説明

熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装体

【課題】高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有し、且つ、優れた包装適性を有する熱収縮性延伸多層フィルムを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
【化1】


により表される繰り返し単位を60質量%以上の割合で含有するポリグリコール酸から形成されたグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなり、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ20%以上であることを特徴とする熱収縮性延伸多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状包装材、ピロー包装材、トレイ包装用蓋材、冷凍用包装材、ケーシング用包装材等として有用な熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、延伸収縮性の多層フィルムは、熱シール性に優れると共に、適度な加熱によって包装材料が収縮することにより内容物にフィットして張りのある美麗な外観となるため、生肉、畜肉加工品、魚、チーズ、スープ類といった食品の包装材として広く用いられている。これらの食品の中でも、生肉は血液中の色素であるヘモグロビンや筋肉中の色素であるミオグロビンを含んでいるために、内容物である生肉が酸化して変色してしまうという問題が発生しやすかった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特表2003−535733号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、−10℃における厚さ50μm換算における衝撃エネルギーが1.5ジュール以上である延伸配向多層フィルムが開示されており、明細書中において、PET/mod−VL/Ny/EVOH/mod−VL/LLDPE樹脂構成からなる収縮性多層フィルムが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の収縮性多層フィルムにおいては、内容物の保存性に関連する酸素ガスバリア性を有するNy及びEVOHは湿度依存性を有しており、特に高湿度下における酸素透過度が高値となるために、高湿度下での酸素ガスバリア性に劣るという点において必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
一方、酸素ガスバリア性に優れ、その湿度依存性がない材料としては、塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)が知られているが、PVDCは熱分解し易く、各種の樹脂との共押出(溶融)加工においては、積層する樹脂の組合せが問題となる。例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、アイオノマーといった低融点樹脂との組合せでは容易に共押出加工が可能であるが、PET、Nyといった融点が200℃を超える高融点樹脂との組合せにおいては共押出加工が非常に難しいという問題があった。
【特許文献1】特表2003−535733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有し、且つ、優れた包装適性を有する熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなり、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ20%以上である熱収縮性延伸多層フィルムが、高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有し、且つ、優れた包装適性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、下記一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
により表される繰り返し単位を60質量%以上の割合で含有するポリグリコール酸から形成されたグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなり、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ20%以上であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、酸素ガス透過度が、温度23℃、100%RHの条件下において50cm/m・day・atm以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、前記熱可塑性樹脂(b)からなる外層と、前記グリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層と、シーラント樹脂(c)からなる内層とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明の袋状包装材は、前記熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のピロー包装材は、前記熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明のトレイ包装用蓋材は、前記熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の冷凍用包装材は、前記熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明のケーシング用包装材は、前記熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の包装体は、前記熱収縮性延伸多層フィルムを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有し、且つ、優れた包装適性を有する熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムについて説明する。