説明

熱可塑性エラストマーを含むシンジオタクチックポリプロピレン組成物

スチレン及びイソプレン及び/又はビニルイソプレン単位を含む熱可塑性エラストマー(SI)及びシンジオタクチックポリプロピレン(s-PP)を含む、ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーを含むポリマー組成物;そのような組成物を含む層を含むフィルム又はチューブ、及びそれらの特定の用途に関する。
【0002】
医療用途が意図される物品は、従来の要求、例えば良好な機械的強度又は低コストだけでなく、-非常に厳格な-この特定の分野の用途に特有な要求、例えば前記物品の生体適合性特性、滅菌処理に付されるそれらの能力、それらの柔軟性、それらの透明性、それらの溶接可能性、それらの衝撃強度(液体が充填されている容器に関することを含む)、拡散する(例えば医療用(脂肪性)液体)又は抽出することのできる(例えば、ヘキサン及び/又は精製水で)物質の量、及びある場合では、それらのバリア特性に関する要求を満たさなければならない。
【0003】
これまで、医療用途のための市場で入手可能な物品、例えば点滴又は血液バッグ、及び医療関連流体の保存を意図するバッグは、塩化ビニルポリマー、例えばPVCに基づいていた。
いくつかの利点を有するにもかかわらず、このタイプのポリマーはある種の不都合、例えばその熱安定性を改善する目的のためにそこへ大量の安定剤を導入する、又は十分な柔軟性を得る目的のためにそこへ大量の可塑剤を導入する必要性を有する。従って、塩素化ポリマーがない医療用途のための物品の市場需要がある。
【0004】
そのような物品を得るには、ポリオレフィン系フィルムから出発し、及びそれらを共に(又はそれら自体に)溶接して、バッグ又はポーチを製造することが知られている。さらに具体的には、添加剤を含むポリプロピレン(PP)系フィルムを用いて、上記特性の一部を改善することが知られている。そのような添加剤は、しばしばPP樹脂の透明性及び柔軟性を改善するのに用いられているエラストマーである。そのようなエラストマーの例は、水素化されている又はされていないスチレン及びイソプレン及び/又はビニルイソプレン単位(以下では“SI”樹脂と呼ぶ)を含むものである。それらの中では、スチレン-ビニルイソプレン-スチレンブロックコポリマー(SVIS)及びスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS)が、PP樹脂との改善された適合性を有するために好ましく、特にそれらが少なくとも部分的に水素化されているときに好ましい。しかし、しばらくすると(又は加熱滅菌のような過熱処理後)、PP及びSI樹脂製のフィルムがそれらの透明性が緩むのが見られ、これは一部の相分離が長期間の使用/保存後に現れることを示し得る。
【0005】
本出願人は、驚くべきことに、シンジオタクチックポリプロピレン樹脂(s-PP)を選択したときに、この長期間の相分離が消滅する傾向にあることを見出した。
“従来の”i-PPに代わりs-PPを用いることの別の利点は、より低い温度で溶接を可能にするそのより低い融点(165℃に対して130℃)であり、これはさらに121℃の標準的な温度における蒸気滅菌を可能にする。
従って、本発明は、SI及びs-PPを含むポリマー組成物に関する。
【0006】
本発明の組成物に用いられるSI樹脂は、一般的に、2種のポリスチレン外部ブロック、及びイソプレン及び最終的には他のモノマーを含む中間ブロックを有するトリブロックコポリマーであり、部分的又は全体的に水素化されていてもよい。“部分的に水素化されている”という用語は、依然としてその構造にいくつかの不飽和イソプレン単位が残されていることを意味する。通常、市販の水素化SI樹脂には、約5質量%以下、好ましくは1質量%以下、及び最も好ましくは0.5質量%以下のジエン(不飽和)が残っている。全体的又はほぼ全体的に水素化されている樹脂が、安定性の理由のために好ましい。
【0007】
そのような樹脂の例は、商品名HYBRARでKURARAYによって商品化されているものである。これらの樹脂は、約40%(質量)までのスチレンを含み、ビニル-イソプレン-コ-ポリイソプレン製のブロックによって共に結合されるブロックを形成する。グレード5127及び5125は非水素化であり、グレード7125は、好ましくはHYBRAR 7125のような水素化されているHydrogenated SVIS樹脂である。
そのようなSI樹脂の他の例は、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン樹脂(SIBS)である。良好な結果を与えるそのような樹脂の例は、商品名KRATON"G-1730、RP-6924及びRP-6917で商品化されているものである。これらの樹脂は、全体的又はほぼ全体的に水素化されている(すなわち、それらは残された0.2質量%よりも少ない不飽和を有する)。
