説明

熱調節のためのポリウレタン塗膜およびその使用

本発明は、パイプまたはホースを備え、これによって、ポリウレタン自体またはポリウレタンに隣接した物質が、パイプ/ホースを通って流れる媒体による熱交換によって熱調節され得る、ポリウレタン塗膜ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ/ホースを通って流れる媒体による熱交換によって、ポリウレタン自体またはポリウレタンに隣接する材料が熱調節され得る、パイプまたはホースを有するポリウレタン塗膜およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のカプセル化は、現在、集中的に取り組まれている重要な技術的主題である。その背景は、とりわけ、電気エネルギーと熱エネルギーの両方をできる限り効率的に活用することである。太陽電池のエネルギー変換中に、太陽電池の表面で放出される熱エネルギーは、電気的収率を減少させる。これは、特に夏場、表面が熱いほど電流収率が下がることを意味する。したがって、太陽電池はほとんどの場合、暑い夏の日よりも寒くて晴れた冬の日に、より効果的である。太陽電池の収率は、その熱を分散することにより増大できる。その上、分散した熱を所望により使用することもできる。原理上は、太陽電池の冷却は、独国出願公開第43,07,705号および独国出願公開第299,13,202号から既知である。しかしながら、これらの場合において、例えば鋼鉄の冷却パイプまたはプラスチックホースが使用されるため、冷却は外部から行われ、伝達ロスによってのみ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国出願公開第43,07,705号明細書
【特許文献2】独国出願公開第299,13,202号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率的に太陽電池をカプセル化し、ならびに生成した熱を効率的に分散し、所望により使用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリウレタン塗膜によって、上記目的を達成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、パイプまたはホースを備えることを特徴とするポリウレタン塗膜であって、該パイプまたはホースは、好ましくは平行に配列し、ポリウレタン塗膜の厚さの95%以下、好ましくは80%以下の直径を有し、熱交換のための媒体が流れることを特徴とする、ポリウレタン塗膜を提供する。
【0007】
パイプまたはホースは、円形または平らなパイプまたはホースの形であってよい。多チャンネルのパイプまたはホースを、パイプ/ホースとして使用することもできる。
【0008】
好適なパイプまたはホースの直径は、ポリウレタン塗膜のほとんどの用途において、2〜20mmである。
【0009】
ガラスパイプを用いるのが特に好ましい。しかしながら、プラスチック材質のパイプ/ホースを用いることもできる。
【0010】
媒体としては、その高い熱容量のため液体が好ましい。しかしながら、例えば空気のような気体を用いることもできる。特に好ましい媒体(冷却用または加熱用媒体)は、例えば水またはシリコーン油といった、非腐食性で、無毒性の媒体である。メルトもまた、(その高い熱容量のため)媒体として使用できる。炭化水素、クロロフルオロカーボン、パラフィン油および先行技術に既知の他の媒体、ならびにそれらの混合物が本発明でも同様に使用できる。特に好ましくは、媒体は透明媒体である。
【0011】
ポリウレタンはパイプ/ホースによって保護されており、媒体はポリウレタン中へ拡散できないため、媒体として攻撃的な(aggressive)媒体を使用することも可能である。
【0012】
ポリウレタン中のパイプまたはホースを通って流れる媒体は、高温でパイプまたはホース内を通過させることによって加熱媒体としても使用することができ、特に透明なポリウレタン上での例えば結露の形成が妨げられる。
【0013】
冷却の場合、パイプ/ホース内を流れる媒体によって取り込まれた熱は、熱交換によって分散でき、例えば熱水を作るために用いられ得る。
【0014】
ソーラーモジュールにおいて使用する際、ポリウレタンは、太陽電池とポリウレタン中に組み込まれたパイプまたはホースの両方を保護し、特にガラスパイプを使用する場合にそうである。ポリウレタンはパイプ/ホースおよび媒体と同様に透明であり得るため、太陽電池の効率を大きく損なうことなく、技術的に簡単な方法で、太陽電池をポリウレタンによってカプセル化することができる。ポリウレタン、パイプまたはホースおよび媒体は、ソーラーモジュールの場合のように、特に光源に向かって配向される際に、光線ができるだけ妨げられずに通過できるように透明である。さらに、本発明のポリウレタン塗膜は、透明で、キャスト可能で、比較的引っかき抵抗性があり、弾力のあるポリウレタンから、簡単な方法で製造可能であるという利点を有している。
【0015】
本発明は、さらに、少なくとも光源に向かって配向される場合に透明であるポリウレタン中にカプセル化された太陽電池を含んでなるソーラーモジュールを提供する。このソーラーモジュールは、ポリウレタンがパイプまたはホースを備え、好ましくはパイプまたはホースが平行に配列し、熱交換のための媒体が通過し、パイプおよびホースならびに媒体は、少なくとも光源に向かって配向される場合に透明であることを特徴とする。
