説明

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材

【課題】 色相及び機械特性に優れる硬化物を用いた光学部材及びこれらを得ることが可能な樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)一般式(1)で表され、一分子中にSi−H基を2個有する化合物、(B)一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を、少なくとも3個有する化合物、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有してなる熱硬化性樹脂組成物。



(式中、Xは2価の脂肪族炭化水素基又はジメチルシロキシレン基を表し、Yは3価の飽和炭化水素基を表し、nは1から20の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材用樹脂には透明性や耐光性に優れるアクリル系樹脂、例えばPMMAなどが一般に多用されてきた。しかしPMMAは、硬化収縮が大きく、熱可塑性樹脂であるため耐熱性が不十分であるという問題があった。一方、光・電子機器分野に利用される光学部材用樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や機械特性が求められ、エポキシ系樹脂がよく用いられていた。
【0003】
ところで、近年、光・電子機器分野でも高強度のレーザ光、青色光又は近紫外光の利用が広がり、従来以上に色相に優れた樹脂が求められている。一般にエポキシ樹脂は、可視域での透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られていない。これに対して、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を用いたエポキシ樹脂は、紫外から近紫外域での透明性も比較的高いが、熱や光によって着色し易い等の問題点があった。そこで、例えば、特許文献1や特許文献2では、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルに含まれる着色原因の一つである不純物の低減方法が開示されている。
【0004】
また近年、例えば特許文献3では、光学部材用途に、透明性、着色性に優れるシリコーン樹脂を用いる例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−171439号公報
【特許文献2】特開2004−75894号公報
【特許文献3】特開2004−2810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2等の方法により、着色が低減されたエポキシ樹脂についても、色相の改善の余地がある。また、特許文献3等のシリコーン樹脂は、一般に弾性率が低い、取り扱いが難しい、線膨張係数が大きい等、機械特性に問題があることが懸念されている。こうした事情から、色相及び機械特性に優れる光学用樹脂組成物が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、色相及び機械特性に優れる硬化物を用いた光学部材及びこれらを得ることが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)一般式(1)で表され、一分子中にSi−H基を2個有する化合物、(B)一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を、少なくとも3個有する化合物、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有してなる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
このような熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、色相及び機械特性に優れる。
【0009】
【化1】


(式中、Xは2価の脂肪族炭化水素基又はジメチルシロキシレン基を表し、Yはそれぞれ独立に3価の飽和炭化水素基を表し、nは1から20の整数を示す。)
【0010】
上記(A)成分は、一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を少なくとも1個有する酸無水物と、一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンと、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物と、を反応させて得られるものであることが好ましい。
【0011】
上記酸無水物は、脂環式炭化水素基を有することが好ましい。
【0012】
上記アミンは、鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及びジメチルシロキシレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有することが好ましい。
【0013】
上記鎖状ジメチルシロキサン化合物は、一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化2】


(式中、kは1から20の整数を示す。)
【0015】
本発明は、さらに上記熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる光学部材を提供する。
上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を光半導体用途の光学部材へ適用すると、光学部材の色相及び機械特性が良好なため、光学素子の特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の黄色度(YI)が低く、色相が良好で、曲げ試験において機械特性に優れる硬化物を提供することができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、機械特性や色相が良好であることから、光半導体用封止樹脂等の電子材料用途の光学部材として好適である。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物を光学部材へ適用すると、機械特性や色相が良好なため、光学素子の特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光学部材を用いたLEDパッケージの具体例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)一般式(1)で表され、一分子中にSi−H基を2個有する化合物、(B)一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を、少なくとも3個有する化合物、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有する。
【0019】
【化3】


(式中、Xは2価の脂肪族炭化水素基又はジメチルシロキシレン基を表し、Yはそれぞれ独立に3価の飽和炭化水素基を表し、nは1から20の整数を示す。)
【0020】
((A)成分)
本発明の(A)成分は、一般式(1)で表され、一分子中にSi−H基を2個有する化合物である。
【0021】
式(1)において、Xは2価の脂肪族炭化水素基又はジメチルシロキシレン基であり、脂肪族炭化水素基は鎖状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であることが好ましい。また、鎖状脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜6であることが好ましく、脂環式炭化水素基は、炭素数6〜15であることが好ましい。脂肪族炭化水素基としては、4,4’−メチレンビスシクロヘキシル基、4,4’−メチレンビス(2−メチル−1−シクロヘキシル)基、1,2−シクロヘキシレン基、5−メチレン−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基等が挙げられ、これらの中でも、1,3−プロピレン基が好ましい。
【0022】
本明細書中、ジメチルシロキシレン基とは、下記式(i)で表される構造を有する2価の基を意味する。式中、*は他の原子と結合していることを表す。また、式中、mは1〜20の整数であることが好ましい。
【化4】

