説明

熱間プレス鋼板の製造方法

【課題】未焼鈍鋼板の熱間プレス後の溶接性を高位に維持できる、熱間プレス鋼板の製造方法の提供。
【解決手段】未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得る、前処理工程と、前記表面処理鋼板の表面に高温酸化防止皮膜を形成して皮膜付き鋼板を得る、皮膜形成工程と、前記皮膜付き鋼板を熱間プレスし、電気抵抗が低い熱間プレス鋼板を得るプレス工程と、を具備する熱間プレス鋼板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間プレス鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化、大気汚染、化石燃料の枯渇等の環境問題に対する意識が高まり、自動車においても燃費向上およびCO2削減に大きく寄与する車体の軽量化が強く求められている。その中で、自動車に使用される薄鋼板を高強度化することで衝突安全性に考慮しながら車体重量を減少する技術が進んでいる。このような技術の代表的なものとして熱間プレスが挙げられる。
【0003】
熱間プレスは、鋼板を800〜1000℃まで加熱し、次いで金型を用いて鋼板を成形し急冷することで、高強度の成形品を得る方法である。ここで鋼板を前記のような高温に加熱すると、鋼板表面が酸化しスケールが発生する。
【0004】
これに関連して、特許文献1には、金属を約800〜約1000℃で熱間加工する前に、金属表面での酸化皮膜発生に対して保護層を作製する剤であって少なくとも1種類のシランの加水分解生成物等を含有する剤を表面に塗布し、被覆物を乾燥および/または硬化させ、金属表面を被覆する方法が記載されている。そして、このような被覆方法によって、酸化膜形成に対して有効な保護層を造ることが可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−516023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、鋼板の表面に酸化被膜やスケールが生じると溶接性が悪化する。本発明者は、様々な種類の鋼板について特許文献1に記載の方法を適用し、多くの鋼板の場合、その後に熱間加工(熱間プレス)して得られる鋼板の溶接性の悪化を抑制できることを確認した。そして、焼鈍鋼板(焼鈍した後の鋼板)に特許文献1に記載の方法を適用すると、その後に熱間加工(熱間プレス)して得られる鋼板の溶接性の悪化を抑制できるものの、未焼鈍鋼板について同様に処理した場合、溶接性の悪化を抑制できないことを、本発明者は見出した。
さらに、本発明者は、未焼鈍鋼板の場合であっても、熱間プレス後の鋼板の溶接性を高位に維持できる方法を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、未焼鈍鋼板の熱間プレス後の溶接性を高位に維持できる、熱間プレス鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の(1)〜(7)である。
(1)未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得る、前処理工程と、前記表面処理鋼板の表面に高温酸化防止皮膜を形成して皮膜付き鋼板を得る、皮膜形成工程と、前記皮膜付き鋼板を熱間プレスし、熱間プレス鋼板を得るプレス工程と、を具備する熱間プレス鋼板の製造方法。
(2)前記化学処理が、温度10〜80℃、pH4以下の酸性水溶液中に、1〜100分間、前記未焼鈍鋼板を浸漬する処理であり、前記物理処理が、前記未焼鈍鋼板の表面を機械的に研磨する処理である、上記(1)に記載の熱間プレス鋼板の製造方法。
(3)前記皮膜形成工程が、少なくとも1種類のシランの加水分解生成物/縮合体またはシリコーン樹脂、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有する塗料組成物を前記表面処理鋼板の表面に塗布し、硬化させ、高温酸化防止被膜を形成して皮膜付き鋼板を得る工程である、上記(1)または(2)に記載の熱間プレス鋼板の製造方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱間プレス鋼板の製造方法によって得られる、熱間プレス鋼板。
(5)未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得、次いで、前記表面処理鋼板の表面に塗料組成物を塗布し、硬化させることにより得られる皮膜つき鋼板。
(6)前記化学処理が、温度10〜80℃、pH4以下の酸性水溶液中に、1〜100分間、前記未焼鈍鋼板を浸漬する処理であり、前記物理処理が、前記未焼鈍鋼板の表面を機械的に研磨する処理である、上記(5)に記載の皮膜つき鋼板。
(7)塗料組成物が少なくとも1種類のシランの加水分解生成物/縮合体またはシリコーン樹脂、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有する塗料組成物である、上記(5)または(6)に記載の鋼板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、未焼鈍鋼板の熱間プレス後の溶接性を高位に維持できる、熱間プレス鋼板の製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明の製造方法は、前処理工程と、皮膜形成工程と、プレス工程とを具備する熱間プレス鋼板の製造方法である。
【0011】
<前処理工程>
本発明の製造方法における前処理工程について説明する。
