説明

熱可塑性複合材料

【課題】 溶融成形した場合でも無機材料が熱可塑性樹脂中に均質に分散することが可能で、ゲル化や発泡等も実用上問題のない程度まで低減されている熱可塑性複合材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】 カップリング剤で表面修飾されたナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤によりラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合させて熱可塑性樹脂を形成させる、熱可塑性複合材料の製造方法であって、前記表面修飾の反応を生じる前記カップリング剤及びナノ無機粒子の官能基のうち当該反応を生じていない残存官能基を、前記リビングラジカル重合の前又は後に、クエンチ剤の官能基と反応させる、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
無機材料はそれぞれの特徴や要求特性を考慮し、様々なタイプのものが工業用に使用されている。例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素等のケイ素系セラミックス類は機械的強度や化学的安定性、熱的安定性に優れた材料である。しかしこれらの無機材料は一般に成形加工性に乏しく、硬くてもろい。また、有機重合体との密着性も悪く、その用途が制限されている。
【0003】
他方、有機重合体は一般に成形加工性や柔軟性には優れているものの硬度や熱的安定性は無機材料と比較するとかなり劣る。このため、無機材料と有機重合体の特性を相補い、長所を活かす材料の開発が切望されている。
【0004】
その一手段としてガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機系の強化剤や充填剤を有機重合体に混合、分散させる物性改質が広く行われている。このような有機−無機複合材料は、無機材料が有する硬度、強度、耐熱性、耐候性等の優れた特性を有機重合体に付与する目的で検討されている。
【0005】
しかし、無機材料と有機重合体は一般に非相溶であり、分散状態をミクロに制御することは容易ではない。また、改質効果を上げるためには無機材料をより細かく、より多く、できるだけ均質に分散することが重要であるが、無機材料は微粒子になるほど凝集が起こりやすく、均質分散が困難となる。更に無機材料の添加量には限界があり、一定量を超えると良好な複合材料が得られなくなり、成形性が悪くなったり、もろくなったり、クラックが生じやすくなる傾向がある。
【0006】
このようなことから高性能な有機−無機複合材料を作製するためには、無機材料と有機重合体を単に混合、分散するだけでは困難であり、新しい技術の開発が必要である。高性能な有機−無機複合材料を作製する技術のひとつとして有機重合体と無機元素を直接結合させる研究が行われている。この方法では、ナノサイズの無機材料が均質に微分散しやすくなるだけでなく、機械強度などのその他の諸物性も大幅に向上できる可能性があると考えられる。
【0007】
そのひとつに金属アルコキシド化合物を主原料としてゾル−ゲル反応を用いることによりSi、Ti、Zr等の無機元素を材料骨格に導入し、有機重合体と無機材料が均質に微分散した材料の開発が盛んに行われている。しかしながら、ゾル−ゲル法はアルコキシ金属化合物類の加水分解、縮合反応によって合成されるため、生成する水やアルコールなどの揮発成分を除去することが必要で、必然的に薄膜での使用に限定される。また、無機物には水酸基やアルコキシ基が残存し、実使用時に発泡などの問題が生じる。
【0008】
このように、有機重合体とナノ無機粒子を直接結合させた材料であっても基板上に塗布して固める硬化法やゾル−ゲル法によって有機無機複合材料を合成することが一般的で、成形品の形状、成形方法や有機重合体の種類が極めて限定的であった。
【0009】
これら問題を解決する方法として、あらかじめ合成されたナノサイズの微粒子表面に反応性化合物を結合させて有機重合体と結合させる方法が種々検討されている。
【0010】
例えば、特許文献1ではカーボンブラック微粒子と、そのカーボンブラック表面の官能基と反応する反応性基を有するポリマーを溶融混練することで、カーボンブラックとポリマーが共有結合で繋がれた複合材料を作製できることが報告されている。
【0011】
また、特許文献2では、リビングラジカル重合の開始基をナノ無機粒子顔料表面に結合させた後、リビングラジカル重合を行うことでナノ無機粒子表面上から有機重合体を成長させ、複合体を作製する手法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−154327号公報
【特許文献2】特開2006−16488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1においては、全ての官能基を溶融混合工程で反応させることは困難で分子量が安定しない問題があった。また、成形体となった後で残存官能基が光や熱などの影響によって反応し、複合体がゲル化する、あるいは発泡する問題が生じるため、熱可塑性材料としての使用には問題があった。
【0014】
特許文献2においては、ナノ無機粒子表面上に高密度で有機重合体を結合させることが可能で、ナノ無機粒子の分散性に優れる複合材料が得られるが、開始基を有するナノ無機粒子の合成、洗浄などの操作が煩雑で大量合成プロセスを構築することは困難である。また、各ポリマー鎖の一方の末端は、ナノ無機粒子に固定化されているため、他のポリマー鎖との絡み合いが小さくもろい複合材料となる。そのため、複合体自身あるいは他樹脂へ混合した場合でも、その成形体の強度に問題が生じる。
【0015】
もっとも簡便な有機重合体とナノ無機粒子の複合化法は、ラジカル反応性二重結合がナノ無機粒子表面に結合した表面修飾ナノ無機粒子の存在下で、有機重合物をラジカル重合で合成することで複合材料を作製する方法である。例えば、Polymer.49.5636(2008)では、ラジカル反応性二重結合を表面に結合したシリカ粒子の存在下で、リビングラジカル重合をすることで、有機重合体とナノ無機粒子が結合した複合材料が得られることが報告されている。
【0016】
しかしながら、表面修飾ナノ無機粒子を調整するときに不純物が生成するため、不純物を除去する煩雑な操作が必要となる。また、不純物を除去した場合においても、ナノ無機粒子表面に反応性官能基が残存するため、加熱乾燥や成形加工の工程でゲル化する、あるいは成形体が発泡するなどの問題があるため、熱可塑性複合材料として使用することは困難であった。
【0017】
これらの問題のため、ナノ無機粒子を使用した複合材料では、成形加工が困難で、薄膜での使用に限定されるため、ナノ材料の適用範囲が極めて限定的であった。
【0018】
そこで、本発明の目的は、溶融成形した場合でも無機材料が熱可塑性樹脂中に均質に分散することが可能で、ゲル化や発泡等も実用上問題のない程度まで低減されている熱可塑性複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以下の[1]〜[10]に関する。
[1]カップリング剤で表面修飾されたナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤によりラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合させて熱可塑性樹脂を形成させる、熱可塑性複合材料の製造方法であって、前記表面修飾の反応を生じる前記カップリング剤及びナノ無機粒子の官能基のうち当該反応を生じていない残存官能基を、前記リビングラジカル重合の前又は後に、クエンチ剤の官能基と反応させる、製造方法。
