説明

熱硬化性樹脂含有複合材

本発明は、少なくとも55のショアD硬さを有する熱硬化性樹脂を含む複合材であって、樹脂は実質的に880kg/m未満の密度を有するエチレン・α−オレフィンコポリマーからなり、この樹脂は、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率が複合材の50体積%未満となる程度に架橋されており、かつ、少なくとも40体積%の補強性充填剤を含有する(ここで、充填剤の体積%は樹脂の体積に対するものである)複合材に関する。本発明の複合材は、この複合材中に少なくとも100phrのコルクが含まれると、優れた断熱材となる。本発明の複合材は、多量の過酸化物の存在下、樹脂の少なくとも40体積%の充填剤の存在下、コポリマーを架橋することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、複合材、特に、熱硬化性樹脂および充填剤を含む複合材に関する。熱硬化性樹脂および充填剤を含む複合材は、米国特許第4824705号明細書により知られている。この特許には、海中パイプラインの断熱材として使用されるコルクを充填したゴムが記載されている。油、ガスおよびこれらの混合物を輸送する海中パイプラインは、特に油を高温に維持し、粘度の上昇、さらには凝集を避けるために、十分な断熱が施されていなければならない。一方で、非常に深い海中に敷設されるパイプラインは、静水圧に耐えなければならない。
【0002】
これらの樹脂を断熱の目的で使用する場合、その密度、そしてその熱伝導率を小さくするために、それらを発泡させることができる。しかしながら、一般に、発泡によって樹脂材料の耐圧縮性は低下し、特にガラス転移温度近傍およびそれを超える高温において低下する。
【0003】
米国特許第4824705号明細書には、1000MPaの弾性率を有するコルク充填ゴム複合材が記載されている。1000MPaの弾性率を有する複合材は、約5kmの水圧に耐えられるであろう。米国特許第4824705号明細書には、非常に脆い材料とすることなく、ゴムの硬さを1000MPaの弾性率にまで増大させる方法は記載されていない。深海パイプの断熱に適した複合材には、そのようなパイプは最終的な敷設の前に大径のリールに巻き付けられて運搬されるため、一定の靭性が要求される。
【0004】
本発明の目的は、断熱性、耐圧縮性および改良された破断点伸びのバランスに優れた熱硬化性樹脂含有複合材を提供することにある。
【0005】
本発明によれば、これは、880kg/m未満の密度を有するエチレン・α−オレフィンコポリマーを含む樹脂を含有する複合材であって、その樹脂は、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率が複合材の50体積%未満となる程度に架橋されており、かつ、少なくとも40体積%の補強性充填剤を含有する(ここで、充填剤の体積%は樹脂の体積に対するものである)複合材により達成される。
【0006】
本発明の複合材は、優れた断熱性と、少なくとも55のショアD硬さ、好ましくは少なくとも60のショアD硬さとを併せ持つ樹脂を含有する。この材料は、少なくとも40体積%の補強性充填剤の存在下に、エチレン・αオレフィンコポリマーを過酸化物架橋することにより製造することができる。
【0007】
過酸化物架橋により、エチレン・α−オレフィンコポリマーの硬さが増加することはよく知られているが、通常使用される過酸化物の量は約2〜4phrに限定される。過酸化物の添加量がこれより多くなると非常に脆いエラストマーが得られるからである。意外にも、わずか40体積%の補強性充填剤を添加し、その後、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率が複合材の50体積%未満となる程度に架橋させることにより、破断点伸びが非常に大きい複合材が得られる。
【0008】
本発明の複合材中の樹脂は、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される複合材の体積膨潤率が50体積%未満となる程度に架橋させる。架橋は、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率が40体積%未満となる程度に行わせることが好ましく、30体積%未満となるように行わせることがより好ましい。これは、20重量%の過酸化物の存在下にコポリマーを硬化させることによって達成することができる。
【0009】
本願におけるエチレン・α−オレフィンコポリマーは、場合により1種以上の非共役ポリエンを含む、エチレンとα−オレフィンとのコポリマーであると理解される。
【0010】
α−オレフィンとしては、例えば炭素原子が3〜10個のα−オレフィンが使用され、その例としては、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテンなどが挙げられる。プロピレンが好ましく使用される。
【0011】
コポリマー中のα−オレフィンに対するエチレンの重量比は、90/10〜20/80とすることができる。α−オレフィンに対するエチレンの重量比は、70/30〜40/60であることが好ましく、重量比は60/40〜40/60であることがより好ましい。
【0012】
樹脂は、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤は、1つ以上のエチレン性不飽和結合を含む化合物であると理解される。架橋助剤の配合には、より少ない量の過酸化物の使用で、ショアD硬さが65、さらには70にも達する、より高い硬さが得られるという利点がある。
【0013】
適切な架橋助剤としては、例えば、ポリアクリレート、トリアリルシアヌレート、シリカ担持70%エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N,N’−(M−フェニレン)ジマレイミド(EPDM担体)(HVA−2)、2,4,6−トリアリロキシ−1,3,5−トリアジン/C1215(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)およびポリブタポリエンが挙げられる。通常、架橋助剤は、15〜50phrの活性助剤の量で、マスターバッチに添加される。
【0014】
さらに非共役ポリエンを含むエチレン・α−オレフィンコポリマーの使用には、また、過酸化物の量から期待される硬さよりもより高い硬さが得られるという利点がある。非共役ポリエンの例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン、1,4ヘキサジエン、またはこれらの混合物が挙げられる。過酸化物による架橋性の高さから、ENBが好ましく使用される。
【0015】
非共役ポリエンは、エラストマー性ポリマー中に3〜35重量%、好ましくは4〜15重量%含まれ得る。エラストマー性ポリマー(A)の製造は当業者には知られている。このポリマーは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いる重合によって製造することができる。
【0016】
本発明の樹脂に使用される充填剤は、補強性充填剤である。補強性充填剤は、カーボンブラック、シリカ、ケイ酸塩、クレイ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびケイ酸マグネシウムの群から選択される。それらに代わって使用し得る充填剤は、木粉、セルロース繊維またはこれらの混合物である。多くの無機充填剤とは反対に、これらの充填剤は熱伝導率が低く、したがって、複合材の熱伝導率を高めることは殆どないという利点を有する。
【0017】
熱伝導率は、200〜800kg/mの特定の密度を有する複合材が得られるように、樹脂を発泡させることによって、さらに低減することができる。密度が800kg/mを超える発泡では、断熱性の向上に殆ど寄与せず、一方、密度が200kg/m未満の発泡では、圧縮強さが小さ過ぎる発泡体が得られる。
【0018】
複合材は、発泡構造の樹脂に代えて、あるいは、発泡構造の樹脂と組み合わせて、さらにコルクを、好ましくは少なくとも100phr、より好ましくは少なくとも200phr、より一層好ましくは少なくとも300phr、含有してもよい。コルクは、高温においても熱伝導率が低く、かつ圧縮強さが大きいという利点を有する。コルクを少なくとも100phr添加すると、コルク含有複合材のショアDを測定することが困難になるが、コルク粒子を結合している樹脂が高ショアD値を有する限り、複合材に対する高耐圧縮性の要求は満たされる。
【0019】
コルクとα−オレフィンコポリマーとの接着力を増大させるために、1種以上の親和剤(compatibaliser)を樹脂に添加してもよい。適切な親和剤としては、無水マレイン酸グラフトα−オレフィンコポリマーおよび低分子量ポリブタジエン樹脂(例えば、Ricon 154D)が挙げられる。
【0020】
[実施例I]
下記の成分を二本ロールミル(ゴム工業で一般的に使用されているもの)で混合した。混合を容易にするために、混合中、ミルの両ロールに蒸気を当てた。材料の体積の増加に応じてロール間距離を調節した。6mm厚のテスト用プレートをプレス中、180℃で、12分間、硬化させた。
【0021】
【表1】

