説明

熱転写フィルム及びこれを用いたハードコート体

【課題】樹脂成形品に対して、優れた耐候性と、長期間性能が保持されるハードコート性とを兼ね備えた表面保護層を熱転写により容易に形成することができる熱転写フィルム、および、この熱転写フィルムを用いて、被転写体に熱転写して得られる表面保護層を有するハードコート体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】基材フィルム上に、少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層された熱転写フィルムであって、該表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物であり、該接着層が熱融着樹脂を含む熱転写フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写フィルム及びこれを用いた表面保護層を有するハードコート体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形品に耐傷性などの表面保護性を付与するために、いわゆる樹脂表面にハードコート層を設けることが行われ、このようなハードコート層はコーティングや転写により形成されている(特許文献1〜3)。
【0003】
一方、一般住居の玄関ドアや外装材、公共施設の床材や外壁などの内外装、あるいは建造物や屋外に設置される構造物は、日々直射日光や風雨に晒されるため、これらの内外装材や建造物には、極めて厳しい耐候性が求められている。
【0004】
しかしながら、特許文献に記載されているような従来のハードコート層は、樹脂成形品に耐傷性などの特性を付与するものではあるが、耐候性については十分な特性を有するものではない。
【0005】
ところで、このようなハードコート性と耐候性とは、相反する特性であり、ハードコート性が良い、すなわち表面の硬度が低く、柔軟性のある表面層を有するものでは、直射日光や風雨に晒された際に、表面層が剥離するようなことはなく、表面形状を維持し、耐候性を有するものであるが、表面の硬度が高いもの、すなわち硬直なものでは、表面層が剥離してしまい、耐候性に乏しいことが知られている。したがって、特に外装材では、いわゆるハードコート性と耐候性とを兼ね備えた表面保護層を有する製品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−345228号公報
【特許文献2】特開2007―253341号公報
【特許文献3】特開平10−166510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂成形品に対して、優れた耐候性と、長期間性能が保持されるハードコート性とを兼ね備えた表面保護層を熱転写により容易に形成することができる熱転写フィルム、および、この熱転写フィルムを用いて、被転写体、すなわちプラスチック基材に熱転写して得られる表面保護層を有するハードコート体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。本発明の要旨は、以下のとおりである。
1.基材フィルム上に、少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層された熱転写フィルムであって、該表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物であり、該接着層が熱融着樹脂を含む熱転写フィルム。
2.電離放射線硬化型樹脂が6〜15官能性のウレタン(メタ)アクリレートである上記1に記載の熱転写フィルム。
3.電離放射線硬化型樹脂が6〜9官能性のウレタン(メタ)アクリレートである上記2に記載の熱転写フィルム。
4.熱融着樹脂がアクリル系ヒートシール樹脂である上記1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルム。
5.表面保護層が、さらに耐傷フィラーを含有する硬化物である上記1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルム。
6.表面保護層が、さらに耐候剤を含有する硬化物である上記1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルム。
7.耐候剤が、トリアジン系紫外線吸収剤または反応性を有するヒンダードアミン系光安定剤、あるいは、トリアジン系紫外線吸収剤および反応性を有するヒンダードアミン系光安定剤である上記6に記載の熱転写フィルム。
8.プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む上記1〜7のいずれかに記載の熱転写フィルム。
9.上記1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルムを用いて、被転写体に転写した、表面保護層を有する被転写体であるハードコート体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラスチック基材などの被転写体に対して、優れた耐候性と、長期間性能が保持されるハードコート性とを兼ね備えた表面保護層を熱転写により容易に形成することができる熱転写フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の熱転写フィルムの構成および転写フィルムにより表面保護層が転写形成されたハードコート体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[熱転写フィルム]
本発明の熱転写フィルムは、基材フィルム上に少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層されたものであり、表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物が架橋硬化されてなる硬化物からなる層であり、接着層が熱融着樹脂を含む層である熱転写フィルムである。
【0012】
図1は、本発明の熱転写フィルムおよび熱転写フィルムにより表面保護層を転写したハードコート体の好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の熱転写フィルム5は、基材フィルム1の上に、表面保護層2とプライマー層3と接着層4とが順に積層されたものである。そして、このような熱転写フィルム5を用いて、熱転写フィルム5の接着層4が被転写体6の表面に接するように重ね、加熱加圧した後、基材フィルム1を表面保護層2から剥離することにより、被転写体6の上に接着層4を介してプライマー層3および表面保護層2が転写され、表面保護層2が形成されたハードコート体7が得られる。
