説明

熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。

【課題】樹脂の流れを均一にして心線の並びを良好にし、ベルトスリーブのスクラップ量を低減した熱可塑性エラストマー製歯付ベルトを提供する。
【解決手段】内型3がベルト成型部11とその両端の支持部10からなり、この支持部10に着脱リング14a,14bを装着してベルト成型部11の外周面と同一面にした後、心線16を一方の着脱リング14aの巻始め領域Sからベルト成型部10へ、そして他方の着脱リング14bを巻終り領域Tにして巻付けし、ベルト成型部10の両端部15で心線止め部Pを形成した後、巻始め領域Sと巻終り領域Tに巻付けた心線16を切断して各着脱リング14a,14bを抜取り、この内型3を外型2bに設置し、溶融樹脂33をベルト成型部の幅をゲート幅とするフィルムゲート46から心線の巻付け方向へ流し込んでベルトスリーブ18を成形し、内型3から脱型したベルトスリーブ18を切断して歯付ベルトにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法に係り、詳しくは樹脂の流れを均一にして心線の並びを良好にし、ベルトスリーブのスクラップ量を低減した熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン製歯付ベルトはスリップのない回転を伝える同期伝動方式であるため、一般産業用、精密機器用等の動力伝動用ベルトとして広く使用されている。このポリウレタン製歯付ベルトは通常注型方法によって製造され、具体的には突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れ、内型と外型で形成されたキャビティに液状ポリウレタンを注型し硬化した後、内型から脱型した広幅のベルトスリーブを所定幅に切断する方法が取られている。このノーズは心線の中心部とベルト溝底面間の距離であるPLD値を適度に維持し、プーリとの噛み合いを最適なものにしている。
【0003】
他の製造方法である射出成形法では、突条のノーズに心線を巻き付けた円筒状内型を外型に入れた金型装置を射出成形機に装着し、溶融樹脂を射出成形機のノーズからスプルー、放射状ランナー、ゲートを経由して空気抜きをしながらキャビティに充填した後、内型からベルトスリーブを脱型し、ベルトスリーブを所定幅に切断して歯付ベルトを作製していた。
【0004】
また、他の方法としては、予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを成形し、形成するベルトの幅に切断したものを内型に嵌挿し、この内型を外型に組み合わせた後、熱可塑性樹脂を型内に射出して充填するもので、心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを使用することによって心線の乱れを阻止することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ショット成形でノーズを無くした1層目の樹脂層を成形し、この樹脂層の周面に心線をスパイラルに巻き付けた後、2層目の溶融樹脂をキャビティに射出し充満させてベルト背面部に成形する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−237934号公報
【特許文献2】特開2003−25372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内型に巻き付けた心線の並びが射出圧力の大きさによって乱れ、補強機能を発揮できないことがあった。特許文献1に開示された方法はこれを改善している。しかし、この方法では予めコードのような心線を溶融樹脂で固着一体化した補強シートを作製し、この補強シートを成形するベルトの所定幅に切断して内型に嵌挿する方法であるために、工数がかかりすぎて生産性が悪く、また製品コストが高くなることがあった。
【0007】
また、特許文献2では、このような問題を解決するが、心線が巻付け張力により1層目の樹脂層に幾分沈み込む投錨効果を起こし、射出時の強烈な樹脂圧や粘性抵抗を受けた場合であっても心線の乱れが起き難いが、しかし1層目の樹脂層(スリーブ)が樹脂流れ方向へ引き伸ばされることもあり、この場合には心線の並びが乱れるという問題があった。
【0008】
また、従来の方法では、ベルト成型部にある心線の巻始め領域と巻終り領域はベルト成型部の端部から内側にあり、更に心線の巻始め領域ではスピニングの初期時期であることから心線張力が不安定になり、心線ピッチにバラツキが発生していた。このため、フィルムゲートから流れた溶融樹脂は初期時にはベルト成型部を均一に流れても、心線の存在しないベルト成型部の端部領域へ向って流れ込みが発生し、心線の巻始め領域と巻終り領域では心線の配列乱れが発生することがあった。成形されたベルトスリーブの両端部からカットされたベルトは不良品となり、スクラップにしなければならなかった。ベルト成型部の全領域の最大20%がスクラップになることがあった。