【0023】
式(1)において、2つのYはそれぞれ独立に3価の飽和炭化水素基であり、脂環式炭化水素基を有することが好ましい。また、3価の飽和炭化水素基は、炭素数2〜8であることが好ましい。3価の飽和炭化水素基としては、例えばノルボルナン骨格を有する炭化水素基、シクロヘキサン骨格を有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、ノルボルナン骨格を有する炭化水素基が好ましい。
【0024】
(A)成分は、一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を少なくとも1個有する酸無水物と、一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンと、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物と、を反応させて得られるものであることが好ましい。
【0025】
上記、一分子中に、Si−H基と反応性を有する二重結合を少なくとも1個有する酸無水物は、脂環式炭化水素基を有することが好ましく、また炭素数4〜10であることが好ましい。上記酸無水物としては、例えばノルボルネンジカルボン酸無水物、メチルノルボルネンジカルボン酸無水物、メチレンノルボルナンジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられ、これらの中でも、ノルボルネンジカルボン酸無水物が好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンは、鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及びジメチルシロキシレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有することが好ましく、鎖状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を有する炭化水素基、又はジメチルシロキシレン基のアミンであることが好ましい。鎖状脂肪族炭化水素基を有する炭化水素基は、炭素数2〜6であることが好ましく、脂環式炭化水素基を有する炭化水素基は、炭素数6〜15であることが好ましい。
【0027】
上記アミンとしては、4,4’−メチレンビス(アミノシクロヘキサン)、4,4’−メチレンビス(1−アミノ−2−メチルシクロヘキサン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミン、ジメチルシロキサンジメチルジアミン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−プロパンジアミンが好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましく、これらの中でも、kが1のテトラメチルジシロキサンが好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。式(2)において、kは1から20の整数である。
【化5】

