説明

燃料噴射弁

【課題】この発明は、燃料噴射弁に関し、ニードル弁を作動させるための作動流体およびニードル弁の開弁時に噴射される流体燃料のそれぞれが他方に向けて漏れ出るのを簡便な構成を利用して防止できるようにすることを目的とする。
【解決手段】ニードル弁32と、ニードル弁32を取り巻くように形成された環状のシール室52を有するノズルボディ36とを備える。シール室52内に設置され、ニードル弁32の周面32aと摺接する摺接面54a1を有する環状のリップ部54aを備えるリップシール54を備える。リップ部54aとシール室52の周面52aとの間に、当該リップ部54aと当該周面52aとによって圧縮された状態で介在するOリング56を備える。シール室52内においてフランジ部54bの接触面54b2に接して配置され、シール室52内に作用する気体燃料の圧力を受けた際にニードル弁32の周面32aに押し付けられるバックアップリング58を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料噴射弁に係り、特に、内燃機関に気体燃料を供給するうえで好適な燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、液圧作動方式の燃料噴射装置が開示されている。この従来の燃料噴射装置は、ニードル弁を作動させるための作動液(作動流体)へのメーン燃料(流体燃料)の漏れを防止するために、メーン燃料よりも高圧のシール油による液体シールを用いるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−525899号公報
【特許文献2】特開2009−243410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように液体シールを利用した構成では、燃料噴射装置の構造が複雑となるため、コストが高くなる。また、上記従来の構成では、液体シールのためのシール油とメーン燃料との間のシール構造は、クリアランスシール構造となっている。このため、作動液へのメーン燃料の漏れ防止のために、シール油の圧力をメーン燃料の圧力よりも高くした場合に、圧力の高いシール油がクリアランスシール部を通ってメーン燃料側に漏れ出てしまうという問題がある。また、メーン燃料が水素のような分子の大きさが小さい気体燃料である場合には、クリアランスを十分に小さくしたとしてもメーン燃料がシール油側に漏れ出てしまうことが懸念される。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ニードル弁を作動させるための作動流体およびニードル弁の開弁時に噴射される流体燃料のそれぞれが他方に向けて漏れ出るのを簡便な構成を利用して防止できるようにした燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、燃料噴射弁であって、
所定の制御手段により調整される作動流体の圧力に応じて動作し、流体燃料を噴射するための噴孔を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を取り巻くように形成された環状のシール室を有し、前記ニードル弁を軸方向の移動自在な態様で内蔵するノズルボディと、
前記シール室内に設置され、前記ニードル弁の周面と摺接する摺接面を有する環状のリップ部を備える第1弾性部材と、
前記リップ部と前記シール室の周面との間に、当該リップ部と当該周面とによって圧縮された状態で介在する環状の第2弾性部材と、
前記シール室内において前記ニードル弁の軸方向における前記第1弾性部材の少なくとも一方側に設置され、前記シール室内に作用する前記流体燃料の圧力を受けた際に前記ニードル弁の前記周面およびまたは前記シール室の前記周面に押し付けられる環状の第3弾性部材と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記第1弾性部材は、当該リップ部から前記ニードル弁の径方向に突出した環状のフランジ部を含み、
前記第2弾性部材は、前記リップ部と前記フランジ部と前記シール室の前記周面とによって取り囲まれるようにして設置されており、
前記第3弾性部材は、前記フランジ部における前記第2弾性部材の接触部位の反対側の部位と接触する環状のフランジ接触面と、前記フランジ接触面の反対側の面であって前記ニードル弁から離れるに従って前記第1弾性部材に近づくように傾斜する面として形成された環状のテーパ面と、前記ニードル弁の前記周面に摺接する摺接面とを含み、
前記燃料噴射弁は、前記第3弾性部材の前記テーパ面と重なり合う環状のテーパ面を有し、前記ニードル弁の軸方向の移動が規制された態様で前記シール室内に設置された環状の規制部材を更に備えることを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記シール室内において前記流体燃料の圧力が作用する側に前記第2弾性部材が配置されるように、前記フランジ部に対する前記第2弾性部材の配置が決定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、上記構成を有する第1弾性部材と第2弾性部材との組み合わせにより、従来の液体シールのような高価なシールを用いることなく、シール性を確保することができる。そして、これらの第1および第2弾性部材に加え、上記構成を有する第3弾性部材を備えたことにより、フェールセーフ的にシール性を向上させることができる。このように、本発明によれば、作動流体および流体燃料のそれぞれが他方に向けて漏れ出るのを簡便な構成を利用して防止できるようになる。