【0008】
本発明のs-PPは、プロピレンのホモポリマー、又はプロピレンと30%までのC2-C8コモノマー、好ましくはエチレンとのコポリマーでもよい。それは好ましくは、WO 00/61062に記載されているような制御された結晶性のポリオレフィンである。それは好ましくは、少なくとも適切な条件(これは、参考としてここに組み込まれるWO 00/061062に記載されている)で進行された後に、その樹脂の生産者がより高い価値を発表している場合でさえ、121℃よりも低い軟化点(又は“Vicatポイント”)を示す(ASTM Standard D1525に従って測定)。従って、本発明のs-PPは、好ましくはそれらの結晶性をそれらの加工中に容易に減少させることのできる際立った特徴を示す。結晶性のこの用意された制御は、それがこれらのs-PP樹脂に減少した結晶性を与えることができる限り、適切な加工条件が用いられ、従って全構造の透明性及び柔軟性が増加する条件のもと、本発明の内容において有利である。
【0009】
本発明のs-PPの多分散性は、有利には8よりも少なく、及び好ましくは4よりも少ない。この特徴は、分子量の低い分散を反映し、融解温度範囲及び軟化温度範囲間での分離を増加させ、従って加工中の結晶性におけるさらに有効な作用を有することができる。
さらに、用いられるs-PPのメルトフローインデックスは、有利には12g/10分よりも少なく、好ましくは10g/10分よりも少なく、及び最も好ましくは8g/10分よりも少ない(ASTM Standard D1238に従って測定、エチレンのポリマー及びブテンのコポリマーでは条件190℃/2.16kg下、及びプロピレンのポリマー及びブテンのホモポリマーでは条件230℃/2.16kg下)。
本発明の組成物では、s-PPが、一般的に30%以上、又はさらに40%以上の量(混合物の全質量と比較した質量)で存在する。他方、混合物のSVIS含有率は、一般的に5%以上、又はさらに10%以上である。一般的に、s-PPは95%以下、又はさらに90%以下の量で存在し、他方で、SVISは一般的に70%以下、又はさらに60%以下の量で存在する。
【0010】
本発明の組成物は、他のポリマー及び/又は顔料、安定剤などのような通常の添加剤を含み得る。特にそれが溶接されることを意図されるときは、エチレン-ビニルアセテート(EVA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)、エチレン-エチルアクリレート(EEA)又はエチレン-ブチルアクリレート(EBA)コポリマーから選択される少なくとも1種の全く結晶性でないか又はアモルファスなポリオレフィンを含み得る。以上に挙げられたコポリマーの中では、少なくとも9%のコモノマー含有率を示すもののみを、当然に追加の成分として考える。これらのコポリマーの濃度は、一般的に0.05%以上(全体の組成物に対する質量)であり、及び好ましくは0.1%よりも高い。一般的に15%以下であり、好ましくは10%以下及び最も好ましくは5%以下である。好ましくは全量の少なくとも0.1%、又はさらに少なくとも1%であるが5%を超えないEVA及びEMAの混合物が、良好な結果を与える。すなわち、非常に再現可能な剥離強度で溶接することができ、これは持続性外部シール及び少なくとも1種の剥離可能シールを含むマルチチャンバーバッグ又はポーチのような、剥離可能シールを有する品目を製造するのに非常に有用である。
【0011】
本発明の組成物は、任意の種類の物体、平らなもの(フィルム又はシートなど)から3次元のもの(容器又はチューブなど)まで、及び単層構造又は多層構造のいずれかに容易に加工され得る。
好ましくは、本発明は、上記組成物を含む少なくとも1種の層を含むフィルム又はチューブに関する。
【0012】
“フィルム”という用語は、一般的に1000μm以下、好ましくは500μm以下、又はさらに250μm以下の厚みを有する、薄く、平らな構造(例えばキャストフィルムの場合)又は管状構造(例えばブロンフィルムの場合)を意味するのに用いられる。実際には、90μm以上、又はさらに140μm以上の厚みが好適である。
“チューブ”という用語は、一般的に200μm以上、好ましくは500μm以上の肉厚を有する管状構造を意味するのに用いられる。実際には、この厚みはしばしば2500μmよりも低い。そのようなチューブは、医療包装ユニット(例えば容器、ポーチ、バッグなど)のための出入口部材として用いることができる。
【0013】
