説明

熱回収装置

【課題】従来よりも熱回収効率を高めるとともに製造コストを抑制した、熱回収装置の提供を図る。
【解決手段】熱回収装置100は、熱交換ユニット4と主予熱室12と副予熱室13とを備える。主予熱室12には高温チャンバ2が設けられる。副予熱室13には低温チャンバ3が設けられる。熱交換ユニット4は、高温チャンバ2から熱を回収し、低温チャンバ3に回収した熱を放熱する。副予熱室13は、低温気体の通気路における低温チャンバ3の前段を構成し、主予熱室12は低温気体の通気路における副予熱室13の前段を構成する。主予熱室12は低温気体に高温チャンバ2からの漏出熱を吸熱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温気体の熱を回収して低温気体を加熱する熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造工程などで焼成炉が用いられる。焼成炉では、ワークから蒸散するガス中に有機物の蒸散気体が含まれる。蒸散気体はワークに悪影響を及ぼす可能性がある。このため、焼成炉では、炉内を換気することがある。換気によって焼成炉の内部温度は低下する。このため、炉内からの排気と炉内への吸気との間で熱交換が行われる。
【0003】
このような高温気体の熱を回収して低温気体を加熱する装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【特許文献1】特開2002−191920号公報
【特許文献2】特開2001−154739号公報
【特許文献3】特開2002−200473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温気体の熱を回収して低温気体を加熱する熱回収装置は、熱回収の効率を高めることが望まれる。また、その製造コストの抑制も望まれる。
【0005】
この発明の目的は、従来よりも熱回収効率を高めることができ、製造コストの抑制が可能な熱回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の熱回収装置は、熱交換器と予熱室とを備える。熱交換器は、吸熱領域と放熱領域とを有する。吸熱領域は、高温気体の通気路に設けられ、高温気体から熱を吸熱する。放熱領域は、低温気体の通気路に設けられ、低温気体に熱を放熱する。予熱室は、低温気体の通気路における放熱領域の前段に設けられ、低温気体に漏出熱を吸熱させる。漏出熱は、高温気体の通気路および吸熱領域のうち少なくとも一方から漏出する熱である。
【0007】
したがって、熱交換器が高温気体から低温気体に熱を回収する。さらに、予熱室が高温気体の漏出熱を低温気体に回収する。これにより、熱回収装置の熱回収効率が高まる。また、高温気体の通気路に断熱処理を行う必要が無い。したがって、熱回収装置に設ける断熱材を抑制し製造コストを抑制することが可能になる。
【0008】
熱回収装置により、有機物の蒸散気体により汚染された高温気体を換気する場合、熱回収装置は浄化部を備えると好適である。浄化部は、高温気体の通気路における吸熱領域の前段に設けられて、高温気体に含まれる有機物成分を分解させる。予熱室は、低温気体に、浄化部の外壁からの漏出熱を吸熱させる。
【0009】
予熱室は、主予熱室と副予熱室とを備えてもよい。主予熱室は、吸熱領域および浄化部を内装する。副予熱室は、低温気体の通気路における主予熱室の後段で放熱領域の前段に設けられる。
【0010】
副予熱室に放熱領域を内装してもよい。この場合、高温気体の通気路の吸気口と、低温気体の通気路の排気口とを同方向に向けると好適である。
【0011】