【0009】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、樹脂の流れを均一にして心線の並びを良好にし、ベルトスリーブのスクラップ量を低減した熱可塑性エラストマー製歯付ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成すべく本願請求項記載の発明は、心線をベルト背面部に長手方向に延在させて埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔をおいて歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
内型が長手方向に延在した溝状部と突状部を円周方向に沿って交互に有するベルト成型部とその両端の支持部からなり、上記支持部に着脱リングを装着してベルト成型部の外周面と同一面になるようにした後、心線を一方の着脱リングを巻始め領域としてベルト成型部へ、そして他方の着脱リングを巻終り領域にしてスパイラルに巻付けし、ベルト成型部の両端部で心線の固定処理を行った後、巻始め領域と巻終り領域に巻付けた心線を切断し、着脱リングを抜取った後、該内型を外型に設置し、熱可塑性エラストマーからなる溶融樹脂をベルト成型部の幅をゲート幅とするように設定したフィルムゲートから心線の巻付け方向へ流し込んでベルトスリーブを成形し、内型から脱型したベルトスリーブを切断して歯付ベルトに仕上げる、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法にある。
【0011】
また本願請求項記載の発明は、巻始め領域と巻終り領域には、心線が10〜80回巻付けられる場合や、心線の巻付け幅をゲート幅とするフィルムゲートを相対向する位置に2箇所設け、熱可塑性エラストマーの流れ方向を心線の巻付け方向に一致させた場合、末端ランナーをフィルムゲートに隣接して設け、該末端ランナーの幅をフィルムゲートと同一幅にした場合、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そしてウレタン系動的架橋型熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である場合、そして熱可塑性エラストマーの流動特性としてキャピラリーフロー粘度が240℃、剪断速度1×10sec−1で10Pa・sec以下である場合を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法では、一方の着脱リングを心線の巻始め領域とし、他方の着脱リングを心線の巻終り領域にし、各着脱リングの巻始め領域と巻終り領域に存在する心線を切断してベルト成型部の両端部で心線の固定処理をするものであり、これによりベルト成型部では心線が均一ピッチで配列していることになる。フィルムゲートから流れ出た樹脂はベルト成型部で大きな乱れもなく均一に流れて心線の並びの乱れをなくし、この結果得られたベルトスリーブの両端部の不良品も少なくなり、各着脱リングの巻始め領域と巻終り領域に存在する心線を切断しても総じてスクラップの量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法を図面にもとづいて詳細に説明する。図1は本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て図、図2は内型の一部切り欠き正面図、図3は内型の両端に位置する支持部に着脱リングを装着している状態を示す概略図、図4は着脱リングを装着した内型上に心線をスピニングした後の概略図、図5はベルト成型部の両端部で心線の固定処理行った後に、巻始め領域と巻終り領域に巻付けた心線を切断し除去した状態を示す概略図、図6は本発明の歯付ベルトの製造工程であってベルト歯部層と背面層同時一体成形でベルトを作製している工程の概略図、そして図7は本発明の歯付ベルトの製造工程であって、射出成形を終えた状態の概略図を示す。
【0014】
縦型(竪型)射出成形機30に設置される金型装置1は、上型2c、第1外型2a、そして第2外型2bを上プレート2dと下プレート2eによって挟持して分離可能に組立てた構造からなっている。上型2cはスプルー6を有し、第1外型2aはスプルー6に連通したランナー7を有している。ランナー7は末端ランナー7aとの境界部で細くなり、型の脱型時には該境界部が容易に破断する。第1外型2aと第2外型2bはパーティングライン面4で対面し、このパーティングライン面4にベルト歯部層と背面層を同時に一体成形する空所5を形成し、内型3を収容する。即ち、心線16を巻付けた内型3は外型2に設けた空所5内に設置され、キャビティに溶融樹脂を充満することでベルト歯部層、背面層を同時に一体成形する。
【0015】