好ましくは、上記の組成物は、バリア特性、密閉性などのような特定の特性を提供する数層を含む多層構造(フィルム又はチューブ)で用いられる。好ましい実施態様では、該組成物は、該構造(フィルム又はチューブ)の密閉層に含まれる。“密閉層”によって意味されるのは、溶接中に実際に溶解する層(持続性又は剥離可能なシールのいずれか)であり、これは通常は表面層であり、及び概して構造の最も低い融点を有する。すなわち、SI樹脂(0℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマーとして)は周囲温度以上で柔らかく、且つs-PPがさらに低い融点を有するため、それらの混合物は優れた密閉性を示す。この実施態様では、すでに上記したように、密閉層が好ましくは、上記の量であるが、好ましくは透明性が緩まないために5質量%以下の量で、EVA及び/又はEMAをさらに含む。
【0014】
本発明の多層構造(フィルム又はチューブなど)は、EVOH、PA、ポリエステル、LCP(液体結晶ポリマー)など、又はそれらの混合物などの樹脂を含む少なくとも1種のバリア層を含み得る。好ましい実施態様では、純粋なEVOH、さらに特に20〜45モル%、好ましくは25〜40モル%及び最も好ましくは約30モル%のエチレン含有率を有するEVOHがバリア樹脂として用いられ、これは121℃/250°Fで蒸気滅菌に抵抗する。好適な市販グレードのEVOHは、Kuraray EVALTM 101B(27モル%エチレン)である。別の好ましい実施態様では、EVOHはポリアミド(PA)と混合/混和され、より高い湿度でバリア特性を改善する。そのようなPA樹脂の例は、PA11又はPA12(例えばAtofinaからのRilsan(登録商標)B又はRilsan(登録商標)A)、PA6/66(例えばBASFからのCapron(登録商標)CF120 ZI)又はFDA 21 CFR 177.1500及びEU指令2007/72/ECに従順するPA6(例えばBASFからのCapron(登録商標)、BayerからのDurethan(登録商標) T40)又はPA6/12(DupontからのZytel(登録商標))である。約200℃の融点(DSC{吸熱ピーク温度}によって測定)を有するものが好ましい。150℃以下のVicat軟化温度(IS030650N ;120℃/時間)を有するものがさらに好ましく、いくらか柔軟性を増加させる。さらに別の好ましい実施態様では、EVOHの層が、上記の好適なPA(PA 11, 12,6, 6/66,612など)の少なくとも1種の層と化合され、高いバリア特性と組み合わせて最大の透明性が得られる。中間のバリアフィルムには、好適なPA(PA11, 12, 6, 6/66, 612など)の層が含まれ得る。
【0015】
層を含むポリオレフィンをそのようなバリア層に接着するために、マレアート化熱可塑性(DupontからのBynel(登録商標)、MitsuiからのAdmer(登録商標)、AtofinaからのOrevac(登録商標)、SolvayからのPriex(登録商標)など)及び/又は熱可塑性エラストマー(Kraton(登録商標)FG 1901、FG 1921、FG 1924)が用いられる。特に有益なのは、最終的にマレアート化熱可塑性エラストマーと混和/混合されるマレアート化s-PPである。
一つの実施態様では、該フィルムはバリア層として、熱可塑性又はエラストマー、又はそれらの混合物となり得る環状オレフィン樹脂(COP)を含む層を含む。これは、アルコール、酸及び水(又は蒸気)の移入に対して、より優れたバリア特性を得るのを可能にする。
【0016】
“COP”という用語は、C5〜C12の環状モノマー及び/又は二環状モノマー(二量体)のホモポリマー又はコポリマーを意味すると理解され、これは側鎖を有し、全体として5〜30℃に到達し得る。シクロオレフィンコポリマーは、概してC2〜C10のオレフィンモノマーの環状モノマー以外からなる。これらは概してアモルファス又は部分的結晶性の可塑物であり、その軟化点及びガラス転移温度(Tg)は、コモノマーの割合を変えることにより広い温度範囲に渡って調節することができる。約20質量%よりも高い環状モノマー含有率を有するものは比較的もろく、且つ室温よりも高いTgを有する。約20質量%以下の環状オレフィン含有率を有するものは、室温以下のTgを有し、従って事実上エラストマーである(少なくとも50%の破損において伸張を有する)。特に有益なのは、少なくとも40質量%、好ましくは50質量%以上の環状オレフィン含有率を有するもの、及び最も好ましくは60質量%以上の環状オレフィン含有率を有するもの、及び20質量%以下又は2%以上の環状オレフィン含有率を有するものである。特に有益なのは、121℃以上のTgを有し、それらが蒸気滅菌可能であるもの、及び20質量%よりも低い環状オレフィン含有率を有し、それらが多少の結晶性を示し、従って密閉及び他の過熱処理に有利な融点を有するものである。本出願人は、驚くべきことに、高いTgを有するCOPと低いTgを有するCOPとを混合したとき、医療用途のために当技術分野で最も要求される柔軟性、透明性、滅菌性及び密閉性に関するいくつかの特性を、組み合わせることができることを見出した。
