説明

燃料噴射装置の駆動装置

【課題】弁体の不安定な挙動を抑制して燃料噴射特性の線形領域を低噴射量側に拡大することにより、最小噴射量を低減した燃料噴射装置の駆動装置を提供する。
【解決手段】燃料噴射装置の開弁時にバッテリ電圧より高い電圧に昇圧された高電圧源から電圧410を印加して電流を燃料噴射装置に供給後、高電圧源からの電圧410の印加を停止して、燃料噴射装置に供給する電流を弁体の開弁を保持できない電流値405まで低下させ、その後、保持電流408へ切替える段階で高電圧源から電圧411を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関に使用される燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガスの排出規制の強化や、化石燃料枯渇の懸念から、内燃機関における燃費(燃料消費率)の向上が求められている。このため、内燃機関の各種の損失を低減することで、燃費の向上を図る努力が行われている。一般に、損失を低減すると、機関の運転に必要な出力を小さくすることができるため、内燃機関の最低出力を小さくすることができる。このような内燃機関においては、最低出力に対応した少ない燃料量まで制御して供給する必要が生じる。
【0003】
また、近年では、排気量を減らして小型化するとともに、過給器によって出力を得るようにしたダウンサイジングエンジンが注目されている。ダウンサイジングエンジンでは、排気量を減らすことで、ポンピングロスやフリクションを低減することができるため、燃費を向上することができる。一方で、過給器を用いることで十分な出力を得ると共に、筒内直接噴射を行うことによる吸気冷却効果により、過給に伴う圧縮比の低下を抑制して、燃費を向上することができる。特に、このダウンサイジングエンジンに用いる燃料噴射装置では、低排気量化によって得る最低出力に対応した最小噴射量から、過給によって得る最高出力に対応した最大噴射量までの広範囲に亘って燃料を噴射できる必要がある。
【0004】
一般に、燃料噴射装置の噴射量は、ECUより出力される駆動パルスのパルス幅によって制御する。パルスを長くすると噴射量が大きく、パルスを短くすると噴射量が小さくなり、その関係は略線形的である。しかしながら、駆動パルスが短い領域では、可動子がストッパーなどに衝突した際に生じる跳ね返り現象(可動子のバウンド挙動)により、噴射パルス幅に対して噴射量が直線的に変化せず、このために燃料噴射装置の制御可能な最小噴射量が増加してしまうという問題があった。また、前述の可動子の跳ね返り現象のために噴射量が安定しない場合があり、これも最小噴射量を増大させたり、燃料噴射装置の個体ばらつきを増大させる原因となることがあった。
【0005】
上述したように、燃費を向上するためには、燃料噴射装置が制御可能な最小噴射量を低減する必要がある。
【0006】
最小噴射量を低減するためには、可動子のバウンド挙動を抑制する必要があり、このための技術として、特開昭58−214081号公報には、開弁動作が完了する直前(目標リフト到達直前)に電流を急速に遮断することによって、プランジャの速度を減速させ、プランジャの跳ね返り現象を抑制することで、流量特性の非直線性を改善し、最小噴射量を低減する電磁弁駆動装置が開示されている。
【0007】
また、最小噴射量を低減するための別の手段として、特開2009−162115号公報に開示された燃料噴射制御装置が知られている。この燃料噴射制御装置では、高電圧源から電流を供給後、急速に電流を放電させ、弁体の開弁を保持できない第1の電流値以下まで低下させた後、開弁を保持できる第2の電流値を供給することで、小パルス領域での燃料噴射弁の閉弁遅れを小さくし、最小噴射量を低減可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−214081号公報
【特許文献2】特開2009−162115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術では、駆動電流を遮断するタイミングについての配慮が必ずしも十分ではなかった。開弁途中においては、駆動電流を遮断してから磁気吸引力が低下するまでには遅れ時間が存在するため、駆動電流は開弁完了より以前であることに加えて、所望の減速タイミングより更に以前に遮断されている必要がある。
【0010】
特に、高い応答性が要求されている筒内噴射用の燃料噴射装置においては、弁体の運動が高速であるため、弁体の開弁動作の完了直前で電流を遮断しても、磁気吸引力が減少して減速力を得るまでの遅れ時間の間に開弁が完了してしまい、十分な効果が得られない。
【0011】
また、特開2009−162115号公報に開示されている装置では、高電圧源からの電流を遮断してから開弁を保持できる保持電流値に復帰させる際に生じる問題点についての配慮が十分ではない。
【0012】
高電圧源から電流を供給後、電流を遮断し、開弁を保持できない電流値にまで電流を低下させる場合、そのままでは、開弁状態を維持できずに閉弁してしまう。このため、開弁状態を維持できる電流値、すなわち電流の遮断後に保持電流を供給する必要がある。しかしながら、遮断期間中の電流値から保持電流への移行をバッテリ電圧で行うと、電流値が所定の保持電流に達するまでの時間が長くなり、開弁状態を安定して維持することができないという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、弁体の不安定な挙動を抑制して最小噴射量を低減した燃料噴射装置の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、燃料噴射装置の開弁時にバッテリ電圧より高い電圧に昇圧された高電圧源から電圧を印加して電流を燃料噴射装置に供給後、高電圧源からの電圧の印加を停止して、燃料噴射装置に供給する電流を弁体の開弁を保持できない電流値以下まで低下させた後、保持電流へ切替える段階で高電圧源から電圧を印加する。
