説明

熱硬化性ソルダーレジスト組成物、その硬化物からなるソルダーレジスト層及びプリント配線板

【課題】 プリント配線板用ソルダーレジスト層に要求される耐薬品性、耐熱性、硬度、電気絶縁性、密着性、及び印刷性を満たし、更に保色性にも優れた熱硬化型ソルダーレジスト組成物、その硬化物からなるソルダーレジスト層及びプリント配線板を提供すること。
【解決手段】 硬化後の架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度が150℃以上である白色熱硬化性ソルダーレジスト組成物、並びにその硬化物からなる白色ソルダーレジスト層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性ソルダーレジスト組成物、その硬化物からなるソルダーレジスト層及びプリント配線板に関し、詳しくは、プリント配線板などのソルダーレジスト層として好適な、耐薬品性、耐熱性、硬度、電気絶縁性、密着性、及び印刷性を有し、更に保色性にも優れた熱硬化性ソルダーレジスト組成物、その硬化物からなるソルダーレジスト層及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に保護膜として用いられるソルダーレジスト被膜の形成方法としては、スクリーン印刷が従来から用いられており、熱硬化型ソルダーレジストにおいては、主として印刷性の理由からビスフェノールA型のエポキシ樹脂が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、かかるビスフェノールA型エポキシ系の熱硬化型ソルダーレジストでは、印刷性は優れるものの、ソルダーレジスト被膜に通常要求される耐薬品性や耐熱性、密着性に問題があった。
【0004】
また、近年、プリント配線板においては、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、また照明器具の光源など、低電力で発光する発光ダイオード(LED)に直接実装して用いられる用途が増えてきている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
その場合に、プリント配線板に保護膜として被覆形成されるソルダーレジスト被膜には、通常要求される特性に加え、LEDの発光を有効に利用することができるよう、光の反射率に優れることが所望される。
【0006】
しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ系の熱硬化型ソルダーレジストでは、上記問題点に加え保色性が悪いという問題点があり、白色ソルダーレジストにおいてはLEDより照射される光や発熱により樹脂の酸化が進んで黄変してしまい、反射率が経時により低下したり、後工程によるめっき液中の触媒が白色ソルダーレジスト上に吸着し変色するという問題がある。また、回路の外観不良などの隠蔽性の観点から白色以外の色においても優れた着色力を有するソルダーレジスト組成物が求められており、保色性に優れることはソルダーレジスト組成物において重要である。
【特許文献1】特開1975−6408号公報
【特許文献2】特開2007−249148号公報(段落0002〜0007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる背景技術が抱える問題点に鑑み開発されたものであり、その目的は、プリント配線板用ソルダーレジスト層に要求される耐薬品性、耐熱性、硬度、電気絶縁性、密着性、及び印刷性を満たし、更に保色性にも優れた熱硬化性ソルダーレジスト組成物、その硬化物からなるソルダーレジスト層及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ソルダーレジスト組成物の硬化物における架橋密度とガラス転移温度が保色性に重要な影響を及ぼすことを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明の第1の側面によれば、式(1)により算出される硬化後の架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度が150℃以上である熱硬化性ソルダーレジスト組成物が提供される。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数(Φ≒1)、Rは気体定数8.31451(J/mol・K)、TはE’minの絶対温度を表わす。
【0009】
本発明の一態様において、上記式(1)により算出される硬化後の架橋密度は30000mol/m以上である。
また、本発明の他の態様において、上記熱硬化性ソルダーレジスト組成物は、(A)核体数が3以上のエポキシ化合物、及び(B)イミダゾール系化合物を含有する。
また、本発明の他の態様において、上記エポキシ化合物(A)の核体数は4以上であり、更に他の対応において7以上である。
【0010】
さらに、本発明の第2の側面によれば、式(1)により算出される硬化後の架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度が150℃以上である硬化物からなるソルダーレジスト層が提供される。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数(Φ≒1)、Rは気体定数8.31451(J/mol・K)、TはE’minの絶対温度を表わす。
【0011】
本発明の一態様において、上記式(1)により算出される硬化後の架橋密度は、30000mol/m以上である。
また、本発明の他の態様において、上記ソルダーレジスト層を構成する硬化物は、(A)核体数が3以上のエポキシ化合物、及び(B)イミダゾール系化合物を含有する熱硬化性ソルダーレジスト組成物を熱硬化してなる。
また、本発明の他の態様において、上記エポキシ化合物(A)の核体数は4以上であり、更に他の対応において7以上である。