【0017】
基本的な環状モノマーユニットは、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン又はメチルテトラシクロドデセンにすることができる。好ましくは、ノルボルネンであり、
【化1】

ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン
これは最終的に直鎖でもよい側鎖を有しており:
【化2】

ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン
R1、R2(=CxHy+1、x,y=0,1,2, ...)
又はジシクロペンタジエンにおけるような環状である(実際は、シクロペンタジエン側鎖を有するノルボルネンである):
【化3】

【0018】
オレフィンは、有利にはエチレンである。COPは、好ましくは側鎖を有する又は有さないノルボルネンのホモポリマー又はコポリマーであり;さらに好ましくはノルボルネンのホモポリマー(側鎖を有しても有さなくてもよいが、好ましくは側鎖としてシクロペンタジエンを有する、すなわち、好ましくはジシクロペンタジエンのホモポリマーである)、又はノルボルネン(側鎖を有する又は有さない)及びエチレンのコポリマーのいずれかである。後者の場合、エチレンの含有率は、有利には80〜98質量%又は60質量%以下である。
【0019】
この実施態様では、COPは、別のポリマー又は水素化されている炭化水素と混和されてもよい。有利には、COPはs-PPと混和され、フィルム/チューブを容易に溶接及び蒸気滅菌できるように、より強硬及び延性にし、且つ衝撃及び穿刺抵抗を与えるが、他の熱可塑性ポリマー/エラストマー及び炭化水素がよく用いられ、COPを希釈/混和し得る。これらは、有利には、上記のSI樹脂のような全く結晶性でないか又はアモルファスなポリオレフィン又は炭化水素、又は以下のタイプのもの:
少なくとも2種のC2〜C10アルケンからなるオレフィンコポリマーであって、少なくとも60質量%のエチレン及び/又はプロピレン及び/又はブテンを含むが、90質量%よりも多くの同じコモノマーは含まないもの、又は
エチレン及び/又はプロピレン及び/又はブテン、及び好ましくはC5〜C10のオレフィン[例えば、線形的に低密度なポリエチレン(LLDPE)、非常に低密度なポリエチレン(VLDPE)又は極端に低密度なポリエチレン(ULDPE)を有するような量のエチレン及び1-オクテンのコポリマー]から選択される10〜40質量%の1種以上の異なるコモノマー、及びカルボン酸又はエステル基、例えばビニルアセテート、メチル、エチル又はブチルアクリレート及びメチルメタクリレート、又は一酸化炭素を含むオレフィンコポリマー、又は
スチレン及び1種以上のオレフィン(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)又はスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンタイプ(SEPS)などのコポリマー)のブロックを有するエラストマーコポリマー又はターポリマー、又は
高度に分枝されているホモポリマー[例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)又は中密度ポリエチレン(MDPE)]又は
パラフィン又はパラフィンオイルのような水素化されている炭化水素、
から選択される。
【0020】
有利には、層を含むCOPは、SI樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、最終的にスチレン-エチレン-ブチレン(SEB)を含むもの、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、最終的にスチレン-エチレン-プロピレン(SEP)を含むもの、及びエチレン-1-オクテンコポリマー(好ましくはメタロセン技術によって製造されたもの)から選択される少なくとも1種の樹脂を含む。SI樹脂、SEBS及び/又はSEPSは、それらが持続性シール及び剥離可能シール(低い温度において)の両方を製造することができ、且つそれらがその衝撃強度を改善するために好ましい。これらの樹脂の全濃度は、一般的に1%以上(全層組成物に対する質量)、及び好ましくは5%以上である。一般的には39%以下、好ましくは30%以下である。