【0015】
具体的には、以下のように構成すると良い。
【0016】
弁体を駆動して開弁状態と閉弁状態とを切替える燃料噴射装置に弁体の駆動電流を供給する駆動装置であって、燃料噴射装置に対する第1の電圧源と第1の電圧源よりも高い電圧を生じる第2の電圧源との電気的な接続をオンオフする手段を備え、閉弁状態から開弁状態に弁体を動作させる開弁時に第2の電圧源の電圧を燃料噴射装置に印加して弁体の駆動電流を第2の電圧源から供給し、その後、第2の電圧源の電圧の印加を停止して第1の電圧源の電圧を燃料噴射装置に印加することにより弁体を開弁状態に保持する保持電流を第1の電圧源から供給する燃料噴射装置の駆動装置において、第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくし、その後、第2の電圧源の電圧の印加を再開して弁体を開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくし、その後、前記保持電流を第1の電圧源から供給する。
【0017】
このとき、前記第1の電圧源の電圧を昇圧する昇圧回路で前記第2の電圧源を構成するとよい。
【0018】
また、前記第2の電圧源を駆動装置上に備えるとよい。
【0019】
また、第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくする際に、弁体が最大リフト位置に到達する前に弁体の移動速度が減速するタイミングで、前記第2の電圧源の電圧の印加を停止するとよい。
【0020】
また、第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくした後に、第1の電圧源の電圧を印加して弁体を開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくする制御を実行可能に構成し、弁体を開弁状態に保持できない電流値から開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくする際に用いる電圧源として前記第1の電圧源又は前記第2の電圧源のいずれかを選択可能にするとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、素早く保持電流値に切替えることができ、弁体の不安定な挙動を抑制することができるので、最小噴射量を低減した燃料噴射装置の駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例における燃料噴射装置の縦断面図と、この燃料噴射装置に接続される駆動回路及びエンジンコントロールユニット(ECU)の構成を示す図である。
【図2】燃料噴射装置を駆動する一般的な噴射パルス,燃料噴射装置に供給する電圧と励磁電流のタイミング,弁体挙動の関係を示した図である。
【図3】図2における噴射パルスのパルス幅Tiと燃料噴射量との関係を示す図である。
【図4】本発明の第一実施例における噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示す図である。
【図5】第一実施例における噴射パルスのパルス幅Tiと燃料噴射量の関係を示す図である。
【図6】本発明の第二実施例における噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示す図である。
【図7】本発明の第三実施例における噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示す図である。
【図8】燃料噴射装置を駆動するための駆動回路について、本発明の一実施例を示す構成図である。
【図9】図8の駆動回路について、噴射パルスと駆動電流(励磁電流)とスイッチング素子の切替えタイミングとを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜図7を用いて、本発明に係る燃料噴射装置及びその駆動装置の構成と動作について説明する。
【0024】
最初に、図1を用いて、燃料噴射装置及びその駆動装置の構成と基本的な動作を説明する。図1は、燃料噴射装置の縦断面図とその燃料噴射装置を駆動するためのEDU(駆動回路:エンジンドライブユニット)121,ECU(エンジンコントロールユニット)120の構成の一例を示す図である。本実施例ではECU120とEDU121とは別体の部品として構成されているが、ECU120とEDU121は一体の部品として構成されてもよい。
【0025】
ECU120では、エンジンの状態を示す信号を各種センサーから取り込み、内燃機関の運転条件に応じて適切な噴射パルスの幅や噴射タイミングの演算を行う。ECU120より出力された噴射パルスは、信号線123を通して燃料噴射装置の駆動回路121に入力される。駆動回路121は、ソレノイド105に印加する電圧を制御し、電流を供給する。ECU120は、通信ライン122を通して、駆動回路121と通信を行っており、燃料噴射装置に供給する燃料の圧力や運転条件によって駆動回路121によって生成する駆動電流を切替えることが可能である。駆動回路121は、ECU120との通信によって制御定数を変化できるようになっており、制御定数に応じて電流波形が変化する。