さらに、本発明の第3の側面によれば、上記ソルダーレジスト層を有するプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、特にビスフェノールA型エポキシ系の熱硬化型ソルダーレジストにおいて両立が困難であった印刷性と保色性に優れ、更にプリント配線板用ソルダーレジスト層として一般に要求される他の諸特性にも優れるため、特に被膜形成方法として印刷技術が用いられる場合に好適な熱硬化性ソルダーレジスト組成物として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の熱硬化性ソルダーレジスト組成物は、その硬化後における架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であることを特徴とする。熱硬化性ソルダーレジスト組成物の硬化物における架橋密度とガラス転移温度は、特に保色性を改善するために技術的に密接な関連性を有する。本発明において硬化後における架橋密度は、好ましくは30000mol/m以上であり、より好ましくは50000mol/m以上であり、その上限は好ましくは65000mol/mである。架橋密度が高いことは、保色性に加え耐吸湿性(電気特性)及び密着性が向上することからも好ましく、一方、耐衝撃性、大きな収縮応力によるワレやはがれを生ずるなどの理由から、65000mol/mを超えないことが好ましい。また、ガラス転移温度は150℃以上であり、好ましくは160℃以上である。ガラス転移温度を高めることによって寸法安定性や耐熱信頼性を向上させることができる。しかし、ガラス転移温度を高めることによって、内部応力の上昇にともなう密着性や耐クラック性の低下をきたす場合があることから250℃以下であることが好ましい。
【0014】
本発明において架橋密度(n)、及びガラス転移温度(Tg)は、後掲の実施例に記載のJIS K7244−4に記載の熱硬化性塗料の動的粘弾性試験方法及び計算式により求められる。すなわち、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7244−4に記載の試験方法に準拠し得られる動的粘弾性試験結果によるE’(貯蔵弾性率)、E”(損失弾性率)から下式:
Tanδ=E”/E’
に従い求められるTanδ(損失正接)の値が最大値のときの温度がガラス転移温度(Tg)である。
【0015】
また、架橋密度(n)は、E’(貯蔵弾性率)から式(1)に従い求められる。
【0016】
n=ρ/Mc=E’min/3ΦRT (1)
式(1)中、E’minは、貯蔵弾性率E’の最小値を表わし、Φはフロント係数(Φ≒1)を表わし、ρは試料密度を表わし、Rは気体定数8.31451(J/mol・K)を表わし、TはE’minの絶対温度を表わし、Mcは架橋間分子量を表わす。
【0017】
硬化後の架橋密度が、12000mol/m超であり、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上である熱硬化性ソルダーレジスト組成物の構成成分は、限定されるものではないが、特に、熱硬化性樹脂として(A)核体数が3以上、より好ましくは4以上、特に好ましくは7以上のエポキシ化合物、及び硬化触媒として(B)イミダゾール系化合物を使用することが、上記課題を解決するために特に有効であることが見出された。
以下に本発明のソルダーレジスト組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0018】
(A)エポキシ化合物
本発明において用いられる熱硬化性樹脂としては、(A)核体数が3以上のエポキシ化合物が好ましく、核体数が4以上のエポキシ化合物がより好ましく、核体数が7以上のエポキシ化合物が特に好ましい(以下において、これらを「エポキシ化合物(A)」と総称する。)。核体数が高くなると架橋密度が高くなり、より優れた保色性が得られるため好ましい。核体数は官能基数と等しく、例えば核体数3以上のエポキシ化合物とは、1分子当たりの平均エポキシ基数が3以上であることを意味し、次式により算出することができる。
核体数(n)=重量平均分子量/エポキシ当量
核体数の要件を満たすものであれば、公知慣用のエポキシ化合物を使用することができ、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物、テレフタル酸グリシジルエステル化合物、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル化合物、ダイマー酸グリシジルエステル化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−グリシジルアニリンなどのグリシジルアミン化合物などのエポキシ化合物がある。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、水酸基を持たない多官能エポキシ樹脂であるフェノールもしくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0019】
また、硬化物の架橋密度及びガラス転移温度が本発明の範囲となる限りにおいて、本発明のエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物を併用することができる。
【0020】
エポキシ化合物(A)のソルダーレジスト組成物中の含有率は、組成物の全固形分を基準として好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。なお、上記エポキシ化合物(A)の含有率や、後掲の(B)成分〜(E)成分、並びに他の任意成分の含有率は、本明細書に記載の範囲内において、且つ架橋密度及びガラス転移温度が本発明の範囲内となるよう調節することが好ましい。
【0021】
(B)イミダゾール系化合物
本発明では、エポキシ硬化触媒としてイミダゾール系化合物(B)を用いることが、特に所望とするガラス転移温度を得る観点から好ましい。
イミダゾール系化合物(B)としては、例えば、2−メチルイミダゾール(2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(C112)、2−ヘプタデシルイミダゾール(C17Z)、1,2ジメチルイミダゾール(1,2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(1B2MZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN)、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト(2E4MZ−CNS)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト(C11Z−CNS)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZ−CNS)、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン(2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン(C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−(2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン(2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−(2’メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−sトリアジン