【0010】
第2の発明によれば、流体燃料の圧力を受けた際に、第3弾性部材の摺接面が上記テーパ面の作用によってニードル弁の周面に押し付けられるようになるので、ニードル弁回りのシール性を向上させることができる。
【0011】
第3の発明によれば、流体燃料の圧力の作用によって第2弾性部材が押し潰されることによるシール性の向上効果と、流体燃料の圧力の作用によって第3弾性部材の摺接面がニードル弁の周面に押し付けられることによるシール性の向上効果の双方を、より効果的に得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料噴射弁の全体構成を概略的に説明するための断面図である。
【図2】図1に示すニードル弁周りのシール構造の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
[燃料噴射弁の全体構成およびその動作の説明]
図1は、本発明の実施の形態1における燃料噴射弁10の全体構成を概略的に説明するための断面図である。より具体的には、本実施形態の燃料噴射弁10は、作動流体(ここでは一例として作動液体)の圧力に応じて流体燃料(ここでは一例として気体燃料)の噴射を制御する弁である。
【0014】
図1に示すように、燃料噴射弁10のメインボディ12の内部には、気体燃料が流通する気体燃料通路14が形成されている。気体燃料通路14の一端には、加圧された気体燃料の供給を外部より受けるための気体燃料供給口16が設けられている。また、メインボディ12の内部には、作動液体が流通する作動液体通路18が形成されている。作動液体通路18の一端には、気体燃料の圧力の2倍の圧力となるように調整された作動液体の供給を外部より受けるための作動液体供給口20が設けられている。
【0015】
作動液体通路18の他端は、インオリフィス22を介して制御室24と接続されている。制御室24には、作動液体の排出口として機能するアウトオリフィス26が接続されている。制御室24の近傍のメインボディ12には、図示省略するECU(Electronic Control Unit)からの指令に応じて電気的に駆動される電磁弁28が設置されている。電磁弁28は、アウトオリフィス26を開閉するアーマチャ28aと、ステータ(電磁石)28bとを備えている。ECUからの指令に基づいてステータ28bが発した磁力によりアーマチャ28aがステータ28bに吸引されると、アウトオリフィス26が開放されるようになっている。その結果、制御室24内の圧力が低下する。つまり、上記の構成によれば、電磁弁28を電気的に制御することにより、制御室24内の作動液体の圧力を調整することができる。
【0016】
また、メインボディ12内には、コマンドピストン30が軸方向の移動自在に配置されている。コマンドピストン30の一方の端面は、制御室24を区画するための壁面として機能している。つまり、コマンドピストン30の一端には、制御室24内の作動液体の圧力が作用している。コマンドピストン30の他端は、ニードル弁32の一端と当接している。また、コマンドピストン30の上記他端の近傍には、ニードル弁32を閉弁側に付勢するスプリング34が設置されている。
【0017】
ニードル弁32は、軸方向の移動自在な態様でノズルボディ36に内蔵されており、ノズルボディ36の先端部に形成され気体燃料を噴射するための噴孔38を開閉する弁である。メインボディ12とノズルボディ36とは、ニードル弁32が挿通される挿通孔40aを有する環状のパッキングチップ40を両者の間に介した状態で、リテーニングナット42によって締め付けられることによって一体的に結合されている。このような構成によって、メインボディ12とパッキングチップ40との間、およびノズルボディ36とパッキングチップ40との間を通って作動液体や気体燃料が外部に漏れ出ることが防止されている。尚、パッキングチップ40は、ニードル弁32の開弁時にフルリフト位置を規制するという機能をも有している。
【0018】
ノズルボディ36の中央部位には、ニードル弁32を取り囲むようにして燃料だまり44が形成されている。メインボディ12内の気体燃料通路14は、パッキングチップ40に形成された燃料通路40bおよびノズルボディ36内に形成された気体燃料通路46を介して、燃料だまり44と連通している。また、燃料だまり44は、ニードル弁32とその周囲のノズルボディ36とで形成された環状通路48を介して、噴孔38に連通している。
【0019】
