説明

燃料カートリッジ及びこれを用いた燃料電池

【課題】燃料の利用率を高めることが可能な、軽量型燃料カートリッジの新規な構造を提供する。
【解決手段】液体燃料を貯蔵するための内部空間を有する柔軟な容器と、前記柔軟な容器に連結され、前記液体燃料の放出のための開口部を備えるコネクタと、前記内部空間と前記コネクタとの間に設けられ、前記コネクタ付近において前記柔軟な容器が密着状態にある場合に、前記液体燃料の放出のために前記内部空間と前記コネクタの開口部とを連結する流動流路を形成するチャネル形成手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールパック構造の燃料カートリッジに関し、特に、柔軟な容器に貯蔵された燃料の放出時、流出口付近で容器の両面が密着して燃料の流出が妨げられることを防止することのできる燃料電池用の燃料カートリッジ及びこれを用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素エネルギーから電気エネルギーを発生させる未来型の環境に配慮した新エネルギーである。燃料電池は、燃料の酸化によって生じる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる高効率の無公害発電装置である。燃料電池の燃料としては、水素のほか、メタンや天然ガスなどの化石燃料を使用する気体状燃料、及びメタノールやヒドラジンなどの液体状燃料を使用することができる。これらの燃料電池は、電解質の種類に応じて、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、高分子電解質型燃料電池、アルカリ燃料電池などに分類することができ、これらの燃料電池は、基本的に同じ原理によって作動するが、これら燃料電池のそれぞれに用いられる燃料、運転温度、触媒、電解質などは互いに異なる。
【0003】
上記した燃料電池のうち、高分子電解質型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)は、高分子膜を電解質として使用するため、電解質による腐食や蒸発の危険がなく、単位面積あたり高い電流密度を得ることができ、また、その他の燃料電池に比べて出力特性がはるかに高くかつ作動温度が低いため、自動車などに電力を供給するための移動用電源、住宅や公共ビルなどに電力を供給するための分散用電源、及び電子機器などに電力を供給するための小型電源としての開発が盛んに行われている。
【0004】
高分子膜を電解質として使用するもう1つの燃料電池として、直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)があるが、これは、燃料改質器を用いることなく、メタノールなどのような液状の燃料を直接使用し、100℃未満の作動温度にて運転されるため、携帯用電源または小型電源として適するという長所がある。
【0005】
上記した高分子電解質型燃料電池や直接メタノール型燃料電池に燃料を供給する燃料供給装置としては、追加の燃料供給が容易な構造として燃料カートリッジが多く利用されている。また、燃料カートリッジの製作には、小型燃料電池の体積及び重量を減少させるため、ビニールパックの利用が可能である。このような燃料カートリッジの例が、特許文献1に開示されている。
【0006】
図1は、特許文献1に開示された従来技術の燃料タンクを示す図である。同図に示すように、従来技術の燃料タンク1は、外装容器2内のメタノールを収容する空間Aに設けられる袋状の隔壁5と、外装容器2の内部の一方から押圧バネ7の弾性によって隔壁5を押圧するように設けられるプランジャ3と、プランジャ3と隔壁5との間に設けられる弾性体8と、隔壁5内に貯蔵された液体燃料の出入のための開口部にホルダー9を固定させる○リング6とを備える。ホルダー9には、中空部4aを有するクイックコネクタ4が連結されている。
【0007】
このような燃料タンク1において、プランジャ3は、隔壁5内に貯蔵された液体燃料を押し出すために、押圧バネ7の弾性力によって隔壁5の一側面を押圧するための手段であり、弾性体8は、隔壁5の収縮時にシワがよった際にも良好な接触状態を保持し、隔壁5内のメタノールを円滑に押し出すための手段である。
【0008】
