説明

熱可塑性ポリ尿素、ならびにそれを用いた積層体および配線基板

【課題】耐熱性、低誘電性、絶縁性、金属密着性に優れた熱可塑性ポリ尿素を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示され、融点が200〜320℃である電気絶縁材料用熱可塑性ポリ尿素、および金属層と樹脂層からなる積層体において、前記樹脂層として、該電気絶縁材料用熱可塑性ポリ尿素を用いる積層体、および該積層体を用いた配線基板。
【化1】


(式中、Rは、脂肪族もしくは脂環族の二価基であり、炭素数が5〜15である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、電気特性、絶縁性および金属密着性に優れた熱可塑性ポリ尿素とそれを用いた積層体および配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信情報の急増に伴い、通信機の小型化、軽量化、高速化が強く望まれており、これに対応できる電気絶縁材料が要求されている。また、自動車電話、デジタル携帯電話等の携帯移動体通信、衛星通信に使用される電波としてはメガヘルツからギガヘルツ帯の高周波帯域のものが使用されている。これらの通信機器の急速な発展の中で、基板および電子素子の小型高密度実装化等が図られている。
【0003】
電子素子回路内では誘電損失といわれる伝送過程におけるエネルギー損失が生じ、熱が放出される。この誘電損失は低周波領域においては、誘電分極によって生じた双極子の電界の変化により生ずるものであり、高周波領域においてはイオン分極や電子分極によって生ずるものである。誘電損失は材料の比誘電率と誘電正接の積に比例し、比誘電率と誘電正接は、いずれも周波数の増加に伴って増大する。そこで、電子素子回路内の絶縁材料の誘電損失を少しでも小さくするためには、比誘電率や誘電正接の小さい材料を用いる必要がある。比誘電率や誘電損失の小さい電気絶縁材料を用いることで、電子素子回路内の発熱が抑制され、その結果、信号の誤作動も少なくなることから、高周波通信分野においては誘電損失の少ない材料が強く望まれている。
【0004】
このように電気絶縁性で誘電損失の少ない材料としては、ポリオレフィン、全芳香族液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が提案されている。
【0005】
しかしながら、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは絶縁性、電気特性(比誘電率、誘電正接)に優れているが、許容最高温度が130℃未満と耐熱性が低く、半田作業をおこなうと、変形するという問題がある。また金属密着性に劣るため、金属層と積層するためには、別途接着層を設ける必要がある。
【0006】
また、全芳香族液晶ポリエステルは、絶縁性、電気特性(比誘電率、誘電正接)、耐熱性、化学安定性に優れているが、配向性が顕著なため、通常の製膜方法では裂け易いフィルムしか得られず、非常に特殊な製膜方法を必要とし、高コストであるという問題がある。
【0007】
エポキシ樹脂は、絶縁性、耐熱性においては要求性能を満たしているが、比誘電率が3以上と比較的高いという問題がある。
【0008】
また、特許文献1では、芳香族ジアミンとジイソシアネートの蒸着重合による低誘電率のポリ尿素膜の形成技術が開示されているが、これは立体障害の大きな置換基を側鎖に有するモノマーの重合によるものであり、溶融成形加工ができないため、蒸着重合といった特殊な手法による製膜に限定されるという問題がある。また、得られるポリ尿素の比誘電率が4以上と高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−326388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、耐熱性、電気特性、絶縁性および金属密着性に優れた熱可塑性ポリ尿素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)一般式(1)で示され、融点が200〜320℃である電気絶縁材料用熱可塑性ポリ尿素。
【化1】

(式中、Rは、脂肪族もしくは脂環族の二価基であり、炭素数が5〜15である。)
(2)金属層と樹脂層からなる積層体において、前記樹脂層として、(1)記載のポリ尿素を用いる積層体。
(3)(2)記載の積層体を用いた配線基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性、電気特性、絶縁性および金属密着性に優れ、電気絶縁材料として好適な熱可塑性ポリ尿素を提供することができる。また、本発明のポリ尿素を用いた樹脂層と金属層からなる積層体は、樹脂層からの熱の発生が少なく、高周波通信分野において、配線基板等の用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ尿素は、一般式(1)で示される樹脂である。
【化2】