COP樹脂は、接触する又は処理するときなどの低い量でさえ油を差すことに敏感であるため、本発明のこの好ましい実施態様の層を含むCOPは、有利には2種の他の層間に含まれる内部層である。これらの層の一つは、層を含むSI及びs-PPでもよい。
【0021】
本発明のフィルム/チューブはまた、高い融点(>130℃)を有し、柔軟であり、透明な外部層(すなわち、構造の側面、密閉層の側面における層)も含み得る。この層は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)及び/又はPEBA(ポリエステルブロックアミドコポリマー)を含み得る。TPE樹脂は、エーテル及びエステル結合によって結合されている硬いポリ-1,4-ブタンジオール及び/又はポリ(アルキレンオキシド)グリコール、テレフタレート酸又は1,4-シクロヘキサン-ジカルボキシレート及び1,4-シクロヘキサン-ジメタノールブロックコポリマーを変化させることから構成される。そのようなTPEの例は、Eastmanによって商品化されているECDEL樹脂(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコールに基づくPCCE又はポリシクロヘキサンジカルボン酸-シクロヘキサンジメタノール-エラストマー又はコポリエステル)、DupontからのHYTREL(登録商標)樹脂、GEからのLOMOD(登録商標)樹脂及びCelaneseからのRITEFLEX(登録商標)樹脂である。PEBA樹脂は、ポリアミドブロック及び少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)のブロックからなる。そのような樹脂は、例えばAtofina chemicals PEBAX(登録商標)によって商品化されている。
【0022】
本発明のフィルムの上記外部層はまた、SI又はSEBS、SBSなどの樹脂(すなわち、上記のスチレンの外部ブロック、及び少なくとも1種のポリオレフィン又はイソプレンを含む中間ブロックを含むブロックコポリマー)を含み、保存されるとき(折りたたまれるか又は巻き上げられる)のそれ自体及び/又はその包装に対するフィルムの固着を減少させ得る。
上記の密閉層、バリア層及び外部層以外に、本発明のフィルム/チューブは、密閉層及び外部層の間の融点を有し、且つ類似のポリマー(SI樹脂、s-PP、他のPP樹脂、エラストマーなどの1種以上から選択される)少なくとも1種の追加の内部層を含み得る。例えば、経済的観点から有益であり、上記フィルム/チューブにおける内部層としてスクラップ(すなわち、本発明のフィルム/チューブの製造廃棄物)製の層を含み得る。層がいくつであっても、一般的には構造内に融点勺配を有するのが興味深く、最も低い融点を有する層が密閉層である。
【0023】
本発明の実施態様では、上記の多層構造(フィルム又はチューブ)が、40質量%よりも多いメタロセン技術PO樹脂を含み、その少なくとも30質量%がPP樹脂(シンジオタクチック又はアイソタクチックのいずれか、例えばエチレンによるホモポリマー又はコポリマーのいずれか)である。
メタロセン触媒技術によって得られたPO樹脂の選択は、全構造の純度(抽出可能な残渣及び触媒残渣の含有率)を改善する。これらのメタロセンPP樹脂は、好ましくはs-PP及び/又はi-PPである。
本発明のフィルムは、ブロッキングを防ぐための任意の周知な技術によって、全体的又は部分的(部分的とはある領域を意味する)に装飾され得る(すなわち、浮き彫りのパターンを有し得る)。
【0024】
本発明のフィルムは溶接するのが非常に容易であり、従ってバッグを製造するのに非常に便利に用いることができる。従って、本発明は上記のフィルムを溶接することによって製造されるバッグにも関する。
好ましくは、このバッグは少なくとも1種の持続性外部シール及び少なくとも1種の剥離可能シールを含むマルチチャンバーバッグである。持続性シールによって意味されるのは、容易に手作業で剥離することができず、且つ一般的に少なくとも2000N/m(ASTM/ISO °F88による)、又はさらに少なくとも3000N/mの剥離強度を示すシールであり、一方で剥離可能シールは、手作業で剥離するのが容易であり、且つ一般的に2000N/mよりも少ない剥離強度を示すシールである。所定の構造を有する持続性及び剥離可能シールをそれぞれ得るための最適温度、圧力及び溶接時間範囲は、いくつかの実験を用い、当業者によって非常に容易に決定することができる。一般的に、持続性及び剥離可能シールは、高温ガス又は高温工具溶接を用いて製造され、後者が好ましい。
【0025】
本発明のフィルム、チューブ及びバッグは、それらの上記特性が価値のある任意の用途に用いられ得る。医療分野はそのような用途領域である。実際、本発明のバッグは、透析、点滴、栄養などの溶液のような医療流体を含むのに特に好適である。