本発明の製造方法における前処理工程は、未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得る工程である。
【0012】
ここで未焼鈍鋼板とは、焼鈍を行っていない鋼板をいう。
焼鈍とは、例えばJIS G 0201に定義される「焼きなまし」に相当する処理である。未知の鋼板が、焼鈍鋼板であるか、未焼鈍鋼板であるかを知るには、同一の組成の鋼板を別に製造し、焼鈍したものと未焼鈍の鋼板とを製造しその組織を顕微鏡等で観察して比較すれば、その差が明確に分かるので、その標準試料と未知の鋼板の組織とを比較すればよい。
未焼鈍鋼板として、例えば熱延鋼板、冷延鋼板(冷延後に焼鈍を行っていない鋼板)等が挙げられる。
未焼鈍鋼板は板状のものであってもよく、ロール状のものであってもよい。
【0013】
未焼鈍鋼板の組成は特に限定されないが、例えば、炭素が0.1〜0.5質量%、珪素が0.01〜2質量%、マンガンが0.1〜3質量%、リンが0.1質量%以下、硫黄が0.05質量%以下、窒素が0.01質量%以下、クロムが0.01〜5質量%、硼素が0.0002〜0.01質量%、チタンが0.01〜1質量%、アルミニウムが0.005〜1質量%、ニッケルが0.01〜3質量%であり、残部が鉄および不可避的不純物であるものが挙げられる。
【0014】
また、未焼鈍鋼板の表面の粗さが小さいことが好ましく、平均粗さが2μm以下であることが好ましい。酸化スケールの生成がより抑制されるからである。
【0015】
本発明の製造方法における前処理工程では、このような未焼鈍鋼板を化学処理または物理処理に供する。
【0016】
前処理工程における化学処理について説明する。
化学処理とは、前記未焼鈍鋼板の表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる処理である。化学処理はこのような処理であれば特に限定されないものの、温度10〜80℃、pH4以下の酸性水溶液中に、1〜100分間、前記未焼鈍鋼板を浸漬する処理であることが好ましい。当該処理後、未焼鈍鋼板の表面を純水ですすぎ、当該表面に付着した前記純水をエアーガン等で乾燥させることが好ましい。
ここで酸性水溶液の温度は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
また、酸性水溶液における酸濃度は0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
また、酸性水溶液のpHは4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
また、前記未焼鈍鋼板を酸性水溶液中に浸漬する時間は、30〜80分間であることが好ましく、50〜70分間であることがより好ましい。
【0017】
化学処理において用いる酸またはその塩は、特に限定されないものの、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、フッ酸等の無機酸、ギ酸、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、グルコン酸、メタンスルホン酸等の有機酸、またはそれらの塩である、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛等が挙げられる。これらの中でもリン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
【0018】
前処理工程における物理処理について説明する。
物理処理とは、前記未焼鈍鋼板の表面を物理的に処理するものである。物理処理は特に限定されないものの、前記未焼鈍鋼板の表面を機械的に研磨する処理であることが好ましく、グラインダー等による機械研磨やサンドペーパーによる研磨がより好ましい。この研磨では、前記未焼鈍鋼板の表面を0.5〜10μm程度研磨することが好ましい。研磨において使用する研磨材は特に限定されないが、60番(JIS R 6010)を超える粒度の細かい研磨材を使用することが好ましい。60番を越える砥石を使用すると、より適度に、未焼鈍鋼板の表面が研磨されて、皮膜形成後の皮膜外観がよりよくなる。
【0019】
<皮膜形成工程>
本発明の製造方法における皮膜形成工程について説明する。
本発明の製造方法における皮膜形成工程は、前記表面処理鋼板の表面に高温酸化防止皮膜を形成して皮膜付き鋼板を得る工程である。
【0020】
前記高温酸化防止皮膜は、前記表面処理鋼板の表面に塗料組成物を塗布し、その後硬化させて得るものであることが好ましい。
【0021】
ここで塗料組成物は、少なくとも1種類のシランの加水分解生成物/縮合体(加水分解生成物および/または縮合体)またはシリコーン樹脂、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有するものであることが好ましい。
すなわち、前記塗料組成物は、少なくとも1種類のシランの加水分解生成物、少なくとも1種類のシランの縮合体およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つ、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有するものであることが好ましい。
【0022】