すなわち、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、後述するグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、後述する熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなり、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ20%以上であることを特徴とするものである。また、本発明においては、後述する熱可塑性樹脂(b)からなる外層と、後述するグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層と、後述するシーラント樹脂(c)からなる内層とを備えることが好ましい。
【0022】
(グリコール酸(共)重合体樹脂)
本発明で使用するグリコール酸(共)重合体樹脂(a)は、下記一般式(1):
【0023】
【化2】

【0024】
により表される繰り返し単位を60質量%以上の割合で含有するポリグリコール酸から形成されたものである。前記ポリグリコール酸中の前記一般式(1)により表される繰り返し単位が60質量%未満であると、ポリグリコール酸が本来有している結晶性が損われ、得られる熱収縮性多層フィルムのガスバリア性や耐熱性が低下する。
【0025】
このようなポリグリコール酸には、前記一般式(1)で表わされる繰り返し単位以外の繰り返し単位として、例えば、下記一般式(2)〜(6)からなる群から選択される少なくとも一つの繰り返し単位を含有させることができる。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
上記一般式(2)において、nは1〜10の整数を表し、mは0〜10の整数を表す。また、上記一般式(3)において、jは1〜10の整数を表す。さらに、上記一般式(4)において、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは2〜10の整数を表す。これらのその他の繰り返し単位を1質量%以上の割合で導入することにより、前記ポリグリコール酸の単独重合体の融点を下げることができる。そして、前記ポリグリコール酸の融点を下げれば、加工温度を下げることができ、溶融加工時の熱分解を低減させることができる。また、このように共重合させることにより、ポリグリコール酸の結晶化速度を制御して、加工性を改良することもできる。
【0032】
また、このようなポリグリコール酸を合成する方法としては、グリコール酸の脱水重縮合する方法、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合する方法、グリコリドの開環重合する方法等を挙げることができる。これらの中でも、グリコリドを少量の触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に、約120〜250℃の温度に加熱して、開環重合する方法によってポリグリコール酸(すなわち、ポリグリコリド)を合成する方法が好ましい。なお、このような開環重合は、塊状重合法または溶液重合法によることが好ましい。
【0033】
一方、ポリグリコール酸の共重合体は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステル、グリコリドからなる群から選択される少なくとも1種と共重合成分を共重合させることにより合成することができる。このような共重合成分としては、例えば、シュウ酸エチレン、ラクチド、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサン等の環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸又はそれらのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール;こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステルを挙げることができる。これらの共重合成分は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0034】
また、これらの中でも、共重合させやすく、かつ物性に優れた共重合体が得られやすいという観点で、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート等の環状化合物;乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましい。なお、これらの共重合成分は、全仕込みモノマー量の通常45質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下の割合で使用する。これらの共重合成分の割合が大きくなると、生成する重合体の結晶性が損なわれやすくなり、得られる熱収縮性多層フィルムの耐熱性、ガスバリア性、機械的強度等が低下する傾向にある。
【0035】
このようなグリコール酸(共)重合体樹脂は、においセンサーによる測定やL−メントールの透過量の測定等から見て、EVOHよりも保香性に優れており、アルコール透過防止性の点でも、EVOHより優れている。さらに、このようなグリコール酸(共)重合体樹脂は、温度270℃及び剪断速度120sec−1の条件下において測定した溶融粘度が300〜10,000Pa・sであることが好ましく、400〜8,000Pa・sであることがより好ましく、500〜5,000Pa・sであることが特に好ましい。
【0036】