以下、本発明の熱転写フィルムの構成について詳細に説明する。
【0013】
《基材フィルム》
本発明で用いられる基材フィルム1は、表面保護層などを形成でき、被転写体に転写する際の加熱温度に耐えるものであればよく、金属フィルムや樹脂フィルムなどが挙げられる。樹脂フィルムであれば、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの各種の樹脂フィルムを用いることができる。これらのうち、耐熱性の点でポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂フィルムの厚さは4〜200μmが通常適用される。薄すぎるとカールやシワが入りやすく、厚すぎるとコストアップや熱伝導効率が低下するようになるため、12〜100μmがより好ましい。また、金属フィルムとしては、例えば、アルミニウム箔や銅箔などが挙げられる。
なお、これらの基材フィルムは、転写する際の、表面保護層との間の離型性を確保するために、必要に応じて基材フィルム表面に離型処理を施してもよい。
【0014】
《表面保護層》
表面保護層2は、電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物からなる層であって、ハードコート性と耐候性とを有する層である。また、この樹脂組成物には、さらに、ハードコート性や耐候性を向上させるために、耐傷フィラーや、耐候剤を含有することが好ましく、この耐候剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤や、反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤があげられる。
【0015】
使用できる電離放射線硬化型樹脂としては、従来から電離放射線硬化型の樹脂として慣用されている重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができるが、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95〜100%程度としても塗工性を有し、かつ硬化する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。そのような電離放射線硬化型樹脂の代表例を以下に記載する。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
重合性オリゴマーないしはプレポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーやプレポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーやプレポリマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。これらのオリゴマーないしはプレポリマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、6〜15が高架橋密度によるハードコート性付与の点で好ましく、うねり防止(面状態向上)という点で6〜9がより好ましい。
【0016】
さらに、電離放射線効果型樹脂には、上記の多官能性の重合性オリゴマーの他、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシアクリレートとの反応により得られるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートや、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレートなどのような高分子ウレタン(メタ)アクリレートを併用することができ、併用することにより、さらに耐候性を向上することができる。これらのうち、カプロラクトン系のものが、耐候性の向上点でより好ましいものである。
【0017】
なお、本発明においては、前記多官能性のウレタン(メタ)アクリレートとともに、その粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートのような希釈剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、低分子量の多官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。また、希釈剤としては、上記のモノマーの他、通常の有機溶媒を用いて、樹脂組成物の塗工性を確保することもできる。
【0018】
また、本発明の表面保護層を構成する樹脂組成物には、反応性官能基Aを有するシリコーン化合物が配合されており、この反応性官能基Aを有するシリコーン化合物は、表面保護層に滑り性を与え耐傷性を向上させ、ハードコート性を付与するとともに、基材フィルムとの適度な剥離性を示すためにも用いるものである。
【0019】
本発明で用いる、反応性官能基Aを有するシリコーン化合物は、シリコーン鎖(シリコーンオイル)の側鎖及び/又は末端に反応性の有機基を導入されているもので、反応性の官能基としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基など種々の官能基があるが、電離放射線硬化型樹脂を含む樹脂組成物が硬化する際に、該電離放射線硬化型樹脂と反応し、結合して一体化するため、表面にブリードアウトすることなく、表面保護層に滑り性を付与し、耐擦傷性等を向上させるため、特に(メタ)アクリロイル基が導入された、シリコーン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
反応性官能基Aを有するシリコーン化合物の含有量としては、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部の範囲、さらに0.5〜10質量部の範囲であることが、滑り性の点から好ましい。
【0021】
また、表面保護層を形成するための樹脂組成物には、さらに、ハードコート性や耐候性を向上させるために、耐傷フィラーや、耐候剤を含有することが好ましく、この耐候剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤や、反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤があげられる。
【0022】
本発明で用いる耐傷フィラーとしては、無機系と有機系のフィラーがあり、無機物では、例えば、α−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。
【0023】