シランとしては、例えばメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。これらを加水分解して前記加水分解生成物を得ることができ、これらを縮合して前記縮合体を得ることができる。前記高温酸化防止皮膜を形成する塗料組成物を作製するためには、例えば少なくとも1種類のアルキルアルコキシシランおよび少なくとも1種類のアルコキシシランを含む混合物を加水分解または縮合したものを用いることができ、好ましくは弱酸性溶液中で加水分解または縮合したものを用いることができる。前記弱酸性溶液は有機酸、蟻酸等を用いて得ることができる。
【0023】
シリコーン樹脂は、−(SiO)−で表される繰り返し構造単位を有するものであり、ポリエステル、アクリル、エポキシ等で変性されたシリコーン樹脂も含まれ、溶剤に溶解して好ましく用いることができる。
ここで溶剤としては、アルコール類、エステル類、エーテル類、炭化水素(例えばベンジン)等が好適例として挙げられる。また、溶剤は、23℃超の引火点を有する溶剤であることが好ましい。例えば溶剤としてはブチルグリコール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等が適している。
シリコーン樹脂は溶剤に溶解しないで用いることもできる。
【0024】
前記塗料組成物は、上記のようなシランの加水分解生成物、シランの縮合体および1またはシリコーン樹脂を、これらの合計の固形分含有量で10〜90質量%含有することが好ましい。ここで「固形分」とは、前記表面処理鋼板の表面に塗料組成物を塗布し、その後硬化させたときに得られる前記高温酸化防止皮膜として残存する成分を意味する。
【0025】
前記塗料組成物が含む金属充填剤としては、金属顔料等が挙げられ、Al、Zn、Mg、Fe、Snまたはこれらの少なくとも1つを含む合金からなる金属顔料が好ましい。
前記塗料組成物は、前記金属充填剤を固形分含有量で10〜90質量%含有することが好ましい。
【0026】
前記塗料組成物は、上記のようなシランの加水分解生成物/縮合体またはシリコーン樹脂、および金属充填剤を、これらの合計の固形分含有量で50〜100質量%含有することが好ましい。
【0027】
前記塗料組成物は、金属酸化物および/または非金属酸化物粒子を含有することが好ましい。粒子としてはAlOOH、コランダム、酸化ジルコニウム、SiO2、TiO2等が挙げられる。
【0028】
前記塗料組成物は固体潤滑剤を含有することが好ましい。固体潤滑剤として、例えばワックス、ステアレート、グラファイト、MoS2、窒化硼素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、層状顔料(例えば雲母等)等が挙げられる。皮膜付き鋼板の熱間加工性および冷間加工性がより良好になるからである。
【0029】
前記塗料組成物は通常のレオロジー添加物、例えば揺変性剤、レベリング剤等を含有することができる。
【0030】
このような塗料組成物を前記表面処理鋼板の表面に塗布し、その後硬化させて得られる高温酸化防止皮膜は、厚さが30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0031】
皮膜形成工程において、前記高温酸化防止皮膜を形成する方法は特に限定されない。例えば、前記塗料組成物を前記表面処理鋼板の表面に、噴霧塗装、ロール塗装、流動塗装、ドクターブレード塗装、プリント塗装、浸漬塗装(カソード浸漬塗装等)等の湿式塗装法にて塗布し、その後、硬化させることで、前記高温酸化防止皮膜を得ることができる。硬化は、例えば室温〜400℃程度の温度で保持することで行うことができ、また例えば赤外線照射、換気乾燥、紫外線照射、電子線硬化等によって行うこともできる。
【0032】
本発明の製造方法における皮膜形成工程では、前記表面処理鋼板の表面に高温酸化防止皮膜を形成した後、例えばKTL塗装(陰極浸漬塗装)および/またはリン酸塩処理等を行い、皮膜付き鋼板を得ることもできる。
【0033】
<プレス工程>
本発明の製造方法におけるプレス工程について説明する。
本発明の製造方法におけるプレス工程は、前記皮膜付き鋼板を熱間プレスし、電気抵抗が低い熱間プレス鋼板を得る工程である。
【0034】
熱間プレスは通常の方法であれば特に限定されず、前記皮膜付き鋼板をAc3変態点以上の温度(例えば800〜1000℃)に加熱してオーステナイト相に変態させ、高温のままプレス成形を行い、その後金型で急冷(焼入れ)してマルテンサイト変態させる方法が挙げられる。
【0035】
上記に説明したような本発明の製造方法によると、未焼鈍鋼板から、溶接性が高位に維持された熱間プレス鋼板を得ることができる。
熱間プレスして得られる鋼板は、アーク溶接、レーザー溶接、スポット溶接等で接合して例えば自動車車体用部品として用いることができる。本発明の製造方法によれば、熱間プレス後に溶接性が高位に維持された熱間プレス鋼板を得ることができるので、溶接部を除去することなく使用することができる。また、本発明の製造方法で得られる熱間プレス鋼板を2つの電極(Cu−Cr、M16×8A)で上下から挟み、3.5kNで加圧し、1Aの電流を流したときの電圧より求めた電気抵抗値は、50mΩ以下であるのが好ましい。
また、本発明の製造方法によって得られる熱間プレス鋼板は、機械的強度が高く、1500MPa以上になることもある。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例および比較例について説明する。
<実施例1>
50mm×50mm、厚さ1.4mmの未焼鈍鋼板の表面を石油ベンジンを含ませた布で拭き、油分を除去した。次に、アルカリ洗浄液で洗浄し、その後、純水で十分に洗い、未焼鈍鋼板の表面をエアーガンで乾燥させた。
次に、上記の乾燥後の未焼鈍鋼板を10質量%リン酸水溶液中に浸漬した(化学処理)。ここでリン酸水溶液は23℃、pH=1に調整したものを用いた。また浸漬時間は60分間とした。浸漬後は純水で十分に洗い、エアーガンで乾燥させた。