このような燃料タンク1は、袋状の隔壁5、プランジャ3、押圧バネ7、弾性体8を用いることで、燃料利用率を高められる燃料タンクを提供する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−32598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した従来技術の燃料タンク1では、袋状の隔壁5がビニールパックのような柔軟な容器である場合、燃料の放出による隔壁5の収縮時、ホルダー9が連結されている開口部付近で隔壁5が互いに密着して開口部を塞ぐことがあるという問題があった。この場合、隔壁5内に残っている燃料はこれ以上放出することができないため、上記燃料タンクの燃料利用率は減少する。また、上述した従来技術の燃料タンク1は、液体燃料を貯蔵する隔壁5の一側面を効果的に押圧するために、プランジャ3、押圧バネ7、弾性体8を備えることから、燃料タンク1の体積及び重量が増加するという短所がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、内部空間に貯蔵される燃料の利用率を高める一方で、軽量化及び小型化に適した簡単な構造の燃料カートリッジを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、上記燃料カートリッジを用いることで、軽量化及び小型化に適した燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によると、液体燃料を貯蔵するための内部空間を有する柔軟な容器と、前記柔軟な容器に連結され、前記液体燃料の放出のための開口部を備えるコネクタと、前記内部空間と前記コネクタとの間に設けられ、前記コネクタ付近において前記柔軟な容器が密着状態にある場合に、前記液体燃料の放出のために前記内部空間と前記コネクタの開口部とを連結する流動流路を形成するチャネル形成手段と、を備える燃料カートリッジが提供される。
【0014】
ここで、本発明で言う「柔軟な容器」とは、外力により変形するいわゆる可塑性(plasticity)を有する材料により形成された容器のことをいい、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせの中から選ばれるいずれかの材料や、高分子材料またはシート状のプラスチック材料により形成される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によると、電解質膜、該電解質膜の両面に位置するアノード電極及びカソード電極を有し、前記アノード電極に供給される燃料と前記カソード電極に供給される酸化剤との電気化学的反応によって電気エネルギーを生成する電気発生部と、前記電気発生部に前記燃料を供給する上記燃料カートリッジと、を備える燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、柔軟な容器を用いた燃料カートリッジに貯蔵される液体燃料の利用率を高めることができ、これにより、同じ燃料供給量に対して燃料カートリッジの体積及び重量を減少させることができる。このような燃料カートリッジを用いれば、従来の燃料電池よりも軽量化及び小型化した燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
図2aは、本発明の一実施形態に係る燃料カートリッジの正面図である。図2bは、図2aの燃料カートリッジの側面図である。
【0019】
図2a及び図2bを参照すると、本実施形態の燃料カートリッジ10は、液体燃料を貯蔵する柔軟な容器11と、液体燃料の送出及び送入のために柔軟な容器11に連結されるコネクタ13と、柔軟な容器11の内部空間に延長し、その一方の末端部がコネクタ13に隣接して位置し、柔軟な容器11の収縮時、柔軟な容器11の内部で液体燃料の流動流路を確保するチャネル形成手段15とを備える。
【0020】
柔軟な容器11は、内部空間に液体燃料が貯蔵されたとき、所望の体積に膨張するように一部分が折り畳まれた状態で、その周縁が接合されたビニール部材12で実現することができる。図2aをみると、ビニール部材12は、2枚のビニール部材12からなり、それぞれの中間部分が同図紙面の内側に折り畳まれた一対の角12aと、この角12aが折り畳まれた方向の反対方向に折り畳まれた他の一対の角12bとを備え、2枚のビニール部材12は、その周縁12cが接合されて内部空間を有する袋状に一体化される。
【0021】
柔軟な容器11は、高分子材料またはシート状のプラスチック材料で実現することができる。例えば、柔軟な容器11は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせの中から選ばれるいずれかの材料で実現することができる。
【0022】
コネクタ13は、柔軟な容器11の開口部に連結され、柔軟な容器11に貯蔵された液体燃料を放出させ、電気発生部に供給するための燃料供給装置、例えば、燃料ポンプと柔軟な容器11とを連結するための手段である。コネクタ13のフランジ13aは、柔軟な容器11の開口部の内側周縁に接合する。コネクタ13は、柔軟な容器11に貯蔵された液体の出入のための開口部13bを備える。前記コネクタ13は、例えば、プラスチック材料で形成することができる。