[2]前記ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルである、[1]記載の製造方法。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリル(メタアクリルと表記する場合がある)をいい、同様の化合物も同義である。
[3]前記カップリング剤は、ラジカル反応性二重結合を有するカップリング剤である、[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]前記ナノ無機粒子は、ケイ素、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムの酸化物からなる、平均直径が50nm以下のナノ無機粒子である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記リビングラジカル重合は、原子移動ラジカル重合である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記リビングラジカル重合は、可逆的付加解裂連鎖移動重合である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記リビングラジカル重合における前記ラジカル重合性モノマーの転化率が、60%以上95%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]ラジカル重合性モノマーを重合してなる重合体中に平均粒子径が100nm以下のナノ無機粒子が分散された複合材料であって、重合体の数平均分子量Mnが10,000〜500,000g/molで、分子量分布Mw/Mnが1.1〜1.5の範囲にあることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法で製造された熱可塑性複合材料。
[9]空気下、200℃1時間の加熱により発泡を生じない[8]記載の熱可塑性複合材料。
[10][8]又は[9]記載の熱可塑性複合材料からなる成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、有機重合物とナノ無機粒子がゲル化せずに複合化し、溶融成形した場合でもナノ無機粒子の凝集が抑制されて透明であり、加熱による発泡等の問題が生じない熱可塑性複合材料の製造方法が提供される。
【0021】
本発明で合成される熱可塑性複合材料は、リビングラジカル重合で合成されることによって、ゲル化が抑制され、重合物とナノ無機粒子間の結合が形成されることによって、溶融混練してもナノ無機粒子が微分散した状態で存在する。また、ゾル−ゲル法で問題となる揮発成分による成形品の発泡も無いことから、溶融成形が可能で、ナノ複合材料の適用範囲が広がり、厚膜で複雑な形状の有機無機の熱可塑性複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1で示したコロイダルシリカ12wt%含有ポリメタアクリル酸メチル複合材料を射出成形した後のTEM写真である。
【図2】実施例2で示したコロイダルシリカ31wt%含有ポリメタアクリル酸メチル複合材料を射出成形した後のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、カップリング剤で表面修飾されたナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤によりラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合させて熱可塑性樹脂を形成させる、熱可塑性複合材料の製造方法に関するが、以下の(1)及び/又は(2)を実施することを特徴としている。
(1)ナノ無機粒子をカップリング剤で表面修飾させた後、この表面修飾の反応を生じるカップリング剤及びナノ無機粒子の官能基のうち当該反応を生じていない残存官能基を、クエンチする(クエンチ剤の官能基と反応させる)。
(2)カップリング剤で表面修飾されたナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤によりラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合させて熱可塑性樹脂を形成させた後、表面修飾の反応を生じるカップリング剤及びナノ無機粒子の官能基のうち当該反応を生じていない残存官能基を、クエンチする(クエンチ剤の官能基と反応させる)。
【0024】
なお、(1)(2)のいずれにおいても、クエンチされる官能基は、表面修飾に関与する官能基であり、例えば、カップリング剤に表面修飾に関与しない官能基が存在していても、当該官能基はクエンチする必要はない。
【0025】
まず、本発明で使用されるナノ無機粒子について説明する。ナノ無機粒子はそのサイズがナノ領域であれば(すなわち平均粒径がナノメータのオーダーにあれば)よく、ナノ無機粒子を構成する化学種は任意である。
【0026】
ナノ無機粒子としては、ナノ無機粒子表面に表面修飾化合物(カップリング剤、クエンチ剤)と反応する官能基を有しているものであるか、酸や塩基、プラズマ照射等で処理をして当該官能基を結合させたものを使用してもよい。
【0027】
例えば、Si、Ti、Zr、Al等の酸化物、窒化物、元素単体、金属、合金等の無機物であってよい。無機酸化物の具体例としては、酸化ケイ素(シリカ、シルセスキオキサン類)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等が挙げられる。また、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラック等の炭素材料であってもよい。
【0028】
ナノ無機粒子の形状や結晶系はいかなるものでもよく、大きさ(平均粒径)は好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下である。100nmより大きいと、光学材料として使用した時に、光の散乱などの問題が発生する場合がある。また、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する可能性が
あるため、1nm以上のものが好ましい。
【0029】
これらのナノ無機粒子は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。さらにその特性において、導体、半導体、絶縁体、磁性体等の各種のものでもよい。
【0030】
ナノ無機粒子を表面修飾する表面修飾化合物としては、カップリング剤と、クエンチ剤の2種類に分けられる。
【0031】
カップリング剤としては、ナノ無機粒子表面と反応する官能基を有するシラン系、チタン系、アルミニウム系のカップリング剤であり、ラジカル反応性二重結合を有していてもよい。カップリング剤は、ナノ無機粒子表面と反応する官能基とラジカル反応性二重結合の両方を有するものが特に好適である。
【0032】
例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3−メタクリロキシエチルイソシアネート等が好適なカップリング剤として使用される。これらのカップリング剤は、ナノ無機粒子と直接結合していてもよく、直接結合したカップリング剤と結合して、2個以上連結したものでもよい。カップリング剤によっては、加水分解を促進するために水を導入してもよく、ナノ無機粒子表面との反応を促進させるために、触媒を使用してもよい。
【0033】
クエンチ剤としては、表面修飾ナノ無機粒子および/またはカップリング剤に残存する官能基と反応する化合物が使用される。具体的には、ナノ無機粒子表面のシラノール基、カップリング剤のシラノール基、シリルメトキシ基、シリルクロライド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基、ホスホニウム基、スルホニウム基、あるいはウレタン結合などがクエンチされる官能基としてあげられる。
【0034】