これらの無機系の耐傷フィラーのうち、シリカは好ましいものの一つである。シリカは耐摩擦性を向上させ、かつ表面保護層の透明性を阻害しない。シリカとしては従来公知のシリカから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、コロイダルシリカを好適に挙げることができる。コロイダルシリカは、添加量が増えた場合であっても、透明性に影響を及ぼすことが少なく、好ましい。シリカの粒子径としては、1次粒子径が5〜1000nmのものを用いることが好ましく、10〜50nmのものがさらに好ましく10〜30nmのものが特に好ましい。1次粒子径が1000nm以下のシリカを用いると透明性が確保される。また、用いるシリカの1次粒子径は一種類である必要はなく、異なる1次粒子径のシリカを混合して用いることも可能である。シリカの配合量としては、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して1〜20重量部の割合であることが好ましい。また、球状のα−アルミナあるいはコロイダルアルミナも、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいことや、球状の粒子を比較的得やすいことから、好ましいものである。
【0024】
一方、有機物のフィラーでは、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズがあげられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とすることが好ましい。配合量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して1〜20重量部程度の割合であることが好ましい。
【0025】
本発明の表面保護層用の樹脂組成物には耐候剤を含むことが好ましい。耐候剤としては紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)があり、紫外線吸収剤(UVA)は有害な紫外線を吸収し、本発明の表面保護層が設けられたハードコート体の長期耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤(HALS)は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化するものである。本発明で用いることができる紫外線吸収剤としては、二酸化チタンや酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機系のものや、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤があげられ、また、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤があげられる。
【0026】
これらのうち、本発明で好ましく用いられるトリアジン系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0027】
トリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。これまで一般的には、バインダー樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を1質量部以上加えると、該吸収剤がブリードアウトする場合があるため、より優れた紫外線吸収能を得ようとしても得られなかった。しかし、本発明においてトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合には、該紫外線吸収剤と電離放射線硬化型樹脂及び特定の光安定剤との組合せにより、1質量部以上という多量の紫外線吸収剤を添加しても、該吸収剤がブリードアウトすることなく、優れた耐候性を得ることが可能となった。
【0028】
また、本発明で用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤であることが好ましく、反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
反応性官能基Bは、電離放射線硬化型樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などがあげられる。
【0029】
反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。
【0030】
また、本発明で用いられる表面保護層用の樹脂組成物には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
なお、電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することがきできる。
【0031】
本発明の熱転写フィルムの表面保護層2は、上記の多官能性のウレタン(メタ)アクリレートである電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物と、必要により耐傷フィラー、耐候剤である紫外線吸収剤や光安定剤を含む樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、電離放射線などを照射することにより架橋硬化させて形成する層であり、表面保護層2の形成は、以下のようにして行われる。
【0032】
表面保護層を形成する樹脂組成物の塗工は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性と防汚性とを得る観点から、好ましくは2〜20μmである。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗工層を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
【0033】
上記の樹脂組成物の塗工により形成した未硬化樹脂層は、電子線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、表面保護層2が形成される。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0034】
照射線量は、電離放射線硬化型樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0035】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0036】
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
【0037】
《プライマー層》
