいずれであってもよい。
【0031】
原料樹脂組成物は、そのまま押出機ホッパーに投入してシートを成形することもできるが、予備乾燥するのが好ましい。原料樹脂組成物を予備乾燥せずに使用する場合は、シリンダーの途中に脱揮発(脱気またはベント)口を備えた押出機を使用し、シリンダー内で溶融混練している間に脱揮発口から減圧することにより、強制的に脱揮発(脱気)するのが好ましい。原料樹脂組成物を予備乾燥するか、または、溶融混練している間に脱揮発口から減圧にし強制的に脱揮発(脱気)することにより、原料樹脂の熱劣化や製品の着色を抑制するとともに、発泡成形性を高めることができる。
【0032】
本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムを得るために、発泡シートを押出発泡成形法によって製造する場合、原料樹脂組成物を溶融させる際の温度は、原料樹脂組成物を構成する樹脂成分、各種樹脂添加剤の種類や割合にもよるが、押出機シリンダーの設定温度を170〜320℃の範囲とするのが好ましい。温度が170℃より低いと、原料樹脂組成物を十分に溶融させることができず押出不能となる場合があり、温度が320℃より高いと原料樹脂組成物の熱劣化や着色などが生じ易く、いずれも好ましくない。上記温度範囲で特に好ましいのは、190〜300℃である。
【0033】
押出発泡成形法によって発泡シートを製造する場合は、押出機先端にシート成形用ダイを装着する。シート成形用ダイは、フラットダイ(Tダイ)、サーキュラーダイ(チューブラーダイ)などが挙げられる。フラットダイ(Tダイ)を使用した場合は、シート状、板状または紐状に押出し、サーキュラーダイ(チューブラーダイ)を使用した場合は、管状またはチューブ状に押出しこれを切り開いてシート、紐状の成形品とすることができる。押出成形法によって製造するシート、板、紐、管などの成形品の厚さは、ダイリップの間隔を変えることによって調節することができる。
【0034】
これらシート、板、紐、管などの成形品は、(イ)押出工程からこのまま延伸工程に移送して、連続的に延伸操作を遂行する方法、(ロ)無延伸状態のシート、板、紐、管などを一旦常温に冷却してロール状に巻き取り、別工程で延伸する方法、などによって延伸することができる。シート成形用ダイから押出されたものを、引き続き延伸工程に移行し延伸する上記(イ)の方法が、作業性、エネルギー消費の観点から好適である。シート成形用ダイから押出された成形品の延伸は、延伸ロール、テンター装置などを使用して延伸することができる。延伸は、一軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、これらを組み合わせた延伸法などにより延伸することができる。同時二軸延伸法では、縦横同時に延伸されるが、逐次二軸延伸法の場合は、縦横の順序は特に制限がない。
【0035】
上記(イ)の方法および(ロ)の方法により、成形品を延伸する際の温度条件は、温度が低すぎると好ましい範囲に延伸するのが困難であり、温度が高すぎると発泡セルが大きくなり過ぎ、いずれも好ましくない。延伸時の温度は、原料樹脂組成物の組成や割合によって異なるが、原料樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上の温度、例えば、[Tg+(プラス)80℃]以下の温度が好ましく、特に、[Tg+10℃]を下限とし、[Tg+80℃]を上限とする温度範囲が好ましい。なお、原料樹脂組成物のTgは、組成物を構成する樹脂の文献値から各組成の重量比に基づいて算出した値を意味する。
【0036】
発泡シート延伸倍率は、シート面の面積倍率として、一軸延伸の場合は1.5〜6.0倍の範囲、二軸延伸の場合は1.5〜20倍の範囲で選ばれる。延伸倍率が上記範囲未満であると、加熱時の収縮が不十分となり、上記範囲を超えると、延伸過程で破断する場合が生じるため好ましくない。あらかじめ印刷した筒状の熱収縮性フィルム(熱収縮性ラベル)として使用する発泡シートの好ましい延伸倍率は、押出方向に対して直角の方向(横方向、TD)に2.0〜5.0倍である。
【0037】
こうして得られた熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムの厚さは、薄すぎると断熱効果や衝撃吸収性を十分に発揮することができず、厚すぎると材料樹脂の使用量が増えるので、0.01〜4.0mmの範囲で選ぶのが好ましく、中でも0.1〜3.0mmが特に好ましい。本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムは、上記樹脂を原料とし、上記した製造方法によって、所定の密度と熱収縮率に調節することができる。製品発泡フィルムの密度は、0.01〜1.2g/cm3とする。密度が0.01g/cm3未満では、製品発泡フィルムを延伸して製造する際に破断する場合があり、1.2g/cm3を超えると、得られる製品発泡フィルムの衝撃吸収性が小さくなり、いずれも好ましくない。密度のさらに好ましい範囲は、0.1〜0.5g/cm3である。製品発泡フィルムはまた、80℃の温水に10秒間浸漬し、その直後に23℃の水中に30秒間浸漬した後の主収縮方向の最大熱収縮率が10%以上とする。この条件下での最大熱収縮率が10%未満であると、熱収縮力が弱いため、ラベルとしてボトルなどの外壁面に被せ熱収縮させても、外壁面の保持力が弱く脱落することがあり、好ましくない。