クエンチ(「クエンチ反応」と呼ぶ場合もある)とは、上記(1)及び/又は(2)のタイミングで、上記の様な加熱、光、あるいは水などの影響で反応する可能性がある官能基を、反応しない状態にすることをいう。
【0035】
一般的に無機酸化物とラジカル反応性カップリング剤の反応をおこなった場合、無機表面の全ての水酸基を反応させることは極めて困難であって水酸基は一部残存する。また、カップリング剤の種類によっては、水酸基やアルコキシ基などの官能基が表面修飾無機酸化物に残存する。また、未反応のカップリング剤は、ナノ無機粒子表面と反応しやすい官能基を残存したまま重合過程で有機重合体に取り込まれる。これら残存官能基は、加熱乾燥、加熱加工する工程や、成形体が吸湿することなどによってアルコールや水などを生成し、成形体が発泡する要因となる。また、複合材料がゲル化したり、ナノ無機粒子が凝集する要因にもなりうる。そのため、本発明の熱可塑性複合材料として使用する場合は、クエンチを行って、この反応を抑制することが極めて重要となる。
【0036】
クエンチ剤となりうる化合物としては、立体障害が小さく、ナノ無機粒子表面の官能基および/またはカップリング剤の官能基との反応性が高い化合物が好適に使用される。例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライドなどが挙げられる。
【0037】
ナノ無機粒子表面やカップリング剤の官能基が−Si−OHであった場合のクエンチ剤との反応を示すと、ヘキサメチルジシラザンとの間では、−Si−OH+(CHSi−NH−Si(CH=−Si−O−Si(CH+(CHSi−NHという反応が生じると考えられ、トリメチルシリルクロライドとの間では、−Si−OH+Cl−Si(CH=−Si−O−Si(CH+HClという反応が生じると考えられる。
【0038】
クエンチ剤は、2種類以上併用してもよい。また、クエンチ反応によって発生する塩酸などの酸と反応する化合物、例えばトリエチルアミンなどを併用して用いることもできる。更にこの反応は、ナノ無機粒子をラジカル反応性カップリング剤で表面処理した後に行うこともできるし、重合後に行うこともできる。
【0039】
表面改質ナノ無機粒子を調整する方法としては、ナノ無機粒子が凝集しない条件で行われることが好ましい。例えば、本出願で使用しているコロイダルシリカの有機溶媒分散液を表面修飾する場合は、コロイダルシリカの重量比率が50wt%以下、好ましくは40wt%以下で反応することが好ましい。また、超音波照射、マイクロ波照射などを実施してもよい。反応条件は、表面修飾化合物とナノ無機粒子表面との反応性に依存するため、適宜最適な表面修飾条件を選択することができる。
【0040】
ナノ無機粒子と表面修飾化合物とを溶媒中で反応させる際、溶媒は特に限定されず、ナノ無機粒子と表面修飾化合物を溶解または分散させることのできるものを任意に使用可能である。無機酸化物の表面修飾反応を行う場合、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐プロパノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソールなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒;ペンタン、ヘキサン、オクタン、2‐エチルヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒などを挙げることができる。これらのうち生成する表面修飾無機酸化物の分散性が良好である点で、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0041】
カップリング剤およびクエンチ剤でナノ無機粒子表面を修飾した後、粒子表面と反応していない遊離のカップリング剤、クエンチ剤、あるいはクエンチされた化合物が存在している場合は、洗浄除去することができる。洗浄方法としては、ナノ無機粒子同士が凝集しない条件で行われることが好ましい。例えば、ヘキサンなどの貧溶媒を表面修飾ナノ無機粒子分散液に加えて、表面修飾ナノ無機粒子を沈殿させ、上澄みを除去する操作を数回繰り返すことで、不純物のない表面修飾ナノ無機粒子が得られる。
【0042】
遊離のラジカル反応性カップリング剤が存在している場合でも、クエンチによって反応性官能基が反応しない状態になっているものであれば、洗浄精製することなく、そのまま重合に使用することができる。例えば、コロイダルシリカとカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランの反応の後、トリメチルシリルクロライドなどのクエンチ剤で処理することによって、カップリング剤のメトキシシラン部位を反応しない状態にすることができるため、有機重合物中に遊離のカップリング剤が取り込まれた場合でもゲル化や発泡などの問題が生じない。この場合、経済的にも極めて好ましい。
【0043】
次に、熱可塑性複合材料について説明する。
【0044】
本発明における熱可塑性複合材料は、好適には、ナノ無機粒子の表面がラジカル反応性二重結合で修飾された表面修飾ナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤からモノマーをリビングラジカル重合することで合成することができる。
【0045】
遊離の開始剤とは、開始剤がナノ無機粒子表面に共有結合や配位結合で固定化されていないことを意味する。リビングラジカル重合の開始剤をナノ無機粒子表面に固定化した後、ポリマーを合成する方法も知られているが、一つのナノ無機粒子に重合物が結合した複合体同士の結合が殆ど無く、またポリマー同士の絡み合いが少ないため成形体としての強度を保つことが困難である。
【0046】
本発明における熱可塑性複合材料については、各ポリマー鎖の長さがほぼ均一な重合物を合成することができるリビングラジカル重合で合成されるため、ポリマー鎖の長さで複合体同士の結合を制御することが可能である。また、二分子停止反応がほとんど起こらないため、複合体同士の過剰な結合を制御でき、ゲル化せずに複合材料を合成することが可能となる。
【0047】
一方、フリーラジカル重合で合成した場合は、二分子停止反応が頻発することで、表面修飾ナノ無機粒子が架橋点となって超高分子量体、いわゆるゲルが生成する。ゲルが複合材料中に存在すると、機械強度、溶融流動性、光学特性等に問題が生じるだけでなく、製造工程でも反応槽に付着するなどの問題が生じるため本発明の熱可塑性複合材料としては好ましくない。そのため、二分子停止反応が起こらない条件で重合することが重要となる。
【0048】
生成するゲルに関しては、二つの方法で検知することができる。一つ目の方法は、まず重合液をメタノールなどの貧溶媒に加えて複合材料を析出させ、室温で乾燥後、テトラヒドロフランなどの良溶媒中に溶解・分散させ、約0.1wt%液を調整する。この溶液を0.2ミクロンの細孔を有するフィルターを透過させた時に、不溶分がある、もしくは目詰まりする、あるいは透過前と透過後の分子量が変化する場合は、ゲルが重合中に生成したと判断できる。
【0049】
実際に、フリーラジカル重合で合成された複合材料は、数平均分子量Mnが200万以上のゲルが生成するため、フィルターを透過させた後、このゲルが除去されることで分子量が変化する。もう一つの方法は、析出させた複合材料を140℃で真空乾燥し、230℃以上の温度で射出成形した後、上記方法と同様に希釈液を作製し、フィルターを透過させることでゲルの生成を判断できる。実際に、クエンチをしない場合などは、残存官能基が溶融混練過程で反応してゲルが生成する。これら両方の方法で、ゲルが生成していることを判断した。
【0050】