【0014】
一般式(1)におけるRは、脂肪族もしくは脂環族の二価基であり、炭素数が5〜15であることが必要である。炭素数が4以下の場合、ポリ尿素中の単位質量あたりの尿素結合の割合が増え、比誘電率が高くなるので好ましくない。一方、炭素数が16以上の場合、耐熱性が低下するので好ましくない。炭素数が5〜15である脂肪族の二価基を与えるジアミンとしては、1,5−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,8−ジアミノ−2−メチルオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が挙げられる。脂環族の二価基を与えるジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロペンタン、ビスアミノメチルノルボルナン等が挙げられる。中でも、炭素数が5〜12のジアミンが好ましく、原料調達の点から、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンがより好ましい。一般式(1)におけるRは、1種でもよいし、2種以上であってもよい。Rの種類を選択することにより、ポリ尿素の融点、比誘電率、誘電正接を制御することができる。比誘電率、誘電正接は、ポリ尿素中の単位質量当たりの尿素結合の割合が増加すると高くなる傾向にあり、尿素結合の割合が減少すると低下する傾向にある。
【0015】
一般式(1)におけるRとしては、本発明の特性を損なわない限り、脂肪族や脂環族の二価基以外の二価基を含有していてもよい。脂肪族や脂環族の二価基以外の二価基を与えるジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、ジクロロベンジジン、ジメチルベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンや、両末端ジアミン型ポリアルキレンオキシド、両末端ジアミン型ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0016】
本発明のポリ尿素は、直鎖状の樹脂である。そのため、熱可塑性であり、成形加工を容易におこなうことができる。これに対して、従来のポリ尿素は、ジアミンとジイソシアネートの重合により得られ、熱硬化性であり、成形加工が困難である。従来のポリ尿素は、2液混合の反応性接着剤として知られ、建材等の用途で用いられていた。このようなポリ尿素は、耐熱性、機械強度、耐薬品性に優れていることが知られている。しかしながら、ジアミンとジイソシアネートを原料とする方法では、重合反応性が大きすぎ、融点以上の温度下、溶融重合によるポリ尿素のペレット化、および樹脂成形、フィルム化、繊維化等は困難であった。低温で溶媒を用いる重合方法も、加工用途に適した高結晶性のポリ尿素を溶解するには、溶媒として強酸やフッ素化合物を用いる必要があり、工業的な利用は困難であった。低温固相状態でジアミンとジイソシアネートを重合した後、粉砕、溶融する等してペレット化することも可能であるが、その場合でも、尿素結合とイソシアネートの反応による分岐構造の生成が、ゲル発生の原因となり、ポリ尿素が低品質となるばかりでなく、溶融加工時の操業性が低かった。
【0017】
本発明のポリ尿素の融点は、200〜320℃とすることが必要であり、250〜320℃とすることが好ましい。ポリ尿素の融点が200℃未満の場合、半田作業に耐えられないので好ましくない。一方、ポリ尿素の融点が320℃を超える場合、融点と尿素結合の分解温度が近くなるため、成形加工等の溶融時にポリ尿素が分解しやすくなるので好ましくない。
【0018】
本発明のポリ尿素の重量平均分子量は、5000以上とすることが好ましく、10000以上とすることがより好ましく、15000以上とすることがさらに好ましい。重量平均分子量を5000以上とすることで、ポリ尿素の樹脂層としての強度が確保できると共に、金属密着性がより向上する。
【0019】
本発明のポリ尿素は、1MHz以上の周波数帯域、特に60MHz〜10GHzの周波数帯域において、比誘電率を3.0以下とすることができ、誘電正接を0.020以下とすることができる。本発明のポリ尿素は、比誘電率、誘電正接が共に低いため、上記のような高周波通信分野においても好適に用いることができる。
【0020】
本発明のポリ尿素は、絶縁性に優れており、その絶縁破壊電圧は、20kV/mm以上である。絶縁破壊強度が20kV/mm以上であれば、配線基板の絶縁層として、十分に使用することができる。
【0021】
本発明のポリ尿素の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器にジアミン化合物を投入した後、二酸化炭素を導入し、加熱重合する方法や、反応容器を二酸化炭素で満たしておき、そこにジアミン化合物を添加し加熱重合する方法が挙げられる。中でも、前者の方法が好ましい。これらの方法においては、二酸化炭素のかわりに、尿素、炭酸エチレン、ホスゲン、一酸化炭素等を用いてもよい。また、用いるジアミン化合物は、作製するポリ尿素に応じて、適宜選択すればよい。
【0022】