【0023】
チャネル形成手段15は、柔軟な容器11に連結されたコネクタ13から柔軟な容器11の内部空間に延長するように設けられる。チャネル形成手段15は、柔軟な容器11の2つのビニール部材12が密着して柔軟な容器11の内部に貯蔵された液体が円滑に放出できない場合、柔軟な容器11の内部空間とコネクタ13の開口部13bとの間に液体の流動流路を形成し、柔軟な容器11内の液体のほとんどが円滑に流出するように作用する。
【0024】
図3aは、比較例に係る燃料カートリッジの作動原理を説明するための図である。図3bは、本発明の実施形態に係る燃料カートリッジの作動原理を説明するための図である。
【0025】
図3aに示すように、比較例に係る燃料カートリッジ10aは、柔軟な容器11と、柔軟な容器11に結合されたコネクタ13とで構成される。燃料カートリッジ10aにおいて、柔軟な容器11に貯蔵された液体燃料が燃料供給装置により強制的に放出されると、柔軟な容器11は収縮して両面のビニール部材12が密着する。特に、コネクタ13付近で柔軟な容器11の2つのビニール部材12が密着すると、柔軟な容器11の内部空間に貯蔵された液体燃料は、燃料供給装置の出力がある程度増加しても、コネクタ13の開口部13bを介して外部に放出できずに、液体燃料が柔軟な容器11内に残留する。
【0026】
しかし、本発明の燃料カートリッジ10では、図3bに示すように、液体燃料の放出時、コネクタ13付近で柔軟な容器11の2つのビニール部材12が密着する場合でも、チャネル形成手段15が密着した2つのビニール部材12の間の少なくとも一部分に空間を形成し、すなわち、柔軟な容器11の内部空間とコネクタ13の開口部との間に液体燃料のチャネル(流動経路)を形成し、柔軟な容器11内に残っている液体燃料のほとんどが円滑に放出できるように作用する。
【0027】
図4aから図4cは、本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なチャネル形成手段の例を示す概略図である。
【0028】
図4aを参照すると、本実施形態のチャネル形成手段の第1の例は、柔軟な容器のビニール部材12に設けられた少なくとも1つのシワ部12dで実現することができる。すなわち、チャネル形成手段は、2つのシワ部12dの間の空間や各シワ部12dの側面に形成される空間15aにチャネルを形成することができる。シワ部12dは、ビニール部材12における他の部分よりも堅固になるように、ビニール部材12の一部分を折り曲げて重ねた部分を接合して形成された部分を指す。シワ部12dは、液体燃料の放出時、2つのビニール部材12が密着する場合でも、柔軟な容器11の内部空間とコネクタ13の開口部13bとを連結する少なくとも1つの連続的な空間15aさえ有していれば、直線状、波形状、櫛状などの任意の形状とすることができる。
【0029】
図4bを参照すると、本実施形態のチャネル形成手段の第2の例は、柔軟な容器のビニール部材12の内側面の少なくとも一部分に取り付けられた柔軟な容器よりも堅固な部材12eとして実現することができる。すなわち、チャネル形成手段は、堅固な部材12eの側面に形成される空間15aにチャネルを形成することができる。堅固な部材12eは、液体燃料の放出時、ビニール部材12が密着する場合でも、側面上に空間15aを形成できるように、例えば、四角断面を有する棒状の部材とすることができる。さらに、堅固な部材12eは、その側面上に空間15aを効果的に形成するため、側面が凹状に形成された(側面に凹状の窪みが形成された)構造としてもよい。例えば、堅固な部材12eを、断面がバーベル状の部材とすることができる。
【0030】
図4cを参照すると、本実施形態のチャネル形成手段の第3の例は、柔軟な容器のビニール部材12の内側面の少なくとも一部分に取り付けられた中空管12fとすることができる。中空管12fは、その内部に中空部15bを有し、柔軟な容器の内部空間とコネクタの開口部との間に中空部15bによる流動流路が形成されるように設けられる。
【0031】
一方、このような中空管12fは、1つの中空部15bのほか、複数の中空部を備えた中空管で実現することができる。複数の中空部を備えた中空管において、各中空部は、互いに異なる長さを有するように設けることができる。例えば、中空管は、第1中空部が第1流動流路を形成し、第2中空部が第2流動流路を形成する一方で、第1中空部の末端部が中空管の末端部に位置し、第2中空部の末端部が中空管の中間部分に位置するように設けることができる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能な追加の構成を説明するための概略図である。