発泡に関しては下記二つの方法で判断した。第一の方法は、140℃で真空乾燥することで得られた複合材料を、熱プレス機で加熱した時に直径2mm以下の微発泡が多数存在する場合を発泡と定義した。240℃に予備加熱した熱プレス機へ複合材料を導入して、4分間無加圧で加熱し、1mm厚の型枠を用いて5分間、5MPaで加圧した後、室温まで冷却した状態で観察した。クエンチ処理と表面改質ナノ無機粒子の精製のどちらも行っていない複合材料では、微発泡が観察された。また、5〜6回熱プレス操作を繰り返すと、発泡しない複合材料となった。加熱されることによって残存官能基が反応し、揮発成分が生成することで発泡したためと考えられる。第二の方法は、230℃以上の温度で射出成形することで作製した3mm厚の成形品を空気下、200℃で1時間加熱した状態で発泡を観察した。これら両方の方法で、発泡していることを判断した。
【0051】
本発明において、リビングラジカル重合で合成される重合物は、射出成形や押出し成形加工が容易である点で、数平均分子量Mnが10,000〜500,000g/molで、分子量分布Mw/Mnが1.1〜1.5であることが好ましい。重合物が500,000より大きいと、その複合材料は更に大きな分子量となり、溶融流動性が極端に低下する恐れがある。また、10,000より小さいと成形体として十分な強度が得られない可能性がある。分子量分布は、複合体同士の過剰な結合を抑制するために、二分子停止反応が起こりにくい条件で合成されるため、必然的に1.5以下となる。1.5より大きい場合は、何らかの停止反応が重合中に起こっている可能性があるため、複合材料がゲル化する可能性が高くなる。ここで数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により決定される値であり、分子量分布はMw/Mnとして計算される値である。また、重合物の分子量は、公知のJ.Polym.Sci,Polymer.Physics,40,2667(2002)に記述されているように、HF溶液で処理した後、ポリマーのみをGPCで測定することで確認することができる。
【0052】
リビングラジカル重合法としては、主に3種の方法が知られている。具体的には、ニトロキシラジカルを使用する方法(NMP;例えば特開昭60−89452号公報)、原子移動ラジカル重合法(ATRP;例えば特表平10−509475号公報)、可逆的付加解裂連鎖移動法(RAFT;例えば国際公開第98/01478号パンフレット)がある。重合開始剤の汎用度、適用可能なモノマーの種類の多さ、重合温度等の点から、原子移動ラジカル重合法(以下「ATRP」と称す)と可逆的付加解裂連鎖移動法(以下「RAFT」と称す)がより好ましい。
【0053】
また、近年、重合速度の改善、操作の簡便性などを目的として還元剤を添加してATRP系中に生成した2価銅を連続的に活性な1価銅に還元するARGET ATRP法が報告されている(例えば、Angew Chem,Int Ed,45(27),4482(2006))。この還元剤の添加によって2価銅と1価銅の割合が平衡に保たれるため、モノマーが消費されても充分な重合速度が維持される。更に、適切な還元剤を添加すれば、使用する銅の量が0.1モル%以下程度にまで減少できるため、好ましい重合法である。この手法で使用される還元剤は、金属を含む金属触媒がラジカル成長種を発生させる活性な状態に還元できるものを適宜選択すればよい。
【0054】
重合は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の方法で行うことができる。
【0055】
溶媒は、表面修飾ナノ無機粒子の分散性と重合触媒の溶解性が良好な溶媒が好ましい。溶媒は、2つ以上組み合わせて使用しても良い。
【0056】
溶媒の使用量は、例えば、モノマー仕込み量100質量部に対して0〜2000質量部の範囲内が好ましく、10〜1000質量部の範囲内がより好ましい。重合を精密に短時間で合成する場合は、50〜300質量部の範囲内が最も好適である。これら各範囲の上限値は、重合速度低下の抑制、重合制御の点で意義がある。また下限値は、溶液粘度の制御の点で意義があり、実際に50質量部以下の溶媒量では、適切な転化率に達する前に溶液粘度が急激に上昇する問題が生じる。
【0057】
重合開始剤は、一般的にリビングラジカル重合の開始剤基として知られている基を有する化合物が好適に使用できる。例えば、ATRPでは、一般にハロゲン化アルキル基もしくはハロゲン化スルホニル基を有する化合物を開始剤として使用している。また、RAFTでは、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などが使用される。本研究で使用される開始剤は、ナノ無機粒子表面に共有結合で固定化されたものでは無く、重合系中に遊離の状態で存在するものを使用する。
【0058】
重合には触媒を使用することが好ましい。ATRPの場合、触媒の種類は、一般的に知られている各種のものの中から、重合法に応じて適宜選択すればよい。例えば、重合法としてATRPを用いる場合は、Cu(0)、Cu、Cu2+、Fe、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+等の金属を含む金属触媒を使用できる。分子量や分子量分布の高度な制御を達成する為には、特にCu+を含む1価の銅化合物あるいは0価の銅が好ましい。その具体例としては、Cu(0)、CuCl、CuBr、Cu2O等が挙げられる。触媒の使用量は、重合開始剤1モルに対して、通常0.01〜100モル、好ましくは0.01〜50モル、更に好ましくは0.01〜10モルである。
【0059】
また、上述した金属触媒には、通常は有機配位子が使用される。金属への配位原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子等が挙げられる。中でも、窒素原子、リン原子が好ましい。有機配位子の具体例としては、2,2’−ビピリジンおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン(Me6TREN)、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類の重合を行う場合は、2,2’−ビピリジンおよびその誘導体が好ましい。
【0060】
金属触媒と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で混合させてもよいし、予め混合して重合系中へ添加してもよい。特に、銅化合物を使用する場合は、前者の方法が好ましい。
【0061】
RAFT法では、触媒として連鎖移動剤となるジチオカルボン酸エステルといった有機硫黄化合物を使用することができる。
【0062】
重合温度は、例えば、ATRP法、RAFT法を用いる場合は、通常−50℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、更に好ましくは20℃〜130℃である。アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類の重合を行う場合は、50〜130℃で行うと、比較的短時間で精密重合することができる。
【0063】
重合は、モノマーの転化率が60%以上の状態で行われることが好ましい。転化率が60%より低いと経済的に問題があり、また95%より高いと、リビングラジカル重合においても、二分子停止反応が起こるため、ゲルが生成する可能性が高くなる。好ましくは、70〜95%、更に好ましくは80〜95%である。
【0064】
本発明で用いられるラジカル重合性モノマーとしては、ATRP法、RAFT法で重合可能な付加重合性単量体であれば良く、例えば、エチレン;ブタ−1,3−ジエン、2−メチルブタ−1,3−ジエン、2−クロロブタ−1,3−ジエンのようなジエン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルのようなビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなどのN-ビニル化合物;アリルアルコール、塩化アリル、酢酸アリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなアリル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ素アルキル基を有する化合物等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。ラジカル重合において好ましいのは、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルである。透明性のあるハイブリッド材料を作製する場合は、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類が特に好ましい。