イソシアヌル酸付加物(2MA−OK)、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物(2PZ−OK)、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付加物(2MZ−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール(2PHZ−CN)、2−メチルイミダゾリン(2MZL−F)、2−フェニルイミダゾリン(2PZL)、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド(SFZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール・塩酸塩(1B2PZ−HCL)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(1B2PZ−S)、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン(VT)、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシ−s−トリアジン(MAVT)、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン イソシアヌル酸付加物(VT−OK)、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシ−1,3,5−トリアジン イソシアヌル酸付加物又はこれらの有機酸塩類などが挙げられる。カッコ内はいずれも四国化成工業(株)製の商品名である。
【0022】
イミダゾール系化合物(B)のソルダーレジスト組成物中の含有率は、組成物の全固形分100質量部を基準として、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜7質量%である。
【0023】
なお、本発明においては、エポキシ硬化触媒として上記イミダゾール系化合物以外にも、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどの第3級アミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、有機酸塩類、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類などを用いることができ、これらと共にアミン類、酸無水物、アミノポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、三弗化ホウ素アミンコンプレックス、ノボラック樹脂、ジシアンジアミド、酸ヒドラジド、カルボキシル基含有化合物などを組み合わせて使用することができる。
【0024】
具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニエーテル、アニリン−ホルマリン樹脂などのアミン類、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの酸無水物、ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等との縮合物であるアミノポリアミド樹脂、メルカプタン基を末端に持つポリスルフィド樹脂、三弗化ホウ素とアニリン、ベンジルアミン、エチルアミンなどとの三弗化ホウ素アミンコンプレックス、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシンなどとホルマリンの縮合反応により得られるノボラック樹脂、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等の潜在性硬化剤が挙げられる。その他、カルボキシル基含有化合物、例えばジョンソンポリマー社製のジョンクリル−68などの(メタ)アクリル酸共重合物等も用いることもできる。これらを単独で、又は2種以上を組合せて使用することができるが、より好ましくはイミダゾールを必須とし、イミダゾールと他の硬化触媒を併用することである。
【0025】
(C)着色剤
本発明のソルダーレジスト組成物は、着色剤(C)を含有してもよい。
特に保色性を要求される白色ソルダーレジストの着色剤としては、C.I.ピグメントホワイト4に示される酸化亜鉛、C.I.ピグメントホワイト6に示される酸化チタン、C.I.ピグメントホワイト7に示される硫化亜鉛があげられるが、着色力と無毒性という点から特に好ましいのは酸化チタンであり例えば、富士チタン工業(株)製TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業(株)R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、チタン工業(株)製KR−270、KR−310、KR−380等のルチル型酸化チタン、富士チタン工業(株)製TA−100、TA−200、TA−300、TA−500、石原産業(株)製A100、A220、チタン工業(株)製KA−15、KA−20、KA−35、KA−90等のアナターゼ型酸化チタンがあげられる。
【0026】
白色以外の着色剤としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン化合物、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0027】
着色剤(C)のソルダーレジスト組成物中の含有率は、熱硬化に影響しないため特に厳密な範囲はないが、印刷性、密着性を考慮し、組成物の全固形分100質量部を基準として、好ましくは0〜50質量%であり、より好ましくは1〜40質量%である。
【0028】
(D)体質顔料
本発明のソルダーレジスト組成物は、体質顔料(D)を含有してもよい。体質顔料(D)を含有させることは、印刷性、鉛筆硬度、耐熱性、密着性向上の観点から好ましい。
体質顔料(D)としては、例えば、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、などの公知慣用の無機充填剤が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
体質顔料(D)のソルダーレジスト組成物中の含有率は、組成物中の全固形分を基準として、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。
【0029】
(E)有機溶剤