また、このようなグリコール酸(共)重合体樹脂の融点(Tm)は、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましい。例えば、ポリグリコール酸の融点は約220℃であり、ガラス転移温度は約38℃で、結晶化温度は約91℃である。ただし、これらのグリコール酸(共)重合体樹脂の融点は、ポリグリコール酸の分子量や共重合成分等によって変動する。
【0037】
なお、本発明においては、グリコール酸(共)重合体樹脂を単独で使用することができるが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、グリコール酸(共)重合体樹脂に、無機フィラー、他の熱可塑性樹脂、可塑剤などを配合した樹脂組成物を使用することができる。また、グリコール酸(共)重合体樹脂には、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、酸素吸収剤、顔料、染料等の各種添加剤を含有させることができる。
【0038】
(熱可塑性樹脂)
本発明で使用する熱可塑性樹脂(b)としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アイオノマー系樹脂、生分解性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、透明性、表面硬度、印刷性、耐熱性等の表面特性に優れるという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0039】
このようなポリエステル系樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。また、このようなポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを(縮合)重合させることにより得ることができる。
【0040】
このようなジカルボン酸成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良く、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、不飽和脂肪酸の二量体からなるダイマー酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0041】
また、このようなジオール成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良く、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−アルキル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。これらのジオール成分は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0042】
そして、このようなポリエステル系樹脂の中でも、芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸を用いて、ジオール成分として炭素数が10以下のジオールを用いて得られたポリエステル系樹脂が好ましい。これらのポリエステル系樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が挙げられる。なお、これらのポリエステル系樹脂は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。さらに、これらのポリエステル系樹脂としては、0.6〜1.2程度の極限粘度を持つものが好ましく用いられる。
【0043】
また、このようなポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体;VLDPE(直鎖状超低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等の炭素数2〜8の線状α−オレフィンの共重合体;プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン−アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体)、EMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、EBA(エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)等のポリオレフィン系共重合体が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0044】
さらに、このようなポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610等の脂肪族ポリアミド重合体;ナイロン6/66、ナイロン6/69、ナイロン6/610、ナイロン6/12等の脂肪族ポリアミド共重合体を挙げることができる。これらの中でも、ナイロン6/66やナイロン6/12が成形加工性の点で特に好ましい。これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0045】
また、このようなポリアミド系樹脂としては、これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体を主体とし、芳香族ポリアミドとのブレンド物も用いてもよい。このような芳香族ポリアミドとは、ジアミン及びジカルボン酸の少なくとも一方が芳香族単位有するものをいい、その例としては、ナイロン66/610/MXD6(ここで「MXD6」はポリメタキシリレンアジパミドを示す)、ナイロン66/69/6I、ナイロン6/6I、ナイロン66/6I、ナイロン6I/6T(ここで「ナイロン6I」はポリヘキサメチレンイソフタラミド、「ナイロン6T」はポリヘキサメチレンテレフタラミドを示す)等が挙げられる。
【0046】
(シーラント樹脂)
本発明で使用するシーラント樹脂(c)としては、90〜250℃の範囲において適当なシール強度を有するものを挙げることができる。このようなシーラント樹脂(d)としては、例えば、ポリエチレンの単独重合体もしくは共重合体、ポリプロピレンの単独重合体もしくは共重合体、エチレン系共重合体、アイオノマーを挙げることができる。これらのシーラント樹脂(d)は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0047】