本実施形態の燃料噴射弁10は、電磁弁28の駆動がOFFとされている状態では、コマンドピストン30およびニードル弁32を図1中の下方に付勢する力(制御室24内に作用する作動液体の圧力およびスプリング34の付勢力)がニードル弁32に作用する気体燃料の圧力に打ち勝った状態となるように構成されている。このような状態から電磁弁28の駆動がONとされると、制御室24内の作動液体の圧力が低下し、ニードル弁32に作用する気体燃料の圧力が上記の下方に付勢する力に打ち勝つようになる。その結果、コマンドピストン30とともにニードル弁32が図1中の上方に移動し、噴孔38から気体燃料が噴射されるようになる。以上のように、本実施形態の燃料噴射弁10によれば、ECUからの指令に基づく電磁弁28の制御により制御室24内の作動液体の圧力を調整することによって、ニードル弁32の開閉を制御することができ、その結果、燃料噴射を制御することが可能となる。
【0020】
[ニードル弁周りのシール構造の説明]
更に、図1に示すように、ノズルボディ36におけるメインボディ12側の端部付近には、気体燃料と作動液体とを分離し、これらの気体燃料および作動液体のそれぞれが他方に向けて漏れ出るのを防止するためのニードル弁周りのシール構造50が設けられている。
【0021】
図2は、図1に示すニードル弁周りのシール構造50の詳細を説明するための図である。
図2に示すように、ノズルボディ36には、メインボディ12側(パッキングチップ40側)が開口端となり、かつ、ニードル弁32を取り巻くように形成された環状のシール室52が設けられている。シール室52内には、シール構造50の構成要素であるリップシール54、Oリング56、バックアップリング58およびサポートリング60がニードル弁32に挿通された状態で配置されている。
【0022】
リップシール54は、弾性体(ここでは一例として樹脂)からなる。リップシール54は、ニードル弁32の周面32aを覆うように形成され、当該周面32aと摺接する摺接面54a1を有する環状のリップ部54aを備えている。更に、リップシール54は、当該リップ部54aからニードル弁32の径方向に突出した環状のフランジ部54bを備えている。フランジ部54bの先端には、シール室52の周面52aと接触する接触面54b1が形成されている。
【0023】
Oリング56は、弾性体(ここでは一例としてゴム)からなる。Oリング56は、リップシール54のリップ部54aとシール室52の周面52aとの間に、当該リップ部54aと当該周面52aとによって圧縮された状態で介在している。更に付け加えると、Oリング56は、リップ部54aとフランジ部54bと周面52aとによって取り囲まれるようにして設置されている。
【0024】
バックアップリング58は、弾性体(ここでは一例として樹脂)からなる。バックアップリング58は、フランジ部54bにおけるOリング56の接触部位の反対側の部位(接触面54b2)と接触する環状のフランジ接触面58aを備えている。また、バックアップリング58は、フランジ接触面58aと反対側の面であってニードル弁32から離れるに従ってリップシール54のフランジ部54bに近づくように傾斜する面として形成されたテーパ面58bを備えている。更に、バックアップリング58は、ニードル弁32の周面32aに摺接する摺接面58cと、シール室52の周面52aに接触する接触面58dとを備えている。
【0025】
サポートリング60は、バックアップリング58に比して強度の高い材質(具体的には、金属などの剛体)からなる。サポートリング60は、バックアップリング58のテーパ面58bと重なり合う環状のテーパ面60aを備えている。また、サポートリング60におけるテーパ面60aと反対側の環状の接触面60bは、パッキングチップ40と接触している。このような構成によって、サポートリング60は、ニードル弁32の軸方向(より具体的には、図2における上方向)の移動が規制された態様でシール室52内に設置されている。
【0026】
シール室52内においてフランジ部54bに対するOリング56側の部位には、ニードル弁32とノズルボディ36との隙間62を介して、気体燃料の圧力が作用している。一方、パッキングチップ40の近くのニードル弁32の周辺には、作動液体の圧力が作用している。従って、ニードル弁32の周囲を通って気体燃料と作動液体とが混ざらないようにすることが重要である。
【0027】
以上説明した本実施形態のニードル弁周りのシール構造50では、リップシール54のリップ部54aとシール室52の周面52aとの間に、当該リップ部54aと当該周面52aとによって圧縮させた状態でOリング56を介在させている。すなわち、ニードル弁32のように高速で往復運動する要素のシールにはOリング56は不向きであるため、本シール構造50では、当該要素のシールはリップシール54のリップ部54aが担うようにし、摺動が生じないシール室52の周面52aのシールはOリング56が担うようにしている。そのうえで、本シール構造50によれば、圧縮された状態で設置されているOリング56の反発力によって、Oリング56とシール室52の周面52aとの間の接触部64、およびOリング56とリップ部54aとの接触部66にシール荷重が生ずるようになる。更に、リップ部54a(の摺接面54a1)とニードル弁32の周面32aとの間にもシール荷重(緊迫力)が生ずることとなる。このため、このようなリップシール54とOリング56とを用いてシールの対象(高速で往復移動するニードル弁32と摺動しないシール室52の周面52a)に適したシールを行う構成によって、ニードル弁32とノズルボディ36とのシール性およびシールの信頼性を高く確保することができる。また、上記構成によれば、上記隙間62を介してシール室52内に進入した気体燃料の圧力が高くなるにつれ、Oリング56がより押し潰されてシール荷重が増すという効果を得ることもできる。