次に、上記の化学処理後の未焼鈍鋼板の両面に、シランの加水分解生成物/縮合体(NANO−X社製:VPCO4374)をスプレーガンにて塗布した。その後250℃で10分間乾燥して、膜厚が5〜8μmの高温酸化防止皮膜を有する皮膜付き鋼板を得た。
次に、得られた皮膜付き鋼板を、高温炉(マッフル炉 F810 ヤマト科学)にて950℃で7分間加熱した。そして、高温炉から未焼鈍鋼板を取り出して水中で急冷し、熱間プレス鋼板を得た。
【0037】
次に、得られた熱間プレス鋼板の電気抵抗値を測定した。電気抵抗測定は熱間プレス鋼板を2つの電極(Cu−Cr、M16×8A)で上下から挟み、3.5kNで加圧し、1Aの電流を流したときの電圧より電気抵抗値を求めることによって行った。電気抵抗値は任意の5点について測定して平均値とした。
電気抵抗値の測定結果を第1表に示す。
【0038】
<実施例2>
実施例1において用いたリン酸水溶液の温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、熱間プレス鋼板を得た。そして、実施例1と同様に電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定結果を第1表に示す。
【0039】
<実施例3>
実施例2において用いた10質量%リン酸水溶液の代わりに、10質量%メタンスルホン酸水溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、熱間プレス鋼板を得た。そして、実施例1と同様に電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定結果を第1表に示す。
【0040】
<実施例4>
化学処理を行わず物理処理に供した。物理処理はグラインダー(砥石:400番 JIS R6010)の表面を研磨(約1μm)する処理である。それ以外は実施例1と同様の操作を行い、熱間プレス鋼板を得た。そして、実施例1と同様に電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定結果を第1表に示す。
【0041】
<比較例1>
化学処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして熱間プレス鋼板を得た。そして、実施例1と同様に電気抵抗値を測定した。
電気抵抗値の測定結果を第1表に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
第1表に示すように、化学処理または物理処理を施した実施例1〜4で得られた熱間プレス鋼板は、電気抵抗値が低くなった。これに対して比較例1で得られた熱間プレス鋼板は電気抵抗値が高くなった。すなわち、実施例1〜4で得られた熱間プレス鋼板は、電気溶接性がよいことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得る、前処理工程と、前記表面処理鋼板の表面に高温酸化防止皮膜を形成して皮膜付き鋼板を得る、皮膜形成工程と、前記皮膜付き鋼板を熱間プレスし、熱間プレス鋼板を得るプレス工程と、を具備する熱間プレス鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記化学処理が、温度10〜80℃、pH4以下の酸性水溶液中に、1〜100分間、前記未焼鈍鋼板を浸漬する処理であり、前記物理処理が、前記未焼鈍鋼板の表面を機械的に研磨する処理である、請求項1に記載の熱間プレス鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記皮膜形成工程が、少なくとも1種類のシランの加水分解生成物/縮合体またはシリコーン樹脂、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有する塗料組成物を前記表面処理鋼板の表面に塗布し、硬化させ、高温酸化防止被膜を形成して皮膜付き鋼板を得る工程である、請求項1または2に記載の熱間プレス鋼板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱間プレス鋼板の製造方法によって得られる、熱間プレス鋼板。
【請求項5】
未焼鈍鋼板を、その表面に酸もしくはその塩を含む水溶液を接触させる化学処理またはその表面を物理的に処理する物理処理に供して、表面処理鋼板を得、次いで、前記表面処理鋼板の表面に塗料組成物を塗布し、硬化させることにより得られる皮膜つき鋼板。
【請求項6】
前記化学処理が、温度10〜80℃、pH4以下の酸性水溶液中に、1〜100分間、前記未焼鈍鋼板を浸漬する処理であり、前記物理処理が、前記未焼鈍鋼板の表面を機械的に研磨する処理である、請求項5に記載の皮膜つき鋼板。
【請求項7】
塗料組成物が少なくとも1種類のシランの加水分解生成物/縮合体またはシリコーン樹脂、および少なくとも1種類の金属充填剤を含有する塗料組成物である、請求項5または6に記載の皮膜つき鋼板。

【公開番号】特開2010−242196(P2010−242196A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94780(P2009−94780)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000162607)協和発酵ケミカル株式会社 (60)
【出願人】(509101790)ナノ−イークス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】