次いで、基材フィルム1上に形成された表面保護層2に、プライマー層3、接着層4を積層する。プライマー層は、表面保護層2に対する応力緩和層として機能するもので、表面保護層2の耐候劣化による割れを抑制するために設けるものであるが、このプライマー層3を積層する際に、表面保護層2とプライマー層3との間の接着性を確保するために、架橋硬化した表面保護層2の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などの処理により表面保護層との間の接着性を高めることもできる。
【0038】
さらに、表面保護層2とプライマー層3との接着性を確保するために、表面保護層2の架橋硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層3を塗工した後、電離放射線を再び照射し、表面保護層2を完全硬化することにより、表面保護層2とプライマー層3との間の接着性を高めるようにすることもできる。
【0039】
本発明の熱転写フィルムにおいて、表面保護層2の上にプライマー層3を設ける場合、プライマー層3は、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートやポリエステル系ウレタンアクリレート、あるいはポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとからなる樹脂を用いて形成することが好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート系のものがより好ましい。これらの樹脂を用いてプライマー層を形成することで、応力緩和性が付与され、密着性や耐候性などに優れたものが得られる。
【0040】
ポリカーボネート系ウレタンアクリレートは、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤として使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
ここで、ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが好ましく挙げられる。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリカーボネート系ウレタンアクリレートのアクリル成分とウレタン成分との質量比は、特に制限されないが、耐候性、密着性の点で、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を80:20〜20:80の範囲とすることが好ましく、70:30〜30:70の範囲とすることがより好ましい。
【0042】
ポリエステル系ウレタンアクリレートは、ポリエステルジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリエステル系ポリウレタン高分子をラジカル重合開始剤として使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。ジイソシアネートやアクリルモノマーは、上記したポリカーボネート系ウレタンアクリレートの重合に用いるものから適宜選択されるものである。
【0043】
また、アクリルポリオールは、上記したアクリルモノマーにヒドロキシル基が導入されたものである。例えば、上記アクリルモノマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアクリレートを共重合させて合成することができる。これらのアクリルポリオールは、架橋剤としての機能を果たす。
【0044】
前記ポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとの質量比は、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート単独の100:0から10:90の範囲が好ましく、より好ましくは100:0〜30:70の範囲である。
【0045】
上記プライマー層3には、耐候性をさらに向上させるため、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)などの耐候性改善剤を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
【0046】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤などが好ましく挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に反応性基を有する紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0047】
紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層3を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部であり、特に好ましくは5〜20質量部である。また、光安定剤の含有量は、プライマー層3を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜5質量部である。
【0048】
プライマー層3の厚さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、十分な接着性を得るとの観点から、0.5〜10μmの範囲が好ましく、さらには1〜5μmの範囲が好ましい。
【0049】
プライマー層3の形成は、上記樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態で用い、公知の印刷方法、塗布方法などによって行うことができる。
【0050】
《接着層》
次いで、プライマー層3の上に接着層4が積層される。このような接着層4は、表面保護層を転写体の表面に形成するために、表面保護層を被転写体に接着するために設けられる層であり、接着層4に使用できる接着性の樹脂としては、被転写体の材質や熱転写の際の転写温度や圧力に応じて定められるものであるが、一般に、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の熱融着樹脂が好ましく、被転写体の材質や転写製品の用途に応じて、上記樹脂の中から1種または2種以上の樹脂が選定される。耐候性向上の点からアクリル樹脂単体が特に好ましい。
【0051】
また、この接着層4には、上記プライマー層3と同様、耐候性をさらに向上させるため、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)などの耐候性改善剤を含有させることもできる。使用できる紫外線吸収剤や光安定剤としては、プライマー層において述べたものが使用でき、これらの紫外線吸収剤の配合量は、接着層4を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部であり、特に好ましくは5〜20質量部であり、また、光安定剤の配合量は、接着層4を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜5質量部である。