【0038】
本発明者らの実験によれば、ポリエステル系樹脂発泡フィルムの空洞含有率は、断熱効果および表面外観の観点から、20〜70%の範囲が好ましいことが分かった。すなわち、空洞含有率が20%未満であると、断熱効果が小さく、空洞含有率が70%より大きいと、断熱効果は大きいものの、セル径が大きくなり易く、表面外観が劣り、いずれも好ましくない。空洞含有率のより好ましい範囲は、30〜60%である。なお、本発明において空洞含有率とは、後記する計算式によって算出した値を意味する。
【0039】
本発明者らの実験によれば、熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムの平均セル径は、表面外観の観点から、20〜200μmの範囲が好ましいことが分かった。すなわち、平均セル径が20μm未満であると、押出機シリンダー途中で超臨界流体を注入して発泡シートとして押出し、少なくとも一軸方向に延伸する製造方法では、所望の空洞含有率とすることができず、発泡シートの断熱効果を向上させることが極めて困難であり、平均セル径が200μmより大きいと、発泡フィルムの外観が梨地調になり、印刷した場合、インクの抜けなどの欠陥が発生し、いずれも好ましくない。平均セル径のより好ましい範囲は、20〜150μmであり、とりわけ好ましいのは20〜100μmである。なお、本発明において平均セル径とは、後記する方法によって測定した値を意味する。
【0040】
本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムは、優れた断熱効果、表面外観、収縮仕上がり性、衝撃吸収効果など発揮する。発泡フィルムの用途は特に限定されるものではないが、例えば、熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムの表面に、商品名や商品説明文を印刷して円筒状に加工したものは、瓶や缶などの外壁面を被覆する収縮性ラベルとしての用途が好適である。収縮性ラベルは、平坦な製品発泡フィルムを円筒などの立体に加工することもできる。例えば、任意の少なくとも二箇所を、点状、線状、面状などで融着または溶剤により接着することにより、円筒状や多角柱状など筒状の立体形状とすることもできる。溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランを使用できる。直方体形状の熱収縮性ポリエステル樹脂発泡シートの両端を、融着または溶剤によって接着して得られる円筒状のものは、瓶や缶などの外壁面を被覆する収縮性ラベルとして好適である。これらの収縮ラベルを装着した容器は、従来から知られている方法によって調製することができる。本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムを収縮性ラベルとして適用できる容器は、特には限定されないが、プラスチック製やアルミニウム製、鋼製などの金属製容器が挙げられる。
【0041】
以上のように、本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムは、熱収縮性に優れると共に、軽量かつ衝撃吸収性に優れるため、特に、各種容器などの外壁面を被覆するラベル材やシール材、または工業用部品などを包装、結束、被覆するための資材として好適である。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の記載例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例・比較例で使用した原料樹脂、および実施例・比較例で得られた製品発泡フィルムの評価方法は、以下に記載したとおりである。
【0043】
<原料樹脂>
(1)ポリエステル−A:市販されているポリエステル樹脂(イーストマン・ケミカル社製、商品名:EASTAR PETG Copolyester6763)につき、組成成分とその割合をH−NMR法で測定した結果、ジカルボン酸成分由来の単位がテレフタル酸(以下、「TPA」と略記する。)に由来する単位のみであり、ジオール成分由来の単位が、エチレングリコール(以下、「EG」と略記する。)に由来する単位が全ジオールに対して68モル%と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略記する。)に由来する単位が全ジオール由来の単位に対して32モル%のポリエステル樹脂であり、下記方法で測定した固有粘度は、0.78dl/gである。ポリエステル樹脂の原料成分と固有粘度とを、表−1に記載した。
【0044】
(2)ポリエステル−B:製造法と特性値は、次のとおりである。
[製造例1]