【0026】
燃料噴射装置の縦断面を用いて構成と動作について説明する。
【0027】
図1に示した燃料噴射装置は通常時閉型の電磁弁(電磁式燃料噴射弁)であり、ソレノイド(コイル)105に通電されていない状態では、可動子である弁体114は第1のばねであるスプリング110によって弁座118に向けて付勢され、弁座118に密着して閉状態となっている。この閉状態においては、アンカー102は第2のばねであるゼロ位置ばね112によって固定コア107側(開弁方向)に付勢されており、弁体114の固定コア側の端部に設けられた規制部114aに密着している。この状態では、アンカー102と固定コア107との間には隙間がある状態となっている。弁体114のロッド部114bをガイドするロッドガイド113がハウジングを成すノズルホルダ101に固定されている。弁体114とアンカー102とは相対変位可能に構成されており、ノズルホルダ101に内包されている。また、ロッドガイド113はゼロ位置ばね112のばね座を構成している。スプリング110による力は、固定コア107の内径に固定されるバネ押さえ124の押し込み量によって組み立て時に調整されている。なお、ゼロ位置ばね112の付勢力はスプリング110の付勢力よりも小さく設定されている。
【0028】
燃料噴射装置は、固定コア107,アンカー102,ヨーク103とで磁気回路を構成しており、アンカー102と固定コア107との間に空隙を有している。ノズルホルダ101のアンカー102と固定コア106との間の空隙に対応する部分には磁気絞り111が形成されている。ソレノイド105はボビン104に巻き付けられた状態でノズルホルダ101の外周側に取り付けられている。
【0029】
弁体114の規制部114aとは反対側の端部の近傍にはロッドガイド115がノズルホルダ101に固定されるようにして設けられている。弁体114は第1のロッドガイド113と第2のロッドガイド115との2つのロッドガイドにより、弁軸方向の動きをガイドされている。
【0030】
ノズルホルダ101の先端部には、弁座118と燃料噴射孔119とが形成されたオリフィスプレート116が固定され、アンカー102と弁体114とが設けられた内部空間(燃料通路)を外部から封止している。
【0031】
燃料は燃料噴射装置の上部より供給され、弁体114の規制部114aとは反対側の端部に形成されたシール部と弁座118とで燃料をシールしている。閉弁時には、燃料圧力によって弁座位置におけるシート内径に応じた力で弁体が閉方向に押されている。
【0032】
ソレノイド105に電流が通電されると、アンカー102と固定コア107との間に磁束が発生し、磁気吸引力が発生する。アンカー102に作用する磁気吸引力がスプリング110による荷重と、燃料圧力による力の和を超えると、アンカー102が上方へ動く。このときアンカー102は弁体114の規制部114aと係合した状態で弁体114と一緒に上方へ移動し、アンカー102の上端面が固定コア107の下面に衝突するまで移動する。
【0033】
その結果、弁体114が弁座より離間し、供給された燃料が、複数の燃料噴射孔119から噴射される。
【0034】
ソレノイド105への通電が断たれると、磁気回路中に生じていた磁束が消滅し、磁気吸引力も消滅する。アンカー102に作用する磁気吸引力が消滅することによって、弁体114はスプリング110の荷重と、燃料圧力による力によって、弁座118に接触する閉位置に押し戻される。弁体114が閉位置に押し戻される動作では、アンカー102は弁体114の規制部114aと係合した状態で一緒に移動する。
【0035】
本実施例の燃料噴射装置では、弁体114とアンカー102とは、開弁時にアンカー102が固定コア107と衝突した瞬間と、閉弁時に弁体114が弁座118と衝突した瞬間の非常に短い時間、相対的な変位を生じることにより、アンカー102の固定コア107に対するバウンドや弁体114の弁座118に対するバウンドを抑制する効果を奏する。
【0036】
なお、上記のように構成されることにより、スプリング110は磁気吸引力による駆動力の向きとは逆向きに弁体114を付勢しており、ゼロ位置ばね112はスプリング110の付勢力とは逆向きにアンカー102を付勢している。
【0037】
次に、燃料噴射装置を駆動する一般的な噴射パルスと駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係(図2)、及び噴射パルスと燃料噴射量との関係(図3)について説明する。
【0038】
駆動回路121に噴射パルスが入力されると、駆動回路121はバッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源からソレノイド105に高電圧201を印加し、ソレノイド105に電流の供給が開始される。電流値が、予め定められたピーク電流値Ipeakに到達すると、高電圧201の印加を停止する。その後、印加する電圧を0V以下にし、電流202のように電流値を低下させる。電流値が所定の電流値204より小さくなると、駆動回路121はバッテリ電圧の印加をスイッチングによって行い、所定の電流203になるように制御する。
【0039】