【0065】
熱可塑性複合材料を構成する熱可塑性樹脂は、ブロック、グラフト、スター、ラダー型等の種々の構造をとっても良い。その場合、リビングラジカル重合以外の重合法との併用であっても良い。目的に応じて、重合物の構造やコモノマーを選択することによって、ナノ無機粒子の分散や機械強度の向上等の物性向上ができる。
【0066】
特に、ブロックポリマーでゴム成分を導入することは、硬くて脆くなりやすい複合材料の機械強度を改善するためには好ましい。例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロックポリマーは、自己組織的にミクロ相分離構造を形成することから、透明性を保ったまま耐衝撃性等の機械強度が改善される。
【0067】
また、ブロックポリマーとナノ無機粒子との複合化において、どちらか一方のブロックセグメントとナノ無機粒子が主に結合することで、ナノ無機粒子の配列を制御することもできる。例えば、リビングラジカル重合で合成した末端にハロゲンが結合したポリメタクリル酸メチルを開始剤として、表面修飾ナノ無機粒子存在下でアクリル酸ブチルを重合することで、ポリアクリル酸ブチルがナノ無機粒子と複合化し、ポリメタクリル酸メチルセグメントは複合化していないブロックポリマーを得ることができる。このブロック複合材料は、組成比を変えることによって海島構造、ラメラ構造、シリンダー構造等の相分離構造を形成することが可能で、ナノ無機粒子を局所的に配列させることができる。ナノ無機粒子がポリアクリル酸ブチルセグメントと複合化した場合は、機械強度の向上等に有効であり、ポリメタクリル酸メチルと複合化した場合は、硬度、ガラス転移温度の向上、耐傷付性、機械強度の改善等に有効である。また、どちらの場合も少量のナノ無機粒子で、複合化による効果を選択的に向上させることができることから、経済的にも優れた方法である。
【0068】
この他にも、ナノ無機粒子との親和性の高い親水性の置換基や、ホスホニウム基、スルホニウム基を有するモノマーをグラフトし、分散性・相溶性を向上する事もできる。
またグラフトされるポリマー鎖にはエポキシ基、イソシアネート基などの反応性の置換基を持たせても良く、ポリマーをグラフトした後に、ポリマー鎖に導入された反応性の置換基を利用して様々な反応を行う事ができる。
更に、熱可塑性複合材料には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安
定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤、または界面活性剤などのナノ無機粒子分散補助剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0069】
本発明における熱可塑性複合材料の成形法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、キャスト成形等、一般の熱可塑性樹脂材料の成形法を採用することができる。
本発明で得られる熱可塑性複合材料は、硬化性複合材料やゾルゲル法による複合材料などの従来の薄膜分野以外にも、成形体として光学材料、電子材料、接着剤、ハードコート等の分野で好適に利用できる。特に、熱可塑性複合材料の優れた光学特性を利用した光学部品、例えば、レンズ、光導波路、光ディスク、反射防止膜、導電膜などに好適に利用される。
【実施例】
【0070】
本発明を実施例に基づいて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
[分析方法]
(1)分子量(Mn、Mw、Mw/Mn)
東ソー社製のHLC−8020にカラム(TSKgel GMHXL、40℃)を2本接続し、RI検出器が取り付けてあるGPC装置で測定した。テトラヒドロフランを移動相に用い、アルファメチルスチレンダイマーを内部標準とした。分子量の計算は、ポリメタクリル酸メチルスタンダード(東ソー社製)を使って検量線を作成し、ポリメタクリル酸メチル換算にて行った。
【0072】
(2)ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製のDSC−7を使って、JIS−K−7121に準拠して求めた。具体的には、窒素下、10℃/minで室温から250℃まで昇温し、その後10℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで250℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度をTgとした。
【0073】
(3)熱可塑性複合体中のナノ無機粒子重量測定
島津製作所製の熱重量測定装置TGA−50を使って、1%酸素含有窒素気流下で25℃から20℃/minで500℃まで加熱し、その温度で1時間放置した後の重量を測定した。
【0074】
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)
Leica社製のREICHRT ULTRACUT Sで、厚さ約45nmの超薄切片を作製し、JEOL社製のJEM−2100で観察した。
【0075】
(5)全光線透過率
スガ試験機社製の積分球式測定装置を使って、JIS−K−7361−1に準拠して求めた。
【0076】
[合成方法]
シリカは、コロイダルシリカ30wt%の酢酸ブチル分散液である日産化学社製NBAC−STを使用した。ジルコニアは、コロイダルジルコニア20wt%のメチルエチルケトン分散液である日産化学社製OZ−S30Kを使用した。シリカ、ジルコニアともに表面水酸基の量は、2.18mmol/gと仮定して計算した。
【0077】
表面改質ナノ無機粒子の合成方法
[合成例1;表面改質コロイダルシリカの合成方法]
窒素置換した1Lフラスコに、30分間窒素バブリングしたNBAC−ST(327.9g)と、カップリング剤である3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン(以下、MSと示す。9.4ml、43.8mmol、コロイダルシリカ表面水酸基量の20mol%)を導入して、室温で24時間撹拌することでMS表面改質コロイダルシリカ分散液を合成した。
【0078】
[合成例2;コロイダルシリカとカップリング剤の反応]
カップリング剤を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、TSと示す。10.4ml、43.8mmol、コロイダルシリカ表面水酸基量の20mol%)に変えた以外は、合成例1と同様な方法でTS表面改質コロイダルシリカ分散液を合成した。
【0079】
[合成例3;コロイダルシリカとカップリング剤の反応]
カップリング剤を3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン(以下、CSと示す。9.5ml、43.8mmol、コロイダルシリカ表面水酸基量の20mol%)を導入して、24時間加熱還流した以外は、合成例1と同様な方法でCS表面改質コロイダルシリカ分散液を合成した。
【0080】
[合成例4;コロイダルジルコニアとカップリング剤の反応]
OZ−S30K(501.7g)に変えた以外は、合成例1と同様な方法でMS表面改質コロイダルジルコニア分散液を合成した。
