説明

熱電対装置の取付構造

【課題】 製造誤差があっても所定範囲で取付調整が可能な半導体ウエハを加熱する縦型炉における熱電対装置の取付構造を提供する。
【解決手段】 熱電対装置7の横管部7bが、ポート8aの一端側を支点として他端側でフランジ10及びOリング9によって上下に移動可能になるように支持し、取付位置が上下に調整可能にすることにより縦管部7aとの角度誤差を吸収し要求精度誤差を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、縦型のプロセスチューブを用いて半導体ウェハを加熱する縦型炉における、熱電対装置の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は、縦型炉に採用されている従来の熱電対装置の取付構造における要部を示す断面図である。図において、熱電対TCを石英管101に収納した熱電対装置100は、縦方向に長い縦管部101a(長さ1000mm以上)と、この縦管部101aの下端からL字状に形成された横管部101b(長さ100mm程度)とを有している。縦型のプロセスチューブ(図示せず。)の下端部には、横管部101bを支持する支持部材102が設けられている。支持部材102の一部は外方に突出して接続部102aを形成しており、接続部102aの先端外周にねじ加工が施されている。横管部101bは支持部材102に対してほとんど隙間なく内挿され、内周にねじ加工が施されたキャップ103を接続部102aに締め付けることにより、横管部101bが支持部材102に固定される。上記縦管部101a及び横管部101bの相互間の角度は、90度になるように製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の熱電対装置の取付構造においては、縦管部101aの長さが横管部101bの長さに比してかなり大きい。従って、製造誤差、特に上記角度の誤差が少しでもあると、縦管部101aの先端のずれが大きくなる。例えば、角度が90度より大きい場合には、縦管部101aがプロセスチューブの内方(図の左方)に傾斜し、その先端が、半導体ウェハを載せてプロセスチューブ内に搬入・搬出されるボート(図示せず。)に接触すると、ボートの搬出時に縦管部101aの先端が引っかかって、当該縦管部101a又はボートが破損することがある。また、角度が90度より小さい場合には、上記と反対側に傾斜し、プロセスチューブと干渉して取付が困難になり、無理に取り付けようとすると縦管部101aが破損することがある。このような事態を避けるには、上記角度の精度を非常に高く維持しなければならず、このことは熱電対装置の製造コストを押し上げる要因となる。
【0004】上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、製造誤差があっても所定範囲で取付調整が可能な熱電対装置の取付構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の熱電対装置の取付構造は、縦型のプロセスチューブと、熱電対を保護管に収めたものであって、前記プロセスチューブの内壁に沿って縦方向に配置される縦管部と、この縦管部の下端から横方向へL字状に形成された横管部とを有する熱電対装置と、前記プロセスチューブの下部に設けられ、前記横管部を内挿させるとともに、当該横管部の一端側を支点として他端側を所定範囲で上下に移動可能に支持する支持部材と、前記支持部材に対する相対的な位置を上下に可調整に固定され、前記横管部の他端側を前記支持部材に固定する可調整取付部材とを備えたものである(請求項1)。上記のように構成された熱電対装置の取付構造においては、支持部材が横管部の一端側を支点として他端側を所定範囲で上下に移動可能に支持する。可調整取付部材は、支持部材に対する相対的な位置を上下に可調整として固定されることにより、横管部の他端側を上下に移動させて取り付けることを可能にする。縦管部と横管部との相互間の角度に誤差がある場合には、横管部の一端側を支点にして他端側を上下に移動させることにより、この誤差を吸収し、縦管部を所望の姿勢で配置することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態による縦型炉の断面図である。図において、炉体1の側面にはヒータ2が設けられ、炉体1の内部にはヒータ2に取り囲まれる石英のプロセスチューブ3が設けられている。プロセスチューブ3の内部には、半導体ウェハ4を多段に載置したボート5が配置されている。ボート5は、下方から図示の位置に搬入され、また、図示の位置から蓋6とともに下方に搬出される。熱電対装置7は、熱電対を石英保護管に収めたもので、プロセスチューブ3の内壁に沿って垂直に配置される縦管部7aと、この縦管部7aの下端から水平方向へL字状に形成された横管部7bとを備えている。縦管部7aの長さは例えば1000〜1335mm程度、また、横管部7bの長さは例えば100mm程度である。横管部7bは、プロセスチューブ3の支持部材8に取り付けられている。
【0007】次に、上記横管部7bの支持部材8への取付構造に関して図2〜図4を参照して説明する。図2は、横管部7b及び支持部材8の拡大断面図である。図2R>2において、支持部材8の一部は外方に突出した筒状のポート8aを構成している。横管部7bはポート8aに内挿され、右端部がポート8aから少し突出している。ポート8aの右端部にはOリング9が装着され、これを介して、可調整取付部材としてのフランジ10が取り付けられている。横管部7bの右端部近傍に設けられた周溝7b1には止め輪11が装着される。横管部7bの右端部にはキャップ12が取り付けられ、このキャップ12の端部からリード線13が導出される。縦管部7a及び横管部7bの内部には熱電対素線7tが設けられ、リード線13と接続されている。