このような供給電流のプロファイルにより、燃料噴射装置は駆動される。高電圧201の印加からピーク電流に到達するまでの間に弁体のリフトは開始され、弁体はやがて目標リフト位置に到達する。目標リフト位置到達後は、アンカー102と固定コア107との衝突により、弁体114がバウンド動作を行い、やがて保持電流が生成する磁気吸引力によって、弁体114は所定の目標リフト位置に静止し、安定した開弁状態となる。なお、弁体114はアンカー102に対して相対変位可能に構成されているため、目標リフト位置を越えて変位している。
【0040】
次に、噴射パルス幅Tiと燃料噴射量との関係について説明する。噴射パルス幅が一定の時間に達しない時には、弁体は開弁しないため、燃料は噴射されない。噴射パルス幅が短い、例えば301のような条件では、弁体はリフトを開始するが、弁体が目標リフト位置に達する前に閉弁を開始するため、直線領域320から外挿される破線330に対して噴射量は少なくなる。点302のパルス幅では、目標リフト位置に達した直後に閉弁を開始し、閉弁に要する時間の割合が大きくなるため、破線330に対して噴射量が多くなる。点303の噴射パルス幅では、弁体のバウンド量が最大となるタイミングt23において閉弁を開始するため、噴射パルスOFFから閉弁するまでの閉じ遅れ時間が小さくなり、その結果噴射量は破線330に対して少なくなっている。点304は、弁体のバウンドが収束した直後のタイミングt24に閉弁を開始するような状態であり、点304より大きい噴射パルス幅では、噴射パルス幅Tiの増加に応じて燃料の噴射量が線形的に増加する。燃料の噴射が開始されてから、点304で示すパルス幅までの領域では、弁体のバウンドが安定しないため、噴射量が変動する。噴射パルス幅Tiの増加に応じて燃料の噴射量が線形的に増加する領域を増やすことが、最小噴射量を低減する上で重要である。図2で説明したような一般的な駆電流波形では、アンカー102と固定コア107の衝突によって発生する弁体114のバウンドが大きく、弁体114のバウンド途中で閉弁を開始することにより、点304までの短い噴射パルス幅の領域に非線形性が発生し、この非線形性が最小噴射量悪化の原因となっている。従って、噴射量特性の非線形性を改善するためには、目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンドを低減する必要がある。
【実施例1】
【0041】
図4,図5を用いて本発明における第一実施例を説明する。図4はECU(エンジンコントロールユニット)から出力される噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示した図である。また、図5は、ECUより出力される噴射パルスのパルス幅Tiと燃料噴射量との関係を示した図である。
【0042】
ECU120から駆動回路121に噴射パルスが入力されると、バッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源から高電圧410を印加し、ソレノイド105に電流の供給が開始される。電流値が予め定められたピーク電流値Ipeakに達すると、高電圧の印加を停止して、印加する電圧を0V以下にし、電流403のように電流値を低下させる。その後電流値を遮断もしくは抑制し、電流405のように開弁状態を保持できない電流値にまで低下させる。この電流の遮断から所定の時間、保持電流値409より小さい電流にする。その後、再びバッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源から高電圧411を印加し、ソレノイド105に電流を供給する。この高電圧411の印加によって、保持電流408へ移行させる。このように電流を遮断して、開弁を保持できる電流値以下にまで下げた後に、昇圧された高電圧を印加することによって、開弁状態を安定して維持できる電流値に素早く移行することが可能である。
【0043】
続いて電流が開弁を保持できる第1の電流値406に到達すると、駆動回路はバッテリ電圧の印加をスイッチングにて行い、第1の電流値406を維持するように制御を行い、駆動電流408を流す。駆動電流408の保持を所定の時間行った後、電流値を低下させ、開弁を保持できる第2の電流値407に到達すると、駆動回路はバッテリ電圧の印加をスイッチングにて行い、第2の電流値407を維持するように制御を行い、駆動電流409を流す。このように、第2の電流値407は第1の電流値406よりも小さい値に設定されており、駆動電流409は駆動電流408よりも小さくなる。なお、駆動電流408から駆動電流409への切替えは、0V以下の電圧を与えて電流値を素早く低下させる場合と、0Vあるいは正の電圧印加によって緩やかに変化させる場合がある。噴射パルスOFFから弁体が閉弁するまでの閉弁遅れ時間は、噴射パルスがOFFになる際の電流値の大小の影響を受ける。この電流値が小さいと、閉弁遅れ時間が小さくなる。よって、0V以下の電圧によって駆動電流408から駆動電流409への切替えを素早く行った場合には、閉弁遅れ時間が一定となる領域、すなわち噴射量が線形となる領域に素早く移行できるという効果がある。駆動電流408から駆動電流409への切替えを緩やかに行った場合には、切替え期間の噴射量が緩やかに線形領域に移行するという効果がある。これらは、駆動対象の燃料噴射装置の特性によって選択すると良い。
【0044】