【0022】
硬化したプレートのショアD硬さは71であり、密度は1152kg/mであった。
【0023】
[実施例II]
実施例Iと同様の配合に1,200phrのコルクを加えた。6mm厚のテスト用プレートをプレス中、180℃で、12分間硬化させた。
【0024】
硬化したプレートの密度は430kg/m、熱伝導率は0.07W/Km、そしてデカリン中に23Cで64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率は42%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも55のショアD硬さを有する熱硬化性樹脂を含む複合材であって、
樹脂は実質的に880kg/m未満の密度を有するエチレン・α−オレフィンコポリマーからなり、この樹脂は、デカリン中に23℃で64時間浸漬させた後に測定される体積膨潤率が複合材の50体積%未満となる程度に架橋されており、かつ、少なくとも40体積%の補強性充填剤を含有し、ここで、充填剤の体積%は樹脂の体積に対するものであることを特徴とする複合材。
【請求項2】
前記樹脂は、架橋助剤をさらに含む請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記コポリマーは、非共役ポリエン、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンをさらに含む請求項1または2に記載の複合材。
【請求項4】
前記充填剤は、1100kg/m未満の密度を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項5】
親和剤をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項6】
前記樹脂は、密度が200〜800kg/mの発泡体に発泡されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項7】
少なくとも100phrのコルクをさらに含有する請求項5に記載の複合材。

【公表番号】特表2010−502825(P2010−502825A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527731(P2009−527731)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007865
【国際公開番号】WO2008/031544
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】