本発明のソルダーレジスト組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤(E)を含有し得る。有機溶剤(E)としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
(F)他の添加剤
本発明のソルダーレジスト組成物は、更に必要に応じて、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができ、また本発明の熱硬化性樹脂組成物の白色を損なわない範囲において着色剤を配合することができる。
【0031】
(硬化物の形成)
本発明のソルダーレジスト組成物は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。塗布後、例えば140℃〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
表1に従って各成分を3本ロールミルで混練し、各熱硬化性ソルダーレジスト組成物(組成物例1〜22)を得た。表中の数字は、質量部を表す。
【表1】

【0033】
性能評価:
(評価基板の作製)
上記熱硬化性ソルダーレジスト組成物1〜22を、それぞれ銅張り基板上にスクリーン印刷により特定パターンに塗布し、熱風循環式乾燥炉において150℃で30分硬化した。得られた硬化塗膜を以下の各評価方法において使用した。
【0034】
(1)耐薬品性
硬化塗膜を10vol%HClに20℃で60分浸漬させた後、すぐにテープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。
【0035】
○:膨れ、剥がれなし。
【0036】
△:ほんの僅かに剥がれあり。
【0037】
×:塗膜の大きな剥がれあり。
【0038】
(2)耐熱性
硬化塗膜を、260℃のはんだに30秒フローさせテープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。
【0039】
○:膨れ、剥がれなし。
【0040】
△:ほんの僅かに剥がれあり。
【0041】
×:塗膜の大きな剥がれあり。
【0042】
(3)鉛筆硬度
硬化塗膜をJIS C 5400の試験方法に従って試験し、塗膜に傷のつかない最も高い硬度を観測した。
【0043】
(4)保色性
硬化塗膜を金めっき工程に流した後、触媒の吸着の有無を変色具合から観測した。
【0044】
○:変色なし。
【0045】
△:ほんの僅かに変色あり。
【0046】
×:大部分に変色あり。
【0047】
(5)密着性
硬化塗膜に巾1mmで10×10のクロスカットを入れ、テープピーリングで剥離テストを行い剥がれの状態を目視確認した。
【0048】
○:剥がれなし。
【0049】
△:1〜10箇所に剥がれあり。
【0050】
×:10箇所以上剥がれあり。
【0051】
(6)印刷性
上記熱硬化性ソルダーレジスト組成物1〜22を、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷でそれぞれ特定パターンに塗布し、かすれ、にじみ、レベリング性を確認した。
【0052】
○:かすれ、にじみ、レベリング性に問題なく塗布可能。
【0053】
△:ほんの僅かに印刷後のかすれが発生。
【0054】
×:全体的にかすれ、レベリング性不良。
【0055】
(8)電気特性
上記熱硬化性ソルダーレジスト組成物1〜22を、IPCくし型Bパターンに塗布、硬化し、90%RH、25〜65℃、DC100Vに印加にて168時間加湿後、DC500Vにて1分値の絶縁抵抗値を観測した。
【0056】
(9)動的粘弾性試験
試験方法:塗膜作製方法
上記熱硬化性ソルダーレジスト組成物1〜22のソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法により、25〜50μm(ドライ)になるようにフィルム上に塗布し、熱風循環式乾燥炉において150℃×30分硬化させ、評価フィルムを作製した。フィルムから塗膜を採取し測定機器にセットした。
【0057】
測定装置/セイコーインスツルメンツ社製
形式:DMS6100
測定条件/測定温度:20〜300℃
昇温速度:5℃/分
周波数:1、10Hz
変形モード:引っ張り・正弦波モード
測定塗膜サイズ:10mm×5mm
JIS K7244−4に記載の試験方法により動的粘弾性試験を行い、E’(貯蔵弾性率)、E”(損失弾性率)を得、これらから上述した手法に従い本発明の架橋密度(n)、およびガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0058】
結果を表2に示す。
【表2】

【0059】
表2に示された結果から明らかなように、本発明のソルダーレジスト組成物は、プリント配線板用ソルダーレジスト層に一般的に要求される諸特性を満たしつつ、印刷性及び保色性にも優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)核体数が3以上のエポキシ化合物、及び(B)イミダゾール系化合物を含有する白色熱硬化性ソルダーレジスト組成物であって、式(1)により算出される硬化後の架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度が150℃以上である白色熱硬化性ソルダーレジスト組成物。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数(Φ≒1)、Rは気体定数8.31451(J/mol・K)、TはE’minの絶対温度を表わす。
【請求項2】
(A)核体数が3以上のエポキシ化合物、及び(B)イミダゾール系化合物を含有する白色熱硬化性ソルダーレジスト組成物の硬化物からなる白色ソルダーレジスト層であって、式(1)により算出される硬化後の架橋密度が12000mol/m超であり、ガラス転移温度が150℃以上である硬化物からなる白色ソルダーレジスト層。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数(Φ≒1)、Rは気体定数8.31451(J/mol・K)、TはE’minの絶対温度を表わす。
【請求項3】
請求項2に記載の白色ソルダーレジスト層を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2013−8986(P2013−8986A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179568(P2012−179568)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2008−122305(P2008−122305)の分割
【原出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】