【0028】
更に、本実施形態のシール構造50は、リップシール54およびOリング56に加え、上記テーパ面58bを有するバックアップリング58と、上記テーパ面60aを有し、かつパッキングチップ40によってニードル弁32の軸方向の移動が規制されたサポートリング60とを備えている。その結果、上記隙間62を介してシール室52内に進入した気体燃料の圧力がリップシール54やOリング56に作用した際に、テーパ面58b、60aの作用によってバックアップリング58が変形する。具体的には、バックアップリング58の摺接面58cがニードル弁32の周面32aに押し付けられ、当該摺接面58cと当該周面32aとの間にシール荷重が生ずることとなる。これと同時に、リップシール54の接触面54b2とバックアップリング58のフランジ接触面58aとの間にもシール荷重が生ずることとなる。これにより、万一、リップ部54aとニードル弁32の周面32aとの間から気体燃料が作動液体側に漏れ出ることがあったとしても、本シール構造50によれば、摺接面58cとニードル弁32の周面32aとの間、およびリップシール54の接触面54b2とバックアップリング58のフランジ接触面58aとの間を利用して、フェールセーフ的にシールを行うことが可能となる。また、上記構成によれば、上記隙間62を介してシール室52内に進入した気体燃料の圧力が高くなるにつれ、摺接面58cとニードル弁32の周面32aとの間、およびリップシール54の接触面54b2とバックアップリング58のフランジ接触面58aとの間のシール荷重が増すという効果を得ることもできる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のニードル弁周りのシール構造50によれば、気体燃料および作動液体のそれぞれが他方に向けて漏れ出るのを簡便な構成を利用して防止することができるようになる。
【0030】
また、以上説明したシール構造50では、シール室52内において気体燃料の圧力が作用する側にOリング56が配置されるように、フランジ部54bに対するOリング56の配置が決定されている。これにより、上述した効果、すなわち、上記隙間62を介してシール室52内に進入した気体燃料の圧力が高くなるにつれ、Oリング56がより押し潰されてシール荷重が増すという効果を奏することができるようになる。
【0031】
ところで、上述した実施の形態1においては、シール室52内においてニードル弁32の軸方向におけるリップシール54のフランジ部54bの上方側(フランジ部54bにおけるOリング56の接触部位の反対側の部位(接触面54b2))に、バックアップリング58を備えるようにしている。しかしながら、本発明における第3弾性部材の設置部位は、上記に限定されるものではない。すなわち、例えば、バックアップリング58およびサポートリング60は、上記のようにフランジ部54bの上方側に備えられた構成に代え、或いはそれとともに、フランジ部54bの下方側(Oリング56側)に設置されていてもよい。このように、バックアップリング58およびサポートリング60がフランジ部54bの下方側(Oリング56側)に設置されていた場合には、バックアップリング58に作用する気体燃料の圧力によってバックアップリング58を変形させて、バックアップリング58の摺接面58cをニードル弁32の周面32aに押し付けることができ、当該摺接面58cと当該周面32aとの間にシール荷重を生じさせることができる。ただし、上記図2に示す構成の方が、気体燃料の圧力の作用によってOリング56が押し潰されることによるシール荷重の向上効果と、気体燃料の圧力の作用によってバックアップリング58が変形することによるシール荷重の向上効果の双方を、より効果的に得られるのでよい。
【0032】
また、上述した実施の形態1においては、ニードル弁32から離れるに従ってフランジ部54bに近づくように傾斜する面として形成されたテーパ面58bを備えるバックアップリング58をフランジ部54bの接触面54b2と接触するように配置するとともに、当該テーパ面58bと重なり合うテーパ面60aを有し、パッキングチップ40によりニードル弁32の軸方向の移動が規制されたサポートリング60を備えるようにしている。しかしながら、本発明における第3弾性部材と規制部材の組み合わせは、上記に限定されるものではない。すなわち、例えば、フランジ部54bとパッキングチップ40との間に介在するバックアップリングとサポートリングの配置を上記と逆にし、かつ、上記テーパ面58bと逆向きのテーパ面(すなわち、ニードル弁32から離れるに従ってフランジ部54bから離れるように傾斜する面として形成されたテーパ面)をバックアップリングが備えるようにしてもよい。これは、フランジ部54bの下方側(Oリング56側)にバックアップリング58およびサポートリング60を設置する場合も同様である。
【0033】