攪拌機、還流冷却器、加熱装置、圧力計、温度計および減圧装置を装備し、容量が100リットルのステンレス製反応器に、TPA106.3重量部、1,4−CHDA(シス体とトランス体の比率が、モル比で95対5のもの)47.1重量部、エチレングリコール68重量部、および、テトラエチレンアンモニウムヒドロオキサイド0.034重量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換し、次いで大気圧に対する相対圧力で0.09MPaに加圧した。反応器の内温を2時間かけて220℃に昇温して、この温度で2時間エステル化反応を行った。次いで内温を30分かけて250℃に昇温させると同時に、反応器の圧力を30分かけて放圧し、窒素シール状態とした。その後さらに内温を250℃に昇温して、エステル化反応を終了させた。
【0045】
次いで、同じ反応器に、エチルアシッドフォスフェート0.0041重量部(24ppm/樹脂成分)、酢酸コバルト・四水塩0.0086ppmCo/樹脂成分)、および、テトラブチルチタネート0.006重量部(5ppmTi/樹脂成分)をエチレングリコール溶液の形態で添加し、重縮合反応を開始させた。反応器内の過程で、反応器内圧を常圧から85分かけて徐々に1Torrに減圧した後、内圧をそのまま維持し、同時に内温を250℃に維持しつつ重縮合反応を継続し、反応器攪拌機のトルクが所定の値に達した時点で、重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。
【0046】
[物性値]
上記製造例1に記載の方法によって製造したポリエステル樹脂について、H−NMR法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分由来の単位がTPAに由来する単位67モル%と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(以下、「CHDA」と略記する。)に由来する単位33モル%であり、ジオール成分由来の単位がEGに由来する単位のみを有するポリエステル樹脂であり、下記の方法で測定した固有粘度は0.79dl/gである。ポリエステル樹脂の原料成分と固有粘度とを、表−1に記載した。
【0047】
(3)ポリエステル−C:製造法と特性値は、次のとおりである。
[製造法2]
製造例1で使用した同一の反応器に、ジメチルテレフタレート106.2重量部、1,4−CHDM(シス体とトランス体の比率が、モル比で30対70のもの)94.6重量部、テトラブチルチタネート0.037重量部(3.5ppmTi/樹脂成分)を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。内温を150℃から300℃まで3.5時間かけて昇温して、この間にエステル化反応を行った。エステル化反応終了後に、反応器に、酢酸マグネシウム・四水塩0.066重量部(50ppmMg/樹脂成分、Mg/Tiのモル比は1.0のもの)を1,4−CHDMに溶解して添加し、引き続きテトラブチルチタネート0.1027重量部(96.5ppmTi/樹脂成分)を添加し、重縮合反応を開始させた。重縮合反応の過程で、反応器内圧を常圧から徐々に1Torrまで減圧し、内圧を1Torrに維持しつつ重縮合反応を継続し、反応器攪拌機のトルクが所定の値に達した時点で、重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。
【0048】
[物性値]
上記製造例2に記載の方法によって製造したポリエステル樹脂について、H−NMR法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分由来の単位がTPAに由来する単位のみであり、ジオール成分由来の単位が1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略記する。)に由来する単位70モル%と、EGに由来する単位30モル%を有するポリエステル樹脂であり、下記の方法で測定した固有粘度は0.78dl/gである。ポリエステル樹脂の原料成分と固有粘度とを、表−1に記載した。
【0049】
(4)ポリエステル−D:製造法と特性値は、次のとおりである。
[製造例3]
製造例1で使用した同一の反応器に、トランス−1,4−CHDA101.5重量部、1,4−CHDM(トランス体対シス体の比率が、モル比で約7対3のもの)87.5重量部、および、テトラ−n−ブチルチタネートの6重量%ブタノール溶液0.005重量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。反応器内を窒素ガスでシールしながら、内温を30分間で150℃に昇温し、さらに150℃から200℃まで1時間をかけて昇温した。次いで、200℃の温度で1時間保持してエステル化反応を行った後、200℃から250℃へ45分間で昇温しつつ、反応器内の圧力を徐々に減圧にしながら重縮合反応を行った。反応器内圧力を絶対圧力0.1kPa、反応温度を250℃として2.2時間維持し、重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。
【0050】
[物性値]
上記製造例3に記載の方法によって製造したポリエステル樹脂について、H−NMR法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分由来の単位がCHDAに由来する単位のみであり、ジオール成分由来の単位がCHDMに由来する単位のみを有するポリエステル樹脂であり、下記の方法で測定した固有粘度は0.98dl/gである。ポリエステル樹脂の原料成分と固有粘度とを、表−1に記載した。