このような電流のプロファイルにより弁体114を駆動することによって得られる効果を以下に説明する。ここで、高電圧410の印加開始からピーク電流値Ipeakに達するまでの間に弁体114のリフトは開始される。リフト開始の後、電流403のように電流値を遮断もしくは抑制し、電流405のように駆動電流409より小さい電流値にまで低下させる。このピーク電流値Ipeak到達から開弁を保持できない電流値にまで低下させる期間を電流低下期間と称する。この電流低下期間を設けることで、アンカー102が固定コア107に衝突する直前のタイミングt43に弁体114を減速させ、衝突する際の速度を低減することで開弁後の弁体バウンドを抑制することができる。
【0045】
なお、この電流低下期間において駆動電流を遮断してから磁束が消滅し、磁気吸引力が低下するまでには、遅れが生じる。このため、電流を遮断してから弁体114が減速するまでに遅れ時間404が生じる。したがって、弁体114が目標リフト位置に到達する直前のt43のタイミングで弁体を減速させるためには、t43よりも早い例えばt32のタイミングで電流の遮断を開始する必要がある。このとき電流の遮断を開始するタイミングは、弁体114がリフトを開始するt41のタイミングと弁体114が減速するt43のタイミングの間であるとよい。このようなタイミングで電流の遮断を行うと、弁体114が目標リフト位置に到達する前に弁体114を減速することができ、この減速効果によって、目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンド動作を抑制できる。その結果、噴射パルス幅が短い領域での噴射量特性を直線に近づけ、最小噴射量を低減できる。
【0046】
さらに電流の遮断タイミングは、高電圧410を印加している段階で、電流が開弁状態を維持できる電流値407以上に到達するタイミングより後に電流の遮断を行い、かつその遮断タイミングは弁体の減速よりも早いタイミングで行うとよい。このようなタイミングで電流の遮断を行うことで、弁体114は確実に開弁を開始して必要な速度を得るとともに、目標リフト位置に到達する前に減速することができる。この減速効果によって、開弁時の目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンド動作を抑制することができ、噴射パルス幅が短い場合での噴射量特性を直線に近づけ、最小噴射量を低減できる。
【0047】
ここで、本発明に拠らず、電流405から電流408への切替えに高電圧411を用いない場合には、ピーク電流値Ipeak到達後に電流低下期間を設けて、開弁を保持できない電流405としたときに、ピーク電流,保持電流,電流低下期間,電流405から電流408までの移行タイミングや燃料圧力,燃料噴射装置の個体ばらつきなどによって駆動電流と弁体114の挙動が所定の値とずれて、弁体114の挙動が不安定になる可能性がある。例えば、目標リフト位置到達までの弁体114の過渡的な挙動が所定の動作に対して変化して、目標リフト位置到達までの時間が所定の弁体114の挙動と比べて早くなった場合、弁体114を減速させるための電流405によって磁気吸引力が低下している期間中に弁体114が目標リフト位置に到達してしまう可能性がある。この場合、目標リフト位置到達後に、開弁状態を維持するための十分な磁気吸引力を確保できず、弁体114の挙動が不安定になってしまうことがある。
【0048】
以上の理由により、弁体114の挙動の安定性の観点から目標リフト位置到達後は速やかに電流408へ切替わる必要がある。そこで本実施例では、電流408への切替え期間412に高電圧源から電圧411を印加することで、再び急速に磁気吸引力を発生させ、電流値を素早く電流408へ切替える。このようにすることで、開弁状態を維持できる磁気吸引力を確保できないために生じる弁体の不安定な挙動を抑制することが可能となる。なお、電流408を一定時間保持した後、弁体114のバウンドが安定した後に電流409への切替えを行うように電流408の保持時間を設定するとよい。開弁を保持できる電流値は、燃料噴射装置に供給される燃料圧力や燃料噴射装置のスプリング110やゼロ位置ばね112の設定荷重、あるいは発生する磁気吸引力などの力のプロファイルによって変わる。例えば、エンジンの回転数・負荷により、燃料圧力が変わり、保持電流409の電流値であっても弁体114の挙動が安定させられるような場合、保持電流409以下の電流値405から直接、保持電流409へ切替わる電流制御を行っても良い。このようにできると、電流408の期間における閉弁遅れ時間を低減でき、弁体114が閉弁を開始する状態での最小噴射量をより低減させることが可能となる。また、燃料圧力によって、開弁を保持できる電流値は変わるため、保持電流408,409に関しては、燃料圧力が低い場合には電流を小さくし、燃料圧力が高い場合には、電流を大きくするようにECU120から駆動回路121の制御パラメータの書き換えを行う電流制御を行っても良い。このようにできると特に低い燃料圧力時に保持電流を小さくできるため、閉弁遅れ時間が小さくなり、バウンド抑制効果と合わせて最小噴射量を低減することが可能となる。
【0049】
以上の方法により、開弁時の目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンドを抑制することによって、図5に示す噴射量特性の直線性を噴射量特性520のように向上させることができる。よって、従来の駆動波形での噴射量特性320では、弁体114のバウンドが要因となり噴射量を点304以下にはできない問題があったが、本実施例によって弁体114のバウンドを抑制することにより、噴射量を点501まで低減することができる。これにより、噴射量特性の線形領域を低流量側に拡大することができ、制御可能な最小噴射量を低減することが可能になる。
【0050】