内型3は、図2に示すように両端部に径の小さい支持部10を、中央部にベルト成型部11を備えている。ベルト成型部11は長手方向に延在した溝状部12と突状部13を周方向に沿って交互に有し、ベルトスリーブを成形する領域になっている。図3に示すように支持部10には、輪状の着脱リング14a,14bを装着してベルト成型部10の外周面を同一面にする。着脱リング14a,14bの外周面には、円周方向に沿って一定間隔の溝状部を設けてもよい。
【0016】
上記射出成形機30は、熱可塑性エラストマーをスクリュー32により粘度を低下させた溶融樹脂33を所定量だけシリンダー34内に入れ、ピストン35によって射出し、ノズル31から上型2cと第1外型2a内に設けられたスプルー6、ランナー7、末端ランナー7a、そしてフィルムゲート46を経由して外型2と内型3間のキャビティ9に充填する。この場合の内型3と外型2の金型温度は、30〜90°Cが好ましい。
【0017】
ここで用いられる熱可塑性エラストマーである溶融樹脂33は、例えばエステル系熱可塑性エラストマー(例えば、東洋紡績社製:商品名ペルプレン、デュポン社製:商品名ハイトレル)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、エー・イー・エス・ジャパン社製:商品名サントプレーン)、ウレタン系動的架橋熱可塑性エラストマー(例えば、リケンテクノス社製:ウレタン系ハイパーアロイアクティマー)、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等があり、伝動ベルトの用途を考慮すると、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そしてウレタン系動的架橋熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0018】
上記熱可塑性エラストマーの流動特性としては、キャピラリーフロー粘度が240℃、剪断速度1×10sec−1で10Pa・sec以下、好ましくは0.5〜10Pa・secであり、この範囲であれば上記熱可塑性エラストマーをキャビティ内に充填することができる。
【0019】
スピニング工程では、支持部10に着脱リング14a,14bを装着した内型3を心線のスピニング装置(図示せず)の回転軸に装着し、スピニング装置のテンションロ−ルを介してガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、スチールコードからなる低伸度、高強力のコードからなる心線16を所定のスピニングピッチで螺旋状に巻付ける。心線16のスピニングテンションは5〜70N/本である。
【0020】
図4に示す工程では、張力が不安定な心線16を一方の着脱リング14aの巻始め領域Sで所定回数だけ巻付けた後、張力の安定した心線16をベルト成型部11で均一ピッチに巻付けし、そして他方の着脱リング14bの巻終り領域Tで所定回数だけ巻付けてスピニングを終える。巻始め領域Sでは心線16の張力が不安定であることから、心線ピッチが乱れる領域になる。巻始め領域Sと巻終り領域Tでは、心線16は10〜80回巻付けられる。心線16の巻付け回数が10回未満であると、ベルト成型部11にまで心線16のピッチ乱れが発生する恐れがあり、他方心線16の巻付け回数が80回を越えると、切断による心線のスクラップ量が増す。
【0021】
このスピニング工程において、心線16の末端固定方法は、着脱リング14a,14bの表面に設けた切欠き部に機械的に固定し、また粘着テープ等を用いで着脱リング14a,14bへ固定することができる。
【0022】
続いて、ベルト成型部11の両端部15において心線16の固定処理を行い心線止め部Pを形成する。この固定処理は、前述の通り粘着テープ等でベルト成型部11へ固定する方法が最も確実で好ましい。その後、図5に示すように各着脱リング14a,14bの巻始め領域Sと巻終り領域Tに巻付けた心線16をカッターで切断して除去し、その後各着脱リング14a,14bを抜き取る。ベルト成型部11には均一ピッチで巻付けられた心線16が残っている。
【0023】
続いて、図6と図7に示すように、心線16を均一に巻き付けた内型3を第2外型2bの空所5に設置し、内型3の支持部10の設けた貫通穴に突き出しピン45を嵌入して固定し、その後に下プレート2eに設置された第2外型2bを昇降手段(図示せず)により移動させてガイドピン(図示せず)に沿って第1外型2aと上型2cを組合せ、プレート2d、2eによって機械的に挟持固定して金型装置1とし、これを射出成形機30に装着して合体する。
【0024】
外型2のパーティングライン面4には、2つに分岐したランナー7,7が心線16の巻き付け幅にほほ等しい幅の末端ランナー7aに結合して配置し、更に各末端ランナー7aにはこれと同じ幅の0.1〜2mm厚のフィルムゲート46を有している。溶融樹脂33は、図6において矢印で示すように末端ランナー7aからフィルムゲート46を経由して巻き付け幅にほほ等しい幅で心線16の巻き付け方向へ流れ込む。フィルムゲート46の幅が心線16の巻き付け幅より狭くなると、溶融樹脂33がフィルムゲート46から内型長手方向平行に均等に流れず、端部では中央部に較べて流れが悪くなり心線乱れ等の不具合が発生する。