【0029】
本発明における(A)成分を得る方法は、例えば一分子中にSi−H基と反応性を有する不飽和二重結合を少なくとも1個有する酸無水物を一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンでイミド化することにより得られるイミド化物を、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物でヒドロシリル化することにより得られるものであっても良い。
【0030】
上記イミド化反応は有機溶媒中で行われることが好ましく、有機溶媒は特に制限されないが、反応後の除去と脱水のし易さからトルエンが好ましい。また、酸とアミンの当量比(酸/アミン)は1.1〜0.9とすることが好ましい。当量比が1.1より大きいと酸過剰となり、硬化物の色相が悪くなる傾向がある。また、当量比が0.9未満では、アミド酸が生成し、イミド化物が得られにくい傾向がある。また、イミド化物の、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物によるヒドロシリル化は、溶媒中、ヒドロシリル化触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0031】
上記ヒドロシリル化に用いられる溶媒は、除去のし易さからトルエンであることが好ましく、ヒドロシリル化触媒は触媒活性が良ければ特に制限されるものではない。また、反応温度は溶媒の種類により異なるが、50から150℃の範囲が好ましい。反応温度が50℃未満では、ヒドロシリル化が十分進行せず、また150℃より高いと硬化物に着色が起こり、色相が悪くなる傾向がある。また、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合とSi−H基の当量比(二重結合/Si−H基)は、1〜100であることが好ましい。当量比が1未満では、硬化物の残存二重結合が色相を悪くする要因となり、また100を超えると未反応の鎖状ジメチルシロキサン化合物の除去に時間がかかる。
【0032】
本発明における(A)成分を得る別の方法は、例えば、一分子中にSi−H基と反応性を有する不飽和二重結合を少なくとも1個有する酸無水物を、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物でヒドロシリル化することにより得られるヒドロシリル化物を、一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンでイミド化することにより得るものであっても良い。
【0033】
上記酸無水物の、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物によるヒドロシリル化は、溶媒中、ヒドロシリル化触媒の存在下で行われることが好ましい。ヒドロシリル化の溶媒は、特に制限されるものではないが、除去のし易さからトルエンであることが好ましい。ヒドロシリル化触媒は触媒活性が良ければ特に制限されるものではない。また、反応温度は溶媒の種類により異なるが、50から150℃の範囲が好ましい。反応温度が50℃未満では、ヒドロシリル化が十分進行せず、また150℃より高いと硬化物に着色が起こり、色相が悪くなる傾向がある。また、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合とSi−H基の当量比は、1〜100であることが好ましい。当量比が1未満では、熱硬化性樹脂組成物中のSi−H基が少なくなり硬化が進行しにくくなる傾向があり、また100を超えると未反応の鎖状ジメチルシロキサン化合物の除去に時間がかかる。
【0034】
上記酸無水物の、一分子中にSi−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物によるヒドロシリル化物を、一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンでイミド化する際の、酸とアミンの当量比は1.1〜0.9とすることが好ましい。当量比が1.1より大きいと酸過剰となり、硬化物の色相が悪くなる傾向にある。また、当量比が0.9未満では、アミド酸が生成し、イミド化物が得られにくい傾向がある。また、イミド化は有機溶媒中で行われることが好ましく、溶媒は特に制限されるものではないが、反応後の除去と脱水のし易さから、トルエンであることが好ましい。
【0035】
((B)成分)
本発明の(B)成分は、一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を、少なくとも3個有する化合物である。上記Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合としては、例えば、(メタ)アクリレート、ビニル、アリル基等の官能基由来の二重結合等が挙げられる。(B)成分としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート等の多官能アクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートが、硬化物の色相の観点から好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(B)成分の官能基を除いた部分は、炭素数5〜15の鎖状炭化水素基、又は芳香族環、脂肪族環若しくは複素環を含む基であることが好ましい。
【0036】
((C)成分)
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒は、中心金属を有する錯体であり、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されるものではない。中心金属としては、白金、鉄、アルミニウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム等が挙げられる。これらの中でも、中心金属が白金であるヒドロシリル化触媒が好ましい。中心金属が白金であるヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(OSSKO触媒)、白金Nジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(KARSTEDT触媒)、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体(ASHBY−KARSTEDT触媒)、白金オクタナール/オクタノール錯体(LAMOREAUX触媒)等が挙げられる。
【0037】
熱硬化性樹脂組成物には、上記必須成分以外に、硬化遅延剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、フェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、接着性付与剤、重合禁止剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0038】
熱硬化性樹脂組成物において、上記(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して200から500質量部とするのが好ましい。(B)成分の配合量が、200質量部未満又は500質量部より大きい場合、硬化物中に有機溶媒で抽出される可溶物が多く残り、硬化物がもろくなる傾向がある。また上記(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.05から0.10質量部とするのが好ましい。(C)成分の配合量が0.05質量部未満の場合には硬化反応が進行しにくくなり、0.10質量部より大きい場合には触媒の影響で硬化物が着色し、黄色度が高くなる傾向がある。
【0039】
上記(A),(B)及び(C)成分を含有する熱硬化性樹脂組成物を加熱して、ヒドロシリル化反応を行うことにより、硬化物を得ることができる。ヒドロシリル化による硬化反応の反応温度は、50℃から150℃であることが好ましい。反応温度が50℃未満では硬化が不十分となり、150℃を超えると硬化物が着色する傾向にある。
【0040】
本発明の光学部材は、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物からなるものである。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた光学部材の製造方法としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物の溶液を所望の部分に注型、ポッティング、又は金型へ流し込み、加熱によって硬化させる方法が挙げられる。また、硬化阻害や着色防止のため、あらかじめ窒素バブリングによって熱硬化性樹脂組成物中の酸素濃度を低減することが望ましい。
【0041】
図1は、本発明の光学部材を用いた表面実装型LEDパッケージの具体例を示す模式断面図である。図1に示す表面実装型LEDパッケージ200は、半導体発光素子102と、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物からなる封止体(透明封止樹脂)104と、樹脂成形体100とを有する。
樹脂成形体100は、リードフレームから成形した一対のリード105、106を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる樹脂部103によりモールドした構造を有する。
樹脂部103には開口部101が形成されており、その中に半導体発光素子102が載置されている。そして、半導体発光素子102を包含するように透明封止樹脂104により封止されている。半導体発光素子102は、リード106の上にマウントされている。
そして、半導体発光素子102上の電極102aとリード105とが、ワイア107により接続されている。2本のリード105、106を通して半導体発光素子102に電力を供給すると発光が生じ、その発光が透明封止樹脂104を通して光取り出し面108から取り出される。
【0042】
以上、説明した本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物の色相が良好で、機械特性に優れる熱硬化性樹脂組成物であり、その硬化物を用いた透明基板、レンズ、接着剤、光導波路や発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の光学部材として使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0044】
(化合物Aの合成)
丸底フラスコにマグネチックスターラー、トルエン(22質量部)及びexo−ノルボルネンジカルボン酸無水物(22質量部)を入れ攪拌した。次いで、5質量部のトルエンに溶解した1,3−プロパンジアミン(5質量部)を1時間かけて滴下し、滴下終了後、フラスコにdeanstark装置を装着し、ジムロート還流冷却管を装着して、1時間加熱還流を行った。その後、フラスコを水浴中で放置し、析出したイミド化物を(25質量部)得た。
【0045】
次に別の丸底フラスコにマグネチックスターラー、得られたイミド化物(5.5質量部)、トルエン(25質量部)、テトラメチルジシロキサン(20質量部)、及び白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(0.058質量部)を入れ攪拌した。次いで、ジムロート還流冷却管を装着し、1時間加熱還流を行った。その後、ロータリーエバポレーターで揮発分を除き、化合物A(25質量部)を得た。なお、生成物の構造はH−NMRから確認した。
【0046】
(実施例1)
(A)成分として化合物A(10質量部)、(B)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学製;31質量部)、及び(C)成分として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(0.0082質量部)を均一になるまで混合した。次いで、厚さ1mm及び3mmとなるように、アルミカップに得られた混合液を入れ、オーブンで100℃1時間、150℃1時間加熱し、厚さ1mmの硬化物及び厚さ3mmの硬化物を得た。
【0047】
(実施例2〜4)
化合物A10質量部に対する、(B)成分の種類及び配合量並びに(C)成分の配合量を下記表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。
【0048】
(比較例1〜3)
化合物A10質量部に対する、(B)成分の種類及び配合量並びに(C)成分の配合量を下記表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、表1中の数値の単位は質量部である。また、表1中の(B)成分の種類の記載はそれぞれ下記化合物を表す。
TMPA:トリメチロールプロパントリアクリレート 共栄社化学株式会社製
PE−4A:ペンタエリスリトールテトラアクリレート 共栄社化学株式会社製
DPE−6A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 共栄社化学株式会社製
V#802:トリペンタエリスリトールオクタアクリレート 大阪有機化学株式会社製
MMA:メチルメタクリレート 和光純薬工業株式会社製
1G:エチレングリコールジメタクリレート 新中村化学工業株式会社製
【0051】
[硬化物の評価]
上記実施例1〜4、比較例1〜3で得られた硬化物の機械特性及び色相を以下の方法により測定した。
【0052】
(機械特性)
硬化物から3×20×50mmの試験片を切り出し、三点曲げ試験装置を用いてJIS−K−6911に準拠した三点支持による曲げ試験を行った。得られた結果から、数式(1)により曲げ強度を算出した。支点間距離は24mm、クロスヘッド移動速度は0.5mm/分、測定温度は室温であった。
【数1】