また、本発明においては、隣接する樹脂層との接着性の観点から、前記シーラント樹脂(c)に接着性樹脂(d)を3〜30質量%の範囲で混合して用いることが好ましい。
【0048】
(熱収縮性延伸多層フィルム)
本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、前述したグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、前述した熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなるフィルムである。そして、本発明の収縮性多層フィルムにおいては、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率(10秒間)がそれぞれ20%以上であることが必要である。また、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率(10秒間)がそれぞれ20〜50%であることが好ましい。熱水収縮率が20%未満であると内容物とのタイトフィット性が悪くなる。他方、50%を超えると、収縮応力が強くなり、内容物の形状を変形させる傾向にある。なお、熱水収縮率は後述する実施例で説明する通りの方法で測定した値である。
【0049】
さらに、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムの厚さとしては、フィルムの厚みが20〜150μmの範囲であることが好ましい。フィルムの厚みが前記下限未満では、強度やガスバリア性が不満足となる傾向にある。他方、前記上限を超えると、フィルム製造時のインフレーション延伸における内圧が高くなり製膜が難しくなると共に包装資材の廃棄量が増える等の経済的な不利益となる傾向にある。
【0050】
また、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、前述したグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、前述した熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなるフィルムであるが、前述した熱可塑性樹脂(b)からなる外層と、前述したグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層と、前述したシーラント樹脂(d)からなる内層とを備えることが好ましい。さらに、上記各層の層間の接着性の観点から、上記各層の他に接着性樹脂(d)からなる接着剤層を備えていてもよい。ここで、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムの積層態様の例を示す。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1:(a)/(d)/(b)、
2:(b)/(d)/(a)/(c)、
3:(b)/(e)/(a)/(e)/(c)、
4:(b)/(e)/(b)/(e)/(a)/(e)/(c)。
【0051】
このようなグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の厚さとしては、中間層の厚みが1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。中間層の厚みが前記下限未満では、高ガスバリア性の機能が得られない傾向にあると共に、押出し加工、製膜時における膜厚みのコントロールが難しくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、得られるフィルムの剛性が増加し過ぎると共に包装資材の廃棄量が増える等の経済的な不利益となる傾向にある。
【0052】
また、このような熱可塑性樹脂(b)からなる外層の厚さとしては、樹脂層の厚みが1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。外層の厚みが前記下限未満では、包装体の強度が不足する傾向にある。他方、前記上限を超えると、フィルムが硬すぎるために延伸性が悪くなる傾向にある。
【0053】
さらに、このようなシーラント樹脂(c)からなる内層の厚さとしては、内層の厚みが10〜120μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましい。内層の厚みが前記下限未満では、十分なシール強度が得られない傾向にある。他方、前記上限を超えると、包装体の強度が不足すると共にフィルムの透明性が悪くなる傾向にある。
【0054】
また、このような接着性樹脂(d)からなる接着剤層の厚さとしては、接着剤層の厚みが1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。接着剤層の厚みが前記下限未満では、十分な接着力が得られない傾向にある。他方、前記上限を超えても、それ以上の接着力の向上は見込めず、さらには包装資材の廃棄量が増える等の経済的な不利益となる傾向にある。
【0055】
さらに、上記のように熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層を備える場合には、このような樹脂層の厚さとしては、樹脂層の厚みが1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。樹脂層の厚みが前記下限未満では、包装体の強度が不足する傾向にある。他方、前記上限を超えると、フィルムが硬すぎるために延伸性が悪くなる傾向にある。
【0056】