【0025】
上記フィルムゲート46は、キャビティ9内における溶融樹脂33をゲートから平行して流動させる効果を有している。該フィルムゲート46の整流効果をさらに高めるために、末端ランナー7aが必要となる。この末端ランナー7aはフィルムゲート46のゲート幅全体にわたって設けられ溶融樹脂33を均一に充填する。もし末端ランナー7aを設けずに、分岐したランナー7に直接フィルムゲート46を設置すると、フィルムゲート46の全幅に充填する溶融樹脂33はフィルムゲート46の中央から両端にかけて充填体積の異なる傾斜した分布になり、またキャビティ内の流動ベクトルも流入方向から外れて心線の巻付け方向と平行でなくなってしまうという問題が発生する。
【0026】
この現象はフィルムゲート46内の流動ベクトルに差異が発生することに起因し、溶融樹脂の粘度が高いほど顕著に現れる。これを抑制するため、予め溶融樹脂33をランナー末端7aにゲート幅方向の全域にわたって充填させておくことが必要になる。該末端ランナー7aはこのために使用するもので、分岐したランナー7から流れ出た溶融樹脂33をフィルムゲート46内に直接流さずに、一旦末端ランナー7a内のフィルムゲート46幅全域にわたって充填される機能を有している。
【0027】
そして、溶融樹脂33を射出して、分岐したランナー7から末端ランナー7aへ流し込み、そしてフィルムゲート46から心線16の巻き付け方向へ流し込むことによって溶融樹脂33の流れを良好にして心線16の並びを乱すことなく充填することができる。
【0028】
第2外型2bをパーティングライン面4で第1外型2aから分離した後、内型3を突き出しピン45により持ち上げることで、第2外型2bから容易に取り出すことができる。そして、ベルトスリーブ18のゲートカットをした後、ベルトスリーブ18を内型3から脱型する。予め内型3に離型剤を塗布すればベルトスリーブ18の脱型も良好になる。
【0029】
その後、ベルトスリーブ18をカット機(図示せず)の2つのロールに懸架して回転させながら、カッターにより所定幅に切断し、図8に示す歯付ベルト20を形成することができる。
【0030】
この歯付ベルト20は、心線16を長手方向に延在するようにベルト背部層17に埋設して歯部21間の歯底22面で局部的に露出し、ベルト背部層17の下側に所定間隔で歯部21をもつベルト歯部層19を有している。心線16は配列の乱れもなく、脱型時に内型との擦れによる損傷も起っていない。心線16が埋設しているため動的疲労を受けにくくなり、ベルトの寿命を延ばすことができる。また充填計量値を過不足なく設定することにより、内部歪みも小さくエア噛みやボイドもなく寸法精度の高い熱可塑性エラストマー製歯付ベルトになる。
【0031】
なお、一段成形の場合は、歯ピッチが小さくなるほど心線の支持点が増えグリップが増すことにより心線の乱れを抑える効果がある。得られる歯付ベルトの歯ピッチは0.5〜2mm、歯高さは0.5〜1mmが好ましい。
【実施例】
【0032】
次に、本発明に係る歯付ベルトの製造方法の具体的実施例を以下に示す。
実施例1
図2に示す内型(S1M300、成形部長さ120mm)を用意した。
【0033】
(スピニング工程)
内型の両端支持部に着脱リングを装着した後、この内型をスピニング装置の回転軸に装着した後、ガラス繊維コード(ECG150−2/0)を一方の着脱リングの巻始め領域の表面に粘着テープで貼り付けた後にスピニングテンション10N/本で40回だけ巻付け、続いて張力の安定した心線をベルト成型部で均一ピッチに巻付けし、そして他方の着脱リングの巻終り領域で40回だけ巻付け、粘着テープで貼り付けて末端固定処理してスピニングを終えた。
【0034】
続いて、ベルト成型部の両端部で心線を粘着テープでベルト成型部へ固定して心線止め部を形成した後、巻始め領域と巻終り領域に巻付けた心線をカッターで切断して除去し、各着脱リングを抜き取った。
【0035】
(成形)
この内型を第2外型の空所に設置した後、移動させてパーティングライン面上で第1外型に合体させ、型温を70°Cに調節した後、ウレタン系動的架橋熱可塑性エラストマーのペレット(リケンテクノス社製:商品名ウレタン系ハイパーアロイアクティマー)を射出成形機に投入し、溶融樹脂を射出してスプルー、分岐したランナー、末端ランナー、そしてフィルムゲート(相対向する2箇所)からキャビティへ流し込み、背厚e0.6mm、全厚0.94mmのベルトを成形した。第2外型を移動させた後、第2外型から歯付ベルトの内型を取り出した。ベルト成型部では両端部まで溶融樹脂が完全充填し、この領域での心線の乱れもなく、またベルト背面部でもウェルドマークやボイド、ヒケなどの欠陥がないベルトスリーブを得ることができた。
【0036】
(歯付ベルトに仕上げ工程)