熱回収装置は、ブロワ部を備えてもよい。ブロワ部は、高温気体の通気路における吸熱領域の後段で高温気体の通気路の排気口の前段に設けられて、高温気体の流体圧を調整する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、熱回収装置は高温気体の通気路からの漏出熱を回収でき、熱回収装置の熱回収効率を従来よりも高められる。そのため、断熱材などを抑制でき、製造コストを低減可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して熱回収装置の構成例を説明する。ここでの熱回収装置は、液晶表示パネルの製造工程に用いられる多段焼成炉の換気に用いる。多段焼成炉からの排気ガスには、バインダーなどの蒸散によって有機物成分が含まれる。熱回収装置は、この排気ガスを炉外に排気し、外気を焼成炉に吸気する。
【0014】
図1は、熱回収装置の側面断面図である。ここでは固定配置式の熱回収装置100を示している。なお、熱回収装置100の底面に移動ローラを設けるなどして、熱回収装置100を可動式にしてもよい。
【0015】
熱回収装置100は外装体1を備える。外装体1の内部は、制御室11と主予熱室12と副予熱室13とに区画されている。制御室11は制御部6を内装する。主予熱室12は、高温チャンバ2と掃気ブロワ5とを内装する。副予熱室13は、低温チャンバ3を内装する。主予熱室12を構成する外装体1の壁面には、高温気体吸気口16と高温気体排気口17と低温気体吸気口18とが設けられている。副予熱室13を構成する外装体1の壁面には、低温気体排気口19が設けられている。主予熱室12と副予熱室13との間には隔壁14が設けられている。隔壁14には、主予熱室12と副予熱室13との間を通気するための通気口15が設けられている。
【0016】
制御室11は、主予熱室12および副予熱室13から分離されている。なお、制御室11は図示しない断熱材により囲まれる。したがって、主予熱室12および副予熱室13から制御室11への熱伝導が抑制される。制御部6は、熱回収装置100の換気能力を維持するために、掃気ブロワ5を制御する。また、制御部6は、熱回収装置100の換気能力の低下を、警告音や警告表示の形式で管理者に報知する。
【0017】
低温チャンバ3は、流路方向の断面が矩形状の筒状部材である。低温チャンバ3の両端は開口している。また、両端付近の断面積が中央よりも小さくされている。低温チャンバ3の一端は、低温気体排気口19から外装体1の外に退出する。この一端は、図示しない焼成炉に外気を排気する。低温チャンバ3の他端は、副予熱室13の内部に配置されている。低温チャンバ3の内部には、放熱領域31が設けられている。
【0018】
放熱領域31は、副予熱室13から吸気する外気に熱を放熱する。そのため、放熱領域31の内部には熱交換ユニット4の一部を配している。熱交換ユニット4の構成については後述する。
【0019】
高温チャンバ2は、流路方向の断面が矩形状の筒形部材である。高温チャンバ2の両端は開口している。また、両端付近の断面積が中央よりも小さくされている。高温チャンバ2の一端は、高温気体吸気口16から外装体1の外に退出する。この一端には、図示しない焼成炉から排気ガスが吸気される。高温チャンバ2の他端は、主予熱室12の内部に配置されている。高温チャンバ2の内部には、フィルタ室21と浄化部22と吸熱領域23とが設けられている。
【0020】
フィルタ室21は、焼成炉からの排気ガス中から、ダストやミストを除去する。そのため、フィルタ室21には、複数のフィルタ粒を堆積させている。フィルタ粒を用いることで、熱回収装置100の稼働中でも、フィルタ粒の交換が可能になり、フィルタ室21内の清浄度を高く維持できる。したがって、後段の浄化部22にダストやミストが付着することがない。このためダストやミストの付着による浄化部22での触媒による有機物分解能の低減が防げ、浄化部22のメンテナンス回数を低減できる。
【0021】
なお、図示していないが、フィルタ室21の直前および直後には、圧力検出部を設けている。これらの圧力検出部の検出した排気ガスの流体圧データは制御部6に出力する。制御部6では、この圧力変化に基づいて、フィルタ室21の目詰まりを検知する。そして、目詰まりが生じた場合に、そのことを報知する警告音や警告表示を出力する。また、掃気ブロワ5の掃気能を調整し、圧力変化を補正して安定化させる。
【0022】