【0051】
(4)ポリエステル−E:製造法と特性値は、次のとおりである。
[製造例4]
製造例1で使用した同一の反応器に、トランス−1,4−CHDA103.4重量部、1,4−CHDM(トランス体対シス体の比率が、モル比で約7対3のもの)87.5重量部、および、テトラ−n−ブチルチタネートの6重量%ブタノール溶液0.005重量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。反応器内を窒素ガスでシールしながら、内温を30分間で150℃に昇温し、さらに150℃から200℃まで1時間をかけて昇温した。次いで、200℃の温度で1時間保持してエステル化反応を行った後、200℃から250℃へ45分間で昇温しつつ、反応器内の圧力を徐々に減圧にしながら重縮合反応を行った。反応器内圧力を絶対圧力0.1kPa、反応温度を250℃として3.5時間維持し、重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状
に抜き出し、切断してペレット化した。
【0052】
[物性値]
上記製造例4に記載の方法によって製造したポリエステル樹脂について、H−NMR法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分由来の単位がCHDAに由来する単位のみであり、ジオール成分由来の単位がCHDMに由来する単位のみを有するポリエステル樹脂であり、下記の方法で測定した固有粘度は1.25dl/gである。ポリエステル樹脂の原料成分と固有粘度とを、表−1に記載した。
【0053】
【表1】

【0054】
(5)PC:ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS−2000N)である。
(6)PET:ポリエチレンテレフタレート(三菱化学社製、商品名:ノバペックスGM700)である。
(7)タルク:タルク(日本タルク社、商品名:MS)である。
(8)安定剤:リン系安定剤(旭電化社製、商品名:アデカスタブAX−71)である。
【0055】
<物性の評価方法>
(a)固有粘度:ポリエステル樹脂試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却、保持し、全自動溶液粘度計(センテック社製、型式:2CH型DJ504)によって、濃度が1.00×10−2g/dLの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、次式すなわち、固有粘度={(1+4Kηsp0.5−1}/(2KC)、によって算出した。ここで、ηsp=η/η0−1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズ定数である。Kは、0.33とした。
【0056】
(b)密度(単位:g/cm):実施例、比較例で製造した製品フィルムから、20mm×40mmの短冊状試験片を切り出し、試験片の表裏を圧縮しないようにして50点測定して、平均厚さt(nm)とし、その重さを0.1mgまで測定してw(g)とした。密度は、次の計算式、すなわち、{ 密度=w/(2×4×t)×10000}、によって算出した。
(c)空洞含有率(単位:%):次の計算式、すなわち、[空洞含有率(体積%)=100×{1−(真比容積/見掛け比容積)}]、によって算出した。ここで、真比容積とは、フィルム中の各成分の重量分率/真比重の積算値であり、見掛け比容積は、(1/フィルムの密度)で算出される値である。空洞含有率は、20〜70%の範囲が好ましい。
【0057】
(d)平均セル径(単位:μm):フィルムの延伸方向(MD)および延伸方向に直角の方向(TD)に、各々ミクロトームで切り出した試料に付き顕微鏡で観察する方法で、フィルムの厚さ方向とその直角方向のセルの直径を各々50点測定し、その平均値を平均セル径(μm)とした。平均セル径は、20〜200μmの範囲が好ましい。
(e)最大熱収縮率(単位:%):実施例または比較例で得られた製品フィルムを、延伸方向に直角の方向(TD)に150mm、これに対する直向方向(MD)に20mmの大きさに切り取り試験片を作製した。試験片を測定方向に5mm間隔の標線を付し、80℃の温水に10秒間浸漬させ、その直後に23℃の水中に30秒間浸漬し、標線の間隔を測定して収縮率を算出する方法である。測定は同一サンプルについて5点実施し、平均値によって次式により収縮率を算出した。計算式は、[収縮率(%)={(100−L)/100}×100]、であり、ここで、Lは収縮後の長辺の長さ(mm)である。この収縮率の最大値が、10%以上であることが必要である。
【0058】
(f)表面外観:収縮率を測定した試料を、表面の凹凸を目視観察する方法である。判定基準は、表面に凹凸が観察できず光沢に優れているものを◎、表面に凹凸は観察できず表面が平滑なものを○、表面に凹凸が観察でき、表面がざらざらしたのものを△、表面の凹凸が激しくざらざらの程度も激しいものを×とした。評価結果が△でもフィルム表面への印刷は可能であるが、評価結果が×では、美麗な印刷ができない。