このような熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、酸素ガス透過度が、温度23℃、100%RHの条件下において50cm/m・day・atm以下であることが好ましく、30cm/m・day・atm以下であることがより好ましく、更に好ましくは20cm/m・day・atm以下であることが特に好ましい。酸素ガス透過度が前記上限を超えると、内容物が酸化し易い生肉等の食品を包装した場合、包装体の保存時に赤味が無くなる等の劣化が起こる傾向にある。
【0057】
また、このような熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、透湿度(WVTR)が、20g/m・day以下であることが目減りの点で好ましい。透湿度(WVTR)が20g/m・dayを超えると、包装体の内容物の水分が透過して蒸散し易くなり、包装体の質量である賞味量が保持できなくなる傾向にある。
【0058】
さらに、このような熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、ヘイズ値(曇価)が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値が前記上限を超えると、包装体の内容物の形状、色相等を目視により判断するができない傾向にある。
【0059】
また、このような熱収縮性延伸多層フィルムは、十分な強度を有することが望ましい。例えば、内容物が骨付き肉等の場合にはフィルムが硬い鋭利な突起物により突刺されて穴が開くことや突起物があったときに落下や繰返し衝撃(特に低温時)に穴(ピンホール)が開くことがあるからである。このような強度を評価する方法としては、後述する実施例で説明する突刺し強度試験、ゲルボフレックス試験(ねじり試験、温度条件:5℃)、六角回転強度試験等の方法を挙げることができる。
【0060】
以上説明したような熱収縮性延伸多層フィルムは、袋状包装材、ピロー包装材、トレイ包装用蓋材、冷凍包装材、ケーシング用包装材等として好適に用いることができる。また、このような熱収縮性延伸多層フィルムは、ガスバリア性に優れるため、例えば、真空包装をする場合、窒素、二酸化炭素、酸素等のガスを封入したガスパック包装をする場合、脱酸素剤封入包装をする場合のように包装体外部環境とは異なるガス組成又は分圧条件を付与する類の包装技法に好適に応用することができる。
さらに、このような熱収縮性延伸多層フィルムは、酸化劣化又は蒸散しやすい成分を含む食品等の物品の包装に用いることができる。そして、このような熱収縮性延伸多層フィルムは、酸化変色しやすいヘモグロビンやミオグロビン、又はそれらの誘導体を含んでいる食品、例えば、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、鶏肉、兎肉、鯨肉、魚肉(血合いを含む魚肉や赤身魚肉)等の生肉類、ソーセージ、ハム類に属する食肉加工品類の包装材として特に好適に用いることができる。また、このような熱収縮性延伸多層フィルムは、ヘム色素と同様に酸化変色が問題なりやすいカロチノイド系色素を含むバターやチーズ等の乳製品の包装材としても好適に利用することができ、さらには、各種クッキング処理を施されたサラダや惣菜類、野菜類、果物類、穀類及びそれらの加工品の包装材としても好適に利用することができる。
【0061】
なお、このような熱収縮性延伸多層フィルムを備える包装体は、10〜40℃の常温条件、−1〜10℃のチルド又は冷蔵条件、−60〜−1℃の冷凍条件といった各種の条件で保管又は流通させることができる。
【0062】
(熱収縮性延伸多層フィルムを製造する方法)
次いで、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムを製造する方法について説明する。本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、溶融された少なくとも2種の樹脂を管状に共押出しして管状体を形成し、
前記管状体を前記樹脂の融点未満に水冷却し、その後前記管状体を前記樹脂の融点以上の温度に再加熱し、前記管状体の内部に流体を入れながら管状体を縦方向(管状体の流れ方向)に引出しつつ縦方向及び横方向(管状体の円周方向)にそれぞれ2.5〜4倍に延伸して二軸延伸フィルムを形成し、
次いで、前記二軸延伸フィルムを折り畳み、その後前記二軸延伸フィルムの内部に流体を入れながら、前記二軸延伸フィルムの外表面側から60〜95℃のスチームもしくは温水にて熱処理を行い、前記熱処理と同時に縦方向及び横方向にそれぞれ10〜35%緩和(弛緩)処理することによって、
製造することができる。
【0063】
本発明においては、包装用のフィルムに要求される諸特性の改善を実現するという観点から、延伸倍率が縦方向及び横方向(MD/TDの各方向)において、それぞれ2.5〜4倍であることが好ましい。延伸倍率が2.5未満では、熱処理後に必要なフィルムの熱収縮性が得られず、またフィルムの偏肉も大きくなり、包装適性が得られ難い傾向がある。
【0064】
また、本発明においては、緩和熱処理条件である熱処理温度が60〜95℃範囲であることが好ましい。熱処理温度が60℃未満であると熱処理時の緩和がとり難くなる傾向にあり、他方、95℃以上を超えるとバブルが蛇行し不安定となる傾向にある。さらに、本発明においては、緩和率が5〜35%の範囲であることが好ましい。緩和率が5%未満であると、フィルムが常温で自然収縮し易くなり、幅ムラ等の寸法安定性が悪くなる傾向にあり、他方、35%を超えると緩和後のバブルが不安定となり、幅斑を起こし安定製造が出来なくなる傾向にある。
【0065】