【0016】
本発明のソーラーモジュールは、太陽電池の能動冷却により性能を向上できるため、太陽電池の総合的性能が向上するという利点を有する。
【0017】
しかしながら、パイプ/ホース中に冷却媒体を備える透明なポリウレタンは、熱交換器の役割を果たすだけでなく、太陽電池を衝撃や引っかきから保護する。さらに、ポリウレタンは、他のプラスチックと比較して、より高い引っかき抵抗性とより高い柔軟性を有している。ガラスと比較すると、ポリウレタン塗膜は壊れにくく、その上、高弾性であるという利点を有している。
【0018】
透明なポリウレタン塗膜は、太陽に面するソーラーモジュール側に位置するのが好ましい。透明なポリウレタン塗膜は、太陽から離れた側にある必要はない。太陽から離れた側においては、従来技術から既知のどのポリウレタン材料も使用できるが、本発明のポリウレタン塗膜を使用することもできる。
【0019】
本発明のポリウレタン塗膜は、太陽電池のカプセル化のための塗膜としてだけでなく、反応器の熱調節のための塗膜としても使用できる。
【0020】
それらは、太陽熱収集器の製造において、ならびに、温室の製造および熱調節において使用できる。ポリウレタン塗膜は、ファサード、床仕上材または同様のものの塗膜として、ならびにパイプ断熱としても使用できる。
【0021】
透明なポリウレタン塗膜は、透明反応器の製造に適している。ここで、例としては、いわゆる藻類反応器が挙げられる。藻類は反応器中、光影響下(光合成)で、COから酸素を作り出す。藻類が効率的に働くために、約27℃の温度が維持されるべきであり、これは、反応器壁を介して、熱交換により一定に保たれる。反応器壁は、本発明の透明なポリウレタン塗膜からなるか、または、例えばガラスでできた反応器が本発明のポリウレタン塗膜で被覆されている。
【0022】
本発明のポリウレタン塗膜を、断熱部材の製造において使用することもできる。前記断熱部材は、例えば、建物の断熱において使用できる。ここでは特に、熱交換媒体としてパラフィンが使用できる。したがって、例えば窓または透明の外装ファサードの形をした前記部材は、建物の内部を熱調節できる。
【0023】
例えば海洋工業においてパイプ断熱形成用の塗膜の形で好適に使用可能なシンタクチックポリウレタンを、ポリウレタンとして使用することもできる。
【0024】
ポリウレタン塗膜は、好ましくは、中空微小球体を含有することができる。中空微小球体はポリウレタン塗膜において断熱媒体の役割を果たす。
【0025】
塗膜はそれ自体既知の工程、まず始めにパイプ/ホースを選び、キャスト、吹き付け、または射出成形によってポリウレタン反応混合物を塗布することによって生産できる。
【0026】
図1に、パイプ(1)をポリウレタン(2)中に配列した、本発明の塗膜の断面図を示す。媒体(図示せず)は、パイプを通って流れる。
【0027】
図2に、横方向および縦方向に走るパイプ(1)ならびにポリウレタン(2)中に組み込まれた太陽電池(3)を有する、ソーラーモジュールの断面図を示す。モジュールは、光源に向かって、ガラスまたはプラスチック材料の最上層(4)によって、さらに保護さる。モジュールは、さらに保護および/または固定化を目的とするプレート(5)ならびにフレーム(6)を有する。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプまたはホースを備えることを特徴とするポリウレタン塗膜であって、該パイプまたはホースは、好ましくは平行に配列し、ポリウレタン塗膜の厚さの95%以下の直径を有し、熱交換のための媒体が流れることを特徴とする、ポリウレタン塗膜。
【請求項2】
ポリウレタンが透明であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン塗膜。
【請求項3】
パイプまたはホースが透明であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン塗膜。
【請求項4】
媒体が透明であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン塗膜。
【請求項5】
反応器、ソーラーモジュールおよび太陽熱収集器の製造における、反応器、ファサード、床仕上材および温室の塗膜における、ならびにパイプ断熱のための、請求項1に記載のポリウレタン塗膜の使用。
【請求項6】
少なくとも光源に向かって配向される場合に透明であるポリウレタン中にカプセル化された太陽電池を含んでなるソーラーモジュールであって、該ポリウレタンが、熱交換のための媒体が流れ好ましくは平行に配列したパイプまたはホースを備え、該パイプまたはホースおよび媒体が、少なくとも光源に向かって配向される場合に透明であることを特徴とする、ソーラーモジュール。

【公表番号】特表2011−524509(P2011−524509A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512003(P2011−512003)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003718
【国際公開番号】WO2009/146813
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】