また、上述した実施の形態1においては、上記テーパ面58bを有するバックアップリング58とそれに対応するサポートリング60との組み合わせによって、シール室52内に作用する気体燃料の圧力を受けた際に、バックアップリング58の摺接面58cがニードル弁32の周面32aに押し付けられるように構成している。しかしながら、本発明における第3弾性部材は、上記に限定されるものではない。すなわち、例えば、バックアップリングにおけるテーパ面のテーパの向きを上記テーパ面58bと逆向きにすることによって、シール室52内に作用する気体燃料の圧力を受けた際に、バックアップリング58の摺接面58cがシール室52の周面52aに押し付けられるように構成されたものであってもよい。
【0034】
尚、上述した実施の形態1においては、図示省略するECUの指令を受ける電磁弁28および制御室24が前記第1の発明における「制御手段」に、リップシール54が前記第1の発明における「第1弾性部材」に、Oリング56が前記第1の発明における「第2弾性部材」に、バックアップリング58が前記第1の発明における「第3弾性部材」に、それぞれ相当している。
また、上述した実施の形態1においては、パッキングチップ40によりニードル弁32の軸方向位置が規制されるサポートリング60が前記第2の発明における「規制部材」に相当している。
【符号の説明】
【0035】
10 燃料噴射弁
12 メインボディ
14 メインボディ内の気体燃料通路
16 気体燃料供給口
18 メインボディ内の作動液体通路
20 作動液体供給口
22 インオリフィス
24 制御室
26 アウトオリフィス
28 電磁弁
30 コマンドピストン
32 ニードル弁
32a ニードル弁の周面
34 スプリング
36 ノズルボディ
38 噴孔
40 パッキングチップ
40a 挿通孔
40b 燃料通路
42 リテーニングナット
44 燃料だまり
46 ノズルボディ内の気体燃料通路
48 環状通路
50 ニードル弁周りのシール構造
52 シール室
52a シール室の周面
54 リップシール
54a リップシールのリップ部
54a1 リップ部の摺接面
54b リップシールのフランジ部
54b1 フランジ部の接触面
54b2 フランジ部の接触面
56 Oリング
58 バックアップリング
58a バックアップリングのフランジ接触面
58b バックアップリングのテーパ面
58c バックアップリングの摺接面
58d バックアップリングの接触面
60 サポートリング
60a サポートリングのテーパ面
60b サポートリングの接触面
62 ニードル弁とノズルボディとの隙間
64 Oリングとシール室の周面との間の接触部
66 Oリングとリップ部との接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の制御手段により調整される作動流体の圧力に応じて動作し、流体燃料を噴射するための噴孔を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を取り巻くように形成された環状のシール室を有し、前記ニードル弁を軸方向の移動自在な態様で内蔵するノズルボディと、
前記シール室内に設置され、前記ニードル弁の周面と摺接する摺接面を有する環状のリップ部を備える第1弾性部材と、
前記リップ部と前記シール室の周面との間に、当該リップ部と当該周面とによって圧縮された状態で介在する環状の第2弾性部材と、
前記シール室内において前記ニードル弁の軸方向における前記第1弾性部材の少なくとも一方側に設置され、前記シール室内に作用する前記流体燃料の圧力を受けた際に前記ニードル弁の前記周面およびまたは前記シール室の前記周面に押し付けられる環状の第3弾性部材と、
を備えることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、当該リップ部から前記ニードル弁の径方向に突出した環状のフランジ部を含み、
前記第2弾性部材は、前記リップ部と前記フランジ部と前記シール室の前記周面とによって取り囲まれるようにして設置されており、
前記第3弾性部材は、前記フランジ部における前記第2弾性部材の接触部位の反対側の部位と接触する環状のフランジ接触面と、前記フランジ接触面の反対側の面であって前記ニードル弁から離れるに従って前記第1弾性部材に近づくように傾斜する面として形成された環状のテーパ面と、前記ニードル弁の前記周面に摺接する摺接面とを含み、
前記燃料噴射弁は、前記第3弾性部材の前記テーパ面と重なり合う環状のテーパ面を有し、前記ニードル弁の軸方向の移動が規制された態様で前記シール室内に設置された環状の規制部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記シール室内において前記流体燃料の圧力が作用する側に前記第2弾性部材が配置されるように、前記フランジ部に対する前記第2弾性部材の配置が決定されていることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67688(P2012−67688A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213588(P2010−213588)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】