【0033】
図5を参照すると、本実施形態の燃料カートリッジ10は、柔軟な容器11と、柔軟な容器11に結合されたコネクタ13と、柔軟な容器11の内部空間とコネクタ13との間に液体燃料の第1流動流路及び第2流動流路を形成する第1中空管12f及び第2中空管12gと、柔軟な容器11の保護及び支持のために柔軟な容器11を取り囲む外部容器17とを備えてなる。
【0034】
第1中空管12fは、第1流動流路を形成する第1中空部を備え、第2中空管12gは、第2流動流路を形成する第2中空部を備え、第2中空管12gは、各中空管が柔軟な容器11の互いに異なる領域に位置するように、第1中空管12fの長さよりも短い長さを有するように設けられる。
【0035】
外部容器17は、柔軟な容器11の運搬、保管、保護などの作用をし、プラスチック、木材、金属などの様々な材料で構成することができる。
【0036】
コネクタ13は、柔軟な容器11から放出された液体燃料を移送する移送管との容易な連結のために外部容器17に固定されるように連結し、外部容器17の外に露出する。さらに、コネクタ13は、移送管との容易な連結のために着脱可能な連結手段を備えることができる。
【0037】
図6a及び図6bは、本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なコネクタの断面図である。
【0038】
図6a及び図6bを参照すると、本発明のコネクタは、フランジ13a及び中空部を備える第1フレーム30と、第1フレーム30の内部面から一体的に延長し、第1フレーム30の中空部を塞ぎ、貫通孔31aを備える第2フレーム31と、貫通孔31aに嵌合されるバーベル状の第3フレーム32と、第2フレーム31と第3フレーム32との間に設けられる弾性部材34とを備えてなる。
【0039】
第1フレーム30は、ビニール部材12の開口部を貫通し、第1フレーム30のフランジ13aは、開口部の周縁に固定されるように連結される。ここで、ビニール部材12とは、上で説明した本発明の燃料カートリッジ10の柔軟な容器11を構成するビニール部材を指す。第1フレーム30の末端部には、結合溝30aが設けられる。結合溝30aは、ねじ山構造などの結合構造に代替することができる。
【0040】
第3フレーム32は、バーベル状の中間部に該当する胴部32aと、この胴部32aの一端に結合する頭部33aと、胴部32aの他端に結合するもう1つの頭部33bとを備える。胴部32aは、中空部を備え、中空部と連結される側面開口部33cを備える。また、もう1つの頭部33bは、胴部32aの中空部と連結される貫通孔33dを備える。第3フレーム32の頭部33aは、第1フレーム30の中空部よりも小さい断面積または直径を有する。
【0041】
弾性部材34は、第2フレーム31と頭部33bとの間で第3フレーム32の胴部32aを取り囲むように設けられる。弾性部材34は、燃料カートリッジの装着時、コネクタに結合する移送管の突出部から加えられる力Fによって圧縮される。弾性部材34としては、コイル状のバネなどを用いることができる。
【0042】
上記したコネクタの作用を説明すると、以下のとおりである。コネクタと移送管との連結時、第3フレーム32に外部の力Fが加えられると、第3フレーム32は、第2フレーム31の貫通孔31a中に一定部分押されて移動する。また、第3フレーム32の胴部32aの側面開口部33cが燃料カートリッジの柔軟な容器の内部空間に露出する。そのため、柔軟な容器の内部空間に貯蔵された燃料が第3フレーム32の胴部32aの側面開口部33c、胴部32aの中空部、及び第3フレーム32のもう1つの頭部33bの貫通孔33dを順次通過して外部へ放出される。次いで、コネクタと移送管との分離時、第3フレーム32に加えられる外部の力Fが除去されると、第3フレーム32は、弾性部材34の弾性力により、第2フレーム31の貫通孔31aを介して一定部分押されて移動する。続いて、第3フレーム32の頭部33aが第2フレーム31の貫通孔31aを塞ぎ、燃料カートリッジの柔軟な容器の内部空間に貯蔵された燃料が放出されないように作用する。
【0043】
図7は、本発明の実施形態に係る燃料カートリッジを用いた燃料電池の概略図である。
【0044】
同図を参照すると、本実施形態の燃料電池は、電気発生部40と、上記した本発明の実施形態のいずれかに係る燃料カートリッジ10と、燃料カートリッジ10に貯蔵された液体燃料を放出させ、放出された液体燃料を電気発生部40に供給する燃料供給装置42と、電気発生部40に酸化剤を供給する酸化剤供給装置44とを備えてなる。