反応容器にジアミン化合物を投入した後、二酸化炭素を導入し、加熱重合する方法において、重合圧力は、1〜10MPaとすることが好ましく、5〜10MPaとすることがより好ましく、重合温度は、160〜260℃とすることが好ましく、180〜220℃とすることがより好ましい。重合時間は、重合温度に達してから1時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、10時間以上がさらに好ましい。なお、重合途中に、反応容器内の圧力を下げて水を系外に留去した後、二酸化炭素を用いて1〜10MPaとすることが好ましい。重合途中に、水を留去することにより、水による加水分解が効率的に抑制され、重合の進行を促進することができる。
【0023】
また、副原料として、末端封鎖剤や添加剤を加えてもよい。末端封鎖剤としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等のモノアミン、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等のモノカルボン酸が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の添加量は特に限定されないが、ジアミン化合物に対して5モル%以下が好ましい。添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリ尿素は、射出成形法、押出成形法等公知の成形方法により、各種成形体に加工することができる。また、Tダイ法、インフレーション法、熱プレス法等公知の製膜方法により、各種フィルムに加工することができる。
【0025】
本発明のポリ尿素は、金属層と樹脂層からなる積層体として用いることができる。本発明のポリ尿素は、前述するように、絶縁破壊電圧が高いため、絶縁層に適している。積層体を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、金属箔にポリ尿素フィルムを積層してラミネートする方法、ポリ尿素フィルムに真空蒸着法で金属被膜を形成する方法、金属箔に有機溶媒に溶解したポリ尿素を塗布乾燥してポリ尿素被膜を形成する方法が挙げられる。金属層の厚さは、5〜35μmとすることが好ましく、樹脂層の厚さは、10〜1000μmとすることが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔等が挙げられる。樹脂層には、機械的強度を付与するため、補強用充填材を加えてもよい。補強用充填材としては、シリカ粉、アルミナ粉、沈降性硫酸バリウム粉等が挙げられる。補強用充填材は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂層における補強用充填材の含有量は、樹脂層において10〜70質量%とすることが好ましい。
【0026】
本発明の積層体は、配線基板に用いることができる。この時、例えば、金属層をエッチングすることで、樹脂層上に回路を形成することができる。なお、樹脂層上に回路を形成させる場合、樹脂層上に金属ナノ微粒子インクを用いてパターン印刷して回路を形成させてもよい。また、2つ以上の配線基板を、樹脂層と金属層が交互に重なるよう熱融着することで、多層基板を作製することができる。本発明のポリ尿素は、金属密着性が良好であるため、容易に多層基板を作製することができる。
【0027】
本発明のポリ尿素は、耐熱性、絶縁性に優れ、比誘電率、誘電正接が低いため、共振器等の支持台、各種基板ないし電子部品のハウジング(例えば、アンテナ棒ハウジング)やケーシング等に用いることができる。また、フィルム状とし、基板樹脂と融着させることで、カバーレイとしても用いることができる。さらには、フィルムと金属箔を積層し、熱ラミネートしたものは、金属箔によるシールド効果を有したカバーレイとしても用いることができる。
【0028】
また、本発明のポリ尿素を用いた配線基板は、リジッドプリント配線基板およびフレキシブルプリント配線基板として用いることができるため、従来のガラエポ配線基板の代替品としての用途が期待される。具体的には、高周波用の電子機器(例えば、部品搭載用オンボード基板、回路内蔵基板等)や電子部品(例えば、共振器、フィルタ、コンデンサ、インダクタ、アンテナ等)の各種基板、チップ部品としてのフィルタ(例えば、多層基板であるCフィルタ)や共振器(例えば、トリプレート型共振器)として用いることができる。また、配線基板に放熱処理をおこなえば、100MHz以上の高周波数帯域用のCPU用オンボード基板にも用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、物性測定は、以下の方法によりおこなった。
【0030】
(1)数平均分子量、重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)換算の数平均分子量および重量平均分子量を測定した。
<測定条件>
屈折率計:東ソー社製RI−8010
カラム:東ソー社製TSKgel GMHHR−H 1本
溶媒:10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.4ml/分
測定温度:40℃
【0031】
(2)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて測定した。サンプル量を10mgとし、10℃から20℃/分で350℃まで昇温し、5分間保持後、500℃/分で25℃まで降温し、5分間保持後、400℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時の融解温度のピークを融点とした。