最後に、本発明のポリマー組成物は、有利に射出成形品に用いることもできる。すなわち、上記フィルム及びバッグの大部分の適用領域では、後者はある種の装置(例えば灌流又は透析装置)に接続され、及びしばしば一般的に射出成形によって製造される接続部品を用いて、この接続を行うことが必要である。同様のポリマー成分の完全なシステムを有するため、及び前述したそれらの利点の利益のために、これらの射出成形品は、有利には上記のように同様のポリマー組成物を含む。
【0026】
以下の例を用いて本発明を説明する。これらの例では、以下のポリマーグレードを用いた(sはシンジオタクチックを意味し、iはアイソタクチックを意味する)。
s-PPは、ASTM D 1238によりMFI 2であるTotalpetrochemicalsからのグレード1251であり、メタロセン触媒を用いて製造される。
水素化SIブロックコポリマーは、KurarayからのグレードHybrar 7125である。
EVA1は、約3であるMFIを有し、約18質量%VAである。
EVA2は、ASTM D1238により、190℃、2.16kgでMFI 2を有し、18%VAである。
EMAは、ASTM D1238により、190℃、2.16kgでMFI 0.3である16%MAを有する。
i-PP1は、BorealisからのグレードHD601CFである。
i-PP2は、約5.6のMFIを有し、メタロセン触媒を用いて製造される。
i-PP3は、ASTM D 1238により5のMFIを有する。
i-PP4は、約2のMFIを有する。
i-PPE1ランダム可動性コポリマーは、BorealisからのグレードSD233CFである。
i-PPE2ランダム可動性コポリマーエラストマーは、ExxonmobileからのグレードVistamaxx 0 1100であり、メタロセン触媒を用いて製造される。
i-PPE3ランダム可動性コポリマーエラストマーは、DowからのグレードVersify 2300である。
i-PPコポリマーは、BorealisからのグレードRD208CFである。
COP1は、30のMFIを有する(ISO 1133、260℃、2,16kg)。
COP2は、13のMFIを有する(ISO 1133、260℃、2,16kg)。
COP3は、少なくとも80質量%のエチレンを有する。
【0027】
フィルムの曇り及び透明性は、ASTM D 1003に従い全発光透過率として測定した。
フィルムは、共押出し(平らな型及び供給ブロック)によって製造し、各層はそれ自体で独立した単軸押出機(直径60及び45mm、25Dのバレルの長さ)を有した。型、供給ブロック及びアダプターにセットする際の温度は、約210℃とした。シリンダーにセットする際の温度は、用いられるポリマーに依存して150〜210℃である。単層チューブは45mmの単軸押出機を用いて製造した。チューブは環状の型を用いて製造した。押出し温度は約210℃とした。バッグは、これらのフィルムとチューブとの高温工具溶接により、以下の条件下:温度は120〜150℃、圧力は6bar、溶接時間は外周溶接では1.4秒で製造した。チューブは80℃で予熱した。蒸気滅菌は、適用可能なUSP及び/又はEPガイドラインに記載のように、スチームオートクレーブを用いて121℃で30分間行った。
【0028】
比較例1:
以下の層を含む多層フィルムを共押出しした:50質量%のi-PPIと50質量%のi-PP2との混合物を含む層A(外部層40ミクロン)、i-PP75質量%のランダム可動性i-PPEIコポリマー及び25質量%のi-PP2からなる層B(中間層110ミクロン)、及びi-PPコポリマー75質量%、SEBS 25質量%からなる層C(密閉層40ミクロン)。フィルムの全厚みは190ミクロンであった。このフィルムのバッグは、148℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは23%であった。
【0029】
比較例2:
以下の層を含む多層フィルムを共押出しした:
層A(外部層):90質量%のi-PPI及び10質量%のSEBSの混合物。
層B1:i-PP3(100質量%)
層B2:75質量%のi-PP3及び25質量%のSEBSから製造される混合物。
層C(密閉層):75質量%のi-PP3及び22質量%のSEBS及び2質量%のEVA1及び1質量%のEMAから製造される混合物。
フィルムの全厚みは200ミクロン、層B1は40ミクロンであった。滅菌後の曇りは26%であった。
【0030】
比較例3
以下の層を含む多層フィルムを共押出しした。100質量%のi-PP1を含む層A(外部層40ミクロン)。50質量%のランダム可動性i-PPE1コポリマー及び50質量%のi-PP4からなる層B(密閉層)。