【0045】
電気発生部40は、高分子電解質膜と、この高分子電解質膜の両面に位置するアノード電極及びカソード電極からなる膜電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)とを備える。電気発生部40は、アノード電極に供給される燃料とカソード電極に供給される酸化剤との電気化学的反応によって電気エネルギーを生成する。アノード電極に供給される燃料は、液体状の燃料または気体状の燃料を含む。電気発生部40が燃料として気体燃料を用いる場合、本実施形態の燃料電池は、液体燃料を改質して水素に富む気体燃料を発生させる燃料改質装置を追加して備えることができる。前記電気発生部40は、高分子電解質型燃料電池方式のスタックまたは直接メタノール型燃料電池方式のスタックとして実現することができる。
【0046】
高分子電解質型燃料電池の場合、燃料改質装置は、改質原料と水蒸気とを高温の環境にて接触させ、水素を主成分とする改質ガスを生成する水蒸気改質装置として実現することができ、水蒸気改質装置の改質触媒としては、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、またはルテニウム(Ru)系の触媒を使用することができる。
【0047】
燃料カートリッジ10に貯蔵される液体燃料としては、メタノール、エタノール、石油などの炭化水素系燃料や液体状のバイオマスなどを使用することができる。
【0048】
燃料供給装置42は、燃料カートリッジ10に貯蔵された液体燃料を任意の圧力で押し出して移送可能な装置を備える。燃料供給装置42は、着脱が容易な移送管を介して燃料カートリッジに連結することができる。燃料供給装置42としては、液体ポンプなどを用いることができる。
【0049】
酸化剤供給装置44は、電気発生部40のカソード電極に酸化剤を供給する装置である。酸化剤としては、空気、純酸素などを用いることができる。酸化剤供給装置には、送風機、コンプレッサ、空気ポンプなどを用いることができるが、定量の流動制御が容易でかつ値段の安い空気ポンプを用いることが好ましい。空気ポンプとしては、ロータリベーンポンプ、ダイヤフラムポンプなどを用いることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来技術の燃料タンクを示す図である。
【図2a】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジの正面図である。
【図2b】図2aの燃料カートリッジの側面図である。
【図3a】比較例に係る燃料カートリッジの作動原理を説明するための図である。
【図3b】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジの作動原理を説明するための図である。
【図4a】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なチャネル形成手段の概略図である。
【図4b】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なチャネル形成手段の概略図である。
【図4c】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なチャネル形成手段の概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能な追加の構成を説明するための概略図である。
【図6a】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なコネクタの断面図である。
【図6b】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジに採用可能なコネクタの断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る燃料カートリッジを用いた燃料電池のブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10 燃料カートリッジ
11 柔軟な容器
13 コネクタ
15 チャネル形成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を貯蔵するための内部空間を有する柔軟な容器と、
前記柔軟な容器に連結され、前記液体燃料の放出のための開口部を備えるコネクタと、
前記内部空間と前記コネクタとの間に設けられ、前記コネクタ付近において前記柔軟な容器が密着状態にある場合に、前記液体燃料の放出のために前記内部空間と前記コネクタの開口部とを連結する流動流路を形成するチャネル形成手段と、