【0081】
[合成例5;クエンチ反応]
合成例1で調整したMS表面改質コロイダルシリカ分散液に、窒素下、トリメチルシリルクロライド(2.8ml、21.9mmol)、トリエチルアミン(3.1ml、21.9mmol)を加えて、室温で12時間攪拌することで、残存官能基のクエンチ反応を行った。
【0082】
[合成例6;クエンチ反応]
合成例2で調整したTS表面改質コロイダルシリカ分散液に、窒素下、トリメチルシリルクロライド(16.7ml、131.2mmol)、トリエチルアミン(18.3ml、131.2mmol)を加えた以外は、合成例5と同様な方法で残存官能基のクエンチ反応を行った。
【0083】
[合成例7;クエンチ反応]
合成例3で調整したCS表面改質コロイダルシリカ分散液に、窒素下、ヘキサメチルジシラザン(9.1ml、43.8mmol)を加えた以外は、合成例5と同様な方法で残存官能基のクエンチ反応を行った。
【0084】
[合成例8;クエンチ反応]
合成例4で調整したMS表面改質コロイダルジルコニア分散液にした以外は、合成例5と同様な方法で残存官能基のクエンチ反応を行った。
【0085】
[合成例9;表面改質コロイダルシリカの精製]
合成例5でクエンチ処理したMS表面改質コロイダルシリカ分散液50mlを、メタノール/水400ml(3/1wt%)に導入して、表面改質コロイダルシリカを沈殿させた。遠心分離機で分離後、上澄み液を除去し、酢酸ブチルを30ml加えて、超音波照射させながら再分散させた。次に、ヘキサン400mlを加えて、再沈殿させた。酢酸ブチルで分散、ヘキサンで沈殿させる操作を5回繰り返した後、最後に上澄み液を除去し酢酸ブチルを加えて、コロイダルシリカが28wt%の表面改質コロイダルシリカ酢酸ブチル分散液を調整した。
【0086】
[合成例10;表面改質コロイダルシリカの精製]
合成例6でクエンチ処理したTS表面改質コロイダルシリカ分散液を使用した以外は、合成例9と同様な方法でコロイダルシリカが30wt%の表面改質コロイダルシリカ酢酸ブチル分散液を調整した。
【0087】
[合成例11;表面改質コロイダルシリカの精製]
合成例7でクエンチ処理したCS表面改質コロイダルシリカ分散液を使用した以外は、合成例9と同様な方法でコロイダルシリカが30wt%の表面改質コロイダルシリカ酢酸ブチル分散液を調整した。
【0088】
[合成例12;表面改質コロイダルジルコニアの精製]
合成例8でクエンチ処理したMS表面改質コロイダルジルコニア分散液を使用した以外は、合成例9と同様な方法でコロイダルジルコニアが30wt%の表面改質コロイダルジルコニア酢酸ブチル分散液を調整した。
【0089】
[実施例1]
ATRPによる熱可塑性複合材料の合成方法
全ての実験は、窒素下で行った。また、コロイダルシリカ分散液、コロイダルジルコニア分散液、モノマー、溶媒は、30分間窒素バブリングして、酸素を除去したものを使用した。
【0090】
3Lフラスコに塩化第一銅(2.2g、15.0mmol、モノマーに対して2500ppm)、2,2’−ビピリジン(4.7g、30.0mmol、モノマーに対して5000ppm)を加えて窒素置換を行った。アニソール593mlを加えた後、このフラスコを80℃の湯浴に浸し、触媒を溶解させた。次に、アルミナカラムを通して重合禁止剤を除去したメタクリル酸メチル(641.0ml、6.0mol)と酢酸ブチル489mlを加えた後、合成例5で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル分散液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)と開始剤p−トルエンスルホニルクロライド(以下、p−TsClと示す。2.3g、12.0mmol)のアニソール溶液10mlを順に加えて、反応を開始した。溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーに対して100wt%になるように導入し、モノマー/開始剤の比は500/1に調整した。
46時間後、転化率83%で重合を停止した。得られた複合材料液をメタノールに注いでポリマーを析出させ数回洗浄した後、140℃で12時間真空乾燥させた。複合材料中のコロイダルシリカ量は12wt%、Tgは125℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は91%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは51,000g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.15であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
図1は、実施例1のコロイダルシリカ12wt%含有ポリメタアクリル酸メチル複合材料を射出成形した後のTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【0091】
[実施例2]
表面改質コロイダルシリカについて、合成例5で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液を833.3g(表面改質コロイダルシリカとして233.3g)に変えた以外は、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーに対して100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した48時間での転化率は85%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は31wt%、Tgは130℃で、ノズル温度250℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは53,200g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.18であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
図2は、実施例2で示したコロイダルシリカ31wt%含有ポリメタアクリル酸メチル複合材料を射出成形した後のTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【0092】
[実施例3]
表面改質コロイダルシリカについて、合成例5で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液を1.3kg(表面改質コロイダルシリカとして400.0g)使用して、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルを、モノマーに対して100wt%/170wt%に変えた以外は、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
【0093】
重合を停止した48時間での転化率は65%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は51wt%、Tgは135℃で、ノズル温度250℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は88%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは41,100g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.24であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0094】
[実施例4]