【0052】
また、接着剤層4の厚さとしては、通常2〜25μmの範囲であり、3〜20μmの範囲が好ましい。2μm以上であれば被転写体6と、プライマー層3および表面保護層2との十分な接着性が得られ、25μm以下であると経済的に好ましい。
また、本発明の熱転写フィルムは、接着層の上にポリエチレンなどのカバーフィルム(保護フィルム)を貼り付けて表面を保護しておくことが、製品を保管する上で好ましく、カバーフィルムがある場合には、このカバーフィルムを剥がし、接着層を露出し、この接着層の面を介して被転写体に転写される。
【0053】
[ハードコート体]
以上のようにして得られる熱転写フィルム5を用いて、被転写体6に、接着層4を介してプライマー層3および表面保護層2からなる複合層を転写形成して、表面保護層2を有するハードコート体7が得られる。
【0054】
ハードコート体7を形成する被転写体としては、特に制限されるものではなく、耐候性とともに耐傷性や耐汚染性などのいわゆるハードコート性が必要になるもので、例えば、建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品や、家電製品などの樹脂製品があげられるが、特に、バルコニーの仕切り板、自動車のウインドウ、高速道路の壁面などのような透明プラスチックを用いた製品があげられる。
【0055】
本発明の熱転写フィルムによる被転写体への熱転写方法としては、特に限定されるものではなく、例えば熱転写する転写体の材質などに応じて、熱転写時の温度や圧力を変えて行うことができる。
【0056】
このようにして得られた表面保護層を有するハードコート体は、耐候性とともにハードコート性を有し、耐傷性に優れるものであった。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(評価方法)
(1)耐候性の評価(耐候性試験)
実施例及び比較例で得られたハードコート体を、ダイプラ・ウィンテス株式会社製メタルウェザーにセットし、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で300時間放置する耐候性試験を行った。該試験後、25℃50%RHの条件下で2日間保持してから、シート表面にクラックや白化などの外観を下記の基準で評価した。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観変化はほとんどなかった
△ :外観変化は若干あるが、実用上問題なかった
× :外観変化が著しかった
【0059】
(2)耐傷性
各実施例及び比較例で得られたハードコート体について、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ :外観にほとんど変化なかった
△ :外観に若干の傷つきや艶変化があった
× :外観に傷つきがあり、艶変化があった
【0060】
(3)耐傷性(耐候試験後)
上記耐候性試験を行ったハードコート体について、耐傷性試験と同様に、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観にほとんど変化なかった
△ :外観に若干の傷つきや艶変化があった
× :外観に傷つきがあり、艶変化があった
【0061】
(4)滑り性
(株)東洋精機製作所製「摩擦測定器AN型」を用いて、シートの滑り出し角度を測定することで滑り性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ :滑り角15°以下
△ :滑り角15°〜20°
× :滑り角20°以上
【0062】
(5)べたつき(ブリードアウトの評価)
実施例及び比較例で得られたハードコート体を常温下で24時間保管した後、ハードコート体の表面を指で触って、下記の基準で評価した。
○ :べたつきは全くなかった
△ :紫外線吸収剤などのブリードによるべたつきは若干あるが、実用上問題なかった
× :ブリードによるべたつきが著しかった
【0063】
(6)転写剥離性
転写工程において、基材シートを剥離したとき後の基材シートの外観を、下記の基準で評価した。
○ :各層が残らなかった
△ :各層が僅かに残った
× :各層がほとんど残った
【0064】
実施例1
基材フィルム1に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートを用い、該基材フィルム1の片面に下記の樹脂組成物からなる表面保護層2を膜厚3μmとなるように設け、175keV及び10Mrad(100kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(3μm)を形成した。
次いで、得られた表面保護層の面にコロナ放電処理をした上に、以下の組成からなるプライマー層3(膜厚3μm)を、アクリル樹脂からなる接着層4(膜厚4μm)を、順次積層して熱転写フィルム5を得た。
この熱転写フィルム5を用い、被転写体6(ポリカーボネート板、2mm厚)の片面に、160℃の熱をかけながらロール転写を行い、基材フィルム1を剥離し、表面保護層2、プライマー層3が接着層4を介して転写された表面保護層2を有するハードコート体7を得た。得られた評価結果を、用いた樹脂組成とともに表1に示す。
【0065】
表面保護層の樹脂組成物は次のとおりである。
6官能ウレタンアクリレート:100重量部
反応性官能基Aを有するシリコーン化合物:0.3重量部
紫外線吸収剤:4重量部
チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
反応性官能基Bを有する光安定剤(反応性HALS):4重量部
サノールLS−3410(商品名)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、BASFジャパン株式会社製
耐傷フィラー:コロイダルシリカ 10重量部
【0066】
また、プライマー層形成用の組成物は、以下の樹脂組成物と硬化剤とを100:5(質量比)の割合で混合して得られる組成物である。
樹脂組成物:
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比:70/30
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:15質量部
「チヌビン400(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:5質量部
「チヌビン479(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