なお、一般的に高延伸したフィルムをあえて高緩和熱処理することはしない。その理由は、延伸により得られたフィルムの剛性や強度を、わざわざ低下させる方向に働く高緩和熱処理は望ましくないと考えられているからである。しかしながら、本発明においては、高延伸−高緩和熱処理を行っても高強度のフィルムが得られることが判った。この理由については必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、延伸によってフィルム構成分子の結晶部及び非晶部が分子配向し、引張強度等が向上する。このままの状態ではフィルムの破断伸びは減少する傾向にあるが、高緩和熱処理により結晶配向を維持したまま非晶部の配向が緩められるために、引張強度等のフィルム強度を維持しつつ破断伸びが向上するものと本発明者らは推察する。このような非晶部の緩和による効果により、フィルムの諸物性、すなわち、突刺し強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性等を十分に達成することができると本発明者らは推察する。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した樹脂を、その略号とともに表1にまとめて示す。また、実施例及び比較例における熱収縮性延伸多層フィルムの製造条件を表2及び表3にまとめて示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
(実施例1)
先ず、積層態様が外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚みで、PGA(3μm)/M−PE(1.5μm)/VLDPE(40μm)となるように、各樹脂を複数の押出機でそれぞれ溶融押出しし、溶融された樹脂を環状ダイに導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出し加工を行った。ダイ出口から流出した温度250℃の溶融環状体を水浴中で、10〜25℃に冷却し、扁平幅約180mmの環状体とした。次に、得られた扁平環状体を約90℃温水中を通過させながら加熱した後、バブル形状の管状体とし15℃〜20℃エアリングで冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.8倍、横方向(TD)に2.9倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで、得られた二軸延伸フィルムを円筒状の熱処理筒中に導き、バブル形状フィルムとし、熱処理緩和温度90℃にて縦方向(MD)に5%、横方向(TD)に10%弛緩させながら約2秒間緩和熱処理を行い、二軸延伸フィルム(熱収縮性延伸多層フィルム)を得た。得られた熱収縮性延伸多層フィルムの折り幅は約450mmであって、厚みは44.5μmであった。
【0071】
(実施例2〜3、比較例1〜4)
フィルムの製造条件をそれぞれ表2及び表3に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、二軸延伸フィルム(熱収縮性延伸多層フィルム)を得た。なお、比較例3のフィルムの製造条件においては、共押出し加工時にPVDCが熱分解を起こしてしまい、二軸延伸フィルム(熱収縮性延伸多層フィルム)を得られなかった。また、比較例4のフィルムの製造条件においては、二軸延伸時にバブル破裂を起こしてしまい、二軸延伸フィルム(熱収縮性延伸多層フィルム)を得られなかった。
【0072】
得られた熱収縮性延伸多層フィルムの折り幅は、それぞれ約450mm(実施例2〜4)、約450mm(比較例1)、約416mm(比較例2)であった。また、得られた熱収縮性延伸多層フィルムの厚みは、それぞれ50μm(実施例2)、38μm(実施例3、4)、38.5μm(比較例1)、60μm(比較例2)であった。
【0073】
<熱収縮性延伸多層フィルムの諸特性の評価>
(I)評価方法
以下の方法によって、熱収縮性多層フィルムの諸特性を評価又は測定した。
【0074】
(1)熱水収縮率
得られた深絞り成形用熱水収縮率フィルムの機械方向(縦方向、MD)及び機械方向に垂直な方向(横方向、TD)に10cmの距離で印を付けたフィルム試料を、90℃に調整した熱水に10秒間浸漬した後、取り出し、直ちに常温の水で冷却した。その後、印をつけた距離を測定し、10cmからの減少値の原長10cmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験をおこない、縦方向及び横方向のそれぞれについての平均値を熱水収縮率として表示した。
【0075】
(2)透明性(ヘイズ値)
JIS K−7105に記載された方法に準拠して、測定装置としては日本電色工業社製の曇り度計NDH−Σ80を使用して、フィルム試料の曇り度(ヘイズ;%)を測定した。なお、ヘイズ値は値が小さくなるほど、透明性が優れることを意味し、数値が大きくなるほど、透明性が悪くなることを意味する。
【0076】
(3)フィルム強度(破断強度試験)
測定装置としてTENSILON RTC−1210型(オリエンテック社製)を用いて、幅10mm長さ50mmの短冊状のフィルム試料を温度23℃にてクロスヘッド速度200mm/minで伸張させ、フィルム試料が破断した時の応力を測定した。
【0077】
(4)ガスバリア性
(i)酸素透過度
JIS K−7126に準拠して、温度10℃及び/又は23℃、100%RHの条件下において、モダンコントロール社製オキシトラン(OX−TRAN2/20)を用いて測定した。
(ii)透湿度(WVTR)
JIS Z−0208に記載された方法に準拠して、カップ法にて温度40℃、湿度90%RHの条件下において測定した。
【0078】
(5)耐ピンホール性
理学社製ゲルボフレックステスターNo.902を用いて、5℃の温度条件下においてねじり試験(フィルム試料寸法:60mmφ×300mm、試験速度40サイクル/分、ねじり角度:440℃)を行った。ねじり回数100〜1000回まで、100回毎にサンプリングを行って目視にてピンホールの有無を観察した。そして、ピンホール発生が認められたねじり回数を耐ピンホール性の指標とした。すなわち、本数値が大きいほど、耐ピンホール性は優れると判断できる。
【0079】
(6)耐メルトホール性
直径15cmの刺繍枠にフィルム試料を張った状態で固定し、フィルム試料の中央部にラード1gを塗布後、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃の各温度で5分間の乾熱加熱処理を行った。各温度条件で処理したフィルム試料について目視にて試料中央部の溶融穴(メルトホール)の有無を観察した。そして、メルトホールが生じた温度を耐メルトホール性の指標とした。すなわち、この温度が高いほど、耐メルトホール性に優れると判断できる。
【0080】
(II)評価結果