(g)断熱性(単位:℃):実施例または比較例で製造し、収縮率を測定した発泡シートを幅15mmにして切り取った。この発泡シートを、容量が500mlのアルミニウム製の空ボトル缶(直径65mm、高さ197mm)の外壁面に、底壁から65mmの位置を基準にして帯状に巻き付け、発泡シートの両端部を幅4mmとして重ね、重ねた部分を粘着テープによって固定した。このボトル缶に60℃の温水を500ml充填し、23℃の室内で5分放置後、発泡シートの表面温度を接触式温度計によって測定する方法である。発泡シートの表面温度が53℃以下であると、手で保持することができる。判定は、表面温度が50℃以下を◎、50℃を超えて53℃以下を○、53℃を超えて55℃以下を△、55℃を超えた温度を×とした。
【0059】
[実施例1]
ポリエステル−A50質量%にタルク(日本タルク社、商品名:MS)50質量%を配合し、溶融混練して調製したタルクのマスターバッチを使用し、ポリエステル−A96質量部に対しタルクが4質量部となるように秤量・配合した混合物を得た。この混合物を、先端にTダイ(ダイリップ幅70mm)を装着し、シリンダー途中に発泡剤注入口を供えた単軸押出機(口径65mm、L/D=34)のホッパーに供給し、シリンダー温度を220〜260℃とし、吐出量60kg/hrとなる速度で溶融・押出し、シリンダーの途中から超臨界窒素を0.06kg/hrの量で注入し、Tダイ出口での樹脂温度231℃、Tダイ内の圧力12.8MPaの条件下で発泡シートを押出し、温度を30℃に設定した冷却ロールによって常温まで冷却し、引取ロールで引き取り、厚さ1.831mm、密度0.584g/cmの発泡シートを製造した。この発泡シートから6cm×6cmの正方形の試料を切り出し、T.M.Long社製の同時二軸延伸機を使用して、延伸温度80℃で、押出方向に対して直角方向(TD)に4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。製品の熱収縮性フィルムについて、上記各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0060】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、押出機先端に装着したTダイを、ダイリップ幅100mmのものに変更し、同例で使用したタルクのマスターバッチを混合した原料樹脂を使用し、同例で使用したのと同じ押出機を使用し、同例におけると同様に超臨界窒素を0.06kg/hrの量で注入し、Tダイ出口での樹脂温度を230℃、Tダイ内の圧力13.0MPaとした条件下で発泡シートを押出し、温度を30℃に設定した冷却ロールによって常温まで冷却し、引取ロールで引き取り、厚さ0.862mm、密度0.648g/cmの発泡シートを製造した。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同例におけると同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0061】
[実施例3]
実施例1に記載の例において、タルクのマスターバッチの樹脂および原料樹脂をポリエステル−Bに変更した外は、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが1.403mm、密度が0.575g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同例におけると同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0062】
[実施例4]
実施例1に記載の例において、タルクのマスターバッチの樹脂および原料樹脂をポリエステル−Cに変更した外は、同例におけると同様の手順でマスターバッチを混合した混合物を得た。この混合物を原料樹脂とし、同例で使用した同じ押出機を使用し、シリンダー温度を240〜280℃とし、Tダイ出口での樹脂温度を253℃に変更し、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが1.456mm、密度が0.668g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0063】
[実施例5]
実施例1に記載の例において、タルクのマスターバッチの樹脂および原料樹脂をポリエステル−Dに変更した外は、同例におけると同様の手順でマスターバッチを混合した混合物を得た。この混合物を原料樹脂とし、同例で使用した同じ押出機先端に装着したTダイを、ダイリップ幅150mmのものに変更し、Tダイ出口での樹脂温度を231℃に変更し、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが0.659mm、密度が0.606g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0064】
[実施例6]