なお、本発明による駆動方法を用いる場合、図2で説明した駆動波形に比べ、燃料噴射装置が正常に作動する燃料圧力の限界が低下する場合がある。このため、最小噴射量が必要な条件では本実施例による駆動電流波形を使用し、高い燃料圧力での動作が必要な場合には、図2で説明した駆動電流を用いるように駆動電流の切替えを行うと効果的である。
【0051】
図8を用いて第一実施例における燃料噴射装置の駆動回路の構成について説明する。図8は燃燃料噴射装置を駆動する回路構成を示した図である。CPU801は例えばECUに内蔵され、内燃機関の運転条件に応じて適切な噴射パルスTiのパルス幅(すなわち噴射量)や噴射タイミングの演算を行い、通信ライン804を通して燃料噴射装置の駆動IC802に噴射パルスTiを出力する。その後駆動IC802によって、スイッチング素子805,806,807のON,OFFを切替えて、燃料噴射装置815へ駆動電流を供給する。
【0052】
スイッチング素子805は駆動回路に入力された電圧源VBよりも高い高電圧源VHと燃料噴射装置807の高電圧側の端子間に接続されている。スイッチング素子805,806,807は、例えばFETやトランジスタ等によって構成される。高電圧源VHの電圧値は例えば60Vであり、バッテリ電圧を昇圧回路814によって昇圧することで生成される。昇圧回路814は例えばDC/DCコンバータ等により構成される。スイッチング素子807は、低電圧源VBと燃料噴射装置の高圧端子間に接続されている。低電圧源VBは例えばバッテリ電圧であり、その電圧値は12Vである。スイッチング素子806は、燃料噴射装置815の低電圧側の端子と接地電位の間に接続されている。駆動IC802は、電流検出用の抵抗808,812,813により、燃料噴射装置815に流れている電流値を検出し、検出した電流値によって、スイッチング素子805,806,807のON,OFFを切替え、所望の駆動電流を生成している。ダイオード809と810は電流を遮断するために備え付けられている。CPU801は駆動IC802と通信ライン803を通して、通信を行っており、燃料噴射装置815に供給する燃料の圧力や運転条件によって駆動IC802によって生成する駆動電流を切替えることが可能である。
【0053】
図8と図9を用いて、第一実施例における燃料噴射装置に流れる励磁電流を生成するための、スイッチング素子の切替えタイミングについて説明する。
【0054】
図9は、CPU801より出力される噴射パルスと駆動電流(励磁電流),スイッチング素子805,スイッチング素子806,スイッチング素子806のON,OFFのタイミングを示した図である。
【0055】
タイミングt91において、CPU801より噴射パルスTiが通信ライン804を通して駆動IC802に入力されると、スイッチング素子805とスイッチング素子806がONとなり、バッテリ電圧よりも高い高電圧源VHから電流が燃料噴射装置815に供給され、電流が急速に立ち上がる。電流がピーク電流Ipeakに達すると、スイッチング素子805とスイッチング素子806、スイッチング素子が共にOFFになり、燃料噴射装置815のインダクタンスによる逆起電力によって、ダイオード809とダイオード810が通電し、電流が電圧源VH側へ帰還され、燃料噴射装置815に供給されていた電流は、電流903のようにピーク電流値Ipeakから急速に低下する。なお、ピーク電流値Ipeakから電流905への移行期間にスイッチング素子806をONにすると、逆起電力エネルギーによる電流は接地電位側に流れ、電流は緩やかに低下する。その後タイミングt93に到達すると、再びスイッチング素子805とスイッチング素子806をONにし、高電圧源VHから燃料噴射装置815へ電流が供給され、電流は急速に立ち上がる。その後、電流値906に電流が達すると、スイッチング素子805をOFFにし、スイッチング素子807のON,OFFの切替えを行い、電流値906或いはその近傍で電流値を保持するように電流908を制御する。電流908を一定時間保持した後、スイッチング素子807をOFFにし、電流を低下させる。電流値907に達すると、再びスイッチング素子のON,OFFの切替えを行い、電流値907或いはその近傍で電流値を保持するように電流909を制御する。その後、噴射パルスがOFFになるとスイッチング素子806とスイッチング素子807が共にOFFとなり電流が低下する。
【実施例2】
【0056】
図6を用いて第二実施例について説明する。図6はECU(エンジンコントロールユニット)から出力される噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示した図である。なお、以下で説明する駆動電圧又は駆動電流の制御は、第1実施例で説明した図8の駆動回路を用い、駆動電圧又は駆動電流の制御方法(切替えタイミング)を変更することにより実施することができる。
【0057】
噴射パルスが入力されると、バッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源VHから高電圧610を印加し、ソレノイド105に電流の供給が開始される。電流値が予め定められたピーク電流値Ipeakに達すると、高電圧の印加を停止して、印加する電圧を0V以下にし、電流603のように電流値を低下させる。その後電流を遮断し605のように開弁状態を保持できない電流値にまで低下させる。この電流の遮断から所定の時間、弁体114を保持できる電流値607より小さい電流にする。その後、再びバッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源VHから高電圧611を印加し、ソレノイド105に電流を供給する。この電圧611の印加によって、保持電流608へ移行させる。このように電流を遮断して、開弁を保持できる電流値以下にまで下げた後に、昇圧された高電圧を印加することによって、開弁状態を安定して維持できる状態に素早く移行することが可能である。