浄化部22は、フィルタ室21を通過した排気ガス中の有機物成分を分解する。そのため、浄化部22内部には触媒(ここでは、ヒータ付きの白金触媒)を設けている。この触媒により、有機物成分を酸化反応させ、排気ガス中の有機物成分を二酸化炭素などに分解する。したがって、後段の吸熱領域23には有機物成分が流入することがない。そのため有機物成分による吸熱領域23での熱交換効率の低減が防げ、吸熱領域23のメンテナンス回数を低減できる。また、浄化部22に流入する排気ガスは、触媒によって加熱される。具体的には、ヒータによる加熱と、有機物の分解反応で生じる熱とにより、排気ガスの温度が約10℃〜100℃ほど昇温する。したがって、後段の吸熱領域23では、より多くの熱交換がなされる。
【0023】
なお、図示していないが、浄化部22の直前および直後には、温度検出部を設けている。これらの温度検出部の検出した排気ガスの温度データは制御部6に出力する。制御部6では、この温度変化に基づいて、触媒の有機物分解能を検知する。そして、有機物分解能が所定値以下に低下した場合に、そのことを報知する警告音や警告表示を出力する。
【0024】
吸熱領域23は、浄化部22を通過する排気ガスから熱を回収する。そのため、吸熱領域23の内部には熱交換ユニット4の一部を配している。この熱交換ユニット4の他の一部は、低温チャンバ3の放熱領域31にも配されている。
【0025】
ここで、熱交換ユニット4の構成例を図2に基づいて説明する。
【0026】
図2は熱交換ユニット4の一部を示す斜視図である。熱交換ユニット4は、2次元に配列された複数のパイプ41を備える。各パイプ41は、内部が空洞になっていて、空洞に作動流体が封入されている。各パイプ41は、上述の主予熱室12と副予熱室13との間の隔壁14と、高温チャンバ2の天面と、低温チャンバ3の底面と、に設けられた孔を貫通するように配置される。したがって、各パイプ41の一端側は、高温チャンバ2内部の吸熱領域23に配置される。各パイプ41の他端側は、低温チャンバ3内部の放熱領域31に配置される。なお、図示していないが、各パイプ41には、それぞれの軸方向に垂直なフィンが形成される。また、各パイプ41と隔壁14との間には、高温チャンバ2内部と低温チャンバ3内部との気密を保つ気密部材が設けられる。
【0027】
パイプ41内部の作動流体は、高温チャンバ2内の吸熱領域23で、排気ガスの熱を吸熱して蒸発する。そして、この作動流体は、低温チャンバ3内の放熱領域31で凝縮して液化し、外気に熱を放熱する。これにより、高温チャンバ2内の高温気体が冷却され、低温チャンバ3内の低温気体が加熱される。この熱交換ユニット4は、小さい温度差であっても高効率に熱エネルギーを交換できる。
【0028】
掃気ブロワ5には、高温チャンバ2の前記他端が接続される。掃気ブロワ5は、回転する内部フィンの回転速度の調整により高温チャンバ2内に負圧をかけ、排気ガスを吸引する。掃気ブロワ5に吸引された排気ガスは、高温気体排気口17から熱回収装置100の外部に排気される。
【0029】
掃気ブロワ5は、排気ガスを熱回収装置100の外部に排気し、高温チャンバ2内に負圧をかける。高温チャンバ2は高温気体吸気口16を介して、図示しない焼成炉に負圧をかける。この焼成炉は低温気体排気口19を介して低温チャンバ3内に負圧をかける。低温チャンバ3は副予熱室13内に負圧をかける。副予熱室13は通気口15を介して主予熱室12内に負圧をかける。主予熱室12は低温気体吸気口18を介して熱回収装置100の外部から外気を吸気する。
【0030】
低温気体吸気口18から吸気される外気は、掃気ブロワ5および高温チャンバ2の外壁面を沿って流れる。この間に、外気は掃気ブロワ5及び高温チャンバ2の漏出熱を吸熱する。その後、外気は通気口15を介して主予熱室12から副予熱室13の内部に吸入される。その後、外気は副予熱室13内部を、低温チャンバ3の外壁面に沿って流れる。この間に、外気は低温チャンバ3の漏出熱を吸熱する。その後、外気は低温チャンバ3の内部に吸入される。この間に、外気は低温チャンバ3の内部の放熱領域31で熱を吸熱する。その後、外気は低温気体排気口19から焼成炉に排気される。
【0031】