開始剤p−TsCl(0.6g、3.0mmol)を変えて、モノマー/開始剤の比を2000/1にした以外は、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した55時間での転化率は71%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は12wt%、Tgは126℃で、ノズル温度250℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは153,600g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.32であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0095】
[実施例5]
合成例1で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液を使用して、重合終了後にトリメチルシリルクロライド(2.8ml、21.9mmol)、トリエチルアミン(3.1ml、21.9mmol)を加えて、室温で12時間攪拌した以外は、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーに対して100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
【0096】
重合を停止した48時間での転化率は88%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は13wt%、Tgは125℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは49,900g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.17であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0097】
[実施例6]
表面改質コロイダルシリカを、合成例8で調製した表面改質コロイダルジルコニアの酢酸ブチル溶液(333.3g、表面改質コロイダルジルコニアとして66.7g)に変えた以外は、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーに対して100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した46時間での転化率は78%で、複合材料中のコロイダルジルコニア量は22wt%、Tgは127℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は83%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは43,200g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.26であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0098】
[実施例7]
表面改質コロイダルシリカを、合成例7で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル分散液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)に変えた以外は、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーの100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した48時間での転化率は83%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は29wt%、Tgは131℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは51,100g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.20であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0099】
[実施例8]
表面改質コロイダルシリカを、合成例6で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル分散液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)に変えた以外は、溶媒であるアニソールと酢酸ブチルは、各々モノマーの100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した48時間での転化率は87%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は28wt%、Tgは126℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは54,200g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.21であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0100】
[実施例9]
RAFTによる熱可塑性複合材料の合成方法
3Lフラスコに合成したRAFT試薬4−シアノ−4−(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸(4.8g、12.0mmol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(以下、AIBNと示す。0.4g、2.4mmol)を加えて窒素置換を行った。酢酸ブチル489.5ml、アルミナカラムを通して重合禁止剤を除去したメタクリル酸メチル(641.0ml、6.0mol)を加えた後、合成例7で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液222.2g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)を加えて、このフラスコを60℃の湯浴に浸し、反応を開始した。溶媒である酢酸ブチルは、モノマーの100wt%になるように導入し、モノマー/RAFT試薬/開始剤の比は500/1/0.2に調整した。
【0101】
40時間後、転化率64%で重合を停止した。得られた複合材料液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、数回洗浄した後、140℃で12時間真空乾燥させた。複合体中のコロイダルシリカ量は14wt%、Tgは126℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは50,000g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.16であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0102】
[実施例10]
表面改質コロイダルシリカを、合成例11で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液(857.1g、表面改質コロイダルシリカとして257.1g)に変えた以外は、溶媒である酢酸ブチルは、モノマーの100wt%、モノマー/RAFT試薬/開始剤の比は500/1/0.2で、実施例5と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した45時間での転化率は69%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は31wt%、Tgは131℃で、ノズル温度250℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは52,800g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.11であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0103】