フィルムの全厚みは200ミクロンであった。このフィルムのバッグは、148℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは30%であった。
【0031】
例4
以下の層を含む本発明のフィルムを、共押出しした。50質量%のi-PPIと50質量%のi-PP2との混合物を含む層A(外部層40ミクロン)。75質量%のランダム可動性i-PPEIコポリマー及び50質量%のi-PP2からなる層B(中間層110ミクロン)。s-PP75質量%、水素化SIブロックコポリマー25質量%の混合物からなる層C(密閉層40ミクロン)。フィルムの全厚みは190ミクロンであった。このフィルムのバッグは、135℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは14%であった。
【0032】
例5
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした:
層A(外部層):90質量%のi-PPI及び10質量%のSEBSの混合物。
層B1:i-PP3(100質量%)
層B2:75質量%のs-PP及び25質量%の水素化SIブロックコポリマーから製造される混合物。
層C(密閉層):75質量%のs-PP3及び22質量%の水素化SIブロックコポリマー及び2質量%のEVA1及び1質量%のEMAから製造される混合物。
フィルムの全厚みは200ミクロン、層A及び層B1は共に40ミクロンであった。滅菌後のその曇りは5%であった。このフィルムのバッグは、135℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。
【0033】
例6
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした:
層A(外部層):90質量%のi-PPI及び10質量%のSEBSの混合物。
層B1:45質量%のCOP1及び40質量%のCOP2及び15質量%のs-PPの混合物。
層B2:75質量%のs-PP及び25質量%の水素化SIブロックコポリマーから製造される混合物。
層C(密閉層):75質量%のs-PP3及び22質量%の水素化SIブロックコポリマー及び2質量%のEVA1及び1質量%のEMAから製造される混合物。
フィルムの全厚みは200ミクロン、層A及び層B1は共に40ミクロンであった。滅菌後のその曇りは6%であった。このフィルムのバッグは、135℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。
【0034】
例7
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。100質量%のi-PP1を含む層A(外部層40ミクロン)。50質量%のs-PP及び50質量%の水素化SIブロックコポリマーの混合物からなる層B。50質量%のランダム可動性i-PPE1コポリマー及び50質量%のi-PP4からなる層C(密閉層)。フィルムの全厚みは200ミクロンであった。このフィルムのバッグは、148℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは25%であった。
【0035】
例8
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。100質量%のi-PPIを含む層A(外部層40ミクロン)。50質量%のs-PP及び50質量%の水素化SIブロックコポリマーの混合物からなる層B。50質量%のランダム可動性i-PPE2コポリマー及び50質量%のi-PP4からなる層C(密閉層)。フィルムの全厚みは200ミクロンであった。このフィルムのバッグは、148℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは15%であった。
【0036】
例9
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。100質量%のi-PPIを含む層A(外部層40ミクロン)。50質量%のs-PP及び50質量%の水素化SIブロックコポリマーの混合物からなる層B。50質量%のランダム可動性i-PPE3コポリマー及び50質量%のi-PP4からなる層C(密閉層)。フィルムの全厚みは200ミクロンであった。このフィルムのバッグは、148℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは19%であった。
【0037】
例10