を備えることを特徴とする、燃料カートリッジ。
【請求項2】
前記チャネル形成手段は、前記柔軟な容器の一部分が他の部分よりも堅固になるように、前記柔軟な容器の一部分を折曲して重ねることにより形成されたシワ部であり、前記シワ部の周囲の空間に前記流動経路を形成することを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項3】
前記チャネル形成手段は、前記柔軟な容器の内部側の面に取り付けられる前記柔軟容器よりも堅固な部材であり、前記堅固な部材の側面側の空間に前記流動経路を形成することを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
前記堅固な部材は、四角断面を有する部材であることを特徴とする、請求項3に記載の燃料カートリッジ。
【請求項5】
前記チャネル形成手段は、前記柔軟な容器の内部側の面に固定された内部に中空部を有する中空管であり、前記中空部に前記流動経路を形成することを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項6】
前記中空管は、第1流動流路が形成される第1中空部及び第2流動流路が形成される第第2中空部を有し、前記第1中空部の末端部は、前記中空管の末端部に位置し、前記第2中空部の末端部は、前記中空管の中間部分に位置することを特徴とする、請求項5に記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
前記柔軟な容器は、高分子材料またはシート状のプラスチック材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項8】
前記柔軟な容器は、2枚のシート状のプラスチック材料の周縁が接合された袋状のビニール部材からなることを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項9】
前記柔軟な容器の周囲を取り囲み、前記コネクタを露出させる外部容器をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項10】
前記コネクタのフランジは、前記柔軟な容器の開口部に固定されるように連結されることを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項11】
前記コネクタは、前記液体燃料の移送のための移送管を着脱可能に連結する連結手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項12】
前記コネクタは、前記開口部の開度を自身の弾性力により開放及び閉鎖する開度調節手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項13】
前記液体燃料は、水素を含有する液体状燃料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項14】
電解質膜、該電解質膜の両面に位置するアノード電極及びカソード電極を有し、前記アノード電極に供給される燃料と前記カソード電極に供給される酸化剤との電気化学的反応によって電気エネルギーを生成する電気発生部と、
前記電気発生部に前記燃料を供給する燃料カートリッジと、
を備える燃料電池であって、
前記燃料カートリッジは、
液体燃料を貯蔵するための内部空間を有する柔軟な容器と、
前記柔軟な容器に連結され、前記液体燃料の放出のための開口部を備えるコネクタと、
前記内部空間と前記コネクタとの間に設けられ、前記コネクタ付近において前記柔軟な容器が密着状態にある場合に、前記液体燃料の放出のために前記内部空間と前記コネクタの開口部とを連結する流動流路を形成するチャネル形成手段と、
を備えることを特徴とする、燃料電池。
【請求項15】
前記燃料カートリッジに貯蔵された前記燃料を任意の圧力で放出させ、前記放出された燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給装置をさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記電気発生部に前記酸化剤を供給する酸化剤供給装置をさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−198586(P2008−198586A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126578(P2007−126578)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】