後加工としてゲートカットを施しベルトスリーブをカット機に取り付けて、幅6mmの歯付ベルトを得た。歯付ベルトは歯型(S1M)、ベルト外周長300mm、歯部ピッチ1mm、歯高さ0.34mm、歯数300であり、心線の配列の乱れはなく、歯部ピッチ寸法、軸離、PLDの数値や精度は正常であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、歯ピッチ0.5〜2mm、歯高さ0.5〜1mmの事務機器用小型ポリウレタン製歯付ベルトの製造方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る歯付ベルト成形用金型装置の組み立て概略図である。
【図2】本発明で使用する内型の一部切り欠き正面図である。
【図3】内型の両端に位置する支持部に着脱リングを装着している状態の概略図である。
【図4】着脱リングを装着した内型上に心線をスピニングした後の概略図である。
【図5】ベルト成型部の両端部で心線の固定処理行った後に、巻始め領域と巻終り領域に巻付けた心線を切断し除去した状態の概略図である。
【図6】本発明の歯付ベルトの製造工程であってベルト歯部層と背面層同時一体成形でベルトを作製している工程の概略図である。
【図7】本発明の歯付ベルトの製造工程であって、射出成形を終えた状態の概略図を示す。
【図8】本発明の方法によって得られた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの一部断面斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 金型装置
2a 第1外型
2b 第2外型
3 内型
4 パーティングライン面
5 空所
7 ランナー
7a 末端ランナー
10 支持部
11 ベルト成型部
12 溝状部
13 突状部
14a 着脱リング
14b 着脱リング
15 ベルト成型部の端部
16 心線
17 ベルト背面部
18 ベルトスリーブ
46 フィルムゲート
S 巻始め領域
T 巻終り領域
P 心線止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線をベルト背面部に長手方向に延在させて埋設し、ベルト背面部の少なくとも一方に所定間隔をおいて歯部を設けた熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法において、
内型が長手方向に延在した溝状部と突状部を円周方向に沿って交互に有するベルト成型部とその両端の支持部からなり、上記支持部に着脱リングを装着してベルト成型部の外周面と同一面になるようにした後、心線を一方の着脱リングを巻始め領域としてベルト成型部へ、そして他方の着脱リングを巻終り領域にしてスパイラルに巻付けし、
ベルト成型部の両端部で心線の固定処理を行った後、巻始め領域と巻終り領域に巻付けた心線を切断し、着脱リングを抜取った後、
該内型を外型に設置し、
熱可塑性エラストマーからなる溶融樹脂をベルト成型部の幅をゲート幅とするように設定したフィルムゲートから心線の巻付け方向へ流し込んでベルトスリーブを成形し、
内型から脱型したベルトスリーブを切断して歯付ベルトに仕上げる、
ことを特徴とする熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
【請求項2】
巻始め領域と巻終り領域には、心線が10〜80回巻付けられる請求項1記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
【請求項3】
心線の巻付け幅をゲート幅とするフィルムゲートを相対向する位置に2箇所設け、熱可塑性エラストマーの流れ方向を心線の巻付け方向に一致させた請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
【請求項4】
末端ランナーをフィルムゲートに隣接して設け、該末端ランナーの幅をフィルムゲートと同一幅にした請求項1乃至3の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、そしてウレタン系動的架橋型熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至4の何れかに記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。
【請求項6】
熱可塑性エラストマーの流動特性としてキャピラリーフロー粘度が240℃、剪断速度1×10sec−1で10Pa・sec以下である請求項5記載の熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−68932(P2006−68932A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252072(P2004−252072)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】