[比較例1]
フリーラジカル重合(以下、FRPと示す。)による熱可塑性複合体の合成方法
3LフラスコにAIBN(3.9g、24.0mmol)、を加えて窒素置換を行った。酢酸ブチル722.3ml、アルミナカラムを通して重合禁止剤を除去したメタアクリル酸メチル(641.0ml、6.0mol)を加えた後、合成例5で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)を加えて、このフラスコを80℃の湯浴に浸し、反応を開始した。溶媒である酢酸ブチルは、モノマーの125wt%になるように導入し、モノマー/開始剤の比は100/0.4に調整した。
【0104】
6時間後、転化率85%で重合を停止した。得られた複合材料液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、数回洗浄した後、140℃で12時間真空乾燥させた。複合材料中のコロイダルシリカ量は11wt%、Tgは125℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は90%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは32,600g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.92であった。また、微発泡は観察されなかったが、ゲルは観察された。
【0105】
[比較例2]
表面改質コロイダルシリカを、合成例1で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)に変えた以外は、比較例1と同様な方法で複合材料を得た。
重合を停止した6時間での転化率は83%で、複合材料中のコロイダルシリカ量は13wt%、Tgは123℃で、ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は88%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは38,800g/mol、分子量分布Mw/Mnは2.10であった。また、微発泡、ゲルともに観察された。
【0106】
[比較例3]
表面改質コロイダルシリカを使用しない以外は、アニソールと酢酸ブチルの溶媒は各々モノマーの100wt%、モノマー/開始剤の比は500/1で、実施例1と同様な方法でポリメタクリル酸メチルを得た。
重合を停止した48時間での転化率は85%、Tgは121℃で、ノズル温度230℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は92%であった。得られたポリマーの数平均分子量Mnは50,200g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.14であった。また、微発泡、ゲルともに観察されなかった。
【0107】
[比較例4]
表面改質コロイダルシリカを、クエンチ反応を実施していない合成例1で調製した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)に変えた以外は、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
複合材料中のコロイダルシリカ量は11wt%、Tgは125℃であった。ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は89%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは57,500g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.21であった。また、微発泡、ゲルともに観察された。
【0108】
[比較例5]
合成例2の表面改質コロイダルシリカをクエンチ処理せずに、合成例9と同様な洗浄を行うことで調整した表面改質コロイダルシリカの酢酸ブチル溶液238.1g(表面改質コロイダルシリカとして66.7g)に変えた以外は、実施例1と同様な方法で複合材料を得た。
複合材料中のコロイダルシリカ量は13wt%、Tgは125℃であった。ノズル温度240℃で射出成形して得られた3mm厚成形品の全光線透過率は89%であった。HFで処理した後のポリマーの数平均分子量Mnは54,100g/mol、分子量分布Mw/Mnは1.28であった。また、微発泡、ゲルともに観察された。
【表1】



【表2】



【表3】



【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の製造方法により得られる熱可塑性複合材料は、ハードコートなどの従来の分野以外にも、成形体として光学材料、電子材料、接着剤等の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップリング剤で表面修飾されたナノ無機粒子の存在下で、遊離の開始剤によりラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合させて熱可塑性樹脂を形成させる、熱可塑性複合材料の製造方法であって、
前記表面修飾の反応を生じる前記カップリング剤及びナノ無機粒子の官能基のうち当該反応を生じていない残存官能基を、前記リビングラジカル重合の前又は後に、クエンチ剤の官能基と反応させる、製造方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記カップリング剤は、ラジカル反応性二重結合を有するカップリング剤である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ無機粒子は、ケイ素、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムの酸化物からなる、平均直径が50nm以下のナノ無機粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記リビングラジカル重合は、原子移動ラジカル重合である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記リビングラジカル重合は、可逆的付加解裂連鎖移動重合である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記リビングラジカル重合における前記ラジカル重合性モノマーの転化率が、60%以上95%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法で製造された熱可塑性複合材料であって、
ラジカル重合性モノマーを重合してなる重合体中に平均粒子径が100nm以下のナノ無機粒子が分散されており、該重合体の数平均分子量Mnが10,000〜500,000g/molであり、分子量分布Mw/Mnが1.1〜1.5の範囲にある、熱可塑性複合材料。
【請求項9】
空気下、200℃1時間の加熱により発泡を生じない請求項8記載の熱可塑性複合材料。
【請求項10】
請求項8又は9記載の熱可塑性複合材料からなる成形品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−37957(P2011−37957A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185051(P2009−185051)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】