実施例1〜4、比較例1〜2で得られた各熱収縮性延伸多層フィルムについて、熱収縮性延伸多層フィルムの諸特性を、上記の方法で評価又は測定した。得られた結果を表4に示す。
【0081】
【表4】

【0082】
表4に示した結果から明らかなように、本発明の深絞り成形用熱収縮性多層フィルムは、高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有することが確認された。
【0083】
<袋状包装材の包装適性(パウチ包装適性)の評価>
(I)包装体の作製
実施例1、3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いて、パウチ形態の袋(12cm×12cm)を作成し、それぞれに牛モモ肉を充填して包装し、80℃、10秒、熱水中で収縮させてパウチ包装体(実施例5、6)を得た。また、比較例1、2で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いた以外は上記と同様にして比較用パウチ包装体(比較例5、6)を得た。なお、実施例5、6及び比較例5、6で用いた各熱収縮性延伸多層フィルムの温度10℃及び23℃における酸素ガス透過度を前記の方法で測定した。得られた結果を表5に示す。
【0084】
(II)包装体の評価
得られた各パウチ包装体を、1〜2℃、100%RH条件下で30日間、45日間、60日間の保存を行い、開封後の色調について評価した。すなわち、パウチ包装体を開封後、内容物を表面から1cmの厚みで切り出し、内容物の表面を検体として日本電色工業(株)製の色差計SE2000を使用して、Lab値におけるa値(赤み)を測定した。得られた結果を表5に示す。なお、a値が高いほど赤みが強く、変色度合いは小さいといえる。
【0085】
【表5】

【0086】
表5に示した結果から明らかなように、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムを用いると、高湿度条件で長期保管を行っても実用上問題となるような変色は起こらないことが確認された。したがって、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れたパウチ包装適性を有することが確認された。
【0087】
<袋状包装材の包装適性(バッグ包装適性)の評価>
(I)包装体の作製
実施例1〜3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを、呉羽化学製(BM48)製袋機を用いて、幅300mm、長さ500mmのバッグ(袋)に加工した。そして、それぞれのバッグに約1kgの牛ウチモモブロック肉を充填後、Multivac AGW型真空包装機を用いて真空包装を行った後に、80℃、10秒、熱水中で収縮させてバッグ包装体(実施例7〜9)を得た。なお、これらの試験サンプルは、熱水収縮時に付着した水をふき取らずに水が付着した状態にしておいた。また、比較例1で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いた以外は上記と同様にして比較用バッグ包装体(比較例7)を得た。
【0088】
(II)包装体の評価
得られた各バッグ包装体を、1〜2℃、100%RH条件下で60日間の保存を行い、開封後の色調について評価した。すなわち、バッグ包装体を開封後、Lab値におけるa値(赤み)を前記の方法で測定した。得られた結果を表6に示す。
【0089】
【表6】

【0090】
表6に示した結果から明らかなように、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムを用いると、高湿度条件で長期保管を行っても実用上問題となるような変色は起こらないことが確認された。したがって、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れたバッグ包装適性を有することが確認された。
【0091】
<ピロー包装材の包装適性の評価>
先ず、実施例3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いて、市販スライスロースハム150gと脱酸素剤(三菱ガス化学製、SS−100)とを封入した。次に、横ピロー包装機(茨木精機製、CFP−3000N)を用いて、シール温度120℃、シュリンカー温度135℃(熱風)の条件で、発泡PSトレイ(縦220mm×横120mm×深さ20mm)を入れた状態で横ピロー包装を行ってトレイinピロー包装体(実施例10)を得た。得られたトレイinピロー包装体(実施例10)は、透明性、フィルムの張り共に優れた仕上がりであった。また、得られたトレイinピロー包装体を温度5℃、1000lux蛍光灯照射の条件下において30日間保存した後に、包装体内酸素濃度を測定(ガスクロマトグラフ分析)した。包装体内酸素濃度は0.0%あり、無酸素状態が良好に保たれていることが確認できた。さらに、30日間保存後の包装体においてはスライスロースハムの変色も認められなかった。
【0092】
したがって、発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れたピロー包装適性を有することが確認された。
【0093】
<トレイ包装材の包装適性の評価>
実施例3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを蓋材として用い、トレイとしてEVOHをガスバリア層とするバリアトレイ(縦195mm×横145mm×深さ30mm)を用い、内容物として牛スライス肉200gを用い、包装機としてケースレディ機(Mondini製、CV/VG−S型SE2671T)を用いて、シール条件120℃×3秒、ガス(O/CO=80/20vol%)置換4秒の条件で蓋材(リッド)加工してトレイ包装体(実施例11)を得た。得られたトレイ包装体(実施例11)は、透明性、フィルムの張り共に優れ、美麗な外観を呈していた。また、得られたトレイ包装体を5℃で5日間保存したところ、肉の変色や細菌の顕著な増殖は認められなかった(保存前の一般細菌数:10/g→5日後の一般細菌数:10/g、保存前の大腸菌群数:<10/g→5日後の大腸菌群数:<10/g)。なお、一般細菌数は、普通寒天培地を用いた混釈平板法により30℃×72時間後に発生したコロニー数を計測することによって求め、大腸菌群数は、デゾキシコレート培地を用いて37℃×24時間培養後の発生コロニー数を計測することによって求めた。