【0058】
続いて電流が開弁を保持できる第1の電流値607に到達すると、駆動回路はバッテリ電圧の印加をスイッチングにて行い、電流値607或いはその近傍で電流値を保持するように制御を行い、駆動電流608を流す。駆動電流608の保持を所定の時間行った後、電流を増加させ、開弁を保持できる第2の電流値606に到達すると、駆動回路はバッテリの電圧の印加をスイッチングにて行い、電流値606或いはその近傍で電流値を保持するように制御を行い、駆動電流608よりも大きな駆動電流609を流す。
【0059】
なお、駆動電流608から駆動電流609への切替えは、バッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源VHから高電圧を与えて電流値を素早く増加させる場合と、バッテリ電圧の印加によって緩やかに変化させる場合がある。噴射パルスOFFから弁体114が閉弁するまでの閉弁遅れ時間は、噴射パルスがOFFになる際の電流値の影響を受ける。この電流値が小さいと、閉弁遅れ時間が小さくなる。よって、バッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源VHからの高電圧によって駆動電流608から駆動電流609への切替えを素早く行った場合には、噴射量が線形となる領域に素早く移行できるという効果がある。緩やかに切替えを行った場合には、駆動電流608から駆動電流609への切替え期間の噴射量が緩やかに線形領域に移行するという効果がある。これらは、駆動対象の燃料噴射装置の特性によって選択すると良い。
【0060】
このような電流のプロファイルにより弁体を駆動することによって得られる効果を以下に説明する。ここで、高電圧610の印加開始からピーク電流値Ipeakに達するまでの間に弁体114のリフトは開始される。リフト開始の後、電流603のように電流値を低下させる電流低下期間を設ける。この期間では、電流605のように開弁を保持できない電流値(駆動電流608及び駆動電流609より低い電流値)にまで低下させる。電流低下期間を設けることで、アンカー102が固定コア107に衝突する直前のタイミングt63で弁体114を減速させ、衝突する際の速度を低減することで開弁後の弁体114のバウンドを抑制することができる。
【0061】
なお、駆動電流を遮断してから磁束が消滅し、磁気吸引力が低下するまでには、遅れが生じる。このため、電流を遮断してから弁体114が減速するまでに遅れ時間604が生じる。このとき電流の遮断を開始するタイミングは、弁体114がリフトを開始するt61のタイミングと弁体114が減速するt63のタイミングの間であるとよい。この効果は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
さらに電流の遮断タイミングは、高電圧610を印加している段階での電流が、開弁状態を維持できる電流値607以上に到達するタイミングより後に電流の遮断を行い、かつその遮断タイミングは弁体114の減速よりも早いタイミングで行うとよい。このようなタイミングで電流の遮断を行うことで、弁体114は確実に開弁を開始して必要な速度を得るとともに、目標リフト位置に到達する前に減速することができる。この減速効果によって、開弁時の目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンド動作を抑制することができ、噴射量特性の線形領域を低流量側に拡大して、最小噴射量を低減できる。
【0063】
以上の方法により、開弁時の目標リフト位置到達後に発生する弁体114のバウンドを抑制することによって噴射量特性の直線性を向上させることが可能である。また、駆動電流608を駆動電流609より小さくすることで、電流605から駆動電流609への移行を緩やかにし、噴射量特性を緩やかに線形領域へ移行でき、かつ駆動電流608の期間でバウンドが収束し、かつ閉弁を開始する状態での最小噴射量を低減することが可能となる。
【実施例3】
【0064】
図7を用いて第三実施例を説明する。図7はECU(エンジンコントロールユニット)から出力される噴射パルスと燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流(励磁電流)と弁体変位量(弁体挙動)との関係を示した図である。なお、以下で説明する駆動電圧又は駆動電流の制御は、第1実施例で説明した図8の駆動回路を用い、駆動電圧又は駆動電流の制御方法(切替えタイミング)を変更することにより実施することができる。
【0065】
本実施例のうち、第一実施例と異なる点は、電流値が予め定められた電流値713に達すると、駆動回路121は高電圧源VHの印加をスイッチングにて行い、一定時間所定の電流702となるように制御を行う点である。このように電流702を一定時間保持することで、得られる効果を以下に説明する。
【0066】