【0032】
(3)比誘電率、誘電正接
実施例1〜5と、比較例1、2、4については、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用いて成形し、長さ100mm×幅100mm×厚み1mmの成形片を作製した。シリンダ温度は、(融点+20℃)とし、金型温度は80℃でおこなった。
比較例3については、真空蒸着装置内で、内部圧力3×10−3Paで、1,4−フェニレンジイソシアネートと1,4−ジアミノベンゼンの等モル混合物を100℃で加熱し、シリコンウェハーに蒸着させ、さらにシリコンウェハーを真空蒸着装置から取り外した後、400℃で熱処理し、厚さ50μmのフィルムを作製した。その後、フィルムをシリコンウェハーから剥離した。
得られた成形片またはフィルムを用いて、アジレント・テクノロジー社製PNA−LネットワークアナライザN5230Aで、空洞共振摂動法(関東電子応用開発社製CP431)により、23℃、50%RH雰囲気下、1GHzにて測定した。なお、比誘電率はJIS L1094 B法に準拠し、誘電正接はASTM D150に準拠した。
【0033】
(4)絶縁破壊電圧
(3)で作製した成形片を用いて、JIS C2110に準拠して測定した。
【0034】
(5)金属密着性
実施例1〜5、比較例1、2、4については、樹脂を(融点+20℃)で溶融し、Tダイより50℃に設定した冷却ロール上に押出し、厚さが50μmのフィルムを作製した。
比較例3については、185℃、3MPaで5分間プレスし、厚さ50μmのフィルムを作製した。
その後、得られたフィルムと厚さが50μmの銅箔を、(融点+10℃)、3MPaで5分間熱プレスし、積層体を作製した。
積層体の樹脂面に粘着テープ(ニチバン社製F−12)を貼り付け、テープを剥離したときの樹脂層の剥がれの程度を、以下の基準で、目視で評価した。
○:全く剥がれがなかったか、剥がれた面積が全体の5%未満であった。
×:剥がれた面積が全体の5%以上であった。
【0035】
実施例1
1,10−デカンジアミン550g(3.2モル)、水58g(3.2モル)を内容積4Lの反応容器に入れ、容器内の空気を二酸化炭素で3回置換後、密閉して、内温が240℃になるように加熱し、圧力が3MPaになるように二酸化炭素を反応容器に流入させた。その後、反応容器の圧力を3MPaに保持し攪拌重合した。但し、開始から5、10時間後の2回、反応容器の圧力を0.1MPaに下げ、水を系外に留去させ、二酸化炭素の圧力を3MPaに上昇させる操作をおこなった。15時間重合した後、反応容器の圧力を0.1MPaまで下げ、攪拌を停止し、30分間静置した。その後、底排弁を開き、ギアポンプにて内容物をストランド状で払い出し、水冷後、ストランドカッターで切断し、ペレット状のポリ尿素を得た。
【0036】
実施例2〜5、比較例1〜3
使用した原料を表1のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリ尿素を得た。
【0037】
表1に、使用した原料および樹脂と、その特性値を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜5の樹脂は、比誘電率、誘電正接が低く、射出成形や製膜などの成形加工が容易であり、耐熱性、絶縁性に優れているため、電子絶縁材料用として好適に用いることができる。また、本発明のポリ尿素は、金属密着性にも優れているため、配線基板の絶縁層としても好適に用いることができる。
【0040】
比較例1の樹脂は、一般式(1)におけるRの炭素数が本発明の範囲よりも少なかったため、比誘電率、誘電正接が高く、電子絶縁材料用としては不適であった。
比較例2の樹脂は、一般式(1)におけるRの炭素数が本発明の範囲よりも多かったため、耐熱性が低く、電子絶縁材料用としては不適であった。
比較例3の樹脂は、一般式(1)のおけるRが芳香族炭化水素のみで構成されていたため、比誘電率、誘電正接が高く、電子絶縁材料用としては不適であった。
比較例4は、ポリプロピレンを用いたものであるが、耐熱性が低く、電子絶縁材料用としては不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示され、融点が200〜320℃である電気絶縁材料用熱可塑性ポリ尿素。
【化1】

(式中、Rは、脂肪族もしくは脂環族の二価基であり、炭素数が5〜15である。)
【請求項2】
金属層と樹脂層からなる積層体において、前記樹脂層として、請求項1記載のポリ尿素を用いる積層体。
【請求項3】
請求項2記載の積層体を用いた配線基板。

【公開番号】特開2012−246339(P2012−246339A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116972(P2011−116972)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発うち研究開発項目4 化学品原料の転換・多様化を可能とする革新グリーン技術の開発」「高効率熱化学変換によるバイオマス由来の脂肪族、芳香族化合物からのモノマー原料及び樹脂原料製造技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】