実施例1に記載の例において、タルクのマスターバッチの樹脂および原料樹脂をポリエステル−Dに変更した外は、同例におけると同様の手順でマスターバッチを混合した混合物を得た。この混合物を原料樹脂とし、同例で使用した同じ押出機先端に装着したTダイを、ダイリップ幅80mmのものに変更し、Tダイ出口での樹脂温度を233℃に変更し、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが1.505mm、密度が0.485g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0065】
[実施例7]
ポリエステル−D80質量部、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS−2000N、以下PCと略称する)20質量部、および、リン系安定剤{(前記(8))0.05質量部を秤量し、ブレンダーで混合して混合物を調製した。この混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX−30口径30mm、L/D=42)のホッパーに投入し、シリンダー温度280℃、吐出量15kg/hr、回転数150rpmの条件下で溶融・混練してストランド状に押出し、カッターで切断して樹脂成分のペレットを得た。この樹脂成分のペレット50質量%に、タルク(日本タルク社、商品名:MS)50質量%を配合し、溶融混練して調製したマスターバッチを、樹脂成分96質量部、タルクが4質量部となるように秤量・配合した混合物を得た。この混合物を原料樹脂とし、実施例1で使用したのと同じ押出機を使用し、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。この時のTダイの出口での樹脂温度は、245℃であった。得られた発泡シートは、厚さが1.533mm、密度が0.505g/cmあった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、延伸温度を85℃と変えた外は実施例1におけると同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0066】
[実施例8]
実施例1に記載の例において、押出機のシリンダーの途中から超臨界窒素を0.02kg/hrで注入する方法に変えた外は、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが0.825mm、密度が0.937g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0067】
[実施例9]
実施例1に記載の例において、タルクのマスターバッチの樹脂、および原料樹脂をポリエステル−Eに変えた外は、同例におけると同様の手順でマスターバッチを混合した混合物を得た。この混合物を原料樹脂とし、同例で使用した同じ押出機先端に装着したTダイを、ダイリップ幅350mmのものに変更し、Tダイ出口での樹脂温度を231℃に変更し、同例におけると同様の手順で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚さが0.311mm、密度が0.529g/cmであった。この発泡シートから、同例におけると同様の手順で試料を切り出し、同例におけると同様の手順で4倍延伸を行い、製品の熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィル ムの厚さとともに、表−3に示す。
【0068】
[実施例10]
実施例9に記載の例と同様の手順で、発泡シートを製造した。得られた発泡シートを延伸する際の温度を、75℃に変更した外は、実施例9に記載の手順で熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0069】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、原料樹脂をPETに変更した外は、同例におけると同様の手順、条件で発泡シートを製造しようとしたが、押出されたシートが安定せず、破断するため引き取れず、発泡シートが得られなかった。従って、引き続く発泡シート延伸は行わず、延伸フィルムの評価試験も行わなかった。
【0070】
[比較例2]
真空ベント付き押出機(プラスチック工学研究所社製、型式:BT−30、口径30mm、L/D=36)先端に、幅350mmのTダイを装着し、この押出機ホッパーに、市販されている収縮性ラベル用ポリエステル樹脂(イーストマン・ケミカル社製、商品名:エンブレイス)を投入し、シリンダー温度を260℃に設定し、真空ベントから1×10Paに減圧にしつつ、発泡剤を注入せず、吐出量16.6kg/hrという条件で、40℃の温度調節した冷却ロール上に押出し、幅が300mm、厚さが0.1mmのシートを製造した。このシートから6cm×6cmの正方形の試料を切り出し、T.M.Long社製の同時二軸延伸機を使用して、延伸温度80℃で、押出方向に対して直角方向(TD)に4倍延伸を行い、熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムについて、上記の各種の評価試験を行った。評価結果を、熱収縮性フィルムの厚さとともに、表−3に示す。
【0071】
[比較例3]