【0094】
したがって、発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れたトレイ包装適性を有することが確認された。
【0095】
<冷凍用包装材の包装適性の評価>
実施例3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを、手製袋により、幅200mm、長さ300mmの三方シールパウチ(袋)に加工した。そして、そのパウチに約200gの冷凍メバチマグロのサクを充填した後に、Multivac AGW方真空包装器を用いて真空包装を行って冷凍用包装体(実施例12)を得た。また、比較例2で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いた以外は上記と同様にして比較用冷凍用包装体(比較例8)を得た。こうして得られた各冷凍用包装体(実施例12と比較例8)を各20個ずつ、ドライアイスとともに発泡スチロール箱に詰め、片道約200kmの地点間を往復陸路輸送した。到着後、包装体の破袋発生状況を調べたところ、冷凍用包装体(実施例12)においては破袋が0個(0%)であり、比較用冷凍用包装体(比較例8)においては破袋が8個(40%)であった。したがって、発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れた冷凍用包装適性を有することが確認された。
【0096】
<ケーシング用包装材の包装適性の評価>
(I)包装体の作製
実施例1〜3で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを、手製袋により、折幅60mmのケーシングに加工した。そして、それぞれのケーシングの一方をクリップで留めた後、レバーソーセージ練り肉250gを充填して、温度80℃で60分間ボイルしてケーシング用包装体(実施例13〜15)を得た。また、比較例1で得られた熱収縮性延伸多層フィルムを用いた以外は上記と同様にして比較用ケーシング用包装体(比較例9)を得た。
【0097】
(II)包装体の評価
得られた各ケーシング用包装体を、5℃、100%RH、1000lux蛍光灯照射の条件下で30日間の保存を行い、開封後の色調について評価した。すなわち、バッグ包装体を開封後、Lab値におけるa値(赤み)を前記の方法で測定した。得られた結果を表7に示す。
【0098】
【表7】

【0099】
表7に示した結果から明らかなように、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムを用いると、高湿度条件で長期保管を行っても実用上問題となるような変色は起こらないことが確認された。したがって、本発明の熱収縮性延伸多層フィルムは、優れたケーシング用包装適性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、高透明性と、高強度と、高湿度下における高ガスバリア性とを有し、且つ、優れた包装適性を有する熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装体を提供することが可能となる。
【0101】
したがって、本発明の熱収縮性延伸多層フィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装体は、袋状包装、ピロー包装、トレイ包装、冷凍用包装、ケーシング用包装等に関する技術として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

により表される繰り返し単位を60質量%以上の割合で含有するポリグリコール酸から形成されたグリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(b)からなる樹脂層が積層されてなり、温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ20%以上であることを特徴とする熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項2】
酸素ガス透過度が、温度23℃、100%RHの条件下において50cm/m・day・atm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(b)からなる外層と、前記グリコール酸(共)重合体樹脂(a)からなる中間層と、シーラント樹脂(c)からなる内層とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とする袋状包装材。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするピロー包装材。
【請求項6】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするトレイ包装用蓋材。
【請求項7】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とする冷凍用包装材。
【請求項8】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムからなることを特徴とするケーシング用包装材。
【請求項9】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムを備えることを特徴とする包装体。

【公開番号】特開2007−160573(P2007−160573A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356837(P2005−356837)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】