ここに、σfB:曲げ強度(MPa)、P’:試験片が折れた時の加重(N)、L:支点間距離(mm)、W:試験片の幅(mm)、h:試験片の厚さ(mm)である。
【0053】
(色相)
厚さ1mmの硬化物の試験片に対し、日本電色製色度計を用いて黄色味を示す黄色度(YI)を測定した。上記実施例1〜4、比較例1〜3で得られた硬化物の機械特性、すなわち室温(25℃)での曲げ強度と、硬化物の色相、すなわち黄色度を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例1〜4で得られた硬化物はいずれも高い曲げ強度を有し、機械特性に優れるものであった。さらに、黄色度(YI)が低く、色相が良好であった。一方、比較例1のように白金触媒を添加しなかった場合、また比較例2,3のように、(B)成分の不飽和二重結合の数が1個又は2個であった場合には、硬化物が得られず、曲げ強度及び黄色度を評価できなかった。
【符号の説明】
【0056】
100・・・樹脂成形体、101・・・開口部、102・・・半導体発光素子、102a・・・電極、103・・・樹脂部、104・・・封止体(透明封止樹脂)、105,106・・・リード、107・・・ワイア、108・・・光取り出し面、200・・・表面実装型LEDパッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表され、一分子中にSi−H基を2個有する化合物;
(B)一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を、少なくとも3個有する化合物;及び
(C)ヒドロシリル化触媒;
を含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、Xは2価の脂肪族炭化水素基又はジメチルシロキシレン基を表し、Yはそれぞれ独立に3価の飽和炭化水素基を表し、nは1から20の整数を示す。)
【請求項2】
前記(A)成分が、一分子中に、Si−H基と反応性を有する不飽和二重結合を少なくとも1個有する酸無水物と、一分子中にアミノ基を少なくとも2個有するアミンと、一分子中に、Si−H基を2個有する鎖状ジメチルシロキサン化合物と、を反応させて得られるものである、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸無水物が脂環式炭化水素基を有する、請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アミンが鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及びジメチルシロキシレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有する、請求項2又は3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記鎖状ジメチルシロキサン化合物が一般式(2)で表される化合物である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】


(式中、kは1から20の整数を示す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる光学部材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67217(P2012−67217A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214000(P2010−214000)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】