したがって、熱回収装置100は、焼成炉からの高温の排気ガスから低温の外気に、熱交換ユニット4で熱を回収するとともに、高温チャンバ2の外壁面から漏出する漏出熱を回収できる。したがって、熱回収装置100の熱回収効率は極めて高いものになる。そのため、高温チャンバ2や低温チャンバ3の外装面に断熱材を設ける必要が無く、製造コストが低減される。
【0032】
また、浄化部22で排気ガス中の有機物成分を除去して、有機物成分が外気を汚染することを無くすことができる。その際に、有機物成分の分解により生じる熱エネルギーも、回収する熱の一部となる。また、フィルタ室21で排気ガス中のダストやミストを除去するが、稼働中に補充および取り出し可能なフィルタ粒を用いることで、メンテナンス性を高め、熱回収装置100の稼働時間や寿命を高められる。
【0033】
ここでは、主予熱室12と副予熱室13との間には隔壁14に設けた通気口15を、低温気体吸気口18から離して、高温気体吸気口16と低温気体排気口19とに近接させている。これにより、主予熱室12における低温気体の通気路を長く確保して、低温気体である外気に十分に漏出熱を吸収させる。また、高温気体吸気口16を外装体1の低温気体排気口19と同一側面に設けている。これにより、高温気体の通気路の吸気口と低温気体の通気路の排気口とが同方向に向く。したがって、この外装体1の側面を焼成炉方向に向けることで、焼成炉への配管接続を容易に行える。なお、高温気体吸気口16と低温気体排気口19とは必ずしも外装体1の同一側面に設けなくてもよい。
【0034】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】熱回収装置の一例を示す側面断面図である。
【図2】同熱回収装置の熱交換ユニットの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1…外装体 2…高温チャンバ 3…低温チャンバ 4…熱交換ユニット 5…掃気ブロワ 6…制御部 11…制御室 12…主予熱室 13…副予熱室 14…隔壁 15…通気口 16…高温気体吸気口 17…高温気体排気口 18…低温気体吸気口 19…低温気体排気口 21…フィルタ室 22…浄化部 23…吸熱領域 31…放熱領域 41…パイプ 100…熱回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温気体の通気路の一部に設けた吸熱領域と低温気体の通気路の一部に設けた放熱領域とを有する熱交換器と、
前記低温気体の通気路における前記放熱領域の前段に設けた、前記高温気体の通気路および前記吸熱領域のうち少なくとも一方からの漏出熱を前記低温気体に吸熱させる予熱室と、を備える熱回収装置。
【請求項2】
有機物の蒸散気体により汚染された高温気体の通気路における前記吸熱領域の前段に設けた、前記高温気体に含まれる有機物成分を分解する浄化部を備え、
前記予熱室は、前記浄化部からの漏出熱を前記低温気体に吸熱させる請求項1に記載の熱回収装置。
【請求項3】
前記予熱室は、前記吸熱領域および前記浄化部を内装する主予熱室と、前記低温気体の通気路における前記主予熱室の後段で前記放熱領域の前段に設けた副予熱室と、を備える請求項2に記載の熱回収装置。
【請求項4】
前記副予熱室は、前記放熱領域を内装し、
前記高温気体の通気路の吸気口と前記低温気体の通気路の排気口とが同方向に向く請求項3に記載の熱回収装置。
【請求項5】
前記高温気体の通気路における前記吸熱領域の後段で前記高温気体の通気路の排気口の前段に設けた、前記高温気体の流体圧を調整するブロワ部を備える請求項1〜4のいずれかに記載の熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−304112(P2008−304112A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151259(P2007−151259)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】