ここで、高電圧710の印加開始からピーク電流値713に達するまでの間に弁体114のリフトは開始される。その後、第1実施例及び第2実施例におけるピーク電流Ipeakよりも小さい電流値713で電流702のように一定時間保持する。電流702はピーク電流Ipeakよりも低く抑えられるため、駆動回路121や燃料噴射装置の発熱を抑制する効果がある。一方で、高電圧源VHをスイッチングし電流702を供給することで、ピーク電流を抑えながら、開弁に必要な時間の電流の供給が可能になる。高電圧源VHのスイッチングは高圧源とバッテリ電圧の間で切替えを行っても良い。この場合、電流702における高電圧のスイッチングによって発生する電流の最大値と最小値の幅を小さくすることができ、安定して電流を供給することができる。
【0067】
また、電流を遮断するタイミングt72における電流値を第1実施例及び第2実施例におけるピーク電流値よりも低くすることで、電流を遮断するタイミングから開弁を保持できない電流705への移行を早くすることが可能となる。その結果、アンカー102が固定コア107に衝突するより前のタイミングt73に弁体114を減速可能であり、第1実施例及び第2実施例における減速タイミングより早いタイミングで減速効果を得ることが可能となる。これにより、目標リフト位置到達時t74での弁体114の衝突速度を低減でき、開弁後のバウンド抑制の効果が高まる。
【0068】
第三実施例において、ピーク電流値到達後に電流を遮断し、急速に電流を低下させ、開弁を維持できない電流値としているため、図2で説明した駆動波形に比べ、燃料噴射装置が正常に作動する燃料圧力の限界が低下する。そのため、最小噴射量が必要な場合では、本発明の第一実施例,第二実施例又は第三実施例のいずれかにおける駆動電流を使用し、出力が必要な場合には、図2で説明した駆動電流を用いるように駆動電流の切替えを行うと効果的である。
【0069】
また、本発明に係る各実施例によれば、開弁時におけるアンカー102と固定コア107の衝突速度を低減できるため、結果、燃料噴射装置の駆動音を低減することができる。
【0070】
また、本発明に係る各実施例では、図1で説明した燃料噴射装置、すなわちアンカー102と弁体114とが別体の形状となっている燃料噴射装置を用いてもよいが、アンカー102と弁体114とが一体構造の燃料噴射装置を用いても本発明における効果は有効である。
【符号の説明】
【0071】
101 ノズルホルダ
102 アンカー
103 ヨーク
105 ソレノイド
107 固定コア
110 スプリング
112 ゼロ位置ばね
113,115 ロッドガイド
114 弁体
116 オリフィスプレート
118 弁座
119 燃料噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動して開弁状態と閉弁状態とを切替える燃料噴射装置に弁体の駆動電流を供給する駆動装置であって、燃料噴射装置に対する第1の電圧源と第1の電圧源よりも高い電圧を生じる第2の電圧源との電気的な接続をオンオフする手段を備え、閉弁状態から開弁状態に弁体を動作させる開弁時に第2の電圧源の電圧を燃料噴射装置に印加して弁体の駆動電流を第2の電圧源から供給し、その後、第2の電圧源の電圧の印加を停止して第1の電圧源の電圧を燃料噴射装置に印加することにより弁体を開弁状態に保持する保持電流を第1の電圧源から供給する燃料噴射装置の駆動装置において、
第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくし、その後、第2の電圧源の電圧の印加を再開して弁体を開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくし、その後、前記保持電流を第1の電圧源から供給することを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置の駆動装置において、
前記第1の電圧源の電圧を昇圧する昇圧回路で前記第2の電圧源を構成したことを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射装置の駆動装置において、
前記第2の電圧源を装置上に備えたことを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料噴射装置の駆動装置において、
第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくする際に、弁体が最大リフト位置に到達する前に弁体の移動速度が減速するタイミングで、前記第2の電圧源の電圧の印加を停止することを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料噴射装置の駆動装置において、
第2の電圧源の電圧の印加を停止して弁体を開弁状態に保持できない電流値まで弁体の駆動電流を小さくした後に、第1の電圧源の電圧を印加して弁体を開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくする制御を実行可能に構成し、弁体を開弁状態に保持できない電流値から開弁状態に保持できる電流値まで駆動電流を大きくする際に用いる電圧源として前記第1の電圧源又は前記第2の電圧源のいずれかを選択可能にしたことを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52419(P2012−52419A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193067(P2010−193067)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】