ヒンダードアミン系光安定剤:6質量部
「チヌビン123(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
硬化剤:
ヘキサンメチレンジイソシアネート: 6質量部
【0067】
実施例2
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、6官能ウレタンアクリレートとカプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマーの混合樹脂(質量比70/30)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0068】
実施例3
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、9官能ウレタンアクリレートとした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0069】
実施例4
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、15官能ウレタンアクリレートとした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0070】
実施例5
実施例1において、接着層組成物中のアクリル樹脂を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合/アクリルの混合樹脂(質量比50/50)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0071】
実施例6
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性HALSを、ヒンダードアミン系光安定剤(「チヌビン123(商品名)」、BASFジャパン株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0072】
実施例7
実施例1において、プライマー層の樹脂組成物中のポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を、ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0073】
比較例1
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性シリコーンを、シリコーンオイル(非反応のシリコーン化合物)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0074】
比較例2
実施例1において、プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例1〜7の熱転写フィルムおよびこの熱転写フィルムを用いて熱転写した表面保護層を有するハードコート体は、耐候性とともにハードコート性を兼ね備え、長期間に渡って耐傷性を有するものであることが確認された。
【0077】
すなわち、表1によると、電離放射線硬化型樹脂に反応性官能基Aを有する電離放射線硬化性シリコーン化合物を配合することで、経時での滑り性が向上し、また、応力緩和層としてプライマー層を設けることで、表面保護層の劣化を抑止することができ、これらを組み合わせることにより、ハードコート体を屋外などの耐候劣化しやすい場所に設置した場合においても、その耐傷性などのいわゆるハードコート性を長期にわたって維持することができる。さらに、プライマー層にポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合樹脂を用いることで耐候性を向上させることができ、また、官能基数の高い電離放射線硬化型樹脂を用いることで耐傷性が向上していることがわかる。
【0078】
また、接着層にアクリル系ヒートシール剤を用いることで耐候性が向上し、光安定剤(HALS)に反応性官能基Bを有する電離放射線硬化型光安定剤(HALS)を用いることで、ブリードアウトを抑止でき、さらに、官能基数の高い電離放射線硬化型樹脂に高分子ウレタンアクリレートを併用することにより、さらに耐候性が向上することがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1.基材フィルム
2.表面保護層
3.プライマー層
4.接着層
5.熱転写フィルム
6.被転写体
7.ハードコート体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層された熱転写フィルムであって、該表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物であり、該接着層が熱融着樹脂を含む熱転写フィルム。
【請求項2】
電離放射線硬化型樹脂が6〜15官能性のウレタン(メタ)アクリレートである請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項3】
電離放射線硬化型樹脂が6〜9官能性のウレタン(メタ)アクリレートである請求項2に記載の熱転写フィルム。
【請求項4】
熱融着樹脂がアクリル系ヒートシール樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルム。
【請求項5】
表面保護層が、さらに耐傷フィラーを含有する硬化物である請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルム。
【請求項6】
表面保護層が、さらに耐候剤を含有する硬化物である請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルム。
【請求項7】
耐候剤が、トリアジン系紫外線吸収剤および/または反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤である請求項6に記載の熱転写フィルム。
【請求項8】
プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む請求項1〜7のいずれかに記載の熱転写フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルムを用い被転写体に転写した、表面保護層を有するハードコート体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−11677(P2012−11677A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150647(P2010−150647)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】