【0008】図3は、図2の矢印III方向からフランジ10等を見た図である。フランジ10は図3の(b)に示すように、左右一対に、直径6mmの通し孔10aが設けられており、(a)に示すように、M4のねじ14によってポート8aの端面に取り付けられる。6mmの孔に対してM4のねじを用いることにより、ポート8aに対するフランジ10の相対的な取付位置は上下に2mmの範囲内で可調整である。フランジ10の内径と、フランジ10に内挿された横管部7bの外径との間には、横管部7bの円滑な挿入を可能とする程度のわずかの隙間しかない。
【0009】一方、図4の(a)はポート8aの左端側の拡大断面図である。図において、横管部7bの外径は20mmである。ポート8aは、その内径に関して小径部8Sと大径部8Lとを有している。小径部8Sは左端側から10mmまでの部分であり、内径が20.6mmである。大径部8Lは小径部8Sより右方にあり、内径が21.6mmである。このような2段内径の筒体とすることにより、大径部8Lは横管部7bの上下動を所定範囲で許容し、小径部8Sの下方と横管部7bとの点接触部が横管部7bを支える支点Fとなる。このようなポート8aの構造と、前述のフランジ10の取付位置可調整構造とにより、横管部7bは、上記支点Fと、フランジ10とによって、ポート8aすなわち支持部材8に固定される。ここで、フランジ10を上下動させることによって、図2の矢印Aの方向に横管部7bを揺動させ、矢印Bの方向に縦管部7aを揺動させることができる。従って、本来直角であるべき縦管部7aと横管部7bとの角度に誤差があっても、フランジ10の上下動可能範囲内でこれを吸収し、縦管部7aを所望の姿勢、すなわち、プロセスチューブ3の内壁に沿って垂直に配置することができる。
【0010】なお、上記実施形態では、縦管部7aを垂直に、横管部7bを水平にそれぞれ配置する例について説明したが、これらはそれぞれ垂直及び水平に限られず、所定の角度であっても、上記のようなポート8aの構造と、フランジ10の取付位置可調整構造とが応用できることはいうまでもない。また、上記実施形態では支持部材8に小径部8Sと大径部8Lとを設けたが、これと同様の作用効果をもたらす変形例として、図4の(b)に示すように、支持部材8の内径を一定とし、横管部7bに大径部7Lと小径部7Sとを設ける構造を採用することもできる。また、上記実施形態の取付構造は、熱電対装置のみならず、プロセスチューブ内に処理ガスを導入するためのガス管等の、同様な形態の細管部材に適用することができる。
【0011】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。請求項1の熱電対装置の取付構造によれば、縦管部と横管部との相互間の角度に誤差がある場合には、横管部の一端側を支点にして他端側を上下に移動させることにより、この誤差を吸収し、縦管部を所望の姿勢で配置することができる。従って、製造誤差があっても、所定範囲でこれを吸収する取付調整が可能となり、その結果、要求される精度誤差が緩和される。従って、熱電対装置の製造が容易になり、製造コストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による縦型炉の断面図である。
【図2】図1に示す縦型炉における横管部及び支持部材の拡大断面図である。
【図3】(a)は、図2のIIIの方向からフランジ等を見た図であり、(b)はその右端側の一部における、ねじ取付前の通し孔を示す図である。
【図4】(a)は、図2に示す支持部材のポートの左端部の拡大断面図であり、(b)は当該部分の他の構造例である。
【図5】従来の熱電対装置の取付構造における要部を示す断面図である。
【符号の説明】
3 プロセスチューブ
7 熱電対装置
7a 縦管部
7b 横管部
7t 熱電対素線
8 支持部材
10 フランジ(可調整取付部材)
F 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】縦型のプロセスチューブと、熱電対を保護管に収めたものであって、前記プロセスチューブの内壁に沿って縦方向に配置される縦管部と、この縦管部の下端から横方向へL字状に形成された横管部とを有する熱電対装置と、前記プロセスチューブの下部に設けられ、前記横管部を内挿させるとともに、当該横管部の一端側を支点として他端側を所定範囲で上下に移動可能に支持する支持部材と、前記支持部材に対する相対的な位置を上下に可調整として固定され、前記横管部の他端側を前記支持部材に固定する可調整取付部材とを備えたことを特徴とする熱電対装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−291675(P2001−291675A)
【公開日】平成13年10月19日(2001.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−109480(P2000−109480)
【出願日】平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】