容量が500mlのアルミニウム製の空ボトル缶(直径65mm、高さ197mm)の外壁面に、発泡シートに巻きつけずに、60℃の温水を500ml充填し、23℃の室内で5分放置後、発泡シートの表面温度を接触式温度計によって断熱性を評価した。評価結果を、表−3に示す。
【0072】
実施例、比較例で使用した原料樹脂組成物の詳細を表−2に、発泡フィルムの物性測定結果、断熱性の評価結果を表−3に記載する。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表−1ないし表−3より、次のことが明らかとなる。
1.本発明に係るポリエステル系樹脂発泡フィルムは、密度が0.01〜1.2g/cmの範囲にあり、平均セル径も20〜200nmの範囲にあり、最大熱収縮率が10%以上であり、断熱性にも優れている(実施例1〜実施例10参照)。特に空洞含有率が30%以上であると、優れた断熱性を発揮する。
2.これに対してPET樹脂は、実施例の樹脂と同じ成形条件では発泡シート化できなかった(比較例1参照)。
3.発泡剤を配合せずシート化したものは、発泡シートを巻きつけないものと同様、断熱性に劣る(比較例2および比較例3参照)。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る熱収縮性ポリエステル樹脂発泡フィルムは、熱収縮性に優れると共に、軽量かつ衝撃吸収性に優れるため、特に、各種容器などの外壁面を被覆するラベル材やシール材、または工業用部品などを包装、結束、被覆するための資材として好適に使用できる。特に、清涼飲料製品、加熱飲料製品などを収納した容器外壁面に貼着または被覆され、熱伝導を遮って直接手に伝わらないようにする用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムであって、
原料のポリエステル系樹脂が、以下に記載の(1)および/または(2)を満足し、かつ、ポリエステル系樹脂に対して、以下に記載の脂環式成分由来の単位を合わせて少なくとも15モル%含む特殊ポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系樹脂組成物であり、
発泡フィルムは、密度が0.01〜1.2g/cmであり、かつ、80℃の温水に10秒間浸漬し、その直後に23℃の水中に30秒間浸漬した後の主収縮方向の最大熱収縮率が10%以上であることを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
(1)ジカルボン酸(a)成分由来の単位として、非脂環式ジカルボン酸(a1)成分由来の繰り返し単位、脂環式ジカルボン酸(a2)成分由来の繰り返し単位、そのエステル形成性誘導体(a3)成分由来の繰り返し単位のうち、少なくとも一種の単位を有する。
(2)ジオール(b)成分由来の単位として、非脂環式ジオール(b1)成分由来の単位、脂環式ジオール(b2)成分由来の繰り返し単位のうち、少なくとも一種の単位を有する。
【請求項2】
脂環式ジカルボン酸(a2)成分が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を主成分とするジカルボン酸であり、脂環式ジオール(b2)成分が1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分とするジオールである、請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項3】
ジオール(b)成分として、炭素数2〜10のアルキレンジオール(b3)成分が0.05〜20モル%の量共重合されたものである、請求項1または請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂組成物が、特殊ポリエステル系樹脂(A)40〜99質量%、他の熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマー1〜60質量%から構成されたものである、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂発泡フィルムが、押出機シリンダー途中で超臨界流体を注入されて発泡シートとして押出され、少なくとも一軸方向に延伸されて製造されたものである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂発泡フィルムの空洞含有率が20〜70%である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項7】
発泡フィルムの発泡セルの平均セル径が20〜200μmである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の熱収縮性ポリエステル系樹脂発泡フィルムを基材としてなることを特徴とする、熱収縮性ラベル。
【請求項9】
請求項8に記載の熱収縮性ラベルを装着してなることを特徴とする、断熱性容器。

【公開番号】特開2007−100004(P2007−100004A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294253(P2005−294253)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】