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。100質量%のi-PPIを含む層A(外部層40ミクロン)。25質量%のs-PP及び25質量%の水素化SIブロックコポリマー、25質量%のランダム可動性i-PPE2コポリマー及び25質量%のi-PP4の混合物からなる層B。70質量%のランダム可動性i-PPE2コポリマー及び30質量%のi-PP4からなる層C(密閉層)。フィルムの全厚みは200ミクロンであった。このフィルムのバッグは、142℃の溶接温度で持続性外周シールを示した。蒸気による滅菌後のフィルムの曇りは19%であった。
【0038】
比較例11
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。50%のi-PP1と50%のi-PPとの混合物を含む層A(外部層40ミクロン)。層B:75質量%のi-PPE1及び25質量%の水素化SIブロックコポリマー。層C:W003/097739に記載のように、85質量%のCOP3及び15質量%のs-PPからなる混合物を含む。滅菌後の曇りは17%であった。
【0039】
例12
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。50%のi-PPIと50%のi-PPとの混合物を含む層A(外部層40ミクロン)。層B:25質量%のs-PP及び25質量%の水素化SIブロックコポリマー、25質量%のランダム可動性i-PPE2コポリマー及び25質量%のi-PP4の混合物からなる層B。層C:W003/097739に記載のように、85質量%のCOP3及び15質量%のs-PPからなる混合物を含む。滅菌後の曇りは6%であった。
【0040】
例13
以下の層を含む本発明のフィルムを共押出しした。50%のi-PP1と50%のi-PPとの混合物を含む層A(外部層40ミクロン)。層B:75質量%のs-PP及び25質量%の水素化SIブロックコポリマーの混合物からなる層B。層C:COP3を含む。滅菌前の曇りは4%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン及びイソプレン及び/又はビニルイソプレン単位を含む熱可塑性エラストマー(SI)及びシンジオタクチックポリプロピレン(s-PP)を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
SIが少なくとも部分的に水素化されている、請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の層が請求項1又は2記載のポリマー組成物を含む、多層構造。
【請求項4】
多層フィルム又はチューブであり、且つ請求項1又は2記載のポリマー組成物を含む層が密閉層である、請求項3記載の多層構造。
【請求項5】
密閉層がさらにEVA及び/又はEMAを含む、請求項4記載のフィルム又はチューブ。
【請求項6】
EVOH(エチレンビニルアルコールコポリマー)、PA(ポリアミド)、ポリエステル、LCP(液体結晶ポリマー)又はそれらの混合物、又は環状オレフィンポリマー(COP)などの樹脂を含む、少なくとも1種のバリア層を有する、請求項4又は5記載のフィルム又はチューブ。
【請求項7】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)及び/又はPEBA(ポリエステルブロックポリアミド)を含む外部層を有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のフィルム又はチューブ。
【請求項8】
主に40質量%よりも多いメタロセン技術PO(ポリオレフィン)樹脂を含み、該樹脂は少なくとも30質量%がPP(ポリプロピレン)樹脂である、請求項4〜7のいずれか1項に記載のフィルム又はチューブ。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載のフィルムを溶接することによって製造される、バッグ。
【請求項10】
請求項1又は2記載のポリマー組成物を含む、射出成形品。

【公表番号】特表2007−526935(P2007−526935A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550187(P2006−550187)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050370
【国際公開番号】WO2005/075558
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(501016401)レノリット アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】